説明

電子ディスプレイ

【課題】外部からの電波通信により表示情報を受信することにより、簡易に可変情報を表示させることができるパッケージ表示媒体に用いる電子ディスプレイを提供することを目的とする。
【解決手段】透明基材11上に透明電極21と、画素表示層31と、接着層41が形成された前面板50の接着層41に、配線回路基板60の一方の面に電極パッド層61が形成され、配線回路基板60の他方の面に駆動・制御素子70及び部品が実装された背面板80の電極パッド層61を貼り合わせた一体化構造の電子ディスプレイである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易に可変情報を表示させるためのパッケージ表示媒体に用いる電子ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
電車、バス等の車内に広告等を印刷した表示媒体を吊り広告等として表示することが行われ、表示情報は、定期的に人手を介して取り替え作業が行われている。
従って、人的な作業のため時間や労力が必要であり、これに要するコストも無視することができない。
また、このように人的な作業であるために、表示内容を迅速に切り換えることが難しく、タイムリーできめ細かい情報を提供することが出来ないという問題も存在する。
【0003】
また、近年、商品や荷物などの物品に取り付けて当該物品の識別・管理を行うタグとして、外部からの電波通信により各種データの書き込み、読みとりを非接触で行うことができるデータキャリアシステムを内蔵したRF(Radio Frequency)IDタグを用いた個別認識システムが知られており、物流、流通、FA(Factory Automation)で扱われる商品や製品、荷物などの物品の識別・管理として広く使われるようになってきている。
【0004】
特に物流、流通では個々の商品や製品の現状の把握が可能となるため、商品や製品に貼付、またはひも付けされたRFIDタグの個体識別情報を外部読み取り装置にて非接触で読み取ることにより、商品や製品の売り上げ管理及び在庫管理を効率よく行うことができ、省力化に有用な手段となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−44794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記RF(Radio Frequency)IDタグを用いた個別認識システムを更に画像表示媒体に展開することで考案されたもので、外部からの電波通信により表示情報を受信することにより、簡易に可変情報を表示させることができる表示媒体に用いる電子ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明において上記課題を解決するために、まず請求項1においては、透明基材11上に少なくとも透明電極21と、画像表示層31と、接着層41とを具備する前面板50と、配線回路基板60の一方の面に電極パッド層61が形成され、配線回路基板60の他方の面にICチップ等の駆動・制御素子70及び部品等が実装されてなる背面板80とから構成されており、前記前面板50の接着層41と前記背面板80の電極パッド層61とを貼り合わせて一体化構造にしたことを特徴とする電子ディスプレイとしたものである。
【0007】
また、請求項2においては、透明基材11上に少なくとも透明電極21と、画像表示層31と、接着層41とを具備する前面板50と、配線回路基板60の一方の面に電極パッド層61が形成され、配線回路基板60の他方の面にICチップ等の駆動・制御素子70及び部品等が実装されてなる背面板80とから構成されており、前記前面板50の接着層41に複数の前記背面板80の電極パッド層61を貼り合わせて一体化構造にしたことを特徴とする電子ディスプレイとしたものである。
【0008】
さらにまた、請求項3においては、非接触の受信手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子ディスプレイとしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子ディスプレイは、非接触で表示情報の切り替えが可能で、消費電力の少ない、ペーパーライクの電子ディスプレイになっているため、容易に取り付け、取り外しができ、電車、バス等の車内表示媒体としての利用、展開が期待できる。
また、大型のタイル構造の電子ディスプレイが容易に得られるため、大型電子ディスプレイとしての展開も期待できる。
さらにまた、電子ディスプレイの近くに簡易型の画像送信機を設置することにより、可変情報をタイムリーに表示することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の電子ディスプレイの一実施例を示す模式斜視図である。
図2は、本発明の電子ディスプレイを構成要素別に示した説明図である。
図3は、本発明の電子ディスプレイの他の実施例を示す模式斜視図である。
本発明の電子ディスプレイ100は、透明基材11上に透明電極21と、画素表示層31と、接着層41が形成された前面板50の接着層41上に、配線回路基板60の一方の面に電極パッド層61が形成され、配線回路基板60の他方の面に駆動・制御素子70及び部品が実装された背面板80の電極パッド層61を貼り合わせた一体化構造の電子ディスプレイである。
画素表示層31としては、エレクトロルミネセンス材料、ポリマー分散型液晶、強誘電性液晶、マイクロカプセル型電気泳動方式を用いた表示体を組み合わせたものが使用できる。
接着層41は、指触乾燥性が得られた半硬化状態の樹脂層を形成したもので、前面板50の接着層41と背面板80の電極パッド層61とを積層し、加圧、加熱することにより前面板50と背面板80とが貼り合わされ、所定の接着強度を有する一体化構造の電子ディスプレイが得られるようになっている。
【0011】
電子ディスプレイ100は、背面板80の電極パッド層61のセル電極と前面板50の透明電極21との間に電圧を印加して、画像表示を行うようにしたもので、表示品位は、電極パッド層61のセル電極の分割ピッチによって決まる。電極パッド層61の分割ピッチは電子ディスプレイの用途、表示内容によって適宜設定できる。
また、本発明の電子ディスプレイは非接触の受信手段及び電源を内蔵しており、電子ディスプレイの近くに簡易型の画像送信機を設置することにより、非接触の受信手段で受像した画像信号はオン、オフ信号に変換されて、駆動・制御素子70にて電極パッド層61の個々のセル電極に電界が印加されて画像表示され、非接触で可変情報をタイムリーに表示することができる。
ここで言う画像とは、文字、画像及びそれらを組み合わせた情報を指す。
【0012】
本発明の電子ディスプレイ200は、透明基材11上に透明電極21と、画素表示層31と、接着層41とが形成された前面板50aの接着層41上に、配線回路基板60の一方の面に電極パッド層61が形成され、配線回路基板60の他方の面に駆動・制御素子70が実装された背面板80aを所定個数(ここでは、6個)貼り合わせた一体化構造の電子ディスプレイである。
これは、大画面の電子ディスプレーを想定したもので、大画面用に形成された前面板50aの接着層41に、所定のサイズに仕上げ加工された背面板80aの電極パッド層61を面付けに応じて貼り合わせていくものである。
このような構成のディスプレイにすることにより、継ぎ目なしのタイル構造の大型電子ディスプレイが可能となる。
表示品位は、電極パッド層61のセル電極の分割ピッチによって決まるため、背面板80aの電極パッド層61のセル電極のピッチを微細化することにより、高画質の大画面ディスプレイを得ることも可能になる。
【0013】
以下、本発明の電子ディスプレーの作製方法につき説明する。
まず、透明基材11上に透明電極21を形成する(図4(a)及び(b)参照)。
透明基材11としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の可撓性を有する寸法安定性の優れた透明なプラスチックフィルムを挙げることができる。
透明電極21としては、酸化インジウム、酸化錫の混合焼結体を蒸着、またはスパッタリング等で成膜した公知の酸化インジウム系の透明導電膜が使用できる。
【0014】
次に、エレクトロルミネセンス材料、ポリマー分散型液晶、強誘電性液晶、マイクロカプセル型電気泳動方式を用いた表示体の中から、今回はマイクロカプセル型電気泳動方式の表示体を選定し、マイクロカプセル型電気泳動方式に用いるマイクロカプセル30を分散した樹脂溶液を透明電極21上に塗布し、乾燥硬化して画素表示層31を形成する(図4(c)参照)。
【0015】
ここで、マイクロカプセル型電気泳動方式の表示体について説明する。
マイクロカプセル型電気泳動方式の表示体に用いるマイクロカプセル30の一例を図5に示す。
マイクロカプセル30は、メタクリル酸樹脂、ユリア樹脂、アラビアゴム等からなるカプセル殻32の内部に、酸化チタンからなる白粒子34とカーボンブラックからなる黒粒子35とが、シリコーンオイル等の粘性の高い分散媒33中に分散され封入されている。
酸化チタンからなる白粒子34は正電荷を、カーボンブラックからなる黒粒子35は負電荷を帯びている。
【0016】
このため、図6に示すように、二つの電極22a、22b間に電界を印加し、電極22aを正極、電極22bを負極にすると、カプセル殻32内部の負に帯電した黒粒子35は電極22a側に、正に帯電した白粒子34は電極22b側に引かれるので、電極22a側から見たマイクロカプセルの上部は黒く見える。
逆に、電極22aを負極、電極22bを負極にすると、カプセル殻32内部の負に帯電した黒粒子35は電極22b側に、正に帯電した白粒子34は電極22a側に引かれるので、電極22a側から見たマイクロカプセルの上部は白く見える。
【0017】
本発明の電子ディスプレーの画像表示層31は、上記多数のマイクロカプセル30で構成されているので、透明電極21と後記する電極パッド層61の各アドレス電界を制御することで、所望の文字や図形を白と黒の画素で表示させることができる。
【0018】
なお、各マイクロカプセル30は粘性の高い分散媒33に分散されているので、一度電界を印加した後は、電源が切断されてもマイクロカプセル30の位置が変化しなく、電源を切っても表示画像が消えない不揮発性も有する。
このことから、省電力タイプのディスプレイが可能となる。
【0019】
上記のマイクロカプセル30では、白黒の2種類の粒子を含有させたモノクロ(白黒)の表示例を示したが、異なる色の粒子を含有させてカラー表示させることも可能である。また、白黒の2種類の粒子を含有させたモノクロディスプレイにカラーフルターを併用することにより、カラー表示のディスプレイとすることも可能である。
【0020】
次に、画素表示層31上にエポキシ樹脂系を主成分とする樹脂溶液を塗布し、乾燥硬化
するか、半硬化状態の樹脂フィルム(例えば、foldmaxシリーズ(三菱ガス化学社製))を貼付する等の方法で半硬化状態の接着層41を形成し、前面板50を作製する(図4(d)参照)。
ここで、半硬化状態の樹脂フィルムとして、上記のfoldmaxシリーズ(三菱ガス化学社製)の他に、ABFシリーズ(味の素ファインテクノ社製)、AS、MCL、GXAシリーズ(日立化成社製)、CEL、EAシリーズ(新神戸電機社製)、EYSシリーズ(新日鐵化学社製)、エスフレックスシリーズ(住友化学社製)等を挙げることができる。
【0021】
次に、配線回路基板60の一方の面に個々のセル電極からなる電極パッド層61が形成され、配線回路基板60の他方の面に駆動・制御素子70及び部品等が実装された背面板80を作製する(図2参照)。
ここで、配線回路基板60としては、内層コア基板を含む多層配線回路基板が使用でき、電極パッド層61の個々のセル電極はビア及び配線層を介して駆動・制御素子70の実装パッド(特に、図示せず)と電気的に接続されている。
また、背面板80にはアンテナコイル、キャパシタ等からなる共振回路を有する非接触の受信手段と電源(例えば、2次電池)が内蔵されている。
【0022】
最後に、上記前面板50の接着層41と、背面板80の電極パッド層71を貼り合わせ、加圧、加熱して、本発明の電子ディスプレイ100を得る(図1参照)。
ここで、背面板80にはアンテナコイル、キャパシタ等からなる共振回路を有する非接触の受信手段と電源が内蔵されているため、非接触の受信手段で受信した画像信号はオン、オフ信号に変換されて、駆動・制御素子70にて個々のセル電極に電界が印加されて、画像表示される。
【0023】
また、透明基材11に上記の透明電極21、画像表示層31及び接着層41を形成した大型の前面板50aに、配線回路基板60の一方の面に個々のセル電極からなる電極パッド層61が形成され、配線回路基板60の他方の面に駆動・制御素子70及び部品等が実装された背面板80aをタイル状に貼り合わせ、加圧、加熱して、本発明の電子ディスプレイ200を得る(図3参照)。
本発明の電子ディスプレイ200は、大型の前面板50aを作製し、従来の装置、技術を用いて作製した背面板80aを精度良く外形加工し、貼り合わせることにより、継ぎ目なしのタイル状の大型ディスプレイを容易に得ることができる。
ここで、背面板80にはアンテナコイル、キャパシタ等からなる共振回路を有する非接触の受信手段と電源が内蔵されているため、非接触の受信手段で受信した画像信号はオン、オフ信号に変換されて、駆動・制御素子70にて個々のセル電極に電界が印加されて、画像表示される。
【0024】
上記したように、本発明の電子ディスプレイは、非接触で表示情報の切り替えが可能で、消費電力の少ない、ペーパーライクの電子ディスプレイとなっているため、容易に取り付け、取り外しができ、電車、バス等の車内表示媒体としての利用、展開が期待できる。また、大型のタイル構造の電子ディスプレイが容易に得られるため、大型電子ディスプレイとしての展開も期待できる。
さらにまた、電子ディスプレイの近くに簡易型の画像送信機を設置することにより、可変情報をタイムリーに表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の電子ディスプレイの一実施例を示す模式斜視図である。
【図2】本発明の電子ディスプレイを構成要素別に示した説明図である。
【図3】本発明の電子ディスプレイの他の実施例を示す模式斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は、前面板の製造方法を工程順に示す説明図である。
【図5】画像表示層に使用するマイクロカプセルの一例を示す説明図である。
【図6】マイクロカプセル30に電界を印加したときのカプセル殻32内の白粒子34と黒粒子35の挙動を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
11……透明基材
21……透明電極
22a、22b……電極
30……マイクロカプセル
32……カプセル殻
33……分散媒
34……白粒子
35……黒粒子
31……画像表示層
41……接着層
50、50a……前面板
60……配線回路基板
61……電極パッド層
70……駆動・制御素子
80、80a……背面板
100、200……電子ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材(11)上に少なくとも透明電極(21)と、画像表示層(31)と、接着層(41)とを具備する前面板(50)と、配線回路基板(60)の一方の面に電極パッド層(61)が形成され、配線回路基板(60)の他方の面にICチップ等の駆動・制御素子(70)及び部品等が実装されてなる背面板(80)とから構成されており、前記前面板(50)の接着層(41)と前記背面板(80)の電極パッド層(61)とを貼り合わせて一体化構造にしたことを特徴とする電子ディスプレイ。
【請求項2】
透明基材(11)上に少なくとも透明電極(21)と、画像表示層(31)と、接着層(41)とを具備する前面板(50)と、配線回路基板(60)の一方の面に電極パッド層(61)が形成され、配線回路基板(60)の他方の面にICチップ等の駆動・制御素子(70)及び部品等が実装されてなる背面板(80)とから構成されており、前記前面板(50)の接着層(41)に複数の前記背面板(80)の電極パッド層(61)を貼り合わせて一体化構造にしたことを特徴とする電子ディスプレイ。
【請求項3】
非接触の受信手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−119495(P2006−119495A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309207(P2004−309207)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】