電動工具
【課題】電動工具の作動がし易い上に、モータの出力軸の回転を制動するブレーキ装置を備えた電動工具を提供する。
【解決手段】出力軸6を前向きにしてモータMを収容したハウジング3に、モータの出力軸に対して直交方向Yへ移動操作可能に支持されて、モータの駆動スイッチSをオンオフさせるパドルスイッチ30を設けると共に、ハウジング内におけるモータの前方側に出力軸の回転を制動するブレーキ装置60を設けたグラインダ1であって、パドルスイッチをハウジング側へ押し込んで駆動スイッチをオンさせる押し込み操作に連動して、ブレーキ装置を解除する連動機構40、70、90を備える。
【解決手段】出力軸6を前向きにしてモータMを収容したハウジング3に、モータの出力軸に対して直交方向Yへ移動操作可能に支持されて、モータの駆動スイッチSをオンオフさせるパドルスイッチ30を設けると共に、ハウジング内におけるモータの前方側に出力軸の回転を制動するブレーキ装置60を設けたグラインダ1であって、パドルスイッチをハウジング側へ押し込んで駆動スイッチをオンさせる押し込み操作に連動して、ブレーキ装置を解除する連動機構40、70、90を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハウジング内に収容されたモータの出力軸に対して直交方向へ移動操作可能で、モータの駆動スイッチをオンオフさせる操作部材を備えると共に、前記出力軸の回転を制動するブレーキ装置を設けた電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、電動工具のスイッチが切られた後にモータの出力軸を制動する装置(ブレーキ装置)を備えた電動工具が開示されている。特許文献1に記載のブレーキ装置では、前記スイッチが切られたときに、出力軸に固定された制動ディスクに対し、ばねの付勢力によって対応制動ディスクを押し付けている。これにより、制動ディスクが固定された出力軸を停止させることができる。
【0003】
一方、ハウジングの上面にあるスライダを手動操作して、電動工具のスイッチが入れられるときは、スライダに連結されたロッド状の連結部材が、出力軸の軸方向にスライドする。この連結部材は、前記軸方向にスライドすることにより、ブレーキ装置を解除する際に、前記軸方向において対応制動ディスクに結合された操作機構の上端部を、該軸方向に押す。これにより、操作機構を前記軸方向に垂直な方向に対して傾動させる。これに伴って、上記のばねの付勢力に抗し、対応制動ディスクが前記軸方向に移動して制動ディスクから解放される。その結果、出力軸を回転させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1938924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、グラインダ等の電動工具においては、モータを収容したハウジングに、モータの出力軸に対して直交方向へ移動操作可能に支持されて、モータの駆動スイッチをオンオフさせる操作部材が設けられている。この電動工具では、作業者が手で操作部材を握った状態でハウジング側へ押し込むことでモータの駆動スイッチがオン状態になる。
【0006】
例えば、この電動工具を用いた高所作業時に作業者が誤って電動工具を落下させた場合でも、作業者の手が操作部材から離れると操作部材がハウジングから離間する方向に移動することで、モータの駆動スイッチがオフ状態になる。したがって、操作部材を備えた電動工具では、作業者が操作部材をハウジング側へ押し込むか、操作部材から手を離すだけでモータの駆動スイッチをオンオフできるため、電動工具の作動がし易いという利点を有する。そこで近年の電動工具においては、電動工具の作動がし易いことを維持しながら、上述したようなモータの出力軸の回転を制動するブレーキ装置をも備えることが望まれていた。
【0007】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、電動工具の作動がし易い上に、モータの出力軸の回転を制動するブレーキ装置を備えた電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る電動工具は、出力軸を前向きにしてモータを収容したハウジングに、前記モータの前記出力軸に対して直交方向へ移動操作可能に支持されて、前記モータの駆動スイッチをオンオフさせる操作部材を設けると共に、前記ハウジング内における前記モータの前方側に前記出力軸の回転を制動するブレーキ装置を設けた電動工具であって、前記操作部材を前記ハウジング側へ押し込んで前記駆動スイッチをオンさせる押し込み操作に連動して、前記ブレーキ装置を解除する連動機構を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記連動機構は、前記ハウジングに収容されて、前記操作部材の前記押し込み操作に連動して前記前方側へスライド動作可能なスライド部材を備え、前記スライド部材は、前記前方側へのスライド動作で前記ブレーキ装置を解除するようにして、前記操作部材の前記押し込み操作と前記スライド部材の前記スライド動作とを連動させる連動位置を、前記モータの後方側としたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、前記連動位置における前記操作部材と前記スライド部材との少なくとも何れか一方に第1の傾斜面を設けて、前記押し込み操作時に前記第1の傾斜面による案内で、前記スライド部材が前記スライド動作するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3において、前記連動位置における前記操作部材に前記第1の傾斜面を設けて、前記連動位置における前記スライド部材に、前記押し込み操作時に前記第1の傾斜面を転動する転動体を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4において、前記連動位置における前記操作部材は、前記第1の傾斜面の裏側に形成された第2の傾斜面を備え、前記第2の傾斜面は、前記スライド部材と係合して、前記操作部材が前記直交方向で前記ハウジングから離間する方向へ移動することに応じて前記スライド部材を前記後方側へスライド動作させることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記出力軸の前記回転の制動時に、前記駆動スイッチのオフ側であって前記操作部材を前記直交方向で前記ハウジングから離間する方向へ付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかにおいて、前記ハウジングに、前記操作部材を前記直交方向へ回転可能に支持する回転支点部を設けて、前記操作部材は、前記回転支点部を中心として、前記直交方向へ移動操作可能にしたことを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項2ないし7のいずれかにおいて、前記ブレーキ装置は、前記ハウジング内に保持されて、回転に伴って前記出力軸に固定されるブレーキ板に接離動作可能なブレーキ部材と、前記スライド部材に設けられて、前記ブレーキ部材と当接して該ブレーキ部材を前記ブレーキ板から離間する回転方向へ回転させる押圧部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る電動工具によれば、連動機構を備えることで、操作部材の押し込み操作に連動してブレーキ装置を解除できる。したがって、電動工具にブレーキ装置を設けることと、電動工具を簡単に作動させることとを両立できる。
請求項2の発明によれば、モータの前方側に設けたブレーキ装置から離れた位置に当たる連動位置から、前記押し込み操作に連動して、ブレーキ装置を解除するためのスライド部材をスライド動作させることができる。したがって、ブレーキ装置から離れた位置でブレーキ装置を解除する操作が可能になる。
請求項3の発明によれば、スライド部材がスライド動作するときには、操作部材とスライド部材との少なくとも何れか一方の傾斜面を用いることで、前記スライド動作を円滑に行うことができる。
請求項4の発明によれば、転動体が第1の傾斜面を転動してスライド部材がスライド動作するときは、転動体を用いることで、転動体と第1の傾斜面との当接部分の摩擦抵抗が抑えられる。これにより、スライド部材のスライド動作が円滑になる。
請求項5の発明によれば、操作部材がモータの出力軸に対して直交方向でハウジングから離間する方向へ移動するときには、スライド部材と係合する第2の傾斜面を用いることで、スライド部材がモータの後方側へのスライドする動作を円滑に行うことができる。
請求項6の発明によれば、操作部材の押し込み操作を解除したときは、付勢手段の付勢力によって、操作部材を確実に駆動スイッチのオフ側へ復帰させることができる。
請求項7の発明によれば、ハウジングに、操作部材の回転支点部を設けることで、操作部材のハウジング側への押し込み操作を容易に行うことができる。
請求項8の発明によれば、押圧部材によって、ブレーキ部材をブレーキ板から離間する回転方向へ回転させることで、ブレーキ部材に加わる力のモーメントを抑えることができる。これに伴って、ブレーキ装置を解除するときの操作性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態のグラインダの側断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】同グラインダのパドルスイッチを構成するグリップ部材と、傾斜案内部材と、補強部材との分解斜視図である。
【図5】図1のC−C線断面図である。
【図6】同グラインダのスライド部材の本体部に取り付けられる第2転動体と、転動体取付部材との分解斜視図である。
【図7】図1のD−D線断面図である。
【図8】図1のE−E線断面図である。
【図9】図1のF−F線断面図である。
【図10】ブレーキ板からブレーキ部材が離間した状態を示したグラインダの側断面図である。
【図11】図10のA−A線断面図である。
【図12】図10のC−C線断面図である。
【図13】図10のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図1ないし図13を参照しつつ説明する。図1及び図2に示すようにグラインダ1は、ハウジング2と、パドルスイッチ30と、ブレーキ装置60と、スライド部材70とを備えている。なおグラインダ1は、本発明の電動工具の一例である。
【0019】
ハウジング2は、モータハウジング3と、ギヤハウジング4と、リアカバー5とによって構成されている。モータハウジング3内には、出力軸6を前向き(図1の左方向)にしたモータMが収容されている。モータMの出力軸6は、モータハウジング3内に軸受7、8を介して回転可能に支持されている。出力軸6の先端には第1ベベルギヤ9が外装されている。
【0020】
モータハウジング3内では、モータハウジング3の前後方向(図1の左右方向)に環状リブ10が突設されている。図3に示すように環状リブ10には、第1ないし第3シフトピン11〜13が、環状リブ10の軸心側へ突出するように固定されている。各シフトピン11〜13は、環状リブ10の周方向に等間隔をおいた位置で前記軸心側へそれぞれ突出する。
【0021】
ギヤハウジング4は、モータハウジング3の前方(図1及び図2の左方向)に組み付けられている。図1に示すようにギヤハウジング4内には、モータハウジング3から出力軸6が突入している。加えてギヤハウジング4内には、軸受14、15を介してスピンドル16が回転可能な状態で出力軸6と直交状に支持されている。スピンドル16の上方側には第2ベベルギヤ17が外装されている。第2ベベルギヤ17に第1ベベルギヤ9が噛合することにより、出力軸6の回転がスピンドル16に伝達される。スピンドル16の下端には円盤状の砥石18が取り付けられる。この砥石18によって被研磨材が研磨される。
【0022】
リアカバー5は、モータハウジング3の後方(図1及び図2の右方向)に組み付けられている。図1に示すようにリアカバー5内には、モータMをオン状態とオフ状態とに切り替え可能なスイッチSが収容されている。なお、スイッチSは本発明の駆動スイッチの一例である。
【0023】
パドルスイッチ30は、スイッチSをオンオフ操作するために用いられる。図1には、パドルスイッチ30がスイッチSをオフ操作した状態を示し、図10には、パドルスイッチ30がスイッチSをオン操作した状態を示した。図10の状態では、パドルスイッチ30の外面はモータハウジング3の下面やリアカバー5の下面と一続きになる。そしてパドルスイッチ30は、研磨作業時にモータハウジング3やリアカバー5と共に作業者の握り部を形成する。
【0024】
図1及び図4に示すようにパドルスイッチ30は、グリップ部材31と、傾斜案内部材32と、補強部材33と、ロック部材34とを備えている。グリップ部材31は、上面が開口した形状で、図1に示すようにモータハウジング3の下面とリアカバー5の下面とに跨って配設されている。また図4に示すように、グリップ部材31の前端部には係合突部35が形成されている。一方グリップ部材31の後端部には係合段部36(図1参照。)が形成されている。図1に示す前記オフ操作の状態では、係合突部35がモータハウジング3の係合凹部19(図1参照。)に係合すると共に、係合段部36がリアカバー5の係合凹部20(図1及び図10参照。)に係合する。なお、パドルスイッチ30は本発明の操作部材の一例である。
【0025】
図4に示すように傾斜案内部材32は、基端部37と、基端部37から上向きに突出する突出部38とを備えている。基端部37は、グリップ部材31の内底面に設けた嵌合穴39に嵌合可能とされている。突出部38の表面には、前方側へ向けて下り傾斜した第1の傾斜面40が形成されている。さらに第1の傾斜面40の裏側には、第1の傾斜面40に対して平行となるように傾斜した第2の傾斜面41が形成されている。
【0026】
補強部材33は、グリップ部材31の剛性を高めるために用いられる。この補強部材33は、金属製でグリップ部材31の上縁端面に沿った形状となるように成形されている。図4に示すように、補強部材33の前端側には係止爪部42が形成されている。この係止爪部42は、グリップ部材31の係止凹部43(図1参照。)に係止可能とされている。一方、補強部材33の後端側上面には透孔44が形成されている。この透孔44には、ねじ45が挿入可能とされている。加えて、補強部材33の前後方向(図1の左右方向)における中央付近で補強部材33の上面には、開口部46(図4参照。)が形成されている。突出部38を開口部46から上方側へ突出させた状態で、係止爪部42を係止凹部43に係止させると共に、透孔44に挿入されたねじ45をグリップ部材31のねじ孔47(図4参照。)に締め付ける。これにより、補強部材33はグリップ部材31に取り付けられる。その結果、傾斜案内部材32をグリップ部材31と補強部材33とで挟んで固定できる。以上のような構成によりパドルスイッチ30は、係合突部35が係合する係合凹部19を支点として、出力軸6に対して直交方向Yで回転移動操作が可能な状態でモータハウジング3に支持される。なお、モータハウジング3は本発明のハウジングの一例であり、係合凹部19は本発明の回転支点部の一例である。
【0027】
ロック部材34は、直交方向Yへのパドルスイッチ30の回転移動操作を阻止するために用いられる。図1に示すように、ロック部材34は、操作部48と係合部49とを備えている。操作部48と係合部49とは、グリップ部材31の内壁面に支持された回転軸50を挟んで連設されている。図1に示す前記オフ操作の状態では、ねじりコイルばね(図示せず。)によって、係合部49が、グリップ部材31の係合突部51に係合する状態に付勢されている。このとき、係合部49がリアカバー5に当接することで、直交方向Yへのパドルスイッチ30の回転移動操作が阻止される。
【0028】
図1に示すようにブレーキ装置60は、モータハウジング3内でモータMの前方側(図1の左側)に設けられている。このブレーキ装置60は、モータMの出力軸6の回転を制動することによりスピンドル16を停止させるために用いられる。図1、3、5に示すようにブレーキ装置60は、ブレーキ板61と、ブレーキ部材62と、コイルばねBとを有する。
【0029】
ブレーキ板61は、出力軸6に対して嵌着されて直交状に固定されている。またブレーキ部材62は、図1に示すように出力軸6の軸方向(図1の左右方向)でブレーキ板61の前方に配置されている。このブレーキ部材62は、環状リブ10を介してモータハウジング3内に保持されている。後述するようにブレーキ部材62は、回転に伴ってブレーキ板61に対して接近又は離間可能とされている。ブレーキ部材62には、ブレーキ板61と対向する後面にブレーキシュー64(図1参照。)が固定されている。
【0030】
さらに図1ないし図3、図5に示すようにブレーキ部材62は、3つのリード溝65と、第1転動体66とを備えている。各リード溝65は、出力軸6の回転方向とは逆向きになる傾斜を有するようにブレーキ部材62の外周に形成されている。図3に示すように各リード溝65には、各シフトピン11〜13がそれぞれ遊挿される。また図1及び図5に示すように第1転動体66は、ブレーキ部材62の外周からブレーキ部材62の径方向へ突出するピン67によって回転可能に軸支されている。
【0031】
コイルばねBは、モータハウジング3内に装入されて、常にブレーキ部材62をブレーキ板61と当接する方向に付勢する。このため、図1に示す前記オフ操作の状態では、コイルばねBの付勢力により、ブレーキシュー64がブレーキ板61に強く押し付けられる。
【0032】
スライド部材70は、モータハウジング3内をモータハウジング3の前後方向へスライド可能とされている。図1及び図2、図5に示すようにスライド部材70は、本体部71と、連結部72と、ブレーキ部材操作バー73とによって構成されている。図1及び図6に示すように本体部71は、モータハウジング3及びリアカバー5の各前後方向(図1の左右方向)に延びる金属板を用いて形成されている。図6に示すように本体部71には、コイルばねB1を収容する長穴74と、矩形穴75とが設けられている。長穴74は、前記前後方向へ長い形状となるように本体部71の延設方向の中央付近に形成されている。図1、図2及び図8に示すように長穴74には、モータハウジング3内の補強リブから下向きに延びる立壁部材76が挿入されている。コイルばねB1は、立壁部材76と長穴74の後端面との間に挟持されている。一方矩形穴75は、前記延設方向の後方側に形成されている。矩形穴75の内周面には、前記延設方向に対して直交方向で対面する回転軸受け孔77、77(図6参照。)が設けられている。
【0033】
さらに図6に示すように本体部71の下面には、転動体取付部材78が固定されている。この転動体取付部材78の上面には、第1ないし第3の固定突起79〜81が上向きに突設されている。図1に示すように第1の固定突起79は本体部71の下面側から矩形穴75に挿入されて、第1の固定突起79の先端部が本体部71の上面に係着される。第2の固定突起80及び第3の固定突起81は、本体部71の側面に凹設された嵌合溝82、83(図6参照。)にそれぞれ嵌められて、両固定突起80、81の先端部が本体部71の上面に係着される。加えて図6に示すように転動体取付部材78には、開口部84が設けられ、転動体取付部材78の上面には回転軸受け溝85、85が設けられている。各固定突起79〜81を前記上面に係着したときは、矩形穴75と開口部84とが一致すると共に、回転軸受け孔77、77と回転軸受け溝85、85とが対面する。この状態では第2転動体90の回転軸91が、回転軸受け孔77、77と回転軸受け溝85、85とで支持される。これにより、回転軸91で第2転動体90を回転可能に軸支できる。
【0034】
図1及び図2に示すように連結部72は、本体部71の先端に結合されている。この連結部72は、モータハウジング3の内底面に沿ってモータハウジング3の前後方向へスライド可能に設けられている。連結部72の先端には、ブレーキ部材操作バー73が結合されている。図2に示すようにブレーキ部材操作バー73の先端側には、ブレーキ部材操作バー73の前後方向の中心線に対して交差するようにカットした傾斜面86が形成されている。この傾斜面86は、図2及び図5に示すように第1転動体66を介してブレーキ部材62に当接可能とされている。
【0035】
次に本実施形態のグラインダ1において、パドルスイッチ30を直交方向Yでハウジング2側へ押し込んでスイッチSをオンする操作(以下、押し込み操作という。)に連動させて、ブレーキ装置60を解除する動作を説明する。図1に示すようにスイッチSのオフ操作の状態では、ブレーキ部材62は、ブレーキシュー64がブレーキ板61に当接する位置に配置されている。これに加えて前記オフ操作の状態では、モータハウジング3の前後方向におけるモータMの後方側(図1の右側)の位置P(図1参照。)において、リアカバー5の底面の開口部H(図1参照。)を通じてパドルスイッチ30の傾斜案内部材32がスライド部材70(本体部71)の矩形穴75に挿入されている。これにより、パドルスイッチ30の第1の傾斜面40とスライド部材70の第2転動体90とが当接している。この状態では、スライド部材70のコイルばねB1の付勢力によって、第2転動体90が第1の傾斜面40に押し付けられて、パドルスイッチ30は直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ付勢されている。さらにパドルスイッチ30は、スイッチSに内蔵したばね部材(図示せず。)によってもハウジング2から離間する方向へ付勢されている。加えて前記オフ操作の状態では、ロック部材34によってパドルスイッチ30の回転移動操作が阻止されている。なお、コイルばねB1は本発明の付勢手段の一例である。
【0036】
押し込み操作をする前には、パドルスイッチ30の回転移動操作を可能にするため、ロック部材34の係合部49とパドルスイッチ30の係合突部51との係合を解除する。ここでは、ロック部材34の操作部48をねじりコイルばねの付勢力に抗して回転軸50を中心として回転させることで前記係合を解除できる。これに続いて作業者がリアカバー5とパドルスイッチ30のグリップ部材31とを握って押し込み操作を行うと、スイッチSがグリップ部材31で押圧されてオンする。この押し込み操作を行うと、図1及び図10に示すように、第1の傾斜面40に対して第2転動体90が当接しながら転動する。このとき、第2転動体90を備えたスライド部材70は、コイルばねB1を圧縮してモータMの前方側へスライドする。このようにして、パドルスイッチ30の押し込み操作と、スライド部材70のスライド操作とを連動させることが可能になる。なお、第2転動体90は本発明の転動体の一例であり、位置Pは本発明の連動位置の一例である
【0037】
スライド部材70がモータMの前方側へスライドすると、図2及び図11に示すように、スライド部材70を構成するブレーキ部材操作バー73も、前記前方側へスライドする。その際には図2、図11及び図12に示すように、傾斜面86に対してブレーキ部材62の第1転動体66が当接しながら転動し、ブレーキ部材62を出力軸6の回転方向とは逆向きに回転させる。このとき図3及び図13に示すように、3つのリード溝65内を各シフトピン11〜13が相対的に摺動する。これに伴って、ブレーキ部材62は環状リブ10に保持されながらコイルばねB(図10参照。)の付勢力に抗してギヤハウジング4側へ前進する。
【0038】
上記のようにブレーキ部材62が出力軸6の回転方向とは逆向きに回転すると、ブレーキ部材62はブレーキ板61から離間する方向へ回転移動する。その結果図10に示すように、ブレーキ部材62に固定されたブレーキシュー64も、ブレーキ板61から離間してブレーキ板61に押し付けられることがない。したがって、スライド部材70がモータMの前方側へスライドすることで、ブレーキ装置60を解除することが可能になる。なお、ブレーキ部材操作バー73は本発明の押圧部材の一例であり、第1の傾斜面40、第2転動体90及びスライド部材70は、本発明の連動機構の一例である。
【0039】
一方、作業者がグリップ部材31から手を離すことで押し込み操作を解除すると、ブレーキ部材操作バー73による押圧が解除されたブレーキ部材62が、コイルばねBの付勢力によって、ブレーキ板61に対して接近するようにモータハウジング3側へ後退する。このとき、各シフトピン11〜13が摺動するリード溝65の案内により、ブレーキ部材62はスイッチSがオンする場合とは逆方向に回転しながら後退する。その結果、図1に示すようにブレーキシュー64がブレーキ板61に押し付けられる。これにより、ブレーキ板61には制動力が働いて、出力軸6の回転が直ちに停止する。
【0040】
これに加えて作業者がグリップ部材31から手を離すと、スライド部材70のコイルばねB1の付勢力とスイッチSのばね部材の付勢力とによって、パドルスイッチ30は、モータハウジング3の係合凹部19を支点として直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ回転移動する。これによりパドルスイッチSは、図1に示すスイッチSのオフ操作の状態に復帰する。このとき、図10及び図1に示すように、第2の傾斜面41に係合した本体部71の後端部87(図6及び図10参照。)が第2の傾斜面41に案内されることで、スライド部材70はモータMの後方側へスライドする。
【0041】
<本実施形態の効果>
本実施形態のグラインダ1では、連動機構(第1の傾斜面40、第2転動体90及びスライド部材70)を備えることで、パドルスイッチ30の押し込み操作に連動してブレーキ装置60を解除できる。したがって、グラインダ1にブレーキ装置60を設けることと、前記押し込み操作でスイッチSをオンしてグラインダ1を簡単に作動させることとを両立できる。
【0042】
また、モータハウジング3内でブレーキ装置60から離れたモータMの後方側の位置Pから、押し込み操作に連動して、ブレーキ装置60を解除するためのスライド部材70をモータMの前方側へスライドさせることができる。したがって、ブレーキ装置60から離れた位置Pでブレーキ装置60を解除する操作が可能になる。
【0043】
さらに、第1の傾斜面40に対して第2転動体90が転動することに伴ってスライド部材70がモータMの前方側へスライドするときは、第2転動体90を用いることで、第2転動体90と第1の傾斜面40との当接部分の摩擦抵抗が抑えられる。これにより、スライド部材70が前記前方側へスライドする動作が円滑になる。
【0044】
加えて、パドルスイッチ30が直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ回転移動するときには、スライド部材70を構成する本体部71の後端部87と係合する第2の傾斜面41を用いることで、スライド部材70がモータMの後方側へスライドする動作が円滑になる。
【0045】
さらに加えて、押し込み操作を解除してブレーキ装置60が出力軸6の回転を停止させた状態では、スライド部材70のコイルばねB1によって、パドルスイッチ30は直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ付勢されている。したがって、押し込み操作を解除したときは、コイルばねB1の付勢力によって、パドルスイッチ30を確実にスイッチSのオフ操作の状態に復帰させることができる。
【0046】
また、モータハウジング3に設けた係合凹部19を支点として、パドルスイッチ30は直交方向Yで回転移動操作が可能である。よって、モータハウジング3に係合凹部19を設けることで、押し込み操作を容易に行うことができる。
【0047】
さらに、スライド部材70のブレーキ部材操作バー73によって、ブレーキ部材62をブレーキ板61から離間する方向へ回転移動させることで、ブレーキ部材62に加わる力のモーメントを抑えることができる。これに伴って、ブレーキ装置60を解除するときの操作性が良好になる。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。例えば上述した実施形態とは異なり、スライド部材70に第1の傾斜面40を形成し、パドルスイッチ30に第2転動体90を回転可能に設けることで、スライド部材70がモータMの前方側へスライドするようにしてもよい。
【0049】
また上述した実施形態とは異なり、第2転動体90を用いずに、モータMの後方側の位置Pで、パドルスイッチ30とスライド部材70との双方に互いに対向する傾斜面を形成してもよい。これにより、押し込み操作時にスライド部材70の傾斜面がパドルスイッチ30の傾斜面に沿ってスライドすることで、スライド部材70がモータMの前方側へスライドするようにしてもよい。パドルスイッチ30とスライド部材70との双方に傾斜面を形成した場合には、スライド部材70の傾斜面がパドルスイッチ30の傾斜面に案内されることで、スライド部材70が前記前方側へスライドする動作が円滑になる。加えて、モータMの後方側の位置Pで、パドルスイッチ30又はスライド部材70のいずれか一方に傾斜面を形成して、押し込み操作時にこの傾斜面による案内でスライド部材70が前記前方側へスライドするようにしてもよい。パドルスイッチ30又はスライド部材70のいずれか一方に傾斜面を形成した場合にも、スライド部材70は傾斜面による案内で前記前方側へスライドする動作が円滑になる。
【0050】
また、上述した実施形態とは異なり、スイッチSに内蔵したばね部材のみでパドルスイッチ30を直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ付勢してもよい。さらに、上述した実施形態では、本発明をグラインダに適用する例を示したが、これに限定されず、本発明をサンダ等の電動工具に適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・グラインダ、3・・モータハウジング、19・・係合凹部、6・・モータの出力軸、30・・パドルスイッチ、40・・第1の傾斜面、41・・第2の傾斜面、60・・ブレーキ装置、61・・ブレーキ板、62・・ブレーキ部材、70・・スライド部材、71・・スライド部材の本体部、73・・ブレーキ部材操作バー、87・・本体部の後端部、90・・第2転動体、B1・・コイルばね、M・・モータ、P・・モータハウジングの前後方向におけるモータの後方側の位置、S・・スイッチ、Y・・モータの出力軸に対する直交方向。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハウジング内に収容されたモータの出力軸に対して直交方向へ移動操作可能で、モータの駆動スイッチをオンオフさせる操作部材を備えると共に、前記出力軸の回転を制動するブレーキ装置を設けた電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、電動工具のスイッチが切られた後にモータの出力軸を制動する装置(ブレーキ装置)を備えた電動工具が開示されている。特許文献1に記載のブレーキ装置では、前記スイッチが切られたときに、出力軸に固定された制動ディスクに対し、ばねの付勢力によって対応制動ディスクを押し付けている。これにより、制動ディスクが固定された出力軸を停止させることができる。
【0003】
一方、ハウジングの上面にあるスライダを手動操作して、電動工具のスイッチが入れられるときは、スライダに連結されたロッド状の連結部材が、出力軸の軸方向にスライドする。この連結部材は、前記軸方向にスライドすることにより、ブレーキ装置を解除する際に、前記軸方向において対応制動ディスクに結合された操作機構の上端部を、該軸方向に押す。これにより、操作機構を前記軸方向に垂直な方向に対して傾動させる。これに伴って、上記のばねの付勢力に抗し、対応制動ディスクが前記軸方向に移動して制動ディスクから解放される。その結果、出力軸を回転させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1938924号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、グラインダ等の電動工具においては、モータを収容したハウジングに、モータの出力軸に対して直交方向へ移動操作可能に支持されて、モータの駆動スイッチをオンオフさせる操作部材が設けられている。この電動工具では、作業者が手で操作部材を握った状態でハウジング側へ押し込むことでモータの駆動スイッチがオン状態になる。
【0006】
例えば、この電動工具を用いた高所作業時に作業者が誤って電動工具を落下させた場合でも、作業者の手が操作部材から離れると操作部材がハウジングから離間する方向に移動することで、モータの駆動スイッチがオフ状態になる。したがって、操作部材を備えた電動工具では、作業者が操作部材をハウジング側へ押し込むか、操作部材から手を離すだけでモータの駆動スイッチをオンオフできるため、電動工具の作動がし易いという利点を有する。そこで近年の電動工具においては、電動工具の作動がし易いことを維持しながら、上述したようなモータの出力軸の回転を制動するブレーキ装置をも備えることが望まれていた。
【0007】
この発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、電動工具の作動がし易い上に、モータの出力軸の回転を制動するブレーキ装置を備えた電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係る電動工具は、出力軸を前向きにしてモータを収容したハウジングに、前記モータの前記出力軸に対して直交方向へ移動操作可能に支持されて、前記モータの駆動スイッチをオンオフさせる操作部材を設けると共に、前記ハウジング内における前記モータの前方側に前記出力軸の回転を制動するブレーキ装置を設けた電動工具であって、前記操作部材を前記ハウジング側へ押し込んで前記駆動スイッチをオンさせる押し込み操作に連動して、前記ブレーキ装置を解除する連動機構を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記連動機構は、前記ハウジングに収容されて、前記操作部材の前記押し込み操作に連動して前記前方側へスライド動作可能なスライド部材を備え、前記スライド部材は、前記前方側へのスライド動作で前記ブレーキ装置を解除するようにして、前記操作部材の前記押し込み操作と前記スライド部材の前記スライド動作とを連動させる連動位置を、前記モータの後方側としたことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、前記連動位置における前記操作部材と前記スライド部材との少なくとも何れか一方に第1の傾斜面を設けて、前記押し込み操作時に前記第1の傾斜面による案内で、前記スライド部材が前記スライド動作するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3において、前記連動位置における前記操作部材に前記第1の傾斜面を設けて、前記連動位置における前記スライド部材に、前記押し込み操作時に前記第1の傾斜面を転動する転動体を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4において、前記連動位置における前記操作部材は、前記第1の傾斜面の裏側に形成された第2の傾斜面を備え、前記第2の傾斜面は、前記スライド部材と係合して、前記操作部材が前記直交方向で前記ハウジングから離間する方向へ移動することに応じて前記スライド部材を前記後方側へスライド動作させることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記出力軸の前記回転の制動時に、前記駆動スイッチのオフ側であって前記操作部材を前記直交方向で前記ハウジングから離間する方向へ付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかにおいて、前記ハウジングに、前記操作部材を前記直交方向へ回転可能に支持する回転支点部を設けて、前記操作部材は、前記回転支点部を中心として、前記直交方向へ移動操作可能にしたことを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項2ないし7のいずれかにおいて、前記ブレーキ装置は、前記ハウジング内に保持されて、回転に伴って前記出力軸に固定されるブレーキ板に接離動作可能なブレーキ部材と、前記スライド部材に設けられて、前記ブレーキ部材と当接して該ブレーキ部材を前記ブレーキ板から離間する回転方向へ回転させる押圧部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る電動工具によれば、連動機構を備えることで、操作部材の押し込み操作に連動してブレーキ装置を解除できる。したがって、電動工具にブレーキ装置を設けることと、電動工具を簡単に作動させることとを両立できる。
請求項2の発明によれば、モータの前方側に設けたブレーキ装置から離れた位置に当たる連動位置から、前記押し込み操作に連動して、ブレーキ装置を解除するためのスライド部材をスライド動作させることができる。したがって、ブレーキ装置から離れた位置でブレーキ装置を解除する操作が可能になる。
請求項3の発明によれば、スライド部材がスライド動作するときには、操作部材とスライド部材との少なくとも何れか一方の傾斜面を用いることで、前記スライド動作を円滑に行うことができる。
請求項4の発明によれば、転動体が第1の傾斜面を転動してスライド部材がスライド動作するときは、転動体を用いることで、転動体と第1の傾斜面との当接部分の摩擦抵抗が抑えられる。これにより、スライド部材のスライド動作が円滑になる。
請求項5の発明によれば、操作部材がモータの出力軸に対して直交方向でハウジングから離間する方向へ移動するときには、スライド部材と係合する第2の傾斜面を用いることで、スライド部材がモータの後方側へのスライドする動作を円滑に行うことができる。
請求項6の発明によれば、操作部材の押し込み操作を解除したときは、付勢手段の付勢力によって、操作部材を確実に駆動スイッチのオフ側へ復帰させることができる。
請求項7の発明によれば、ハウジングに、操作部材の回転支点部を設けることで、操作部材のハウジング側への押し込み操作を容易に行うことができる。
請求項8の発明によれば、押圧部材によって、ブレーキ部材をブレーキ板から離間する回転方向へ回転させることで、ブレーキ部材に加わる力のモーメントを抑えることができる。これに伴って、ブレーキ装置を解除するときの操作性が良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態のグラインダの側断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】同グラインダのパドルスイッチを構成するグリップ部材と、傾斜案内部材と、補強部材との分解斜視図である。
【図5】図1のC−C線断面図である。
【図6】同グラインダのスライド部材の本体部に取り付けられる第2転動体と、転動体取付部材との分解斜視図である。
【図7】図1のD−D線断面図である。
【図8】図1のE−E線断面図である。
【図9】図1のF−F線断面図である。
【図10】ブレーキ板からブレーキ部材が離間した状態を示したグラインダの側断面図である。
【図11】図10のA−A線断面図である。
【図12】図10のC−C線断面図である。
【図13】図10のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図1ないし図13を参照しつつ説明する。図1及び図2に示すようにグラインダ1は、ハウジング2と、パドルスイッチ30と、ブレーキ装置60と、スライド部材70とを備えている。なおグラインダ1は、本発明の電動工具の一例である。
【0019】
ハウジング2は、モータハウジング3と、ギヤハウジング4と、リアカバー5とによって構成されている。モータハウジング3内には、出力軸6を前向き(図1の左方向)にしたモータMが収容されている。モータMの出力軸6は、モータハウジング3内に軸受7、8を介して回転可能に支持されている。出力軸6の先端には第1ベベルギヤ9が外装されている。
【0020】
モータハウジング3内では、モータハウジング3の前後方向(図1の左右方向)に環状リブ10が突設されている。図3に示すように環状リブ10には、第1ないし第3シフトピン11〜13が、環状リブ10の軸心側へ突出するように固定されている。各シフトピン11〜13は、環状リブ10の周方向に等間隔をおいた位置で前記軸心側へそれぞれ突出する。
【0021】
ギヤハウジング4は、モータハウジング3の前方(図1及び図2の左方向)に組み付けられている。図1に示すようにギヤハウジング4内には、モータハウジング3から出力軸6が突入している。加えてギヤハウジング4内には、軸受14、15を介してスピンドル16が回転可能な状態で出力軸6と直交状に支持されている。スピンドル16の上方側には第2ベベルギヤ17が外装されている。第2ベベルギヤ17に第1ベベルギヤ9が噛合することにより、出力軸6の回転がスピンドル16に伝達される。スピンドル16の下端には円盤状の砥石18が取り付けられる。この砥石18によって被研磨材が研磨される。
【0022】
リアカバー5は、モータハウジング3の後方(図1及び図2の右方向)に組み付けられている。図1に示すようにリアカバー5内には、モータMをオン状態とオフ状態とに切り替え可能なスイッチSが収容されている。なお、スイッチSは本発明の駆動スイッチの一例である。
【0023】
パドルスイッチ30は、スイッチSをオンオフ操作するために用いられる。図1には、パドルスイッチ30がスイッチSをオフ操作した状態を示し、図10には、パドルスイッチ30がスイッチSをオン操作した状態を示した。図10の状態では、パドルスイッチ30の外面はモータハウジング3の下面やリアカバー5の下面と一続きになる。そしてパドルスイッチ30は、研磨作業時にモータハウジング3やリアカバー5と共に作業者の握り部を形成する。
【0024】
図1及び図4に示すようにパドルスイッチ30は、グリップ部材31と、傾斜案内部材32と、補強部材33と、ロック部材34とを備えている。グリップ部材31は、上面が開口した形状で、図1に示すようにモータハウジング3の下面とリアカバー5の下面とに跨って配設されている。また図4に示すように、グリップ部材31の前端部には係合突部35が形成されている。一方グリップ部材31の後端部には係合段部36(図1参照。)が形成されている。図1に示す前記オフ操作の状態では、係合突部35がモータハウジング3の係合凹部19(図1参照。)に係合すると共に、係合段部36がリアカバー5の係合凹部20(図1及び図10参照。)に係合する。なお、パドルスイッチ30は本発明の操作部材の一例である。
【0025】
図4に示すように傾斜案内部材32は、基端部37と、基端部37から上向きに突出する突出部38とを備えている。基端部37は、グリップ部材31の内底面に設けた嵌合穴39に嵌合可能とされている。突出部38の表面には、前方側へ向けて下り傾斜した第1の傾斜面40が形成されている。さらに第1の傾斜面40の裏側には、第1の傾斜面40に対して平行となるように傾斜した第2の傾斜面41が形成されている。
【0026】
補強部材33は、グリップ部材31の剛性を高めるために用いられる。この補強部材33は、金属製でグリップ部材31の上縁端面に沿った形状となるように成形されている。図4に示すように、補強部材33の前端側には係止爪部42が形成されている。この係止爪部42は、グリップ部材31の係止凹部43(図1参照。)に係止可能とされている。一方、補強部材33の後端側上面には透孔44が形成されている。この透孔44には、ねじ45が挿入可能とされている。加えて、補強部材33の前後方向(図1の左右方向)における中央付近で補強部材33の上面には、開口部46(図4参照。)が形成されている。突出部38を開口部46から上方側へ突出させた状態で、係止爪部42を係止凹部43に係止させると共に、透孔44に挿入されたねじ45をグリップ部材31のねじ孔47(図4参照。)に締め付ける。これにより、補強部材33はグリップ部材31に取り付けられる。その結果、傾斜案内部材32をグリップ部材31と補強部材33とで挟んで固定できる。以上のような構成によりパドルスイッチ30は、係合突部35が係合する係合凹部19を支点として、出力軸6に対して直交方向Yで回転移動操作が可能な状態でモータハウジング3に支持される。なお、モータハウジング3は本発明のハウジングの一例であり、係合凹部19は本発明の回転支点部の一例である。
【0027】
ロック部材34は、直交方向Yへのパドルスイッチ30の回転移動操作を阻止するために用いられる。図1に示すように、ロック部材34は、操作部48と係合部49とを備えている。操作部48と係合部49とは、グリップ部材31の内壁面に支持された回転軸50を挟んで連設されている。図1に示す前記オフ操作の状態では、ねじりコイルばね(図示せず。)によって、係合部49が、グリップ部材31の係合突部51に係合する状態に付勢されている。このとき、係合部49がリアカバー5に当接することで、直交方向Yへのパドルスイッチ30の回転移動操作が阻止される。
【0028】
図1に示すようにブレーキ装置60は、モータハウジング3内でモータMの前方側(図1の左側)に設けられている。このブレーキ装置60は、モータMの出力軸6の回転を制動することによりスピンドル16を停止させるために用いられる。図1、3、5に示すようにブレーキ装置60は、ブレーキ板61と、ブレーキ部材62と、コイルばねBとを有する。
【0029】
ブレーキ板61は、出力軸6に対して嵌着されて直交状に固定されている。またブレーキ部材62は、図1に示すように出力軸6の軸方向(図1の左右方向)でブレーキ板61の前方に配置されている。このブレーキ部材62は、環状リブ10を介してモータハウジング3内に保持されている。後述するようにブレーキ部材62は、回転に伴ってブレーキ板61に対して接近又は離間可能とされている。ブレーキ部材62には、ブレーキ板61と対向する後面にブレーキシュー64(図1参照。)が固定されている。
【0030】
さらに図1ないし図3、図5に示すようにブレーキ部材62は、3つのリード溝65と、第1転動体66とを備えている。各リード溝65は、出力軸6の回転方向とは逆向きになる傾斜を有するようにブレーキ部材62の外周に形成されている。図3に示すように各リード溝65には、各シフトピン11〜13がそれぞれ遊挿される。また図1及び図5に示すように第1転動体66は、ブレーキ部材62の外周からブレーキ部材62の径方向へ突出するピン67によって回転可能に軸支されている。
【0031】
コイルばねBは、モータハウジング3内に装入されて、常にブレーキ部材62をブレーキ板61と当接する方向に付勢する。このため、図1に示す前記オフ操作の状態では、コイルばねBの付勢力により、ブレーキシュー64がブレーキ板61に強く押し付けられる。
【0032】
スライド部材70は、モータハウジング3内をモータハウジング3の前後方向へスライド可能とされている。図1及び図2、図5に示すようにスライド部材70は、本体部71と、連結部72と、ブレーキ部材操作バー73とによって構成されている。図1及び図6に示すように本体部71は、モータハウジング3及びリアカバー5の各前後方向(図1の左右方向)に延びる金属板を用いて形成されている。図6に示すように本体部71には、コイルばねB1を収容する長穴74と、矩形穴75とが設けられている。長穴74は、前記前後方向へ長い形状となるように本体部71の延設方向の中央付近に形成されている。図1、図2及び図8に示すように長穴74には、モータハウジング3内の補強リブから下向きに延びる立壁部材76が挿入されている。コイルばねB1は、立壁部材76と長穴74の後端面との間に挟持されている。一方矩形穴75は、前記延設方向の後方側に形成されている。矩形穴75の内周面には、前記延設方向に対して直交方向で対面する回転軸受け孔77、77(図6参照。)が設けられている。
【0033】
さらに図6に示すように本体部71の下面には、転動体取付部材78が固定されている。この転動体取付部材78の上面には、第1ないし第3の固定突起79〜81が上向きに突設されている。図1に示すように第1の固定突起79は本体部71の下面側から矩形穴75に挿入されて、第1の固定突起79の先端部が本体部71の上面に係着される。第2の固定突起80及び第3の固定突起81は、本体部71の側面に凹設された嵌合溝82、83(図6参照。)にそれぞれ嵌められて、両固定突起80、81の先端部が本体部71の上面に係着される。加えて図6に示すように転動体取付部材78には、開口部84が設けられ、転動体取付部材78の上面には回転軸受け溝85、85が設けられている。各固定突起79〜81を前記上面に係着したときは、矩形穴75と開口部84とが一致すると共に、回転軸受け孔77、77と回転軸受け溝85、85とが対面する。この状態では第2転動体90の回転軸91が、回転軸受け孔77、77と回転軸受け溝85、85とで支持される。これにより、回転軸91で第2転動体90を回転可能に軸支できる。
【0034】
図1及び図2に示すように連結部72は、本体部71の先端に結合されている。この連結部72は、モータハウジング3の内底面に沿ってモータハウジング3の前後方向へスライド可能に設けられている。連結部72の先端には、ブレーキ部材操作バー73が結合されている。図2に示すようにブレーキ部材操作バー73の先端側には、ブレーキ部材操作バー73の前後方向の中心線に対して交差するようにカットした傾斜面86が形成されている。この傾斜面86は、図2及び図5に示すように第1転動体66を介してブレーキ部材62に当接可能とされている。
【0035】
次に本実施形態のグラインダ1において、パドルスイッチ30を直交方向Yでハウジング2側へ押し込んでスイッチSをオンする操作(以下、押し込み操作という。)に連動させて、ブレーキ装置60を解除する動作を説明する。図1に示すようにスイッチSのオフ操作の状態では、ブレーキ部材62は、ブレーキシュー64がブレーキ板61に当接する位置に配置されている。これに加えて前記オフ操作の状態では、モータハウジング3の前後方向におけるモータMの後方側(図1の右側)の位置P(図1参照。)において、リアカバー5の底面の開口部H(図1参照。)を通じてパドルスイッチ30の傾斜案内部材32がスライド部材70(本体部71)の矩形穴75に挿入されている。これにより、パドルスイッチ30の第1の傾斜面40とスライド部材70の第2転動体90とが当接している。この状態では、スライド部材70のコイルばねB1の付勢力によって、第2転動体90が第1の傾斜面40に押し付けられて、パドルスイッチ30は直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ付勢されている。さらにパドルスイッチ30は、スイッチSに内蔵したばね部材(図示せず。)によってもハウジング2から離間する方向へ付勢されている。加えて前記オフ操作の状態では、ロック部材34によってパドルスイッチ30の回転移動操作が阻止されている。なお、コイルばねB1は本発明の付勢手段の一例である。
【0036】
押し込み操作をする前には、パドルスイッチ30の回転移動操作を可能にするため、ロック部材34の係合部49とパドルスイッチ30の係合突部51との係合を解除する。ここでは、ロック部材34の操作部48をねじりコイルばねの付勢力に抗して回転軸50を中心として回転させることで前記係合を解除できる。これに続いて作業者がリアカバー5とパドルスイッチ30のグリップ部材31とを握って押し込み操作を行うと、スイッチSがグリップ部材31で押圧されてオンする。この押し込み操作を行うと、図1及び図10に示すように、第1の傾斜面40に対して第2転動体90が当接しながら転動する。このとき、第2転動体90を備えたスライド部材70は、コイルばねB1を圧縮してモータMの前方側へスライドする。このようにして、パドルスイッチ30の押し込み操作と、スライド部材70のスライド操作とを連動させることが可能になる。なお、第2転動体90は本発明の転動体の一例であり、位置Pは本発明の連動位置の一例である
【0037】
スライド部材70がモータMの前方側へスライドすると、図2及び図11に示すように、スライド部材70を構成するブレーキ部材操作バー73も、前記前方側へスライドする。その際には図2、図11及び図12に示すように、傾斜面86に対してブレーキ部材62の第1転動体66が当接しながら転動し、ブレーキ部材62を出力軸6の回転方向とは逆向きに回転させる。このとき図3及び図13に示すように、3つのリード溝65内を各シフトピン11〜13が相対的に摺動する。これに伴って、ブレーキ部材62は環状リブ10に保持されながらコイルばねB(図10参照。)の付勢力に抗してギヤハウジング4側へ前進する。
【0038】
上記のようにブレーキ部材62が出力軸6の回転方向とは逆向きに回転すると、ブレーキ部材62はブレーキ板61から離間する方向へ回転移動する。その結果図10に示すように、ブレーキ部材62に固定されたブレーキシュー64も、ブレーキ板61から離間してブレーキ板61に押し付けられることがない。したがって、スライド部材70がモータMの前方側へスライドすることで、ブレーキ装置60を解除することが可能になる。なお、ブレーキ部材操作バー73は本発明の押圧部材の一例であり、第1の傾斜面40、第2転動体90及びスライド部材70は、本発明の連動機構の一例である。
【0039】
一方、作業者がグリップ部材31から手を離すことで押し込み操作を解除すると、ブレーキ部材操作バー73による押圧が解除されたブレーキ部材62が、コイルばねBの付勢力によって、ブレーキ板61に対して接近するようにモータハウジング3側へ後退する。このとき、各シフトピン11〜13が摺動するリード溝65の案内により、ブレーキ部材62はスイッチSがオンする場合とは逆方向に回転しながら後退する。その結果、図1に示すようにブレーキシュー64がブレーキ板61に押し付けられる。これにより、ブレーキ板61には制動力が働いて、出力軸6の回転が直ちに停止する。
【0040】
これに加えて作業者がグリップ部材31から手を離すと、スライド部材70のコイルばねB1の付勢力とスイッチSのばね部材の付勢力とによって、パドルスイッチ30は、モータハウジング3の係合凹部19を支点として直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ回転移動する。これによりパドルスイッチSは、図1に示すスイッチSのオフ操作の状態に復帰する。このとき、図10及び図1に示すように、第2の傾斜面41に係合した本体部71の後端部87(図6及び図10参照。)が第2の傾斜面41に案内されることで、スライド部材70はモータMの後方側へスライドする。
【0041】
<本実施形態の効果>
本実施形態のグラインダ1では、連動機構(第1の傾斜面40、第2転動体90及びスライド部材70)を備えることで、パドルスイッチ30の押し込み操作に連動してブレーキ装置60を解除できる。したがって、グラインダ1にブレーキ装置60を設けることと、前記押し込み操作でスイッチSをオンしてグラインダ1を簡単に作動させることとを両立できる。
【0042】
また、モータハウジング3内でブレーキ装置60から離れたモータMの後方側の位置Pから、押し込み操作に連動して、ブレーキ装置60を解除するためのスライド部材70をモータMの前方側へスライドさせることができる。したがって、ブレーキ装置60から離れた位置Pでブレーキ装置60を解除する操作が可能になる。
【0043】
さらに、第1の傾斜面40に対して第2転動体90が転動することに伴ってスライド部材70がモータMの前方側へスライドするときは、第2転動体90を用いることで、第2転動体90と第1の傾斜面40との当接部分の摩擦抵抗が抑えられる。これにより、スライド部材70が前記前方側へスライドする動作が円滑になる。
【0044】
加えて、パドルスイッチ30が直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ回転移動するときには、スライド部材70を構成する本体部71の後端部87と係合する第2の傾斜面41を用いることで、スライド部材70がモータMの後方側へスライドする動作が円滑になる。
【0045】
さらに加えて、押し込み操作を解除してブレーキ装置60が出力軸6の回転を停止させた状態では、スライド部材70のコイルばねB1によって、パドルスイッチ30は直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ付勢されている。したがって、押し込み操作を解除したときは、コイルばねB1の付勢力によって、パドルスイッチ30を確実にスイッチSのオフ操作の状態に復帰させることができる。
【0046】
また、モータハウジング3に設けた係合凹部19を支点として、パドルスイッチ30は直交方向Yで回転移動操作が可能である。よって、モータハウジング3に係合凹部19を設けることで、押し込み操作を容易に行うことができる。
【0047】
さらに、スライド部材70のブレーキ部材操作バー73によって、ブレーキ部材62をブレーキ板61から離間する方向へ回転移動させることで、ブレーキ部材62に加わる力のモーメントを抑えることができる。これに伴って、ブレーキ装置60を解除するときの操作性が良好になる。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施できる。例えば上述した実施形態とは異なり、スライド部材70に第1の傾斜面40を形成し、パドルスイッチ30に第2転動体90を回転可能に設けることで、スライド部材70がモータMの前方側へスライドするようにしてもよい。
【0049】
また上述した実施形態とは異なり、第2転動体90を用いずに、モータMの後方側の位置Pで、パドルスイッチ30とスライド部材70との双方に互いに対向する傾斜面を形成してもよい。これにより、押し込み操作時にスライド部材70の傾斜面がパドルスイッチ30の傾斜面に沿ってスライドすることで、スライド部材70がモータMの前方側へスライドするようにしてもよい。パドルスイッチ30とスライド部材70との双方に傾斜面を形成した場合には、スライド部材70の傾斜面がパドルスイッチ30の傾斜面に案内されることで、スライド部材70が前記前方側へスライドする動作が円滑になる。加えて、モータMの後方側の位置Pで、パドルスイッチ30又はスライド部材70のいずれか一方に傾斜面を形成して、押し込み操作時にこの傾斜面による案内でスライド部材70が前記前方側へスライドするようにしてもよい。パドルスイッチ30又はスライド部材70のいずれか一方に傾斜面を形成した場合にも、スライド部材70は傾斜面による案内で前記前方側へスライドする動作が円滑になる。
【0050】
また、上述した実施形態とは異なり、スイッチSに内蔵したばね部材のみでパドルスイッチ30を直交方向Yでハウジング2から離間する方向へ付勢してもよい。さらに、上述した実施形態では、本発明をグラインダに適用する例を示したが、これに限定されず、本発明をサンダ等の電動工具に適用してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・グラインダ、3・・モータハウジング、19・・係合凹部、6・・モータの出力軸、30・・パドルスイッチ、40・・第1の傾斜面、41・・第2の傾斜面、60・・ブレーキ装置、61・・ブレーキ板、62・・ブレーキ部材、70・・スライド部材、71・・スライド部材の本体部、73・・ブレーキ部材操作バー、87・・本体部の後端部、90・・第2転動体、B1・・コイルばね、M・・モータ、P・・モータハウジングの前後方向におけるモータの後方側の位置、S・・スイッチ、Y・・モータの出力軸に対する直交方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸を前向きにしてモータを収容したハウジングに、前記モータの前記出力軸に対して直交方向へ移動操作可能に支持されて、前記モータの駆動スイッチをオンオフさせる操作部材を設けると共に、前記ハウジング内における前記モータの前方側に前記出力軸の回転を制動するブレーキ装置を設けた電動工具であって、
前記操作部材を前記ハウジング側へ押し込んで前記駆動スイッチをオンさせる押し込み操作に連動して、前記ブレーキ装置を解除する連動機構を備えることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記連動機構は、前記ハウジングに収容されて、前記操作部材の前記押し込み操作に連動して前記前方側へスライド動作可能なスライド部材を備え、前記スライド部材は、前記前方側へのスライド動作で前記ブレーキ装置を解除するようにして、
前記操作部材の前記押し込み操作と前記スライド部材の前記スライド動作とを連動させる連動位置を、前記モータの後方側としたことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記連動位置における前記操作部材と前記スライド部材との少なくとも何れか一方に第1の傾斜面を設けて、前記押し込み操作時に前記第1の傾斜面による案内で、前記スライド部材が前記スライド動作するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記連動位置における前記操作部材に前記第1の傾斜面を設けて、前記連動位置における前記スライド部材に、前記押し込み操作時に前記第1の傾斜面を転動する転動体を設けたことを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記連動位置における前記操作部材は、前記第1の傾斜面の裏側に形成された第2の傾斜面を備え、前記第2の傾斜面は、前記スライド部材と係合して、前記操作部材が前記直交方向で前記ハウジングから離間する方向へ移動することに応じて前記スライド部材を前記後方側へスライド動作させることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記出力軸の前記回転の制動時に、前記駆動スイッチのオフ側であって前記操作部材を前記直交方向で前記ハウジングから離間する方向へ付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電動工具。
【請求項7】
前記ハウジングに、前記操作部材を前記直交方向へ回転可能に支持する回転支点部を設けて、前記操作部材は、前記回転支点部を中心として、前記直交方向へ移動操作可能にしたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電動工具。
【請求項8】
前記ブレーキ装置は、前記ハウジング内に保持されて、回転に伴って前記出力軸に固定されるブレーキ板に接離動作可能なブレーキ部材と、前記スライド部材に設けられて、前記ブレーキ部材と当接して該ブレーキ部材を前記ブレーキ板から離間する回転方向へ回転させる押圧部材と、を備えることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載の電動工具。
【請求項1】
出力軸を前向きにしてモータを収容したハウジングに、前記モータの前記出力軸に対して直交方向へ移動操作可能に支持されて、前記モータの駆動スイッチをオンオフさせる操作部材を設けると共に、前記ハウジング内における前記モータの前方側に前記出力軸の回転を制動するブレーキ装置を設けた電動工具であって、
前記操作部材を前記ハウジング側へ押し込んで前記駆動スイッチをオンさせる押し込み操作に連動して、前記ブレーキ装置を解除する連動機構を備えることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記連動機構は、前記ハウジングに収容されて、前記操作部材の前記押し込み操作に連動して前記前方側へスライド動作可能なスライド部材を備え、前記スライド部材は、前記前方側へのスライド動作で前記ブレーキ装置を解除するようにして、
前記操作部材の前記押し込み操作と前記スライド部材の前記スライド動作とを連動させる連動位置を、前記モータの後方側としたことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記連動位置における前記操作部材と前記スライド部材との少なくとも何れか一方に第1の傾斜面を設けて、前記押し込み操作時に前記第1の傾斜面による案内で、前記スライド部材が前記スライド動作するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記連動位置における前記操作部材に前記第1の傾斜面を設けて、前記連動位置における前記スライド部材に、前記押し込み操作時に前記第1の傾斜面を転動する転動体を設けたことを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記連動位置における前記操作部材は、前記第1の傾斜面の裏側に形成された第2の傾斜面を備え、前記第2の傾斜面は、前記スライド部材と係合して、前記操作部材が前記直交方向で前記ハウジングから離間する方向へ移動することに応じて前記スライド部材を前記後方側へスライド動作させることを特徴とする請求項4に記載の電動工具。
【請求項6】
前記出力軸の前記回転の制動時に、前記駆動スイッチのオフ側であって前記操作部材を前記直交方向で前記ハウジングから離間する方向へ付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電動工具。
【請求項7】
前記ハウジングに、前記操作部材を前記直交方向へ回転可能に支持する回転支点部を設けて、前記操作部材は、前記回転支点部を中心として、前記直交方向へ移動操作可能にしたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電動工具。
【請求項8】
前記ブレーキ装置は、前記ハウジング内に保持されて、回転に伴って前記出力軸に固定されるブレーキ板に接離動作可能なブレーキ部材と、前記スライド部材に設けられて、前記ブレーキ部材と当接して該ブレーキ部材を前記ブレーキ板から離間する回転方向へ回転させる押圧部材と、を備えることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載の電動工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−22702(P2013−22702A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161126(P2011−161126)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
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