説明

電圧調整装置

【課題】検出電流及び取付スペースが小さい電流検出器を用い低圧配電線の送電端から末端までの電圧を規定値内に調整する電圧調整装置。
【解決手段】高圧配電線1aに接続される1次巻線と1次巻線の電圧を降圧する2次巻線とを有する降圧変圧器11と降圧変圧器の2次巻線に直列に接続され且つ低圧配電線1bに接続される1次巻線と1次巻線に電圧を発生させる2次巻線とを有する直列変圧器T1a,T2aとを備え低圧配電線の送電端から末端までの間の複数地点に接続される負荷に給電する柱上変圧器10の出力電圧を調整し、直列変圧器の2次巻線の電流を検出する電流検出器22a,22b、降圧変圧器の2次巻線の電圧又は柱上変圧器の出力電圧を検出する電圧検出器23、電流検出器の検出電流と電圧検出器の検出電圧と低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき低圧配電線の送電端から末端までの電圧が規定値内になるように直列変圧器の2次巻線の電圧を調整する電圧調整回路20。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱に設置された柱上変圧器の低圧側の電圧を調整する電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
柱上変圧器から負荷までの配電線(低圧配電線)が長い場合、負荷の軽重に応じて配電線の電圧変動(線路電圧変動)も大きくなる。このため、電圧調整装置を設けて、配電線の電圧を調整し、電力供給における電圧を安定化させている。この電圧調整装置としては、例えば、特許文献1と特許文献2とが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された配電線路の電圧制御方法は、負荷中心点電圧の変動率が許容値になるように制御するものであり、配電線路に直列に接続された直列変圧器と、配電線路から電力を受けて直列変圧器に無効電力ないし有効電力を出力して直列変圧器の出力電力を制御する電力変換器とからなる直列型電圧制御装置を設置し、その装置の1次側の電圧と補償すべき目標地点である負荷の中心点までの線路インピーダンスおよび線路電流から負荷中心点電圧を算出し、その電圧変動分を一定値に制御する。
【0004】
また、特許文献2に記載された電圧調整装置は、配電線における電圧降下を精度良く求めるものであり、交流電圧を負荷に配電する配電線に設けられ負荷側電圧を切換えるためのタップを有する変圧器と、タップ切換器と、配電線の電圧を計測する電圧計測部と、配電線の電流を計測する電流計測部と、配電線の電圧及び電流との位相差に応じた力率を求める力率取得部と、力率と配電線の抵抗及びリアクタンスとに基づいて配電線のインピーダンスを算出するインピーダンス算出部と、インピーダンスを電流計測部で計測された電流に乗算して配電線の電圧降下を求める電圧降下算出部と、配電線の電圧降下を電圧計測部で計測された電圧から減算して求められた負荷側電圧の実測値と予め定められた負荷電圧の基準値との差分値に応じてタップを切換えるべくタップ切換器を制御するタップ切換制御部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−268795号公報
【特許文献2】特開2006−230162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、負荷は配電線の末端に一箇所を想定し、その配電線(配電線路)インピーダンスから負荷中心点電圧を求める。特許文献2では、負荷は配電線の末端に一箇所を想定し、その配電線インピーダンスから配電線の末端電圧を求めるものである。このため、特許文献1,2では、配電線の送電端から末端までの間の複数地点に負荷が接続される場合には対応していない。
【0007】
また、特許文献1,2では、配電線に接続された変流器によって電流を検出している。一般的な電流検出方法では、配電線に変流器を接続して電流を検出するが、変流器を配電線に直接挿入しなければならず、検出電流が大きく、取り付けスペース及びコスト負担が大きくなる。
【0008】
また、ホール素子を用いた電流検出器は、小型で高精度であるが、柱上変圧器及び直列変圧器が変圧器油入タンクに入るが、変圧器油入タンクの中は高温となる。このため、ホール素子を用いた電流検出器を変圧器油入タンクに内蔵することはできない。その結果、電流検出器を外付けケース内に別途取り付けなければならず、作業負担、取り付けスペース及びコスト負担が大きくなる。
【0009】
本発明は、検出電流が小さく且つ取付スペースが小さくしかも安価な電流検出器を用いて、低圧配電線の送電端から末端までの電圧を規定値内に調整することができる電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、高圧配電線に接続される1次巻線と該1次巻線の電圧を降圧する2次巻線とを有する降圧変圧器と前記降圧変圧器の2次巻線に直列に接続され且つ低圧配電線に接続される1次巻線と該1次巻線に電圧を発生させる2次巻線とを有する直列変圧器とを備え前記低圧配電線の送電端から末端までの間の複数地点に接続される負荷に給電する柱上変圧器に接続され、前記柱上変圧器の出力電圧を調整する電圧調整装置であって、前記直列変圧器の2次巻線の電流を検出する電流検出器と、前記降圧変圧器の2次巻線の電圧又は前記柱上変圧器の出力電圧を検出する電圧検出器と、前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧と前記低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき前記低圧配電線の送電端から末端までの電圧が規定値内になるように前記直列変圧器の2次巻線の電圧を調整する電圧調整回路とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明では、請求項1記載の電圧調整装置において、前記電圧調整回路は、前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧とに基づき前記負荷の有効電流および無効電流を算出し、前記負荷の有効電流および無効電流と前記低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき前記低圧配電線の末端の電圧を算出する制御回路と、前記制御回路で算出された前記低圧配電線の末端の電圧が規定値内になるように前記直列変圧器の1次巻線の電圧で調整するために、前記直列変圧器の2次巻線の電圧を調整する電圧調整部とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明では、請求項1記載の電圧調整装置において、太陽光発電装置が前記低圧配電線の送電端から末端までの間の複数地点の少なくとも1地点に接続され、前記太陽光発電装置の発電容量を予測するために設けられ、太陽光を受けて発電し、その発電量を太陽電池発電量として計測する検出用太陽電池が前記電圧調整回路に接続され、前記電圧調整回路は、前記検出用太陽電池からの太陽電池発電量により算出される前記太陽光発電装置の発電容量と前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧と前記低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき前記低圧配電線の送電端から末端までの電圧が規定値内になるように前記直列変圧器の2次巻線の電圧を調整することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明では、請求項3記載の電圧調整装置において、前記電圧調整回路は、前記検出用太陽電池からの太陽電池発電量と前記太陽光発電装置の定格発電容量とに基づき前記太陽発電装置の発電容量を算出し、前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧とに基づき前記負荷の有効電流および無効電流を算出し、前記太陽光発電装置の発電容量と前記負荷の有効電流および無効電流と前記低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき前記低圧配電線の末端の電圧を算出する制御回路と、前記制御回路で算出された前記低圧配電線の末端の電圧が規定値内になるように前記直列変圧器の1次巻線の電圧で調整するために、前記直列変圧器の2次巻線の電圧を調整する電圧調整部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電流検出器で直列変圧器の2次巻線の電流を検出して、低圧配電線に流れる電流を検出するようにしたので、検出電流が小さく且つ取付スペースが小さくしかも安価となり、低圧配電線の送電端から末端までの電圧を規定値内に調整することができる。
【0015】
また、本発明によれば、検出用太陽電池を用いることにより電圧の調整精度をさらに向上することができる。
【0016】
また、本発明によれば、直列変圧器の2次巻線の電圧を調整することにより、直列変圧器の1次巻線の電圧を調整して、制御回路で算出された低圧配電線の末端の電圧が規定値内になるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1の電圧調整装置の回路構成図である。
【図2】本発明の実施例1の電圧調整装置を含む配電システムの構成図である。
【図3】実施例1の電圧調整装置による低圧配電線の末端電圧の電圧算出を示す図である。
【図4】実施例1の電圧調整回路の具体例の全体構成図である。
【図5】図4に示す実施例1の電圧調整回路の具体例の詳細構成図である。
【図6】図4に示す実施例1の電圧調整回路のトライアックのオン/オフと補償電圧との関係を示す図である。
【図7】実施例1の電圧調整装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施例2の電圧調整回路の具体例の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の電圧調整装置の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は、直列変圧器の2次巻線の電流を検出したことを特徴とする。より詳細には、本発明の電圧調整装置は、降圧変圧器及び直列変圧器から構成される高圧配電線より受電し低圧配電線に給電する柱上変圧器の出力電圧を調整する電圧調整装置であって、負荷が低圧配電線の送電端から末端までの間の複数地点に接続される場合には、直列変圧器の2次巻線の電流と、降圧変圧器の2次巻線の電圧又は柱上変圧器の出力電圧と、低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき低圧配電線の送電端から末端までの電圧が規定値内になるように直列変圧器の2次巻線の電圧を調整することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、検出用太陽電池を用いることにより電圧の調整精度をさらに向上したことを特徴とする。より詳細には、本発明の電圧調整装置は、太陽光発電装置が低圧配電線の送電端から末端までの間の複数地点の少なくとも1地点に接続され、検出用太陽電池が太陽光発電装置の発電容量を予測するために設けられる場合には、検出用太陽電池からの太陽電池発電量により算出される太陽光発電装置の発電容量と、直列変圧器の2次巻線の電流と、降圧変圧器の2次巻線の電圧又は柱上変圧器の出力電圧と、低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき低圧配電線の送電端から末端までの電圧が規定値内になるように直列変圧器の2次巻線の電圧を調整することを特徴とする。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の実施例1の電圧調整装置の回路構成図である。図2は本発明の実施例1の電圧調整装置を含む配電システムを示す構成図である。
【0021】
柱上変圧器10は、高圧配電線1aに接続される1次巻線Pと1次巻線Pの電圧を降圧する2次巻線S1,S2とを有する降圧変圧器11と、降圧変圧器11の2次巻線S1,S2および低圧配電線1bに直列に接続される1次巻線T1ap,T2apと1次巻線T1ap,T2apに電圧を発生させる2次巻線T1as,T2asとを有する直列変圧器T1a,T2aとを有している。
【0022】
電圧調整装置2は、検出用太陽電池21、電流検出器22a,22b、電圧検出器23、電圧調整部24a,24b、制御回路25、ゲート回路26a,26bを有している。
【0023】
柱上変圧器10は、図1に示すように、高圧配電線1aを介して高圧系統電源1(例えば、3相3線式6.6kV電源)に降圧変圧器11の1次巻線Pが接続され、低圧配電線1bの送電端に直列変圧器T1a,T2aの1次巻線T1ap,T2apが直列に接続されている。また、図2に示すように、低圧配電線1bの送電端から末端までの間の複数地点Pt1〜Pt5に複数の負荷3−1〜3−5と複数の太陽光発電装置(PV)4−1〜4−5とが接続されている。
【0024】
低圧配電線1bの配電線インピーダンスZは、抵抗が%Rであり、リアクタンスが%Xである。低圧配電線1bの地点Pt1には、負荷3−1および太陽光発電装置4−1が接続され、地点Pt2には、負荷3−2および太陽光発電装置4−2が接続され、地点Pt3には、負荷3−3および太陽光発電装置4−3が接続され、地点Pt4には、負荷3−4および太陽光発電装置4−4が接続され、地点Pt5には、負荷3−5および太陽光発電装置4−5が接続されている。
【0025】
なお、太陽光発電装置は、地点Pt1〜Pt5の全てに設ける必要はなく、例えば、地点Pt1〜Pt5の少なくとも1地点に設けられても良い。
【0026】
また、太陽光発電装置は、低圧配電線の送電端から末端までの間の複数地点で同一の定格発電容量の太陽光発電装置が接続されるとは限らない。また、日射量が変化すると各々の太陽光発電装置の発電容量も変化する。このような場合、低圧配電線の送電端から末端までの電圧を精度良く規格値内に調整するためには、各太陽光発電装置の各発電容量を予測する必要がある。本実施例では、この予測に検出用太陽電池を設ける。
【0027】
検出用太陽電池21は、各太陽光発電装置4−1〜4−5の各発電容量を予測するために設けられたものであり、太陽光を受けて発電し、その発電量を太陽電池発電量として電圧調整回路20に出力する。ここで、検出用太陽電池21および各太陽光発電装置4−1〜4−5の各太陽電池は、太陽からの日射量がほぼ等しく届くように配置されている。また、電圧調整装置2には各地点Pt1〜Pt5における各太陽光発電装置4−1〜4−5の各定格発電容量が予め入力されている。
【0028】
また、電圧調整回路20は、検出用太陽電池21からの太陽電池発電量と電流検出器22a,22bからの検出電流と電圧検出器23からの検出電圧とに基づき低圧配電線1bの送電端から末端までの電圧を規定値内に調整する。
【0029】
より詳細には、電圧調整装置2は、低圧配電線1bの送電端から低圧配電線1bの末端までの配電線インピーダンスZ(%R,%X)を予め入力するとともに、電流検出器22a,22bの検出電流と電圧検出器23の検出電圧とに基づき有効電流と無効電流とを演算し、太陽光発電装置4−1〜4−5による低圧配電線1bの末端電圧の電圧上昇を計算する。
【0030】
また、電圧調整装置2は、検出用太陽電池21からの太陽電池発電量に基づき、低圧配電線1bの送電端から末端までの間に取付けた各太陽光発電装置4−1〜4−5の各発電容量を予測計算する。具体的には、電圧調整装置2は、検出用太陽電池21からの太陽電池発電量が定格太陽電池発電量(100%)に対して何%かを求める。これをAo%とする。また、電圧調整装置2に予め入力されている各地点Pt1〜Pt5における各太陽光発電装置4−1〜4−5の各定格発電容量(各定格電流)をIpv1T〜Ipv5Tとすると、各太陽光発電装置4−1〜4−5の実際の発電による有効電流Ipv1(又はIpv2,Ipv3,Ipv4,Ipv5)は、
Ipv1(又はIpv2,Ipv3,Ipv4,Ipv5)=Ipv1T(又はIpv2T,Ipv3T,Ipv4T,Ipv5T)×Ao
として各地点毎に求められる。
【0031】
図3は実施例1の電圧調整装置2による低圧配電線1bの末端電圧の電圧算出を示す図である。ここでは、説明を簡単にするために、地点Pt0、Pt1、Pt2のみとし、地点Pt0が低圧配電線1bの送電端で柱上変圧器10の出力端子(R2,N2,T2)の位置とし、地点Pt2が低圧配電線1bの末端に相当する。
【0032】
P1は地点Pt1の負荷3−1の有効電力、Q1は無効電力、Ip1は有効電流、Iq1は無効電流、PV1は太陽光発電装置4−1の有効電力、Ipv1は有効電流である。P2は地点Pt2の負荷3−2の有効電力、Q2は無効電力、Ip2は有効電流、Iq2は無効電流、PV2は太陽光発電装置4−2の有効電力、Ipv2は有効電流である。地点Pt0、Pt1間の配電線インピーダンスは、抵抗r1,リアクタンスx1、地点Pt1、Pt2間の配電線インピーダンスは、抵抗r2,リアクタンスx2である。
【0033】
電圧調整装置2は、電流検出器22a,22bからの検出電流と電圧検出器23からの検出電圧とに基づき、低圧配電線1bの末端の電圧を算出し、低圧配電線1bの送電端電圧から末端電圧までの電圧が規定値内になるように柱上変圧器10の出力電圧を調整する。
【0034】
各負荷および各太陽光発電装置の各発電容量が低圧配電線1bに対して、均等に配置され、かつ負荷が力率負荷である場合には、配電線インピーダンス(%R,%X)<<負荷インピーダンス(RL、XL)の条件で、低圧配電線一線当り(一相当り)、
配電線電圧降下=有効電流×配電線抵抗r+無効電流×配電線リアクタンスxと見なせる。このため、低圧配電線1bの末端電圧は、
末端電圧=送電端電圧−係数K×(有効電流×配電線抵抗%R+無効電流×配電線リアクタンス%X)
で求められる。
【0035】
係数Kは、%Rと抵抗値、%Xとリアクタンス値、配電線のインピーダンスおよび配電線の送電端に流れる有効電流の均等から配置された負荷量を求めるための換算から求められる。
【0036】
Voは地点Pt0の電圧、Iq0は負荷の総無効電流(Iq1+Iq2)、Ip0は負荷の総有効電流(太陽光発電電流(有効電流)を含む)=(Ip1−Ipv1+Ip2−Ipv2)である。
【0037】
基準電圧(検出電圧)を地点Pt0、末端電圧を地点Pt2とした場合の各配電線電圧降下は、配電線インピーダンス(%R、%X)<<需要家の負荷インピーダンス(RL、XL)の条件で、低圧配電線一線当り(一相当り)以下のようになる。
【0038】
地点Pt1、Pt2間の電圧降下V1-2は、
V1-2=r2×(Ip2−Ipv2)+x2×Iq2
となる。
【0039】
地点Pt0、Pt1間の電圧降下V0-1は、
V0-1=r1×(Ip1+Ip2−Ipv1−Ipv2)+x1×(Iq1+Iq2)
となる。
【0040】
地点Pt0、Pt2間の電圧降下V0-2は、
r1=r2、x1=x2として
V0-2=r1×(Ip1+2×Ip2−Ipv1−2×Ipv2)+x1×(Iq1+2×Iq2)となる。
【0041】
P1=P2、Q1=Q2と仮定すると、
V0-2=r1×(3×Ip2−Ipv1−2×Ipv2)+x1×(3×Iq2)
地点Pt2の電圧(末端電圧)V2は、
P1=P2、Q1=Q2と仮定すると
V2=V0−r1×(3×Ip2−Ipv1−2×Ipv2)+x1×(3×Iq2)
さらに、PV1=PV2と仮定すると
V0-2=r1×(3×Ip2−3×Ipv2)+x1×(3×Iq2)
地点Pt2 の電圧は
V2=V0−r1×(3×Ip2−3×Ipv2)+x1×(3×Iq2)
=V0−r1×1.5×Ip0+x1×1.5×Iq0
さらに、負荷力率100%とした場合、
V0-2=r1×(3×Ip2−3×Ipv2)
地点Pt2の電圧は
VPt2 =V0−r1×(3×Ip2−3×Ipv2)=V0−r1×1.5×Ip0
となる。
【0042】
図4は実施例1の電圧調整回路の具体例の全体構成図である。図5は図4に示す実施例1の電圧調整回路の具体例の詳細構成図である。単相3線式の低圧配電線において、入力端子R1,N1,T1に降圧変圧器11の2次巻線S1,S2から単相3線式交流が入力され、出力端子X1,X2,Y1,Y2から単相交流が出力される。
【0043】
電流検出器22a,22bは、電圧調整回路20の出力電流に基づいて柱上変圧器10の2次側(低圧側)に流れる電流を検出するもので、より詳しくは、電圧調整回路20の出力電流に基づいて直列変圧器T1a,T2aの2次巻線T1as,T2asに流れる電流を検出して、制御回路25に出力する。
【0044】
電圧検出器23は、入力端子R1,N1,T1の電圧を検出して、制御回路25に出力する。なお、出力端子R2,N2,T2の電圧を検出して、制御回路25に出力しても良い。制御回路25は、メモリ25aを有する。メモリ25aは、各地点間の配電線インピーダンスと各地点における各太陽光発電装置4−1〜4−5の各定格発電容量(各定格電流)とを記憶する。
【0045】
制御回路25は、検出用太陽電池21、電流検出器22a,22b、および電圧検出器23の検出信号とメモリ25aからの各地点間の配電線インピーダンスと各地点における各太陽光発電装置4−1〜4−5の各定格発電容量(各定格電流)とに基づき、低圧配電線1bの末端電圧を算出する。
【0046】
ゲート回路26a,26bは、制御回路25からの末端電圧に基づき、電圧調整部24a,24bにゲート信号を送出する。
【0047】
電圧調整部24aは、R−N相側に設けられ、電圧調整部24bは、N−T相側に設けられている。電圧調整部24a,24bは、ゲート回路26a,26bからのゲート信号に基づき、低圧配電線1bの末端電圧が規定値内になるように交流半導体スイッチからなるトライアックTRC1〜TRC5,TRC6〜TRC10をオンまたはオフさせることにより補償電圧(直列変圧器T1aの1次巻線T1aPの電圧、T2aの1次巻線T2apの電圧)を変えて、末端電圧の電圧上昇対策および電圧降下対策を行う。
【0048】
図5では、電圧調整部24aの詳細構成を示す。なお、電圧調整部24bも電圧調整部24aと同一構成である。ここでは、電圧調整部24aの構成を説明する。
【0049】
図5において、直列変圧器T1aの1次巻線T1apは、入力端子R1と出力端子R2との間に接続され、直列変圧器T1aの2次巻線T1asの一端は、出力端子X1を介してトライアックTRC1,TRC2の一端に接続されている。直列変圧器T1aの2次巻線T1asの他端は、出力端子X2を介し、リアクトルL1と電流検出器22aを介してトライアックTRC3,TRC4,TRC5の一端に接続されている。
【0050】
トライアックTRC1の他端は、トライアックTRC5の他端および変圧器T3の2次巻線T3sの一端に接続されている。トライアックTRC2の他端は、トライアックTRC3の他端に接続されるとともに、ヒューズF1を介して変圧器T3の2次巻線T3sの他端に接続されている。トライアックTRC4の他端は、ヒューズF2を介して変圧器T3の2次巻線T3sの中点端に接続されている。変圧器T3の1次巻線T3pの一端は直列変圧器T1aの1次巻線T1apの一端に接続されている。変圧器T3は、誘導雷などによる半導体素子の破損を防止する。
【0051】
図6はトライアックTRC1〜TRC5のオン/オフと補償電圧との関係を示す図である。ゲート回路26aは、トライアックTRC1〜TRC5のゲート端子にゲート信号を出力する。
【0052】
トライアックTRC1〜TRC5は、ゲート信号に基づき、図6のテーブルに示すようにオン又はオフして、例えば、補償電圧を+5V,+2.5V,0V,−2.5V,−5Vとすることにより、直列変圧器T1aの1次巻線T1apの両端電圧が補償される。
【0053】
低圧配電線1bの末端電圧が規定電圧以上であれば、最初に補償電圧を−2.5Vとし、まだ末端電圧が規定電圧以上であれば、補償電圧を−5Vとする。末端電圧が規定電圧未満であれば、最初に補償電圧を+2.5Vとし、まだ末端電圧が規定電圧未満であれば、補償電圧を+5Vとする。
【0054】
例えば、補償電圧を−2.5Vとするときには、トライアックTRC2,TRC4をオンさせることにより、100Vの電圧を直列変圧器T1aの2次巻線T1asに印加させ、直列変圧器T1aの1次巻線T1apに−2.5Vを発生させる。
【0055】
この場合、直列変圧器T1aの電圧比は2.5V/100Vとなるが、50KVAの装置では、直列変圧器T1aの1次巻線T1apの電流が、定格250Aだけ流れて、直列変圧器T1aの2次巻線T1asには6.25Aの電流が流れる。従って、電流検出器22a(22b)は、この変流比で低圧配電線1bの電流を検出することができる。
【0056】
即ち、電圧調整装置2は、低圧配電線1bの電圧に対して、電圧調整部24a,24bで得られた電圧と同相の補償電圧を直列変圧器T1a,T2aの2次側に印加し、直列変圧器T1a,T2aの1次側に電圧を発生させている。このとき、直列変圧器T1a,T2aの2次側には、1次側電流に対して、直列変圧器T1a,T2aの電圧比の逆数の電流が流れる。
【0057】
従って、直列変圧器T1a,T2aは、1次側の大電流を2次側の小電流に変換する変流器としての作用を利用して、電流検出器22a(22b)が、直列変圧器T1aの2次巻線T1asの電流を検出することにより、低圧配電線1bの電流を検出することができる。
【0058】
このため、検出電流を小さくできる。また、低圧配電線に直接に変流器などの電流検出器22a,22bを接続する必要がなく、取付スペースが小さくしかも安価となり、低圧配電線の送電端から末端までの電圧を規定値内に調整することができる。
【0059】
また、補償電圧が−2.5Vであるので、交流出力、即ち、地点(送電端)Pt0の電圧は下降することから、末端電圧の電圧上昇対策を行うことができる。同様にして、T−N相の電圧調整部24bにトライアックTRC6〜TRC10を設け、トライアックTRC6〜TRC10をオン又はオフすることにより、R−N相、T−N相を独立に制御でき、不平衡負荷対策も行える。
【0060】
図7は実施例1の電圧調整装置2の動作を示すフローチャートである。図7を参照しながら、実施例1の電圧調整装置2の動作を説明する。なお、ここでは、図3に示す簡単な例を挙げて説明する。
【0061】
まず、送電端である低圧配電線1bの地点Pt0の電流を直列変圧器T1a,T2aの2次側に設けられた電流検出器22a,22bにより検出する。また、地点Pt0の電圧を電圧検出器23により検出する(ステップS10)。また、太陽電池発電量を検出用太陽電池21により検出する(ステップS11)。
【0062】
電圧調整回路20内の制御回路25は、検出用太陽電池21からの太陽電池発電量と各太陽光発電装置4−1,4−2の各定格発電容量(各定格電流)とから各太陽光発電装置4−1,4−2の実際の発電による各有効電流Ipv1,Ipv2を算出する(ステップS13)。
【0063】
制御回路25は、電流検出器22a,22bからの検出電流と電圧検出器23からの検出電圧とから有効電流、無効電流を求め、各有効電流Ipv1,Ipv2との差から各負荷3−1,3−2の有効電流Ip1,Ip2、無効電流Iq1,Iq2とを求める(ステップS15)。
【0064】
次に、制御回路25は、配電線インピーダンス(r,x)のデータを用いて、所定の電圧計算により低圧配電線1bの末端電圧を算出する(ステップS17)。所定の電圧計算とは、上記した低圧配電線1bに接続される負荷が力率負荷の場合の計算式である。ゲート回路26a,26bは、制御回路25からの末端電圧に基づきゲート信号を生成する。
【0065】
次に、電圧調整部24a,24bは、ゲート回路26a,26bからのゲート信号に基づき、末端電圧が規定値内になるようにトライアックTRC1〜TRC10をオン又はオフさせて、補償量(補償電圧)を調整し決定する(ステップS19)。
【0066】
ゲート回路26a,26bは、制御回路25からの末端電圧および送電端電圧が規定値内かどうかを判定し、末端電圧および送電端電圧が規定値内でない場合には、ゲート信号を生成してステップS19に戻る。
【0067】
一方、末端電圧および送電端電圧が規定値内である場合には、ステップS19で決定された補償量により、電圧調整装置2で補償し(ステップS23)、地点Pt0の補償結果を確認する(ステップS25)。
【0068】
なお、応答時間および検出ヒステリシスは、設定変更でき、実稼働において最適となるように設定する。
【0069】
このように、実施例1の電圧調整装置によれば、例えば、太陽光発電量が負荷量を上回り、末端電圧が上昇した場合には、複数地点の各太陽光発電量を算出し、送電端の電流・電圧を検出し、逆潮流を含む有効電力、無効電力を算出し、これらと配電線インピーダンスから末端電圧を算出し、送電端電圧、末端電圧および各地点電圧が規定値内となるように柱上変圧器10の出力電圧を調整することができる。
【0070】
また、検出電流が小さく且つ取付スペースが小さくしかも安価な電流検出器22a,22bを用いて、低圧配電線1bの送電端から末端までの電圧を規定値内に調整することができる。
【実施例2】
【0071】
図8は実施例2の電圧調整回路の具体例の回路構成図である。図8の実施例2の電圧調整回路は、直列インバータ回路を用いている。この直列インバータ回路は、直列変圧器T1a(T2a)の2次巻線T1as(T2as)に接続し、インバータを構成するスイッチ素子Tr1〜Tr4(Tr5〜Tr8)で補償電圧を生成し、直列変圧器T1a(T2a)へ印加している。
【0072】
変圧器T5(T6),ダイオードD1〜D4(D5〜D8),コンデンサC1(C2)はコンバータを構成する。
【0073】
電圧補償範囲は、直列変圧器T1a(T2a)の巻数比で決定され、電圧の補償量はインバータを用いているため、連続的に変化させることができる。
【0074】
実施例2においても実施例1と同様に、直列変圧器T1a,T2aの2次側に電流検出器22a,22bを接続し、この電流検出器22a,22bにより直列変圧器T1a,T2aの2次側電流を検出することにより、低圧配電線1bの電流を検出することができる。
【0075】
このように、実施例2の電圧調整装置によっても実施例1の電圧調整装置の効果と同様な効果が得られる。
【0076】
なお、本発明は、実施例1,2の電圧調整装置に限定されるものではない。実施例1,2の電圧調整装置では、検出電圧と検出電流と太陽電池による太陽電池発電量とに基づいて有効電流、無効電流を求めたが、例えば、太陽電池による太陽電池発電量を用いずに、検出電圧と検出電流とに基づいて有効電流、無効電流を求めても良い。この場合には、図7のステップS11、S13が削除される。
【0077】
また、実施例1,2の電圧調整装置では、単相3線式の低圧配電線への適用としたが、例えば、3相3線式の低圧配電線への適用であっても良い。
【0078】
また、電圧算出式は、上記簡易式ではなくシミュレーションなどによる詳細演算で算出しても良い。また、実施例1,2の電圧調整装置では、電圧調整部24a,24bにトライアックなどの半導体スイッチを用いたが、この代わりに機械的スイッチを用いても良い。
【0079】
また、電流検出器22a,22bの接続位置は、直列変圧器T1a,T2aの2次側配線ループ内であればいずれの位置でも良い。また、電流検出器22a,22bは、ホール素子を用いた検出器でも良く、あるいは変流器でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、配電設備などに適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1a 高圧配電線
1b 低圧配電線
2 電圧調整装置
3−1〜3−5 負荷
4−1〜4−5 太陽光発電装置(PV)
10 柱上変圧器
11 降圧変圧器
20 電圧調整回路
21 検出用太陽電池
T1a,T2a 直列変圧器
22a,22b 電流検出器
23 電圧検出器
24a,24b 電圧調整部
25,25a 制御回路
26a,26b ゲート回路
Z 配電線インピーダンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧配電線に接続される1次巻線と該1次巻線の電圧を降圧する2次巻線とを有する降圧変圧器と前記降圧変圧器の2次巻線に直列に接続され且つ低圧配電線に接続される1次巻線と該1次巻線に電圧を発生させる2次巻線とを有する直列変圧器とを備え前記低圧配電線の送電端から末端までの間の複数地点に接続される負荷に給電する柱上変圧器に接続され、前記柱上変圧器の出力電圧を調整する電圧調整装置であって、
前記直列変圧器の2次巻線の電流を検出する電流検出器と、
前記降圧変圧器の2次巻線の電圧又は前記柱上変圧器の出力電圧を検出する電圧検出器と、
前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧と前記低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき前記低圧配電線の送電端から末端までの電圧が規定値内になるように前記直列変圧器の2次巻線の電圧を調整する電圧調整回路と、
を備えることを特徴とする電圧調整装置。
【請求項2】
前記電圧調整回路は、前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧とに基づき前記負荷の有効電流および無効電流を算出し、前記負荷の有効電流および無効電流と前記低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき前記低圧配電線の末端の電圧を算出する制御回路と、
前記制御回路で算出された前記低圧配電線の末端の電圧が規定値内になるように前記直列変圧器の1次巻線の電圧で調整するために、前記直列変圧器の2次巻線の電圧を調整する電圧調整部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の電圧調整装置。
【請求項3】
太陽光発電装置が前記低圧配電線の送電端から末端までの間の複数地点の少なくとも1地点に接続され、
前記太陽光発電装置の発電容量を予測するために設けられ、太陽光を受けて発電し、その発電量を太陽電池発電量として計測する検出用太陽電池が前記電圧調整回路に接続され、
前記電圧調整回路は、前記検出用太陽電池からの太陽電池発電量により算出される前記太陽光発電装置の発電容量と前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧と前記低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき前記低圧配電線の送電端から末端までの電圧が規定値内になるように前記直列変圧器の2次巻線の電圧を調整することを特徴とする請求項1記載の電圧調整装置。
【請求項4】
前記電圧調整回路は、前記検出用太陽電池からの太陽電池発電量と前記太陽光発電装置の定格発電容量とに基づき前記太陽発電装置の発電容量を算出し、前記電流検出器からの検出電流と前記電圧検出器からの検出電圧とに基づき前記負荷の有効電流および無効電流を算出し、前記太陽光発電装置の発電容量と前記負荷の有効電流および無効電流と前記低圧配電線の配電線インピーダンスとに基づき前記低圧配電線の末端の電圧を算出する制御回路と、
前記制御回路で算出された前記低圧配電線の末端の電圧が規定値内になるように前記直列変圧器の1次巻線の電圧で調整するために、前記直列変圧器の2次巻線の電圧を調整する電圧調整部と、
を備えることを特徴とする請求項3記載の電圧調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−125020(P2012−125020A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272570(P2010−272570)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】