説明

電動機制御装置

【課題】プリント基板に実装されたコネクタに対して相手方コネクタを挿抜する時に発生する応力が、プリント基板に実装された電子部品に伝わるのを抑制する。
【解決手段】電動機制御装置は、電動機制御用の電子部品60とコネクタ6とを実装したプリント基板5と、プリント基板5を固定するケース1とを備える。プリント基板5は、ケース1に4箇所でネジ止めされる。コネクタ6は、プリント基板5のケース1とのネジ止め部21で囲まれる領域20外にある端部5tに実装される。プリント基板5の領域20に近い側のコネクタ6の端部6bは、プリント基板5にネジ止めされる。プリント基板5とコネクタ6とのネジ止め部22と、該ネジ止め部22に最も近いプリント基板5とケース1とのネジ止め部21との間のプリント基板5上には、電子部品60が実装されていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機制御装置のコネクタなどの電子部品の実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機制御装置として、たとえば、車両の電動式パワーステアリングシステムで使用されるECU(電子制御装置)がある。ECUには、特許文献1および2に開示されているように、金属基板とプリント基板などが備わっている。
【0003】
金属基板には、電動機駆動用のスイッチング素子などの電子部品が実装されている。プリント基板には、電動機制御用のマイクロコンピュータなどの電子部品が実装されている。また、プリント基板の端部には、給電用や通信用のコネクタが実装されている。
【0004】
金属基板とプリント基板は、ケースやハウジングなどの台座に、上下方向へ所定の間隔をおいて固定されている。特に、プリント基板は、特許文献1〜3に開示されているように、複数のスタッドを介して台座面から浮上させた状態で、台座に固定されている。特許文献3では、コネクタを実装したプリント基板の端部が、台座の折り曲げ部に接している。
【0005】
コネクタに相手方コネクタを挿入するときや抜去するときには、荷重がかかって、応力が発生する。その応力がコネクタからプリント基板に実装された電子部品に伝わって、電子部品が損傷するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−188932号公報
【特許文献2】特開2003−309384号公報
【特許文献3】特開2003−92479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、プリント基板に実装されたコネクタに対して相手方コネクタを挿抜する時に発生する応力が、プリント基板に実装された電子部品に伝わることを抑制できる電動機制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、電動機制御用の電子部品とコネクタとを実装したプリント基板と、プリント基板を固定する台座とを備えた電動機制御装置において、プリント基板は、台座に少なくとも4箇所でネジ止めされる。コネクタは、プリント基板の台座とのネジ止め部で囲まれる領域外にある端部に実装される。プリント基板の前記領域に近い側のコネクタの端部は、プリント基板にネジ止めされる。プリント基板とコネクタとのネジ止め部と、該ネジ止め部に最も近いプリント基板と台座とのネジ止め部との間のプリント基板上には、電子部品が実装されていない。
【0009】
上記構成により、プリント基板に実装されたコネクタに対して相手方コネクタを挿抜する時に発生する応力が、コネクタからプリント基板に伝わって、プリント基板とコネクタとのネジ止め部と、該ネジ止め部に最も近いプリント基板と台座とのネジ止め部との間のプリント基板上に集中する。然るに、このネジ止め部間のプリント基板上には、電子部品が実装されていないので、応力がプリント基板に実装された電子部品に伝わることを抑制することが可能となる。
【0010】
また、本発明では、上記電動機制御装置において、電動機駆動用の電子部品を実装した金属基板を更に設け、金属基板の上方に所定の間隔をおいてプリント基板を配置して、両基板をそれぞれ台座に固定するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明では、上記電動機制御装置において、プリント基板とコネクタとのネジ止め部と、該ネジ止め部に最も近いプリント基板と台座とのネジ止め部との間のプリント基板上には、配線が実装されていないようにしてもよい。
【0012】
また、本発明では、上記電動機制御装置において、プリント基板の前記領域から遠い側のコネクタの端部は、台座に接しているか、または、プリント基板が弾性変形したときに台座に接するようにしてもよい。
【0013】
さらに、本発明では、上記電動機制御装置において、プリント基板とコネクタとのネジ止め部と、該ネジ止め部に最も近いプリント基板と台座とのネジ止め部との間の距離を、当該ネジの頭部の径より短かくしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プリント基板に実装されたコネクタに対して相手方コネクタを挿抜する時に発生する応力が、プリント基板に実装された電子部品に伝わることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による電動機制御装置の分解図である。
【図2】電動機制御装置の一部の斜視図である。
【図3】電動機制御装置の斜視図である。
【図4】電動機制御装置の底面図である。
【図5】電動機制御装置に備わるケースの外側の斜視図である。
【図6】電動機制御装置に備わるケースの内側の斜視図である。
【図7】電動機制御装置に備わるプリント基板の下面側の斜視図である。
【図8】電動機制御装置に備わるプリント基板の上面側の斜視図である。
【図9】図4のX−X断面図である。
【図10】図4のY−Y断面図である。
【図11】他の実施形態を示す要部断面図である。
【図12】他の実施形態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0017】
図1、図3、および図4に示す電動機制御装置100は、自動車の電動式パワーステアリングシステムで使用されるECU(電子制御装置)である。電動機制御装置100は、電動モータから成る電動機の駆動を制御する。図1に示すように、電動機制御装置100には、ケース1、カバー2、金属基板3、接続部材4、およびプリント基板5が備わっている。
【0018】
ケース1の上側開口は、図3に示すように、カバー2で覆われる。ケース1とカバー2は、図示しない公知のロック構造により嵌め合わされる。ケース1とカバー2を嵌め合わせることによって形成される内部空間には、金属基板3とプリント基板5とが収容される。
【0019】
金属基板3には、図1および図6に示すように、電動機を駆動するための電子部品50が複数実装されている。電子部品50は、電動機への給電状態(電流供給状態)を切り替えるスイッチング素子(たとえば、FET)などから成る。また、金属基板3には、図示しない配線が実装されている。金属基板3は、図6に示すように、ケース1の内底面1sにネジ11により固定される。これにより、金属基板3の板面とケース1の内底面1sとはほぼ平行になる。
【0020】
また、金属基板3には、複数の接続端子7が実装されている。図1および図2において、接続端子7のリード部7aを、プリント基板5に設けられたスルーホール5aに挿入して、はんだ付けする。これにより、図8に示すように、金属基板3とプリント基板5とが接続される。
【0021】
接続部材4は、図1などに示すように、電動機への給電(電流供給)用の端子8を有している。図1および図2において、端子8のリード部8bを、プリント基板5に設けられたスルーホール5bに挿入して、はんだ付けする。これにより、図2および図8に示すように、接続部材4とプリント基板5とが接続される。接続部材4は、図2〜図4に示すように、ケース1の側面にネジ12により固定される。端子8の接続部8aには、電動機に設けられた端子がネジにより取り付けられる(図示省略)。
【0022】
プリント基板5には、図1、図2、および図8に示すように、電動機を制御するための電子部品60とコネクタ6とが実装されている。電子部品60は、マイクロコンピュータやメモリなどから成る。図では、電子部品60を1つしか図示していないが、実際にはプリント基板5の両面に複数設けられている。また、プリント基板5には、図示しない配線が実装されている。プリント基板5は、金属基板3の上方に所定の間隔をおいて配置される。
【0023】
図1および図6に示すように、ケース1の内側には、少なくとも4つのスタッド1aが設けられている。スタッド1aは、ケース1と一体に成形された柱部1bと、該柱部1bに穿孔されたネジ孔1cとから成る。
【0024】
図2に示すように、プリント基板5をスタッド1a上に載置して、ネジ13をプリント基板5へ貫通させて、各スタッド1aのネジ孔1cに螺合する。これにより、プリント基板5がケース1に少なくとも4箇所でネジ止めされる。つまり、ケース1は、プリント基板5を複数のスタッド1aを介して内底面1sから浮上させた状態で固定する。これにより、プリント基板5の板面とケース1の内底面1sとはほぼ平行になる。ケース1は、本発明の「台座」の一例である。
【0025】
ケース1とプリント基板5とをネジ止めしたネジ止め部21は、少なくとも4箇所ある。これらネジ止め部21で囲まれる領域20の外にあるプリント基板5の端部5tには、コネクタ6が実装されている。コネクタ6は、縦幅より横幅を長くした、横長形状に形成されている。コネクタ6は、給電用と通信用の端子9を有している(図4および図9参照)。
【0026】
図3および図4に示すように、コネクタ6の嵌合部6aは、ケース1の底に形成された開口部1kから露出する。コネクタ6の複数の嵌合部6aには、外部装置と接続するための複数の相手方コネクタ(ソケットハーネス)10がそれぞれ装着される。
【0027】
コネクタ6は、相手方コネクタ10の挿抜方向(上下方向)U、Dがプリント基板5に対して垂直になるように、プリント基板5の端部5tに実装されている。端子9のリード部9aは、図1、図2、図8、および図9に示すように、プリント基板5に設けられたスルーホール5cに挿入されて、はんだ付けされている。
【0028】
図2に示すように、プリント基板5のネジ止め部21で囲まれる領域20(点線で図示)に近い側のコネクタ6の両端部6bは、プリント基板5にネジ14により固定されている(図1および図7〜図9も参照)。つまり、プリント基板5とコネクタ6とをネジ止めしたネジ止め部22は、2箇所ある。
【0029】
図2に示すように、プリント基板5とコネクタ6のネジ止め部22に最も近いプリント基板5とケース1とのネジ止め部21は、2箇所ある。この接近するネジ止め部21、22間のプリント基板5上には、図2、図9、および図10に示すように、電子部品60と配線が実装されていない。図10に示すように、接近するネジ止め部21、22間の距離D1は、ネジ13、14の頭部の径D2より短くなっている。
【0030】
プリント基板5のネジ止め部21で囲まれる領域20(図2)から遠い側のコネクタ6の端部6cには、図1および図7〜図10に示すように、第1係合部6dと第2係合部6eとが設けられている。第1係合部6dは、図9に示すように、プリント基板5側を向いた面から成る。第2係合部6eは、図9および図10に示すように、ケース1の内底面1s側(プリント基板5と反対側)を向いた面から成る。
【0031】
ケース1のプリント基板5側へ突出するコネクタ6側の側壁1fには、図5、図6、図9、および図10に示すように、第3係合部1dと第4係合部1eとが設けられている。第3係合部1dは、図9に示すように、ケース1の内底面1s側を向いた面から成る。第3係合部1dには、コネクタ6の第1係合部6dが係合している。第4係合部1eは、図10に示すように、プリント基板5側を向いた面から成る。第4係合部1eには、コネクタ6の第2係合部6eが係合している。
【0032】
図1および図5〜図8に示すように、コネクタ6の第1係合部6dおよび第2係合部6e、並びに、ケース1の第3係合部1dおよび第4係合部1eは、コネクタ6の横幅方向に複数設けられている。具体的には、第1係合部6dと第3係合部1dとは、コネクタ6の横幅方向に所定の間隔をおいて3つずつ設けられている。第2係合部6eと第4係合部1eとは、コネクタ6の横幅方向に所定の間隔をおいて4つずつ設けられている。
【0033】
電動機制御装置100の組立状態において、コネクタ6の端部6cとケース1の側壁1fとは、係合部6d、6e、1d、1eを介して接している。
【0034】
または、第1係合部6dと第3係合部1dとの間や、第2係合部6eと第4係合部1eとの間に、若干の隙間があってもよい。この場合、コネクタ6に対して相手方コネクタ10を挿抜することにより、プリント基板5が弾性変形したときに、コネクタ6の端部6cとケース1の側壁1fとが、係合部6d、6e、1d、1eを介して接する。
【0035】
上記実施形態によると、プリント基板5に実装されたコネクタ6に対して相手方コネクタ10を挿抜する時に発生する応力が、コネクタ6からプリント基板5に伝わって、プリント基板5とコネクタ6とのネジ止め部22と、該ネジ止め部22に最も近いプリント基板5とケース1とのネジ止め部21との間の、プリント基板5上に集中する。然るに、このネジ止め部21、22間のプリント基板5上には、電子部品60が実装されていないので、応力がプリント基板5に実装された電子部品60に伝わることを抑制することが可能となる。
【0036】
また、上記実施形態では、接近するネジ止め部21、22間のプリント基板5上には、配線も実装されていないので、応力がプリント基板5に実装された配線に伝わることも抑制することが可能となる。
【0037】
また、上記実施形態では、プリント基板5のネジ止め部21で囲まれる領域20から遠い側のコネクタ6の端部6cと、ケース1の側壁1fとが、係合部6d、6e、1d、1eを介して接している。このため、コネクタ6に対する相手方コネクタ10の挿抜時に、当該挿抜力が係合部6d、6e、1d、1eを介してケース1で受け止められて、コネクタ6からプリント基板5へ伝わる応力を緩和することが可能となる。
【0038】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、上記実施形態では、プリント基板5のケース1側にコネクタ6を配置した例を示したが、本発明はこれに限るものではない。たとえば図11に示すように、コネクタ6’をプリント基板5のカバー2側に配置するようにしてもよい。その場合、たとえば図11および図12に示すように、コネクタ6’の端部6c’をケース1側へ延ばして、該端部6c’に第1係合部6d’と第2係合部6e’とを設ける。そして、第1係合部6d’と第2係合部6e’とをケース1の第3係合部1dと第4係合部1eとにそれぞれ係合させるようにすればよい。
【0039】
また、上記実施形態では、ケース1にスタッド1aと第3係合部1dと第4係合部1eとを設けた例を示したが、本発明はこれに限るものではない。これ以外に、たとえば、ケースと別体の台座を設け、その台座面に複数のスタッドを設け、台座の側壁に第3係合部と第4係合部とを設けるようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、電動機駆動用の電子部品50を金属基板3に実装した例を示したが、本発明において金属基板3は必須ではない。例えば、電動機駆動用の電子部品50をプリント基板5に実装してもよい。
【0041】
さらに、上記実施形態では、電動式パワーステアリングシステムで使用される電動機制御装置100に本発明を適用した例を挙げたが、これ以外の電動機制御装置に対しても本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ケース(台座)
3 金属基板
5 プリント基板
5t ケースとのネジ止め部で囲まれる領域外にあるプリント基板の端部
6、6’ コネクタ
6b プリント基板の領域に近い側のコネクタの端部
6c プリント基板の領域から遠い側のコネクタの端部
20 プリント基板とケースとのネジ止め部で囲まれる領域
21 プリント基板とケースとのネジ止め部
22 プリント基板とコネクタとのネジ止め部
50 電動機駆動用の電子部品
60 電動機制御用の電子部品
100 電動機制御装置
D1 接近するネジ止め部間の距離
D2 ネジの頭部の径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機制御用の電子部品とコネクタとを実装したプリント基板と、
前記プリント基板を固定する台座と、を備えた電動機制御装置において、
前記プリント基板は、前記台座に少なくとも4箇所でネジ止めされ、
前記コネクタは、前記プリント基板の前記台座との前記ネジ止め部で囲まれる領域外にある端部に実装され、
前記プリント基板の前記領域に近い側の前記コネクタの端部は、前記プリント基板にネジ止めされ、
前記プリント基板と前記コネクタとの前記ネジ止め部と、該ネジ止め部に最も近い前記プリント基板と前記台座との前記ネジ止め部との間の前記プリント基板上には、電子部品が実装されていない、ことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機制御装置において、
電動機駆動用の電子部品を実装した金属基板を更に備え、
前記金属基板の上方に所定の間隔をおいて前記プリント基板を配置して、前記両基板をそれぞれ前記台座に固定した、ことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動機制御装置において、
前記プリント基板と前記コネクタとの前記ネジ止め部と、該ネジ止め部に最も近い前記プリント基板と前記台座との前記ネジ止め部との間の前記プリント基板上には、配線が実装されていない、ことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記プリント基板の前記領域から遠い側の前記コネクタの端部は、前記台座に接しているか、または、前記プリント基板が弾性変形したときに前記台座に接する、ことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電動機制御装置において、
前記プリント基板と前記コネクタとの前記ネジ止め部と、該ネジ止め部に最も近い前記プリント基板と前記台座との前記ネジ止め部との間の距離は、当該ネジの頭部の径より短い、ことを特徴とする電動機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−65695(P2013−65695A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203524(P2011−203524)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】