説明

電子カルテシステム

【課題】 患者の特定が容易で、また遺伝等を考慮した予防医療がしやすい電子カルテシステムを提供する。
【解決手段】カルテ画面を表示画面に表示する表示装置と、家族単位の顔写真データを個々人を特定して格納する家族一覧データ格納手段と、前記表示画面に前記家族の顔写真を含む家族一覧データを表示させる家族一覧表示指令手段と、その家族一覧表示が表示画面に表示された状態で、その中から患者を選択入力する患者選択入力手段と、前記家族一覧データから選択された患者の顔写真データを含むカルテ画面を前記表示画面上に表示させるカルテ画面表示指令手段と、そのカルテ画面上で患者の診察に対応するカルテデータを入力するカルテデータ入力手段と、そのカルテデータを患者の顔写真データと対応付けて家族単位のカルテデータベースとして格納する家族単位カルテデータ格納手段と、その格納された家族単位のカルテデータベースからカルテデータを読み出し、その患者の顔写真データとともに前記表示画面に表示させるカルテ再現表示指令手段とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子カルテシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院等において手書きのカルテに換えて、電子データでカルテを作成し保存する電子カルテが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−175784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、撮像装置で撮像された患者の患部等を示す画像データを入力する入力手段と、その患者の画像データを格納する手段を備えた電子カルテが提案されているが、医者の診断時に患者を瞬間的に特定し認識することは、患者との頻度の高い緊密な接触がないと困難である。
【0005】
また、電子カルテは当然のことながら、患者個人個人で完結するものであるが、その患者の家系上からの遺伝による病気があるのかどうかといったことは、その都度問診しなければわからず、予防医療を行いにくい状況であった。
【0006】
本発明は上記した背景をもとになされたもので、患者等を瞬間的に特定でき、また患者の家系上からの疾患の可能性を判断しやすくする電子カルテシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
この発明は、カルテ画面を表示画面に表示する表示装置と、
患者の顔写真データを格納する顔写真データ格納手段と、
前記表示画面におけるカルテ画面上で患者の診察に対応するカルテデータを入力する入力装置と、
前記カルテデータをその患者の顔写真データと対応付けて格納するカルテデータ格納手段と、
前記カルテデータの入力に際して前記カルテ画面に患者の顔写真データを表示するとともに、いったん格納された前記カルテデータを対応する患者の顔写真データと一体的に前記表示画面に表示する表示指令手段と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
これにより、患者のカルテデータと顔写真とが対応して表示されるので、電子カルテの顔写真をみれば、患者が瞬間的に特定できる。また、電子カルテを作成する(入力する)カルテ画面に患者の顔写真が表示されるため、患者を取り違えたカルテが作成されるおそれが解消される。なお、本明細書において「顔写真データ」とは、人物の少なくとも顔が写っているものを意味し、顔が写っていれば人物の顔のみ、上半身あるいは全身の写真であっても差し支えない。
【0009】
またこの発明は、カルテ画面を表示画面に表示する表示装置と、
家族単位の顔写真データを個々人を特定して格納する家族一覧データ格納手段と、
前記表示画面に前記家族の顔写真を含む家族一覧データを表示させる家族一覧表示指令手段と、
その家族一覧表示が表示画面に表示された状態で、その中から患者を選択入力する患者選択入力手段と、
前記家族一覧データから選択された患者の顔写真データを含むカルテ画面を前記表示画面上に表示させるカルテ画面表示指令手段と、
そのカルテ画面上で患者の診察に対応するカルテデータを入力するカルテデータ入力手段と、
そのカルテデータを患者の顔写真データと対応付けて家族単位のカルテデータベースとして格納する家族単位カルテデータ格納手段と、
その格納された家族単位のカルテデータベースからカルテデータを読み出し、その患者の顔写真データとともに前記表示画面に表示させるカルテ再現表示指令手段と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
このようにすれば、家族の顔写真データにより家族を一つの顧客体として捉え、患者をその家族構成員として一目で把握することができる。また患者の単体ではなく、家族の一員として有機的につながる健康環境、家系状況を、特定の患者(家族構成員)について把握することができるから、1人の患者単独でみる従来からの電子カルテに比べて予防医学がより行いやすくなる。すなわち、同じ環境で生活すると同じような疾患が生じたり、また同じ家系における同様の遺伝により、疾患も家族で共通する場合が少なくないからである。また、家族の1人が風邪を引いて、その風邪が家族の他の者に移ったような状況においても、家族単位のいわば集合カルテにより、家族をひとつの固まりとして病状をいち早く察知し、有効な療法を早期に行うことが可能となる。
【0011】
さらにこの発明は、前記カルテデータには患者に対する後のフォローが必要なことを示す要フォローデータが入力されるようになっており、複数の患者にわたる要フォローデータを表示画面に一覧表示させる一覧表示指令手段と、要フォローデータの処理が済んだことを示す対応済みデータの入力手段と、要フォローデータが対応済みであることを前記表示画面に表示させる要フォロー処理対応表示指令手段とを含む。
【0012】
このように、電子カルテでのデータに要フォローデータを含ませ、かつその要フォローデータを一覧表示することにより、一目で各患者に対し必要なフォロー内容が把握でき、また対応が済んだものについてその旨の入力処理をするとともに、各要フォローデータについて対応済みの表示を行うことによって、要フォローデータの対応忘れを防ぐことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例1)
以下、本発明の実施の形態につき、図面に示す実施例を参照して説明する。
図1は、本発明の概要例を示しており、病院内に設置されたサーバ1がLAN(ローカルエリアネットワーク)に接続され、診察室等にある端末3がLAN2に接続されてサーバ1にアクセスできるようになっている。なお、LAN2がさらにインターネットを介して病院外の外部のサーバ1に接続される構成でもよい。各端末3は、表示画面3aとキーボード等の入力部3bを備え、表示装置と入力装置に相当するものとなっている。
【0014】
図2はサーバ1の概要を示している。サーバ1は前記LAN2と接続されるI/Oポート5、CPU6、ROM7、RAM8及びハードディスク9(HDD)を備えている。ROM7には後述の電子カルテ稼動プログラム7aが記憶され、RAM8はワークメモリとして機能する。またHDD9は高容量記憶装置として機能し、家族単位のカルテを格納する手段である家族単位カルテメモリ9a、後述の要フォローデータを一括して格納する要フォロー一覧データメモリ9bを備えている。
【0015】
図3は家族単位カルテメモリ9aを概念的に示すものであり、この記憶領域が家族の顔写真データを個々人を特定して格納する家族一覧データ格納手段と、診察に対応するカルテデータを患者の顔写真と対応付けて家族単位のカルテデータベースとして格納する家族単位カルテデータ格納手段とを兼ねている。例えば世帯主A1、妻A2、長女A3・・・Z:Azの家族構成員について、それぞれの顔写真、診察に対応するカルテデータ(診察日、症状、診察結果、施術、薬の処方等)、後からフォローが必要な場合に入力される要フォローデータが、各人ごとに家族単位で関連して格納される。要フォローデータは、例えば診察後、所定の時間又は日数が経過した後に、患者に様子を聞くために自宅に電話連絡をする予定のデータ(覚え)である。それを診察時に予め電子カルテに入力しておくことを意味する。
【0016】
また、この家族単位カルテメモリ9aには、その家族の家系における病歴データを格納しておくことができ、例えば祖父が胃ガンで死亡したとか、祖母が脳梗塞にかかり、現在リハビリ中である等のデータを書き込んで格納しておくことができる。
【0017】
次に、図2の電子カルテ稼動プログラム7aの内容について、図4に示すフローチャートに従い説明する。
このプログラムが立ち上がると、ステップ(S)1で所定のトップページが端末3の表示画面3aに表示される。そして、家族を特定するために、S2で家族の特定の者(例えば世帯主)の名前が端末3の入力部3bから入力されると、S3で例えば図5に例示されるような家族一覧画面が端末3の表示画面3bに表示される。この例では家族一覧画面上に、世帯主、妻、長女及び次女のそれぞれの名前と顔写真が表示される。また、家族の病歴(家系の遺伝的病歴を含む)も併せて表示され、それは例えば家族ないし家系に胃ガンや脳梗塞等が発生していることを示すデータである。
【0018】
図4に戻って、S3で家族一覧画面が表示された状態で、S4により患者の選択入力が行われる。例えば図5において、患者が長女のA野D子であるとすれば、この患者の顔写真又はその他の特定エリアを端末3のマウス等でクリックすることにより、図5のS5が実行されて、パーソナル画面の表示が例えば図6に例示するように行われる。つまり、家族の中で診察を受けにきた患者の顔写真がパーソナル画面(カルテ画面)として表示され、初めての診察(初診)であれば、新規のカルテ作成を待つカルテ画面が、また既に何回か診察を受けている(再診の)場合は、診察歴を示す過去のカルテデータも表示される。そして、図4のS6において、パーソナルカルテデータが端末3の入力部3bから入力される。つまり、初診であれば、この診察をスタートとするカルテデータが入力され、再診であれば過去のカルテデータに追加する最新データが入力される。
【0019】
また図4のS7で、要フォローデータがあるがどうかが判断され、あればS8でその要フォローデータ(例えば診察後の電話フォローの予定データ)が家族単位カルテメモリ9aに患者と対応付けて格納され、また上記入力された患者のパーソナルカルテデータは、S9で家族単位カルテメモリ9aに格納される。なお、上記要フォローデータは複数の患者にわたるすべてのものが、図2のHDD9の要フォロー一覧データメモリ9bに一括して格納されるようにもできる。
【0020】
さらに図4のS10で、その他の入力があるがどうかが判断され、あればそのデータを格納するS11が実行され、なければそれで終了する。
【0021】
図7は要フォロー処理のルーチンを示しており、これは図2の電子カルテ稼動プログラムの一部である。R1で要フォローデータが図2の要フォロー一覧データメモリ9bから読み出され、あるいは図3の各家族単位カルテメモリ9aから要フォローデータが読み出されて集約され、端末3の表示画面に一覧表示される。例えば図8に示すように、電話フォローが必要なリストが患者の氏名等のデータ(必要に応じて電話番号とも)と対応させて表示される。そして、R2で対応済みの入力があるかどうかが判断され、あればR3で対応済みの入力を画面表示し、なければR3をスキップする。例えば図8に示すように、電話フォローであれば電話連絡を完了した患者に対して、対応済みの印(レ等)を表示し、対応がされていなければ対応済みの印は表示されない。なお、対応済みの表示として、該当する患者の欄を消去するという表示方法をとってもよい。
【0022】
図7のR4で未対応の要フォローデータ(例えば電話連絡されていない)が残っているかどうかが判断され、残っていればR2以降のループに戻り、残っていなければ終了する。
【0023】
(実施例2)
図9は別の実施例を示すものであり、この例では家族単位カルテデータメモリは採用されず、単純に患者毎の個人別カルテメモリ20が、図2のHDD9等に設けられる。この場合は、患者の氏名等の名前特定データ20a、顔写真データ20b及び診察に対応するカルテ内容データ20cが、互いに対応付けて格納される。カルテ内容の入力、既作成のカルテの表示(再現表示)等は、図1〜8で説明した実施例と実質的に同様であるので、重複する説明は割愛する。
【0024】
以上の実施例1、2の説明において、図2の電子カルテ稼動プログラム7aの該当部分と、これを実行するCPU6とが、この発明における表示指令手段、家族一覧表示指令手段、カルテ画面表示指令手段、カルテ再現表示指令手段、一覧表示指令手段及び要フォロー処理対応表示指令手段に相当するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明のシステムの構成例を示す系統図。
【図2】図1のサーバの概要図。
【図3】図2の家族単位カルテメモリの概念図。
【図4】この発明の処理の一例を示すフローチャート。
【図5】家族一覧表示の表示例を示す図。
【図6】家族の中から選択された1人のパーソナル画面の表示例を示す図。
【図7】要フォローアップの処理例を示すフローチャート。
【図8】要フォローデータの一覧表示と対応済み表示の例を示す図。
【図9】別の実施例の個人別カルテメモリの概念図。
【符号の説明】
【0026】
1 サーバ
2 LAN
3 端末(表示装置、入力装置)
6 CPU
7 ROM
8 RAM
9 HDD(顔写真データ格納手段、カルテデータ格納手段、家族一覧データ格納手段、家族単位カルテデータ格納手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルテ画面を表示画面に表示する表示装置と、
患者の顔写真データを格納する顔写真データ格納手段と、
前記表示画面におけるカルテ画面上で患者の診察に対応するカルテデータを入力する入力装置と、
前記カルテデータをその患者の顔写真データと対応付けて格納するカルテデータ格納手段と、
前記カルテデータの入力に際して前記カルテ画面に患者の顔写真データを表示するとともに、いったん格納された前記カルテデータを対応する患者の顔写真データと一体的に前記表示画面に表示する表示指令手段と、
を含むことを特徴とする電子カルテシステム。
【請求項2】
カルテ画面を表示画面に表示する表示装置と、
家族単位の顔写真データを個々人を特定して格納する家族一覧データ格納手段と、
前記表示画面に前記家族の顔写真を含む家族一覧データを表示させる家族一覧表示指令手段と、
その家族一覧表示が表示画面に表示された状態で、その中から患者を選択入力する患者選択入力手段と、
前記家族一覧データから選択された患者の顔写真データを含むカルテ画面を前記表示画面上に表示させるカルテ画面表示指令手段と、
そのカルテ画面上で患者の診察に対応するカルテデータを入力するカルテデータ入力手段と、
そのカルテデータを患者の顔写真データと対応付けて家族単位のカルテデータベースとして格納する家族単位カルテデータ格納手段と、
その格納された家族単位のカルテデータベースからカルテデータを読み出し、その患者の顔写真データとともに前記表示画面に表示させるカルテ再現表示指令手段と、
を含むことを特徴とする電子カルテシステム。
【請求項3】
前記カルテデータには患者に対する後のフォローが必要なことを示す要フォローデータが入力されるようになっており、複数の患者にわたる要フォローデータを表示画面に一覧表示させる一覧表示指令手段と、要フォローデータの処理が済んだことを示す対応済みデータの入力手段と、要フォローデータが対応済みであることを前記表示画面に表示させる要フォロー処理対応表示指令手段と、
を含む請求項1又は2に記載の電子カルテシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−53753(P2006−53753A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234848(P2004−234848)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(504266670)
【Fターム(参考)】