説明

電子ペンシステム

【課題】ノートや手帳に記載した情報を効率的に管理でき、また常に最新のアプリケーションの提供を可能とする。
【解決手段】位置情報パターンが表面に設けられた筆記用紙と、この筆記用紙に設けられたコマンドエリアと、前記筆記用紙の表面に筆記動作することで、前記位置情報パターンを読み取り、筆記情報を記録すると共に、コマンドエリアへの筆記に応じた機能を動作させる電子ペンと、電子ペンと無線接続される情報機器と、この情報機器と接続されるアプリケーションサーバで構成される電子ペンシステムであって、前記コマンドエリアの位置情報を前記電子ペンによって検出し、これに応じた前記アプリケーションサーバのアプリケーションソフトウエアを動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ペンによる筆記情報を記録する装置であって、電子ペンによる筆記動作によって、筆記情報を記録し、また外部機器に出力することが可能であり、特に会社における会議の議事録やスケジュール管理、学校等における講義のメモを、電子的に記録し保持する電子ペンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ペンを用いて、筆記情報をデジタル化して記録保持するシステムが知られている。
これは、筆記用紙面上の絶対位置を表すドットパターンが印刷形成された筆記用紙の筆記面に電子ペンを走らせることにより、その電子ペンの移動軌跡を演算し、その演算結果を筆記データとして記録するものである。
【0003】
この電子ペンシステムは、個人のメモ用として、或いは従来の手帳の代わりとして用いられる他、医療用カルテの記録保存用や、工場の在庫品管理用としても用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−030257号
【特許文献2】特開2008−204363号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、ドットパターンが印刷された用紙と電子入力ペンによって、看護情報を入力、記録管理するシステムが示されている。
また、上記特許文献2には、ドットパターンが印刷された帳票と電子入力ペンと携帯電話とサーバーからなる広告システムが示されている。
このシステムでは、店側で帳票に電子ペンで広告を記入すると、携帯電話を介してサーバーに送信され、このサーバーから、利用者の携帯電話に、広告が発信されるというものである。
【0006】
これらの従来技術では、ドットパターン用紙は、専ら病院や店といった組織によって用いられるものであり、個人利用の例えばノートや手帳といったものにドットパターン用紙を用いるシステムではない。
【0007】
本発明は、個人的に利用するノートや手帳を用いたシステムに関するものであり、このノートや手帳の筆記情報を、アプリケーションサーバを用いて、制御、管理するシステムに関するものである。
これにより、ノートや手帳に記載した情報を効率的に管理でき、また常に最新のアプリケーションの提供を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1に記載するように、位置情報パターンが表面に設けられた筆記用紙と、この筆記用紙に設けられたコマンドエリアと、前記筆記用紙の表面に筆記動作することで、前記位置情報パターンを読み取り、筆記情報を記録すると共に、コマンドエリアへの筆記に応じた機能を動作させる電子ペンと、電子ペンと無線接続される情報機器と、この情報機器と接続されるアプリケーションサーバで構成される電子ペンシステムであって、前記コマンドエリアの位置情報を前記電子ペンによって検出し、これに応じた前記アプリケーションサーバのアプリケーションソフトウエアを動作させることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4に記載するように、前記アプリケーションサーバは、外部クラウドサービスサーバに、前記電子ペンにより筆記されたデータを送信し、管理することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単に筆記を書面に書き留めるだけのノートや手帳が、最新のアプリケーションの提供手段となり、利用者の利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施例の形態に係る主要な構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施例の電子ペン及び筆記用紙に係る構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施例の筆記用紙に係る構成図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施例の形態に係る構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
以下、図に沿って本発明の一実施例を説明する。
図1は電子ペン1をパーソナルコンピュータ2に無線接続した実施例を示す構成図である。
3は表面に絶対位置を算出可能な位置情報パターン(ドットパターン)が印刷され、この表面において電子ペン1によって筆記動作を行う筆記用紙、4はこの部分に電子ペン1で筆記動作を行うことにより、所望の機能を発揮できる状態にするためのコマンドエリアである。
【0014】
筆記用紙3の裏面には、例えば特許第3881365号に示されるような位置情報パターンが、赤外線吸収型インクで形成されている。
また、罫線や、前述のコマンドエリア4を表す文字などは、赤外線を反射するインクで印刷されている。
【0015】
このため、電子ペン1は、確実に筆記用紙表面の位置マークを検出できる。
尚、電子ペンには、筆記用のインクが内臓されているが、このインクも、赤外線を吸収するインクを用いており、筆記した後においても、電子ペンによって、その位置を表す位置情報パターンを検出可能となっている。
【0016】
電子ペン1によって、筆記用紙3の表面に筆記が行われると、その筆記情報は、電子ペン1からパーソナルコンピュータ2に送信され、更にこのパーソナルコンピュータ2からアプリケーションサーバ5にその情報が送信される。
また、筆記用紙3のコマンドエリア4内でクリックなどの筆記動作を行い、このコマンドエリア4の位置情報が検出されると、電子ペン1からパーソナルコンピュータ2にその位置情報が送信され、更にこのパーソナルコンピュータ2からアプリケーションサーバ5にその情報が送信される。
アプリケーションサーバ5では、受信したコマンドエリアの位置情報に応じて、対応するアプリケーションソフトウエアが動作される。
【0017】
図2に電子ペン1の構成を示す概念図を示す。
電子ペン1は、通常のボールペンのインクが充填された芯部材10(リフィル)と、赤外線撮像装置11、赤外線発光LED12及び、前記赤外線撮像装置11で検出された位置情報パターン31から筆記軌跡を算出する演算装置13、メモリ14、無線通信装置15、バッテリ16、及び位置情報の読み取り動作のオン、オフを行うスイッチ17を内蔵している。
尚、キャップ19を電子ペン1にかぶせている場合にオフ状態となり、キャップ19を外すことでオン状態となる。
芯部材10は、電子ペン1の本体に、着脱可能に配置される。
したがって、黒色、赤色、緑色、或いは青色の芯部材等、実際にインクによって筆記したい色の芯部材を、電子ペン1に装着して利用できる。
また、芯部材10の挿入される部分の端部には、圧力センサ18が設けられている。
【0018】
筆記の際、筆記用紙3から得る筆記圧を圧力センサ18で検出すると、赤外線発光LED12と赤外線撮像装置11が60ヘルツ程度の周期で動作され、コンピュータで用いられるマウスのクリックやクリックドラックなどに対応した動作により、順次位置データが検出され、その検出された筆記軌跡データがメモリ14に記録される。
【0019】
この電子ペン1の芯部材10によって、筆記用紙3の表面に文字などが筆記されると、赤外線撮像装置11によって、筆記用紙3の表面に形成された位置情報パターン31が連続的に読み取られる。
この場合、筆記軌跡によって、文字認識を行うことも可能であり、また位置情報に応じた種々の制御が可能となる。
例えば、所定の筆記軌跡が読み取られたら、プリンタを動作させるとか、翻訳ソフトウエアを駆動して、筆記データを翻訳するなどの動作を行わせることができる。
【0020】
これらの、文字認識ソフトや、翻訳ソフト、或いは計算処理ソフト、画像処理ソフトといったアプリケーションソフトウエアは、アプリケーションサーバ5に収納されている。
従って、本電子ペンには、アプリケーションソフトウエアをインストールする必要はない。
このため電子ペンは構成が簡略化され、低コストでの提供が可能となる。
また、アプリケーションサーバ5上の最新のアプリケーションソフトウエアを利用することができる。
【0021】
図3に、筆記用紙3のコマンドエリア4付近の概要を示す概念図を示す。
筆記面には、図示しない位置情報パターン31が、筆記用紙全面に印刷されている。そして、この位置情報パターン31の印刷された表面には、筆記エリアを表す枠線32及び、筆記を容易にするための罫線33が設けられている。
この筆記用紙3の上部に、コマンドエリア4が設けられている。
そして、そのコマンドエリア4には、例えば、アポイント、ミーティング、イベント、ToDoといったボタンが印刷されている。
また、その下に1日の時刻を表すタイムラインが印刷されている。
更に、その左下には交通費、本、ミーティング、キーワード、忘備録というボタンが印刷されている。
【0022】
図に示すように、ミーティングというコマンドエリア4にチェックマークを筆記し、またタイムラインの9から12に線を筆記すると、その筆記データ、及びコマンドエリア4の位置情報が、パーソナルコンピュータ2を介してアプリケーションサーバ5に送信される。
この場合、スケジュールソフトウエアが動作し、9時から12時まで会議を行う旨のスケジュールが登録される。
【0023】
また、交通費ボタンを電子ペン1でクリックし、「矢野口 矢印 神谷町 150円」と筆記した部分を、囲むように筆記すると、この交通費コマンドエリアの位置情報と、囲まれた筆記部分が、電子ペン1から、パーソナルコンピュータ2を介してアプリケーションサーバ5に送信される。
この場合、最初に文字認識ソフトが動作し、「矢野口、神谷町、150円」が認識される。 続いて、表計算ソフトウエアが動作し、交通費を記録した表計算ファイルに、認識されたデータが記録される。
【0024】
また、本ボタンを電子ペン1でクリックし、「歌うクジラ」と筆記した部分を囲むように筆記すると、この本コマンドエリアの位置情報と、囲まれた筆記部分が、電子ペン1から、パーソナルコンピュータ2を介してアプリケーションサーバ5に送信される。
この場合、最初に文字認識ソフトが動作し、「歌うクジラ」が認識される。続いて、パーソナルコンピュータ2のウェブブラウザを起動し、「歌うクジラ」の書評が検索され、検索結果がパーソナルコンピュータ2のウェブブラウザ上に表示される。
【0025】
また、ミーティングボタンを電子ペン1でクリックし、「次回ミーティングは17日 本社」と筆記した部分を囲むように筆記すると、このミーティングコマンドエリアの位置情報と、囲まれた筆記部分が、電子ペン1から、パーソナルコンピュータ2を介してアプリケーションサーバ5に送信される。
この場合、最初に文字認識ソフトが動作し、「次回ミーティングは17日 本社」が認識される。続いてカレンダーソフトウエアが動作し、カレンダーの予定表に登録される。
【0026】
また、キーワードボタンを電子ペン1でクリックし、「産総研 450℃低温発電」と筆記した部分を囲むように筆記すると、このキーワードコマンドエリアの位置情報と、囲まれた筆記部分が、電子ペン1から、パーソナルコンピュータ2を介してアプリケーションサーバ5に送信される。
この場合、最初に文字認識ソフトが動作し、「産総研 450℃低温発電」が認識される。続いて、パーソナルコンピュータ2のウェブブラウザを起動し、インターネット上で検索がされ、検索結果がパーソナルコンピュータ2のウェブブラウザ上に表示される。
【0027】
筆記用紙3は、束ねられてノートを構成している。
このノートのそれぞれのページを構成する筆記用紙は、それぞれ異なる位置情報パターンが印刷されている。
このため、それぞれのページは、別の用紙として認識される。
しかしながら、別のノートを利用する場合、ノートの区別が付かない。
このため、筆記データの保存の際、ノートの区別がないと、筆記データが上書き保存されてしまう。
これに対し、ノート別に、ノートの識別番号を付するのも煩雑であり、コストも高くつく。
【0028】
このため、本実施例では、位置情報パターンが印刷されたシールを用意し、シールをノートの識別番号としている。別のノートを利用する場合、このシールを貼り、電子ペン1で、このシールをクリックすることで、ノートの区別を可能としている。
【0029】
図4に、第2の実施例を示す。
このシステムにおいては、既存のクラウドサービスの利用を可能としている。
電子ペンシステムとしては実施例1と基本的な構成は同じであるが、本実施例におけるアプリケーションサーバ5は、筆記記録データを、必要に応じて、外部の種々のサービスを提供する外部クラウドサービスサーバ7に送信し、また更新、削除などの管理を行う。
また、本実施例における電子ペン1は、パーソナルコンピュータ2に代えて、携帯電話6を介してアプリケーションサーバ5と通信接続している。
【0030】
本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、例えば、電子ペン1は、パーソナルコンピュータ2、携帯電話6以外のその他の携帯情報端末を介してアプリケーションサーバ5と通信接続してもよい。
また、電子ペン1内にメモリ14を設けることなく、読み取った筆記記録データを、直接送信するストリーミングペンとしてもよい。
【0031】
筆記用紙は、単に束ねるのではなく、横にバインダー用の孔を設け、システム手帳のリフィルとしてもよい。
更に、縦の罫線を付加してもよく、或いは罫線や枠線は設けなくてもよい。
コマンドエリア4の位置も、上記一実施例に限定されるものではなく、用紙下部、或いは左右の側面部に設けてもよい。
【0032】
また、コマンドエリア4のコマンドも、上記一実施例に限定されない。
例えば、翻訳機能、画像認識整形機能、健康管理機能、などを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によって、ノートや手帳の利便性が向上する。
また、電子ペンの利用者に、常に最新のアプリケーションソフトウエアを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0034】
1:電子ペン
2:パーソナルコンピュータ(情報機器)
3:筆記用紙
4:コマンドエリア
5:アプリケーションサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報パターンが表面に設けられた筆記用紙と、この筆記用紙に設けられたコマンドエリアと、前記筆記用紙の表面に筆記動作することで、前記位置情報パターンを読み取り、筆記情報を記録すると共に、コマンドエリアへの筆記に応じた機能を動作させる電子ペンと、電子ペンと無線接続される情報機器と、この情報機器と接続されるアプリケーションサーバで構成される電子ペンシステムであって、前記コマンドエリアの位置情報を前記電子ペンによって検出し、これに応じた前記アプリケーションサーバのアプリケーションソフトウエアを動作させることを特徴とする電子ペンシステム。
【請求項2】
前記コマンドエリアを前記電子ペンでクリックし、前記筆記用紙上の筆記を囲むように筆記することによって、この囲まれた筆記毎に、前記コマンドエリアに対応した、前記アプリケーションサーバのアプリケーションソフトウエアを動作させることを特徴とする請求項1記載の電子ペンシステム。
【請求項3】
前記筆記用紙には、1日のタイムラインを表す図表が印刷されており、この図表の上に前記電子ペンで筆記動作を行うことによって、前記アプリケーションサーバの時間の設定に関するアプリケーションソフトウエアが動作することを特徴とする請求項1記載の電子ペンシステム。
【請求項4】
前記アプリケーションサーバは、外部クラウドサービスサーバに、前記電子ペンにより筆記されたデータを送信し、管理することを特徴とする請求項1記載の電子ペンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−168910(P2012−168910A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45670(P2011−45670)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(301032735)プラス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】