説明

電子ブラインド並びに電子ブラインドの製造方法

【課題】全体的及び部分的な光の制御が可能な電子ブラインド並びに電子ブラインドの製造方法を提供する。
【解決手段】一対の基板と、一対の基板の間に挟持された(高分子/液晶)複合材料と、一対の基板の対向面に形成された一対の電極とを備えた電子ブラインドにおいて、一対の電極のうち一方の電極は、一方の基板の一端から他端にわたりライン状に互いに離れて形成され、一対の電極のうち他方の電極は、他方の基板の全面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子ブラインド並びに電子ブラインドの製造方法に関する。詳しくは、建物の窓等に用いられると共に、全体的に若しくは部分的に光透過性制御が可能な電子ブラインド並びに電子ブラインドの製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは通常、内側に塗布されたインジウムスズ酸化物(ITO)からなる透明電極を備えた一対の透明プラスチック基板(以下、単に「基板」とする。)によって、高分子相と液晶相を含んだ(高分子/液晶)複合材料が挟持された構造を有している。また、一般的に、(高分子/液晶)複合材料は、基板上に塗布され、そして紫外線(UV)照射を施され、更に2枚の基板でサンドイッチ状に挟まれ、相分離して乳白色な状態になる。そして、この基板に特定の電圧で交流信号周波数を加えたときに、(高分子/液晶)複合材料が誘導され、回転及び整列すると、光を透過して透明になり、交流信号周波数を加えないときには光を透過せず不透明となる。
【0003】
このような液晶パネルとしては様々なものが提案されており(例えば、特許文献1参照。)、図6は従来の液晶パネルの構造を説明する概略図であるが、図6には、2種類の高分子材料と液晶材料が分散した(高分子/液晶)複合膜101の両面に、透明電極102及び透明電極103を貼着して構成された液晶パネルが記載されており、ここで透明電極102及び透明電極103はそれぞれ、ベースとなる透明フィルム102A及び透明フィルム103A上に透明導電層102B及び透明導電層103Bが被着されて形成され、透明導電層102B及び透明導電層103Bが(高分子/液晶)複合膜101に接触しており、これら透明電極102及び透明電極103間に交流電源104から駆動電圧を印加すると、(高分子/液晶)複合膜101の光の透過率が増加し、交流電源104から駆動電圧を印加しないと光の透過率が減少する。
【0004】
【特許文献1】特開平5−45634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の液晶パネルは、透明電極全面を一度に光制御で切り替えるものであり、部分的にしかもライン状に光制御で切り替えたいという要求を満たすものではなかった。
【0006】
また、上下の基板に単一の透明電極が形成された液晶パネル同士を接続させることも考えられるが、各液晶パネルには、(高分子/液晶)複合材料を封止材で封止する必要があるので、電極接続部分が相当複雑になってしまい、最終製品までの工程も複雑になるため、高コストになるうえに、封止材の厚みほど液晶パネル間が離れてしまい乳白色部分が多くなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、全体的及び部分的な光の制御が可能な電子ブラインド並びに電子ブラインドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の電子ブラインドは、一対の基板と、該一対の基板の間に挟持された(高分子/液晶)複合材料と、前記一対の基板の対向面に形成された一対の電極とを備えた電子ブラインドにおいて、前記一対の電極のうち一方の電極は、一方の基板の一端から他端にわたりライン状に互いに離れて形成され、前記一対の電極のうち他方の電極は、他方の基板の全面に形成されたことを特徴とする。
【0009】
ここで、一方の基板の一端から他端にわたりライン状に互いに離れて形成されたことによって、部分的に電圧を印加することができる。また、他方の電極は、他方の基板の全面に形成されたことによって、一方の電極の位置と他方の電極の位置を細かく調整する必要がない。
【0010】
また、本発明の電子ブラインドにおいて、一方の電極は、0.66mm以下または0.2mm以下の間隔を隔てて形成された場合、光が透過しないで乳白色となる領域が少なくてすみ、全面が透明であるように見える。
【0011】
また、本発明の電子ブラインドにおいて、(高分子/液晶)複合材料は、2−エチルヘキシルアクリレートと、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートと、オリゴマー及びポリアクリレートから選ばれる少なくとも1つのものとを含み、残部が液晶材料である場合、2−エチルヘキシルアクリレートによって電子ブラインドが低電圧で駆動できるようになり、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートによって電子ブラインドの応答速度が速くなり、そしてオリゴマー及びポリアクリレートから選ばれる少なくとも1つのものによって(高分子/液晶)複合材料の粘度を増大させることができる。
【0012】
また、上記の目的を達成するために、本発明の電子ブラインドの製造方法は、一対の基板の対向面に一対の電極を形成する工程と、該一対の基板の間に(高分子/液晶)複合材料を配置して該(高分子/液晶)複合材料を挟持する工程とを有する電子ブラインドの製造方法において、前記一対の基板の対向面に一対の電極を形成する工程が、一方の基板の一端から他端にわたって複数の電極をライン状に互いに離して形成する工程と、他方の基板の全面に単一の電極を形成する工程とを有することを特徴とする。
【0013】
ここで、一方の基板の一端から他端にわたって複数の電極をライン状に互いに離して形成する工程によって、部分的に電圧を印加することができる電子ブラインドを製造できる。また、他方の基板の全面に単一の電極を形成する工程によって、一方の電極の位置と他方の電極の位置を細かく調整する必要がない電子ブラインドを製造できる。
【0014】
また、本発明の電子ブラインドの製造方法において、複数の電極を0.66mm以下または0.2mm以下の間隔を隔てて形成する場合、光が透過しないで乳白色となる領域が少なくてすみ、全面が透明であるように見える電子ブラインドを製造することができる。
【0015】
また、本発明の電子ブラインドの製造方法において、(高分子/液晶)複合材料は、2−エチルヘキシルアクリレートと、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートと、オリゴマー及びポリアクリレートから選ばれる少なくとも1つのものとを含み、残部が液晶材料である場合、2−エチルヘキシルアクリレートによって低電圧で駆動できる電子ブラインドを製造でき、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートによって応答速度が速くなった電子ブラインドを製造でき、そしてオリゴマー及びポリアクリレートから選ばれる少なくとも1つのものによって(高分子/液晶)複合材料の粘度を増大させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電子ブラインドは、全体的及び部分的な光の制御が可能である。
【0017】
本発明に係る電子ブラインドの製造方法は、全体的及び部分的な光の制御が可能な電子ブラインドを製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。本明細書は、パターニング加工された電極が形成されて光透過性制御が可能であると共に、建造物や乗り物等に使用される電子ブラインド、並びに電子ブラインドの製造方法を具体的に説明するものである。
【0019】
本発明の電子ブラインドに使用される基板(フィルム基板)の材質としては、ポリエチレンテレフタラート(PETフィルム)、ポリエチレンナフタレート(PENフィルム)、ポリカーボネート(PC)のようなフィルムが挙げられ、このような基板にITOと言われる透明なインジウムスズ酸化物を塗布し、透明導電性電極層が形成される。
【0020】
また、本発明を適用した電子ブラインドに使用される(高分子/液晶)複合材料には、適宜、スペーサと言うミクロ球体をした、(高分子/液晶)複合材料の厚みを均一に保つ材料が混入される。また、マルチコーティング、カーテンコーティング、スクリーン印刷のいずれかで(高分子/液晶)複合材料を基板に塗布する。更に、(高分子/液晶)複合材料の質を低下させてしまう空気や湿気の侵入を防ぐために基板の外枠を封止材で密封し、紫外線(UV)照射によりモノマーを硬化させ、(高分子/液晶)複合材料を相分離させる。
【0021】
また、本発明を適用した電子ブラインドに使用される(高分子/液晶)複合材料は、アクリルモノマーの混合物を含んだものであり、オリゴマーまたはポリアクリレートは(高分子/液晶)複合材料の粘度を高めるために(高分子/液晶)複合材料に加えられる。また、光重合開始剤の速度を速める効果があり、光重合の加速のために2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンのような光硬化剤が(高分子/液晶)複合材料に添加される。
【0022】
また、本発明を適用した電子ブラインドに使用される(高分子/液晶)複合材料中の液晶材料は、ビフェニール、シクロヘキサン、そしてフローリン含有の混合物である。また、液晶材料の複屈折率及び粘度と同様にその温度範囲も選択可能であるが、複屈折率Δnが0.18の液晶材料を用いた(高分子/液晶)複合材料は、ヘイズを少なくし、希望通りの特性を示すため特に好ましい。
また、液晶材料は、均質性の澄明な液を形成してモノマーで溶解され、粘度は50〜250cps(50〜250mPa・s)の範囲内で、基板上でのロールトゥシート(Roll to Sheet)プロセスのために選択可能である。ここで、液晶材料の粘度が50mPa・s未満だと、基板への粘着が弱く、はがれやすくなり好ましくなく、また、250mPa・sを越えると、液晶材料が固まって使用し難くなり好ましくない。
【0023】
また、(高分子/液晶)複合材料中、(高分子/液晶)複合材料全量基準で、液晶材料の割合は70〜82質量%であり、プリポリマーの割合は30〜18質量%である。ここで、液晶材料の比率が大きくなると駆動電圧は低くなるが、コントラストも低くなり、プリポリマーの比率が大きくなると駆動電圧が高くなると共にヘイズも高くなってしまい、粘度が下がってしまう。
【0024】
また、プリポリマーは、モノアクリレート、ジアクリレート、並びにオリゴマー及びポリアクリレートから選ばれる少なくとも1つのもので構成され、これらの比率が(高分子/液晶)複合材料の電気光学特性に影響する。液晶材料の粘度の増加と同様に、モノアクリレート比率の増加は低電圧駆動を導き、一方でジアクリレート比率を増加すると、より高い電圧、より高速な応答を導く。また、モノアクリレート及びオリゴマーは、(高分子/液晶)複合材料の粘度に影響し、液晶の粘度はポリアクリレートまたはオリゴマーを加えることで増加する。
【0025】
本発明で使用する(高分子/液晶)複合材料は、アクリルモノマーとオリゴマーの混合物であり、(高分子/液晶)複合材料の粘度は希望に応じて変えることができる。また、本発明で使用する(高分子/液晶)複合材料は、低価格でしかも高コントラストを有し、ヘイズを少なくできるという特徴を持つ。
【0026】
実施例1
次のような組成の(高分子/液晶)複合材料を調製した。即ち、(高分子/液晶)複合材料全量基準で、2−エチルヘキシルアクリレート(アルドリッチ社製)6質量%、M−1210(商品名、アクリレート系オリゴマー、東亜合成社製)12質量%、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製)2質量%、及び液晶TEB−50(商品名、Shijiazhuang Slichem液晶材料社製)80質量%で構成された(高分子/液晶)複合材料を作製した。更に、2−エチルヘキシルアクリレート、M−1210及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレートの全量に対して5質量%の2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン光重合開始剤を(高分子/液晶)複合材料に加えた。
次に、透明導電性ガラス基板上に(高分子/液晶)複合材料を塗布した後、別の透明導電性ガラス基板を(高分子/液晶)複合材料上に載せて2枚の基板で(高分子/液晶)複合材料を挟んで16μmの厚みとし、そして20℃の温度で、30秒間、30mW/cmの強度で紫外線を基板の上から照射して(高分子/液晶)複合材料を硬化させて16μmの厚みのテストセルを得た。25℃での(高分子/液晶)複合材料の電気光学的特性を測定した結果を表1に示す。
【0027】
実施例2
次のような組成の(高分子/液晶)複合材料を調製した。即ち、(高分子/液晶)複合材料全量基準で、2−エチルヘキシルアクリレート(アルドリッチ社製)6質量%、M−1210(商品名、アクリレート系オリゴマー、東亜合成社製)12質量%、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製)2質量%、及び液晶TEB−300(商品名、複屈折率0.18、Shijiazhuang Slichem液晶材料社製)80質量%で構成された(高分子/液晶)複合材料を作製した。更に、2−エチルヘキシルアクリレート、M−1210及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレートの全量に対して5質量%の2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン光重合開始剤を(高分子/液晶)複合材料に加えた。
次に、透明導電性ガラス基板上に(高分子/液晶)複合材料を塗布した後、別の透明導電性ガラス基板を(高分子/液晶)複合材料上に載せて2枚の基板で(高分子/液晶)複合材料を挟んで16μmの厚みとし、そして25℃の温度で、30秒間、30mW/cmの強度で紫外線を基板の上から照射して(高分子/液晶)複合材料を硬化させて16μmの厚みのテストセルを得た。25℃での(高分子/液晶)複合材料の電気光学的特性を測定した結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
図1(a)は、ITOが片側全面に塗布されたロール状のポリエチレンテレフタラート(PET)−ITOフィルム基板の概略図であり、図1(b)は、片面にITOが所定の間隔で幅方向にライン状に塗布されたロール状のポリエチレンテレフタラート(PET)−ITOフィルム基板の概略図である。
図1(a)に示すように、PETフィルムで構成された第1のフィルム基板1上に、ITOで構成された第1の透明導電性電極層3が第1のフィルム基板1の片側全面に形成されて単一の電極層を構成しており、また、図1(b)に示すように、ITOを第2のフィルム基板2の幅方向に塗布して形成された複数のITO層4Aと、ITOが塗布されていない複数の非ITO層4Bとで構成された第2の透明導電性電極層4が、PETフィルムで構成された第2のフィルム基板2上に形成されている。このような第2の透明導電性電極層4が形成された第2のフィルム基板2として株式会社トービで作製されたものを使用できる。ITO層4Aの幅は40mmであり、非ITO層4Bの幅は0.5mmである。即ちITO層4Aは非ITO層の幅だけ互いに離れている。
【0030】
ここで、ITO層が所定の間隔で複数形成されていれば、ITO層の幅は必ずしも40mmでなくてもよく、また非ITO層の幅は必ずしも0.5mmでなくてもよく、非ITO層の幅は0.66mm以下、0.2mm以下、または0.3mmであってもよい。また、ITO層が所定の間隔で複数形成されていれば、必ずしも第2のフィルム基板の幅方向にITO層が形成されていなくてもよく、第2のフィルム基板の長さ方向に形成されていてもよい。
また、第1のフィルム基板及び第2のフィルム基板の厚みは、125μmが一般的であるが、ITOの塗布によって175μmや188μmになってもよい。
【0031】
図2は、電子ブラインドパネルをロールトゥシート工程で製造する一例を示す概略図である。先ず、ITOで構成された単一の第1の透明導電性電極層(図示せず。)が片側全面に形成された第1のフィルム基板1及び、複数のITO層とITOが塗布されていない複数の非ITO層とで構成された第2の透明導電性電極層(図示せず。)が片面に形成された第2のフィルム基板2がそれぞれ巻かれた状態から繰り出される。また、(高分子/液晶)複合材料5には、スペーサと呼ばれるミクロ球体が混入されており、(高分子/液晶)複合材料5の厚みを均一に保っている。
そして、第1のフィルム基板1の第1の透明導電性電極層(図示せず。)上に(高分子/液晶)複合材料5を塗布する塗布処理6を行い、次に第2の透明導電性電極層(図示せず。)を(高分子/液晶)複合材料5に向けた状態で第2のフィルム基板2を(高分子/液晶)複合材料5に当て、ローラー回転方向7Aの方向に回転するローラー7で第1のフィルム基板1と第2のフィルム基板2を(高分子/液晶)複合材料5にラミネートして、積層体とする。
次に、25℃で30秒間、30mW/cmの強度の紫外線を積層体に照射する紫外線硬化加工8を行う。
紫外線が照射されて相分離した(高分子/液晶)複合材料5を有する積層体はカットされて個々のセグメントに分けられ、積層体の周囲を封止材で囲って(高分子/液晶)複合材料5を密封し、電子ブラインドパネル9が得られる。
【0032】
図3(a)は、電子ブラインドパネルの側面の一例を示す概略側面図であり、図3(b)は、電子ブラインドパネルの平面の一例を示す概略平面図であり、図3(c)は、電子ブラインドパネルの分解状態の一例を示す分解斜視図である。
図3(a)〜(c)においては、(高分子/液晶)複合材料5を第1のフィルム基板1と第2のフィルム基板2とで挟まれて封止材(図示せず。)によって周囲が囲まれて(高分子/液晶)複合材料5が密封されており、(高分子/液晶)複合材料5は乳白色を呈している。また、第2のフィルム基板2には40mm幅のITO層4Aが0.5mm間隔で形成されている(即ち、ITOが塗布されていない0.5mm幅の非ITO層4B)。また、電子ブラインドパネル長さ10は、用途に応じていかなる長さにも対応でき、更に電子ブラインドパネル幅11も、図3(b)の例では600mmであるが、いかなる長さにも対応できる。
【0033】
図4(a)は、電極が取り付けられた第1のフィルム基板の一例を示す概略図であり、図4(b)は、個々のITO層に電極が取り付けられた第2のフィルム基板の一例を示す概略図であり、図4(c)は、電極が取り付けられた第1のフィルム基板と個々のITO層に電極が取り付けられた第2のフィルム基板とによって作製された電子ブラインドの一例を示す概略図である。
図4(a)に示すように、ITOで構成された第1の透明導電性電極層(図示せず。)が片側全面に形成された第1のフィルム基板1のオフセット部分に銅板電極12が取り付けられている。また、図4(b)に示すように、8つのITO層それぞれに接続電極13(13A〜13H)が取り付けられている。そして、図4(c)に示すように、銅板電極12と接続電極13(13A〜13H)とが電子ブラインドパネル9のそれぞれ横辺と縦辺に位置するように第1のフィルム基板と第2のフィルム基板とを配置し、乳白色の(高分子/液晶)複合材料を挟んで電子ブラインドを作製する。
【0034】
図5(a)は、電圧が印加されて透明になった1つのITO層を有する電子ブラインドの一例を示す概略図であり、図5(b)は電圧が印加されて透明になった複数のITO層を有する電子ブラインドの一例を示す概略図であり、図5(c)は、電圧が印加されて電子ブラインド全体が透明になった状態の一例を示す概略図である。
図5(a)に示すように、接続電極13(13A〜13H)のうち、1つのITO層に接続した接続電極13Aと銅板電極12に、交流信号周波数60Hz、電圧30Vを加えたところ、接続電極13Aに接続したITO層が透明となり、他の接続電極が接続したITO層は乳白色のままであった。
また、図5(b)に示すように、電圧を加える接続電極を増やして接続電極13A〜13Cと銅板電極12に同様に電圧を加えたところ、接続電極13A〜13Cに接続したITO層が透明となり、他の接続電極が接続したITO層は乳白色のままであった。
そして、図5(c)に示すように、全ての接続電極13A〜13Hと銅板電極12に同様に電圧を加えたところ、全てのITO層が透明となり、結果、電子ブラインド全体が透明となった。
【0035】
このように、本発明の電子ブラインドは、一方の電極が、一方の基板の一端から他端にわたりライン状に互いに離れて形成されているので、部分的に電圧を印加することができ、全体的のみならず部分的に光を透過させたり光を不透過にしたりして光の制御を行なうことが可能である。また、他方の電極が基板の全面に形成されているので、一方の電極の位置と他方の電極の位置を細かく調整する必要がなく、電極の位置ずれによる光の不透過を低減することができる。
【0036】
また、本発明の電子ブラインドは、全体的のみならず部分的に光を透過させたり光を不透過にしたりして光の制御を行なうことができるので、例えば建造物や乗り物の窓に使用して、通常のブラインドの代用とすることが可能である。即ち、病室においては、患者がその日の気分で外の景色の範囲例えば上半分の青空を見たいときなどは、手元の操作で電子ブラインドの上半分に電圧を加えて光透過性にすれば体を動かさずに透明または不透明の調節を行なうことができ、また、自動車、バスにおいては、後部座席の窓の下半分に電圧を加えず光を不透過にして不透明な状態にすれば、外部から見えなくなると共にプライベートな空間が保て、夏の日差しが強い日などは眩しくなく、しかも上半分で外の景色を楽しむこともできる。また、会議室等においても、わざわざ窓の近くまで移動することなく手元の操作で通常のブラインドやカーテンの開け閉めと同じ効果を発揮できる。
【0037】
また、第1のフィルム基板に取り付けられた銅板電極と交差している、第2のフィルム基板のITO層に接続した接続電極までは電子リレーとなっており、ITO層の部分に電圧を加えることにより、遠隔操作で瞬時に電子ブラインドの全部あるいは一部が透明な状態になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)は、ITOが片側全面に塗布されたロール状のポリエチレンテレフタラート(PET)−ITOフィルム基板の概略図であり、(b)は、片面にITOが所定の間隔で幅方向にライン状に塗布されたロール状のポリエチレンテレフタラート(PET)−ITOフィルム基板の概略図である。
【図2】電子ブラインドパネルをロールトゥシート工程で製造する一例を示す概略図である。
【図3】(a)は、電子ブラインドパネルの側面の一例を示す概略側面図であり、(b)は、電子ブラインドパネルの平面の一例を示す概略平面図であり、(c)は、電子ブラインドパネルの分解状態の一例を示す分解斜視図である。
【図4】(a)は、電極が取り付けられた第1のフィルム基板の一例を示す概略図であり、(b)は、個々のITO層に電極が取り付けられた第2のフィルム基板の一例を示す概略図であり、(c)は、電極が取り付けられた第1のフィルム基板と個々のITO層に電極が取り付けられた第2のフィルム基板とによって作製された電子ブラインドの一例を示す概略図である。
【図5】(a)は、電圧が印加されて透明になった1つのITO層を有する電子ブラインドの一例を示す概略図であり、(b)は電圧が印加されて透明になった複数のITO層を有する電子ブラインドの一例を示す概略図であり、(c)は、電圧が印加されて電子ブラインド全体が透明になった状態の一例を示す概略図である。
【図6】従来の液晶パネルの構造を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1 第1のフィルム基板
2 第2のフィルム基板
3 第1の透明導電性電極層
4 第2の透明導電性電極層
4A ITO層
4B 非ITO層
5 (高分子/液晶)複合材料
6 塗布処理
7 ローラー
7A ローラー回転方向
8 紫外線硬化加工
9 電子ブラインドパネル
10 電子ブラインドパネル長さ
11 電子ブラインドパネル幅
12 銅板電極
13 接続電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、該一対の基板の間に挟持された(高分子/液晶)複合材料と、前記一対の基板の対向面に形成された一対の電極とを備えた電子ブラインドにおいて、
前記一対の電極のうち一方の電極は、一方の基板の一端から他端にわたりライン状に互いに離れて形成され、
前記一対の電極のうち他方の電極は、他方の基板の全面に形成された
ことを特徴とする電子ブラインド。
【請求項2】
前記一方の電極は、0.66mm以下の間隔を隔てて形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ブラインド。
【請求項3】
前記一方の電極は、0.2mm以下の間隔を隔てて形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ブラインド。
【請求項4】
前記(高分子/液晶)複合材料は、2−エチルヘキシルアクリレートと、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレートと、
オリゴマー及びポリアクリレートから選ばれる少なくとも1つのものとを含み、
残部が液晶材料である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子ブラインド。
【請求項5】
一対の基板の対向面に一対の電極を形成する工程と、該一対の基板の間に(高分子/液晶)複合材料を配置して該(高分子/液晶)複合材料を挟持する工程とを有する電子ブラインドの製造方法において、
前記一対の基板の対向面に一対の電極を形成する工程が、一方の基板の一端から他端にわたって複数の電極をライン状に互いに離して形成する工程と、
他方の基板の全面に単一の電極を形成する工程とを有する
ことを特徴とする電子ブラインドの製造方法。
【請求項6】
前記複数の電極を0.66mm以下の間隔を隔てて形成する
ことを特徴とする請求項5に記載の電子ブラインドの製造方法。
【請求項7】
前記複数の電極を0.2mm以下の間隔を隔てて形成する
ことを特徴とする請求項5に記載の電子ブラインドの製造方法。
【請求項8】
前記(高分子/液晶)複合材料は、2−エチルヘキシルアクリレートと、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレートと、
オリゴマー及びポリアクリレートから選ばれる少なくとも1つのものとを含み、
残部が液晶材料である
ことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つに記載の電子ブラインドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−309049(P2007−309049A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141634(P2006−141634)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(506173639)株式会社ビジョンマルチメディアテクノロジ (2)
【出願人】(506309065)株式会社ケイ・アンド・アイ・ディスプレー (1)
【Fターム(参考)】