説明

電子キーシステム

【課題】イグニッションスイッチオン中の通信端末の車外持ち出しを監視して、通信端末を車外に放置したまま再走行してしまう状況を生じ難くすることができる電子キーシステムを提供する。
【解決手段】キー機能を持つ携帯電話21に加速度センサ32を設け、携帯電話21に発生する動きを加速度センサ32で検出して、これを加速度情報Sraとしてブルートゥース通信によって車両1に送信する。そして、携帯電話21の動きを車両1において監視し、イグニッションスイッチ14がオンの状況下で携帯電話21に車外持ち出しの動きが発生していれば、携帯電話21が車外に持ち出されたことを車両1がユーザに警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キー機能を持った通信端末を車両キーとして使用可能な電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の電子キーシステムとして、車両から送信されるリクエスト信号によって電子キーからID信号を返信させ、このID信号に含まれるIDコードにより電子キーのID照合を実行するキー操作フリーシステムが広く普及してきている。このキー操作フリーシステムでは、車外発信機で車外にリクエスト信号の通信エリアを形成し、車内発信機で車内にリクエスト信号の通信エリアを形成し、車外及び車内のそれぞれで電子キーとID照合を実行する。そして、車外照合が成立すると、ドアロック施解錠が許可又は実行され、車内照合が成立すると、エンジン始動操作が許可される。
【0003】
また、他の電子キーシステムの一種として、携帯電話に車両のIDコードを登録して、携帯電話を車両キーとして使用する携帯電話キーシステムが考案されている(特許文献1等参照)。このシステムには、例えばFeliCa(登録商標)等の近距離無線通信技術(通信距離10cm程度)が応用される。そして、車両に設置したリーダライタに携帯電話をかざして携帯電話からIDコードを取得し、このIDコードによりID照合としてかざし照合を行う。そして、かざし照合が成立すれば、ドアロック施解錠やエンジン始動操作等が許可又は実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−132085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯電話を車両キーとして使用可能な場合、車両のイグニッションスイッチをオンしたまま(エンジン稼働中のまま)、携帯電話を衣類のポケット等に入れつつ一時的に降車する場合も想定される。このとき、仮にユーザが携帯電話を衣類から出して車外に置いたとき、携帯電話を車外に放置したまま再度乗車して再走行してしまう可能性も否めない。こうなると、車両が目的地に到着してエンジンを停止した際、携帯電話以外のキーがユーザの手元になければ、車両を再始動することができない問題に繋がる。
【0006】
本発明の目的は、イグニッションスイッチオン中の通信端末の車外持ち出しを監視して、通信端末を車外に放置したまま再走行してしまう状況を生じ難くすることができる電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、キー機能を持った通信端末によって近距離無線通信を介したID照合が可能であり、当該ID照合が成立すれば、車両の操作が許可又は実行される電子キーシステムにおいて、前記通信端末の動きを検出する動き検出手段と、前記動き検出手段の検出信号を基に前記通信端末の動きを監視し、前記車両のイグニッションスイッチがオンの状況下で、前記通信端末が車外に持ち出されたか否かを判定する判定手段と、前記イグニッションスイッチがオンの状況下で前記通信端末が車外に持ち出されたとき、その検出に応じた動作を前記車両又は前記通信端末に実行させる実行手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、通信端末に動き検出手段を設け、動き検出手段の検出信号を基に、車両のイグニッションスイッチがオン中に通信端末が車外に持ち出される動きがあったか否かを判定する。そして、イグニッションスイッチオン状況下で通信端末の車外持ち出しがあった場合は、それに応じた動作を車両又は通信端末で実行する。よって、イグニッションオン状況下で通信端末が車外に持ち出されたことをユーザは認識することが可能となるので、それに対応した動作をユーザに取らせることが可能となる。このため、イグニッションスイッチオン状況下の車両からユーザが降車するとき、ユーザが通信端末を持ったまま車両から降りてしまう状況が生じ難いので、通信端末を車外に放置したままの再走行を生じ難くすることが可能となる。
【0009】
本発明では、前記動き検出手段で検出した検出信号を、無線により前記通信端末から前記車両に送信する通信手段を備え、前記判定手段は、前記通信手段を介して前記動き検出手段の検出信号を取得し、前記通信端末の車外持ち出し判定を前記車両側で実行することを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、通信端末の車外持ち出し判定を車両側で実行するので、この判定機能を通信端末に設けずに済む。よって、通信端末の構成が複雑にならずに済む。
本発明では、前記通信手段は、前記ID照合とは別系統の通信網で通信を実行することを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、ID照合とは別系統の通信網によって検出信号が通信端末から車両に送信されるので、混信等の影響を受けずに検出信号を通信端末から車両に送り渡すことが可能となる。
【0012】
本発明では、前記実行手段は、前記イグニッションスイッチがオンの状況下で前記通信端末が車外に持ち出されたとき、その旨を報知する報知手段であることを要旨とする。
この構成によれば、イグニッションスイッチオン状況下で通信端末が車外に持ち出されたとき、報知手段がその旨をユーザに通知する。よって、イグニッションスイッチオン状況下の通信端末の車外持ち出しを、ユーザに分かり易く的確に伝えることが可能となる。
【0013】
本発明では、電子キーによって狭域無線通信を介したID照合が可能であり、当該電子キー及び前記通信端末の少なくとも一方で前記ID照合が成立すれば、前記車両の操作を許可又は実行することを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、通信端末をキーとするシステムと、電子キーによりID照合するシステムとの両方が車両に設けられ、この2システムの一方で照合が成立すれば、キー照合が成立として処理される。よって、通信端末及び電子キーの一方を所持していればID照合が実行可能となるので、利便性がよくなる。
【0015】
本発明では、前記通信端末は携帯電話であり、前記通信手段が実行する通信はブルートゥース通信であることを要旨とする。
この構成によれば、今日において一般に広く普及した携帯電話を、通信端末として使用することが可能となる。また、ノイズに影響を受け難い特性を持つブルートゥース通信を通信手段の通信に使用するので、高い通信成立性を確保することも可能となる。
【0016】
本発明では、前記通信手段は、前記イグニッションスイッチがオンのとき、前記検出信号の送信を実行し、前記判定手段は、前記通信手段によって前記検出信号を取得している間、当該検出信号を基に前記通信端末の車外への持ち出し有無を判定することを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、イグニッションスイッチがオンとなった時点から通信端末の動きが監視されるので、通信端末の動きを長期間に亘り検出することが可能となる。よって、イグニッションスイッチオン状況下の通信端末の車外持ち出し判定を、精度よく行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、イグニッションスイッチオン中の通信端末の車外持ち出しを監視して、通信端末を車外に放置したまま再走行してしまう状況を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態の電子キーシステムの構成図。
【図2】キー操作フリーシステムの車外通信エリア及び車内通信エリアの概要を示す模式図。
【図3】車外リーダライタ及び車内リーダライタの概要を示す模式図。
【図4】イグニッションスイッチがオンのとき車内に携帯電話が存在する例であり、(a)が模式図、(b)が加速度センサの出力径時変化を示すグラフ。
【図5】イグニッションスイッチがオンのときに携帯電話が車外に持ち出された例であり、(a)が模式図、(b)が加速度センサの出力径時変化を示すグラフ。
【図6】携帯電話の車外持ち出し判定の処理内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した電子キーシステムの一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両1側からの通信をトリガとして自動で電子キー2とID(Identification)照合を実行するキー操作フリーシステム3が設けられている。このキー操作フリーシステム3には、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作の中でドアロック施解錠が自動で実行される乗降車機能と、車内に設置されたプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ4を単に押し操作するのみでエンジンの始動停止操作が可能なエンジン始動停止機能とがある。
【0021】
この場合、車両1には、電子キー2との間でキー照合を行う照合ECU(Electronic Control Unit)5と、車載モータやリレー等の動作を管理するメインボディECU6と、エンジンの動作を管理するエンジンECU7とが設けられている。照合ECU5とメインボディECU6とは、LIN(Local Interconnect Network)8を介して接続され、メインボディECU6とエンジンECU7とはCAN(Controller Area Network)9を介して接続されている。照合ECU5のメモリ(図示略)には、車両1と組をなす電子キー2のIDコードが登録されている。エンジンスイッチ4は、照合ECU5及びメインボディECU6の両方に接続されている。
【0022】
照合ECU5には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を送信可能な車外発信機10と、車内にLF帯の電波を送信可能な車内発信機11と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な車両受信機12とが接続されている。車外発信機10及び車内発信機11は、電子キー2へのID返信要求としてリクエスト信号SrqをLF電波によって送信し、いわゆるスマート通信の成立可否を試みる。
【0023】
メインボディECU6には、ドアロック施解錠を行うときの駆動源としてドアロックモータ13が接続されている。また、メインボディECU6には、エンジンスイッチ4の操作を基に車両1の電源状態を切り換えるイグニッションスイッチ14が接続されている。イグニッションスイッチ14には、車載アクセサリに繋がるACC(Accessory)リレー15と、走行系の各種電装品に繋がるIG(Ignition)リレー16と、エンジンスタータに繋がるスタータリレー17とが設けられている。
【0024】
一方、電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御するキー制御部18が設けられている。キー制御部18のメモリ(図示略)には、電子キー2のIDコードが登録されている。キー制御部18には、LF帯の電波を受信可能なLF受信機19と、UHF帯の電波を送信可能なUHF送信機20とが接続されている。
【0025】
図2に示すように、電子キー2が車外にあるとき、車外発信機10は、車外に数mの範囲でリクエスト信号Srqの車外通信エリアを断続的に形成して、車外スマート通信を実行する。電子キー2は、車外のリクエスト信号Srqを受信すると、このリクエスト信号Srqにより起動して、ID照合(スマート照合)を行うべく第1ID信号Sid1をUHF電波で送信する。第1ID信号Sid1には、電子キー2に登録されたスマート通信用のIDコードが含まれている。照合ECU5は、第1ID信号Sid1を車両受信機12で受信すると、自身に登録されたIDコードで車外スマート照合を実行する。そして、車外スマート照合が成立すると、メインボディECU6によるドアロック施解錠が許可又は実行される。
【0026】
また、運転者が乗車したことが例えばカーテシスイッチ(図示略)により検出されると、車外発信機10に代えて今度は車内発信機11が車内全体にリクエスト信号Srqの車内通信エリアを形成して、車内スマート通信を開始する。このとき、電子キー2が車内のリクエスト信号Srqを受信すると、車内スマート照合を実行する。そして、車内スマート照合が成立すると、エンジンスイッチ4による電源遷移操作及びエンジン始動操作が許可される。
【0027】
図1に示すように、車両1には、携帯電話21を車両キーとしてID照合が実行可能な携帯電話キーシステム22が設けられている。携帯電話21は、例えばインターネット等を介して、サーバからIDコードをダウンロードすることにより、車両キーとして使用可能となる。本例の車両1では、キー操作フリーシステム3及び携帯電話キーシステム22の少なくとも一方で照合が成立すれば、キー照合が成立として処理される。なお、携帯電話21が通信端末に相当する。
【0028】
携帯電話キーシステム22は、携帯電話21を車両1の極近傍までかざしてID照合(かざし照合)を行う近距離無線通信方式をとっている。近距離無線通信には、例えばRFID(Radio Frequency identification)の一種として、NFC(Near Field Communication)が使用されている。NFCには、例えばFeliCa(登録商標)が使用されている。近距離無線通信の周波数には、例えばHF(High Frequency)帯が使用されている。
【0029】
この場合、図3に示すように、車両1のドア付近には、車外に位置する携帯電話21と近距離無線通信(車外かざし通信)が可能な車外リーダライタ23が設けられている。また、車内において例えばセンターコンソール等には、車内に持ち込まれた携帯電話21と近距離無線通信(車内かざし通信)が可能な車内リーダライタ24が設けられている。これらリーダライタ23,24は、電波の双方向通信が可能であって、例えば電波受信による送信電波波形の変化を検出することにより、電波送受信の同時実行が可能である。リーダライタ23,24は、携帯電話21の電源として駆動電波(電力電波)Svの送信と、この駆動電波Svにて起動した携帯電話21が返信してくる各種電波の受信とが可能である。
【0030】
図1に示すように、これらリーダライタ23,24には、かざし照合を管理するリーダライタECU25が接続されている。リーダライタECU25のメモリ(図示略)には、かざし照合用のIDコードが登録されている。リーダライタECU25は、車両1が駐車又は停車の際、リーダライタ23,24から駆動電波Svを断続的に送信して、携帯電話21とのかざし照合を実行する。
【0031】
携帯電話21には、携帯電話21の各種動作を制御する端末制御部26が設けられている。端末制御部26のメモリ(図示略)には、携帯電話21を車両キーとして動作させるため、かざし照合用のIDコードが登録されている。携帯電話21には、リーダライタ23,24と近距離無線通信を行う近距離無線通信部27が設けられている。端末制御部26は、リーダライタ23,24から送信された駆動電波Svを近距離無線通信部27で受信すると起動し、かざし照合が実行可能となる。
【0032】
車外リーダライタ23は、ユーザが車外にいる際、駆動電波Svを断続的に送信する。そして、車外から携帯電話21を車外リーダライタ23にかざすと、端末制御部26が駆動電波Svによって起動し、車外リーダライタ23に第2ID信号Sid2を送信する。第2ID信号Sid2には、端末制御部26に登録されたかざし照合用のIDコードが含まれている。リーダライタECU25は、第2ID信号Sid2を車外リーダライタ23で受信すると、自身に登録されたIDコードにより車外かざし照合を行う。照合ECU5は、車外かざし照合が成立することを確認すると、メインボディECU6によるドアロック施解錠を実行する。
【0033】
また、運転者が乗車してブレーキペダルを踏み込み操作等すると、車外リーダライタ23に代わり、今度は車内リーダライタ24が駆動電波Svの送信を開始する。乗車した運転者が携帯電話21を車内リーダライタ24にかざすと、リーダライタECU25は車内かざし照合を実行する。照合ECU5は、車内かざし照合が成立することを確認すると、エンジンスイッチ4による電源遷移操作及びエンジン始動操作を許可する。
【0034】
車両1には、携帯電話21とブルートゥース(Bluetooth:登録商標)により無線通信が可能なブルートゥース通信システム28が設けられている。ブルートゥースは、例えば数m程度の機器間接続に使用する短距離無線通信技術の一種であって、電波送受信が同時実行可能な双方向通信となっている。ブルートゥースは、例えば2.45GHz帯の電波を使用し、機器間に障害物があっても距離が約10m程度であれば、通信を確立することができる利点を持つ。また、例えばIrDA(Infrared Data Association)等の赤外線通信と比較して、消費電力を少なく抑えることができる利点もある。ブルートゥース通信システム28が通信手段を構成する。
【0035】
この場合、車両1には、車内の携帯電話21とブルートゥース通信を行うブルートゥース通信機29が設けられている。ブルートゥース通信機29は、メインボディECU6に接続され、動作がメインボディECU6に管理されている。一方、携帯電話21には、ブルートゥース通信機29と通信を行うブルートゥース通信部30が設けられている。ブルートゥース通信は、車内のみに拘らず車両1の周囲においても通信可能である。車両1は、ブルートゥース通信を介して携帯電話21と各種情報を共有する。
【0036】
車両1には、イグニッションスイッチ14がオン中の携帯電話21の車外持ち出しを監視する携帯電話車外持ち出し監視システム31が設けられている。携帯電話車外持ち出し監視システム31は、ブルートゥース通信を介して携帯電話21の車外持ち出し有無を監視し、イグニッションスイッチ14がオンの状況下で携帯電話21の車外持ち出しを検出すると、その旨を車両1にて警告する。イグニッションスイッチ14がオンとは、ACCリレー15やIGリレー16等がオン状態をとるような状況を言う。
【0037】
この場合、携帯電話21には、携帯電話21に発生する動きを検出する加速度センサ32が設けられている。加速度センサ32は、例えば光学式や半導体式によって携帯電話21の動きを検出するとともに、そのセンサ信号を端末制御部26に出力する。なお、加速度センサ32が動き検出手段に相当する。
【0038】
端末制御部26には、加速度センサ32から出力されるセンサ信号を取得するセンサ情報取得部33が設けられている。端末制御部26には、加速度センサ32から取得したセンサ信号を、ブルートゥース通信部30から加速度情報Sraとして送信させる加速度情報送信部34が設けられている。加速度情報Sraには、加速度センサ32が検出したセンサ信号や、携帯電話21のブルートゥース通信用の識別IDなどが含まれている。加速度情報送信部34は、車両1と携帯電話21とのブルートゥース通信が確立している間、加速度情報Sraを車両1に常時送信する。なお、加速度情報送信部34が通信手段を構成し、加速度情報Sraが検出信号に相当する。
【0039】
照合ECU5には、ブルートゥース通信を介して携帯電話21から加速度情報Sraを取得する加速度情報取得部35が設けられている。加速度情報取得部35は、例えばイグニッションスイッチ14がオンのとき、ブルートゥース通信機29から加速度情報送信要求Sstを送信して、携帯電話21に加速度情報Sraを送信させる。加速度情報送信要求Sstには、例えば通信相手となる携帯電話21を特定するための識別IDや、加速度情報Sraの送信を要求する指令などを含む。なお、加速度情報取得部35が通信手段を構成する。
【0040】
照合ECU5には、携帯電話21に発生する動きを基に、携帯電話21の車外への持ち出し有無を判定する端末持出判定部36が設けられている。図4(b)及び図5(b)に示すように、端末持出判定部36は、加速度情報Sraから割り出される携帯電話21の動きの径時変化を確認し、加速度から求まる動きの検出パターンDxが、携帯電話21を車外に持ち出す動きのパターン(以降、基準パターンDkと記す)かどうかを確認する。そして、端末持出判定部36は、検出パターンDxが基準パターンDkに合えば、携帯電話21が車外に持ち出されたと判断する。なお、端末持出判定部36が判定手段に相当する。
【0041】
照合ECU5には、IGオン中の携帯電話21の車外持ち出しが検出されたとき、その旨を車両1にて警告する端末持出警告部37が設けられている。端末持出警告部37は、端末持出判定部36がIGオン中の携帯電話21の車外持ち出しを確認すると、メインボディECU6に警告実行要求Sksを出力する。メインボディECU6は、端末持出警告部37から警告実行要求Sksを入力すると、報知機器38にてその旨を警告する。なお、端末持出警告部37が実行手段及び報知手段を構成する。
【0042】
次に、本例の携帯電話車外持ち出し監視システム31の動作を、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図6のフローチャートは、車両1及び携帯電話21が携帯電話21の車外持ち出し判定を実行したときの流れを示す動作フローである。
【0043】
まず、ステップ100において、車両1は、車内に持ち込まれた携帯電話21とID照合(車内かざし照合)を実行する。
ステップ101において、車両1は、ブルートゥース通信機29を起動して、携帯電話21とのブルートゥース通信を接続する。
【0044】
ステップ102において、加速度情報取得部35は、イグニッションスイッチ14がオンされたことを確認すると、ブルートゥース通信機29から携帯電話21に加速度情報送信要求Sstを送信して、携帯電話21の車外持ち出し判定を開始する。加速度情報取得部35は、イグニッションスイッチ14がオンの間、加速度情報送信要求Sstを断続的に携帯電話21に送信する。
【0045】
ステップ103において、加速度情報送信部34は、車両1から加速度情報送信要求Sstを受け付けている間、加速度センサ32にて検出したセンサ信号(動きの情報)を、加速度情報Sraとしてブルートゥース通信により車両1に送信する。加速度情報送信部34は、所定時間間隔で加速度情報Sraを断続的(定期的)に車両1に送信し続ける。
【0046】
ステップ104において、端末持出判定部36は、携帯電話21から取得した加速度情報Sraを基に、イグニッションスイッチ14がオン中の携帯電話21の車外持ち出し有無を判定する。
【0047】
ここで、図4(a)に示すように、イグニッションスイッチ14がオンの状況下で、携帯電話21が車内に置かれたままの場合を想定する。このとき、図4(b)に示すように、加速度情報Sraから求まる携帯電話21の動きの検出パターンDxは、加速度がほぼ「0」の波形をとり、基準パターンDkに合致しない。よって、端末持出判定部36は、携帯電話21が車外に持ち出されていないと判断する。従って、図4の状況下のときは、ステップ104の判定でステップ105に移行する。
【0048】
ステップ105において、車両1は、イグニッションスイッチ14がオフになったか否かを判断する。このとき、イグニッションスイッチ14がオフ操作されていれば、車外持ち出し判定を終了し、イグニッションスイッチ14がオフ操作されていなければ、ステップ104に戻る。
【0049】
また、図5(a)に示すように、イグニッションスイッチ14がオンの状況下で、携帯電話21が車外に持ち出された場合を想定する。このとき、図5(b)に示すように、加速度情報Sraから求まる携帯電話21の動きの検出パターンDxは、基準パターンDkに合致、又は近似する値をとる。よって、端末持出判定部36は、携帯電話21が車外に持ち出されたと判断する。従って、図5の状況下のときは、ステップ104の判定でステップ106に移行する。
【0050】
ステップ106において、端末持出警告部37は、メインボディECU6に警告実行要求Sksを出力して、携帯電話21が車外に持ち出された警告を報知機器38で実行する。この警告としては、例えば車両1のブザーを一定時間鳴らすなどがある。
【0051】
ステップ107において、車両1は、警告解除操作があったか否かを判断する。このとき、警告解除操作があれば、車外持ち出し判定を終了し、警告解除操作がなければ、ステップ106に戻って警告を継続する。なお、解除操作としては、例えば車両ドアをもう一度改めて開閉する操作などがある。
【0052】
ところで、例えばイグニッションスイッチ14をオンしたままユーザが携帯電話21を車外に持ち出したときは、携帯電話21を車外に置き忘れたまま車両1に乗り込み、再走行してしまう可能性も否めない。この場合、車両1が目的地に到着してエンジンを停止したとき、手元に携帯電話21がないことから、車両1のエンジンを再始動できない状況に陥る可能性がある。また、車外に放置してしまった携帯電話21が第三者に持ち去られ、車両1が盗難に遭う可能性もある。
【0053】
そこで、本例においては、キー機能を持つ携帯電話21に加速度センサ32を設け、携帯電話21に発生する動きを加速度センサ32で検出して、これを加速度情報Sraとしてブルートゥース通信によって車両1に送信する。そして、携帯電話21の動きを車両1において監視し、イグニッションスイッチ14がオンの状況下で携帯電話21に車外持ち出しの動きが発生していれば、携帯電話21が車外に持ち出されたことを車両1がユーザに警告する。よって、車外に携帯電話21を放置したままの再走行を防止することが可能となる。
【0054】
また、例えばユーザが電子キー2及び携帯電話21の両方を所持している場合は、仮にユーザが携帯電話21を車外に放置したままにしてしまっても、電子キー2で車両1を動かすことが可能であるため、ユーザは携帯電話21の車外放置に暫く気付かない可能性が高い。こうなると、携帯電話21が悪用される可能性も、その分だけ高くなってしまう。しかし、本例は、携帯電話21の車外放置を生じ難くするので、ユーザが電子キー2及び携帯電話21の両方を所持しているときに起こり得る可能性の高い問題を生じ難くすることができる観点からも、非常に効果が高いと言える。
【0055】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)キー機能を有する携帯電話21に加速度センサ32を設け、加速度センサ32で検出した携帯電話21の動きを、加速度情報Sraとしてブルートゥース通信により車両1に送信する。そして、加速度情報Sraから携帯電話21の動きを監視し、イグニッションスイッチ14がオンの状況下で携帯電話21が車外に持ち出されたことを検出すると、その旨を車両1で警告する。よって、イグニッションスイッチ14がオン状況下の車両1からユーザが降車するとき、ユーザが携帯電話21を所持したまま降りる状況が生じ難くなるので、携帯電話21を車外に放置したままの再走行を防止することができる。
【0056】
(2)携帯電話21の車外持ち出し判定を車両1側で実行するので、この判定機能を携帯電話21に設けずに済む。よって、携帯電話21の構成が複雑にならずに済む。
(3)イグニッションスイッチ14がオンの状況下で携帯電話21が車外に持ち出されたとき、その旨が報知機器38によって聴覚的又は視覚的にユーザに通知される。よって、イグニッションスイッチ14がオンの状況下での携帯電話21の車外持ち出しを、ユーザに分かり易く的確に伝えることができる。
【0057】
(4)車両1にキー操作フリーシステム3及び携帯電話キーシステム22の両方が搭載され、これら2システムの一方で照合が成立すれば、キー照合が成立として処理される。よって、電子キー2及び携帯電話21の一方を所持していれば、車両1を操作することが可能となるので、利便性をよいものとすることができる。
【0058】
(5)車両1にキー操作フリーシステム3及び携帯電話キーシステム22の両方を搭載した場合、電子キー2及び携帯電話21の両方を所持していることに気付かず、携帯電話21を衣類のポケット等に入れたまま、電子キー2は車内に置いて、イグニッションスイッチ14のオン中に降車してしまう可能性も否めない。しかし、本例は、携帯電話21の車外持ち出しがユーザに通知されるので、このような状況に対応することができる。
【0059】
(6)携帯電話21にキー機能を持たせたので、今日において一般的に広く普及した携帯電話21を、車両1のキーとして使用することができる。
(7)携帯電話21の車外持ち出しを、ブルートゥース通信によって加速度情報Sraを取得して確認するので、ブルートゥース通信という耐ノイズ性の高い通信によって、携帯電話21の車外持ち出しを確認することができる。
【0060】
(8)イグニッションスイッチ14がオンとなったとき、携帯電話21から車両1への加速度情報Sraの送信が開始される。このため、イグニッションスイッチ14がオンとなった時点から携帯電話21の動きが監視されるので、携帯電話21の動きを長時間に亘り監視することができる。よって、イグニッションスイッチ14がオンの状況下の携帯電話21の車外持ち出し判定を、精度よく行うことができる。
【0061】
(9)近年の携帯電話21では、多くのものにブルートゥース通信機能が標準搭載される傾向にある。よって、携帯電話21の車外持ち出しを判定する際、ブルートゥース通信によって車外持ち出し有無を判定するようにすれば、携帯電話21に元から備え付けてある通信機器によって、車外持ち出し有無を判定することができる。
【0062】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・車外リーダライタ23及び車内リーダライタ24の配置場所は、適宜変更可能である。また、リーダライタは、車外用及び車外用でそれぞれ別々に設けることに限定されず、1つのリーダライタを車内外で共通使用するものでもよい。
【0063】
・携帯電話21の車外持ち出し有無の判定ロジックは、検出パターンDxと基準パターンDkとを比較する形式に限定されない。例えば、加速度のピークが閾値を所定回数上回るか否かを確認するロジックとしてもよい。
【0064】
・携帯電話21の動きの監視は、イグニッションスイッチ14がオンになってからに限定されない。例えば、車両1のドアロックが解錠されたときや、座席に設けた荷重センサでユーザの降車を検出したときを、動き監視の開始点としてもよい。
【0065】
・車両1は、キー操作フリーシステム3及び携帯電話キーシステム22の両方が搭載されることに限定されず、単に携帯電話キーシステム22のみを備えるものでもよい。
・加速度情報Sraの通信に用いる通信網は、ブルートゥース通信に限定されず、他の種類の双方向通信が使用可能である。
【0066】
・加速度情報Sraの通信網は、キー照合と別系統の通信(ブルートゥース通信)に限定されず、ID照合の通信インフラを利用することも可能である。
・通信端末は、携帯電話21に限定されず、例えばIDカードのような他の端末も使用可能である。
【0067】
・報知機器38は、ブザーに限定されず、例えばウィンカーランプ(ハザードランプ)でもよい。
・近距離無線通信は、NFCに限定されず、通信距離が例えば10cm程度の短い双方向通信であればよい。
【0068】
・携帯電話21の車外持ち出し判定に、電子キー2の車内外位置を条件に加えることも可能である。例えば、電子キー2が車内に存在する場合は、イグニッションスイッチ14がオン中に携帯電話21が車外に持ち出されても、警告を実行しないようにしてもよい。
【0069】
・加速度情報Sraは、所定時間間隔で断続的に送信される形式に限定されない。例えば、携帯電話21に加速度が生じたときのみ、加速度情報Sraを携帯電話21から車両1に送信してもよい。
【0070】
・加速度情報Sraは、所定時間分の加速度データが、一括で車両1に送信される形式でもよい。
・携帯電話21の車外持ち出しの警告の解除操作は、例えば携帯電話21のテンキーを所定操作することとしてもよい。
【0071】
・スマート通信及びかざし通信で使用するIDコードは、必ずしも別々のものであることに限定されず、同じものを共通使用してもよい。
・キー操作フリーシステム3や携帯電話キーシステム22で使用する電波の周波数は、適宜変更可能である。
【0072】
・キー操作フリーシステム3は、往路と復路で電波の周波数が異なることに限定されず、同じであってもよい。
・携帯電話21の車外持ち出し判定は、車両1側で行うことに限定されず、携帯電話21側で行い、この判定結果を車両1に通知するものでもよい。
【0073】
・電子キー2を用いたキーシステムは、キー操作フリーシステム3に限定されない。例えば、電子キー2側からの通信をトリガとしてID照合を実行するワイヤレスキーシステムでもよい。
【0074】
・携帯電話21の車外持ち出し警告は、車両1で行うことに限定されない。例えば、イグニッションスイッチ14がオン中に携帯電話21が車外持ち出しされたとき、端末持出通知をブルートゥース通信により車両1から携帯電話21に送信して、その旨を携帯電話21側で実行してもよい。
【0075】
・携帯電話21を車外持ち出ししたときの対応は、報知機器38を用いた通知に限定されない。例えば、車両1がインターネット網を介して携帯電話21にその旨をメールで通知するものでもよい。
【0076】
・スマート照合及びかざし照合のID確認は、ともに照合ECU5が実行してもよい。
・動き検出手段は、加速度センサ32に限定されず、モーションセンサ、振動センサ、圧力センサ等の他のセンサが使用可能である。
【0077】
・動き検出手段は、例えば車載カメラでもよい。この場合は、カメラで撮影した映像を画像処理して、携帯電話21の動きを確認することになる。
【符号の説明】
【0078】
1…車両、2…電子キー、14…イグニッションスイッチ、21…通信端末としての携帯電話、28…通信手段を構成するブルートゥース通信システム、32…動き検出手段としての加速度センサ、34…通信手段を構成する加速度情報送信部、35…通信手段を構成する加速度情報取得部、36…判定手段としての端末持出判定部、37…実行手段及び報知手段としての端末持出警告部、Sra…検出信号として加速度情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー機能を持った通信端末によって近距離無線通信を介したID照合が可能であり、当該ID照合が成立すれば、車両の操作が許可又は実行される電子キーシステムにおいて、
前記通信端末の動きを検出する動き検出手段と、
前記動き検出手段の検出信号を基に前記通信端末の動きを監視し、前記車両のイグニッションスイッチがオンの状況下で、前記通信端末が車外に持ち出されたか否かを判定する判定手段と、
前記イグニッションスイッチがオンの状況下で前記通信端末が車外に持ち出されたとき、その検出に応じた動作を前記車両又は前記通信端末に実行させる実行手段と
を備えたことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項2】
前記動き検出手段で検出した検出信号を、無線により前記通信端末から前記車両に送信する通信手段を備え、
前記判定手段は、前記通信手段を介して前記動き検出手段の検出信号を取得し、前記通信端末の車外持ち出し判定を前記車両側で実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キーシステム。
【請求項3】
前記通信手段は、前記ID照合とは別系統の通信網で通信を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の電子キーシステム。
【請求項4】
前記実行手段は、前記イグニッションスイッチがオンの状況下で前記通信端末が車外に持ち出されたとき、その旨を報知する報知手段である
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キーシステム。
【請求項5】
電子キーによって狭域無線通信を介したID照合が可能であり、当該電子キー及び前記通信端末の少なくとも一方で前記ID照合が成立すれば、前記車両の操作を許可又は実行する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電子キーシステム。
【請求項6】
前記通信端末は携帯電話であり、前記通信手段で使用する通信はブルートゥース通信である
ことを特徴とする請求項2〜5のうちいずれか一項に記載の電子キーシステム。
【請求項7】
前記通信手段は、前記イグニッションスイッチがオンのとき、前記検出信号の送信を実行し、
前記判定手段は、前記通信手段によって前記検出信号を取得している間、当該検出信号を基に前記通信端末の車外への持ち出し有無を判定する
ことを特徴とする請求項2〜6のうちいずれか一項に記載の電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−117291(P2012−117291A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268221(P2010−268221)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】