説明

電子デバイスの脆弱な無機層におけるコンタクトサイト構成

無機層(11)を支持する基板(16)と、コンタクト要素(14)を無機層(11)に機械的に結合する接合部(13)とを有する電子デバイス(10、20、30、40)が提供される。基板(16)と無機層(11)との間の弾性ミスマッチによって生じる応力を緩和するよう、少なくとも第1の負荷分配層(12a)が、接合部(13)の位置で、無機層(11)と直接接触して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばバリア層若しくは機能無機層などの薄い無機層を有する、例えば光電子デバイス、太陽電池、トランジスタ及びキャパシタなどの電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばディスプレイ及び照明装置などの光電子デバイスにおいてなど、電子デバイスにおいて湿気に対するバリア特性を提供するため、薄い無機層が広く使用されている。また、薄い無機層はしばしば、電子デバイスにおいて、例えばITO(インジウム錫酸化物)といった透明導電体、光起電層(太陽電池内のSi)、電気的アイソレーション、又は例えば薄膜トランジスタ若しくはキャパシタ構造などの中の誘電体層、電子デバイス頂部のパッシベーション層などに使用されている。無機層はしばしば、例えば、二酸化シリコン、窒化シリコン又はアルミナから製造される。
【0003】
現在の電子デバイスにおいて、バリア特性は、複数の無機層を、複数の無機層で構成される多層スタックに、あるいは無機層と(有機)ポリマー層とを交互に有するレイヤスタックに配置することによって達成されている。
【0004】
湿気に対するバリア特性は、水蒸気透過速度(water vapor transmission rate;WVTR)によって制限される。それは、レイヤ群の材料固有の浸透と、無機層内の例えばピンホール及びクラックなどの弱い箇所の数とによって決定される。従って、レイヤスタックは稼働時に非常に低いクラック密度を示さなければならず、さもなければ、湿気が機能部分に拡散してデバイスの性能劣化及び故障を引き起こし得る。これは複雑な技術課題である。何故なら、バリアとして使用される無機層はしばしば非常に薄く且つ脆弱な(壊れやすい)材料からなるため、湿気への露出及び侵入をもたらすクラック形成を受けやすく、それによって、電子デバイスの性能劣化又は故障を引き起こすからである。また、そのような脆弱な層はしばしば、比較的軟らかい材料の層と隣接しており、それにより、クラック形成を更に受けやすくされている。
【0005】
また、電子デバイス内のその他の脆弱な無機層でも、例えばITO(インジウム錫酸化物)といった透明導電体、光起電層(太陽電池内のSi)、電気的アイソレーション、又は例えば薄膜トランジスタ若しくはキャパシタ構造などの中の誘電体層、電子デバイス頂部のパッシベーション層は、クラック形成の影響を非常に受けやすい。とりわけ、コンタクトサイト(接触部位)付近の無機層にクラックが形成されることが多いという技術的な問題がある。
【0006】
機能層内でのクラック形成により、その層の機能が失われる。例えば、バリア層内のクラックはバリア特性に強く影響し、導電層内のクラックはデバイスの電気性能に有意な変化を生じさせ得る。
【0007】
特許文献1は、コンタクトサイトを有する電子デバイスの一例を示している。特許文献1には、半導体発光デバイスを提供する方法が記載されており、そこでは、発光層がn型領域とp型領域との間に配設され、該n型領域及び該p型領域にコンタクトが電気的に接続されている。
【0008】
しかしながら依然として、特にコンタクトサイトを有して構成される脆弱な層に関して、電子デバイス内の脆弱な無機層の性能を改善することが技術的に必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7348212号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、従来技術に係る上述の問題を少なくとも部分的に解決し、ひいては、改善された寿命を有する電子デバイスを提供することである。また、本発明の1つの目的は、薄い脆弱な層がクラック発生及びクラック伝播を被る確率を低下させることである。
【0011】
さらに、本発明の1つの目的は、クラック形成に対する耐性を改善するのと同時に、例えば、より高い稼働温度範囲、より低い変形リスク、及び/又はより高い接触ダメージ耐性を可能にする電子デバイスを提供することである。また、本発明の1つの目的は、フレキシブルポリマー基板に付加される無機層においてクラック形成を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1態様によれば、上記課題は、無機層を支持する基板と、コンタクト要素を前記無機層に機械的に結合する接合部とを有する電子デバイスであって、前記接合部の位置で前記無機層と直接接触して配置されて、前記基板と前記無機層との間の弾性ミスマッチによって生じる応力を緩和する、少なくとも第1の負荷分配層を更に有する電子デバイス、を提供することによって達成される。
【0013】
負荷分配層は、隣接する無機層内の最大歪みを低減し、それにより、クラックの発生及び伝播の可能性を低減する。その結果、湿気の侵入の虞が低減される。また、本発明に係るデバイスは、例えば接合部とコンタクトとによって引き起こされる当該デバイスの局所的な最大歪みが低減されるので、当該デバイスの稼働温度範囲の増大を可能にする。さらに、局所的な機械的影響による変形の虞が低減される。故に、長期性能が有意に向上される。なお、機械的な結合は電気的な結合をも生じさせることができ、大抵はそうである。
【0014】
負荷分配層の応力緩和能力が負荷分配層の厚さに強く依存することが見出されている。好ましくは、第1の負荷分配層の厚さhは、E≦qEによって規定され、ただし、h及びhはそれぞれ無機層及び第1の負荷分配層の厚さであり、E及びEはそれぞれ無機層及び第1の負荷分配層のヤング率であり、qは制限数である。
【0015】
層のヤング率Eと厚さhとの積は、その層の引張剛性の指標でもある。故に、最適な厚さは、無機層と第1の負荷分配層との引張剛性の比に依存する。この比の好適値は、0≦q≦1.0のときに得られる。
【0016】
第1の負荷分配層は、無機層と接合部との間に配置されてもよいし、あるいは、無機層が少なくとも第1の負荷分配層と接合部との間となるように配置されてもよい。少なくとも1つの負荷分配層の好適材料は、金属、半導体、ポリマー材料、又はこれらの組み合わせである。
【0017】
複数の負荷分配層のスタックを有する電子デバイスによって、更に良好な応力緩和が得られることがある。このスタックは、基板と無機層との間の弾性ミスマッチによって生じる応力を緩和するように構成された上記第1の負荷分配層を有する。複数の負荷分配層のスタックを用いるとき、隣接し合う層の引張剛性の差が過大にならないことが保証され得る。従って、クラックの生成及び伝播の虞が最小化される。
【0018】
負荷分配層のスタックにおいて、スタック内の負荷分配層x+1の厚さhx+1は、
【0019】
【数1】

によって規定され、ただし、j=0は無機層に対応し、1≦j≦xは、負荷分配層x+1より、無機層に近い負荷分配層のそれぞれに対応し、h及びEは、それぞれ、対応する層の厚さ及びヤング率であり、qは制限数である。
【0020】
故に、各層の最適厚さは、該層の引張剛性と、基板上に支持された無機層を含めた、それ以前の全ての層の引張剛性の和との比に依存する。この比の好適値は、0≦q≦1.0のときに得られる。
【0021】
負荷分配層のスタックにおいて、好ましくは、相異なる層は同一の寸法を有しない。隣接し合う層のエッジ間の、好適に選定された重なりにより、負荷分配層のスタックの応力緩和能力が更に向上され得る。好ましくは、負荷分配層x+1のエッジと、無機層に近い全ての層のエッジとの間の最大距離Lx+1は、少なくとも
【0022】
【数2】

であり、ただし、fは基板と無機層との間の弾性ミスマッチαによって定められ、f=f/(1−α)、f≧2、α=(E−E)/(E+E)、且つ0.5≦r≦0.75であり、Eは基板のヤング率である。
【0023】
なお、層の厚さは、その層全体で同じである必要は必ずしもない。実際には、例えば、厚さは層のエッジにおいて層の中央においてより小さくなり得る。スタックにされたレイヤ構成において、層の厚さは、例えば、隣接層と重なる位置での当該層の厚さとして定められてもよい。他の例では、厚さは、層全体での平均厚さとして、エッジから所定の距離での厚さとして、あるいは層の中心での厚さとして定められてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態は、本発明に係る電子デバイスを有する光電子デバイスに関する。
【0025】
本発明の上述及びその他の態様は、以下にて説明される実施形態を参照することで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1a】本発明に係る電子デバイスの一実施形態を示す断面図であり、第1の無機層とコンタクトとの間に負荷分配レイヤスタックが配設され、該レイヤスタック内のレイヤのうちの1つが第1の無機層に直接的に接触している。
【図1b】図1aの電子デバイスを上方(z軸)から見た図である。
【図1c】第1の無機層に直接接触して位置付けられた第1のポリマー層を更に有する電子デバイスを示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電子デバイスの一部を示す断面図であり、無機層とコンタクトとの間に負荷分配レイヤスタックが配設され、該レイヤスタック内のレイヤのうちの幾つかが第1の無機層に直接的に接触している。
【図3】本発明の一実施形態に係る電子デバイスの一部を示す断面図であり、該デバイスの無機層の下に負荷分配レイヤスタックが配置されている。
【図4】本発明の一実施形態に係る電子デバイスの一部を示す断面図であり、付加的なキャッピング層を有している。
【図5】fがコンプライアント基板のヤング率にどのように依存するかを示す図であり、層のヤング率にはE=100GPa(=10MPa)を用いている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な説明にて、本発明の好適実施形態を説明する。しかしながら、理解されるべきことには、特に断らない限り、複数の異なる実施形態の特徴が、それら実施形態の間で相互に交換されたり、様々に組み合わされたりしてもよい。
【0028】
図1aを参照するに、本発明の第1実施形態が示されており、電子デバイス10の一部15は、例えばポリマー材料からなるコンプライアント(柔軟)層などといった基板16上に配置された、脆弱な第1の無機層11を有している。無機層11の一部上に、負荷分配レイヤスタック12が配設されている。これは、負荷分配層12の頂部に置かれる接合部13を用いて、無機層11に結合材14を相互接続するためである。
【0029】
本発明によれば、負荷分配レイヤスタック12は、第1の無機層11に直接接触して配置されている。ここでは、第1の層と第2の層との間の直接接触は、第3の材料若しくは層又は空洞を横断することのないような、第1の層から第2の層への少なくとも1つの物理的経路が存在することを意味する。図1aの負荷分配レイヤスタック12は、コンタクトの位置で無機層11の少なくとも一部を覆っている。図1aの負荷分配レイヤスタック12は、第1の無機層11と直接接触する1つの層12aと、層x 12b及び更なる層x+1 12cとを有している。層x+1 12cは層x 12bと直接接触しており、層x 12bは第1の無機層11と層x+1 12cとの間に配置されている。他の例では、層xが層12aに相当し、層x+1が層12cに相当してもよい。層x 12bの長さは、層x+1 12cの長さと異なっている。2つの隣接し合う層x及びx+1が上述のように異なる長さを有するレイヤスタックのレイヤ群を用いると局所歪みの分布が低下されることが分かっており、上述のような負荷分配レイヤスタックを用いることは、改善された局所歪み分布をもたらし、ひいては、クラックの発生及び伝播の虞を低減する。
【0030】
更なる一実施形態によれば、負荷分配層x+1のエッジと、無機層11に一層近くの全ての層のエッジとの間の最大距離Lx+1は、それ以前の全ての負荷分配層のトータル高さの少なくともf倍にされ、fは好ましくは10より大きくされる。この範囲内でレイヤ群の長さを変化させることによって、負荷の再分布が更に低下され、最大歪みが有意に低減され得ることが見出されている。係数fはまた、基板と無機層との間の弾性ミスマッチ(不整合)αに関係付けて定められてもよい。例えば、f=f/(1−α)とし得る。ここで、f≧2、α=(E−E)/(E+E)、且つ0.5≦r≦0.75であり、Eは基板のヤング率である。
【0031】
負荷分配層12は単一の層、又は2層から例えば10層を有するレイヤスタックとし得る。負荷分配層12は、局所的な機械歪み(例えば、コンタクト又は接触部品によって引き起こされる)の分配を実現する。図1aの負荷分配レイヤスタック内の層12a、12b、12cは、例えば、半導電性材料、若しくは例えばAl、Au若しくはAgなどの金属材料などの導電性材料などの、ポリマー材料又は無機材料からなる。負荷分配レイヤスタック内の層の材料組成は、複数の材料の組み合わせを有していてもよい。
【0032】
負荷分配層の厚さは、無機層11と、無機層11により近い負荷分配層との、高さ及び/又はヤング率に応じて選定され得る。典型的に、負荷分配層は、例えば0.3μm又はそれ未満など、20nmから1μmまでの範囲内の厚さを有し得る。負荷分配層がポリマー層である場合には、より厚くてもよい。
【0033】
無機層11は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン若しくはアルミナなどの窒化物や酸化物、又はそれらの混合物や固溶体からなるバリア層とし得る。無機層11は様々な層を有していてもよく、それらの層の一部は、例えばTFT(薄膜トランジスタ)のような電子構造とともにパターニングされ得る。他の例では、無機層11は、無機層と有機ポリマー層との積層体の一部であってもよい。非常に薄い(例えば、30nm−1μm)無機層11が使用される場合、無機層11は、例えばプラズマ化学気相成長法又は好適なスパッタリング技術によって形成された不定比化合物の無機酸化物又は窒化物からなっていてもよい。無機層11を含むバリア層は、1日当たり10−2g/m未満の水蒸気透過速度(WVTR)を有し得る。好ましくは、そのWVTRは、1日当たり10−5g/m未満であり、例えば、1日当たり10−6g/m未満である。
【0034】
無機層11に配置される負荷分配レイヤスタック12は、例えば20nmと1000nmとの間の層などの非常に薄い無機層に対して有用であることが見出されている。また、100nm又はそれ未満の厚さを有する無機層11に非常に有利であることが見出されている。
【0035】
負荷分配レイヤスタックは、隣接する無機層内の最大歪みを低減し、その結果、クラックの発生及び伝播の可能性が有意に低下される。故に、湿気の侵入の虞が低減される。また、負荷分配レイヤスタック12は、デバイスの稼働温度範囲の増大を可能にする。接合部13及びコンタクト14によって生じるデバイスの局所的な最大歪みが抑制されるからである。さらに、局所的な機械的影響による変形の虞が低減される。
【0036】
また、本発明の実施形態は、接合部13を接触させて負荷分散層12に取り付けられる接触コンタクト14を有する電子デバイスに関する。図1aにおいて、接合部13は無機層12cに直接接触している。接合部13は、例えば接着剤又は半田などの接着材を有し得る。従って、接合部は、コンタクト14を負荷分配層12に結び付けるポリマー材料で形成されてもよいし、金属材料で形成されてもよい。
【0037】
コンタクト14は、例えば、電子デバイス10のアノード層又はカソード層への電気ワイヤとし得る。他の例では、コンタクト14及び接合部13は、電子デバイス10と担持(キャリア)構造との間の接続手段を提供するために使用される機械的接触部品であってもよい。これは例えば、電子デバイス10が、ディスプレイ又はディスプレイ素子などの担持構造内に配設されるLED(発光ダイオード)又はOLED(有機発光ダイオード)であるときに当てはまり得る。この場合、コンタクトは、電子デバイス10を担持構造に物理的に接続する例えばポリマー又は金属材料などの材料で形成され得る。
【0038】
特に、層x+1が0<q<1の範囲内の引張剛性率qを持つ有利な一実施形態が提供される。より好適な一実施形態においてqの範囲は0≦q≦0.60であり、更に好適な範囲は0≦q≦0.30である。引張剛性率は、
【0039】
【数3】

から決定することができる。ここで、Eはヤング率、hは厚さ、Ex+1x+1は層x+1の引張剛性であり、
【0040】
【数4】

は、層x+1と無機層11との間のレイヤ群の引張剛性の和(無機層11の引張剛性を含む)を表す。
【0041】
図1cに示すように、電子デバイス10は、第1の無機層11に直接接触して位置付けられた第1のポリマー層17を更に有していてもよい。ポリマー層17は、例えば5GPa未満のヤング率を有することができ、例えば、500MPa、200MPa、100MPa、50MPa、更には20MPa又は10MPaより低い値を有し得る。第1のポリマー層の厚さは、例えば100μm未満とすることができ、例えば5μmと100μmとの間などにし得る。
【0042】
電子デバイス10は、第1の無機層11に直接接触して位置付けられた第1のポリマー層17を更に有することができ、第1の無機層と基板との弾性ミスマッチαは、例えば0.85から0.995など、0.8から1未満までの範囲内であるようにされ得る。弾性ミスマッチαは、
【0043】
【数5】

から決定することができる。ここで、E’は、第1の無機層(inorganic layer)又は第1のポリマー層(polymer layer)それぞれの実効ヤング率を表す。
【0044】
図5は、fがコンプライアント基板のヤング率にどのように依存するかを示しており、層のヤング率にはE=100GPa(=10MPa)を用いている。これらの層の大部分に関して、ヤング率は50GPa−400GPaの範囲内にあるであろう。より低いヤング率の支持層に対して、極めて高い値のfが得られる。f=2の場合、
E=1000MPa f=24
E=100MPa f=100
E=10MPa f=428
なる値が得られる。
【0045】
故に、一部の実施形態において、fは好ましくは50より高くされ、例えば100より高く、あるいは400より高くなどとされ得る。
【0046】
図2を参照するに、第2実施形態に係る電子デバイスが示されており、電子デバイス20が(図1aに示した第1実施形態と異なり、)負荷分配スタック22内の幾つかの層22a、22b、22cが無機層21と直接接触している負荷分配スタック22を有することが示されている。
【0047】
図3を参照するに、第3実施形態に係る電子デバイス30が示されている。この実施形態において、負荷分配レイヤスタック32は、第1及び第2の実施形態とは異なるように配設されている。図3において、負荷分配スタック32は無機層31の下方に配設されており、その結果、電子デバイス30上に配置されるコンタクト34及び接合部33は、負荷分配レイヤスタック32上の無機層31に直接接触して配置される。負荷分配レイヤスタック32は上述のような無機材料を有し得る。
【0048】
また、他の実施形態は、図1又は2の負荷分配レイヤスタックを図3の負荷分配レイヤスタックと組み合わせることによって構築される電子デバイスに関係し得る。従って、本発明の実施形態は、2つの負荷分配レイヤスタックを用い、それらを脆弱な無機層の反対側に配設することにも関係する。
【0049】
図4は、付加的なキャッピング層42bを有する本発明の一実施形態に係る電子デバイス40について、その一部の断面図を示している。電気的に機能する脆弱な層(スタック)を覆う層42bは、コンタクト位置を機能させ続けるとともに、コンタクト領域の外側へのクラックの延伸を防止し得る。ここでは、導電性の負荷分配層42a(Al、Au若しくはAgのような曲げやすい金属、又は導電性ポリマー)が、脆弱な無機層41上に設けられている。コンタクトサイトのすぐ外側にキャッピング層42bが設けられている。これはポリマーとし得る。キャッピング層42bには、例えばEcapcap<E(キャッピング層の剛性は負荷分配層42aの剛性より低い)となるよう、制限された高さが用いられる。キャッピング層42bは、覆っている負荷分配層42aの少なくとも1つのエッジを有意に覆う。層42aとキャッピング層42bとの重なり長さは、例えば、>3hcapとし得る。
【0050】
本発明は特に、フレキシブルな光電子デバイスを含んだ、例えばLED又はOLEDデバイスなどの、発光デバイス又は表示デバイスに有用である。薄いデバイスとして定義されるフレキシブルデバイスは、負荷分配レイヤスタックによって有意に改善されることが見出されている。柔軟性が依然として実現されながら、コンタクトサイトでのクラック形成の虞が有意に低減されるためである。また、本発明は、例えばキャパシタ、トランジスタ及び太陽電池など、脆弱な層とコンタクトサイトとを含んだその他の電子デバイスにも有用である。
【0051】
当業者に認識されるように、本発明は決して上述の好適実施形態に限定されるものではない。対照的に、添付の請求項の範囲内で数多くの変更及び変形が可能である。
【0052】
例えば、代替的な実施形態は、第1の無機層、又は複数の無機層の多層スタックと、図示したより多くの層をレイヤスタック内に有する負荷分配レイヤスタックとを有する電子デバイスに関係し得る。また、無機層11により近い層xの長さは、より遠い層x+1の長さより大きいか小さいかの何れでもよい。
【0053】
なお、上述の実施形態は、本発明を限定するものではなく例示するものであり、当業者は、添付の請求項の範囲を逸脱することなく、数多くの代替実施形態を設計することができるであろう。特許請求の範囲において、括弧内に置かれた如何なる参照符号も、請求項を限定するものとして解されるべきでない。動詞“有する”又はその活用形の使用は、請求項中で述べられたもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。要素の前に置かれた冠詞“a”又は“an”は、その要素が複数存在することを排除するものではない。本発明は、複数の別個の要素を有するハードウェアによって、また、好適にプログラムされたコンピュータによって実現され得る。複数の手段を列挙する装置クレームにおいて、それらの手段のうちの幾つかが単一且つ同一のハードウェア品目によって具現化されてもよい。特定の複数の手段が相互に異なる従属項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないということを指し示すものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機層を支持する基板と、
コンタクト要素を前記無機層に機械的に結合する接合部と、
前記接合部の位置で前記無機層と直接接触して配置されて、前記基板と前記無機層との間の弾性ミスマッチによって生じる応力を緩和する、少なくとも第1の負荷分配層と、
を有する電子デバイス。
【請求項2】
前記第1の負荷分配層の厚さhは:
≦qE
によって規定され、ただし、h及びhはそれぞれ前記無機層及び前記第1の負荷分配層の厚さであり、E及びEはそれぞれ前記無機層及び前記第1の負荷分配層のヤング率であり、qは制限数である、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記少なくとも第1の負荷分配層は、前記無機層と前記接合部との間に配置されている、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記無機層は、前記少なくとも第1の負荷分配層と前記接合部との間に配置されている、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも第1の負荷分配層は、金属、半導体、ポリマー材料、又はこれらの組み合わせを有する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記基板はポリマー層である、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項7】
複数の負荷分配層のスタックを有し、該スタックは、前記基板と前記無機層との間の弾性ミスマッチによって生じる応力を緩和するように構成された前記第1の負荷分配層を有する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記スタック内の負荷分配層x+1の厚さhx+1は:
【数1】

によって規定され、ただし、j=0は前記無機層に対応し、1≦j≦xは、前記負荷分配層x+1より、前記無機層に近い負荷分配層のそれぞれに対応し、h及びEは、それぞれ、対応する層の厚さ及びヤング率であり、qは制限数である、請求項7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
0≦q≦1.0である、請求項2又は8に記載の電子デバイス。
【請求項10】
負荷分配層x+1のエッジと、前記無機層に近い全ての層のエッジとの間の最大距離Lx+1は、少なくとも
【数2】

であり、ただし、fは前記基板と前記無機層との間の弾性ミスマッチαによって定められ、f=f/(1−α)、f≧2、α=(E−E)/(E+E)、且つ0.5≦r≦0.75であり、Eは前記基板のヤング率である、請求項8に記載の電子デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の電子デバイスを有する光電子デバイス。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−505570(P2013−505570A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529359(P2012−529359)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/IB2010/051168
【国際公開番号】WO2011/033393
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【出願人】(501259662)ネイダーランゼ、オルガニザティー、ボー、トゥーゲパストナトゥールウェテンシャッペルーク、オンダーツォーク、ティーエヌオー (28)
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPASTNATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO
【Fターム(参考)】