説明

電動機のステータ

【課題】接続に要する部品点数、及び絶縁樹脂量を削減可能な電動機の突極集中巻きステータを提供する。
【解決手段】突極集中巻きステータ10の複数のコイル13は、ステータ10の軸方向一端側の径方向外側寄りに位置する第1巻き端41と第2巻き端42とを有し、第1巻き端41と第2巻き端42の少なくとも一方が異相となるコイルを周方向に跨いで延びており、周方向に隣り合う同相のコイル13の一方のコイル13の第1巻き端41の端部41aと、他方のコイル13の第2巻き端42の端部42aとが直接接合されて接合部14aをなす。接合部14aは、絶縁材により形成されたキャップ50で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等に搭載される電動機の突極集中巻きステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図9に示すように、接続端子144がリードフレーム142に固定された複数相の環状のバスリング141U,141V,141Wを集配電部材収容部132b内に装着し、各リードフレーム142とステータコイル134とを接続端子144を介して接続することにより、所望の出力を確保しつつ、回転電機を小型化する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この特許文献1に記載の回転電機のステータ101では、集配電部材収容部132b内に装着した互いに固定部材145で固定された集配電部材113のバスリング141U,141V,141Wとステータコイル134とを接続端子144を介して接続した後、集配電部材113(リードフレーム142、固定部材145、接続端子144)が収容された集配電部材収容部132b内に、絶縁性の樹脂材を充填して組付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4465395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の回転電機のステータ101では、接続のためにリードフレーム142、固定部材145、接続端子144などの多くの集配電部材113が必要であった。また、円環状の集配電部材収容部132b内に絶縁性樹脂材を充填するため、絶縁性樹脂量が多く、製作に多くの工数と費用を要する問題があり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、接続に要する部品点数、及び絶縁樹脂量を削減可能な電動機の突極集中巻きステータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
周方向に所定の間隔で配置され放射状に突出する複数のティース(例えば、後述の実施形態におけるティース11b)を有する円環状のステータコア(例えば、後述の実施形態におけるステータコア11)と、
周方向に隣り合う前記ティースにおいて互いに異相となるように前記ティースに巻回される複数のコイル(例えば、後述の実施形態におけるコイル13)と、を備える電動機の突極集中巻きステータ(例えば、後述の実施形態における突極集中巻きステータ10)であって、
前記複数のコイルは、前記ステータの軸方向一端側に位置する第1巻き端(例えば、後述の実施形態における第1巻き端41)と第2巻き端(例えば、後述の実施形態における第2巻き端42)とを有し、
前記第1巻き端と前記第2巻き端の少なくとも一方が異相となるコイルを周方向に跨いで延びており、
周方向に隣り合う同相のコイルの一方の前記第1巻き端の端部(例えば、後述の実施形態における端部41a)と、他方の前記第2巻き端の端部(例えば、後述の実施形態における端部42a)とが直接接合されて接合部(例えば、後述の実施形態における接合部14a)をなし、
前記接合部は、絶縁材により形成されたキャップ(例えば、後述の実施形態におけるキャップ50)で覆われていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成に加えて、
周方向に隣り合う同相のコイルの一方の前記第1巻き端の端部と、他方の前記第2巻き端の端部とが略平行に延びており、
前記キャップは筒状であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の構成に加えて、
前記ティースと前記コイルとの間に装着されるインシュレータ(例えば、後述の実施形態におけるインシュレータ12)を備え、
前記キャップが前記インシュレータに固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3の構成に加えて、
前記インシュレータに切欠き(例えば、後述の実施形態における溝28、29)が形成され、
前記キャップが前記インシュレータの前記切欠きに嵌め込まれていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4の構成に加えて、
前記キャップは前記切欠きの幅よりも大きな幅をもつフランジ部(例えば、後述の実施形態におけるフランジ部53)を有し、
前記フランジ部が前記切欠きに係合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、接合部が第1及び第2巻き端の端部を直接接合することにより形成されるので、配電部材を用いる必要がなく部品点数を削減することができ、製造コストを低減することができる。また、接合部が絶縁材により形成されたキャップで覆われていることにより、接合部を周囲と絶縁することができ、かつ接合部の接合を保護することができる。さらに、絶縁材を硬化させて成形する工程を不要とすることが出来、生産性を高めることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、接合部にキャップを容易に装着することができる。また、接合部の大きさをコンパクトにすることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、キャップがインシュレータに固定されていることにより、接合部の絶縁性を向上しつつ、接合部の振動または振動による巻線の浮き上がりを抑制することができ、巻線の損傷を抑制することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、キャップがインシュレータの切欠きに嵌め込まれることにより固定されるため、接合部の絶縁性を向上しつつ、接合部の振動または振動による巻線の浮き上がりを抑制することができ、巻線の損傷を抑制することができる。
また、他の部品を用いることなくキャップをインシュレータに固定できるため、コストの増加を抑制することができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、フランジ部が切欠きに係合することにより、キャップの抜けを抑制することができ、より確実に接合部を絶縁することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の電動機の縦断面図である。
【図2】図1におけるステータの正面図である。
【図3】ステータコアの正面図である。
【図4】インシュレータの斜視図である。
【図5】(a)はインシュレータに巻線が巻回された第1のコイルの斜視図であり、(b)はインシュレータに巻線が巻回された第2のコイルの斜視図である。
【図6】接合部を示す拡大斜視図である。
【図7】キャップの斜視図である。
【図8】変形例に係るキャップの斜視図である。
【図9】従来の特許文献1に記載の突極集中巻きステータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【0019】
図1は本発明の電動機の縦断面図である。図1に示すように、本実施形態の電動機は、3相8極対の外転型電動機1であり、軸心Oを中心として、モータハウジング2にボルト3により固定されたステータ10と、ステータ10の径方向外側に僅かな隙間を介して配置される円環状のロータ6とを備える。
【0020】
ロータ6は、電磁鋼板が積層されてなるロータコア6aに磁石6bが埋め込まれてなり、略円環形状を有する。ロータ6は、縁付円盤状のアーム部材5の縁部内周面5aに固定されており、モータハウジング2に内嵌する玉軸受7、7によって回転自在に支持された回転軸8に一体回転可能に固定されている。ロータ6は、ステータ10に発生させる回転磁界によって回転駆動される。回転軸8とステータ10の間には、回転軸8の磁極位置を検出するレゾルバ9が配設されている。
【0021】
ステータ10は、図2および図3に示すように、ステータコア11と、複数(本実施形態では24個)のコイル13(13u、13v、13w)とを備える。ステータコア11は、複数の電磁鋼板がステータ10の軸方向、即ち、図3において紙面と垂直方向に積層されて構成され、円環部11aから半径方向外側に向かって放射状に突出形成され、周方向に並ぶ複数(24個)のティース11bを有し、全体として略円環形状を有する。ステータコア11の円環部11aの内周側には、ボルト穴17をそれぞれ有する複数(本実施形態では6個)の凸部11cが形成されている。このボルト穴17に挿通されるボルト3によりステータ10がモータハウジング2に固定される(図1参照)。
【0022】
コイル13は、所定本数の導線からなる巻線(本実施形態では、2本の導線からなる束線(パラ巻線)であり、以下束線と呼ぶ。)14を、絶縁特性を有する合成樹脂などで形成されたインシュレータ12を介してステータコア11のそれぞれのティース11bの周囲に突極集中巻きによって巻回することで形成される。
【0023】
コイル13は、それぞれ8個ずつのU相、V相及びW相の3相のコイルからなり、U相コイル13u、V相コイル13v、及びW相コイル13wが、時計方向にこの順で配置されてティース11bに巻回されている。即ち、他相のコイル13(例えば、V相コイル13v、及びW相コイル13w)を挟んで配置される同相のコイル13(例えば、U相コイル13u)同士は、他相のコイル13を跨いで配索される渡り部14Tにより接続されている。
【0024】
図4に示すように、インシュレータ12は、束線14が巻回される胴部24と、該胴部24の径方向両端部に設けられた外周側鍔部25及び内周側鍔部26と、を有する。胴部24は、ステータ10の軸方向に向いて対向する壁20,21及びステータ10の周方向に向いて対向する壁22、23によって、径方向に貫通する角穴24aを有して断面矩形の筒状に形成される。角穴24aの大きさは、ステータコア11のティース11bより僅かに大きく、ティース11bが挿通可能である。壁22、23には、束線14を巻回する際、束線14を位置決めするための複数の凹溝27が、角穴24aの軸芯に対して直交する方向に設けられている。
【0025】
外周側鍔部25の壁20側の端部には、周方向に離間して一対の略U字型の溝28、29が形成されている。また、内周側鍔部26の軸方向一端側部分(壁20側)は、軸方向から見て、周方向中間部から周方向両端面に向かって徐々に肉厚に形成されている。内周側鍔部26の周方向両端面と径方向外側面との隅部には、軸方向一端側に突出する略三角柱状の内側巻線支持部31、32が設けられている。また、内周側鍔部26の軸方向一端側部分には、周方向中間部から周方向両端面に向かうにつれて径方向内側に傾斜する傾斜面33、34が形成されており、この傾斜面33、34は、内側巻線支持部31、32の傾斜面31a、32aと対向して溝部35、36を形成する。
【0026】
さらに、内周側鍔部26の軸方向一端側部分と、壁20との境界部分には、周方向他端面側(図4において右側端面)から周方向一端面側(図4において左側端面)へと壁20に沿って最初に巻回される束線14を案内する、壁20に対して傾斜した案内部37が形成されており、また、案内部37には、溝部35から胴部24へ向かう束線14を軸方向に案内する段部37aが形成される。
【0027】
コイル13は、インシュレータ12の胴部24の周囲に束線14が複数回に亘って巻回されて形成される。なお、本実施形態ではインシュレータ12への巻き方が異なる2種類のコイル13を有する。コイル13は、図5(a)及び(b)に示すように、インシュレータ12の胴部24に巻回されたコイル13の第1巻き端41が、胴部24の径方向外側寄りに位置し、第2巻き端42が胴部24の径方向内側から異相となるコイル13を跨いで径方向外側に延びる。第1のコイル13は、図5(a)に示すように、第1巻き端41が、図中左側の溝29に挿入され、その端部41aが外周側鍔部25から径方向外側に僅かに突出するようにその長さが設定される。また、第1のコイル13は、第2巻き端42が、傾斜面33に軸方向に並ぶようにして溝部35を斜め右下方に通過し内側巻線支持部31に係止される。この内側巻線支持部31から先は、図2に示すように径方向外側に延びてその端部42aが周方向に隣り合う同相のコイル13の第1巻き端41の端部41aに溝29の径方向外側において接合されるため、異相となるコイル13を跨ぐ渡り部14T分に加えて端部42aが外周側鍔部25から径方向外側に僅かに突出するようにその長さが設定される。
【0028】
また、図5(b)に示すように、第2のコイル13は、第1巻き端41が、図中右側の溝28に挿入され、その端部41aが外周側鍔部25から径方向外側に僅かに突出するようにその長さが設定される。また、第2のコイル13は、第2巻き端42が、内側巻線支持部32に巻き掛けられて傾斜面34に軸方向に並ぶようにして溝部36を斜め左下方に延びる。この内側巻線支持部32から先は、図2に示すように径方向外側に延びてその端部42aが周方向に隣り合う同相のコイル13の第1巻き端41の端部41aに溝28の径方向外側において接合されるため、異相となるコイル13を跨ぐ渡り部14T分に加えて端部42aが外周側鍔部25から径方向外側に僅かに突出するようにその長さが設定される。
【0029】
図2に戻り、各相8個ずつのコイル13(U相、V相及びW相コイル13u、13v、13w)は、それぞれステータコア11の半周分に相当する4個ずつ、2つのコイル群18(18u、18v、18w)に分けられている。即ち、ステータ10に対して左方向回りに形成されるコイル群18(図2中、境界線Pの左側に位置するコイル群)のコイル13は、第1のコイル13から構成され、ステータ10に対して右回りに形成されるコイル群18(図2中、境界線Pの右側に位置するコイル群)のコイル13は、第2のコイル13から構成されている。
【0030】
但し、図2に示す実施形態においては、ステータ10に対して右回りに形成されるコイル群18の第2のコイル13の内、後述する中性点に接続される3個のコイル13(13u、13v、13w)は、中性点との接続を容易にするため、第1巻き端41が、溝29に挿入されてその端部41aが上方に導出している。仮にこの3個のコイル13を第3のコイル13と称する。なお、ステータ10に対して右回りに形成されるコイル群18の全てのコイル13を、第2のコイル13で構成するようにしてもよい。この場合、中性点との接続が僅かに異なる。
【0031】
図2において、図中上方で、境界線Pの両側に最も近接して配置された同相の一対のコイル13から導出される束線14、具体的には、ステータ10に対して左回りに形成されるU相コイル群18uの第1のU相コイル13u、及びステータ10に対して右回りに形成されるU相コイル群18uの第2のU相コイル13uの、それぞれの第2巻き端42の端部42aが、U相接続端子15uに接続されている。
【0032】
同様に、図中上方で、境界線Pの両側に最も近接して配置された一対のV相コイル13vの第2巻き端42の端部42aがV相接続端子15vに接続され、一対のW相コイル13wの第2巻き端42の端部42aがW相接続端子15wに接続されている。
【0033】
また、左方向回りに形成されるコイル群18と右方向回りに形成されるコイル群18とが出会う位置、即ち、各相の接続端子15(U相、V相及びW相接続端子15u、15v、15w)の反対側で、境界線Pを挟んで両側に配置された各相一対、6個のコイル13の第1巻き端41の端部41aは、隣り合うコイル13の端部41a同士が、それぞれ接続線40によって接続されて、中性点を構成する。
【0034】
更に、左方向回りに形成されるコイル群18の各第1のコイル13の第2巻き端42は、インシュレータ12の溝部35を通って隣り合うコイル13の溝部36に挿入されて係止され、その端部42aは、周方向に隣り合う同相コイルの外周側鍔部25の径方向外側に延びる第1巻き端41の端部41aと平行に延びて第1巻き端41の端部41aに接合されている。
【0035】
また、右方向回りに形成されるコイル群18のコイル13も同様に、各第2のコイル13の第2巻き端42は、インシュレータ12の溝部36を通って隣り合うコイル13の溝部35に挿入されて係止され、その端部42aは、周方向に隣り合う同相コイルの外周側鍔部25の径方向外側に延びる第1巻き端41の端部41aと平行に延びて第1巻き端41の端部41aに接合されている。図6も参照して、第1巻き端41の端部41aと第2巻き端42の端部42aの接合部14aは、キャップ50によって覆われて、接合部14aが周囲空間から仕切られている。
【0036】
ここで、キャップ50について図6及び図7を参照して詳細に説明する。
本実施形態のキャップ50は、図7に示すように、ゴム等の絶縁材により一様厚に形成され、筒状、より詳細には有底円筒状を有する。キャップ50は、接合部14aの周囲を囲う円筒部51と、円筒部51の一端側に位置して開口部52から円盤状に拡がるフランジ部53と、円筒部51の他端側に位置して外観略半球状の頭部54と、を有して構成される。
【0037】
円筒部51には、略中央に波状の段部55が複数(本実施形態では3つ)、接着剤とキャップ50との接触面積を増やすために形成される。また、頭部54には、その頂部に通気孔56が形成され(図6参照)、接着剤が塗布された接合部14aにキャップ50を装着する際に、キャップ50内に溜まった空気が通気孔56を介して周囲空間に抜けるようになっている。これにより、キャップ50を目標位置までしっかり押し込むことができ、接合部14aに装着できる。
【0038】
フランジ部53は、図6に示すように、インシュレータ12の外周側鍔部25に形成された溝28、29より大きな幅を有し、溝28、29に係合して、接合部14aの振動または振動による束線14の浮き上がりを抑制する。なお、フランジ部53は、必ずしも設ける必要はなく、図8に示すように、フランジ部53の代わりに、円筒部51の一端側をすり鉢状に拡径するように形成してもよく、接合部14aに装着できる限り任意の形状を採用することができる。この場合でも、接着剤でキャップがインシュレータ12の外周側鍔部25に固定されていることが好ましい。
【0039】
次に、ステータ10の製作手順について説明する。まず、24個のそれぞれのインシュレータ12に束線14を巻回して独立したコイル13を作成する。24個のコイル13の内、ステータ10に対して左回りに形成される12個のコイル13は、先に説明した第1のコイル13の巻き方で巻回し、ステータ10に対して右回りに形成されるコイルの内、9個のコイル13は、第2のコイル13の巻き方で巻回し、中性点に接続される3個のコイル13は、第1巻き端41から延びる束線14の端部41aが溝29に挿通する第3のコイル13の巻き方で巻回する。
【0040】
次いで、第1のコイル13が巻回された12個のインシュレータ12を、ステータコア11上に想定した境界線P(図2参照)の左側のティース11bに左回りに順次装着する。そして、第2のコイル13が巻回された9個のインシュレータ12を、ステータコア11上に想定した境界線Pの右側のティース11bに、右回りに順次装着し、更に、第3のコイル13が巻回された残り3個のインシュレータ12を、第2のコイル13に続けて右回りに順次装着する。各コイル13は、互いに独立してインシュレータ12に巻回されているので、ティース11bへの挿入が容易であり、生産性が高い。
【0041】
続いて、渡り部14Tを成形しながら配索する。具体的には、図2を参照して、ステータ10に対して左方向回りに形成される第1のコイル13の第2巻き端42を、隣り合うインシュレータ12の溝部36に挿通して成形し、更に、端部42aを周方向に隣り合う同相コイルのインシュレータ12の左側の溝29に挿入する。これにより、渡り部14Tが成形される。また、同相コイル(例えば、U相コイル13u)の一方のコイル13の第1巻き端41の端部41aと、他方のコイル13の第2巻き端42の端部42aとが、溝29中で平行に揃えられる。
【0042】
同様に、ステータ10に対して右方向回りに形成される第2のコイル13の第2巻き端42を、隣り合うコイル13の溝部35に挿通して成形し、更に、端部42aを周方向に隣り合う同相コイルのインシュレータ12の右側の溝28に挿入する。これにより、渡り部14Tが成形される。また、同相コイル(例えば、U相コイル13u)の一方のコイル13の第1巻き端41の端部41aと、他方のコイル13の第2巻き端42の端部42aとが、溝28中で平行に揃えられる。
【0043】
更に、各相の接続端子15の反対側に配置される6個のコイル13、即ち、中性点に接続される3個ずつの第1及び第3のコイル13のそれぞれの第1巻き端41の端部41aの内、隣り合うコイル13の端部41a間に、この端部41a同士を接続するように、略コの字型に成形した接続線40を配置する。
【0044】
次いで、溝28、29中で揃えられた束線14の端部41a、42a、及び接続線40を、例えば、超音波溶接装置を用いて超音波を印加して接合する。なお、束線14の溶着される部分の絶縁被膜は、接合に先だって剥離される。なお、超音波溶接装置に限らず、誘導電流を利用して接合部における導線及び絶縁被膜を加熱して溶融させることにより、導線同士を接合する高周波溶接装置を用いてもよい。
【0045】
そして、ステータ10をハウジング2にボルト3で固定する。更に、境界線P(図2参照)の両側に最も近接して配置された同相の一対のコイル13の第2巻き端42の端部42aに、各相の接続端子15(15u、15v、15w)を接合する。
【0046】
次に、全てのコイル13の接合部14aに径方向外側からキャップ50を装着する。この際、接合部14aに接着剤を塗布して、開口部52からキャップ50を接合部14aに被せる。通気孔56から内部の空気が周囲空間に抜けることで、それほど大きな力を負荷しなくてもキャップ50は径方向内側に押し込まれ、さらにフランジ部53と外周側鍔部25とが当接した時点でさらにキャップ50を押し込むことで、フランジ部53が溝28、29を通過した後、外周側鍔部25に係合することによりキャップ50の抜けが抑制される。接着剤が固まると、段部55によってより強固にキャップ50が接合部14aに固定される。
【0047】
上記したように、本実施形態の電動機の突極集中巻きステータ10によれば、周方向に隣り合う同相のコイル13の一方の第1巻き端41の端部41aと他方の第2巻き端42の端部42aとを直接接合することにより接合部14aが形成されるので、部品点数を削減することができ製造コストを低減することができる。また、束線14は、通常、絶縁被膜により被覆されているが、接合部14aにおいては第1巻き端41の端部41aと第2巻き端42の端部42aの接合時に導体部分が露出してしまうが、接合部14aが絶縁材により形成されたキャップ50で覆われていることにより、接合部14aを周囲と絶縁することができ、かつ接合部14aの接合を保護することができる。さらに、絶縁材を硬化させて成形する工程を不要とすることが出来、生産性を高めることができる。
【0048】
また、周方向に隣り合う同相のコイル13の一方の第1巻き端41の端部41aと、他方の第2巻き端42の端部42aとが略平行に延びており、キャップ50は筒状であるので、接合部14aにキャップ50を容易に装着することができる。また、接合部14aの大きさをコンパクトにすることができる。
【0049】
また、キャップ50がインシュレータ12に固定されているので、接合部14aの絶縁性を向上しつつ、接合部14aの振動または振動による束線14の浮き上がりを抑制することができ、束線14の損傷を抑制することができる。また、キャップ50がインシュレータ12の溝28、29に嵌め込まれることにより固定されているので、他の部品を用いることなくキャップ50をインシュレータ12に固定できるため、コストの増加を抑制することができる。
【0050】
また、キャップ50は溝28、29の幅よりも大きな幅をもつフランジ部53を有し、フランジ部53が溝28、29に係合するので、キャップ50の抜けを抑制することができ、より確実に接合部14aを絶縁することができる。
【0051】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。上記説明では、外転型電動機の突極集中巻きステータについて説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、複数のティースがステータコアの円環部から径方向内側に突出して形成される内転型電動機のステータ、分割コアからなるステータなど、他の形式のステータにも同様に適用することができる。また、インシュレータ12の代わりに絶縁紙などを介在させてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 電動機
10 ステータ(突極集中巻きステータ)
11 ステータコア
11b ティース
12 インシュレータ
13 コイル
14 束線(巻線)
14a 接合部
25 外周側鍔部
28、29 溝(切欠き)
41 第1巻き端
41a 端部
42 第2巻き端
42a 端部
50 キャップ
53 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に所定の間隔で配置され放射状に突出する複数のティースを有する円環状のステータコアと、
周方向に隣り合う前記ティースにおいて互いに異相となるように前記ティースに巻回される複数のコイルと、を備える電動機の突極集中巻きステータであって、
前記複数のコイルは、前記ステータの軸方向一端側に位置する第1巻き端と第2巻き端とを有し、
前記第1巻き端と前記第2巻き端の少なくとも一方が異相となるコイルを周方向に跨いで延びており、
周方向に隣り合う同相のコイルの一方の前記第1巻き端の端部と、他方の前記第2巻き端の端部とが直接接合されて接合部をなし、
前記接合部は、絶縁材により形成されたキャップで覆われていることを特徴とする電動機の突極集中巻きステータ。
【請求項2】
周方向に隣り合う同相のコイルの一方の前記第1巻き端の端部と、他方の前記第2巻き端の端部とが略平行に延びており、
前記キャップは筒状であることを特徴とする請求項1に記載の電動機の突極集中巻きステータ。
【請求項3】
前記ティースと前記コイルとの間に装着されるインシュレータを備え、
前記キャップが前記インシュレータに固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動機の突極集中巻きステータ。
【請求項4】
前記インシュレータに切欠きが形成され、
前記キャップが前記インシュレータの前記切欠きに嵌め込まれていることを特徴とする請求項3に記載の電動機の突極集中巻きステータ。
【請求項5】
前記キャップは前記切欠きの幅よりも大きな幅をもつフランジ部を有し、
前記フランジ部が前記切欠きに係合することを特徴とする請求項4に記載の電動機の突極集中巻きステータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−244705(P2012−244705A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110655(P2011−110655)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】