説明

電圧変換回路

【課題】低電圧・大電流・短時間での電流立ち上がりを要求する負荷に対する応答性の改善。
【解決手段】トランスは、一次コイル、一次コイルに対し密に磁気結合された第1二次コイル、一次コイルに対し疎に磁気結合されかつ第1二次コイルと直列接続された第2二次コイルを具備する。スイッチング素子のオン時に、直流電圧により一次コイルに流れる第1電流をスイッチング素子を通して出力し、第1電流に起因して第2二次コイルに生じる磁気誘導により第2二次コイルに流れる第2電流を第2素子を通して出力する。スイッチング素子のオフ時に、一次コイルに発生する逆起電力により一次コイルに流れる第5電流をスナバ回路を通して出力し、第1二次コイルに発生する逆起電力により第1二次コイルに流れる第3電流を第1素子を通して出力し、第3電流に起因して第2二次コイルに生じる磁気誘導により第2二次コイルに流れる第4電流を第2素子を通して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧を変換する電圧変換回路(DC−DCコンバータ)は、スイッチング電源回路等に広く利用されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照。)。
【0003】
【非特許文献1】コーセル株式会社、”電源について”、P.36-37、[online]、[平成17年6月22日検索]、インターネット<URL:http://www.cosel.co.jp/jp/products/img/technotes.pdf>
【非特許文献2】リニアテクノロジー株式会社、”アプリケーション・ノート44”、P.23-26、[online]、[平成17年6月22日検索]、インターネット<URL:http://www.linear-tech.co.jp/application_note/jp_pdf/jan44.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、低電圧・大電流・短時間での電流立ち上がりを要求する負荷に対する応答性を改善した電圧変換回路を提供することにある。また、本発明の別の目的は、トランスの二次側に平滑用のチョークコイルを必要としない電圧変換回路を提供することにある。さらに、本発明のさらに別の目的は、トランスの一次側に配設されるスイッチング手段に高耐電圧性が要求されない電圧変換回路を提供することにある。さらに、本発明のさらに別の目的は、スナバ回路による電力損失を低減した電圧変換回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の局面にかかる電圧変換回路は、請求項1に記載したように、一次コイルと、該一次コイルに対し密に磁気結合された第1二次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合され、かつ第1二次コイルと直列接続された第2二次コイルとを具備するトランスと、前記一次コイルに印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、前記第1二次コイルに対して直列接続された第1電流路を具備し、該第1電流路が前記スイッチング素子のオン時には遮断され、かつ該スイッチング素子のオフ時には該第1二次コイルを流れる電流を導通させる第1素子と、前記第2二次コイルに対して直列接続された第2電流路を具備し、該第2電流路が前記スイッチング素子のオン時には該第2二次コイルを流れる電流を導通させ、かつ該スイッチング素子のオフ時には該スイッチング素子のオン時と同方向に該第2二次コイルを流れる電流を導通させると共に逆方向に流れる電流に対して遮断される第2素子と、前記スイッチング素子に並列接続された第3電流路を具備し、該スイッチング素子のオン時には遮断され、かつ該スイッチング素子のオフ時の瞬間は導通するスナバ回路とを有し、前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルに流れる第1電流を該スイッチング素子を通して出力し、該第1電流に起因して前記第2二次コイルに生じる磁気誘導により該第2二次コイルに流れる第2電流を前記第2素子を通して出力し、かつ、前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により該一次コイルに流れる第5電流を前記スナバ回路を通して出力し、前記第1二次コイルに発生する逆起電力により該第1二次コイルに流れる第3電流を前記第1素子を通して出力し、該第3電流に起因して前記第2二次コイルに生じる磁気誘導により該第2二次コイルに流れる第4電流を前記第2素子を通して出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の第1の局面にかかる電圧変換回路によれば、一次コイルと、該一次コイルに対し密に磁気結合された第1二次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合され、かつ第1二次コイルと直列接続された第2二次コイルとを具備するトランスと、前記一次コイルに印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、前記第1二次コイルに対して直列接続された第1電流路を具備し、該第1電流路が前記スイッチング素子のオン時には遮断され、かつ該スイッチング素子のオフ時には該第1二次コイルを流れる電流を導通させる第1素子と、前記第2二次コイルに対して直列接続された第2電流路を具備し、該第2電流路が前記スイッチング素子のオン時には該第2二次コイルを流れる電流を導通させ、かつ該スイッチング素子のオフ時には該スイッチング素子のオン時と同方向に該第2二次コイルを流れる電流を導通させると共に逆方向に流れる電流に対して遮断される第2素子と、前記スイッチング素子に並列接続された第3電流路を具備し、該スイッチング素子のオン時には遮断され、かつ該スイッチング素子のオフ時の瞬間は導通するスナバ回路とを有し、前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルに流れる第1電流を該スイッチング素子を通して出力し、該第1電流に起因して前記第2二次コイルに生じる磁気誘導により該第2二次コイルに流れる第2電流を前記第2素子を通して出力し、かつ、前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により該一次コイルに流れる第5電流を前記スナバ回路を通して出力し、前記第1二次コイルに発生する逆起電力により該第1二次コイルに流れる第3電流を前記第1素子を通して出力し、該第3電流に起因して前記第2二次コイルに生じる磁気誘導により該第2二次コイルに流れる第4電流を前記第2素子を通して出力することを特徴とする。したがって、低電圧・大電流・短時間での電流立ち上がりを要求する負荷に対する応答性が極めて高い。
【0007】
上記した本発明の目的および利点並び他の目的および利点は、以下の実施の形態の説明を通じてより明確に理解される。もっとも、以下に記述する実施の形態は例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[実施の形態]
図1は、本発明を適用した実施の形態における電圧変換回路100の基本的な構成を示す回路図である。
【0009】
図1に示す電圧変換回路100は、所定電圧値の直流電圧に基づき電圧変換を行って、降圧された電圧値の直流電圧を出力する降圧コンバータ回路であり、単一のトランスT1を備える。また、電圧変換回路100は、出力端19と、出力端19を基準として正電位を出力する出力端18とを備え、出力端18と出力端19との間に平滑用のコンデンサC1と所定の負荷Lが接続される。
【0010】
トランスT1の一次側のコイルP1の一端(巻き始め)13には直流電源11の正極が接続され、他端(巻終わり)14にはトランジスタ(本実施の態様ではFET)Q11のドレインが接続されている。トランジスタQ11のソースは出力端18に接続されている。トランジスタQ11は、ゲートG11に入力される駆動用のパルス電圧に従ってオン/オフを切り換える動作を行い、トランジスタQ11がオンの状態ではコイルP1に対して直流電源11から直流電圧が供給されるが、トランジスタQ11がオフの状態では直流電圧の供給は遮断される。
【0011】
トランジスタQ11のドレイン−ソース間に並列に接続されている回路は、スナバ回路であり、スナバ回路は、ダイオードDsとコンデンサCsとの直列回路と、コンデンサCsに並列に接続されるツェナーダイオードZesと抵抗Rsとの直列回路とを備えている。
【0012】
したがって、トランスT1の一次側においては、トランジスタQ11がオンのときに、直流電源11の正極→コイルP1の一端(巻き始め)13→コイルP1の他端(巻終わり)14→トランジスタQ11のドレイン→トランジスタQ11のソース→負荷(およびコンデンサC1)の経路に電流が流れ、トランジスタQ11がオフのときに、直流電源11の正極→コイルP1の一端(巻き始め)13→コイルP1の他端(巻終わり)14→ダイオードDs→コンデンサCs→負荷(およびコンデンサC1)の経路に電流が流れる。
【0013】
トランスT1の二次側のコイルS1の一端(巻き始め)15にはダイオードD15のカソードが接続され、ダイオードD15のアノードは出力端19(およびグランド)に接続される。トランスT1の二次側のコイルS1の他端(巻終わり)は、トランスT1の二次側のコイルS2の一端(巻き始め)に接続されるが、この接続部16は、直列に接続されたコイルS1およびコイルS2を1つの二次側コイルとみなしたときには二次側コイルの中間タップに相当する。接続部16はトランジスタQ11のソースおよび出力端18に接続される。また、コイルS2の他端(巻終わり)17はダイオードD16のカソードに接続され、ダイオードD16のアノードは上記出力端19(およびグランド)に接続される。
【0014】
ダイオードD16と並列にトランジスタ(本実施の態様ではFET)Q12が接続される。トランジスタQ12のドレインはダイオードD16のカソードに接続され、ソースはダイオードD16のアノードに接続される。トランジスタQ12のゲートG12には、トランジスタQ11のゲートG11に入力される駆動用のパルス電圧が同時に入力される。なお、電圧変換回路に低電圧出力特性(例えば1V〜数V)が要求される場合等には、ダイオードD16にショットキーバリアダイオード等の順方向電圧降下が小さい整流素子を使用することが好ましく、ダイオードD16は、トランジスタQ12がオフしたときに(このときトランジスタQ12の寄生ダイオードを通してトランジスタQ12のドレインとソースとが導通されるが、この寄生ダイオードによる順方向電圧降下よりも低い順方向電圧降下で)コイルS2を流れる電流を通す迂回路を提供する。
【0015】
したがって、トランスT1の二次側においては、ダイオードD15のカソード→コイルS1の一端(巻き始め)15→コイルS1の他端(巻終わり)すなわち接続部16→負荷(およびコンデンサC1)→ダイオードD15のアノードの経路に電流が流れ、トランジスタQ12のドレイン(ダイオードD16のカソード)→コイルS2の他端(巻終わり)17→コイルS2の一端(巻き始め)すなわち接続部16→負荷(およびコンデンサC1)→トランジスタQ12のソース(ダイオードD16のアノード)の経路に電流が流れる構成となっている。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の電圧変換回路は、単に直流電圧を変換する機器に適用可能であるのみならず、例えば、本発明の電圧変換回路の入力段(図中の直流電源11)に、交流電圧を整流する整流回路を接続すれば、交流電圧から所望の直流電圧を出力する電源回路(例えば、スイッチング電源回路)として利用できる。このように、本発明の電圧変換回路は、直流電圧の電圧変換を要する全ての回路及び当該回路を搭載する機器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した実施の形態における電圧変換回路100の基本的な構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0018】
100 電圧変換回路
11 直流電源
18,19 出力端
Q11,Q12 トランジスタ
C1,Cs コンデンサ
D15,D16,Ds ダイオード
Zes ツェナーダイオード
L 負荷
P1 一次側コイル
S1,S2 二次側コイル
Rs 抵抗
T1 トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一次コイルと、該一次コイルに対し密に磁気結合された第1二次コイルと、該一次コイルに対し疎に磁気結合され、かつ第1二次コイルと直列接続された第2二次コイルとを具備するトランスと、
(b)前記一次コイルに印加する直流電圧のオンオフを切り替えるスイッチング素子と、
(c)前記第1二次コイルに対して直列接続された第1電流路を具備し、該第1電流路が前記スイッチング素子のオン時には遮断され、かつ該スイッチング素子のオフ時には該第1二次コイルを流れる電流を導通させる第1素子と、
(d)前記第2二次コイルに対して直列接続された第2電流路を具備し、該第2電流路が前記スイッチング素子のオン時には該第2二次コイルを流れる電流を導通させ、かつ該スイッチング素子のオフ時には該スイッチング素子のオン時と同方向に該第2二次コイルを流れる電流を導通させると共に逆方向に流れる電流に対して遮断される第2素子と、
(e)前記スイッチング素子に並列接続された第3電流路を具備し、該スイッチング素子のオン時には遮断され、かつ該スイッチング素子のオフ時の瞬間は導通するスナバ回路とを有し、
(f)前記スイッチング素子のオン時に、前記直流電圧により前記一次コイルに流れる第1電流を該スイッチング素子を通して出力し、該第1電流に起因して前記第2二次コイルに生じる磁気誘導により該第2二次コイルに流れる第2電流を前記第2素子を通して出力し、かつ、
(g)前記スイッチング素子のオフ時に、前記一次コイルに発生する逆起電力により該一次コイルに流れる第5電流を前記スナバ回路を通して出力し、前記第1二次コイルに発生する逆起電力により該第1二次コイルに流れる第3電流を前記第1素子を通して出力し、該第3電流に起因して前記第2二次コイルに生じる磁気誘導により該第2二次コイルに流れる第4電流を前記第2素子を通して出力することを特徴とする電圧変換回路。

【図1】
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【公開番号】特開2007−110838(P2007−110838A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−299290(P2005−299290)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(504296415)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ・イー・エックス・テクノ (57)
【Fターム(参考)】