説明

電圧警報器埋め込み型作業服

【課題】 電圧警報器の装着し忘れを防止することができる作業服を提供する。
【解決手段】 作業者が着用する作業服部と、作業服部の袖口部の外周部のほぼ全周に備わるアンテナ電極を有するアンテナ部と、作業服部の袖口部の内周部に備わるアース電極を有するアース部と、電気設備の充電部への接近により電気設備の充電部とアンテナ部との間に発生する電極間浮遊静電容量と、作業者の人体とアース電極との間に発生する対地静電容量と、作業者の人体へ流れる微小な静電誘導電流を検出する検出回路と、検出回路で検出された信号に基づいて作業者に注意喚起を行う警報を発する警報回路とを有し、作業服部の袖口部に配置された電圧警報部とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧警報器埋め込み型作業服に係わり、特に、高圧電気設備の設置作業、並びに保守点検作業において、電気設備が停電状態であるものから、通電状態へと状態変化した場合でも、設定した電圧感知距離で充電体又は活線が存在することを作業者に警告し、感電事故(災害)を未然に防ぐ可能性を高める作業服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気設備配電盤等の点検作業において、作業前に死活線確認のための検電を行ってから作業を開始する。従来の死活線確認作業は、作業者が意識した行為により検電器又は電圧警報器を活線に接触又は近づけて、通電常態か停電常態かを確認をしている。このため、作業者が検電器又は電圧警報器を手に持って、その都度検電作業を実施しなければならない(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、作業者による検電忘れがあった場合や、停電であるとの思い込み等があった場合や、電気設備の予期しない状態変化があった場合には、感電災害を発生させるなどの問題があった。
【0004】
このように、従来の充電状態か停電状態かの確認行為(検電行為)は、検電器にて実施しているが、死活線が混在する場合には検電忘れや無電圧との思い込み等のヒューマンエラーが発生する場合があった。
【0005】
このような、検電忘れを防止するための装置として、腕時計型の手首装着式電圧警報器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−13173号公報
【特許文献2】特公平8−220151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の腕時計型の電圧警報器は、アンテナ3の取り付け位置に難があり、アンテナ3が作業者の手の平や手の甲により遮られた場合には検電を行うことができないため、充電部を検知できる方向に制約がある。
【0007】
また、そもそも小型の腕時計型であるため、他に多くの作業もこなさなければならない作業者にとっては、電気設備配電盤等の点検作業時にのみ必要となる腕時計型の電圧警報器を作業時に装着することを忘れてしまうおそれがある。
【0008】
このように、装着忘れ防止の歯止めに限界があるなど検電行為が万全でないことにより、これらの問題を解決するものが必要であることがわかった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、作業者の検電忘れがあった場合でも、作業者の近傍に活線が存在する場合には設定した電圧感知距離で活線を作業者に警告し、感電事故(災害)を未然に防ぐ可能性を高めることを可能とする作業服を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電圧警報器埋め込み型作業服は、作業者が着用する作業服部と、作業服部の袖口部の外周部のほぼ全周に備わるアンテナ電極を有するアンテナ部と、作業服部の袖口部の内周部に備わるアース電極を有するアース部と、電気設備の充電部への接近により電気設備の充電部とアンテナ部との間に発生する電極間浮遊静電容量と、作業者の人体とアース電極との間に発生する対地静電容量と、作業者の人体へ流れる微小な静電誘導電流を検出する検出回路と、検出回路で検出された信号に基づいて作業者に注意喚起を行う警報を発する警報回路とを有し、作業服部の袖口部に配置された電圧警報部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服によれば、電圧警報器は作業者が着用する作業着に一体的に組み込まれているため、電圧警報器の装着し忘れを防止することができる。
【0012】
また、着用時に作業者の手首部の全周にわたってアンテナ電極が配置されることとなるため、電圧検知の方向が制限されることなく、すべての方向について電圧検知を行うことが可能となる。
【0013】
また、着用時にもっとも感電の危険性が高い作業者の手首部にアンテナが配置されることとなるため、感電事故を効果的に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態である電圧警報器埋め込み型作業服について、図を参照して説明をする。
【0015】
図1は、本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服の電気的構成を示すブロック図である。
【0016】
本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服100は、アンテナ部10と、電圧警報部20と、アース部30と、不図示の作業服部40とから構成される。なお、作業服部40へのアンテナ部10と電圧警報部20とアース部30の取り付けの態様については、後述する。
【0017】
(アンテナ部)
アンテナ部10は、アンテナ電極11とリングスナップ10aとから構成される。
【0018】
アンテナ電極11は、導電性布により構成される。アンテナ電極11は、電圧検知の対象となる充電体Aとの間で浮遊静電容量C1を形成し、浮遊静電容量C1に流れる微小静電誘導電流I1を後述する電圧警報部20が検知する。なお、本実施形態で用いる導電性布は、一般な導電性繊維で構成された布でよい。導電性布は、繊維に無電解メッキにて金属薄膜を密着性良く複合化することにより、金属箔並みの導電性を得られる布である。
【0019】
アンテナ電極11はリングスナップ10aと接続し、リングスナップ10aは電圧警報部20との接続部となる。
【0020】
(電圧警報部)
電圧警報部20は、テストスイッチ21と、レベル検出回路22と、警報回路23と、断続信号発生回路24と、音響周波発信回路25と、ブザー26と、LED表示27と、電池28と、リングスナップ20a、20bと、から構成される。
【0021】
リングスナップ20aは、アンテナ部10との接続部であり、アンテナ部10のリングスナップ10aと着脱可能に接続する。
【0022】
テストスイッチ21は、リングスナップ20a及び電圧警報部20内の各回路と接続する。テストスイッチ21は、自己試験用スイッチであり、テストスイッチ21を押下することにより電圧警報部20内部の各電子回路が、正常に動作することを確認することができる。
【0023】
レベル検出回路22は、リングスナップ20aと接続し、リングスナップ20aを介して入力した微小静電誘導電流I1の大きさを検出し、その電流値が、任意に設定する一定のレベル以上となった時に、検出信号を出力する。
【0024】
警報回路23の断続信号発生回路24は、レベル検出回路22と接続する。断続信号発生回路24は、レベル検出回路22からの検出信号が入力した場合には、ブザー26の発音とLED表示27の点滅の周期を決定し、所定の周期の信号を出力する
【0025】
警報回路23の音響周波発信回路25は、断続信号発生回路24と接続し、所定の周期の信号が入力した場合には、ブザー26の音質を決定する。
【0026】
ブザー26は、音響周波発信回路25と接続し、音響周波発信回路25が決定した音質に基づいてブザー音を発音することにより、作業者の近傍(任意に設定された電圧検出距離内)に充電部が存在する警報を知らせる。
【0027】
なお、充電体Aに対し、充電体Aとアンテナ電極11との距離を電圧検出距離とする。任意の電圧検出距離(例えば60cmとする)にアンテナ電極11を配置した時に流れる微小静電誘導電流I1のレベルにて、レベル検出回路22が検出信号を出力するよう検出回路定数(電気回路定数)を可変抵抗ボリューム等で調整する。これにより、アンテナ電極11が充電体Aに対して1m→80cm→70cm→60cmと近づいた時に、60cmより近くなった箇所で警報を発信することになる。
【0028】
LED表示27は、音響周波発信回路25と接続し、断続信号発生回路24が決定したLED表示27の点滅の周期に基づいて発光することにより、作業者の近傍(任意に設定された電圧検出距離内)に充電部が存在する警報を知らせる。
【0029】
電池28は、レベル検出回路22と、警報回路23の断続信号発生回路24と、警報回路23の音響周波発信回路25と接続し、各回路に電力を供給する。
【0030】
リングスナップ20bは、レベル検出回路22と、警報回路23の断続信号発生回路24と、警報回路23の音響周波発信回路25と、電池28と、に接続し、電圧警報部20とアース部30との接続部となっている。
【0031】
(アース部)
アース部30は、アース電極31とリングスナップ30bとから構成される。
【0032】
アース電極31は、導電性布により構成される。アース電極31は、アースとなる人体(手首部)Bとの間で浮遊静電容量C2を形成し、浮遊静電容量C2に流れる微小静電誘導電流I2を電圧警報部20が検知する。
【0033】
本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服100によれば、微小な静電誘導電流I1(=I2)が、浮遊静電容量C1からレベル検出回路22を経由して浮遊静電容量C2に流れ、その電流の大きさをレベル検出回路22にて監視を行う。レベル検出回路22で、予め設定された任意のレベル以上の電流が検出されると、レベル検出回路22は、検出信号を出力し、断続信号発生回路24と音響周波発信回路25を動作させ、ブザー26の発音、及びLED表示27を発光させ、作業者に対する警報を出力する。予め設定する任意の電流レベルは、充電部の電圧を検出する距離によって決められる。
【0034】
アース電極31はリングスナップ30bと接続する。リングスナップ30bは、電圧警報部20との接続部であり、電圧警報部20のリングスナップ20bと着脱可能に接続する。
【0035】
図2は、本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服の電圧警報部の外形を示す図である。図2(a)は、本実施形態の電圧警報部20の平面図であり、図2(b)は、本実施形態の電圧警報部20の正面図であり、図2(c)は、本実施形態の電圧警報部20の下面図である。
【0036】
図2(a)からわかるように、本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服の電圧警報部20の上面には、テストスイッチ21とブザー26とLED表示27とが配置されている。
【0037】
作業者が本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服100を着用した際には、このテストスイッチ21とブザー26とLED表示27とが作業者の手首に位置することとなるため、作業者は、テストスイッチ21を押下することにより容易に電圧警報器埋め込み型作業服100の動作チェックを行うことができる。また、作業者は、電圧検知時には、ブザー26及びとLED表示27からの警報を容易に認知することができる。
【0038】
図2(c)からわかるように、本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服の電圧警報部20の下面には、リングスナップ20aと20bと電池収納蓋20cが配置されている。
【0039】
電圧警報部20はリングスナップ20aと20bとを介して作業服部40へ着脱可能に取り付けられる。本構成により、作業服部40を洗濯する際や電池28の交換の際には、電圧警報部20を取り外すことなどができる。また、電池28は電池収納蓋20cを取り外すことにより交換される。
【0040】
図3A、Bは、本実施形態の作業服部40の袖口部40aを拡大した図である。
【0041】
図4Aは、本実施形態の作業服部40の袖口部40aを拡大した図であり、アンテナ電極11の取り付け状態を示す図である。図に示すように、作業服部40の袖口部40aの外周部のほぼ全体にわたって、アンテナ部10のアンテナ電極11が取り付けられている。なお、理解を容易にするため、図ではアンテナ電極11は外部に露出しているが、袖口部40aに内蔵してもよい。
【0042】
図4Bは、本実施形態の作業服部40の袖口部40aを開いた状態を拡大した図であり、アース電極31の取り付け状態を示す図である。図に示すように、作業服部40の袖口部40aの内周部のほぼ全体にわたって、アース部30のアース電極31が取り付けられている。なお、理解を容易にするため、図ではアース電極31は外部に露出しているが、袖口部40aに内蔵してもよい。
【0043】
図5Aは、本実施形態の作業服部40の袖口部40aを拡大した図であり、アンテナ電極11とアース電極31の取り付け状態を示す図である。図に示すように、作業服部40の袖口部40aの外周部全体にわたって、アンテナ部10のアンテナ電極11が取り付けられており、作業服部40の袖口部40aの内周部全体にわたって、アース部30のアース電極31が取り付けられている。
【0044】
また、作業服部40の袖口部40aの外周には、電圧警報部20の取り付け部となるリングスナップ10aと30bが露出している。なお、アース部30のリングスナップ30bは、袖口部40aの裏地から貫通させるため、アンテナ電極11と重ならない位置に縦列配置されている。
【0045】
図5Bは、本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服100の作業服部40の袖口部40aを拡大した図である。リングスナップ10aと30bに、電圧警報部20のリングスナップ20aと20bとを嵌め込むことにより、アンテナ部10と、電圧警報部20と、アース部30と、作業服部40とが一体化し、本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服100を構成する。
【0046】
なお、汗や雨等の水分の影響を防ぐために、アンテナ電極11とアース電極31とは、ともに防水処理を施すことが好ましい。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服によれば、作業者が常時着用する作業着と電圧警報器とが一体化しているため、電圧警報器の装着し忘れを防止することができる。
【0048】
また、着用時に作業者の手首部のほぼ全周にわたってアンテナ電極11が配置されることとなるため、電圧検知の方向が制限されることなく、すべての方向について電圧検知を行うことが可能となる。
【0049】
また、着用時に、もっとも感電の危険性が高い作業者の手首部にアンテナが配置されることとなるため、感電事故を効果的に防止することが可能となる。
【0050】
そして、本発明の電圧警報器埋め込み型作業服によれば、作業者が予期していない電気設備の状態変化が発生しても、手作業を実施している場合は、電圧検知を常時行っている状況を作り出すことにより、感電事故(災害)を未然に防止する可能性を高めることができる。
【0051】
また、検出電極(アンテナ)及びアース導電体は、布製であり、作業服の袖部と一体化しているため、洗濯する際も取り外さない。従って、装着忘れすることもない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服の電圧警報部の外形を示す図である。
【図3A】本実施形態の作業服部の袖口部を拡大した図である。
【図3B】本実施形態の作業服部の袖口部を拡大した図である。
【図4A】本実施形態の作業服部の袖口部を拡大した図であり、アンテナ電極の取り付け状態を示す図である。
【図4B】本実施形態の作業服部の袖口部を開いた状態を拡大した図であり、アース電極の取り付け状態を示す図である。
【図5A】本実施形態の作業服部の袖口部を拡大した図であり、アンテナ電極とアース電極の取り付け状態を示す図である。
【図5B】本実施形態の電圧警報器埋め込み型作業服の作業服部の袖口部を拡大した図である。
【符号の説明】
【0053】
100:電圧警報器埋め込み型作業服
10:アンテナ部
10a:リングスナップ
11:アンテナ電極
20:電圧警報部
20a:リングスナップ
20b:リングスナップ
20c:電池蓋
21:テストスイッチ
22:レベル検出回路
23:警報回路
24:断続信号発生回路
25:音響周波発信回路
26:ブザー
27:LED表示
28:電池
30:アース部
30b:リングスナップ
31:アース電極
40:作業服部
40a:袖口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が着用する作業服部と、
前記作業服部の袖口部の外周部のほぼ全周に備わるアンテナ電極を有するアンテナ部と、
前記作業服部の袖口部の内周部に備わるアース電極を有するアース部と、
電気設備の充電部への接近により前記電気設備の充電部と前記アンテナ部との間に形成される電極間浮遊静電容量に流れる微小静電誘導電流を検出する検出回路と、該検出回路で検出された信号に基づいて作業者に注意喚起を行う警報を発する警報回路とを有し、前記作業服部の袖口部に配置された電圧警報部と、
を有することを特徴とする電圧警報器埋め込み型作業服。
【請求項2】
前記アンテナ電極と前記アース電極の素材は、導電性のある布であることを特徴とする請求項1に記載の電圧警報器埋め込み型作業服。
【請求項3】
前記アンテナ部と前記アース部と前記電圧警報部とは、リングスナップで接続することを特徴とする請求項1または2に記載の電圧警報器埋め込み型作業服。
【請求項4】
前記アンテナ電極と前記アース電極とは防水処理が施されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電圧警報器埋め込み型作業服。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2009−70335(P2009−70335A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240992(P2007−240992)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000230940)日本原子力発電株式会社 (130)
【出願人】(507284813)株式会社協立技術工業 (5)
【出願人】(599041606)三菱電機プラントエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】