説明

電動式放散装置

【課題】電動ファンの不作動時においては自然放散を抑制できる電動式放散装置の提供。
【解決手段】電動式放散装置は、芳香剤6を入れた容器本体3と、この開口部を閉蓋して気体放出孔5を有する蓋体4と、蓋体4の表面側に設けられたモータ17と、蓋体4の裏面側に設けられてモータ17により裏面に対向する羽根2bが回転駆動されるファン2とを備える。ファン2の環状ボス部2aは回転軸8に嵌ってそのスラスト方向に移動可能であって、回転軸8の下端に捩じ込んだストッパー板10で抜け止めされており、このストッパー板10と環状ボス部2aとの間にはゴム等の環状弾性材11が介在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動により香気等を放散する電動式放散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平7−33180に開示の芳香器は、芳香剤を入れた容器本体とこの上に設置した蓋体とからなり、蓋体ケース内に電動ファンが設けられており、蓋体ケース底面に開口した香気吸収口から電動ファンで取り込んだ芳気が空気流通路を介して蓋体ケース側面の香気吹出口から吹き出されるようになっている。
【特許文献1】特開平7−33180(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この芳香器の電動ファンの不作動時においては、容器本体の内空間は香気吸込み口,電動ファンの羽根同士の隙間,空気流通路及び香気吹出口を介して外気と繋がっているため、容器本体内の芳香剤が自然放散し続けるので、芳香剤の無駄な消費を招く。
【0004】
そこで上記問題点に鑑み、本発明の課題は、電動ファンの不作動時においては自然放散を抑制できる電動式放散装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内容物を入れた容器本体と、この容器本体の開口部を閉蓋して気体放出孔を有する蓋体とを備えた電動式放散装置において、蓋体に設けられたモータと、蓋体の裏面側に設けられて電動モータにより裏面に対向する羽根が回転駆動されるファンと、ファンの起動加速時に羽根を気体放出孔から離反させると共に、ファンの減速停止時に羽根を裏面に重ねる放出孔開閉手段とを有することを特徴とする。
【0006】
斯かる構成においては、モータが起動すると、ファンが回転しながら放出孔開閉手段により羽根が気体放出孔から離反するので、内容物の芳香等が気体放出孔を介して外界へ吹き出る。モータ起動が停止すると、放出孔開閉手段により羽根が蓋体の裏面に重なって気体放出孔を塞ぐので、気体放出孔からの芳香等の自然放散も停止する。このため、電動ファンの不作動時においては自然放散を抑制でき、芳香剤等の無駄な消費を無くすことができる。
【0007】
放出孔開閉手段としては、例えば、回転軸に対してスラスト方向に移動可能なファンを気体放出孔寄りに弾力的に付勢する付勢手段を有する構成を採用できる。モータが起動加速すると、羽根に受ける空圧によりファンが付勢手段の付勢力に抗して蓋体の裏面から避退し、羽根が気体放出孔を開放し、モータ起動が減速停止すると、次第に減退する空圧によって付勢手段の付勢力で、羽根が蓋体の裏面に重なり気体放出孔を塞ぐ。付勢手段としてはバネやゴム等を用いるだけで済むので、簡易構成で低コスト化を図ることができる。
【0008】
気体放出孔の密閉を確実とするためには、ファンの停止時に羽根を気体放出孔に重ねる羽根位置決め手段を有することが望ましい。この羽根位置決め手段としては、ファンに設けられた第1の磁性体と蓋体に設けられて第1の磁性体が磁気吸着する第2の磁性体とを有する構成を採用できる。ファンの回転停止時には、蓋体の第2の磁性体にファン側の第1の磁性体が磁気吸着するため、羽根で気体放出孔を確実に密閉することができる。なお、第1の磁性体は複数の羽根の先端を巡るリングに設けても好い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電動ファンの不作動時においては自然放散を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1(a)は本発明の一実施例に係る電動式放散装置のファン停止時の状態を示す断面図、図1(b)は同電動式放散装置のファン回転時の状態を示す断面図、図2は同電動式放散装置の蓋体を示す断面図、図3(a)は同蓋体の斜視図、図3(b)同蓋体の底面図、図4は同電動式放散装置のファンを示す斜視図である。
【0011】
本例の電動式放散装置は、芳香剤6を入れた容器本体3と、この容器本体3の上部開口に冠した蓋体4とを有する。
【0012】
蓋体4は図3に示す如くの5つの気体放出孔5を等角度毎に有し、蓋体5の表面側には図2に示す如く電池ボックス7が設けられている。この電池ボックス7の上には、スイッチ15が設けられており、電池ボックス7内には、モータ17とこれに給電する電池16とが収納されている。このモータ17の出力軸17aに連結した回転軸8は蓋体4の中央孔4aを介して下方へ突出し、この回転軸8にファン2が取着されている。
【0013】
ファン2は中央部の環状ボス部2aとこれから放射方向に延びた5枚の羽根2bとから成り、蓋体4の裏面に対向している。環状ボス部2aは回転軸8に嵌ってそのスラスト方向に移動可能であって、回転軸8の下端に捩じ込んだストッパー板10で抜け止めされており、このストッパー板10と環状ボス部2aとの間にはゴム等の環状弾性材11が介在している。
【0014】
ファン2は樹脂製であるが、その一つの羽根2bはその先端側に第1の磁性体13を有する。これに対し、蓋体4の裏面側のうち、一つの気体放出孔5の中心線上には第1の磁性体13と磁気吸着する第2の磁性体14が設けられている。
【0015】
スイッチ15をオンにし、モータ17が起動して羽根2bの回転が加速すると、図1(b)及び図6(b)に示す如く、回転する羽根2bに受ける空圧によりファン2が環状弾性材11の付勢力に抗して蓋体4の裏面から下方へ避退し、羽根2bが気体放出孔5を開放するので、芳香が矢印の如く外界へ吹き出る。他方、スイッチ15をオフし、羽根2bの回転が減速すると、回転する羽根2bに受ける空圧が低下し、図1(a)及び図6(a)に示す如く、ファン2が環状弾性材11の付勢で蓋体4の裏面に接近して重なり、第1の磁性体13が第2の磁性体14に磁気吸着し、5枚の羽根2bが5つの気体放出孔5を塞ぐので、芳香の自然放散も停止する。このため、電動ファンの不作動時においては自然放散を抑制でき、芳香剤等の無駄な消費を無くすことができる。
【0016】
ここで、環状弾性材11は放出孔開閉手段を構成しており、第1の磁性体13と第2の磁性体14とは羽根位置決め手段を構成している。
【0017】
なお、図5に示す如く、第1の磁性体13は5枚の羽根2bの先端を巡るリング18に設けても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の一実施例に係る電動式放散装置のファン停止時の状態を示す断面図、(b)は同電動式放散装置のファン回転時の状態を示す断面図である。
【図2】同電動式放散装置の蓋体を示す断面図である。
【図3】(a)は同蓋体の斜視図、(b)は同蓋体の底面図である。
【図4】同電動式放散装置のファンを示す斜視図である。
【図5】同電動式放散装置の別のファンを示す斜視図である。
【図6】(a)は同電動式放散装置のファン停止時における蓋体の状態を示す断面図、(b)は同電動式放散装置のファン回転時における蓋体状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
2…ファン
2a…環状ボス部
2b…羽根
3…容器本体
4…蓋体
4a…中央孔
5…気体放出孔
6…芳香剤
7…電池ボックス
8…回転軸
10…ストッパー板
11…環状弾性材
13…第1の磁性体
14…第2の磁性体
15…スイッチ
16…電池
17…モータ
17a…出力軸
18…リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を入れた容器本体と、この容器本体の開口部を閉蓋して気体放出孔を有する蓋体とを備えた電動式放散装置において、前記蓋体に設けられたモータと、前記蓋体の裏面側に設けられて前記モータにより前記裏面に対向する羽根が回転駆動されるファンと、前記ファンの起動加速時に前記羽根を前記気体放出孔から離反させると共に、前記ファンの減速停止時に前記羽根を前記裏面に重ねる放出孔開閉手段とを有することを特徴とする電動式放散装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動式放散装置において、前記放出孔開閉手段は、回転軸に対してスラスト方向に移動可能な前記ファンを前記気体放出孔寄りに弾力的に付勢する付勢手段を有することを特徴とする電動式放散装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電動式放散装置において、前記ファンの停止時に前記羽根を前記気体放出孔に重ねる羽根位置決め手段を有することを特徴とする電動式放散装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電動式放散装置において、前記羽根位置決め手段は、前記ファンに設けられた第1の磁性体と、前記蓋体に設けられて前記第1の磁性体が磁気吸着する第2の磁性体とを有することを特徴とする電動式放散装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電動式放散装置において、前記第1の磁性体は、複数の前記羽根の先端を巡るリングに設けられて成ることを特徴とする電動式放散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−43563(P2008−43563A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222610(P2006−222610)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000177151)三洋精密株式会社 (143)
【Fターム(参考)】