説明

電場を使用する分析物の操作

【課題】増大した分析物濃度は、化学反応速度、質量移行の速度、および/または検出性などを高め得る。さらに、サンプルまたは分析物の少なくとも一部の位置を制御するための方法などの提供。
【解決手段】サンプルホルダーに関して目的の分極性分析物を移動するための分析物操作デバイスであって、該デバイスは、該分析物を保持するように構成され、以下:
少なくとも2つの、空間を空けて固定されて配置される、同一の拡がりを持つ細長の導電性部材であって;該部材および該ホルダーは、第1の位置と第2の位置との間の相対的な移動に適合され、ここで該第1の位置において、該部材の少なくとも一部は、該ホルダー内に配置され、そしてここで該第2の位置において、該部材は、該ホルダーの外部に配置される、導電性部材;AC電源であって、該AC電源は、該導電性部材と電気的に連絡するように適合される、AC電源;を備える、デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、電場を使用する分析物の操作のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
多くの化学的かつ生化学的な方法および/または応用において、サンプルまたは分析物を少なくとも部分的に濃縮または精製することが、しばしば望ましい。例えば、増大した分析物濃度は、化学反応速度、質量移行の速度、および/または検出性などを高め得る。さらに、サンプルまたは分析物の少なくとも一部の位置を制御するための方法は、多くの化学的かつ生化学的な方法および/または応用において重要であり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明によって以下が提供される:
(項目1)サンプルホルダーに関して目的の分極性分析物を移動するための分析物操作デバイスであって、該デバイスは、該分析物を保持するように構成され、以下:
少なくとも2つの、空間を空けて固定されて配置される、同一の拡がりを持つ細長の導電性部材であって;該部材および該ホルダーは、第1の位置と第2の位置との間の相対的な移動に適合され、ここで該第1の位置において、該部材の少なくとも一部は、該ホルダー内に配置され、そしてここで該第2の位置において、該部材は、該ホルダーの外部に配置される、導電性部材;
AC電源であって、該AC電源は、該導電性部材と電気的に連絡するように適合される、AC電源;
を備え、ここで該部材および該ホルダーは、該第1の位置に配置され、該AC電源は、該導電性部材と共同して操作可能であり、該部材の近傍の該ホルダー内に電場勾配を確立する、デバイス。
(項目2)前記導電性部材の位置を前記サンプルホルダーに関して制御するための制御ユニットをさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目3)前記導電性部材の方に前記サンプルホルダーを移動するための、そして/または該導電性部材から離れて移動するためのホルダー操作器具をさらに備える、項目1に記載のデバイス。
(項目4)分析物操作デバイスであって、該分析物操作デバイスは、
可動性支持体;
少なくとも2つの、同一の拡がりを持つ細長の導電性部材;
該導電性部材と電気的に連絡するように適合されたAC電源;
を備え、
該導電性部材は、支持体によって保持されて該支持体と共に移動し、
該導電性部材は、空間的に離れた末端領域を有し、該末端領域の間に存在する領域を備え、該末端領域は濃縮領域を規定し、
ここで該末端領域が、目的の分極性分析物を含有する電解質溶液中に配置されるように該支持体を配置する際、該AC電源は、該末端領域間に電場勾配を確立するように該導電性部材と共同して作動可能であり、該電場勾配は、濃縮領域における該分極性分析物の少なくとも一部を捕捉するために有効である、分析物操作デバイス。
(項目5)樹脂物質をさらに含み、前記導電性部材の前記末端領域の各々の少なくとも一部が該樹脂物質内に含まれる、項目4に記載のデバイス。
(項目6)前記樹脂物質がエポキシビーズを含む、項目5に記載のデバイス。
(項目7)前記末端領域を被覆する多孔性材料をさらに含む、項目4に記載のデバイス。
(項目8)前記導電性部材の少なくとも1つの少なくとも一部が、先端、鋭い縁部、角部、角、出っ張り、突出部、歯、起伏、ノッチ、切れ込み、波形、ひだ、フィンおよびこれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の表面特性を備える、項目4に記載のデバイス。
(項目9)前記部材が、エッジまたは点を備える対向部分の末端領域に従う表面特性を備える、項目8に記載のデバイス。
(項目10)前記部材の少なくとも1つに沿って伸長する非導電性フィラメントをさらに備える、請求
項4に記載のデバイス。
(項目11)前記支持体は、操作者が手でデバイスを保持および配置することを可能にするハンドルとして構成される、項目4に記載のデバイス。
(項目12)前記同一の拡がりを持つ細長の導電性部材の2つ以上の対が、前記支持体によって保持される、項目4に記載のデバイス。
(項目13)前記導電性部材と電気的に連絡するように適合されたDC電源をさらに備える、項目4に記載のデバイス。
(項目14)分析物操作デバイスであって、該分析物操作デバイスは、
末端領域を有する、細長の導電性部材;
濃縮領域を規定する該末端領域に沿う周辺領域;
側壁および底壁を有する容器であって、該壁の少なくとも1つの少なくとも一部は、導電性材料を含む、容器;
該導電性部材の該末端領域は、該壁部分に関して空間を空けた関係で、該容器の外側位置から該容器内の位置まで移動可能である、および
該導電性部材および該壁部分と電気的に連絡するように配置される、AC電源;
を備え、ここで該末端領域が、該容器中に保持される、目的の分極性分析物を含有する電解質溶液中に沈められるように、該容器中に配置されるように前記部材を配置する際に、該電源が該末端領域近傍に電場勾配を確立するように作用し、該電場勾配が、該濃縮領域において該分極性分析物の少なくとも一部を捕捉するのに有効である、分析物操作デバイス。
(項目15)分析物操作デバイスであって、該分析物操作デバイスは、
末端領域を有する、細長の導電性部材;
濃縮領域を規定する該末端領域に沿う周辺領域;
側壁および底壁を有する容器であって、該壁の少なくとも1つの少なくとも一部は、アースに電気的に連結される導電性材料を含む、容器;および
該導電性部材と電気的に連絡するように配置される、AC電源;
を備え、
該導電性部材の該末端領域は、該壁部分に関して空間を空けた関係で、該容器の外側位置から該容器内の位置まで移動可能であり、ここで該末端領域が、該容器中に保持される、目的の分極性分析物を含有する電解質溶液中に沈められるように、該容器中に配置されるように前記部材を配置する際に、該電源が該末端領域近傍に電場勾配を確立するように作用し、該電場勾配が、該濃縮領域において該分極性分析物の少なくとも一部を捕捉するのに有効である、分析物操作デバイス。
(項目16)サンプルホルダーに関して目的の荷電分析物を移動するための分析物操作デバイスであって、該分析物操作デバイスは、該分析物を保持するように配置され、該分析物操作デバイスは:
空間を空けた関係で配置される、少なくとも2つの同一の拡がりを持つ細長の導電性部材;
該電導性部材に電気的に連絡するように適合されるDC電源;
を備え、
該部材および該ホルダーは、第1の位置と第2の位置との間で相対的移動するように適合され、該第1の位置において、該部材の少なくとも一部は、該ホルダー内に配置され、該第2の位置において、該部材は、該ホルダーの外部に配置され;ここで該部材の少なくとも1つは、バブルフリー電極であり;
ここで該部材および該ホルダーは、該第1の位置に配置される場合、該DC電源は、該導電性部材と組み合わせて作動され、該部材の間の該ホルダー内に、電位を確立する、分析物操作デバイス。
(項目17)分析物操作デバイスであって、該分析物操作デバイスは、
可動性支持体;
該支持体によって保持される少なくとも2つの電極であって、該電極は、互いに対して空間を空けた関係で配置される末端領域を有し、少なくとも1つの電極は、バブルフリー電極である、電極;
該電極に電気的に連絡するように適合された、DC電源;
を備え、ここで電荷を保持する、目的の生体分子を含有する電解質溶液中に該電極を配置する際に、該DC電極は、1つの正電荷を有する電極およびもう1つの負電荷を有する電極を提供するように操作可能であり、その結果、荷電生体分子は、反対の電荷の電極の末端領域に向かって移動される、分析物操作デバイス。
(項目18)生体分子操作デバイスであって、該生体分子操作デバイスは:
(i)第1および第2の電極であって
ここで該電極の少なくとも1つは、以下:
(a)第1の開口部を規定する第1の末端、第2の開口部を規定する第2の末端、および該開口部の間に伸長する内部管腔部を備える、毛管、
(b)該管腔部内に保持される電極、
(c)該電極と接触し、該管腔部の外に伸長する導電性要素、ならびに
(d)該第2の末端近傍の該毛管領域の、選択的透過性閉塞、
を備える、電極;ならびに
(ii)該第1の電極および該第2の電極と電気的に連絡するように適合される、DC電源;
を備え、ここで、電荷を保有する、目的の生体分子を含有する電解質溶液中に該電極を配置する際に、該DC電源は、1つの正電荷を有する電極およびもう1つの負電荷を有する電極を提供するように操作可能であり、その結果、荷電生体分子は、反対の電荷の電極の末端領域に向かって移動される、生体分子操作デバイス。
(項目19)前記選択的に透過性の閉塞が、第2の開口部を覆うイオン交換性膜を備える、項目18に記載のデバイス。
(項目20)前記イオン交換性膜が、ペルフルオロ化イオン交換ポリマーを備える、項目19に記載のデバイス。
(項目21)前記電極の少なくとも1つが、生体分子採集位置と生体分子配置位置との間での移動に適合される、項目18に記載のデバイス。
(項目22)生体分子操作デバイスであって、該生体分子操作デバイスは:
(i)第1の電極および第2の電極であって、
ここで該電極の少なくとも1つは、以下:
(a)入口末端、出口末端、および該末端の間に伸長する内部管腔部、ならびに
(b)該管腔部内に配置される、ゲル化電解質または粘性電解質、
を備える、電極;ならびに
(ii)該第1の電極および第2の電極と電気的に連絡するように適合されたDC電源であって、該DC電源は、該ゲル化電解質または粘性電解質を備える、DC電源;
を備え、ここで電荷を保有する、目的の生体分子を含有する電解質溶液中に該電極を配置する際に、該DC電源は、1つの正電荷を有する電極およびもう1つの負電荷を有する電
極を提供するように操作可能であり、それによって、荷電生体分子は、反対の電荷の電極の出口末端に向かって移動される、生体分子操作デバイス。
(項目23)項目22に記載のデバイスであって、該デバイスは、
前記ゲル化電解質または粘性電解質の供給部を保持するように構成されるレザバ;および該供給部の少なくとも一部を、該入口末端に押し込むように適合される圧力供給源
をさらに備え、該レザバは、前記キャピラリーの前記入口末端と流体連絡するように配置される、デバイス。
(項目24)生体分子操作デバイスであって、該生体分子操作デバイスは:
(i)第1の電極および第2の電極であって、
ここで、少なくとも1つの電極は、以下:
(a)入口末端、出口末端、および該末端の間に伸長する内部管腔部を備える、毛管、ならびに
(b)該管腔部内に配置されるシービングマトリクス、を備える電極;
(ii)該第1の電極および第2の電極と電気的に連絡するように適合されるDC電源であって、該DC電源は、該シービングマトリクスを備える、DC電源;
を備え、ここで電荷を保有する、目的の生体分子を含有する電解質溶液中に該電極を配置する際に、DC電源が、1つの正電荷を有する電極およびもう1つの負電荷を有する電極を提供するように操作可能であり、それによって、荷電生体高分子が反対の電荷の電極の出口末端に向かって移動される、生体分子操作デバイス。
(項目25)項目24に記載のデバイスであって、該デバイスは:
前記シービングマトリクスの供給部を保持するように構成されるレザバ;および
該供給部の少なくとも一部を、該入口末端に押し込むように適合される圧力供給源、をさらに備え、該レザバは、前記キャピラリーの前記入口末端と流体連絡するように配置される、デバイス。
(要旨)
本発明の1つの局面は、1以上の電場を用いる、ポリヌクレオチドのような分極性分析物の操作(例えば、濃縮、精製、捕獲、捕捉、位置決め、移動など)のための方法およびデバイスに関する。
【0004】
本発明の実施形態は、一部、プロセッサおよび/または分析器(例えば、キャピラリー電気泳動デバイス、光学リーダー、質量分析器、クロマトグラフィーカラム、PCRデバイスなど)からの分析物の精製/濃縮のためのデバイスおよび方法に関する。1つの実施形態において、本発明のデバイスおよび方法は、精製/濃縮サンプルを所望の位置に(例えば、このようなプロセッサおよび/もしくは分析器のサンプル受容領域に、ならびに/またはチューブもしくはマルチウェルプレートのウェルのような容器に)、移す際に有用である。
【0005】
本発明の実施形態は、分子または粒子が分極され得る場合、これが場の勾配により引きつけられ得るかまたは反発し得るという現象を利用する。本発明の特定の実施形態は、分極性分析物が交流電場勾配を有する領域に引きつけられる場合、その分析物は、交流電場により形成される濃縮領域に捕捉され得るという発見に一部基づく。本発明の種々の実施形態は、例えば、目的の分極性分子として、ポリヌクレオチド(例えば、DNAまたはRNA)を企図し、このような分子を引きつけるために場の勾配を増大させることを利用する。本発明の多くの適用のうちの1つは、少なくとも一部は、塩または遊離色素からDNAを分配することである。
【0006】
本発明の1つの局面は、目的の分極性分析物(例えば、DNAまたはRNA)を、このような分析物を保持するように構成されたサンプルホルダー(例えば、バイアル、チューブ、ウェル、容器など)に対して移動するための分析物操作デバイスを提供する。1つの実施形態において、このデバイスは、以下を備える:互いに対して間隔を空けた関係で配置された、少なくとも2つの同一の拡がりを持つ細長の導電性部材;この部材およびホルダーは、第1の位置(ここでこの部材の少なくとも一部(例えば、下部端部領域)が、ホルダー内に配置される)と、第2の位置(ここでこの部材は、ホルダーの外側に(例えば、間隔を空けて、または離れて)配置される)との間の相対的移動に適合されている;上記導電性部材と電気的に連絡するように適合されたAC電源;ここで、上記部材およびホルダーが第1の位置に配置されている場合、上記AC電源は、上記端部領域間で、ホルダー内の電場勾配を確立するために、導電性部材と組み合わせて作動可能である。
【0007】
本発明の別の局面は、目的の荷電分析物(例えば、生体分子)を、このような分析物を保持するために構成されたサンプルホルダー(例えば、バイアル、チューブ、ウェル、容器など)に対して動かすための分析物操作デバイスを提供する。1つの実施形態において、このデバイスは、以下を備える:間隔を空けた関係で配置された、少なくとも2つの同一の拡がりを持つ細長の導電性部材;上記部材およびホルダーは、第1の位置(この位置で、上記部材の少なくとも一部(例えば、下部端部領域)がホルダー内に配置される)と、第2の位置(この位置で、上記部材がホルダーの外側に(例えば、間隔を空けて、または離れて)配置される)との間の相対的な動きに適合している;ここで、上記部材の少なくとも一方は、バブルフリー電極である;上記導電性部材と電気的に連絡するように適合されたDC電源;ここで上記部材とホルダーが、第1の位置に配置されている場合、上記DC電源は、上記部材間で、上記ホルダー内に電位差を確立するために、上記導電性部材と組み合わせて作動可能である。
【0008】
本発明の多くの他の利点および特徴は、以下の発明の詳細な説明およびその実施形態から、特許請求の範囲から、ならびに添付の図面から明らかになる。
【0009】
類似または同一の機能を有する構造的要素は、それらの要素と関連した類似の参照番号を有し得る。添付の図面は、本発明の代表的な実施形態を例示するに過ぎず、本発明の範囲を限定しない。本発明について、他の等しく有効な実施形態が認められ得る。
【0010】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明の特定の好ましい実施形態に対して、詳細に言及がなされるが、好ましい実施形態の例が、添付の図面に示される。本発明は、選択された好ましい実施形態に関連して記載されるが、これらの実施形態が本発明の範囲を何ら限定することを意図しないことが理解される。逆に、本発明は、代替物、改変物、および等価物を包含することが意図され、これらは、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内に包含され得る。
【0011】
本明細書中で使用される場合、用語「精製される(た)」とは、ある物質が、本来のまたは開始の状態または環境から取り出されることを意味する。例えば、材料は、開始サンプル中で見いだされた状態で存在するよりも高い濃度で特定の組成物中に存在する場合、「精製された」といわれる。例えば、開始サンプルが粗細胞溶解物中のポリヌクレオチドを含む場合、そのポリヌクレオチドは、精製されていないといわれ得るが、その細胞溶解物中の共存する物質のいくつかまたは全てから分離された同じポリヌクレオチドは、精製されている。
【0012】
一般に、本発明は1以上の電場を使用する、分析物(例えば、生体分子)の操作(例えば、精製、濃縮、捕獲、捕捉、位置決め、移動など)のための方法および装置に関する。
【0013】
本発明の1つの局面は、サンプル中の分析物を濃縮および精製するために、場の勾配(AC場の印加によって形成される勾配を含む)を利用する。電場において分極され得る本質的に任意の分析物(例えば、分子または浮遊粒子)は、発生した電場勾配を使用して操作され得る。本発明者らは、分極性分析物が、高い場の勾配(例えば、電極端部または電極先端付近に発生した勾配)の領域に引きつけられ得ることを見いだした。さらに、いくつかの場合、分極性分析物は、高い場の勾配の領域から反発し得る。高い場の勾配の領域による引きつけおよび/またはその領域からの反発は、例えば、バルク溶液に由来する分極性粒子を濃縮するための手段として、本明細書中で利用される。
【0014】
種々の実施形態において、分極性分析物を引きつけるかまたは反発するために有用な印加電場は、交流(すなわち、AC)電源によって発生する。好ましくは、その場は、分析
物を引きつけるかまたは反発する場の勾配を形成するために、1以上の先端または領域にて発散する。
【0015】
引力および/または斥力の収束(concentration)を使用して、分極性分析物が位置決めされ得、バルク溶液に対して濃縮される、さらに、適切な電場パラメーターを選択することによって、分極性分析物は、その印加電場のもとでより分極性でないバルク溶液中の他の種に対して精製され得る。これらのより分極性でない分析物は、印加された場に起因する比較的小さな引力または反発力の作用を受け、より分極性の分析物と違って容易には濃縮されない。高い場の勾配に対する引力または反発力に基づく、種の選択性におけるこの差異は、複雑な混合物からの1以上の種の濃縮および精製についての基礎を形成し得る。
【0016】
本発明の局面は、双極子モーメントを有する分析物と関連して特に有用である。その分析物は、荷電していても、荷電していなくてもよく;分析物は、全体の正味の電荷を有してもよいし、中性であってもよい。種々の実施形態に従って、その分析物は、緩衝化電解質溶液(例えば、低イオン強度を有する電解質溶液)中に存在する。例示的な分析物としては、核酸(一本鎖および二本鎖の両方)、タンパク質、糖質、ウイルス、細胞、オルガネラ、有機ポリマー、粒子などが挙げられる。特定の実施形態において、本発明とともに使用するための好ましい分析物は、電解質溶液中に含まれる一本鎖核酸または二本鎖核酸である。
【0017】
本発明の1実施形態において、および図1を参照すると、分析物操作デバイス(概して10と示される)は、例えば、12にて示されるような先端領域にて場の勾配を作製するように構成される。そのデバイス10は、間隔を空けて、同一の拡がりをもつ細長い導電性部材(例えば、電極またはワイヤ14、16)を保持する支持体11を備える。部材14、16は、任意の適切な様式にて保持され得る。特定の好ましい実施形態において、部材14、16は、その部材を支持体11とともにユニットとして動かすことを可能にする様式で維持される。例えば、部材14、16は、支持体11に固定して取り付けられ得る。1つの実施形態において、部材14、16は、しっかりと、しかし取り外し可能に、支持体を貫通して形成されるそれぞれの取り付け穴内に受容される。
【0018】
細長狭窄間隙領域18は、部材14、16の対向する側部領域の間に規定される。1実施形態において、続けて図1を参照すると、間隙領域18の寸法dは、20μm〜1.50mmの範囲内である。特定の実施形態において、その寸法dは、約100μm〜0.75mmの間である。部材14、16は、これらの部材の間に時間によって変化する電圧差を提供するための交流(AC)電源20を有する回路19を介して電気的連絡のために配置される。濃縮領域(概して、22と示される領域中に示される)は、部材14、16間の間隙領域18の浸漬部分に沿って、特に先端領域12近辺に位置する。
【0019】
使用時に、デバイス10の先端領域12は、1以上の目的の分析物を含有するサンプル(例えば、図1Aに示されるチューブまたはウェル21中に保持されるDNA含有サンプル23)に浸され得る。例えば、目的の分析物がポリヌクレオチド(例えば、DNA)である場合、そのDNAは、部材14と部材16との間の間隙領域18に確立された増大している場の勾配に、特に、濃縮領域22に沿って、優先的に引きつけられる。1実施形態において、間隙領域18は、例えば、羽ペンと同様の様式にて規定容積の液体を保持するように構成される。次いで、チップ領域22は、受容領域(例えば、マイクロタイタープレートの清浄な空のウェル)に動かされ得、AC場を中断した際に、その受容領域にそのDNAが沈着され得る。その受容領域へのDNAの沈着は、部材14、16に負の電圧を印加することによって促進されて、DNAがチップ領域から追い払われ得る(DNAの負に荷電したリン酸基に対するこのような負の電圧の反発効果に起因する)。図1Aは、こ
のような目的で、スイッチ26によって部材14、16に電気的に接続可能な(およびこれらの部材から切断可能な)DC電源24を示す。
【0020】
DNAが沈着される受容領域(例えば、チューブまたはウェルのような容器)が、DNAが採取された開始容積より少量の液体を含む場合状況において、そのDNAは、それにより濃縮される。さらに、そのDNAが塩を含むサンプルから採取される場合、本明細書中に記載されるデバイスおよび方法は、サンプルの脱塩を補助し得る。なぜなら、そのチップ領域は、塩を優先的に引きつけないからである(なぜなら、塩は、容易には分極しないからである)。本教示によって実現され得る多くの利点の中でも、これら2つの事象(濃縮および脱塩)の組み合わせは、DNA分析の間の分離チャネルへの注入に利用可能な分析物の量の増加を生じ得る。
【0021】
必要に応じて、デバイス10は、濃縮領域22に位置した材料が検出され得るように配置された検出器をさらに備え得る(示さず)。さらに、このデバイス10は、例えば、そのデバイスの作動を制御およびモニターするために、ならびにデータの取得、分析および提示を管理するために、さらに必要に応じて、電源20、24の両方もしくは一方、および/または検出器(示さず)に接続されたコンピューター(示さず)を備え得る。
【0022】
本発明の1実施形態において、および図2を参照すると、デバイス10は、非導電性材料(例えば、樹脂ビーズ30)または他の非導電性物質(例えば、エポキシ物質など)にはめ込まれたチップ領域(概して12)を有する細長部材14、16を備える。これは、例えば、対向するチップ領域の間に設定された(規定された)間隔の維持を補助するために有用であり得る。
【0023】
本発明の1実施形態において、非導電性フィラメントは、そのデバイスの細長部材のうちの1以上の周りに巻かれる。例えば、図3は、部材16の周りに螺旋状(spiralまたはhelical)に巻かれた非導電性フィラメント34を示す。適切なフィラメント材料としては、とりわけ、ナイロン、テフロン(登録商標)、ポリイミドまたは他のプラスチックが挙げられる。そのフィラメントは、例えば、緊密な包みおよび摩擦力によって、ならびに/あるいは1以上の接着剤および/または留め具デバイスの使用を通じて、部材16に対して、適所に保持され得る。図3の構成は、部材14と部材16との間の固定した間隔を維持するために、およびデバイスが保持する流体の量を増大させるために保持され得る。さらに、または代わりに、部材14、16のチップ領域は、36のような多孔性材料(例えば、スポンジ様)でカプセル化されて、流体を保持し、部材14、16を離れて配置しておくことの補助になり得る。
【0024】
ワイヤは、ロッド様である必要も、円筒状である必要もないことが注意される。種々の形状が、場の勾配の集中を発生させ、目的に応じて変更し、増強すらする(例えば、強化する)ために使用され得る。例えば、表面特徴(例えば、先端、鋭い縁部、角部、角、出っ張り(bump)、突出部、歯、起伏、ノッチ、切れ込み、波形、ひだ(ripple)、フィンなど)は、例えば、チップ領域の近位に、部材14、16の一方または両方に沿って設けられ得る。1実施形態において、細長部材の一方または両方は、タッピンねじの様式にてしばしば設計される。このような特徴は、例えば、場の勾配を形成し、そして/または増強するために有利であり得る。図4に示される1実施形態において、鋭い先端または縁部(40と示される)が、各部材の末端部へ向かって部材14、16の各々の長さの大部分に沿って形成される。
【0025】
本発明の1実施形態において、細長非導電性基材は、導電性領域または導電性領域に沿った経路を設けるために処理される。例えば、ここで図5A〜5Cを参照すると、細長非導電性基材111が、対向した側面に、114および116で示される別のコーティング
を有する。1実施形態において、導電性コーティングは、適切な非導電性基材(例えば、多孔性セラミックまたはポリマー基材)上に吹き付けられるかまたは沈着される。任意の適切な導電性コーティング材料が使用され得る(例えば、銅もしくはアルミのような金属材料、または導電性樹脂もしくは塗料)1実施形態において、マスキング技術が、導電性材料を選択的に沈着するために使用される。
【0026】
本発明はさらに、本明細書中に複数の分析物操作デバイスが、共通の支持体により保持される構成を企図する。図5D〜5Eは、例えば、支持体111、およびこの支持体から下がっている複数の分析物操作デバイス110を示す。デバイス110の各々は、図5A〜5Cに関して、実質的に上記の通りである。理解され得るように、例えば、図5Dにおいて、この複数デバイス構成は、実質的に、細長い、実質的に水平に配置された上部の本体部分115と、この本体部分から下がっている間隔を空けて離された櫛の歯に似た細長部材117とを有する、櫛の様式にて構成され得る。本体115および部材117は、一体として形成され得るか、または別々に形成され得、任意の適切な手段(例えば、接着剤またはリベット締め)にて互いに取り付けられ得る。示された構成において、本体115および部材117は、その対向する主な表面上に導電性材料のコーティングを有する非導電性材料から構成されて、このコーティングに沿って電気経路を形成する。導電性コーティングは、AC電源20を有する適切な回路19を介して、電気的連絡のために沈着される。
【0027】
本発明の別の実施形態は、下部チップ領域とAC電源とを有する、1つの細長導電性部材部材を備える。どのデバイスが使用されるかに関して、受容領域(例えば、ウェル21)は、戻り経路を設けるために、電気的に配置され得る(例えば、接地され得る)。図6の例において示されるように、ウェル21は、AC電源20に電気的に接続された、その内部の下部領域に内張りされた導電性表面25を備える。表面25は、任意の実質的に不活性な導電性材料(例えば、金属層)であり得る。ウェル21中に保持される流体サンプル23に含まれるDNAは、ウェル23よりむしろチップ領域12に優先的に引きつけられる。なぜなら、小さな表面が、チップ領域12の近位にて場の勾配を発生させるからである。表面特徴(例えば、先端、縁部など)または流体のキャパシティーの改変(例えば、上記のとおり)が、この実施形態において使用され得ることは、理解されるべきである。
【0028】
本発明の実施形態に従って、本発明の分析物操作デバイスは、手動での操作のために構成される。例えば、支持体は、例えば、手動で操作可能なピペットと類似の様式にて、操作者の手に保持されるように設計され得、ある場所からある場所へと(例えば、サンプル容器から受容容器へと)容易に移動され得る。
【0029】
本発明の別の実施形態において、1以上の分析物操作デバイス(例えば、本明細書中に記載のもののいずれか)は、例えば、米国特許第6,132,582号(標題「Sample handling system for a multi−channel capillary electrophoresis device」)および/または米国特許第6,159,368号(標題「Multi−well Microfiltration Apparatus」)(その両方が、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような自動化ワークステーションに組み込まれる。例えば、その支持体は、そのデバイスが、ワークステーションの種々の領域または構成要素の位置を決めることを可能にする自動化配置(例えば、x−y−z運動)のために適合され得る。
【0030】
先に示したように、交流電場をもたらすために使用される電極は、所望の寸法を有する規定された濃縮領域を生じる電場を形成するように作用する形状を有し得る。電極の間隔は、目的の極性分析物を捕捉するに十分な強度を有する電場を発生するように選択され得
るが、その電極にて過剰な発泡を生じるほどには高くないように選択される。例えば、Washizuら,IEEE Transactions on Industry Applications,30(4):835−843(1994)を参照のこと。1実施形態において、電極間の間隔(図1の寸法dを参照のこと)は、約20μm〜2mmの間(例えば、約0.75〜1.0mm)である。
【0031】
分極性分析物を捕捉するために使用される交流電場は、このような分析物を操作(例えば、捕獲および濃縮)するに有効な任意の交流電場であり得る。概して、本発明の交流電場は、時間 対 電場強度プロフィール、周波数、および最大場強度によって特徴付けられ得る。分析物を操作するために必要な交流電場の特性は、多くの容易に獲得できる実験パラメーターに依存し、これらのパラメーターとしては、例えば、極性分析物の双極子モーメントの大きさ、支持媒体の誘電率、および誘導双極子モーメントを有する分析物の場合、極性分析物の分極率または周辺の対イオン微小環境が挙げられる。
【0032】
交流電場の時間 対 場強度プロフィールは、前述の周期的もしくは非周期的なプロフィールの正弦重ね合わせ(superposition)、鋸重ね合わせ、または矩形重ね合わせであってもよいし、あるいは適切な関数発生器(例えば、Agilent Technologies製のModel 33120A 15 MHz Function/Arbitrary Waveform Generator)を使用して発生され得る任意の他のプロフィールであってもよい。本発明の1実施形態において、交流電場の時間 対 場強度プロフィールは、矩形である。1実施形態において、交流電場の時間 対
場強度プロフィールは、時間平均して積分した場強度が、ゼロになるプロフィールであり、ここで、1つの完全なサイクルにわたって平均がとられる。
【0033】
交流電場の周波数は、分極性分析物の一部を操作し得る任意の周波数であり得る。実際に重要な多くの分析物について、例えば、交流電場の周波数は、約10Hz〜100メガヘルツ(MHz)の間であり得る。本発明の1実施形態において、交流電場の周波数は、1キロヘルツ(KHz)〜100KHzの間である。
【0034】
交流電場の最大場強度は、特定の応用に適した任意の場強度であり得るが、1実施形態において、交流電場の最大場強度は、交流電場のピーク場強度によって測定される場合、約100V/cm〜20,000V/cmの間であり;例えば、1,000V/cm〜10,000V/cmの間である。好ましくは、この交流電場は、空間的に非均質である。
【0035】
本発明の1実施形態において、捕捉された極性分析物は、濃縮領域から、例えば、交流電場の捕捉強度を低下させることによって、放出される。交流電場の捕捉強度は、周波数、場強度、またはその両方を変化させることによって調節され得る。先に示されるように、分析物の放出をもたらすための別の手段は、捕捉された分極分析物の極性と反対の極性を有するDC場の確立を伴う。
【0036】
1実施形態において、本発明に従うサンプルまたは分析物の濃縮工程に続いて、さらなる分析工程が、行われ得る。1実施形態において、分析物が濃縮領域にて濃縮された後に、その分析物は、分析的分離プロセス、例えば、電気泳動分離プロセスまたはクロマトグラフィー分離プロセスへ方向付けられる。本発明のその濃縮方法および位置決め方法は、引き続く分析プロセスが、電気泳動の場合に特に有利である。なぜなら、予備的分離濃縮工程が、集中しかつ狭い注入ゾーンを提供し得、よって分離性能の増大および分離された成分の検出性の増大の両方がもたらされる。
【0037】
分析物が核酸である、本発明の1実施形態において、濃縮領域中の分析物核酸の濃縮後または濃縮の間、その核酸分析物は、核酸ハイブリダイゼーション反応に供され、ここで
濃縮核酸分析物は、1以上の相補的核酸と、配列特異的ハイブリダイゼーションに適した条件下で接触される。1実施形態において、相補的核酸は、固体支持体、例えば、1以上の潜在的に相補性の核酸を含む、支持体に結合した核酸のアレイに結合される。その支持体に結合された核酸は、配列特異的ハイブリダイゼーションが可能な合成ポリヌクレオチドプローブ、cDNA分子、または任意の他の核酸または核酸アナログであり得る。支持体に結合された核酸の例示的なアレイは、いずれかの場所に記載される(例えば、Singh−Gassonら,Nature Biotechnology,17:974−978(1999);Blanchard and Friend,Nature Biotechnology,17:953(1999);Brownら,米国特許第5,807,522号;これらの各々は、本明細書中に参考として援用される)。本発明のプレハイブリダイゼーション濃縮工程は、ハイブリダイゼーション速度の増加、より濃縮されていないサンプルを使用する能力、および/またはハイブリダイゼーション反応の産物の検出性の増大を生じ得る。この実施形態は、核酸ハイブリダイゼーションの状況において記載されたが、この実施形態は、分析物が、結合相補物(例えば、抗体−抗原対、レセプター−リガンド対、ビオチン−アビジン対など)と接触される他のプロセスに等しく適用され得ることは、生化学的機器および分析の当業者に明らかである。
【0038】
水溶液(例えば、懸濁液)中の多くの生体分子が、荷電される。周知のように、電荷を有する2つの目的物の間で、反対の電荷を有する目的物の間では引きつけられるように力が作用し、類似の電荷を有する目的物の間では反発するように作用する。この特性は、本発明の分析物操作デバイスおよび分析物操作方法の特定の実施形態において利用される。
【0039】
いくつかの状況のもとでは、金属電極上での荷電した分析物の濃縮は、泡の発生が付随し得る。いくつかの場合には、このような泡は、電極上または電極近傍にある分析物の所望の位置づけを妨げ得るかまたは妨害し得る。従って、本発明のいくつかの実施形態では、同様の寸法にされ、同様の条件下に配置された白金電極と比較して、泡形成の傾向が減少または排除された電極の使用が好ましい(本明細書中では、まとめて「バブルフリー電極」という)。
【0040】
本発明の実施形態において、分析物の電荷と反対の電極上の表面電荷を確立するために、DC電流を確立することによって、電極の表面上および/またはその側に分析物を引きつけることを可能にし、それによって分析物を濃縮する。または、ゲル様電極が使用される場合、(例えば、界面動電注入に類似する工程を介して)分析物を電極の内部領域に引きつけることを可能にする。濃縮された分析物の電荷と同じ電荷を有する電極を提供するために、DC場の極性を逆転することによって、濃縮された分析物は、電極から放出され得るかまたは反発され得る。1つの実施形態は、分析物が位置決められた電極の一部を除去することによって、濃縮された分析物の移動を企図する。
【0041】
本発明で使用され得る固体電極の例としては、Pd、多孔性Pd、Ni(OH)、Ni(OH)、IrOが挙げられる。また、イオン性膜(例えば、Nafion)が使用され得る。ゲル様電極配置の例としては、ゼラチン、アガロース、デンプンなどで充填されたキャピラリーチューブなどが挙げられる。本発明と関連して有用なバブルフリー電極および電極材料の例は、発明者Woudenbergらの名前で、「Bubble−Free Electrophoresis and Electroosmotic Electrodes and Devices」と表題された、同時出願特許出願の代理人登録番号5010−001[Kilyk&Bowersox]および4573/4660[Applied Biosystems]に記載され、これらの出願は、その全体を参考として本明細書中に援用される。
【0042】
本発明の実施形態において、そしてここで図7に関して、分析物操作デバイス210は
、第1の電極214(例えば、上記されるバブルフリー電極)および第2(対)電極216を備え、各々は、適切な回路219を介してDC電源224に接続される。使用の際に、電極214、216は、示されるように、目的の荷電分析物を含有する溶液(例えば、チューブまたはウェル221中の溶液223)中に配置され得る。DC電流は、荷電分析物が259に示されるように、電極214上に電気めっきされるよう確立される。
【0043】
対電極216の特定の位置決めが重要ではないことに、留意されるべきである。本発明の1つの実施形態において、対電極は、図6に示される様式と同様の様式で、容器(例えば、カップ、ウェルまたはチューブ)の一部を含む。対電極がバブルフリーであることが必要ではない(所望である場合、バブルフリーであり得る)ことは、さらに留意される。
【0044】
ここで、図8を参照して、本発明に従う分析物操作デバイスの実施形態において、参照番号310によって一般に示される、バブルフリー電極は、電極363で満たされるキャピラリーまたはチューブ361(例えば、ガラス、フューズドシリカ、クオーツ)を備える。キャピラリー361の一端312は、イオン性膜367(例えば、Nafionなど)によって覆われる。他端369は、電解質363と接触するように、その中に電導性要素373(例えば、Ptワイヤ)を受容するように配置される。1つの実施形態において、上端369は、穴を空けられる(例えば、大気に開放される)。このような実施形態の利点は、371に示されるような、デバイスの操作の間に発生され得る泡が大気中へと排出され得ることである。任意の適切な対電極配置(示さず)は、使用され得る。操作中に、デバイス310は、目的の荷電分析物を含む溶液中に配置され得、DC電流は、荷電分析物がイオン性膜367に引きつけられ、そしてその上に集められるように配置され得る。
【0045】
イオン性膜の代替としてかまたはこのイオン性膜に加えて、小さなイオンの通過を選択的に可能にするが高分子分析物の通過を可能にしないメルタブルプラグ(meltable plug)が、端部312の領域に位置され得る。例えば、米国特許第5,593,559号(参考として本明細書中に援用される)に開示されるメルタブルプラグは、キャピラリー内部の1つ以上の領域に配置され得る。
【0046】
本発明の実施形態において、ここで図9A〜9Cを参照して、オリフィスを規定する一端412、および挿入されたダクト475を介してポンプ474と連絡するために配置される第2の端部469、を有するキャピラリーまたはチューブ461が、提供される。円筒形レザバの軸方向における、逆方向の移動のために構成されるピストンを有する、示されるピストン型ポンプのような、任意の適切なポンプが、使用され得る。ポンプ474は、ダクトおよびキャピラリーを、463として示されるゲル様電解質物質で圧力充填するように適合される。電解質物質463は、ここで、電流源と連絡するように配置される。このような連絡は、任意の適切な手段によってなされ得、好ましくは、いかなる実質量の泡形成も伴わない連絡である。例えば、バブルフリー電極(473でのような)または多孔性膜が使用される。実施形態において、電解質を含むキャピラリーまたはダクトは、米国特許Re35,102号(参考として本明細書中に援用される)に記載されるように、イオンの移動を介する電気的接触を可能にする構造を提供される。1つの実施形態において、GORE−TEX細孔PTFEチュービングが使用される。
【0047】
操作中に、デバイス410は、目的の荷電分析物を含有する溶液(示さず)に沈められる末端のオリフィス412で配置され得る。DC電流は、荷電分析物をゲル上に回収するために引きつけるように確立され得る。次いで、濃縮された分析物は、所望される位置に移動され、逆の(反発する)電圧を印加されることによって遊離される。次いで、デバイスは、キャピラリーの開放末端を通してゲルの一部を押し出すようにポンプを操作することによって、新規化され得(図9Bを参照のこと)、次いで、キャピラリーの押し出され
た部分は、除去され得る(図9Cを参照のこと)。いくつかの場合において、分析物をゲルに沿って分配することが望ましくあり得ることが理解されるはずである。実施形態において、濃縮された分析物は、所望される位置まで移動され、ゲル様スラグをポンピングすることによって遊離される。1つのこのような実施形態において、例えば、ゲル様スラグは、DNAを通さないゼラチン物質であり、そして一旦分配されると溶解される。あるいは、絡み合ったポリマーは、スタッキング媒体として作用し得、一旦分配されると希釈される。このような希釈は、ポリマーの浸透性を変化し得、それによって、ポリマーがスタッキング媒体として作用することを可能にする。
【0048】
実施形態において、本発明のデバイスの電導性部材(例えば、図1のデバイス10の部材14、16;図7のデバイス210の部材214、216)は、所望の湿潤特性を示すように形成されるかまたは処理される。例えば、親水性(すなわち、湿潤性)である表面を有する部材14、16の選択された領域(図1)が、提供され得る。例えば、部材14、16の表面の選択された領域は、親水性材料で形成され得、そして/または親水特性を示すように処理され得る。1つの実施形態において、表面は、天然の、結合または共有結合する荷電性基である。
【0049】
あるいは、またはさらに、疎水性である上表面領域(すなわち、表面上に配置された水性媒体が玉になるようにする表面)を有する部材14、16の選択された領域が、提供され得る。例えば、部材14、16の外部表面の選択された領域は、疎水性物質で形成され得、そして/または疎水特性を示すように処理され得る。種々の公知の疎水性ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、および/またはポリエチレン)は、所望の疎水性特性を得るために使用され得る。さらに、または、代替的に、種々の潤滑剤または他の従来の疎水性フィルムが、部材の外部表面に適用され得る。
【0050】
実施形態において、部材14、16の上部領域は、疎水性であるように処理され、そして必要に応じて、部材の下部領域は、親水性であるように処理される。
【0051】
サンプルホルダー(例えば、チューブまたはウェル)の方に動くように、そして/またはサンプルホルダーから離れて動くように、適合された導電性部材を有する代わりに、またはこれらに加えて;サンプルホルダーは、移動について適合され得ることが理解されるべきである。
【0052】
本明細書中に示される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、参考として援用されるように詳細かつ個々に示されるように、同じ程度まで本明細書中に参考として援用される。
【0053】
当業者は、多くの改変が、開示された実施形態において、その範囲を逸脱することなく可能であることを容易に理解する。多くのこのような改変が、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきであることが示される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1Aおよび1Bは、それぞれ、本発明の教示に従う分析物を操作するためのデバイスの側面および底面の部分的模式図である。
【図2】図2は、本発明に従う分析物を操作するためのデバイスの実施形態の部分側面図である。
【図3】図3は、本発明に従う分析物を操作するためのデバイスの実施形態の部分的側面図である。
【図4】図4は、本発明に従う分析物を操作するためのデバイスの実施形態の部分的側面図である。
【図5】図5Aは、本発明の実施形態に従って分析物を操作するためのデバイスの一側面の部分的模式図である。図5Bは、図5Aのデバイスの別の側面からの部分図である。図5Cは、図5Aのデバイスの真下から見た図である。図5Dおよび5Eは、本発明の実施形態に従って分析物を操作するためのデバイスの、それぞれ側面および一方の端部からの部分的模式図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に従って分析物を操作するためのデバイスの側面の部分的模式図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に従って分析物を操作するためのデバイスの側面の部分的模式図である。
【図8】図8は、本発明に従って分析物を操作するためのデバイスの1実施形態の側面の部分的模式図である。
【図9】図9Aおよび9Bは、本発明に従って分析物を操作するためのデバイスの1実施形態の側面の部分的模式図である。図9Cは、図9Aおよび9Bのデバイスの端部領域の図であり、端部領域から排出されるゲル様電解質(スラグ)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルホルダーに関して目的の荷電分析物を移動するための分析物操作デバイスであって、該分析物操作デバイスは、該分析物を保持するように配置され、該分析物操作デバイスは:
空間を空けた関係で配置される、少なくとも2つの同一の拡がりを持つ細長の導電性部材;
該電導性部材に電気的に連絡するように適合されるDC電源;
を備え、
該部材および該ホルダーは、第1の位置と第2の位置との間で相対的移動するように適合され、該第1の位置において、該部材の少なくとも一部は、該ホルダー 内に配置され、該第2の位置において、該部材は、該ホルダーの外部に配置され;ここで該部材の少なくとも1つは、バブルフリー電極であり;ここで該部材および該ホルダーは、該第1の位置に配置される場合、該DC電源は、該導電性部材と組み合わせて作動され、該部材の間の該ホルダー内に、電位を確立する、分析物操作デバイス。
【請求項2】
分析物操作デバイスであって、該分析物操作デバイスは、
可動性支持体;
該支持体によって保持される少なくとも2つの電極であって、該電極は、互いに対して空間を空けた関係で配置される末端領域を有し、少なくとも1つの電極は、バブルフリー電極である、電極;
該電極に電気的に連絡するように適合された、DC電源;
を備え、ここで電荷を保持する、目的の生体分子を含有する電解質溶液中に該電極を配置する際に、該DC電極は、1つの正電荷を有する電極およびもう1つの 負電荷を有する電極を提供するように操作可能であり、その結果、荷電生体分子は、反対の電荷の電極の末端領域に向かって移動される、分析物操作デバイス。
【請求項3】
生体分子操作デバイスであって、該生体分子操作デバイスは:
(i)第1および第2の電極であって
ここで該電極の少なくとも1つは、以下:
(a)第1の開口部を規定する第1の末端、第2の開口部を規定する第2の末端、および該開口部の間に伸長する内部管腔部を備える、毛管、
(b)該管腔部内に保持される電極、
(c)該電極と接触し、該管腔部の外に伸長する導電性要素、ならびに
(d)該第2の末端近傍の該毛管領域の、選択的透過性閉塞、
を備える、電極;ならびに
(ii)該第1の電極および該第2の電極と電気的に連絡するように適合される、DC電源;
を備え、ここで、電荷を保有する、目的の生体分子を含有する電解質溶液中に該電極を配置する際に、該DC電源は、1つの正電荷を有する電極およびもう1つ の負電荷を有する電極を提供するように操作可能であり、その結果、荷電生体分子は、反対の電荷の電極の末端領域に向かって移動される、生体分子操作デバイス。
【請求項4】
前記選択的に透過性の閉塞が、第2の開口部を覆うイオン交換性膜を備える、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記イオン交換性膜が、ペルフルオロ化イオン交換ポリマーを備える、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記電極の少なくとも1つが、生体分子採集位置と生体分子配置位置との間での移動に適合される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項7】
生体分子操作デバイスであって、該生体分子操作デバイスは:
(i)第1の電極および第2の電極であって、
ここで該電極の少なくとも1つは、以下:
(a)入口末端、出口末端、および該末端の間に伸長する内部管腔部、ならびに
(b)該管腔部内に配置される、ゲル化電解質または粘性電解質、
を備える、電極;ならびに
(ii)該第1の電極および第2の電極と電気的に連絡するように適合されたDC電源であって、該DC電源は、該ゲル化電解質または粘性電解質を備える、DC電源;
を備え、ここで電荷を保有する、目的の生体分子を含有する電解質溶液中に該電極を配置する際に、該DC電源は、1つの正電荷を有する電極およびもう1つの負電荷を有する電極を提供するように操作可能であり、それによって、荷電生体分子は、反対の電荷の電極の出口末端に向かって移動される、生体分子操作デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載のデバイスであって、該デバイスは、
前記ゲル化電解質または粘性電解質の供給部を保持するように構成されるレザバ;および該供給部の少なくとも一部を、該入口末端に押し込むように適合される圧力供給源
をさらに備え、該レザバは、前記キャピラリーの前記入口末端と流体連絡するように配置される、デバイス。
【請求項9】
生体分子操作デバイスであって、該生体分子操作デバイスは:
(i)第1の電極および第2の電極であって、
ここで、少なくとも1つの電極は、以下:
(a)入口末端、出口末端、および該末端の間に伸長する内部管腔部を備える、毛管、ならびに
(b)該管腔部内に配置されるシービングマトリクス、を備える電極;
(ii)該第1の電極および第2の電極と電気的に連絡するように適合されるDC電源であって、該DC電源は、該シービングマトリクスを備える、DC電源;
を備え、ここで電荷を保有する、目的の生体分子を含有する電解質溶液中に該電極を配置する際に、DC電源が、1つの正電荷を有する電極およびもう1つの負 電荷を有する電極を提供するように操作可能であり、それによって、荷電生体高分子が反対の電荷の電極の出口末端に向かって移動される、生体分子操作デバイス。
【請求項10】
請求項9に記載のデバイスであって、該デバイスは:
前記シービングマトリクスの供給部を保持するように構成されるレザバ;および
該供給部の少なくとも一部を、該入口末端に押し込むように適合される圧力供給源、をさらに備え、該レザバは、前記キャピラリーの前記入口末端と流体連絡するように配置される、デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−178437(P2007−178437A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34138(P2007−34138)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【分割の表示】特願2003−523982(P2003−523982)の分割
【原出願日】平成14年8月23日(2002.8.23)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】