説明

電子マネー決済システムおよび決済端末ならびに記憶媒体

【課題】カード載置部を設けることなくかざし面の平面性を保ち、このかざし面に対して記憶媒体のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持して良好な非接触通信を可能にする。
【解決手段】電子マネーを格納し、表面もしくは内部に磁性体14が付与された記憶媒体10と通信を行う決済端末20であって、通信を行うにあたり、記憶媒体がかざされる平面状のかざし面を備え、かざし面には、記憶媒体と通信を行うのに必要な磁界とは別の磁界を発生する磁界発生部27を備え、記憶媒体がかざし面にかざされると、別の磁界により磁性体を引きつけ、記憶媒体をかざし面に密着させ、固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカード等の記憶媒体に格納された電子マネーを使用し、決済端末との間で通信によって電子決済を行う、電子マネー決済システムおよび決済端末ならびに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードや携帯端末に内蔵された非接触ICチップ等の記憶媒体に記憶された電子マネーを使用した電子決済が普及し、最近では、これら記憶媒体に電子マネーを格納(チャージ)する、所謂、入金機能を備えた電子マネー決済システムが出現している。この電子マネー決済システムにおいて、例えば、非接触ICカードへの入金処理中、非接触ICカードが入金機から外れた場合に通信が途中で途切れ、非接触ICカードに電子マネーが入金されない状態、あるいは、非接触ICカードへの入金処理が完了しても入金機側で非接触ICカードからの入金応答を受信できない状態(以下、これら状態を総称して入金処理未了状態という)が発生することがある。
【0003】
この状態が発生した場合、従来の電子マネー決済システムでは、入金機側で利用者が投入した貨幣を収容し、利用者に貨幣を返却しないようにしている。したがって、入金できていない状態が発生した場合は、利用者が、カスタマーセンターあるいは最寄りのカウンタ等へ連絡を入れ、現金、あるいはクーポーンを返却してもらうといった非常に煩雑な処理対応が行なわれていた。このため、非接触ICカードを機内に取り込み、あるいは入金機が内蔵するリーダライタのアンテナ上に非接触ICカードを載せる専用の載置部を設けた入金機が提案されている。
【0004】
上記した電子マネーの普及に伴い、自動販売機等の無人機にも電子マネーの入金機能を備えたいといったニーズがある。電子マネーによる商品販売が可能な自動販売機では、その前面から突出した、電子マネーを格納した非接触ICカードと通信するためのアンテナ内蔵のかざし面(非接触式カードリーダライタ)を備えた決済端末が取り付けられる(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】意匠登録第1378837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したかざし面は、凹凸の無い平面形状とするのが一般的である。自動販売機が電子マネーの入金機能を備えた場合、利用者は、電子マネーを格納した非接触ICカードを一定期間だけかざし面にかざした状態を維持する必要がある。このため、入金処理中に非接触ICカードがかざし面から外れると、入金した金額がICカードに格納されない入金処理未了状態が多発する恐れがある。
【0007】
また、利用者は、かざし状態を維持する期間が商品購入時にかざす時間よりも長く感じるため不便さを感じる。すなわち、利用者は、非接触ICカードをかざし面に最初にかざした位置を保つことが必要と考え、かざし面に対する非接触ICカードの位置をずらさないように気をつかう。本来、商品購入時における電子マネーの引き落とし処理にかかる時間と入金時の入金処理にかかる時間は同じであるが、利用者側ではその操作に意識の違いが現れ、入金時には貨幣投入前からかざし、あるいは、音や表示で示される入金完了の合図が終了してもかざした状態を継続することがある。この問題を解決するために、かざし面の下側にリブ形状のカード載置部を設けることが考えられる。
【0008】
しかしながらこの場合、非接触ICカードは、カード載置部に置かれただけの状態であるため、利用者が非接触ICカードを手離したときに落下してしまう等、不安定な状態にある。また、カード載置部を設けることは、かざし面の下部が自動販売機前部から突出することになるため意匠上の問題の他に、カード載置部に塵埃が積もり、あるいは雨水等が溜まることによって非接触ICカードを汚し、或いは傷つけたりすることがある。
【0009】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、カード載置部を設けることなくかざし面の平面性を保ち、このかざし面に対して非接触ICカード等記憶媒体のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持して良好な非接触通信を可能にする、電子マネー決済システムおよび決済端末ならびに記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために本発明は、電子マネーを格納し、表面もしくは内部に磁性体が付与された記憶媒体と、この記憶媒体に格納された電子マネーを使用し、通信により電子決済を行う決済端末と、からなる電子マネー決済システムであって、前記決済端末は、前記通信を行うにあたり前記記憶媒体がかざされる平面状のかざし面を備え、前記かざし面は、前記記憶媒体と前記通信を行うのに必要な磁界とは別の磁界を発する磁界発生部を有し、前記磁界発生部は、前記記憶媒体が前記かざし面にかざされると、前記別の磁界により前記磁性体を引きつけ、前記記憶媒体を前記かざし面に密着させることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、決済端末により、記憶媒体がかざし面にかざされると、磁界発生部により発せられる磁界により、記憶媒体に付与された磁性体を引きつけて記憶媒体をかざし面に密着させ、固定することができる。このため、カード載置部を設けることなくかざし面の平面性を保ち、このかざし面に対して記憶媒体のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持して良好な非接触通信を可能にした電子マネー決済システムを提供することができる。
【0012】
本発明において、前記磁界発生部は、電磁石で構成されることを特徴とする。本発明によれば、電磁石で構成された磁界発生部により発せられる磁界により、記憶媒体に付与された磁性体を引きつけて記憶媒体をかざし面に密着させ、固定することができる。また、磁界発生部を電磁石で構成することで、磁界発生および磁界遮断のタイミングを制御することができ、例えば、記憶媒体がかざし面にかざされたことを契機に磁界を発生させ、外されたときに磁界を遮断することにより記憶媒体の落下を防ぐことができる。
【0013】
本発明において、前記磁界発生部は、前記かざし面が前記記憶媒体を検出してから入金処理が完了するまでの間、前記別の磁界を発生することを特徴とする。本発明によれば、磁界発生部の磁界発生および消去を制御することで通信に必要な磁界(電磁波)への干渉を低減することができる。また、また、入金処理終了後、徐々にあるいは一定の強度まで磁力を弱める等の柔軟な制御が可能であり、このことにより利用者に利便性を提供することができる。
【0014】
本発明において、前記磁界発生部は、永久磁石で構成されることを特徴とする。本発明によれば、永久磁石で構成される磁界発生部により発せられる磁界により、記憶媒体に付与された磁性体を引きつけて記憶媒体をかざし面に密着させ、固定することができる。
【0015】
本発明において、前記磁性体は、前記記憶媒体の表面に貼付可能なシート状の磁性材料で形成されることを特徴とする。本発明によれば、既成の記憶媒体に簡単な実装形態で磁性体を付与することができる。
【0016】
上記した課題を解決するために本発明は、電子マネーを格納し、表面もしくは内部に磁性体が付与された記憶媒体と通信を行う決済端末であって、前記通信を行うにあたり、前記記憶媒体がかざされる平面状のかざし面を備え、前記かざし面には、前記非接触ICカードと前記通信を行うのに必要な磁界とは別の磁界を発生する磁界発生部を備え、前記非接触ICカードが前記かざし面にかざされると、前記別の磁界により前記磁性体を引きつけ、前記非接触ICカードを前記かざし面に密着させることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、記憶媒体がかざし面にかざされると、決済端末の磁界発生部により発せられる磁界により、記憶媒体に付与された磁性体を引きつけて記憶媒体をかざし面に密着させ、固定することができる。このため、カード載置部を設けることなくかざし面の平面性を保ち、このかざし面に対して記憶媒体のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持して良好な非接触通信を可能にした決済端末を提供することができる。
【0018】
本発明において、前記磁界発生部は、前記かざし面の略中央に位置するかざしマークの近傍に設けられることを特徴とする。本発明によれば、記憶媒体のかざし位置を特定できるため利用者に利便性を提供することが出来る。
【0019】
本発明において、前記磁界発生部は、前記かざし面の略中央に位置するかざしマークを中心に等距離にある周辺近傍に複数設けられることを特徴とする。本発明によれば、かざしマークを中心に、例えば、その周辺近傍の正三角形の位置に3つの磁界発生部を配置することで、通信に必要な磁界(電磁波)との干渉を防ぐことが出来、かつ、かざし面に対し、記憶媒体が、縦、横、あるいは斜め方向に載置された場合でも、記憶媒体のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持することができ、その結果、記憶媒体は決済端末との間で良好な非接触通信を可能にすることができる。
【0020】
上記した課題を解決するために本発明は、電子マネーを記憶し、前記記憶した電子マネーを使用して通信により決済端末との間で電子決済を行う記憶媒体であって、表面もしくは内部に磁性体を有し、前記通信を行うのに必要な磁界とは別の磁界を発生する磁界発生部を平面状のかざし面に備えた前記決済端末にかざされると、前記磁性体が前記別の磁界によって前記かざし面に密着することを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、磁性体が付与された記憶媒体は、決済端末のかざし面にかざされると、決済端末の磁界発生部により発せられる磁界により引きつけられてかざし面に密着する。このため、決済端末側ではカード載置部を設けることなくかざし面の平面性を保ち、このかざし面に対して記憶媒体のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持することができ、その結果、記憶媒体は決済端末との間で良好な非接触通信を可能にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、カード載置部を設けることなくかざし面の平面性を保ち、このかざし面に対して非接触ICカード等記憶媒体のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持して良好な非接触通信を可能にする、電子マネー決済システムおよび決済端末ならびに記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子マネー決済システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る決済端末と記憶媒体への、磁界発生部および磁性体の実装形態を実施例1として示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る決済端末と記憶媒体への、磁界発生部および磁性体の実装形態を実施例2として示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る決済端末と記憶媒体への、磁界発生部および磁性体の実装形態を実施例3として示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る決済端末と記憶媒体への、磁界発生部および磁性体の実装形態を実施例4として示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る決済端末と記憶媒体への、磁界発生部および磁性体の実装形態を実施例5として示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電子マネー決済システムの正常動作時のシーケンス図(1)である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電子マネー決済システムの異常動作時のシーケンス図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る電子マネー決済システムの正常動作時のシーケンス図(2)である。
【図10】本発明の実施の形態に係る決済端末の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に本実施形態という)について詳細に説明する。
【0025】
(実施形態の構成)
まず、図1を参照しながら本実施形態に係る電子マネー決済システム1の構成について説明する。図1に示されるように、本実施形態に係る電子マネー決済システム1は、記憶媒体である非接触ICカード10と、決済端末20と、電子マネーの運用事業者により管理運営される管理サーバ30と、により構成される。決済端末20は、自動販売機等の上位機器50と非接触ICカード10とをインタフェースして、公知のLAN(Local Area Network)、インターネット、あるいは電話回線等の通信回線40経由で管理サーバ30に接続されている。
【0026】
非接触ICカード10は、固有の識別情報(ID)と電子マネー残高の他に、入金処理の履歴が記憶される記憶媒体であり、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、磁性体14とを含み構成される。
【0027】
通信部11は、後述する決済端末20のリーダライタ部23と近距離通信を行なうことにより入出金処理の履歴を含むデータの入出力を行ない、このデータは、制御部12へ出力される。制御部12は、非接触ICカード10の制御全般を司り、決済端末20との間で通信を行い、記憶部13の内容の読み出しや書込みを行う。また、決済端末20から出力される指令(コマンド)にしたがい、後述する非接触ICカード10の入出金処理による記憶部13への電子マネーの入出金や入出金履歴の更新等を行う。
【0028】
制御部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成され、非接触ICカード10と決済端末20が相互に通信相手であることを確認しあう認証も行なう。具体的に、非接触ICカード10は、決済端末20から、認証指令とともに決済端末20の自己の正当性を示す情報(暗号化されたID情報等)を受けとることにより認証を行う。非接触ICカード10は認証を行うと、決済端末20に非接触ICカード10の正当性を示す情報を送り、これを受けて決済端末20は、非接触ICカード10を認証する。非接触ICカード10は、決済端末20で認証が成立しないと、決済端末20からの指令に基づく入出金や決済処理を受け付けない。決済端末20も同様に、認証が成立しない非接触ICカード10からの決済を受け付けない。
【0029】
なお、記憶部13には、電子マネー残高を示す金額情報13a、非接触ICカード10固有のID(識別情報)13bの他に、入出金履歴13cが記憶される。
【0030】
決済端末20は、端末本体20aと、利用者により非接触ICカード10がかざされるかざし面を有するフロントパネル部20bとから構成される。端末本体20aは、制御部21と、記憶部22と、リーダライタ部23と、通信部24とを含み、フロントパネル部20bは、操作部25、表示部26、磁界発生部27、アンテナ部28を含み構成されている。なお、かざし面についは後述する。
【0031】
制御部21は、上位機器50が有する制御部500から処理指示を受信することにより、非接触ICカード10のかざし待ちを行い、利用者により非接触ICカード10がフロントパネル部29bのかざし面にかざされることで入出金処理を実行し、上位機器50にその旨の処理応答を行う。なお、ここでいう入出金処理とは、商品購入時に、非接触ICカード10の記憶部13に書き込まれている金額情報13aから相当額の電子マネーを引き落とし、入金時に、入金された貨幣相当金額を電子マネー残高に充当するために記憶部13の金額情報13aを更新する処理をいう。このとき、自身が持つ記憶部22の電子マネー残高情報も更新して同期をとるための処理も行なう。
【0032】
記憶部22には、入出金処理履歴が所定の領域に割り当てられ記憶される。記憶部22として、例えば、不揮発性の記憶デバイス(不揮発性半導体メモリ、ハードディスク等)やランダムアクセス可能な記憶デバイス(例えばSRAM、DRAM)等が実装される。
【0033】
リーダライタ部23は、利用者によりかざし面のアンテナ部28上に非接触ICカード10がかざされることにより、非接触ICカード10との間で電子マネーを交換するための近距離無線通信を行う。リーダライタ部23は、アンテナ部28経由でキャリアを送信しており、電磁誘導によって非接触ICカード10に電力を供給する。このようにして電力を得た非接触ICカード10とリーダライタ部23との間で、キャリアを変復調することによって通信を可能にしている。通信部24は、通信回線40を通じて外部の管理サーバ30との間で所定のプロトコルにしたがう通信を行なう。
【0034】
なお、管理サーバ30は、電子マネーの流通状態を管理するサーバであって、複数の決済端末20と通信回線40で接続されており、接続される複数の決済端末20を統括して管理している。この管理サーバ30は、各決済端末20から電子マネーの入金処理に係る情報を収集して入金したICカード情報や入金金額等の管理を行う。
【0035】
操作部25は、利用者からの入出金の指示を受け付ける押釦を含み、この押釦が利用者により押下された場合に、その内容に対応する信号を発生し、これを利用者の指示として制御部21に出力する。表示部26は、多数の画素(複数色の発光素子の組み合わせ)を縦横に配して構成される、例えばLCD(Liquid Crystal Display Device)デバイスを用いて構成され、ここに表示されるデータは、例えば入金金額等である。表示部26は、更に、商品を購入する際に点灯または点滅して利用者を非接触ICカード10のかざし面に誘導するLED(Light Emitted Diode)も含む。
【0036】
磁界発生部27は、アンテナ部28を介して発せられる非接触ICカード10と通信を行うのに必要な磁界とは別の磁界を発生する、例えば、電磁石や永久磁石で構成され、この磁界発生部27は、磁界を発生することで非接触ICカード10に貼付された磁性体14を引きつけ、非接触ICカード10をかざし面200に密着させ、固定する。以下に、決済端末20における磁界発生部27の実装形態と、非接触ICカード10が有する磁性体14の実装形態について5つの実施例を示し、そのそれぞれについて図2〜図6を参照して詳細に説明する。
【0037】
実施例1.
図2に示されるように、決済端末20のフロントパネル部20bには、3個の凹部25a、25b、25cが左右方向に並んで設けられており、この3個の凹部5a、25b、25c内に、図1に示す操作部25として示す押釦がそれぞれ設けられている。そして、この3個の押釦の設定は自由に変更可能であり、例えば、1個の押釦で複数の電子マネーから1種類を選択するように設定し、あるいは3個の押釦のそれぞれに1つの電子マネーを割り当て、電子マネーの種類を直接選択するように設定した、ポイント追加等のサービスを選択する釦および決定する釦に設定することができる。
【0038】
また、凹部25a、25b、25c内の押釦の上方のスペースには、各押釦の機能を説明するシールを貼り付けることが可能であり、凹部内にシールを貼り付けることによりシールを剥がされ難くすることができる。さらに、凹部の深さは、押釦が凹部5a、25b、25cから外側に出ない寸法に設定されている。これにより、使用者が非接触ICカード10や携帯機器を、フロントパネル部20bの略中央下に配置されるかざし面200に密着させた際に、押釦を不用意に押してしまうのを防止することができる。
【0039】
また、上記した3個の凹部の上方にLCD26aが設けられており、このLCD26aには、操作案内や選択中の電子マネーの名称や使用者が所有する電子マネーの残高等の様々な情報が表示される。また、かざし面200の周辺に4個のLED26b〜26eが略放射状に設けられており、この4個のLED26a〜26eは、商品を購入する際に点灯又は点滅し、使用者を非接触ICカード10のかざし面200に誘導する。また、かざし面200の右下には状態表示ランプ26fが設けられており、この状態表示ランプ26fは、発光する色の種類を変えてこれらを点灯又は点滅することで、使用者や管理者に対して稼動状態を知らせる。上記したLCD26a、LED26b〜26e、および状態表示ランプ26fは、図1に共に表示部26として示されている。
【0040】
かざし面200には、その表面もしくは内部に、リーダライタ部23およびアンテナ部28を介して非接触ICカード10の通信部11と通信を行うのに必要な磁界(電磁気)とは別の磁界を発する、磁界発生部27として永久磁石27a,27bを実装している。この永久磁石27a,27bは、アンテナ部28を挟んで配置され、ここで発生する磁界により、非接触ICカード10を引きつけ、非接触ICカード10をかざし面200に密着させ、固定する。このため、非接触ICカード10には、利用者によりかざし面200にかざされたとき、かざし面200の表面もしくは内部に実装された永久磁石27a,27bのそれぞれに対向する位置に磁性体シート14a,14bが貼付されている。
【0041】
実施例2.
次に説明する実施例2において、実施例1との差異は、かざし面200の表面もしくは内部に実装される磁界発生部27が永久磁石に代わって電磁石で構成されたことにある。他の構成は実施例1と同様である。図3に示されるように、電磁石(フェライトコア27c,27d)は、図2に示す永久磁石27a,27bと同様、アンテナ部28を挟んで配置され、ここで発生される磁界により、非接触ICカード10を引きつけ、非接触ICカード10をかざし面200に密着させることにより入出金処理が終了するまでの間固定する。このため、非接触ICカード10には、利用者によりかざし面200にかざされたとき、かざし面200に実装されたフェライトコア27c,27dのそれぞれに対向する位置に磁性体シート14a,14bが貼付されている。
【0042】
なお、磁界発生部27として電磁石を用いることで、端末本体20aの制御部21は、磁界発生および磁界遮断のタイミングを制御することができ、後述するように、例えば、非接触ICカード10がかざし面200にかざされたことを契機に磁界を発生させ、外されたときに磁界を遮断して非接触ICカード10の入出金処理中の落下を防ぎ、また、入出金処理終了後、徐々にあるいは一定の強度まで磁力を弱める等の柔軟な制御により利用者に利便性を提供できる。
【0043】
実施例3.
次に説明する実施例3において、実施例2との差異は、図4に示されるように、磁界発生部27として実装される電磁石(フェライトコア27e)を、かざし面200の略中央に位置するアンテナ部28が実装された位置と重複する位置(アンテナ部28の上)に1個のみ実装したことにある。このため、非接触ICカード10についても、当該非接触ICカード10をかざし面200にかざしたときに対向する位置に1個のみの磁性体シート14cが貼付される。なお、出願人の評価によれば、アンテナ部28の上にフェライトコア27eを実装しても、リーダライタ部23からアンテナ部28を介して発せられる電磁波による通信に影響のないことが確認された。
【0044】
実施例4.
次に説明する実施例4において、実施例3との差異は、図5に示されるように、磁界発生部27として、かざし面200の略中央に位置するかざしマークを中心に等距離にある周辺近傍に複数設けたことにある。ここでは、アンテナ部28が実装されるかざしマーク位置を中心に、その周辺近傍の正三角形の位置に3つのフェライトコア27f,27g.27hを配置した。このため、非接触ICカード10には、この非接触ICカード10をかざし面200にかざしたときに、フライトコア27f,27g.27hの実装位置に対向する位置に配置されるようにループ形状の磁性体シート14dを貼付した。
【0045】
なお、磁性体シート14dをループ形状にした場合、リーダライタ部23からアンテナ部28を介して発せられる電磁波によって渦電流が発生し、電磁波を遮って通信に悪影響を及ぼすため任意の位置に切り込みを入れた磁性体シート14dとした。このように構成することで、通信に必要な磁界(電磁波)との干渉を防ぐことが出来、かつ、かざし面200に対して非接触ICカード10が、縦、横、あるいは斜め方向にかざされた場合でも、非接触ICカード10のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持することができ、その結果、非接触ICカード10と決済端末20との間で良好な非接触通信を行うことができる。
【0046】
実施例5.
次に説明する実施例5において、実施例3との差異は、図6に示されるように、磁界発生部27として実装される電磁石(フェライトコア27i)を、かざし面200の略中央に位置するアンテナ部28が実装された位置から縦または横の任意の方向に所定の間隔をおいて1個のみ実装したことにある。このため、非接触ICカード10についても、当該非接触ICカード10をかざし面200にかざしたときに対向する位置に1個のみの磁性体シート14eが貼付される。なお、フェライトコア27iの実装位置は、図6に示すようにアンテナ部28の左方向に制限されず、左右上下のいずれでも構わない。出願人の評価によれば、アンテナ部28の近傍にかざし面200をはみ出ない範囲で所定の間隔をおいてフェライトコア27iを実装しても、リーダライタ部23からアンテナ部28を介して発せられる電磁波による通信に影響のないことが確認された。
【0047】
(実施形態の動作)
以下、図7〜図9のシーケンス図を参照しながら、本実施形態に係る電子マネー決済システム1の動作について詳細に説明する。図7〜図9では、いずれも、上位機器50、決済装置20(かざし面200)、非接触ICカード10間の情報の流れが示されている。ここでは、決済端末20のフロントパネル部20bのかざし面200には、磁界発生部27として、実施例2,3,4,5に示されるように電磁石が実装されているものとして説明する。
【0048】
まず、図7のシーケンス図を参照しながら正常動作時の動作シーケンス(1)から説明する。図7では、上位機器50は、まず、制御部500が決済端末20に対して処理指示を発行する(ステップS101)。処理指示を受けた決済端末20は、非接触ICカード10のかざし待ちを行なう待機モードに入り(ステップS102)、LED(表示部26)に対して発光命令を出力する(ステップS103)。これにより、例えば、LED27b〜27eを点滅させることで、利用者による非接触ICカード10のかざし面200へのかざし操作を誘導し、また、LED27fを、例えば緑色に点灯させることで利用者に非接触ICカード10のかざし待ちを行っている処理状態を通知することができる。
【0049】
ここで、利用者により非接触ICカード10がフロントパネル部20bのかざし面200にかざされると、決済端末20は、リーダライタ部23/アンテナ部28を介し、通信により非接触ICカード10に検出命令を発行する(ステップS104)。これを受け、非接触ICカード10は、決済端末20に対し、自身のID、および金額情報等の検出応答を行う(ステップS105)。
【0050】
続いて、検出応答を受信した決済端末20は、かざし面200に実装された電磁石(磁界発生部27)に対して通電命令を発行する(ステップS106)。これを受けて電磁石は、アンテナ部28を介して放射される電磁波とは別の磁界を発生し(ステップS107)、非接触ICカード10の磁性体シート14a,14b(14c,14d,14e)を引きつけ、非接触ICカード10をかざし面200に密着させて固定する。このとき、決済端末20は、LED(表示部26)に対して発光命令を出力し(ステップS108)、例えば、LED26fを赤色(処理中)に点灯させ、利用者に処理モードに入ったことを通知する。
【0051】
次に、決済端末20は、入出金処理を実行すると共に(ステップS109)。非接触ICカード10に対し、通信による処理命令を発行して入出金処理を促す(ステップS110)。非接触ICカード10は、商品購入時には、記憶部13に書き込まれている金額情報13aから相当額の電子マネーを引き落とし、入金時には、入金された貨幣相当金額を電子マネー残高に充当するために記憶部13の金額情報13aを更新した後、正常終了した旨の処理応答を行う(ステップS111)。これを受けて決済端末20は、自身が持つ記憶部22の電子マネー残高情報も更新して同期をとるための処理を行なう。
【0052】
正常終了応答を受信した決済端末20は、LED(表示部26)に対して発光命令を出力し(ステップS112)、例えば、LED26fを黄色(処理終了)に点灯させる。続いて、不図示の音声応答装置により音声による出力命令を発行し(ステップS113)、入金処理が終了した旨の音声応答を行う。そして、上位機器50の制御部500に対して処理応答を行う(ステップS114)。
【0053】
次に、決済端末20は、リーダライタ部23/アンテナ部28を介し、通信により非接触ICカード10に対して検出命令を発行する(ステップS115)。これを受けて非接触ICカード10は、決済端末20に対して検出応答を返すが(ステップS116)、このとき未だ非接触ICカード10が外されていない場合は不図示の音声応答装置に対して停止命令を発行し(ステップS117)、音声により、利用者にかざし操作をやめるように非接触ICカード10をかざし面200から外すことを促すメッセージを出力する。続いて、LED(表示部26)に対して消灯命令を出力し(ステップS118)、これを受け、LED26b〜26fは消灯する。
【0054】
続いて、決済端末20は、非接触ICカード10に検出命令を発行し(ステップS119)、アンテナ部28経由で検出応答を得(ステップS120)、非接触ICカード10がかざし面200から外されたことが検出されると、電磁石(磁界発生部27)に対して磁界の遮断命令を出力する(ステップS121)。電磁石は、この遮断命令により磁界発生を停止する。なお、決済端末20からかざし面200(LED(表示部26)、音声、電磁石(磁界発生部27))に対して出力される命令は並列処理により実行されるため、上記のシーケンスは必須ではなく、前後してもよい。
【0055】
次に、図8のフローチャートを参照しながら異常時の動作シーケンスについて説明する。ここで、異常時とは、入出金処理実行中に、非接触ICカード10がかざし面200から外れることにより、処理が中断し、あるいは入金処理未了状態が発生した場合をいう。以下、図7に示す正常時のシーケンスとの差異に着目して説明を行う。
【0056】
具体的に、非接触ICカード10と決済端末20との間で入金処理実行中に、決済端末20で非接触ICカード10が検知されていない旨の処理応答があると(ステップS211)、決済端末20は、LED(表示部26)に処理中断を示す発光命令を出力する(ステップS212)。続いて、不図示の音声応答装置に処理中断を示す出力命令を発行し(ステップS213)、例えば、スピーカから「非接触ICカードを再度かざしてください」といったメッセージが出力される。同時に、電磁石(磁界発生部27)に対して遮断命令を出力し(ステップS214)、これを受けた電磁石は、磁界発生を停止する。
【0057】
次に、決済端末20は、リーダライタ部23/アンテナ部28を介し、非接触ICカード10に対して検出命令を発行するが(ステップS215)、先のメッセージにしたがい利用者により非接触ICカード10が再度かざし面200にかざされると、その検出応答を得(ステップS216)、電磁石(磁界発生部27)に対して通電命令を出力する(ステップS217)。これを受けた電磁石は、アンテナ部28を介して放射される電磁波とは別の磁界を発生し(ステップS218)、非接触ICカード10の磁性体シート14a,14b(14c,14d,14e)を引きつけ、非接触ICカード10をかざし面200に密着させ、固定する。
【0058】
以降、決済端末20は、非接触ICカード10との間で入出金処理を実行し(ステップS221)、処理終了後、音声により非接触ICカード10をかざし面200から外してかざし操作をやめることを促すメッセージを出力し、最後にLED(表示部26)を消灯する(ステップS231)。なお、図8において、ステップS201〜S210に至る一連の処理は、図7に示すステップS101〜S10で示すシーケンスと同様であり、また、ステップS222〜S230に至る一連の処理は、図7に、ステップS111〜S121で示すシーケンスと同様であるため、共に重複を回避する意味で説明を省略してある。なお、決済端末20からかざし面200(LED(表示部26)、音声、電磁石(磁界発生部27))に対して出力される命令は並列処理により実行されるため、上記のシーケンスは必須ではなく、前後してもよい。
【0059】
次に、図9のシーケンス図を参照しながら、正常動作時のシーケンス(2)について説明する。図9に示すシーケンス図は、図7に示す正常動作時のシーケンス(1)に、入出金処理終了後、電磁石(磁界発生部27)により発せられる磁界を、徐々に、あるいは一定の強度まで磁力を弱める処理を追加することによって利用者に利便性を提供するものである。
【0060】
ここでは、図7に示す待機モードにおける処理(ステップS101〜S108)が省略されており、入出金処理以降の動作のみが示されている。図9において、決済端末20は、入出金処理を実行すると共に(ステップS301)、非接触ICカード10に対し、通信により処理命令を発行して入出金処理を促す(ステップS302)。これを受けて非接触ICカード10は、正常終了した旨の処理応答を行う(ステップS303)。正常終了の応答を受信した決済端末20は、LED(表示部26)に対して発光命令を出力し(ステップS304)、LED26fを黄色(処理終了)に点灯させる。続いて、不図示の音声応答装置により音声による出力命令を発行し(ステップS305)、入金処理が終了した旨の音声応答を行う。
【0061】
続いて、決済端末20は、電磁石(磁界発生部27)に対し、電力低下命令を出力し(ステップS306)、電磁石は、アンテナ部28を介して放射される電磁波とは別の磁界を発生するが、このとき電力低下命令にしたがい、磁界を、徐々に、あるいは一定の強度まで弱める(ステップS307)。このため、非接触ICカード10の磁性体シート14a,14b(14c,14d,14e)を引きつけ、非接触ICカード10をかざし面200に密着させる力は、徐々に弱まり、あるいは、入出金処理中より弱まる。このことにより、非接触ICカード10は、入出金処理終了後すぐには離れないため、利用者に利便性を提供することができる。
【0062】
そして、上位機器50の制御部500に対して処理応答を行なう(ステップS308)。以降の処理(ステップS309〜S315)は、図7に示す正常時の動作シーケンス(ステップS115〜S121)と同様であるため、重複を回避する意味で説明を省略する。なお、決済端末20からかざし面200(LED(表示部26)、音声、電磁石(磁界発生部27))に対して出力される命令は並列処理により実行されるため、上記のシーケンスは必須ではなく、前後してもよい。
【0063】
次に、図10のフローチャートを参照しながら本実施形態に係る決済端末20の動作について詳細に説明する。
【0064】
図10において、決済端末20の制御部21は、上位機器50の制御部500から処理指示を受信すると非接触ICカード10の検出処理を実行する(ステップS401)。ここで、非接触ICカード10からIDや金額情報等の処理応答があて非接触ICカード10がフロントパネル部20bのかざし面200にかざされたことが検出されると(ステップS402“YES”)、制御部21は、更に、非接触ICカード10に磁性体14(磁性体シート14a〜14e)の組み込みの有無、すなわち、磁性体14が貼付されているか否かを判定する(ステップS403)。
【0065】
ここで、磁性体14(磁性体シート14a〜14e)が貼付されていることが確認されると(ステップS403“YES”)、制御部21は、磁界発生部27(フェライトコア27a〜27i)に通電命令を出力する(ステップS404)。なお、非接触ICカード10が検出されない場合は(ステップS402“NO”)、磁界発生部27(フェライトコア27a〜27i)に通電命令が出力されないため、電磁石による磁界の発生はない。続いて、制御部21は、入金された貨幣相当金額を電子マネー残高に充当するために非接触ICカード10の記憶部13の金額情報13aを更新し、合わせて自身が持つ記憶部22の電子マネー残高情報も更新して同期をとる、入出金処理を開始する(ステップS405)。
【0066】
続いて、制御部21は、非接触ICカード10が検出中か否かを判定し(ステップS406)、未だ非接触ICカード10が検出されていれば(ステップS406“YES”)、入出金処理を終了する(ステップS407)。そして、非接触ICカード10がかざし面200から外されることを待って(ステップS408“YES”)、磁界発生部27(フェライトコア27a〜27i)による磁界発生を遮断する(ステップS409)
【0067】
なお、ステップS406の非接触ICカード検出中判定処理で、非接触ICカード10が検出されなければ(ステップS406“NO”)、制御部21は、磁界発生部27(フェライトコア27a〜27i)に対する通電命令を停止して磁界発生部27(27a〜27i)による磁界発生を遮断する(ステップS410)。このように、非接触ICカード10がかざし面200から外されたら電磁石27(27a〜27i)による無用な磁界発生を防止して、リーダライタ部23により発せられる非接触ICカード10との通信のための電磁波との干渉を回避している。
【0068】
続いて制御部21は、非接触ICカード検出処理を実行し(ステップS411)、非接触ICカード10が検出されるのを待って(ステップS412“YES)”、磁界発生部27(フェライトコア27a〜27i)に通電命令を出力して通電を行なう。そして、上記した入出金処理を継続して(ステップS414)、ステップS406の非接触ICカード検出処理に戻る。なお、制御部21は、ステップS407の入金処理後、図9のシーケンス図に示したように、徐々に、または、一定強度まで磁界発生部27(フェライトコア27a〜27i)による磁界発生強度を弱める処理を挿入してもよい。
【0069】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る電子マネー決済システム1によれば、決済端末20により、記憶媒体(非接触ICカード10)がかざし面200にかざされると、磁界発生部27により発せられる磁界により、記憶媒体に付与された磁性体14を引きつけて記憶媒体(非接触ICカード10)をかざし面200に密着させることができる。このため、カード載置部を設けることなくしてかざし面200の平面性を保ち、このかざし面200に対して記憶媒体(非接触ICカード10)のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持して良好な非接触通信が可能になる。
【0070】
また、本実施形態に係る電子マネー決済システム1によれば、磁界発生部27を永久磁石あるいは電磁石で構成でき、電磁石で構成した場合、磁界発生および磁界遮断のタイミングを制御することができ、例えば、記憶媒体がかざし面にかざされたことを契機に磁界を発生させ、外されたときに磁界を遮断することにより記憶媒体の落下を防ぐことができる。また、かざし面200が記憶媒体(非接触ICカード10)を検出してから入金処理が完了するまでの間、電磁石による磁界発生を継続し、この磁界発生および消去を制御することで通信に必要な磁界への干渉を低減することができる。また、入金処理終了後、徐々に、あるいは一定の強度まで磁力を弱める等の柔軟な制御が可能であり、このことにより利用者に利便性を提供することができる。
【0071】
本実施形態に係る決済端末20によれば、当該決済端末20により、記憶媒体(非接触ICカード10)がかざし面200にかざされると、磁界発生部27により発せられる磁界により、記憶媒体(非接触ICカード10)に付与された磁性体14を引きつけて記憶媒体(非接触ICカード10)をかざし面200に密着させることができる。このため、カード載置部を設けることなくしてかざし面の平面性を保ち、このかざし面に対して記憶媒体のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持して良好な非接触通信を可能にした決済端末20を提供することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る決済端末20によれば、磁界発生部27を、かざし面200の略中央に位置するかざしマークの近傍に設けることで、記憶媒体(非接触ICカード10)のかざし位置を特定できるため利用者に利便性を提供することが出来る。更に、磁界発生部27をかざし面200の略中央に位置するかざしマークを中心に等距離にある周辺近傍に複数設けることで、例えば、その周辺近傍の正三角形の位置に3つの磁界発生部27を配置することで、通信に必要な磁界(電磁波)との干渉を防ぐことが出来、かつ、かざし面200に対し、記憶媒体(非接触ICカード10)が、縦、横、あるいは斜め方向に載置された場合でも、記憶媒体(非接触ICカード10)のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持することができ、その結果、記憶媒体(非接触ICカード10)との間で良好な非接触通信を可能にすることができる。
【0073】
本実施形態に係る記憶媒体(非接触ICカード10)によれば、磁性体14が付与された記憶媒体(非接触ICカード10)は、決済端末20のかざし面200にかざされると、決済端末20の磁界発生部27により発せられる磁界により引きつけられてかざし面200に密着する。このため、決済端末20側ではカード載置部を設けることなくしてかざし面の平面性を保ち、このかざし面に対して記憶媒体(非接触ICカード10)のかざし位置がずれないようにかざし状態を維持することができ、その結果、記憶媒体(非接触ICカード10)は、決済端末20との間で良好な非接触通信を可能にすることができる。
【0074】
なお、本実施形態に係る記憶媒体として、非接触ICカード10のみ例示して説明したが、非接触ICカード10に制限されるものでなく、携帯機器に内蔵される近距離無線通信機能付きのメモリチップ、あるいはこの種記憶媒体であればいずれで代替してもよい。また、本実施形態に係る電子クネー決済システム1では、入金処理に特化して説明したが、入金処理に限らず、出金処理は勿論のこと、認証用途等、記憶媒体をかざす必要のある用途全てに適用が可能である。また、認証処理を行うのみならず、記憶媒体をかざしている間は認証が成立したものとし、外されたときに認証を不成立とする認証装置にも適用が可能である。
【0075】
また、本実施形態に係る決済端末20に、非接触ICカード10と共に磁気ストライプや携帯機器をかざしても、磁気ストライプや携帯機器への悪影響はほぼない。本実施形態に係る決済装置20のかざし面200に発生する磁力は、非接触ICカード10が決済装置20に引き寄せられ保持される程度の磁力であって、非接触ICカード10が決済装置20に引き寄せられていることを利用者が感じる程度の磁力で十分であり、また簡単に引き離せる磁力でよい。300ガウスを下回る程度の磁力で十分ということであれば、低保磁力の磁気ストライプには影響を及ぼさない。さらに、磁力の発生は非接触ICカード10をかざした場合で、かつ入出金処理時等、限られた場合にのみ限定しているため、磁気ストライプへ与える影響は極めて限定的であると考えられる。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0077】
1・・電子マネー決済システム、10・・記憶媒体(非接触ICカード)、11・・通信部、12・・制御部(非接触ICカード)、13・・記憶部、13a・・金額情報、13b・・識別情報(ID)、13c・・入出金履歴、20・・決済端末、20a・・端末本体、20b・・フロントパネル部、21・・制御部(決済端末)、22・・記憶部、23・・リーダライタ部、24・・通信部、25・・操作部、26・表示部、27・・磁界発生部、28・・アンテナ部、30・・管理サーバ、40・・通信回線、50・・上位機器、200・・かざし面、500・・制御部(上位機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子マネーを格納し、表面もしくは内部に磁性体が付与された記憶媒体と、この記憶媒体に格納された電子マネーを使用し、通信により決済を行う決済端末と、からなる電子マネー決済システムであって、
前記決済端末は、前記通信を行うにあたり前記記憶媒体がかざされる平面状のかざし面を備え、前記かざし面は、前記記憶媒体と前記通信を行うのに必要な磁界とは別の磁界を発する磁界発生部を有し、前記磁界発生部は、前記記憶媒体が前記かざし面にかざされると、前記別の磁界により前記磁性体を引きつけ、前記記憶媒体を前記かざし面に密着させることを特徴とする電子マネー決済システム。
【請求項2】
前記磁界発生部は、
電磁石で構成されることを特徴とする請求項1記載の電子マネー決済システム。
【請求項3】
前記磁界発生部は、
前記かざし面が前記接触記憶媒体を検出してから入金処理が完了するまでの間、前記別の磁界を発生することを特徴とする請求項2記載の電子マネー決済システム。
【請求項4】
前記磁界発生部は、
永久磁石で構成されることを特徴とする請求項1記載の電子マネー決済システム。
【請求項5】
前記磁性体は、
前記記憶媒体の表面に貼付可能なシート状の磁性材料で形成されることを特徴とする請求項1記載の電子マネー決済システム。
【請求項6】
電子マネーを格納し、表面もしくは内部に磁性体が付与された記憶媒体と通信を行う決済端末であって、
前記通信を行うにあたり、前記記憶媒体がかざされる平面状のかざし面を備え、前記かざし面には、前記非接触ICカードと前記通信を行うのに必要な磁界とは別の磁界を発生する磁界発生部を備え、前記非接触ICカードが前記かざし面にかざされると、前記別の磁界により前記磁性体を引きつけ、前記非接触ICカードを前記かざし面に密着させることを特徴とする決済端末。
【請求項7】
前記磁界発生部は、
前記かざし面の略中央に位置するかざしマークの近傍に設けられることを特徴とする請求項6記載の決済端末。
【請求項8】
前記磁界発生部は、
前記かざし面の略中央に位置するかざしマークを中心に等距離にある周辺近傍に複数設けられることを特徴とする請求項6記載の決済端末。
【請求項9】
電子マネーを記憶し、前記記憶した電子マネーを使用して通信により決済端末との間で電子決済を行う記憶媒体であって、
表面もしくは内部に磁性体を有し、
前記通信を行うのに必要な磁界とは別の磁界を発生する磁界発生部を平面状のかざし面に備えた前記決済端末にかざされると、前記磁性体が前記別の磁界によって前記かざし面に密着することを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−77120(P2013−77120A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216064(P2011−216064)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(307003777)株式会社日本コンラックス (140)
【Fターム(参考)】