説明

電動車両および電動車両の充放電システム

【課題】ユーザーが電動車両の放電設定値を再設定する必要がない充放電システムを提供する。
【解決手段】充放電システムは、電動車両10と、商用電力網43に接続した充放電装置20とを含む。充放電装置20の第2のコントローラ23は、商用電力網43の放電規制値DRを保持しており、バッテリー11の放電時に、それを電動車両10の第1のコントローラ12に送信する。また電動車両10の系統電力監視装置14は、商用電力網43の電力の状態を示す電力状態信号VWを取得して第1のコントローラ12に送る。第1のコントローラ12は、放電規制値DRおよび電力状態信号VWに基づいて、電力変換装置13がバッテリー11の放電時に出力する電力の形式を規定する放電設定値DSを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリーの充放電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力網に電力の需要・供給の自動制御手段を組み込んだ「スマートグリッド」と呼ばれる次世代電力網の開発が、近年注目を浴びている。スマートグリッドでは、電力網における電力の流れを供給側だけでなく需要側からも制御することによって、電力の需要と供給の最適化(平衡化)が図られる。
【0003】
例えば各家庭が所有する電動車両(例えば電気自動車(Electric Vehicle;EV)やプラグインハイブリッド車(Plug-in Hybrid Vehicle;PHV))のバッテリー(蓄電池)は、電力需要のピークを低減して平滑化を図るためのバッファとして利用できる。すなわち電力需要の少ない時間帯に充電した車両バッテリーの電力を、電力需要のピーク時に住宅で使用することによって、電力需要のピークが低減される。一般に、深夜などの電力需要の少ない時間帯は電気料金が安く設定されているため、各家庭の電気料金の節約にもつながる。スマートグリッドは、このような電力の流れの制御を自動的に行おうとするものである。
【0004】
スマートグリッドにより管理された電力網では、車両のバッテリーの充電(住宅から車両への電力供給)だけでなく、バッテリーの放電(車両から住宅への電力供給)も積極的に行うことが想定される。この電力の流れは、各需要家に配備されるエネルギーマネージメントシステム(Home Energy Management System;HEMS)によって管理される。HEMSは、太陽光発電(Photo voltaic power generation;PV)装置等の発電設備や、電気温水器やエアコン等の主に大型の電力負荷設備、車両のバッテリー等の蓄電設備などを管理下に置き、電力需要が平滑化されるようにそれらを制御し、それにより電力需給の平衡化を図り、電力会社からの電力購入量が少なくて済むようにする。
【0005】
近年では、これらの技術の対象範囲を家庭内から広げて、社会全体の環境性能を向上させる試みが成されている(例えば、下記の特許文献1)。また、近隣の需要家(例えば隣家や近隣の工場・ビルなど)を含めた街単位や都市単位での電力需要の平滑化および電力需給の平衡化を目的とした、コミュニティエネルギーマネージメントシステム(Community Energy Management System;CEMS)を、商用電力網に配備する実験や構想も行われ始めている。
【0006】
街単位や都市単位での電力需要の平滑化を考えた場合、家庭内の発電設備が発電した電力や、蓄電設備が放電した電力は、家庭外の商用電力網(系統)へ放出され、同じ商用電力網に接続する他の需要家にて消費されることが想定される。このような家庭内から商用電力網へ放出される電力の流れは「逆潮流」と呼ばれる。
【0007】
家庭内から商用電力網へ電力を放出(放電)する場合、その放電電力が同じ商用電力網に接続する他の需要家の電化製品に悪影響を与えないように、当該商用電力網を管理する電力会社が予め定めた「放電電力(逆潮流)に関する規制値」(以下「放電規制値」と称す)を逸脱しないよう、放電電力の監視および制御を行う仕組みが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−81722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電力会社が定める放電規制値には、主に放電電力の電圧上下限値、周波数上下限値の他、系統側停電時の放電停止機能の有無や、停電復帰時の復帰許可時間などが含まれる。但し、これらの値は、同一の電力会社が管理する商用電力網であっても同じとは限らず、例えば電力給電所から、商用電力網の配電網までの距離や、当該配電網に配備された変圧器の設定状況、当該配電網内での需要家の負荷状態などを考慮して、電力会社が商用電力網ごとに調整・設定することが必要なものである。
【0010】
家庭内の蓄電設備として電動車両のバッテリーを用いる場合、電動車両はユーザーが運転して移動するため、常に同じ場所でバッテリーの充放電が行われるとは限らない。例えば電動車両の移動先の需要家において、電動車両から商用電力網への放電を行う場合には、ユーザーがその商用電力網で定められた放電規制値に合わせて、放電電力の形式(電圧や周波数)の設定値(以下「放電設定値」と称す)を再設定することが必要となる場合がある。そのため、電動車両のバッテリーを蓄電設備として用いる場合には、そのユーザーの負担が増える。
【0011】
また、電動車両のユーザーが放電設定値の設定を誤ると、電動車両が、放電規制値から外れた電圧および周波数の電力を商用電力網に放出し、その影響は電動車両が接続している需要家だけでなく、同じ商用電力網およびその配電網に接続する他の需要家にまで及ぶ。
【0012】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、ユーザーが電動車両の放電設定値を再設定する必要がない充放電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る電動車両の充放電システムは、バッテリーを有する電動車両と、商用電力網に接続し、前記電動車両の外部から前記バッテリーの充放電を行う充放電装置とを含み、前記電動車両は、前記充放電装置による前記バッテリーの放電時に、当該バッテリーの電力を前記商用電力網の電力形式に変換して前記充放電装置内の前記商用電力網に繋がる電力線へ出力する電力変換装置と、前記充放電装置が前記電力線に出力する放電電力の形式の設定値である放電設定値を、前記商用電力網に関する情報に基づいて決定する第1のコントローラとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充放電装置を用いて電動車両のバッテリーの放電を行う際、電動車両の電力変換装置に、その充放電装置が属する商用電力網の放電規制値に応じた放電設定値が自動的に設定される。そのため、電動車両の移動先でバッテリーの放電を行う場合でも、ユーザーが放電設定値を再設定を行うことなく、商用電力網の放電規制値に則った形式での放電が可能となる。よって、各地の商用電力網で電力需要の平滑化および電力需給の平衡化に寄与することができると共に、各商用電力網に属する需要家の電化製品の動作に影響を与えることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】スマートグリッドにより管理された電力網の概略を示した構成図である。
【図2】実施の形態1に係る電動車両の充放電システムの構成図である。
【図3】実施の形態1に係る電動車両の充放電システムにおける、電動車両と充放電装置との接続時の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態2に係る電動車両の充放電システムの構成図である。
【図5】実施の形態2に係る電動車両の充放電システムにおける、電動車両と充放電装置との接続時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施の形態1>
図1は、本発明に係る電動車両の充放電システムを含む、スマートグリッドにより管理された電力網の概略を示した構成図である。
【0017】
当該充放電システムは、電動車両10と、住宅30に設置された充放電装置20を含んでいる。住宅30は、電動車両10のユーザの自宅と仮定する。住宅30およびその近隣の他の需要家41は、同一の商用電力網43に接続しており、特定の電力会社による管理の下、発電所42にて発電された電力が商用電力網43を通じて供給されている。
【0018】
電動車両10は、充放電装置20を通して充放電が可能なバッテリー11を搭載しており、蓄電設備としても機能する。住宅30には、HEMS31が設置されている。HEMS31は、住宅30内の発電設備である太陽光発電装置(PV)32や、充放電装置20に接続される蓄電設備としての電動車両10、比較的大きな電力を消費する電力負荷設備であるエアコン・電気温水器等の機器33(以下「電力負荷33」と称す)と通信を行い、それらを制御して住宅30における電力需要を平滑化し、それによって電力需給の平衡化を図る。
【0019】
商用電力網43には、当該商用電力網43とそれに接続する住宅30および他の需要家41との間の電力の流れを管理するCEMS44が設置されている。住宅30で余剰電力が発生した場合、住宅30のHEMS31は、その余剰電力を商用電力網43へと放出させるが、その動作はCEMS44の指令に基づいて行われる。住宅30から商用電力網43へと放出された電力は、CEMS44の管理のもと、他の需要家41へ供給され、その結果、住宅30および他の需要家41が属する地域全体における電力需要の平滑化ならびに電力需給の平衡化が図られる。
【0020】
図2は、実施の形態1に係る電動車両の充放電システムの構成図である。同図においては、図1に示したものと同様の機能を有する要素には同一符号を付してある。また、図2において、各ブロック間を結ぶ線のうち、太線は電力線を示し、細線は通信線を示している。但し、電動車両10に接続させる充放電装置20の接続ケーブル22は、太線で表しているが、電力線と通信線の両方を備えているものとする。実運用上の形態においても、充放電装置の接続ケーブルは、通信線と電力線の両方を備えるものが一般的である。
【0021】
図2に基づき、本実施の形態に係る電動車両の充放電システムの構成を説明する。なお、本発明は電動車両10のバッテリー11の充放電に関するものであるため、電動車両10については、バッテリー11の充放電に直接関係しない要素(例えば走行制御に関する部分)の説明は省略する。
【0022】
本実施の形態の充放電システムは、電動車両10、住宅30およびそれに設置された充放電装置20により構成される。電動車両10は、バッテリー11、第1のコントローラ12、電力変換装置13、系統電力監視装置14、およびコネクタ15を備えている。バッテリー11は、電動車両10の走行の動力源となる電力を蓄えると共に、蓄電設備としても機能する。コネクタ15は、充放電装置20からバッテリー11に対する電力需給(充電および放電)を行うための充放電端子と、充放電装置20との通信を行うための通信端子とを含んでいる。このコネクタ15は、急速充電用のものでも、普通充電用のものでもよい。
【0023】
電力変換装置13は、バッテリー11とコネクタ15との間の電力線に直列に挿入され、当該電力線を流れる電力の形式(電圧および周波数)を変換する。例えばバッテリー11の充電時には、商用電力網43の電力形式(例えば、電圧100V周波数60Hzの交流電力)をバッテリー11の電力形式(例えば電圧330Vの直流電力)に変換し、バッテリー11の放電時にはその逆の変換を行う。但し、バッテリー11の放電時、特にバッテリー11に蓄積された電力を商用電力網43へ放出する場合、電力変換装置13は、商用電力網43の放電規制値に則った形式の電力をコネクタ15側へ出力する必要がある。
【0024】
系統電力監視装置14は、電動車両10が充放電装置20に接続されたときに、商用電力網43の電力(系統電力)の状態の確認(電圧および周波数の測定)を行う。系統電力監視装置14による測定結果は、電力状態信号VWとして第1のコントローラ12に送られる。電力状態信号VWの内容は、商用電力網43の電圧、周波数の測定値の他、例えば商用電力網43の状態(正常/異常/停電)を表すフラグ等の信号を含んでいてもよい。
【0025】
第1のコントローラ12は、バッテリー11、電力変換装置13、系統電力監視装置14およびコネクタ15と通信線を通して接続され、バッテリー11、電力変換装置13および系統電力監視装置14の監視および制御を行うと共に、コネクタ15を通して充放電装置20(後述する第2のコントローラ23)との通信を行う。
【0026】
一方、充放電装置20は、接続ケーブル22と、その先端に設けられたプラグ21と、第2のコントローラ23とを備えている。プラグ21は、電動車両10のコネクタ15に接続ケーブル22を接続させるためのものであり、上記のコネクタ15と同様に、バッテリー11に対する電力需給を行うための充放電端子と、電動車両10との通信を行うための通信端子とを含んでいる。
【0027】
第2のコントローラ23は、住宅30のHEMS31と通信線を介して接続されている。また充放電装置20のプラグ21が電動車両10のコネクタ15に接続されると、電動車両10内の通信線と充放電装置20内の通信線とが繋がり、第2のコントローラ23と第1のコントローラ12との相互通信が可能になる。
【0028】
また、第2のコントローラ23は、内部の記憶領域(不図示)に、当該充放電装置20が接続した商用電力網43の放電規制値DRを保持している。第2のコントローラ23が保持する放電規制値DRの値は、電力会社により定められた値であり、充放電装置20の設置時に、その設置者もしくは電力会社の関係者によって入力される。放電規制値DRの内容には、例えば、商用電力網43が取りうる電圧、周波数、電圧の上下限値、周波数の上下限値、停電時の放電停止機能の有無、及び停電復帰時の復帰許可時間等の内容が含まれている。
【0029】
充放電装置20内の電力線は、住宅30の太陽光発電装置32や電力負荷33と並列に接続されており、商用電力網43に繋がっている。充放電装置20のプラグ21が、電動車両10のコネクタ15に接続されると、電動車両10内の電力線と充放電装置20のとが繋がり、充放電装置20は、当該電力線を通して、バッテリー11と住宅30(太陽光発電装置32、電力負荷33および商用電力網43)との間での電力のやりとりが可能になる。
【0030】
この充放電システムにおいて、HEMS31は、電力需要の平衡化のために自ら充放電計画や、ユーザからの指示に従って、住宅30の太陽光発電装置32や電力負荷33の動作を制御する。また、また電動車両10が充放電装置20に接続された状態では、充放電装置20を制御して、予め登録された電動車両10の使用計画に応じて走行に充分なだけの電力をバッテリー11に蓄えたり、バッテリー11を住宅30の蓄電設備(電力需要平滑化のバッファ)の一つとして利用したりする。
【0031】
本実施の形態に係る充放電システムは、バッテリー11の充放電を開始するときの動作に特徴を有している。図3のフローチャートを用いて、当該充放電システムにおけるバッテリー11の充放電動作を説明する。
【0032】
まず、電動車両10が充放電装置20に接続されると、電動車両10内の電力線が商用電力網43に接続されるので、系統電力監視装置14は商用電力網43の電力の状態(電圧及び周波数)を監視できる状態になる。
【0033】
その後、電動車両10のバッテリー11の充電あるいは放電を充放電装置20に行わせる場合、HEMS31は、充放電装置20の第2のコントローラ23に対して充放電指令信号CCHを送る(ステップS101)。充放電指令信号CCHの内容には、充電指令であるか放電指令であるかを行うか表すフラグや、充放電させる電力量の情報が含まれている。
【0034】
第2のコントローラ23は、HEMS31からの充放電指令信号CCHを受けると、第1のコントローラ12へ、充放電指令信号CC2と、自己の記憶領域が保持している商用電力網43の放電規制値DRとを送信する(ステップS102)。
【0035】
充放電指令信号CC2の内容には、充放電指令信号CCHと同様に、充電指令であるか放電指令であるかを行うか表すフラグや、充放電させる電力量の情報が含まれている。充放電指令信号CC2の内容と充放電指令信号CCHの内容は全く同じでもよい。また、放電規制値DRの内容には、商用電力網43が取りうる電圧、周波数、電圧の上下限値、周波数の上下限値、停電時の放電停止機能の有無、及び停電復帰時の復帰許可時間等の内容を含まれている。
【0036】
第1のコントローラ12は、充放電指令信号CC2および放電規制値DRを受けると、系統電力監視装置14から、商用電力網43の電力状態(電圧および周波数)を表す電力状態信号VWを取得する(ステップS103)。そして、放電規制値DRおよび電力状態信号VWに基づいて、電力変換装置13にセットする放電設定値DSを決定する。
【0037】
放電設定値DSは、バッテリー11の放電を行うときに電力変換装置13が出力する電力の形式(電圧および周波数)を規定するための設定値である。電力変換装置13は、電力変換装置13が出力する電力が、放電規制値DRから逸脱しないように放電設定値DSを決定する。電力状態信号VWは、商用電力網43の電力状態の確認するためだけに用いてもよいが、放電設定値DSを決定する際の考慮に加えてもよい。商用電力網43の電力状態の実測値である電力状態信号VWを考慮に加えることで、放電設定値DSをより適切な値に決定することができる。
【0038】
第1のコントローラ12は、放電設定値DSが決定すると、その放電設定値DSと充放電指令信号CC1とを電力変換装置13に送信する(ステップS104)。充放電指令信号CC1の内容には、充放電指令信号CC2と同様に、充電指令であるか放電指令であるかを行うか表すフラグや、充放電させる電力量の情報が含まれている。充放電指令信号CC1の内容と充放電指令信号CC2の内容は全く同じでもよい。
【0039】
電力変換装置13は、放電設定値DSおよび充放電指令信号CC1を受けると、バッテリー11の放電時に出力する電力形式のパラメータとして放電設定値DSをセットする(ステップS105)。
【0040】
その後、電力変換装置13は、充放電指令信号CC1の内容に従ってバッテリー11を充電あるいは放電させる(ステップS106)。例えば、充放電指令信号CC1が充電指令である場合、電力変換装置13は、商用電力網43の電力をバッテリー11の電力形式に変換して、バッテリー11に供給する。逆に、充放電指令信号CC1が放電指令である場合は、電力変換装置13は、バッテリー11の電力を商用電力網43の電力形式に変換して、充放電装置20へと出力する。このとき電力変換装置13には、放電設定値DSおよび電力状態信号VWに基づいて決定された放電設定値DSがセットされているため、電力変換装置13からは、放電設定値DS(商用電力網43の放電規制値)に則った形式で電力が出力される。
【0041】
このように本実施の形態の充放電システムでは、バッテリー11の充放電を行う前に、電動車両10の第1のコントローラ12が、第2のコントローラ23から取得した放電規制値DRおよび系統電力監視装置14から取得した電力状態信号VWに基づいて、放電設定値DSを自動的に決定し、それが電力変換装置13にセットされる。従って、電動車両10からは、商用電力網43の放電規制値に則った形式の電力が出力されることになり、その電力を商用電力網43に放出しても、住宅30の電力負荷33はもちろん、他の需要家41の電化製品の動作にも悪影響を与えることが防止される。また、電動車両10のユーザが放電設定値の再設定を行う必要がないので、ユーザーの負担増は伴わない上、放電設定値の設定ミスを防止できる。
【0042】
さらに、商用電力網43の放電規制値DRを、充放電装置20が保持しているため、例えば他の商用電力網に属する充放電装置20に、電動車両10が接続する場合でも、電動車両10の第1のコントローラ12は、常に適切な充電規制値を取得することができる。よって、電動車両10が移動先の任意の充放電装置20に接続されても、ユーザが放電設定値の再設定を行うことない。
【0043】
以上の説明では、商用電力網43の放電規制値DRを、第2のコントローラ23が保持する構成としたが、充放電装置20に電動車両10が接続したときに放電規制値DRを第1のコントローラ12へ送信できれば、充放電装置20内あるいは住宅30内の他の要素が保持していてもよい。例えば、放電規制値DRを保持する記憶領域をHEMS31に設け、HEMS31が、第2のコントローラ23に対して充放電指令信号CCHと共に放電規制値DRを送信するようにしてもよい。
【0044】
また本実施の形態では、第1のコントローラ12が、放電規制値DRのみ、または放電規制値DRと電力状態信号VWに基づいて放電設定値DSを決定したが、電力状態信号VWのみに基づいて決定するようにしてもよい。その場合、充放電装置20が放電設定値DSを保持する必要もなくなり、充放電装置20の構成を簡略化できる。いずれの方法であっても、第1のコントローラ12が、商用電力網43の放電規制値から逸脱しない放電設定値DSを自動的に決定することができれば、上記と同様の効果が得られる。
【0045】
<実施の形態2>
図4は、実施の形態2に係る電動車両の充放電システムの構成図である。同図においては、図2に示したものと同様の機能を有する要素には同一符号を付してあるので、それらの説明は省略する。
【0046】
当該充放電システムにおいて、電動車両10は、電動車両10内の電力線とコネクタ15との間の接続/遮断を切り替えるスイッチ16を備えている。スイッチ16の動作は、第1のコントローラ12が出力するスイッチ制御信号SWによって制御される。
【0047】
第1のコントローラ12は、通常はスイッチ16をオフさせているが、電動車両10が充放電装置20に接続されて、放電設定値DSが電力変換装置13にセットされた場合にオンにして、電動車両10の電力線を商用電力網43に接続させる。
【0048】
図5は、本発明に係る充放電システムの動作を示すフローチャートである。同図に基づいて、当該充放電システムにおけるバッテリー11の充放電動作を説明する。なお、以下に示す充放電指令信号CCH,CC1,CC2および放電規制値DRの内容は、それぞれ実施の形態1と同様である。
【0049】
本実施の形態では、電動車両10が充放電装置20に接続された直後は、スイッチ16はオフ状態である。よってその状態では、電動車両10内の電力線は商用電力網43に接続されておらず、系統電力監視装置14は商用電力網43の電力の状態を監視できない。
【0050】
電動車両10が充放電装置20に接続された後、電動車両10のバッテリー11の充電あるいは放電を充放電装置20に行わせる場合、HEMS31は、充放電装置20の第2のコントローラ23に対して充放電指令信号CCHを送る(ステップS201)。第2のコントローラ23は、HEMS31からの充放電指令信号CCHを受けると、第1のコントローラ12へ、充放電指令信号CC2と、自己の記憶領域が保持している商用電力網43の放電規制値DRとを送信する(ステップS202)。
【0051】
第1のコントローラ12は、充放電指令信号CC2および放電規制値DRを受けると、放電規制値DRに基づいて、電力変換装置13にセットする放電設定値DSを決定する。放電設定値DSは、バッテリー11の放電を行うときに電力変換装置13が出力する電力の形式(電圧および周波数)を決めるための設定値である。電力変換装置13は、電力変換装置13が出力する電力が、放電規制値DRから逸脱しないように放電設定値DSを決定する。但し、実施の形態1とは異なり、ここでは電力状態信号VWは考慮されない。
【0052】
第1のコントローラ12は、放電設定値DSが決定すると、その放電設定値DSを電力変換装置13に送信する(ステップS203)。電力変換装置13は、放電設定値DSを受けると、バッテリー11の放電時に出力する電力形式のパラメータとして放電設定値DSをセットする(ステップS204)。
【0053】
電力変換装置13に放電設定値DSがセットされると、第1のコントローラ12は、スイッチ16にスイッチ制御信号SWを送り、スイッチ16をオン状態にする(ステップS205)。その結果、電動車両10内の電力線が、商用電力網43の電力線に接続される(ステップS206)。このとき系統電力監視装置14は、第2のコントローラ23の電力状態の確認(電圧および周波数の測定)を行い、その測定結果を示す電力状態信号VWを第1のコントローラ12へ送る(ステップS207)。
【0054】
第1のコントローラ12は、電力状態信号VWにより商用電力網43の電力状態を確認した後、電力変換装置13に充放電指令信号CC1を送信する(ステップS208)。このとき第1のコントローラ12は、電力状態信号VWに基づいて新たに放電設定値DSを決定し、第2のコントローラ23に送信してもよい。
【0055】
その後、電力変換装置13は、充放電指令信号CC1の内容に従ってバッテリー11を充電あるいは放電させる(ステップS209)。例えば、充放電指令信号CC1が充電指令である場合、電力変換装置13は、商用電力網43の電力をバッテリー11の電力形式に変換して、バッテリー11に供給する。逆に、充放電指令信号CC1が放電指令である場合は、電力変換装置13は、バッテリー11の電力を商用電力網43の電力形式に変換して、充放電装置20へと出力する。このとき電力変換装置13には、放電設定値DSに基づいて決定された放電設定値DSがセットされているため、電力変換装置13からは、放電設定値DS(商用電力網43の放電規制値)に則った形式で電力が出力される。
【0056】
本実施の形態の充放電システムにおいても、実施の形態1と同様の効果が得られる。それに加え、本実施の形態では、電力変換装置13に放電設定値DSが設定された後に、スイッチ16をオンにして、電動車両10内の電力線を商用電力網43に接続させるので、電力変換装置13に適切な放電設定値DSがセットされていない状態で、電動車両10から商用電力網43へ電力が放出されることを確実に防止できる。
【0057】
実施の形態1,2では充放電装置20が個人(電動車両10のユーザー)の住宅30に設置された例を示しているため、充放電装置20はHEMS31の管理下に置かれているが、充放電装置20の設置場所は住宅に限られない。例えば、充放電装置20が工場に設置される場合、充放電装置20は、工場内の電力需要を平滑化するファクトリーエネルギーマネージメントシステム(Factory Energy Management System;FEMS)の管理下に置かれる。同様に、ビルの駐車場に充放電装置20が設置される場合、充放電装置20は、ビルエネルギーマネージメントシステム(Building Energy Management System;BEMS)の管理下に置かれる。さらに、充放電装置20が公共の充放電スポットとして使用される場合、充放電装置20はCEMS44により直接制御される。充放電装置20が、FEMS、BEMSあるいはCEMSによって制御される場合でも、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【0058】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 電動車両、11 バッテリー、12 第1のコントローラ、13 電力変換装置、14 系統電力監視装置、15 コネクタ、16 スイッチ、20 充放電装置、21 プラグ、22 接続ケーブル、23 第2のコントローラ、24 記憶領域、30 住宅、31 HEMS、32 太陽光発電装置、33 電力負荷、41 需要家、42 発電所、43 商用電力網、44 CEMS。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーを有する電動車両と、
商用電力網に接続し、前記電動車両の外部から前記バッテリーの充放電を行う充放電装置とを含み、
前記電動車両は、
前記充放電装置による前記バッテリーの放電時に、当該バッテリーの電力を前記商用電力網の電力形式に変換して前記充放電装置内の前記商用電力網に繋がる電力線へ出力する電力変換装置と、
前記充放電装置が前記電力線に出力する放電電力の形式の設定値である放電設定値を、前記商用電力網に関する情報に基づいて決定する第1のコントローラとを備える
ことを特徴とする電動車両の充放電システム。
【請求項2】
前記充放電装置は、
前記バッテリーの放電を開始する前に、前記商用電力網の放電規制値を前記第1のコントローラに送信する第2のコントローラを備え、
前記第1のコントローラは、前記放電規制値に基づいて、前記放電設定値を決定する
請求項1記載の電動車両の充放電システム。
【請求項3】
前記電動車両は、
前記バッテリーの放電を開始する前に、前記商用電力網の電力の状態を確認し、その状態を示す電力状態信号を前記第1のコントローラに送信する系統電力監視装置をさらに備え、
前記第1のコントローラは、前記電力状態信号に基づいて、前記放電設定値を決定する
請求項1記載の電動車両の充放電システム。
【請求項4】
前記電動車両は、
前記放電設定値が前記電力変換装置にセットされてから、当該電力変換装置を前記電力線に接続させるスイッチをさらに備える
請求項3記載の電動車両の充放電システム。
【請求項5】
バッテリーと、
外部の充放電装置による前記バッテリーの放電時に、当該バッテリーの電力を前記充放電装置が接続した商用電力網の電力形式に変換して出力する電力変換装置と、
前記バッテリーの放電時に前記充放電装置が出力する放電電力の形式の設定値である放電設定値を、前記商用電力網の電力形式に応じて決定するコントローラとを備える
ことを特徴とする電動車両。
【請求項6】
外部の充放電装置による前記バッテリーの放電が開始される前に、前記商用電力網の電力の状態を確認し、その状態を示す電力状態信号を前記コントローラに送信する系統電力監視装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記放電設定値を、前記電力状態信号に基づいて決定する
請求項5記載の電動車両。
【請求項7】
前記放電設定値が前記電力変換装置にセットされてから、当該電力変換装置を前記商用電力網に繋がる電力線に接続させるスイッチをさらに備える
請求項6記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−93991(P2013−93991A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234954(P2011−234954)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】