説明

電子キーシステム

【課題】各送信手段からの問い合わせに対する電子キーの応答の組み合わせにより電子キーの位置を判定する電子キーシステムにおいて、車両の形状に合わせて車室外と車室内とに所望の通信エリアを形成する。
【解決手段】電子キーシステム3は、LF発信機22,23の通信エリアに一部分が交わる重複領域を設け、LF発信機22,23からのリクエスト信号Srqに対する電子キー1の応答組み合わせを確認することにより、電子キー1の位置を判定しながらID照合を行う。電子キーシステム3は、電子キー1が車室外にあるか否かを確認する車室外判定のときにLF発信機22,23が形成する車室外照合通信エリアと、電子キー1が車室内にあるか否かを確認する車室内判定のときにLF発信機22,23が形成する車室内照合通信エリアとを、それぞれ大きさの異なるエリアで形成するエリア形成部21bを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーと車両とが相互通信することにより車両の車載装置の動作を許可する電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの車両には、IDコードを無線により送信可能な電子キーを車両キーとして使用し、この電子キーによって車両と無線によりID照合を実行する電子キーシステムが搭載されている(例えば、特許文献1参照)。この種の電子キーシステムには、車両から送信されたリクエストを電子キーが受信すると、これに応答する形で電子キーがIDコードを車両に自動返信して、ID照合を実行させる。電子キーシステムは、車室外でID照合が成立するとドアロック施解錠が許可され、例えばドアロック施錠時に車室外ドアハンドルが握られるとドアロックが解錠され、ドアロック解錠時に車室外ドアハンドルのロックセンサに触れるとドアロックが施錠される。また、車室内でID照合が実行するとエンジン始動操作が許可される。
【0003】
特許文献1に記載の電子キーシステムでは、車室内用の送信機と車室外用の送信機とを区別して設けず、車室外と車室内とにリクエストを送信する2つの送信機を設けることで、送信機の数量を減らしている。すなわち、車両は、運転席側の車室外と車室内とにリクエストを送信する運転席側送信機と、助手席側の車室外と車室内とにリクエストを送信する助手席側送信機とを備えている。車室内には、両送信機によって重複して通信エリアが形成されている。なお、通信エリアは、送信機から送信されたリクエストに電子キーが応答してIDコードを返信するエリアである。車両は、両送信機が形成する通信エリアにおいて電子キーからIDコードが返信された際に電子キーが車室内にいると判定し、どちらか一方の送信機が形成する通信エリアにおいてのみ電子キーからIDコードが返信された際に電子キーが車室外にあると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−76329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の電子キーシステムでは、運転席側送信機によって運転席側の車室外に所望の車室外照合通信エリアを形成しなければならないとともに、車室内全域のみを含む車室内照合通信エリアを形成しなければならない。また、助手席側送信機においても同様である。このため、車両の形状によっては、運転席側送信機によって車室外と車室内との両方を含む通信エリアの形成が難しいことが考えられる。そこで、車室外と車室内との両方にリクエストを送信する送信機を備えた電子キーシステムにおいて、車両の形状に合わせて車室外と車室内とに所望の通信エリアを形成することが求められていた。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各送信手段からの問い合わせに対する電子キーの応答の組み合わせにより電子キーの位置を判定する電子キーシステムにおいて、車両の形状に合わせて車室外と車室内とに所望の通信エリアを形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、電子キーに対してID照合の開始の問い合わせを送信する送信手段を車両に複数設け、これら前記送信手段の通信エリアに一部分が交わる重複領域を設け、前記送信手段からの前記問い合わせに対する前記電子キーの応答組み合わせを確認することにより、前記電子キーの位置を判定しながら前記ID照合を行う電子キーシステムにおいて、前記電子キーが車室外にあるか否かを確認する車室外判定のときに前記送信手段が形成する車室外照合通信エリアと、前記電子キーが車室内にあるか否かを確認する車室内判定のときに前記送信手段が形成する車室内照合通信エリアとを、それぞれ大きさの異なるエリアで形成するエリア形成手段を備えたことをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、例えば車室外照合通信エリアで車両が電子キーとID照合成立したときには、電子キーが車室外にあると判定し、車室外照合通信エリア及び車室内照合通信エリアの両方で車両が電子キーとID照合成立したときは、電子キーが車室内にあると判定する。よって、この場合は、電子キーの位置を少ない送信手段で判定することが可能となる。また、本構成の場合は、車室外照合通信エリアと車室内照合通信エリアとがそれぞれ異なる大きさで形成されるので、車両の形状に合わせて車室外と車室内とに所望の通信エリアを形成することが可能である。よって、少ない送信手段にて電子キーの位置を精度よく判定することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記電子キーが車室内に存在すること、又は車室外に存在することを判定する際、車室内と前記車両の右側の車室外とを含む範囲に形成される右側の通信エリアと、車室内と前記車両の左側の車室外とを含む範囲に形成される左側の通信エリアとの両通信エリアにおける前記ID照合の成立可否に基づいて判定する判定手段を備えたことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、車両の右側の通信エリアと車両の左側の通信エリアとの両通信エリアにおけるID照合の成立可否に基づいて電子キーが車室内に存在するか車室外に存在するかを判定する。このため、各通信エリアのみでID照合を行って電子キーの位置判定を試みた際と比較して、電子キーの位置判定の精度を向上させることが可能である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、車載装置を動作させる際に操作され、操作時において前記送信手段から前記問い合わせを行わせる操作手段と、前記操作手段が操作されたとき、前記操作手段が操作された側に車室外照合通信エリアを形成して車室外判定を行い、続いて前記操作手段が操作された側と反対側に車室内照合通信エリアを形成して車室内判定を行い、当該車室内判定において前記電子キーの存在を認識しなければ、その時点で判定を終了する判定手段とを前記車両に備えたことをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、車室外照合後の車室内照合は、操作手段が操作された側と反対側で車室内判定を実行し、このときの判定で電子キーの存在を確認できなければ、電子キーが車室内に存在しないとして、判定をその時点で終了する。よって、車室外判定の際、操作手段が操作された側と反対側のみで判定を行うだけで済むので、車室外判定における通信エリアの形成回数を少なく抑えることが可能となる。従って、電子キーの位置判定、つまりID照合に要する時間を少なく抑えることが可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電子キーシステムにおいて、前記判定手段は、前記車室内判定において前記電子キーの存在を確認したとき、前記操作手段が操作された側に車室内照合通信エリアを再度形成して、前記電子キーの位置を判定することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、操作手段が操作された側と反対側に電子キーが存在する場合であっても、その電子キーが車室内外のどちらに位置しているのかを判定することが可能となる。よって、電子キーの位置判定の精度を確保することが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記送信手段は、前記車室外照合通信エリアと、前記車室内照合通信エリアとを形成する際に、どちらのエリアを形成したかを示す車室外情報又は車室内情報を含んで問い合わせを送信し、前記電子キーは、前記車室外情報を含む問い合わせを受信した際には第1の受信信号強度閾値で前記送信手段からの問い合わせの有無を判定し、前記車室内情報を含む問い合わせを受信した際には前記第1の受信信号強度閾値よりも高い第2の受信信号強度閾値で前記送信手段からの問い合わせの有無を判定し、前記送信手段からの問い合わせがあると判定した場合には前記問い合わせに応答することをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、送信手段によって車室外照合通信エリアと車室内照合通信エリアとがそれぞれ異なる大きさで形成されるのに加えて、電子キー側においても問い合わせを受信したか否かを異なる大きさの受信信号強度で判定する。このため、少ない送信手段にて電子キーの位置を更に精度良く判定することが可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記送信手段は、複数の電子キーが前記車両に登録された際には、予め決められた順番で各電子キーとID照合を試みるとともに、前記ID照合が前回成立した電子キーから順に前記ID照合を試みることをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、ID照合が前回成立した電子キーから予め決められた順でID照合を試みるので、ID照合成立の可能性が高い電子キーの存在を早期に確認でき、電子キーの存在判定に掛かる時間を低減することが可能となる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項3又は4に記載の電子キーシステムにおいて、前記操作手段は、運転席ドアと助手席ドアとのそれぞれ近傍に搭載されることをその要旨としている。
【0020】
同構成によれば、操作手段が運転席ドアと助手席ドアとのそれぞれ近傍に搭載されるので、車両の側面の前後方向におけるほぼ中央付近となり、電子キーを携帯したユーザが操作手段を操作した際に、車室外照合通信エリア内に確実に位置させることが可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、各送信手段からの問い合わせに対する電子キーの応答の組み合わせにより電子キーの位置を判定する電子キーシステムにおいて、車両の形状に合わせて車室外と車室内とに所望の通信エリアを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】(a)運転席側車室外照合通信エリアを示す車両の上面図、(b)運転席側車室内照合通信エリアを示す車両の上面図。
【図3】(a)助手席側車室外照合通信エリアを示す車両の上面図、(b)助手席側車室内照合通信エリアを示す車両の上面図。
【図4】通信エリアと受信信号強度との関係を模式的に示す車両の上面図。
【図5】電子キーシステムの通信動作を示すタイムチャート。
【図6】電子キーシステムの通信動作を示すタイムチャート。
【図7】電子キーシステムの通信動作を示すタイムチャート。
【図8】電子キーシステムの通信動作を示すタイムチャート。
【図9】電子キーシステムの通信動作を示すタイムチャート。
【図10】電子キーの動作を示すフローチャート。
【図11】乗車時に運転席側リクエストスイッチが操作された際における電子キーシステムの位置判定処理及び動作を示すフローチャート。
【図12】乗車中にエンジンスイッチが操作された際における電子キーシステムの位置判定処理及び動作を示すフローチャート。
【図13】降車時に運転席側リクエストスイッチが操作された際における電子キーシステムの位置判定処理及び動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を車両に具体化した電子キーシステムの一実施形態について図1〜図13を参照して説明する。
図1に示されるように、車両2には、例えば運転者が実際に車両キーを操作しなくても機器としてのドアロックの施解錠やエンジンの始動及び停止等の車両動作を行うことが可能な電子キーシステム3が搭載されている。電子キーシステム3は、キー固有のIDコードを無線通信で発信可能な電子キー1が車両キーとして使用され、車両2と狭域無線通信(通信範囲:数m)によりID照合を実行する。
【0024】
電子キーシステム3には、車両2のドアを操作した際に自動でID照合が行われてドアロックの施解錠が許可されるキー操作フリーシステムがある。これを以下に説明すると、車両2には、電子キー1との間で狭域無線通信(以降、スマート通信という)を行う際にID照合を行う照合ECU(Electronic Control Unit)21と、ドアロックの施解錠等を管理するメインボディECU31とが設けられている。照合ECU21には、車両2の運転席ドア(右側ドア)25に埋設されてLF(Low Frequency)帯の信号を発信可能な運転席側LF発信機22と、車両2の助手席ドア(左側ドア)27に埋設されてLF帯の信号を発信可能な助手席側LF発信機23と、車室内前方の車体等に埋設されてUHF(Ultra High Frequency)帯の無線信号を受信可能なUHF受信機24とが接続されている。照合ECU21には、例えばメインボディECU31やエンジンECU32が車内LAN(Local Area Network)30を介して接続されている。照合ECU21は、LF発信機22,23から送信したリクエスト信号Srqに対する電子キー1の応答の組み合わせ(ID照合成立)を基に、電子キー1の車室内外判定を実行する。なお、運転席側LF発信機22と助手席側LF発信機23とが送信手段として機能する。
【0025】
一方、電子キー1には、車両2との間で電子キーシステムに準じた無線通信を行う際のコントロールユニットとして通信制御部11が設けられている。通信制御部11は、固有のキーコードとしてIDコードが記憶されたメモリ11aを備えている。通信制御部11には、外部で発信されたLF帯の信号を受信可能なLF受信部12と、通信制御部11の指令に従いUHF帯の信号を発信可能なUHF発信部13とが接続されている。
【0026】
運転席ドア25には、ユーザが運転席側の車室外から車両ドアロックを施解錠するときに操作する運転席側リクエストスイッチ26が設けられている。また、助手席ドア27には、ユーザが助手席側の車室外から車両ドアロックを施解錠するときに操作する助手席側リクエストスイッチ28が設けられている。これらリクエストスイッチ26,28は、モーメンタリ式のプッシュスイッチとなっている。なお、運転席側リクエストスイッチ26と助手席側リクエストスイッチ28とが操作手段に相当する。
【0027】
ユーザが車室外に位置するとき、照合ECU21は、運転席側リクエストスイッチ26又は助手席側リクエストスイッチ28が操作されたことをトリガとして運転席側LF発信機22及び助手席側LF発信機23からリクエスト信号Srqを間欠的に発信させ、スマート通信の成立を試みる。電子キー1は、リクエスト信号SrqをLF受信部12で受信してスマート通信が確立すると、リクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ11aに登録されたIDコードを含ませたIDコード信号SidをUHF発信部13から返信する。照合ECU21は、電子キー1が返信するIDコード信号SidのIDコードと自身のメモリ21aに登録されたIDコードとを照らし合わせてID照合を行い、このID照合が成立することを確認すると、電子キー1が車室外に位置するとして、車室外照合成立として処理する。よって、照合ECU21は、メインボディECU31にドアロックの解錠動作を実行させる。つまり、電子キー1を所持して車両2に近づいて運転席側リクエストスイッチ26又は助手席側リクエストスイッチ28をプッシュ操作するだけで、ドアロックが解錠される。
【0028】
また、電子キーシステム3には、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン始動停止操作を行うことが可能な機能としてスマートスタートシステムがある。このスマートスタートシステムを以下に説明すると、車両2には、照合ECU21のID照合成立結果を基に、エンジンの点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU32が設けられている。エンジンECU32は、車内LAN30を通じて照合ECU21等の各種ECUに接続されている。車両2の運転席には、車両2の電源状態(電源ポジション)を切り換える際に操作されるエンジンスイッチ33が設けられている。エンジンスイッチ33は、照合ECU21に接続されている。
【0029】
照合ECU21は、エンジンスイッチ33が押し操作されると、LF発信機22,23からリクエスト信号Srqを順に発信させて、車室内におけるID照合を実行する。照合ECU21は、運転席側LF発信機22及び助手席側LF発信機23の両方でID照合が成立することを確認すると、電子キー1が車室内に位置するとして、車室内照合を成立として処理する。
【0030】
照合ECU21は、車室内照合が成立することを確認すると、エンジンスイッチ33の操作を許可する。照合ECU21は、電子キー1が車室内に存在する場合に、エンジンスイッチ33が押し操作される度に電源状態をACCオン→IGオン→電源オフの順に繰り返し遷移させる。また、照合ECU21は、電子キー1が車室内に存在する場合に、エンジン停止時にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ33が操作されると、エンジンECU32にエンジンを始動させる。
【0031】
照合ECU21は、これらリクエストスイッチ26,28が操作されたことを検出すると、まず車室外照合を実行し、電子キー1が車室外に存在するか否かを確認する。照合ECU21は、車室外照合が成立することを確認すると、電子キー1の車室内置き忘れ検知として車室内照合を実行する。照合ECU21は、車室内照合が成立しないことを確認すると、電子キー1が車室内に置き忘れられていないとして、メインボディECU31にドアロック施錠を実行させる。
【0032】
また、ID照合は、チャレンジレスポンス認証により暗号化された暗号通信となっている。チャレンジレスポンス認証とは、ID照合時に車両2が電子キー1にチャレンジ信号Sccを投げかけて、電子キー1にチャレンジ信号Sccのレスポンスを演算させ、このレスポンス信号Sreが正しい演算結果をとるかどうかを車両2が確認する認証の一種である。照合ECU21は、電子キー1からチャレンジ信号Sccに対する演算結果としてレスポンス信号Sreを受信すると、電子キー1のレスポンスと、自ら演算したレスポンスとを照らし合わせてレスポンス照合を行い、同レスポンス照合の成立をID照合成立の一条件とする。
【0033】
照合ECU21には、LF発信機22,23が形成する通信エリアを、車室外照合及び車室内照合の各状況でそれぞれ異なる大きさに形成するエリア形成部21bが設けられている。本例のエリア形成部21bは、車室外照合のときLF発信機22,23が形成する通信エリアを大きめに形成し、車室内照合のときにLF発信機22,23が形成する通信エリアを小さめに形成する。なお、エリア形成部21bがエリア形成手段として機能する。
【0034】
すなわち、運転席側LF発信機22は、車室外照合のとき、強めの出力でリクエスト信号Srqを発信することによって運転席側車室外照合通信エリアAdo(図2(a)参照)を形成する。運転席側車室外照合通信エリアAdoは、運転席ドア25を中心とした車両2の運転席側の前後方向を十分に含むエリアとなっている。また、運転席側LF発信機22は、車室内照合のとき、弱めの出力でリクエスト信号Srqを発信することによって運転席側車室内照合通信エリアAdi(図2(b)参照)を形成する。運転席側車室内照合通信エリアAdiは、運転席ドア25を中心としてその右側通信エリアが運転席側車室外照合通信エリアAdo内であって、その左側通信エリアが車両2の車室内の大きさに対応したエリアとなっている。
【0035】
一方、助手席側LF発信機23は、車室外照合のとき、強めの出力でリクエスト信号Srqを発信することによって助手席側車室外照合通信エリアApo(図3(a)参照)を形成する。助手席側車室外照合通信エリアApoは、助手席ドア27を中心とした車両2の助手席側の前後方向を十分に含むエリアとなっている。また、助手席側LF発信機23は、車室内照合のとき、弱めの出力でリクエスト信号Srqを発信することによって助手席側車室内照合通信エリアApi(図3(b)参照)を形成する。助手席側車室内照合通信エリアApiは、助手席ドア27を中心としてその左側通信エリアが助手席側車室外照合通信エリアApo内であって、その右側通信エリアが車両2の車室内の大きさに対応したエリアとなっている。なお、運転席側車室内照合通信エリアAdiと助手席側車室内照合通信エリアApiとはその一部分が交わる重複領域が車室内を含むように形成される。この重複領域を車室内通信エリアAiとする。
【0036】
また、エリア形成部21bは、車室外照合通信エリアAdo,Apoと車室内照合通信エリアAdi,Apiとのいずれの通信エリアを形成したかを示す車室外情報としての第1コードCa又は車室内情報としての第2コードCbを含むリクエスト信号Srqを送信することによって通信エリアを形成する。
【0037】
電子キー1は、第1コードCaを含むリクエスト信号Srqを受信すると、第1の受信信号強度閾値B1によって受信の有無を判定し、受信したと判定した際にIDコード信号Sidを返信する。電子キー1は、第2コードCbを含むリクエスト信号Srqを受信すると、第1の受信信号強度閾値B1よりも高い第2の受信信号強度閾値B2によって受信の有無を判定し、受信したと判定した際にIDコード信号Sidを返信する。
【0038】
すなわち、図4に示されるように、LF発信機22,23から発信された無線信号は、LF発信機22,23から遠ざかるほど電子キー1が受信した際の受信信号強度が低下する。そこで、電子キー1が無線信号を受信したか否かを判定する受信信号強度閾値を変更することによって、電子キー1と車両2とが通信可能な通信エリアを制御することができる。詳しくは、電子キー1は、車室外照合通信エリアAdo,Apoのときには第1コードCaを受信することで第1の受信信号強度閾値B1によって受信の有無を判定する。また、電子キー1は、車室内照合通信エリアAdi,Apiのときには第2コードCbを受信することで第2の受信信号強度閾値B2によって受信の有無を判定する。
【0039】
照合ECU21には、ドアロック操作時において電子キー1が車室外か車室内のいずれに存在するかを判定するキー位置判定部21cが設けられている。本例のキー位置判定部21cは、ドアロック操作時において車室外照合が成立する際、一対のLF発信機22,23のうち、ドアロック操作が行われた側と反対側の発信機によって通信エリアを形成して、車室内照合を実行し、この車室内照合が成立しなければ、電子キー1が車室内に置き忘れていないとして処理する。一方、キー位置判定部21cは、ドアロック操作が行われた側と反対側の発信機によって通信エリアを形成したとき、車室内照合が成立すれば、ドアロック操作が行われた側の発信機で通信エリアを再度形成して、車室内照合を実行し、電子キー1の車室内置き忘れを確認する。キー位置判定部21cは、異なる大きさに形成される通信エリアAdo,Adi,Apo,Apiの組み合わせによって電子キー1の位置を判定する。なお、キー位置判定部21cが位置判定手段として機能する。
【0040】
また、照合ECU21には、キー位置判定部21cの判定による電子キー1の位置に基づいてドアロックやエンジン等の動作を許可する動作許可部21dが設けられている。動作許可部21dは、電子キー1が車室外にあり車室内には存在しないとキー位置判定部21cが判定したとき、ドアロック施錠を許可する。ドアロック操作時、車室内に電子キー1が置き忘れられている場合、照合ECU21は電子キー1が車室内にあることを報知する。照合ECU21は、例えば「電子キーが車室内にあります」とスピーカ35から音声を出力させる。なお、動作許可部21dが許可手段として機能し、ドアロックやエンジン等が車載装置に相当する。
【0041】
次に、本例の電子キーシステム3による基本的な通信動作について図5を参照して説明する。ここでは、運転席側LF発信機22について説明し、助手席側LF発信機23については、運転席側と助手席側とを入れ替えれば同様であるので説明を割愛する。
【0042】
図5に示されるように、照合ECU21は、電子キー1とスマート通信を実行する際、まず停止状態(スリープ状態)になっている電子キー1を起動させるべく、ウェイク信号Swkを運転席側LF発信機22から発信させる。ウェイク信号Swkは、運転席側LF発信機22から一定間隔をおいて繰り返し発信され、車室外及び車室内における電子キー1の有無が監視される。なお、このウェイク信号Swkに第1コードCa又は第2コードCbが含まれる。
【0043】
電子キー1が運転席側LF発信機22のウェイク信号Swkの通信エリアAdo(Adi)に存在すると、LF受信部12がウェイク照合を実行する。LF受信部12は、ウェイク照合の成立を確認すると、通信制御部11をそれまでのスリープ状態(待機状態)から起動状態に切り換える。そして、通信制御部11は、自身が起動状態に切り換わると、アック信号SacをUHF発信部13から発信する。
【0044】
車両2は、ウェイク信号Swkを発信した後の所定時間内にアック信号Sacを受信すると、電子キー1が通信エリアAdo(Adi)に存在すると認識し、チャレンジ信号Sccを運転席側LF発信機22から発信する。このチャレンジ信号Sccには、車両2を識別するための車両固有のIDとしてビークルIDと、発信の度に毎回値が変わるチャレンジコードと、電子キー1のキー番号とが含まれている。なお、キー番号は、何番目のキーであるのかを通知するものである。
【0045】
電子キー1は、チャレンジ信号Sccを受信すると、ビークルIDをメモリ11aに登録されたビークルIDと照らし合わせるビークルID照合を行い、照合が一致すると、キー番号の正否を見る番号照合を実行し、自身がこのときの通信相手であるか否かを判断する。なお、この番号照合は、通信相手の電子キー1についてキー種を判定する照合である。そして、通信制御部11は、番号照合が成立すると、チャレンジコードを自身の暗号鍵によって演算することにより、レスポンスコードを生成する。通信制御部11は、レスポンスコードの生成が終了すると、自身のメモリ11aに登録されたIDコードと、このレスポンスコードとを含むレスポンス信号SreをUHF発信部13から発信させる。なお、レスポンス信号Sre内におけるIDコードとレスポンスコードとの並び順は、適宜変更可能である。
【0046】
照合ECU21は、チャレンジ信号Sccを発信する際、自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを演算するとともに、自らもレスポンスコードを生成する。そして、照合ECU21は、電子キー1からレスポンス信号SreをUHF受信機24で受信すると、電子キー1のレスポンスコードと、自身が演算したレスポンスコードとを照らし合わせて、レスポンス照合を実行する。照合ECU21は、このレスポンス照合が成立することを確認すると、レスポンス信号Sreに含まれるIDコードをメモリ11aに登録されたIDコードと照らし合わせるID照合を行う。
【0047】
また、電子キーシステム3に複数の電子キー1(1a,1b,…)が登録されて、1番目の電子キー1aではなく、2番目の電子キー1bが通信エリアAdo(Adi)に存在する場合には、照合ECU21は以下のように動作する。なお、照合ECU21は、予め決められた順番で登録された電子キー1の存在を確認する。また、照合ECU21は、前回ID照合が成立した電子キー1を優先して、成立した電子キー1から存在を確認する。
【0048】
図6に示されるように、照合ECU21は、1番目の電子キー1aに相当するキー番号1を含むチャレンジ信号Sccを運転席側LF発信機22から発信させる。そして、照合ECU21は、所定時間内にレスポンス信号SreをLF受信部12で受信しない場合には、続いて2番目の電子キー1bに相当するキー番号2を含むチャレンジ信号Sccを運転席側LF発信機22から発信させる。2番目の電子キー1bは、自身に対応するチャレンジ信号SccをLF受信部12で受信すると、自身のIDコードを含んだレスポンス信号SreをUHF発信部13から発信する。そして、照合ECU21は、上記と同様に、ID照合を行う。
【0049】
ここで、電子キー1の動作について図10を参照して説明する。
図10に示されるように、電子キー1は、まずウェイク信号Swkを受信したか否かを判定する(ステップS1)。電子キー1は、ウェイク信号Swkを受信しない場合(ステップS2:NO)には、処理を終了する。一方、電子キー1は、ウェイク信号Swkを受信する場合(ステップS2:YES)には、ウェイク信号Swkに第1コードCaが含まれているか否かを判定する(ステップS2)。電子キー1は、ウェイク信号Swkに第1コードCaが含まれている場合(ステップS2:YES)には、無線信号の受信有無判定の閾値として第1の受信信号強度閾値B1を設定し(ステップS3)、ステップS4に移行する。
【0050】
一方、電子キー1は、ウェイク信号Swkに第1コードCaが含まれていない場合(ステップS2:NO)には、ステップS7に移行する。電子キー1は、ウェイク信号Swkに第2コードCbが含まれているか否かを判定する(ステップS7)。電子キー1は、無線信号の受信有無判定の閾値として第2の受信信号強度閾値B2を設定し(ステップS8)、ステップS4に移行する。
【0051】
続いて、電子キー1は、アック信号Sacを送信(ステップS4)、チャレンジ信号Sccを受信したか否かを判定する(ステップS5)。電子キー1は、チャレンジ信号Sccを受信しない場合(ステップS3:NO)には、処理を終了する。
【0052】
一方、電子キー1は、チャレンジ信号Sccを受信した場合(ステップS5:YES)、レスポンス信号Sreを送信する(ステップS6)。このとき、電子キー1は、第1の受信信号強度閾値B1に設定されている場合には、発信信号強度を高めに設定する。また、電子キー1は、第2の受信信号強度閾値B2に設定されている場合には、第1の受信信号強度閾値B1に設定されている場合よりも発信信号強度を低めに設定する。
【0053】
続いて、電子キーシステム3の通信動作による電子キー1の位置判定及び車載装置の動作許可について図1〜図13を参照して説明する。ここでは、運転席側リクエストスイッチ26が操作された際について説明し、助手席側リクエストスイッチ28が操作された際については、運転席側と助手席側とを入れ替えれば同様であるので説明を割愛する。
【0054】
まず、ユーザが車両2に乗車する際の電子キーシステム3の動作について説明する。
図11に示されるように、駐車状態(エンジン停止、ドアロック施錠)の車両2に乗車する際には、ユーザが車両2の運転席側に近づき、電子キー1が図2(a)の位置Xに位置した状態で、ユーザが運転席側リクエストスイッチ26を操作する。操作された運転席側リクエストスイッチ26は、操作信号を照合ECU21に出力する。図5に示されるように、照合ECU21は、操作信号が入力されると、車室外照合を実行すべく、強めの出力でリクエスト信号Srq(ウェイク信号Swk)を運転席側LF発信機22から発信させることで、運転席側車室外照合通信エリアAdoを形成させる(ステップS11)。電子キー1は、運転席側車室外照合通信エリアAdo内に位置するので、LF受信部12で受信したウェイク信号Swkに応答してアック信号SacをUHF発信部13から発信する。照合ECU21は、アック信号Sacに応答してチャレンジ信号Sccを運転席側LF発信機22から発信させる。電子キー1は、チャレンジ信号Sccに応答してIDコード信号Sid(レスポンス信号Sre)をUHF発信部13から発信する。
【0055】
図11に示されるように、照合ECU21は、受信したレスポンス信号Sreに含まれるIDコードによってID照合を行う(ステップS12)。照合ECU21は、ID照合(車室外照合)が成立する(ステップS12:YES)と、電子キー1が車室外に存在すると判定する(ステップS13)。すなわち、ドアロックが施錠状態であって、車室内には電子キー1が存在しないことが前提であるので、照合ECU21は、運転席側車室外照合通信エリアAdoに電子キー1が存在することをもって、電子キー1が車室外に存在すると判定する。そして、照合ECU21は、メインボディECU31を介してドアロック装置34によってドアロックを解錠動作させる(ステップS14)。すなわち、メインボディECU31は、ドアロック装置34によるドアロックの解錠動作を許可する。なお、運転席側車室外照合通信エリアAdoにおいて、照合ECU21は、ID照合が成立しない場合(ステップS12:NO)には、処理を終了する。すなわち、照合ECU21は、ドアロック装置34の動作を許可しない。
【0056】
また、電子キー1が図3(a)の位置Yに位置した状態で、ユーザが助手席側リクエストスイッチ28を操作した場合には、照合ECU21は、強めの出力でリクエスト信号Srq(ウェイク信号Swk)を助手席側LF発信機23から発信させることで、助手席側車室外照合通信エリアApoを形成させて、上記と同様に、電子キー1の位置判定とドアロック装置34の動作許可を行う。
【0057】
次に、ユーザが車両2に乗車中の電子キーシステム3の動作について説明する。
図12に示されるように、ユーザが車室内に乗り込んでいて、電子キー1が図2(b)の位置Zに位置した状態で、ユーザがエンジンスイッチ33を操作したとする。操作されたエンジンスイッチ33は、操作信号を照合ECU21に出力する。図7に示されるように、照合ECU21は、操作信号が入力されると、車室内照合を実行すべく、弱めの出力でリクエスト信号Srq(ウェイク信号Swk)を運転席側LF発信機22から発信させることで、運転席側車室内照合通信エリアAdiを形成させる(ステップS21)。電子キー1は、運転席側車室内照合通信エリアAdi内に位置するので、LF受信部12で受信したウェイク信号Swkに応答してアック信号SacをUHF発信部13から発信する。照合ECU21は、アック信号Sacに応答してチャレンジ信号Sccを運転席側LF発信機22から発信させる。電子キー1は、チャレンジ信号Sccに応答してIDコード信号Sid(レスポンス信号Sre)をUHF発信部13から発信する。
【0058】
図12に示されるように、照合ECU21は、受信したレスポンス信号Sreに含まれるIDコードによってID照合を行う(ステップS22)。照合ECU21は、ID照合(車室内照合)が成立する(ステップS22:YES)と、図7に示されるように、弱めの出力でリクエスト信号Srq(ウェイク信号Swk)を助手席側LF発信機23から発信させることで、助手席側車室内照合通信エリアApiを形成させる(ステップS23)。電子キー1は、助手席側車室内照合通信エリアApi内に位置するので、LF受信部12で受信したウェイク信号Swkに応答してアック信号SacをUHF発信部13から発信する。照合ECU21は、アック信号Sacに応答してチャレンジ信号Sccを助手席側LF発信機23から発信させる。電子キー1は、チャレンジ信号Sccに応答してIDコード信号Sid(レスポンス信号Sre)をUHF発信部13から発信する。なお、助手席側車室内照合通信エリアApiにおいて、ID照合(車室内照合)が成立しない場合(ステップS22:NO)には、照合ECU21は処理を終了する。すなわち、キー位置判定部21cは、電子キー1が車室内に存在しないと判定する。
【0059】
図12に示されるように、照合ECU21は、受信したレスポンス信号Sreに含まれるIDコードによってID照合を行う(ステップS24)。照合ECU21は、ID照合(車室内照合)が成立する(ステップS24:YES)と、電子キー1が車室内に存在すると判定する(ステップS25)。すなわち、照合ECU21は、運転席側車室内照合通信エリアAdiと助手席側車室内照合通信エリアApiとの重複する車室内照合通信エリアAiに電子キー1が存在することをもって、電子キー1が車室内に存在する(車室内照合が成立する)と判定する。そして、照合ECU21は、エンジンECU32によってエンジンを始動させる(ステップS26)。すなわち、エンジンECU32は、エンジンの始動を実行する。なお、助手席側車室内照合通信エリアApiにおいて、照合ECU21は、ID照合(車室内照合)が成立しない場合(ステップS24:NO)には、処理を終了する。すなわち、照合ECU21は、エンジンECU32の動作を許可しない。
【0060】
次に、ユーザが車両2から降車した際の電子キーシステム3の動作について説明する。
図13に示されるように、ユーザが車両2から降車した際に、電子キー1が図2(a)の「X」位置に位置した状態で、ユーザが運転席側リクエストスイッチ26を操作したとする。操作された運転席側リクエストスイッチ26は、操作信号を照合ECU21に出力する。図8に示されるように、照合ECU21は、操作信号が入力されると、車室外照合を実行すべく、強めの出力でリクエスト信号Srq(ウェイク信号Swk)を運転席側LF発信機22から発信させることで、運転席側車室外照合通信エリアAdoを形成させる(ステップS31)。電子キー1は、運転席側車室外照合通信エリアAdo内に位置するので、LF受信部12で受信したウェイク信号Swkに応答してアック信号SacをUHF発信部13から発信する。照合ECU21は、アック信号Sacに応答してチャレンジ信号Sccを運転席側LF発信機22から発信させる。電子キー1は、チャレンジ信号Sccに応答してIDコード信号Sid(レスポンス信号Sre)をUHF発信部13から発信する。
【0061】
図13に示されるように、照合ECU21は、受信したレスポンス信号Sreに含まれるIDコードによってID照合を行う(ステップS32)。照合ECU21は、ID照合(車室外照合)が成立する(ステップS32:YES)と、図8に示されるように、電子キー1の車室内置き忘れを確認すべく、車室内照合を実行する。このときの車室内照合は、車体左右両側ドアのうち、施錠操作が行われた側と反対側の助手席側から通信が実行される。よって、本例の照合ECU21は、弱めの出力でリクエスト信号Srq(ウェイク信号Swk)を助手席側LF発信機23から発信させることで、助手席側車室内照合通信エリアApiを形成させる(ステップS33)。電子キー1は、助手席側車室内照合通信エリアApi内に位置しないので、LF受信部12でウェイク信号Swkを受信せず、アック信号Sacを発信しない。そして、照合ECU21は、電子キー1からアック信号Sacを受信しないので、ID照合(車室内照合)は成立せず(ステップS34:NO)、電子キー1が車室内になく、車室外にあると判定する(ステップS35)。すなわち、キー位置判定部21cは、運転席側車室外照合通信エリアAdoに電子キー1が存在して、助手席側車室内照合通信エリアApiに電子キー1が存在しないことをもって、電子キー1が車室内になく車室外に存在すると判定する。そして、照合ECU21は、メインボディECU31を介してドアロック装置34によってドアロックを施錠動作させる(ステップS36)。すなわち、動作許可部21dは、ドアロック装置34によるドアロックの施錠動作を許可する。
【0062】
一方、ユーザが車両2から降車した際に、電子キー1を車室内に置き忘れて図2(b)の位置Z等に位置した状態で、ユーザが運転席側リクエストスイッチ26を操作したとする。図9に示されるように、運転席側車室外照合通信エリアAdoにおいて、ID照合(車室外照合)が成立する(ステップS32:YES)とともに、助手席側車室内照合通信エリアApiにおいても、ID照合(車室内照合)が成立する(ステップS34:YES)。そして、照合ECU21は、弱めの出力でリクエスト信号Srq(ウェイク信号Swk)を運転席側LF発信機22から発信させることで、運転席側車室内照合通信エリアAdiを形成させる(ステップS37)。電子キー1は車室内に位置するので、ウェイク信号Swkを受信してアック信号Sacを発信する。照合ECU21は、電子キー1からアック信号Sacを受信するので、ID照合(車室内照合)が成立する(ステップS38)。よって、キー位置判定部21cは、車室外照合と車室内照合の両方とが成立することを確認するので、電子キー1が車室内に置き忘れられていると判定する(ステップS39)。
【0063】
そして、照合ECU21は、スピーカ35によって「車室内にキーがあります」と報知させる(ステップS40)。すなわち、動作許可部21dは、スピーカ35による報知を許可する。
【0064】
なお、ユーザが車両2から降車した際に、サブキー(電子キー1)を所持する同乗者も同時に降車して、図2(b)の位置Y等に位置した状態で、ユーザが運転席側リクエストスイッチ26を操作したとする。このとき、運転席側車室外照合通信エリアAdoにおいてID照合(車室外照合)が成立し(ステップS32:YES)、先程と同様の処理が実行される。
【0065】
このとき、キー位置判定部21cは、助手席側LF発信機23での照合動作の後、運転席側LF発信機22から、弱めの出力でリクエスト信号Srq(ウェイク信号Swk)を送信して、ID照合を実行する。この場合、助手席側車室外にはサブキーが存在するので、サブキーのキー番号でID照合は成立するものの、マスターキーのキー番号ではID照合が成立しない。よって、キー位置判定部21cは、電子キー1のID照合が成立しないことをもって、電子キー1が車室内に存在しないことを認識する。
【0066】
そして、キー位置判定部21cは、続いてサブキーが車室内に置き忘れていないか否かを確認するために、弱めの出力でリクエスト信号Srq(ウェイク信号Swk)を運転席側LF発信機22から発信させることで、運転席側車室内照合通信エリアAdiを形成させる(ステップS37)。このとき、サブキーは車室内に存在しないので、車室内照合は成立しない。よって、キー位置判定部21cは、サブキーが車室内に存在しないと認識する。よって、照合ECU21は、車室外照合が成立しつつ車室内照合は成立しないことを確認するので、ドアロック施錠を許可する。
【0067】
なお、ユーザが車両2から降車した際に、電子キー1が同乗者に持ち出されて図2(b)の位置W等に位置した状態で、ユーザが運転席側リクエストスイッチ26を操作したとする。運転席側車室内照合通信エリアAdiにおいて、照合ECU21は、ID照合(車室内照合)が成立しない場合(ステップS38:NO)には、ステップS35に移行する。
【0068】
さて、本例の電子キーシステム3では、運転席側LF発信機22から異なる大きさの運転席側車室外照合通信エリアAdoと運転席側車室内照合通信エリアAdiとを形成するとともに、助手席側LF発信機23から異なる大きさの助手席側車室外照合通信エリアApoと助手席側車室内照合通信エリアApiとを形成する。このため、電子キー1が車室外に存在するか否かを判定するために必要な通信エリアを形成しながら、電子キー1が車室内に存在するか否かを判定するために必要な通信エリアを形成することができる。よって、電子キー1が車室外と車室内とのいずれに位置するかを正確に判定することができる。
【0069】
また、例えば運転席側リクエストスイッチ26が操作された際、まずはロック操作された側の運転席側LF発信機22で車室外照合を行い、次に行う車室内照合はロック操作された側と反対側の助手席側LF発信機23で車室内照合を行う。そして、車室内照合が成立せず電子キー1が車室内に置き忘れられていないことを確認すると、ドアロック施錠を許可する。よって、通信回数を減らすことが可能となるので、ID照合に要する通信時間を短く抑えることが可能となる。
【0070】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)車室外照合通信エリアAdo(Apo)で車両2が電子キー1とID照合成立したときには、電子キー1が車室外にあると判定し、運転席側車室内照合通信エリアAdi及び助手席側車室内照合通信エリアApiの両方で車両2が電子キー1とID照合成立したときは、電子キー1が車室内にあると判定する。よって、電子キー1の位置を2つのLF発信機22,23で判定することができる。また、車室外照合通信エリアAdo(Apo)と車室内照合通信エリアAdi(Api)とがそれぞれ異なる大きさで形成されるので、車両2の形状に合わせて車室外と車室内とに所望の通信エリアを形成することができる。よって、少ない送信手段にて電子キー1の位置を精度よく判定することができる。
【0071】
(2)運転席側の通信エリアと車両の助手席側の通信エリアとの両通信エリアにおけるID照合の成立可否に基づいて電子キーが車室内に存在するか車室外に存在するかを判定する。このため、各通信エリアのみでID照合を行って電子キーの位置判定を試みた際と比較して、電子キーの位置判定の精度を向上させることが可能である。
【0072】
(3)車室外照合後の車室内照合は、リクエストスイッチ26,28が操作された側と反対側で車室内判定を実行し、このときの判定で電子キー1の存在を確認できなければ、電子キー1が車室内に存在しないとして、判定をその時点で終了する。よって、車室外判定の際、リクエストスイッチ26,28が操作された側と反対側のみで判定を行うだけで済むので、車室外判定における通信エリアの形成回数を少なく抑えることができる。従って、電子キー1の位置判定、つまりID照合に要する時間を少なく抑えることができる。
【0073】
(4)リクエストスイッチ26(28)が操作された側と反対側に電子キー1が存在する場合であっても、その電子キー1が車室内外のどちらに位置しているのかを判定することができる。よって、電子キー1の位置判定の精度を確保することができる。
【0074】
(5)LF発信機22,23から送信されるウェイク信号Swkによって車室外照合通信エリアAdo,Apoと車室内照合通信エリアAdi,Apiとがそれぞれ異なる大きさで形成されるのに加えて、電子キー1においてもチャレンジ信号Sccを受信したか否かを異なる大きさの受信信号強度で判定する。このため、少ない送信手段にて電子キー1の位置を更に精度よく判定することができる。
【0075】
(6)ID照合が前回成立した電子キー1から予め決められた順でID照合を試みるので、ID照合成立の可能性が高い電子キー1の存在を早期に確認でき、電子キー1の存在判定に掛かる時間を低減することができる。
【0076】
(7)リクエストスイッチ26,28が運転席ドア25と助手席ドア27とのそれぞれに搭載されるので、車両2の側面の前後方向におけるほぼ中央付近となり、電子キー1を携帯したユーザがリクエストスイッチ26,28を操作した際に、車室外照合通信エリアAdo,Apo内に確実に位置させることができる。
【0077】
(8)ウェイク信号Swkに対するアック信号Sacの返信の有無によって電子キー1が通信エリアに存在するか確認した後に、チャレンジ信号Sccに対するレスポンス信号Sreの返信を受信して、ID照合を行う。このため、電子キー1が通信エリアに存在しない際には、ウェイク信号Swkのみで電子キー1が存在しないと判定できるので、通信時間を低減することができる。
【0078】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態では、運転席側LF発信機22を運転席ドア25に設けるとともに、助手席側LF発信機23を助手席ドア27に設けたが、それぞれのLF発信機22,23をピラーに設けてもよい。例えば、車両2の前後方向の中央に位置するBピラー(センターピラー)に設けるのが望ましい。
【0079】
・上記実施形態では、照合ECU21に複数の電子キー1が登録された際には、予め決められた順番で電子キー1のID照合を試みたが、任意な順番で電子キー1のID照合を試みてもよい。
【0080】
・上記実施形態では、ウェイク信号Swkに含まれるコードによって電子キー1の受信信号強度閾値を異ならせて、電子キー1の位置判定の精度を向上させた。しかしながら、LF発信機22,23よるエリア形成によって位置判定が可能であれば、ウェイク信号Swkに位置判定用のコードを含ませなくともよい。また、ウェイク信号Swkに含まれるコードによる電子キー1の受信信号強度閾値を異ならせなくともよい。
【0081】
・上記実施形態では、運転席側リクエストスイッチ26が操作された際に運転席側車室外照合通信エリアAdoによって電子キー1が存在すると判定して、続いて助手席側車室内照合通信エリアApiによって電子キー1が存在すると判定した場合には、更に運転席側車室内照合通信エリアAdiによって電子キー1が存在するか判定した。しかしながら、運転席側車室外照合通信エリアAdoと助手席側車室内照合通信エリアApiとによって電子キー1が車室内に存在することを正確に判定することができる場合には、運転席側車室外照合通信エリアAdo及び助手席側車室内照合通信エリアApiによって電子キー1の存在を判定した後に、運転席側車室内照合通信エリアAdiの形成を省略してもよい。なお、助手席側リクエストスイッチ28が操作された際においても、運転席側と助手席側とを入れ替えて同様の動作を行う。
【0082】
・上記実施形態では、各通信エリアAdo,Adi,Apo,Apiは車室内を含むように形成した。しかしながら、運転席側車室外照合通信エリアAdoと助手席側車室外照合通信エリアApoとのそれぞれ自体では車室内の全てを含まず、組み合わせた通信エリアで車室内を含むようにしてもよい。また、運転席側車室内照合通信エリアAdiと助手席側車室内照合通信エリアApiとのそれぞれ自体では車室内の全てを含まず、組み合わせた通信エリアで車室内を含むようにしてもよい。
【0083】
・上記実施形態では、運転席側LF発信機22と助手席側LF発信機23とから車両2の運転席側と助手席側とに分けて通信エリアを形成したが、これらLF発信機22,23によって形成される通信エリアによって、車室内と車室外とを含むエリアが形成されれば、左右に関わらず前後等に分けて通信エリアを形成してもよい。
【0084】
・上記実施形態では、チャレンジ信号SccにビークルIDとチャレンジコードとを含めたが、ビークルIDを含むビークル信号を別途発信して、ビークル信号に対するアック信号Sacの返信があった場合に、チャレンジコードを含むチャレンジ信号Sccを発信してもよい。このようにすれば、対応しない車両2の電子キー1であった場合に、チャレンジコードの受信をせずに通信を終えることが可能となる。
【0085】
・上記実施形態において、電子キーシステム3で使用する無線信号の周波数は、必ずしもLFやUHFに限定されず、これら以外の周波数が使用可能である。また、車両2から電子キー1に無線信号を発信するときの周波数と、電子キー1から車両2に無線信号を返信するときの周波数とは、必ずしも異なるものに限定されず、これらを同じ周波数としてもよい。
【0086】
・上記実施形態では、車室内に電子キー1があることをスピーカ35による音声で報知したが、ブザーの吹鳴やライトの点灯等によって報知してもよい。
・上記実施形態において、電子キーシステムは、車両2からの通信を契機としてID照合を行うものに限定されず、電子キー1側からの通信を契機とするものでもよい。
【0087】
・上記構成において、LF発信機22,23の位置は任意に変更可能である。
・上記構成において、LF発信機22,23の数量は任意に変更可能である。
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
【0088】
(イ)請求項1〜7のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、前記送信手段は、出力を調整することによって前記車室外照合通信エリアと前記車室内照合通信エリアとの大きさを異ならせることを特徴とする電子キーシステム。
【0089】
同構成によれば、送信手段は出力を調整することで車室外照合通信エリアと車室内照合通信エリアを形成することが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1,1a,1b…電子キー、2…車両、3…電子キーシステム、11…通信制御部、12…LF受信部、13…UHF発信部、21…照合ECU、21c…位置判定手段としての位置判定部、21d…動作許可手段としての動作許可部、22…運転席側LF発信機、23…助手席側LF発信機、24…UHF受信機、25…運転席ドア、26…運転席側リクエストスイッチ、27…助手席ドア、28…助手席側リクエストスイッチ、30…車内LAN、31…メインボディECU、32…エンジンECU、33…エンジンスイッチ、34…ドアロック装置、35…スピーカ、Adi…運転席側車室内照合通信エリア、Ado…運転席側車室外照合通信エリア、Ai…車室内照合通信エリア、Api…助手席側車室内照合通信エリア、Apo…助手席側車室外照合通信エリア、B1…第1の受信信号強度閾値、B2…第2の受信信号強度閾値、Ca…第1コード、Cb…第2コード、Sid…IDコード信号、Srq…リクエスト信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キーに対してID照合の開始の問い合わせを送信する送信手段を車両に複数設け、これら前記送信手段の通信エリアに一部分が交わる重複領域を設け、前記送信手段からの前記問い合わせに対する前記電子キーの応答組み合わせを確認することにより、前記電子キーの位置を判定しながら前記ID照合を行う電子キーシステムにおいて、
前記電子キーが車室外にあるか否かを確認する車室外判定のときに前記送信手段が形成する車室外照合通信エリアと、前記電子キーが車室内にあるか否かを確認する車室内判定のときに前記送信手段が形成する車室内照合通信エリアとを、それぞれ大きさの異なるエリアで形成するエリア形成手段を備えた
ことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記電子キーが車室内に存在すること、又は車室外に存在することを判定する際、車室内と前記車両の右側の車室外とを含む範囲に形成される右側の通信エリアと、車室内と前記車両の左側の車室外とを含む範囲に形成される左側の通信エリアとの両通信エリアにおける前記ID照合の成立可否に基づいて判定する判定手段を備えた
ことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーシステムにおいて、
車載装置を動作させる際に操作され、操作時において前記送信手段から前記問い合わせを行わせる操作手段と、
前記操作手段が操作されたとき、前記操作手段が操作された側に車室外照合通信エリアを形成して車室外判定を行い、続いて前記操作手段が操作された側と反対側に車室内照合通信エリアを形成して車室内判定を行い、当該車室内判定において前記電子キーの存在を認識しなければ、その時点で判定を終了する判定手段とを前記車両に備えた
ことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の電子キーシステムにおいて、
前記判定手段は、前記車室内判定において前記電子キーの存在を確認したとき、前記操作手段が操作された側に車室内照合通信エリアを再度形成して、前記電子キーの位置を判定する
ことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記送信手段は、前記車室外照合通信エリアと、前記車室内照合通信エリアとを形成する際に、どちらのエリアを形成したかを示す車室外情報又は車室内情報を含んで問い合わせを送信し、
前記電子キーは、前記車室外情報を含む問い合わせを受信した際には第1の受信信号強度閾値で前記送信手段からの問い合わせの有無を判定し、前記車室内情報を含む問い合わせを受信した際には前記第1の受信信号強度閾値よりも高い第2の受信信号強度閾値で前記送信手段からの問い合わせの有無を判定し、前記送信手段からの問い合わせがあると判定した場合には前記問い合わせに応答する
ことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子キーシステムにおいて、
前記送信手段は、複数の電子キーが前記車両に登録された際には、予め決められた順番で各電子キーとID照合を試みるとともに、前記ID照合が前回成立した電子キーから順に前記ID照合を試みる
ことを特徴とする電子キーシステム。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の電子キーシステムにおいて、
前記操作手段は、運転席ドアと助手席ドアとのそれぞれ近傍に搭載される
ことを特徴とする電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−177242(P2012−177242A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40179(P2011−40179)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】