説明

電子キーシステム

【課題】電子キーシステムにおいて、ノイズ環境下においても通信エリアの大きさを適切に維持することにある。
【解決手段】車載装置20から電子キー10へ送信されるRSSI測定用信号Srsには、オン時間及びオフ時間が設定される。オン時間においては信号レベルが振幅するとともに、オフ時間においては信号レベルがゼロに固定される。そして、RSSI検出回路16はRSSI測定用信号SrsのRSSIをオン時間及びオフ時間に亘って複数回検出する。判定部25は、RSSI検出回路16の検出結果(RSSI測定用信号Srsの各RSSIの平均値Vav)に基づき、RSSI測定用信号Srsにノイズが印加されているか否かを判断する。そして、ノイズが印加している旨判断された場合には電子キー10が通信エリア内に存在することの確証が得られないとして、以降の車載装置20及び電子キー10間での通信が行われない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子キーシステムにおいては、ユーザが携帯する電子キーが車両又は住宅の周辺に形成される通信エリアに進入したとき、電子キー及び車両等間での無線通信を通じてドアの施解錠等が可能に構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の電子キーシステムにおいては、通信エリアは以下のように設定されている。すなわち、電子キーは車両からの無線信号の受信電界強度を検出するとともに、その検出結果を車両に無線通信を通じて送信する。車両は、この無線通信を通じて取得した無線信号の受信電界強度と、予め設定される閾値とを比較する。そして、車両は、無線信号の受信電界強度が閾値以上である旨判断したとき、電子キーが通信エリア内に存在するとして、以降電子キーとの間での相互認証を通じて車両ドアの施解錠を許可する。車両は、上記無線信号の受信電界強度が閾値未満である旨判断したとき、電子キーが通信エリア外に存在するとして、以降電子キーとの間での相互認証は行わない。このように、閾値に基づき通信エリアの大きさが決まる。具体的には、閾値が大きくなるにつれて通信エリアは小さく設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−118899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両から電子キーに送信される上記無線信号には、車両の周辺環境によってノイズが印加されることがある。例えば、ノイズの影響によって無線信号の受信電界強度が大きくなって、ノイズがない環境下での本来の通信エリア外であっても、その受信電界強度が閾値を越えて、電子キー及び車両間での相互認証が行われるおそれがある。このように、ノイズの影響により本来の通信エリアより通信エリアが大きくなることがある。この場合、ユーザが車両から遠く離れた位置に存在するにも関わらず、同ユーザが携帯する電子キーを通じて車両ドアが解錠可能となるおそれがあった。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノイズ環境下においても通信エリアの大きさが適切に維持される電子キーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、制御対象及び電子キー間での無線通信を通じて同制御対象の制御が実行されるとともに、前記電子キーが前記制御対象から受ける無線信号の受信電界強度が第1の閾値未満のとき、前記電子キーは通信エリア外に存在するとして、前記制御対象の制御が禁止される電子キーシステムにおいて、前記無線信号には、その信号レベルが振動するオン時間及び同信号レベルがゼロに固定されるオフ時間が設定され、前記電子キーに設けられ、前記無線信号の受信電界強度を前記オン時間及び前記オフ時間に亘って複数回検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づき、前記無線信号にノイズが印加している旨判断したとき、前記無線信号の受信電界強度が前記第1の閾値以上であっても前記電子キーが前記通信エリア内に存在することの確証が得られないとして、前記制御対象の制御を禁止する判定部と、を備えることをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、制御対象から電子キーへ送信される無線信号には、オン時間及びオフ時間が設定される。オン時間においては無線信号の信号レベルが振動するとともに、オフ時間においては無線信号の信号レベルがゼロに固定される。そして、検出部は無線信号の受信電界強度をオン時間及びオフ時間に亘って複数回検出する。判定部は、検出部の検出結果に基づき、無線信号にノイズが印加しているか否かを判断する。
【0009】
ここで、無線信号にオン時間及びオフ時間を設定しない構成において、無線信号にノイズが印加されている状況においては、電子キーが通信エリア外に存在するにも関わらず無線信号の受信電界強度が第1の閾値以上となって、電子キーが通信エリア内に存在する旨判断されるおそれがある。その点、上記構成によれば、オン時間及びオフ時間における受信電界強度に基づき無線信号にノイズが印加しているか否かが判断できる。なぜなら、ノイズがない状況においては、オフ時間においては受信電界強度がゼロとなるものの、ノイズが印加している場合にはオフ時間においてもオン時間と同様の受信電界強度が継続されるからである。無線信号にノイズが印加している旨判断されたとき、電子キーが通信エリア内に存在することの確証が得られないとして、制御対象の制御が禁止される。よって、ノイズ環境下において通信エリアが拡大することが抑制されて通信エリアの大きさが適切に維持される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、前記検出部を通じて検出される前記無線信号における各受信電界強度の平均値を算出する演算部を備え、前記判定部は、前記平均値が前記第1の閾値より大きく設定される第2の閾値以上である旨判断したとき、前記無線信号にノイズが印加している旨判断することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、算出された平均値が第2の閾値以上となったとき、無線信号にノイズが印加している旨判断される。このように無線信号におけるオン時間及びオフ時間に亘る各受信電界強度の平均値を通じて容易に無線信号にノイズが印加しているか否かの判断が可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、前記判定部は前記制御対象に設けられるとともに、前記演算部は前記電子キーに設けられ、前記電子キーは前記無線信号を受信すると、前記演算部を通じて算出された平均値を含むアック信号を送信し、前記判定部は前記制御対象が受信した前記アック信号に含まれる前記平均値が前記第2の閾値以上である旨判断したとき、前記無線信号にノイズが印加している旨判断することをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、判定部は制御対象に設けられる。よって、判定部を電子キーに設けた場合に比べて電子キーをよりコンパクトに構成することができる。ここで、電子キーはその携帯性の観点から制御対象に比して高いコンパクト性が要求されるところ、これは特に有益である。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、前記判定部及び前記演算部は前記電子キーに設けられるとともに、前記判定部は前記演算部を通じて算出された前記平均値が前記第1の閾値以上であって、かつ前記第2の閾値未満の範囲内である旨判断したとき前記制御対象にアック信号を送信し、前記平均値が前記範囲外である旨判断したとき前記制御対象への前記アック信号の送信を規制し、前記制御対象は前記アック信号を受信すると、前記電子キーとの間での相互認証を継続して、同相互認証が成立したとき制御を実行することをその要旨としている。
【0015】
同構成によれば、判定部及び演算部は電子キーに設けられるとともに、平均値が第1の閾値以上であって第2の閾値未満の範囲内のとき制御対象にアック信号が送信される。また、平均値が前記範囲外のときには、制御対象の制御を禁止するべくアック信号が送信されない。よって、判定部を制御対象に設けた場合に比べて、アック信号の送信に係る消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電子キーシステムにおいて、ノイズ環境下においても通信エリアの大きさを適切に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図2】第1の実施形態における車載装置及び電子キー間で送信される信号図。
【図3】第1の実施形態におけるウェイク信号及びRSSI測定用信号の信号図。
【図4】第1の実施形態における車外の通信エリアを示した車両の上面図。
【図5】第1の実施形態における第1及び第2の閾値を示すグラフ。
【図6】第1の実施形態における電子キー制御部が実行する制御プログラム。
【図7】第1の実施形態における判定部が実行する制御プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した第1の実施形態について図1〜図7を参照して説明する。
【0019】
図1に示されるように、電子キーシステム1は、車両2の運転者によって所持される電子キー10と、車両2に配設された車載装置20とを備えている。電子キー10と車載装置20との間で無線信号を通じた相互通信が行われる。
【0020】
まず、車載装置20及び電子キー10間で送受信される無線信号について図2を参照しつつ簡単に説明する。車載装置20は、車両2の周辺にウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsを送信する。電子キー10は、ウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsを受信するとアック信号Sacを送信する。車載装置20は、アック信号Sacを受信するとビークルID信号Sviを送信する。電子キー10は受信したビークルID信号Sviの妥当性を確認した後、キーID信号Sidを送信する。車載装置20は受信したキーID信号Sidの妥当性を確認したとき車両ドアの施解錠を許可する。以下、電子キー10及び車載装置20の具体的構成及びそれらの動作について説明する。
【0021】
<電子キー10>
図1に示すように、電子キー10は、CPU等からなるコンピュータユニットによって構成される電子キー制御部11を備える。この電子キー制御部11には、LF(Low Frequency)帯の無線信号を受信するLF受信部12と、UHF(Ultra High Frequency)帯の無線信号を送信するUHF送信部13とが電気的に接続されている。
【0022】
LF受信部12は、受信アンテナ12aを介して車載装置20から送信されるLF帯のウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsを受信すると、これら信号をパルス信号に復調し、復調された復調信号を電子キー制御部11へ出力する。
【0023】
電子キー制御部11は不揮発性のメモリ11aを備え、そのメモリ11aには電子キー10固有のキーIDコード及び車両2に固有のビークルIDコードが記憶されている。電子キー制御部11は、ウェイク信号Swkを認識すると、アック信号Sacを生成する。このアック信号Sacには、RSSI測定用信号Srsに基づく後述するRSSI情報が付加される。そして、電子キー制御部11はアック信号SacをUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、アック信号SacをUHF帯の信号に変調し、その変調した信号を送信アンテナ13aを介して無線信号として車載装置20へ送信する。このアック信号Sacに対して車載装置20からLF帯のビークルID信号Sviが送信される。LF受信部12は、受信アンテナ12aを介してビークルID信号Sviを受信すると、同ビークルID信号Sviをパルス信号に復調し、復調された復調信号を電子キー制御部11へ出力する。電子キー制御部11は、LF受信部12からビークルID信号Sviの復調信号が入力されると、ビークルID信号Sviに含まれるビークルIDコードを認識する。そして、電子キー制御部11は、ビークルID信号Sviに含まれるビークルIDコードと、メモリ11aに記憶されるビークルIDコードとの照合を行う。電子キー制御部11は、ビークルIDコードの照合が成立したとき、メモリ11aに記憶されるキーIDコードを含ませたキーID信号Sidを生成し、この信号をUHF送信部13へ出力する。UHF送信部13は、キーID信号Sidを変調するとともに、そのキーID信号Sidを送信アンテナ13aを介してUHF帯の無線信号として車載装置20へ送信する。
【0024】
LF受信部12にはRSSI検出回路16が備えられている。RSSI検出回路16はRSSI測定用信号Srsの受信電界強度RSSI(Receive Signal Strength Indication)を一定周期毎に検出する。RSSI検出回路16は、ウェイク信号Swkの受信タイミングに基づきRSSI測定用信号Srsの受信期間を認識し、同受信期間におけるRSSIを検出する。
【0025】
具体的には、図3に示すように、RSSI測定用信号Srsの受信期間における各時刻t11〜tnにおいてRSSIが検出される。ここで、RSSI測定用信号Srsにはオン時間Ton及びオフ時間Toffが設定されている。オン時間Ton及びオフ時間Toffは同一の時間に設定されるとともに、オン時間Ton及びオフ時間Toffの順で設定されている。オン時間Tonにおいては信号レベルが一定の振幅で振動するとともに、オフ時間Toffにおいては信号レベルがゼロに固定される。電子キー制御部11はオン時間Ton及びオフ時間Toffに亘って設定される各時刻t11〜tnにおけるRSSIの平均値Vavを算出する。電子キー制御部11は、この平均値VavをRSSI情報としてアック信号Sacに含ませる。
【0026】
RSSI測定用信号Srsにオン時間Ton及びオフ時間Toffが設定されることで、平均値Vavに基づきRSSI測定用信号Srsにノイズが印加されているか否かが判断可能となる。詳しくは、RSSI測定用信号Srsにノイズが印加されていない状況においては、オフ時間Toffにおいて検出される各RSSIはゼロとなるため、その分、平均値Vavは引き下げられる。一方、RSSI測定用信号Srsにノイズが印加されている状況においては、オフ時間Toffにおいて検出される各RSSIもオン時間Tonと同様の値が検出される。これにより、平均値Vavは引き上げられる。よって、平均値Vavに基づきRSSI測定用信号Srsにノイズが印加されているか否かの判断が可能となる。本例においては、この判断は後述する第2の閾値を通じて車両側にて実行される。
【0027】
ここで、上記のようにRSSI測定用信号SrsのRSSIが検出されるには、電子キー制御部11においてウェイク信号Swkが認識される必要がある。換言すると、電子キー制御部11においてウェイク信号Swkが認識されなければ、RSSI測定用信号Srsの受信期間を認識することができず、RSSI測定用信号SrsのRSSIが検出されることはない。よって、RSSI測定用信号Srsに印加されるノイズが問題となる前提として、そのノイズが電子キー制御部11におけるウェイク信号Swkの認識に影響を与えないことが条件となる。
【0028】
具体的には、図3の破線で示すように、ウェイク信号Swk受信時にはその信号レベルの振幅より小さいノイズが印加されている。この場合には、たとえウェイク信号Swkにノイズが印加されていても電子キー制御部11は、LF受信部12を通じてウェイク信号Swkを認識することができる。そして、RSSI測定用信号Srsの受信期間には、ウェイク信号Swkの受信期間におけるノイズの振幅より大きいノイズが印加されている。この場合には、上記のように、オフ時間Toffにおいてもオン時間Tonと同様のRSSIが検出される。また、ウェイク信号Swkの信号レベルより小さいノイズの印加がRSSI測定用信号Srsの受信期間まで継続された場合であっても、オフ時間Toffにおける各RSSIはオン時間Tonにおける各RSSIに近い値となる。よって、同様に平均値Vavは大きくなる。
【0029】
<車載装置20>
車載装置20は、CPU等からなるコンピュータユニットによって構成される車載制御部21を備える。車載制御部21は不揮発性のメモリ21aを備え、そのメモリ21aには電子キー10のメモリ11aに記憶されるコードとそれぞれ同一のキーIDコード及びビークルIDコードが記憶されている。また、車載制御部21には車載送信部22と、車載受信部24と、ドアハンドルセンサ32と、ロックスイッチ33と、ドアロック装置34とが電気的に接続されている。
【0030】
車載制御部21は、ウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsを生成し、それら信号を車載送信部22に出力する。車載送信部22は、車載制御部21からのウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsを変調して、これら変調した信号を送信アンテナ22aを介してLF帯の無線信号として送信する。ウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsは、一定周期毎に車両2の周辺に送信される。
【0031】
具体的には、図4の円中に拡大して示すように、送信アンテナ22aは各車両ドア5のアウトサイドドアハンドル4に内蔵されていて、送信アンテナ22aを中心とした底辺が車両の前後方向に沿う半円状の通信エリア30にウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsが送信される。
【0032】
図1に示すように、車載受信部24は、受信アンテナ24aを介して電子キー10から送信されるアック信号Sacを受信するとともに、アック信号Sacをパルス信号に復調して、この復調した信号を車載制御部21へ出力する。
【0033】
ここで、車載受信部24は判定部25を備える。判定部25は不揮発性のメモリ25aを備え、同メモリ25aには第1の閾値Vth1及び第2の閾値Vth2が記憶されている。判定部25はアック信号Sacに含まれるRSSI情報を認識すると、RSSI情報である平均値Vavと、メモリ25aに記憶される第1の閾値Vth1及び第2の閾値Vth2とを比較する。図5に示されるように、平均値Vavと第1の閾値Vth1及び第2の閾値Vth2との比較に基づき、電子キー10の位置や環境が認識される。具体的には、判定部25は、平均値Vavが第1の閾値Vth1以上であって第2の閾値Vth2未満の範囲にある旨判断したとき、電子キー10は通信エリア30内に存在するとして、通信許可信号を車載制御部21に出力する。
【0034】
車載制御部21は、通信許可信号を受けると、自身のメモリ21aに記憶されるビークルIDコードを含ませたビークルID信号Sviを生成し、その生成したビークルID信号Sviを車載送信部22に送信する。車載送信部22は、車載制御部21からのビークルID信号Sviを変調して、この変調された信号を送信アンテナ22aを介してLF帯の無線信号として送信する。
【0035】
ここで、第1の閾値Vth1は、所望の通信エリア30の大きさに基づき設定される。例えば、通信エリア30を大きくしたい場合には第1の閾値Vth1をより小さく設定し、通信エリア30を小さくしたい場合には第1の閾値Vth1をより大きく設定する。よって、判定部25は、平均値Vavが第1の閾値Vth1未満である旨判断した場合、電子キー10が通信エリア30外に存在するとして通信禁止信号を車載制御部21に出力する。車載制御部21は、通信禁止信号を受けると、以降のビークルID信号Sviの送信を行わない。
【0036】
上述のようにRSSI測定用信号Srsにノイズが印加されている場合には平均値Vavは大きくなる。第2の閾値Vth2は、RSSI測定用信号Srsに印加されるノイズの有無に応じた平均値Vavを比較して経験的に設定される。よって、判定部25は、平均値Vavが第2の閾値Vth2以上である旨判断した場合、RSSI測定用信号Srsにノイズが印加している旨判断して、通信禁止信号を車載制御部21に出力する。車載制御部21は、通信禁止信号を受けると、以降のビークルID信号Sviの送信を行わない。これにより、例えば図4に×印で示す位置51に電子キー10が存在する場合に、ノイズの影響により平均値Vavが第1の閾値Vth1以上となった場合であっても、同平均値Vavは第2の閾値Vth2も越えるため、位置51における電子キー10と車載装置20との間でビークルID信号Svi送信以降の処理が行われることはない。よって、通信エリア30の大きさが適切に維持される。
【0037】
上述のようにビークルID信号Sviを受信した電子キー10においてビークルIDコードの照合が成立したときキーID信号Sidが送信される。車載制御部21は車載受信部24等を通じてキーID信号Sidを受信すると、そのキーID信号Sidに含まれるキーIDコードとメモリ21aに記憶されるキーIDコードとの照合を行う。キーIDコードの照合が成立すると、車載制御部21は施解錠許可状態となる。
【0038】
ドアハンドルセンサ32は、図4の円中に拡大して示すように、アウトサイドドアハンドル4に設けられる。ドアハンドルセンサ32はユーザのアウトサイドドアハンドル4への接触を検出して、その旨を示す信号を車載制御部21に出力する。また、ロックスイッチ33は、アウトサイドドアハンドル4に設けられるとともに、プッシュ操作されるとその旨の操作信号を車載制御部21に出力する。
【0039】
車載制御部21は、施解錠許可状態において、ドアハンドルセンサ32を通じてユーザがアウトサイドドアハンドル4に触れたことを認識するとドアロック装置34を通じて車両ドアを解錠する。また、車載制御部21は、施解錠許可状態において、ロックスイッチ33がプッシュ操作された旨を認識すると車両ドアを施錠する。
【0040】
次に、電子キー制御部11により実行される平均値Vavの算出に係る制御プログラムについて説明する。当該プログラムは、図6のフローチャートに従って実行されるとともに、ウェイク信号Swkが認識されたとき開始される。
【0041】
まず、RSSI検出回路16を通じてRSSI測定用信号Srsにおける各時刻t11〜tnのRSSIが認識される(S101)。そして、これらRSSIに基づき平均値Vavが算出される(S102)。次に、算出された平均値Vavをアック信号Sacに含ませて、そのアック信号SacがUHF送信部13を通じて送信される(S103)。以上で当該プログラムが終了される。
【0042】
判定部25は、上記ステップS103において送信されたアック信号Sacを認識すると、平均値Vavの判定に係る制御プログラムを開始する。当該プログラムは、メモリ25aに記憶されるとともに、図7のフローチャートに従って実行される。
【0043】
アック信号Sacが認識されると、同信号にRSSI情報として含まれる平均値Vavが第1の閾値Vth1以上であって第2の閾値Vth2未満の範囲内にあるか否かが判断される(S201)。平均値Vavが前記範囲内にある旨判断されるとき(S201でYES)、通信許可信号が車載制御部21に出力される(S202)。そして、当該制御プログラムが終了される。これにより、車載制御部21はビークルID信号Sviの送信が可能となる。
【0044】
一方、平均値Vavが第1の閾値Vth1以上であって第2の閾値Vth2未満の範囲内にない旨判断されるとき(S201でNO)、電子キー10が通信エリア30外に存在する、若しくはRSSI測定用信号Srsにノイズが印加されているとして、通信禁止信号が車載制御部21に出力される(S203)。そして、当該制御プログラムが終了される。これにより、電子キー10が通信エリア30外に存在する、若しくはRSSI測定用信号Srsにノイズが印加しているときには、車載制御部21はビークルID信号Sviを送信せず、ひいては車両ドアの解錠が規制される。よって、ノイズ環境下にあっても通信エリア30の大きさが適切に維持される。
【0045】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)車載装置20から電子キー10へ送信されるRSSI測定用信号Srsには、オン時間Ton及びオフ時間Toffが設定される。オン時間TonにおいてはRSSI測定用信号Srsの信号レベルが一定の振幅で振動するとともに、オフ時間ToffにおいてはRSSI測定用信号Srsの信号レベルがゼロに固定される。そして、RSSI検出回路16はRSSI測定用信号SrsのRSSIをオン時間Ton及びオフ時間Toffに亘って複数回検出する。判定部25は、RSSI検出回路16の検出結果に基づき、RSSI測定用信号Srsにノイズが印加されているか否かを判断する。
【0046】
ここで、RSSI測定用信号Srsにオン時間Ton及びオフ時間Toffが設定されない構成について考える。この構成において、RSSI測定用信号Srsにノイズが印加されている場合、電子キー10が通信エリア30外に存在するにも関わらずRSSI測定用信号SrsのRSSIが第1の閾値Vth1以上となって、電子キー10が通信エリア30内に存在する旨判断されるおそれがある。その点、上記構成によれば、オン時間Ton及びオフ時間ToffにおけるRSSIに基づきRSSI測定用信号Srsにノイズが印加されているか否かが判断できる。なぜなら、ノイズがない状況においては、オフ時間ToffにおいてはRSSIがゼロとなるものの、ノイズが印加されている場合にはオフ時間Toffにおいてもオン時間Tonと同様のRSSIが継続されるからである。よって、ノイズが印加されている場合にはRSSI測定用信号Srsの各RSSIの平均値Vavは大きくなり、ノイズが印加されていない場合にはRSSI測定用信号Srsの各RSSIの平均値Vavは小さくなる。第2の閾値Vth2は、このようなRSSI測定用信号Srsのノイズの有無に応じた平均値Vavを比較して経験的に設定される。算出された平均値Vavが第2の閾値Vth2以上となったとき、RSSI測定用信号Srsにノイズが印加している旨判断される。このようにRSSI測定用信号Srsにおけるオン時間Ton及びオフ時間Toffに亘る各RSSIの平均値Vavを通じて容易にRSSI測定用信号Srsにノイズが印加しているか否かの判断が可能となる。そして、ノイズが印加している旨判断された場合には電子キー10が通信エリア30内に存在することの確証が得られないとして、以降の車載装置20及び電子キー10間での通信が行われない。以上の構成によれば、ノイズ環境下において通信エリア30が拡大することが抑制されて適切な通信エリア30の大きさが維持される。
【0047】
(2)判定部25は車載装置20(正確にはその車載受信部24)に設けられる。よって、判定部25を電子キー10に設けた場合に比べて電子キー10をよりコンパクトに構成することができる。ここで、電子キー10はその携帯性の観点から車載装置20に比して高いコンパクト性が要求されるところ、これは特に有益である。
【0048】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した第2の実施形態について説明する。この実施形態の電子キーシステムは、判定部が電子キーに設けられている点が上記第1の実施形態と異なっている。この実施形態の電子キーシステムは、図1に示す第1の実施形態の電子キーシステムとほぼ同様の構成を備えている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0049】
図1に示すように、第1の実施形態では車載受信部24に設けられていた判定部25は省略される。そして、図1に一点鎖線で示すように判定部15はUHF送信部13に設けられる。判定部15は、第1の実施形態の判定部25と同様に構成される。すなわち、判定部15は、電子キー制御部11によって算出された平均値Vavが第1の閾値Vth1以上であって第2の閾値Vth2未満の範囲にある旨判断したとき、UHF送信部13を介してRSSI情報として通信許可コードをアック信号Sacに含ませて送信する。車載制御部21は、車載受信部24等を通じて受信したアック信号Sacに含まれる通信許可コードを認識すると、第1の実施形態における通信許可信号を受信したときと、同様に、ビークルID信号Sviを送信する。
【0050】
また、判定部15は、電子キー制御部11によって算出された平均値Vavが第1の閾値Vth1以上であって第2の閾値Vth2未満の範囲にない旨判断したとき、UHF送信部13を介してRSSI情報として通信禁止コードをアック信号Sacに含ませて送信する。車載制御部21は、車載受信部24等を通じて受信したアック信号Sacに含まれる通信禁止コードを認識すると、第1の実施形態における通信禁止信号を受信したときと、同様にビークルID信号Sviを送信しない。
【0051】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(3)判定部15は電子キー10に設けられるとともに、平均値Vavが第1の閾値Vth1以上であって第2の閾値Vth2未満の範囲にあるとき車載装置20にアック信号が送信される。また、平均値Vavが前記範囲にないときには、車載装置20の制御を禁止するべくアック信号Sacが送信されない。よって、判定部15を車載装置20に設けた場合に比べて、アック信号Sacの送信に係る消費電力を低減することができる。
【0052】
(第3の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムを具体化した第3の実施形態について説明する。この実施形態の電子キーシステムは、不正な車両ドア解錠の試みに対して警告が行われる点が上記第2の実施形態と異なっている。この実施形態の電子キーシステムは、第2の実施形態の電子キーシステムとほぼ同様の構成を備えている。以下、第2の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0053】
本実施形態においては、車載制御部21は、ドアハンドルセンサ32を通じてユーザのドアハンドル4への接触が認識されたとき、ウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsを所定回数に亘って繰り返し送信する。
【0054】
また、判定部15を通じて平均値Vavが第2の閾値Vth2以上である旨判断された場合、ノイズ環境下にある旨を含むアック信号Sacが車載装置20に送信される。車載制御部21は、車載受信部24を通じて受信したアック信号Sacを通じてノイズ環境下にある旨認識すると、不正な解錠が試みられているおそれがある旨を、アラームを通じて警告する。
【0055】
上記構成によれば、ノイズ環境下において電子キー10が通信エリア30外に存在する場合に、ユーザが車両2から離れていることに乗じて第3者が不正に車両ドアの解錠を試みると警告が行われる。これにより、第3者を威嚇できるとともに、ユーザに不正に車両ドアの解錠が試みられていることを知らせることができる。
【0056】
また、車載制御部21は、ノイズ環境下にある旨を含むアック信号を認識したとき、車両2周辺はノイズ環境下にあって電子キー10との通信は困難であるとしてウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsの送信を一定時間に亘って休止する。
【0057】
以上、説明した実施形態によれば、第2の実施形態の(3)の作用効果に加え、以下の作用効果を奏することができる。
(4)ノイズ環境下において電子キー10が通信エリア30外に存在することに乗じて、不正に車両ドアの解錠が試みられた(本例ではドアハンドルへの接触)場合であっても、それに対して警告を行うことができる。よって、セキュリティ性を向上させることができる。
【0058】
(5)車載制御部21は、ノイズ環境下にある旨のアック信号を認識したとき、ウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsの送信を一定時間に亘って休止する。これにより、無駄にウェイク信号Swk及びRSSI測定用信号Srsが送信されることが抑制される。よって、これら信号送信に係る消費電力を低減できる。
【0059】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第1の実施形態においては、判定部25は車載受信部24に設けられていた。しかし、車載制御部21が判定部25を兼ねてもよい。同様に、第2及び第3の実施形態においては、電子キー制御部11が判定部15を兼ねてもよい。
【0060】
・第1〜第3の実施形態においては、オン時間Ton及びオフ時間Toffの順で設定されていた。しかし、逆にオフ時間Toff及びオン時間Tonの順に設定されてもよい。
【0061】
・第1〜第3の実施形態においては、RSSI測定用信号Srsはウェイク信号Swkと独立した信号であったが、RSSI測定用信号Srsをウェイク信号Swkに含ませてウェイク信号Swkとして送信してもよい。
【0062】
・第1〜第3の実施形態においては、各時刻t11〜tnにおけるRSSIの平均値Vavと第2の閾値Vth2との比較を通じてRSSI測定用信号Srsにノイズが印加されているか否かが判断されていた。しかし、平均値Vavに限らず、例えば、各時刻t11〜tnにおけるRSSIの積算値であってもよい。この場合には、第1の閾値Vth1及び第2の閾値Vth2は上記各実施形態に比べて大きく設定される。
【0063】
・第1〜第3の実施形態においては、RSSI検出回路16を通じてRSSI測定用信号SrsのRSSIのみが検出されていた。しかし、常時、受信した各種信号のRSSIが検出されてもよい。この場合、電子キー制御部11は、予めメモリ11aに記憶されるRSSI測定用信号Srsの受信タイミング及びその信号長さに基づき、RSSI測定用信号SrsのRSSIを認識し、その平均値Vavを算出する。
【0064】
・第1の実施形態においては、電子キー制御部11は演算部として、RSSI検出回路16を通じて認識した各RSSIに基づき平均値Vavを算出していた。しかし、判定部25が演算部として平均値Vavを算出してもよい。この場合、電子キー制御部11は、UHF送信部13を通じてRSSI検出回路16の検出結果(RSSI測定用信号Srsの各RSSI)をアック信号Sacに含ませて送信する。本構成においては、電子キー制御部11における平均値Vavの計算に係る処理負担を低減できる。
【0065】
・第1〜第3の実施形態においては、オン時間Ton及びオフ時間Toffは同一時間に設定されていた。しかし、オン時間Ton及びオフ時間Toffを異なる時間に設定してもよい。例えば、オフ時間Toffを大きく設定することで、ノイズ環境下での平均値Vavと、ノイズがない状況での平均値Vavとの差を大きくすることができる。これにより、第2の閾値Vth2を通じてより確実にノイズの有無の判定を行うことができる。
【0066】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、前記判定部及び前記演算部は前記電子キーに設けられるとともに、前記判定部は前記演算部を通じて算出された前記平均値が前記第1の閾値以上であって、かつ前記第2の閾値未満である旨判断したとき第1のアック信号を前記制御対象に送信し、前記平均値が前記第2の閾値以上である旨判断したとき前記無線信号にノイズが印加している旨の第2のアック信号を送信し、前記制御対象は、自身の制御が試みられたとき前記無線信号を送信するとともに、前記第1のアック信号を受信すると前記電子キーとの間での相互認証を継続して同相互認証が成立したとき制御を実行し、前記第2のアック信号を受信すると警告を行う電子キーシステム。
【0067】
同構成によれば、ノイズ環境下において電子キーが通信エリア外に存在することに乗じて、不正に制御対象の制御が試みられた場合であってもそれに対して警告を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1…電子キーシステム、10…電子キー、15,25…判定部、16…RSSI検出回路(検出部)、30…通信エリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象及び電子キー間での無線通信を通じて同制御対象の制御が実行されるとともに、前記電子キーが前記制御対象から受ける無線信号の受信電界強度が第1の閾値未満のとき、前記電子キーは通信エリア外に存在するとして、前記制御対象の制御が禁止される電子キーシステムにおいて、
前記無線信号には、その信号レベルが振動するオン時間及び同信号レベルがゼロに固定されるオフ時間が設定され、
前記電子キーに設けられ、前記無線信号の受信電界強度を前記オン時間及び前記オフ時間に亘って複数回検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づき、前記無線信号にノイズが印加している旨判断したとき、
前記無線信号の受信電界強度が前記第1の閾値以上であっても前記電子キーが前記通信エリア内に存在することの確証が得られないとして、前記制御対象の制御を禁止する判定部と、を備える電子キーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーシステムにおいて、
前記検出部を通じて検出される前記無線信号における各受信電界強度の平均値を算出する演算部を備え、
前記判定部は、前記平均値が前記第1の閾値より大きく設定される第2の閾値以上である旨判断したとき、前記無線信号にノイズが印加している旨判断する電子キーシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記判定部は前記制御対象に設けられるとともに、前記演算部は前記電子キーに設けられ、
前記電子キーは前記無線信号を受信すると、前記演算部を通じて算出された平均値を含むアック信号を送信し、
前記判定部は前記制御対象が受信した前記アック信号に含まれる前記平均値が前記第2の閾値以上である旨判断したとき、前記無線信号にノイズが印加している旨判断する電子キーシステム。
【請求項4】
請求項2に記載の電子キーシステムにおいて、
前記判定部及び前記演算部は前記電子キーに設けられるとともに、
前記判定部は前記演算部を通じて算出された前記平均値が前記第1の閾値以上であって、かつ前記第2の閾値未満の範囲内である旨判断したとき前記制御対象にアック信号を送信し、前記平均値が前記範囲外である旨判断したとき前記制御対象への前記アック信号の送信を規制し、
前記制御対象は前記アック信号を受信すると、前記電子キーとの間での相互認証を継続して、同相互認証が成立したとき制御を実行する電子キーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−77587(P2012−77587A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226653(P2010−226653)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】