説明

電動工具

【課題】商用電源が取れない場合や電池電圧が低下した場合であっても駆動可能な電動工具を提供する。
【解決手段】電磁波発生器10から発生される電磁波は、電磁波受信アンテナ11及び電磁波受信部12で受信される。受信電圧は、電磁波変換部13で電磁波変換電圧に変換される。電磁波変換電圧によりコンデンサ充電部14がコンデンサ15を充電する。電源切替制御部18は、電池パック9の電圧が第1基準値以上であるかどうかを検出し、第1基準値以上のときは電源切替部19でモータ2への接続先を電池パック9に切り替える。一方、電源切替部18は、電池パック9の電圧が第1基準値未満のとき(電池パック9が装着されていない場合を含む)は、コンデンサ15の電圧を検出し、コンデンサ15の電圧が第2基準値以上であれば電源切替部19でモータ2への接続先をコンデンサ15に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバドリル等の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術について、蓄電池を電源とする電池式ドライバドリルを例に図3,4を用いて説明する。電池式ドライバドリル801は、モータ2と、トリガスイッチ3と、トリガ3aと、モータ2の回転を変速する減速機構部4と、先端工具を把持するチャック5と、ハウジング6とを備える。モータ2を駆動する電源であるリチウムイオン電池等の電池セル7を接続した電池セル組8と、電池セル7の表面温度を検出するサーミスタ等の電池セル温度検出素子22と、電池セル温度検出素子22で検出した電池セル温度や電池セル7の電圧を監視して過充電や過放電を防止する(例えばFET等のスイッチ24をオフする)電池保護回路21とを内蔵した電池パック9は、ハウジング6から着脱できる構造となっている。電池式ドライバドリル801は、トリガ3aを引くとトリガスイッチ3がオンとなり、電池パック9の電圧がモータ駆動回路23を介してモータ2に印加されてモータ2が回転し、減速機構部4で減速した回転出力がチャック5に伝達され、ねじ締めや穴開け作業ができる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−156625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動工具は商用電源や蓄電池で駆動するものがほとんどである。商用電源を電源とする電動工具は、高所などの商用電源がない所では使用できない。そこで商用電源が取れない所でも使用できる電池工具があるが、電池パックの電池セルの電池容量には限りがあり、電池容量が少なくなり電池電圧が低下すると該電池工具が駆動できなくなり長時間使用ができない問題があった。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、商用電源が取れない場合や電池電圧が低下した場合であっても駆動可能な電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電動工具である。この電動工具は、
無線で電力を受信可能な受信手段と、前記受信手段の受信電力を蓄電するコンデンサとを備え、前記コンデンサに蓄電した電力によって駆動可能である。
【0007】
電池もしくは有線接続した交流電源と、前記コンデンサとのいずれかを駆動源として選択する切替制御手段を備えてもよい。
【0008】
前記切替制御手段は、前記電池もしくは前記交流電源の電圧を検出し、前記電池もしくは前記交流電源の電圧が第1基準値以上であれば前記電池もしくは前記交流電源を駆動源として選択してもよい。
【0009】
前記切替制御手段は、前記電池もしくは前記交流電源の電圧が前記第1基準値未満であるときは、前記コンデンサの電圧を検出し、前記コンデンサの電圧が第2基準値以上であれば前記コンデンサを駆動源として選択してもよい。
【0010】
前記コンデンサの電圧を検出し、前記コンデンサを駆動源として使用可能か否かを表示する表示手段を備えてもよい。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無線での受信電力をコンデンサ(キャパシタ)に蓄える構成としたことで、商用電源が取れない場合や電池電圧が低下した場合であっても前記コンデンサの蓄えた電力により駆動可能な電動工具が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る電池式ドライバドリルの断面図。
【図2】図1に示す電池式ドライバドリルの回路ブロック図。
【図3】従来の電池式ドライバドリルの断面図。
【図4】図3に示す電池式ドライバドリルの回路ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る電動工具としての電池式ドライバドリル1の断面図である。図2は、電池式ドライバドリル1の回路ブロック図である。電池式ドライバドリル1において先端工具を回転駆動する構成は公知であるが、以下、一例を説明する。
【0016】
電池式ドライバドリル1は、モータ2と、トリガスイッチ3と、トリガ3aと、減速機構部4と、チャック5と、ハウジング6とを備える。トリガスイッチ3は、使用者がトリガ3aを引いたときにオンされるスイッチである。減速機構部4はモータ2の回転を所定の減速比で減速する。チャック5は、ビット等の先端工具を把持する。モータ2及び減速機構部4はハウジング6の胴体部6a内に収容され、チャック5は胴体部6aの一端に固定される。トリガスイッチ3はハウジング6のハンドル部6bの上部に配設され、トリガ3aはハンドル部6bの側面から突出する。
【0017】
モータ2を駆動する電源である電池パック9は、リチウムイオン電池等の電池セル7を複数個接続(例えば電池セル7を2つ並列接続したものを5セット直列に接続)した電池セル組8と、電池セル7の表面温度を検出するサーミスタ等の電池セル温度検出素子22と、電池セル温度検出素子22で検出した電池セル温度や電池セル7の電圧を監視して過充電や過放電を防止する(例えばFET等のスイッチ24をオフする)電池保護回路21とから構成され、ハウジング6に着脱自在である。
【0018】
使用者がトリガ3aを引くと、トリガスイッチ3がオンされてモータ駆動回路23を介してモータ2が通電され、モータ2が回転し、減速機構部4で減速した回転出力がチャック5に伝達され、ねじ締めや穴開け作業ができる。本実施の形態の電池式ドライバドリル1は、モータ2の駆動源として、電池パック9の電力の他に無線での受信電力を利用できることを特徴の一つとする。以下、この点について説明する。
【0019】
電池式ドライバドリル1は、外部の電磁波発生器10が発生する電磁波を受信する電磁波受信アンテナ11と、電磁波受信部12と、電磁波変換部13と、コンデンサ充電部14と、コンデンサ15と、蓄電量検出部16と、蓄電量表示部17と、電源切替制御部18と、電源切替部19と、電源切替部19を搭載する基板組20とを備え、それらをハウジング6に内蔵(例えばハンドル部6bに内蔵)している。
【0020】
電磁波発生器10から発生される電磁波は、電磁波受信アンテナ11及び電磁波受信部12で受信される。受信電圧は、電磁波変換部13で整流等により電磁波変換電圧に変換される。電磁波変換電圧によりコンデンサ充電部14がコンデンサ15を充電する。すなわち、無線での受信電力がコンデンサ15に蓄電される。蓄電は、放電時を除き、電磁波を受信していて且つ蓄電容量に空きがある限り常時実行される。コンデンサ15としては例えば電気二重層コンデンサを用いることができる。蓄電量検出部16は、コンデンサ15の蓄電量(電圧)を検出し、蓄電量が第2基準値(モータ2の駆動に必要な量)以上かどうかを検出して蓄電量表示部17で表示する。蓄電量表示部17は、例えばLEDであり、ハウジング6の側面に設けられる。
【0021】
電源切替制御部18は、電源切替部19を制御し、コンデンサ15に蓄えた電力と電池パック9の電力のいずれかを選択してモータ2に供給する。具体的には、電源切替制御部18は、電池パック9の電圧が第1基準値以上であるかどうかを検出し、第1基準値以上のときは電源切替部19でモータ2への接続先を電池パック9に切り替える。そして、トリガ3aが引かれてトリガスイッチ3がオンになると電池パック9の電圧がモータ駆動回路23を介してモータ2に印加され、モータ2の回転出力が減速機構4からチャック5に伝達され、ねじ締めや穴開け作業ができる。一方、電源切替部18は、電池パック9の電圧が第1基準値未満のとき(電池パック9が装着されていない場合を含む)は、コンデンサ15の電圧を検出し、コンデンサ15の電圧が第2基準値以上であれば電源切替部19でモータ2への接続先をコンデンサ15に切り替える。そして、トリガ3aが引かれてトリガスイッチ3がオンになるとコンデンサ15に蓄えた電力(無線での受信電力)でモータ駆動回路23を介してモータ2が駆動され、回転出力が減速機構4からチャック5に伝達され、ねじ締めや穴開け作業ができる。なお、前記第1基準値及び前記第2基準値は例えばモータ2の定格電圧に基づいて定められ、前記第1基準値及び前記第2基準値は同じであってもよいし異なってもよい。以上により、電池パック9が装着されていない、もしくは電池電圧が低いときでも、電磁波による電力で電池式ドライバドリル1を使用できる。
【0022】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0023】
(1) 電磁波受信アンテナ11及び電磁波変換部12で電磁波を受信して得られる電力をコンデンサ15に蓄電し、コンデンサ15に蓄えた電力でもモータ2を駆動可能な構成のため、電池パックの容量が少なくなった場合でも使用可能な電動工具が実現される。
【0024】
(2) コンデンサ15の蓄電量が第2基準値(モータ2の駆動に必要な量)以上かどうかを検出して蓄電量表示部17で表示するため、使用者に便利である。
【0025】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0026】
電動工具は電池駆動工具に限らずAC工具(商用電源等の交流電源に有線接続して使用する電動工具)であってもよい。この場合、商用電源が取れない場合でもコンデンサ15に蓄えた電力により使用可能な電動工具が実現される。
【0027】
電磁波受信アンテナ11やコンデンサ15等は電池パック9に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 電池式ドライバドリル
2 モータ
3 トリガスイッチ
4 減速機構
5 チャック
6 ハウジング
7 電池セル
8 電池セル組
9 電池パック
10 電磁波発生器
11 電磁波受信アンテナ
12 電磁波受信部
13 電磁波変換部
14 コンデンサ充電部
15 コンデンサ
16 蓄電量検出部
17 蓄電量表示部
18 電源切替制御部
19 電源切替部
20 基板組立
21 電池保護回路
22 電池セル温度検出素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線で電力を受信可能な受信手段と、前記受信手段の受信電力を蓄電するコンデンサとを備え、前記コンデンサに蓄電した電力によって駆動可能である、電動工具。
【請求項2】
電池もしくは有線接続した交流電源と、前記コンデンサとのいずれかを駆動源として選択する切替制御手段を備える、請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記切替制御手段は、前記電池もしくは前記交流電源の電圧を検出し、前記電池もしくは前記交流電源の電圧が第1基準値以上であれば前記電池もしくは前記交流電源を駆動源として選択する、請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記切替制御手段は、前記電池もしくは前記交流電源の電圧が前記第1基準値未満であるときは、前記コンデンサの電圧を検出し、前記コンデンサの電圧が第2基準値以上であれば前記コンデンサを駆動源として選択する、請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記コンデンサの電圧を検出し、前記コンデンサを駆動源として使用可能か否かを表示する表示手段を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の電動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−103328(P2013−103328A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251252(P2011−251252)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】