説明

電動工具

【課題】 深さ制御機能を備えた電動工具を提供する。
【解決手段】 電動工具1は、交流電力が供給される整流回路10と、被穿孔材Wを穿孔するために、穿孔方向に延びる穿孔ビット15を駆動するモータ5と、被穿孔材Wまでの距離を測定するために、穿孔方向に超音波を送信し、被穿孔材Wで反射された反射波を受信する超音波センサ13と、超音波センサが交流電力のピークを中心とした第1の所定時間からずれたタイミングで反射波を受信することができるように、超音波センサ13が超音波を送信するタイミングを制御する制御回路7と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具、特に、深さ制御機能を備えた穿孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータの回転力をドリルビット等の先端工具に伝達することにより、先端工具による穿孔作業を可能とする穿孔工具が知られている(例えば、特許文献1参照)。一般に、従来の穿孔工具では、本体に固定した棒状のデプスゲージを用いて穿孔深さを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−241229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電動工具において、設定された深さまで穿孔が行われた時にモータへの電力の供給を停止させる深さ制御機能を備えることも考えられる。深さ制御では、例えば、超音波センサにより被穿孔材への超音波の送信及び被穿孔材からの反射波の受信を継続的に行い、送信から受信までの送受信時間に基づき、穿孔された深さを算出すればよい。
【0005】
しかしながら、上記穿孔工具の電源として交流電源を用いた場合には、交流電力により生じたノイズも超音波センサにより受信されてしまうこととなるため、反射波とノイズとを区別することができない虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、交流電力により生じるノイズが深さ制御に与える影響を抑制することのできる電動工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、交流電力が供給される被供給部と、被穿孔材を穿孔するために、穿孔方向に延びる先端工具を駆動する駆動部と、前記被穿孔材までの距離を測定するために、前記穿孔方向に音波を送信し、前記被穿孔材で反射された反射波を受信する音波センサと、前記音波センサが前記交流電力のピークを中心とした第1の所定時間からずれたタイミングで前記反射波を受信することができるように、前記音波センサが前記音波を送信するタイミングを制御する制御部と、を備えたことを特徴とする電動工具を提供している。
【0008】
このような構成によれば、反射波と交流電力により生じたノイズとを区別することが可能となる。
【0009】
また、前記第1の所定時間は、5msecであることが好ましい。
【0010】
また、前記制御部は、前記音波センサが前記交流電力のピーク間のゼロクロス点を中心とした第2の所定時間内に前記反射波を受信することができるように、前記音波センサが前記音波を送信するタイミングを制御することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、反射波と交流電力により生じたノイズとをより確実に区別することが可能となる。
【0012】
また、前記第2の所定時間は、3msecであることが好ましい。
【0013】
また、前記制御部は、前記交流電力のピークを中心とした第3の所定時間内に前記音波センサにより受信された信号を無効にすることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、制御部が交流電力により生じたノイズを取得することがなくなるので、ノイズを反射波であると判断してモータへの電力の供給を停止させてしまうことを防止することが可能となる。
【0015】
また、前記第3の所定時間は、2msecであることが好ましい。
【0016】
また、前記駆動部は、前記被供給部に供給された前記交流電力に基づき前記先端工具を駆動することが好ましい。
【0017】
また、前記駆動部は、前記交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流・平滑回路と、前記直流電力から駆動電力を生成するインバータ回路と、前記駆動電力に応じて前記先端工具を駆動するモータと、を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電動工具によれば、交流電力により生じるノイズが深さ制御に与える影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態による電動工具の断面図
【図2】本発明の実施の形態による電動工具の回路図
【図3】本発明の実施の形態による入力部の外観図
【図4】正常に送受信された超音波について説明する図
【図5】反射波とノイズとが重なった場合について説明する図
【図6】本実施の形態による送信制御を行った場合の超音波とノイズとの関係について説明する図
【図7】本実施の形態による深さ制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態による電動工具1の断面図であり、図2は、本発明の実施の形態による電動工具1の回路図である。本実施の形態では、図1における上下方向及び左右方向を、それぞれ前後方向及び上下方向と規定する。また、本実施の形態では、電動工具1として、ロータリーハンマドリルを用いて説明するが、穿孔作業が可能な電動工具であれば、ロータリーハンマドリルに限られるものではない。
【0022】
図1及び図2に示すように、電動工具1は、プラスチックにより一体成型されたハンドルハウジング1A及びモータハウジング1Bと、トリガスイッチ3と、制御回路電圧供給回路4と、モータ5と、回転子位置検出素子6と、制御回路7と、インバータ回路8と、ノーマルモードフィルタ9と、整流回路10と、平滑コンデンサ11と、先端工具保持部12と、超音波センサ13と、入力部14と、を備えている。
【0023】
電動工具1では、トリガスイッチ3が操作されると、交流電源2から供給された交流電力が整流回路10及び平滑コンデンサ11によって整流・平滑され、インバータ回路8を介してモータ5に出力される。また、図示せぬ電源コードが交流電源2に接続された時に、交流電源2から供給された交流電圧が制御回路電圧供給回路4により変圧され、制御回路用駆動電圧として制御回路7に供給される。以下、これらの構成及び動作について詳細に説明する。
【0024】
図2に示すように、モータ5は、3相のブラシレスDCモータであり、複数組(本実施の形態では2組)のN極とS極を含む永久磁石からなるロータ5Aと、スター結線された3相の固定子巻線U、V、Wからなるステータ5Bと、を備えている。モータ5(ロータ5A)は、電流が流れる固定子巻線U、V、Wが順次切り替わることにより回転する。固定子巻線U、V、Wの切り替えについては後述する。
【0025】
回転子位置検出素子6は、ロータ5Aの永久磁石に対向する位置に、ロータ5Aの周方向に所定の間隔毎(例えば角度60°毎)に配置されており、回転子(ロータ5A)の回転位置に応じた信号を出力する。
【0026】
制御回路7は、モータ電流検出回路71と、整流電圧検出回路72と、制御回路電圧検出回路73と、スイッチ操作検出回路74と、印加電圧設定回路75と、回転子位置検出回路76と、モータ回転数検出回路77と、演算部78と、制御信号出力回路79と、AC入力電圧検出回路80と、超音波送信回路81と、超音波受信回路82と、を備えている。
【0027】
モータ電流検出回路71は、モータ5に流れる電流を検出し、演算部78に出力する。整流電圧検出回路72は、整流回路10及び平滑コンデンサ11から出力された電圧を検出し、演算部78に出力する。制御回路電圧検出回路73は、制御回路電圧供給回路4から供給された制御回路用駆動電圧を検出し、演算部78に出力する。スイッチ操作検出回路74は、トリガスイッチ3の操作の有無を検出し、演算部78に出力する。印加電圧設定回路75は、トリガスイッチ3の操作量を検出し、演算部78に出力する。
【0028】
回転子位置検出回路76は、回転子位置検出素子6からの信号に基づき回転子(ロータ5A)の回転位置を検出し、モータ回転数検出回路77及び演算部78に出力する。モータ回転数検出回路77は、回転子位置検出回路76からの信号に基づき回転子(ロータ5A)の回転数を検出し、演算部78へ出力する。AC入力電圧検出回路80は、交流電源2から供給された交流電圧を検出し、演算部78に出力する。
【0029】
超音波送信回路81は、演算部78からの超音波の送信の指示を超音波センサ13に伝達するためのものであり、超音波受信回路82は、超音波センサ13が受信した被穿孔材W(図1)からの反射波を演算部78に伝達するためのものである。
【0030】
演算部78は、回転子位置検出回路76とモータ回転数検出回路77からの信号に基づき、切替信号H1−H6を生成し、制御信号出力回路79に出力する。また、演算部78は、印加電圧設定回路75からの信号に基づき、切替信号H4−H6をパルス幅変調信号(PWM信号)として調整し、制御信号出力回路79に出力する。切替信号H1−H6は、制御信号出力回路79を介してインバータ回路8に出力される。なお、切替信号H1−H3をPWM信号として調整する構成であってもよい。
【0031】
インバータ回路8は、スイッチング素子Q1−Q6から構成されている。各スイッチング素子Q1−Q6のゲートは、制御信号出力回路79に接続され、各スイッチング素子Q1−Q6のドレイン又はソースは、ステータ5Bの固定子巻線U、V、Wに接続されている。
【0032】
各スイッチング素子Q1−Q6は、制御信号出力回路79から入力される切替信号H1−H6に基づきスイッチング動作を行い、インバータ回路8に印加される直流電圧を3相(U相、V相及びW相)電圧Vu、Vv、Vwとして固定子巻線U、V、Wに電力を供給する。
【0033】
詳細には、スイッチング素子Q1−Q6には切替信号H1−H6がそれぞれ入力され、これにより、通電される固定子巻線U、V、W、すなわち、ロータ5Aの回転方向が制御される。また、その際、PWM信号でもあるH4−H6によって、固定子巻線U、V、Wへの電力供給量が制御される。
【0034】
以上の構成により、電動工具1は、トリガスイッチ3の操作量に応じた駆動電圧をモータ5に供給することが可能となる。そして、図1に示すように、モータハウジング1Bの前端には、先端工具保持部12が設けられており、先端工具保持部12に穿孔ビット15を装着することにより、モータ5の回転力が穿孔ビット15に伝達される。なお、本実施の形態による先端工具保持部12には、長さ5〜40cmの範囲の穿孔ビット15が装着可能なものとする。
【0035】
また、超音波センサ13は、前方の被穿孔材Wへの超音波の送信及び被穿孔材Wからの反射波を受信可能な公知の超音波センサから構成されており、ハンドルハウジング1Aの前端に設けられている。本実施の形態における超音波センサ13は、発信周波数が180kHz、測定距離が5cm〜100cm、上下方向、左右方向における指向角度が約12deg程度の分解能を有しているものとする。また、本実施の形態では、超音波センサ13から先端工具保持部12の前端までの距離は、10cmとする。
【0036】
入力部14は、所定の深さまで穿孔が行われた時にモータ5への電力の供給を停止させる深さ制御機能に関する設定を行うためのものであり、図3に示すように、モータハウジング1Bの外表面であって上方位置に設けられている。入力部14は、深さ制御機能オン・オフボタン14Aと、深さ設定ボタン14Bと、表示部14Cと、原点位置設定ボタン14Dと、ビット長入力ボタン14Eと、を備えている。
【0037】
深さ制御機能オン・オフボタン14Aは、深さ制御機能を使用するか否かの切り替えを行うためのものである。深さ設定ボタン14Bは、穿孔される穴の深さの設定を行うためのものであり、“UP”ボタン又は“DOWN”ボタンを押圧することにより、表示部14Cにデジタル表示された数値が変更され、穿孔される穴の深さを設定することができる。本実施の形態では、深さ設定ボタン14Bにより設定可能な深さは、1mm〜99mmの範囲とする。原点位置設定ボタン14Dは、原点位置の設定を行うためのものであり、穿孔ビット15を被穿孔材Wに押し当てた状態で押圧することで原点位置が設定される。ビット長入力ボタン14Eは、先端工具保持部12に装着された穿孔ビット15の長さを入力するためのものであり、“UP”ボタン又は“DOWN”ボタンを押圧することにより、表示部14Cにデジタル表示された数値が変更され、先端工具保持部12に装着された穿孔ビット15の長さを入力することができる。
【0038】
深さ制御機能オン・オフボタン14Aがオンされている場合に、演算部78により深さ制御が行われる。詳細には、演算部78は、超音波センサ13による超音波の送信から反射波の受信までの送受信時間が、(超音波センサ13から先端工具保持部12の前端までの距離+穿孔ビット15の長さ−設定された深さ)×2/音速・・・の式により求められる時間まで低下した時に、設定された深さまで穿孔が行われたものと判断し、モータ5への電力の供給を停止させる。超音波センサ13により正常に送受信された超音波の波形は、図4に示すようなものとなる。
【0039】
ところで、本実施の形態では、交流電力を供給する交流電源2を電源として用いているが、交流電力のピークでは、回路に流れる電流が大きくなるため、大きなノイズが発生しやすくなる。一方で、超音波センサ13は、超音波の送信が指示されている間以外は、常に反射波を受信しているため、交流電力により発生したノイズも受信してしまうこととなる。特に、超音波センサ13は、ハイインピーダンス回路であるため、ノイズの影響を受けやすく、交流電源2を電源として用いると、図5に示すように、反射波とノイズとを区別することができない虞がある。
【0040】
一方、交流電力のピーク付近における超音波センサ13による受信を無効とするような制御も考えられるが、このような制御では、反射波が交流電力のピーク付近で受信された場合には、その反射波までもが無効とされてしまう。
【0041】
そこで、本実施の形態による電動工具1では、深さ制御を行う際には、超音波センサ13が交流電力のピークを中心とした第1の所定時間(例えば、5msec)からずれたタイミングで反射波を受信することができるように、超音波センサ13が超音波を送信するタイミングを制御する。
【0042】
周波数50Hzの交流電力のピーク間の時間は、20msecである。一方で、上述したように、本実施の形態では、超音波センサ13から先端工具保持部12の前端までの距離は、10cm、先端工具保持部12に装着可能な穿孔ビット15の長さは、5〜40cmであるので、超音波センサ13は、(10cm+5〜40cm)×2/音速(340m/s)の式により、超音波の送信から約0.9〜2.9msec後に反射波を受信する。従って、算出された受信時間が交流電力のピークを中心とした第1の所定時間からずれるように超音波を送信することで、反射波とノイズとを区別することが可能となる。
【0043】
また、超音波センサ13が交流電力のピーク間の中間であるゼロクロス点を中心とした第2の所定時間内(例えば、3msec)に反射波を受信することができるように、超音波センサ13が超音波を送信するタイミングを制御することが好ましい。
【0044】
この場合、図6に示すように、交流電力のピークから5ms後のゼロクロス点において超音波センサ13が反射波を受信するように、交流電力のピークから所定時間経過後の送信タイミングTAにおいて超音波センサ13から超音波を送信させる。例えば、上記したように、穿孔ビット15の長さが5cmの場合には、超音波の送信から約0.9msec後に反射波を受信するため、送信タイミングTAは、交流電力のピークから4.1(=5−0.9)msec後に決定される。また、穿孔ビット15の長さが40cmの場合には、超音波の送信から2.9msec後に反射波を受信するため、送信タイミングTAは、交流電力のピークから2.1(=5−2.9)msec後に決定される。これにより、反射波とノイズとをより確実に区別することが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態では、交流電力のピークを中心とした第3の所定時間(例えば、2msec)内に超音波センサ13により受信された信号を無効にする。これにより、演算部78は、反射波のみを超音波センサ13から取得し、交流電力により生じたノイズを取得することがなくなるので、ノイズを反射波であると判断してモータ5への電力の供給を停止させてしまうことを防止することが可能となる。
【0046】
なお、穿孔が進むに連れて超音波センサ13と被穿孔材Wとの距離は短くなっていくため、超音波センサ13が反射波を受信するタイミングは、ゼロクロス点からずれていくこととなる。しかしながら、本実施の形態による深さ設定ボタン14Bで設定可能な深さは1mm〜99mmであるため、反射波を受信するタイミングがゼロクロスからずれたとしても、依然としてピークからは大きく離れた点で受信を行うこととなる。従って、本実施の形態の範囲では、穿孔が進んだとしても、反射波を受信するタイミングが交流電力のピーク付近と重なることは防止される。
【0047】
次に、図7のフローチャートを用いて、演算部78により行われる深さ制御について説明する。本フローチャートは、深さ制御機能オン・オフボタン14Aがオンされている状態でトリガスイッチ3が操作された時に開始する。また、深さ制御機能オン・オフボタン14Aがオンされた時に送信タイミングTAの算出がなされているものとする。
【0048】
まず、演算部78は、超音波センサ13による受信を無効に設定した上で(S101)、AC入力電圧検出回路80より交流電力の電圧値を取得し(S102)、取得した電圧値に基づき、交流電力がピークに達したか否かを判断する(S103)。
【0049】
詳細には、今回S102で取得した電圧値が、前回S102で取得した電圧値より低下したか否かを判断し、低下していた場合には、交流電力がピークに達したもの判断する。なお、本実施の形態では、演算部78は、実際のピークと十分に近接した時点でピークを判断することができるようなサンプリング期間でAC入力電圧検出回路80から電圧値を取得するものとする。
【0050】
交流電力がピークに達していた場合には(S103:YES)、続いて、交流電力のピークから所定時間経過後の送信タイミングTAにおいて(S104:YES)、超音波センサ13から超音波を送信させる(S105)。なお、超音波センサ13超音波を送信する時間は短すぎると、超音波が弱くなってしまうので、本実施の形態では、0.2msec間送信するものとする。
【0051】
これにより、電動工具1に対応した穿孔ビット15が先端工具保持部12に装着されている場合には、超音波センサ13から送信された超音波の反射波は、交流電力のピークから5msec後、すなわち、交流電力のゼロクロス点付近で、超音波センサ13に戻ってくることとなる。
これにより、超音波センサ13が交流電力のピークを中心とした第1の所定時間(例えば、5msec)からずれたタイミングで反射波を受信することができるので、反射波とノイズとを区別することが可能となる。また、反射波は、必ずしも交流電力のゼロクロス点で超音波センサ13に戻ってこなくても、ゼロクロス点を中心とした第2の所定時間内(例えば、3msec)に反射波を受信することができれば、反射波とノイズとを確実に区別することができる。
【0052】
従って、交流電力のピークから1msec後に超音波センサ13による受信を有効に設定した上で(S106)、交流電力のピークから5msec以内に反射波を受信しているか否かを判断する(S107)。上記判断が5msecであるのは、穿孔が進むに連れて反射波が超音波センサ13に戻ってくる時間が短くなり、5msecより長くなることはないからである。
【0053】
交流電力のピークから5msec以内に反射波を受信していた場合には(S107:YES)、超音波の送信から受信までの送受信時間=(超音波センサ13から先端工具保持部12の前端までの距離+穿孔ビット15の長さ−設定された深さ)×2/音速・・・の式から、現在の穴の深さを算出する(S108)。
【0054】
続いて、算出された穴の深さが、深さ設定ボタン14Bにより設定された深さに達したか否かを判断し(S109)、達していた場合には(S109:YES)、モータ5を停止させる(S110)。
【0055】
一方、算出された穴の深さが、深さ設定ボタン14Bにより設定された深さに達していなかった場合には(S109:NO)、交流電力のピークから19msec経過後にS101に戻る。これにより、交流電力のピーク付近のノイズが反射波であると判断されることが防止される。
【0056】
また、交流電力のピークから5msec以内に反射波を受信していなかった場合には(S107:NO)、例えば、電動工具1に対応していない穿孔ビットが先端工具保持部12に装着されているような場合が考えられる。従って、この場合には、深さ制御が不能と判断し、モータ5を停止させる(110)。
【0057】
このように、本実施の形態による電動工具1では、深さ制御を行う際には、超音波センサ13が交流電力のピークを中心とした第1の所定時間(例えば、5msec)からずれたタイミングで反射波を受信することができるように、超音波センサ13が超音波を送信するタイミングを制御するので、反射波とノイズとを区別することが可能となる。
【0058】
また、本実施の形態による電動工具1では、特に、超音波センサ13が交流電力のピーク間の中間であるゼロクロス点を中心とした第2の所定時間内(例えば、3msec)に反射波を受信することができるように、超音波センサ13が超音波を送信するタイミングを制御するので、反射波とノイズとをより確実に区別することが可能となる。
【0059】
また、本実施の形態では、交流電力のピークを中心とした第3の所定時間(例えば、2msec)内に超音波センサ13により受信された信号を無効にしている。これにより、演算部78は、反射波のみを超音波センサ13から取得し、交流電力により生じたノイズを取得することがなくなるので、ノイズを反射波であると判断してモータ5への電力の供給を停止させてしまうことを防止することが可能となる。
【0060】
尚、本発明の電動工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0061】
例えば、入力部14において穿孔ビット15の長さを入力可能に構成してもよい。これにより、超音波センサ13が反射波を受信するタイミングをより確実に交流電力のピーク付近からずらすことが可能となる。
【0062】
また、上記実施の形態では、穿孔動作の開始時には、ゼロクロス点で超音波を受信可能であるが、穿孔が進むに連れてゼロクロスからずれて交流電力の影響を受けやすくなっていく虞がある。従って、例えば、図7のS108で穿孔された深さを検出した後に、(超音波センサ13から先端工具保持部12の前端までの距離+穿孔ビット15の長さ−穿孔された深さ)×2/音速・・・の式により、送受信時間を算出し、(5msec−送受信時間)により、その都度、送信タイミングを変化させることで、穿孔が進んでも常にゼロクロス点において受信を行うことが可能となる。
【0063】
また、上記実施の形態では、交流電力の周波数が50Hzであるものとして説明したが、他の周波数の交流電力の場合にも適用することができ、その場合には、ピーク間の時間を変更して本発明を用いればよい。
【0064】
また、音速は、温度によっても変化するので、電動工具1に温度センサを設け、検出された温度に基づき音速を変化させて上記実施の形態における計算を行えば、反射波とノイズとをより確実に区別することが可能となる。
【0065】
また、上記実施の形態では、モータ5の電源として交流電源2を用いたが、例えば、モータ5へは電池パックの直流電力を供給し、制御回路7に交流電源2の交流電力を供給するような構成に対しても、本発明は適用可能である。
【0066】
また、上記実施の形態で用いた数値は一例であり、他の数値を用いてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 電動工具
2 交流電源
3 トリガスイッチ
5 モータ
7 制御回路
8 インバータ回路
10 整流回路
11 平滑コンデンサ
13 超音波センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力が供給される被供給部と、
被穿孔材を穿孔するために、穿孔方向に延びる先端工具を駆動する駆動部と、
前記被穿孔材までの距離を測定するために、前記穿孔方向に音波を送信し、前記被穿孔材で反射された反射波を受信する音波センサと、
前記音波センサが前記交流電力のピークを中心とした第1の所定時間からずれたタイミングで前記反射波を受信することができるように、前記音波センサが前記音波を送信するタイミングを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記第1の所定時間は、5msecであることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記制御部は、前記音波センサが前記交流電力のピーク間のゼロクロス点を中心とした第2の所定時間内に前記反射波を受信することができるように、前記音波センサが前記音波を送信するタイミングを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記第2の所定時間は、3msecであることを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記制御部は、前記交流電力のピークを中心とした第3の所定時間内に前記音波センサにより受信された信号を無効にすることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記第3の所定時間は、2msecであることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項7】
前記駆動部は、前記被供給部に供給された前記交流電力に基づき前記先端工具を駆動することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項8】
前記駆動部は、
前記交流電力を整流・平滑して直流電力として出力する整流・平滑回路と、
前記直流電力から駆動電力を生成するインバータ回路と、
前記駆動電力に応じて前記先端工具を駆動するモータと、
を備えたことを特徴とする請求項7に記載の電動工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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