説明

電子レンジ調理用パウチ詰食品及びトマト煮込み料理の製造方法

【課題】トマト煮込み料理用ソースが予め充填されレトルト処理された袋状のパウチ内に固形具材を投入して電子レンジで加熱調理した場合に、トマト煮込み料理用ソースに浸漬していなかった固形具材をトマト煮込み料理らしい美味しそうな色に染め、しかもトマト煮込み料理に固形具材の持ち味が十分感じられるようにする。
【解決手段】トマト煮込み料理用ソースが予め充填されレトルト処理された袋状のパウチ内に固形具材を投入して電子レンジで加熱調理するための電子レンジ調理用パウチ詰食品は、そのパウチに固形具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構を有している。トマト煮込み料理用ソースとして、L表色系におけるa値が30〜45のものを使用する。また、トマト煮込み料理用ソースを、パウチの最大密封充填可能容積の10〜40%となる容積でパウチに充填密封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト処理済のトマト煮込み料理用ソースが充填されたパウチに、ズッキーニや鳥肉等の固形具材を新たにパウチ内に投入して、電子レンジ調理を行うための電子レンジ調理用パウチ詰食品、及びそれを利用してトマト煮込み料理を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
予め下調理したトマトソース煮込み料理をパウチ内に密封してレトルト処理により料理として完成させたパウチ詰食品が市販されている。このようなパウチ詰食品は、パウチに既に完成したトマトソース煮込み料理が充填されているので、家庭、レストラン、弁当屋、あるいは総菜店などでは、電子レンジで30秒〜1分ほど加熱するだけで、人々に供するに足るトマトソース煮込み料理を手軽に提供できるものである。
【0003】
しかしながら、このようなトマト煮込み料理パウチ詰食品は、レトルト処理による過度の加熱により、ズッキーニや魚肉等の固形具材のテクスチャーが損なわれ、煮崩れしがちであり、また、鳥肉、魚介類、野菜類などの固形具材にトマトの味が過度に染み込み、固形具材そのものの味が失われがちである。このようなトマト煮込み料理パウチ詰食品は、家庭やレストランで時間と手間をかけて調理されたトマト煮込み料理の美味しさには及ばないという問題があった。
【0004】
ところで、ジッパーを備えた水蒸気透過性調理用袋に、野菜類や肉類などの生鮮食品具材と調味料やソースとを密封した調理用バッグが提案されている(特許文献1)。この調理用バッグを電子レンジで数分間、加熱調理した場合、生鮮食品具材はレトルト処理を受けずに電子レンジ加熱調理により初めて加熱されるので、そのテクスチュアーは失われにくく、また、同様に、生鮮食品具材への調味液やソースの過度のしみ込みも生じにくいことが期待できる。従って、特許文献1の調理用バッグの技術をトマト煮込み料理に応用することが考えられている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−44708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際に、特許文献1の調理用バッグの技術をトマト煮込み料理に適用し、一般的に好まれている固形具材、例えば、ズッキーニの1cm厚程度のカット品を利用した場合、レシピによっては、パウチ内でトマト煮込み料理用ソースに浸漬している固形具材と、浸漬していない固形具材が生ずる場合がある。
【0007】
このような状態で電子レンジ加熱調理した場合、鍋等でへらやひしゃくで撹拌しながら行う加熱調理に比べて、被調理物(流動するトマト煮込み料理用ソース、それに浸漬したズッキーニ、浸漬していないズッキーニ等)の含水量や組織性状、また、被調理物同士の重なり具合などにより、被調理物の個々の小領域を比較するとマイクロウェーブの吸収が不均一(即ち、不均一加熱)となる。このため、電子レンジ加熱調理の場合、未加熱部分が残らないようにある程度長時間加熱する必要が生じるが、トマト煮込み料理用ソースに浸漬していない具材はスチーム調理された状態となるものの、トマト煮込みソースで色づかず、美味しそうには見えないという問題があった。また、パウチから被調理物を取り出してズッキーニ等の具材とトマト煮込み料理用ソースとを絡めても、トマト煮込みソースで美味しそうな色に十分に染まらないという問題があった。
【0008】
他方、トマト煮込み料理用ソースに浸漬した状態で加熱調理されたズッキーニなどの固形具材の場合、浸漬していない固形具材を十分に加熱することを前提にすると、トマト煮込み料理用ソースと共に過度に加熱されたものとなるので、トマト煮込み料理用ソースの味が良く染み込み、トマト煮込み料理として熟成感が増大するが、固形具材そのものの味が損なわれるという問題がある。熟成感に加えて固形具材自体の味を生かすためには、トマト煮込み料理用ソースに浸漬していない状態で加熱調理された固形具材の量をパウチ内にある程度確保する必要があると考えられるが、そのような観点に基づき、電子レンジ調理用パウチ詰食品を開発することは行われていなかったのが現状である。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を解決しようとするものであり、トマト煮込み料理用ソースがパウチに充填密封された後にレトルト処理されて得たパウチ詰食品の当該パウチ内に、固形具材を投入して電子レンジ加熱調理を行った後、パウチから被調理物を取り出し、固形具材をトマト煮込み料理用ソースに全体的に絡めたときに、電子レンジ加熱調理時にトマト煮込み料理用ソースに浸漬していなかった固形具材をトマト煮込み料理らしい美味しそうな色に染めることができ、しかも、トマト煮込み料理に固形具材そのものの味が十分感じられるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、トマト煮込み料理用ソースについて、L表色系におけるa値と固形具材の着色との関係を調べたところ、(i)従来のトマト煮込み料理用ソースのa値が30未満であったところ、30〜45に調整すると、電子レンジ加熱調理中にトマト煮込み料理用ソースの沸騰により泡だったり飛び散ったりしたソースがズッキーニ等の固形具材に付着し、それにより固形具材をトマト煮込み料理特有の美味しそうな色に染めることができること、(ii)パウチから取り出したトマト煮込み料理用ソースと固形具材とを絡め混合することにより、やはり固形具材をトマト煮込み料理特有の美味しそうな色に染めることができることを見出した。
【0011】
また、本発明者は、従来の電子レンジ調理用パウチ詰め食品では、従来、パウチの最大密封充填容積の少なくとも50%超となるようにトマト煮込み料理用ソースをパウチに充填していたところ、パウチの最大充填容積の10〜40%となるようにトマト煮込み料理用ソースをパウチに充填すると、トマト煮込み料理用ソースに浸漬していない状態で加熱調理されたズッキーニ等の固形具材の量をある程度パウチ内に確保することができ、トマト煮込み料理の熟成感と固形具材そのものの味とがバランスよく感じられるトマト煮込み料理が得られることを見出した。
【0012】
本発明者は、上述した新たに見出した知見に基づき、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明は、トマト煮込み料理用ソースが袋状のパウチに充填密封後レトルト処理されてなり、パウチ内に固形具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりトマト煮込み料理を得られるようにする電子レンジ調理用パウチ詰食品であって、
パウチが固形具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構を有し、
トマト煮込み料理用ソースのL表色系におけるa値が30〜45であり、
トマト煮込み料理用ソースが、パウチの最大密封充填可能容積の10〜40%となる容積でパウチに充填密封されている
ことを特徴とする電子レンジ調理用パウチ詰食品である。
【0014】
また、本発明は、上述の電子レンジ調理用パウチ詰食品を構成するパウチのジッパー部を開封し、そこから固形具材をパウチ内に投入してジッパー部を閉じ、電子レンジで加熱調理することを特徴とするトマト煮込み料理の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品は、そのパウチに充填密封するトマト煮込み料理用ソースとして、L表色系におけるa値が30〜45のものを使用する。このため、電子レンジ加熱調理中にトマト煮込み料理用ソースの沸騰により泡だったり飛び散ったりしたソースがズッキーニ等の固形具材に付着し、それにより固形具材をトマト煮込み料理特有の美味しそうな色に染めることができる。また、パウチから取り出したトマト煮込み料理用ソースに固形具材を絡め混合することにより、投入した固形具材すべてをトマト煮込み料理特有の美味しそうな色に染めることができる。
【0016】
また、電子レンジ調理用パウチ詰食品は、パウチの最大密封充填容積の10〜40%となるようにトマト煮込み料理用ソースをパウチに充填している。このため、トマト煮込み料理用ソースに浸漬していない状態で加熱調理されたズッキーニ等の固形具材の量をある程度パウチ内に確保することができ、トマト煮込み料理の熟成感と固形具材そのものの味とがバランスよく感じられるトマト煮込み料理を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、図面を参照しつつ詳細に説明する。各図中、同一符号は同一又は同等の要素を表す。また、本発明において、特にことわりのない限り「%」は「質量%」を表し、「部」は「質量部」を表す。
【0018】
図1は、本発明の一実施態様の電子レンジ調理用パウチ詰食品1の斜視図である。
【0019】
この電子レンジ調理用パウチ詰食品1は、電子レンジ対応のフィルム材料からなる袋状のパウチ10に、予め下調理したトマト煮込み料理用ソース30を充填密封し、レトルト処理したものであって、これを食するときに、所定の固形具材をパウチ10内に投入し、電子レンジで加熱調理するようにしたものである。ここで、レトルト処理としては、トマト煮込み料理用ソース30の中心部の品温を120℃で4分間相当加熱する処理又はこれと同等以上の加熱調理レベルを有する処理を挙げることができる。
【0020】
まず、本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品1を構成するトマト煮込み料理用ソース30について説明する。
【0021】
トマト煮込み料理用ソース30は、パウチ10に充填密封され、レトルト処理を経たものであり、L表色系におけるa値が30〜45、好ましくは32〜45、更に好ましくは33〜40のものを使用する。これは、a値が30未満であると、トマト煮込み料理用ソース30に浸からずに電子レンジ加熱調理された固形具材をトマト煮込み料理用ソースの美味しそうな色に染めることが困難であり、45を超えるとトマト煮込み用料理としての色合いが不自然に感じられるからである。ここで、トマト煮込み料理用ソース30のa値の測定は、JIS Z 8722「色の測定方法−反射及び透過物体色」に準じて行うことができる。例えば、測色色差計(型名「Color Meter ZE2000」、日本電色工業(株)製)を用いて、a値の測定値を得ることができる。
【0022】
このような、トマト煮込み料理用ソース30としては、カット生トマトまたはトマトペーストもしくはそれらの混合物に、食塩及び香辛料を加えて、更に、必要に応じて食酢、砂糖類、食用油脂、酒類、たまねぎ、にんにく、マッシュルームその他の野菜類、果実、畜肉、魚肉又はこれらの加工品を加え、酸味料、調味料(アミノ酸等)、糊料等を加えたものを使用できる。通常、L表色系におけるa値を30〜45とするために赤色色素を配合することが好ましい。使用できる赤色色素としては、油溶性又は水溶性であることに関わりなく、食用とできる赤色の色素であれば使用できる。例えば、赤キャベツ色素、クチナシ色素、コチニール色素、パプリカ色素、リコピン色素、紅麹色素、カロテン色素、トウガラシ色素、ハイビスカス色素、ベリー類色素、ラック色素、シソ色素、ビートレッド色素、ベニバナ色素、食用色素3号(濃桃色)、食用色素102号(濃紅色)、食用色素104号(濃桃色)、食用色素105号(濃桃色)、食用色素106号(濃桃色)等が挙げられる。中でも、トマト煮込み料理用ソースに自然な赤色を実現できる点から、紅麹色素、ラック色素、コチニール色素、パプリカ色素、リコピン色素、トウガラシ色素を好ましく使用できる。この場合、固形具材の着色のし易さの観点から油溶性であることが望まれる。なお、赤色色素の使用量は、赤色色素の種類やトマト煮込み料理用ソースのレシピ等に応じて、a値を30〜45とするために必要な量を使用する。
【0023】
また、前記赤色色素の使用量に関し、トマトソースの可溶性固形分が相対的に高いトマトソース(換言すれば、トマト含有量の相対的に多いトマトソース)ほど、そのa値を30〜45に調整するために要する前記赤色色素の量が減少する傾向がある。逆に、トマトソースの可溶性固形分が相対的に低いトマトソース(換言すれば、トマト含有量の相対的に少ないトマトソース)ほど、そのa値を30〜45に調整するために要する前記赤色色素の使用量が増大する傾向がある。ここで、異なるトマトソースが同じa値を有している場合、色素の添加量が多いトマトソースの方が具材の着色効果が得られ易い傾向がある反面、前記赤色色素の使用量が多すぎるとトマト煮込み料理として不自然な色となり易い。従って、本発明においてより効果的な具材の着色効果を得るためには、トマトソースの可溶性固形分を好ましくは9〜20質量%に調整することである程度のa値をトマトソースに確保した上で、更に赤色色素を配合してそのa値を30〜45に調整することが好ましい。なお、可溶性固形分とは、20℃において、糖用屈折計でトマト煮込み料理用ソースを測定し、そのときの示度を読み取り、その値を%で表したものである。
【0024】
また、トマト煮込み料理用ソースは、食用油脂を含有するが、その含有量は、少なすぎると油溶性赤色色素が溶けた油滴を固形具材表面に十分に付着させることができず、多すぎるとトマト煮込み料理の風味が損なわれるので、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは3〜5質量%である。このような食用油脂としては、バター、ラード、卵黄油等の動物性油脂、菜種油、コーン油、オリーブ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、米油、トウモロコシ油、これらを精製したサラダ油等の植物性油脂が挙げられる。さらに、これらの油脂を硬化、エステル交換等の処理を施したものの他、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド等のように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂等が挙げられる。
【0025】
トマト煮込み料理用ソースの粘性は、粘性が低すぎると、固形具材表面に付着し難く着色され難くなり、粘性が高すぎると、パウチから内容物を取り出して皿に盛り付ける際に固形具材とトマト煮込み料理用ソースとが絡み難くなるので、トマト煮込み料理用ソースの粘度は、好ましくは0.1〜15Pa・s、好ましくは1〜10Pa・sである。前記液状物の粘度は、液状物をBH型粘度計で、品温60℃、回転数20rpmの条件で、粘度が0.375Pa・s未満のときローターNo.1、0.375Pa・s以上1.5Pa・s未満のときローターNo.2、1.5Pa・s以上3.75Pa・s未満のときローターNo.3、3.75Pa・s以上7.5Pa・s未満のときローターNo.4、7.5Pa・s以上のときローターNo.5を使用し、測定開始後ローターが3回転した時の示度により求めた値である。なお、トマト煮込み料理用ソースに具材が含まれる場合は、トマト煮込み料理用ソースを10メッシュの網目に通して具材を取り除いた液状物を測定する。
【0026】
また、トマト煮込み料理用ソースには、その粘度が0.1〜15Pa・sを示すように、生澱粉、生澱粉に湿熱処理を施して得た湿熱処理澱粉、生澱粉に架橋処理、エステル化処理、エーテル化処理、酸化処理等の一種又は二種以上の処理を施して得た加工澱粉、澱粉糖化物、還元澱粉糖化物等の澱粉類や、キサンタンガム、ローカストビーンガム及びジェランガム等のガムなどを配合することができる。中でも、具材に適度に付着して着色効果が得られ易い点から、湿熱処理澱粉や加工澱粉を好ましく配合することができる。増粘剤の使用量は、増粘剤の種類、トマト煮込み料理用ソースのレシピ等に応じて、前述の測定値が0.1〜15Pa・sとなるように適宜決定すればよく、通常は、トマト煮込み料理用ソースに対して0.05〜3%、好ましくは0.1〜2%配合するとよい。
【0027】
本発明において、電子レンジで加熱調理する際に投入を予定する固形具材としては、トマト煮込み料理に適したものを適宜選択して使用すればよい。例えば、ズッキーニ、ナス、キャベツ、ホウレン草等の野菜類、大豆、ひよこ豆、レンズ豆等の豆類、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉等の獣肉類、スズキ、鰯、たこ、いか、オマールエビ、ムール貝等の魚介類等を挙げることができる。これらの固形具材は、パウチに投入する前に予め、下茹で、油通し、あく抜きなどの下処理をしておくことができる。
【0028】
これらの固形具材は、電子レンジによる加熱調理がムラ無く行えるように、パウチ10への投入時には、その厚さを0.1〜4cmにカットしておくことが好ましい。
【0029】
固形具材のトマト煮込み料理用ソース30に対する使用量は、固形具材の種類や密度により異なるが、通常、トマト煮込み料理用ソース30の1質量部に対し、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部である。
【0030】
なお、本発明で言及する電子レンジ加熱調理とは、トマト煮込み料理の風味を得る点から、好ましくは、パウチに充填密封されたトマト煮込み料理用ソースとパウチに投入された固形具材の合計100gあたり、好ましくは出力600W×3分相当以上の加熱をすることを意味する。ここで600W×3分相当とは、出力300Wであれば6分、出力400Wであれば、4.5分、出力800Wであれば2.25分というように、出力ワット数と時間との積の値が同じになるように換算して計算した条件以上の電子レンジ加熱を行うことである。
【0031】
次に、本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品1を構成するパウチ10について説明する。
【0032】
図1に示す様に、パウチ10は、底面にマチができるようにプラスチックフィルムを折り曲げて重ね合わせ、両側縁部及び上縁部をヒートシールして側縁シール部11及び上縁シール部12を形成したスタンディングパウチからなる平袋状のレトルトパウチであり、パウチ10の片面の上縁シール部12の近傍には、ジッパー部13が設けられている。
【0033】
ジッパー部13の外方もヒートシールされてジッパーシール部14が形成されており、このジッパーシール部14近傍の側縁シール部11において、ジッパー部13より上の部分に、引き裂きによりジッパーシール部14を切除し、ジッパー部13を開口可能とするためのノッチ15が形成されている。このようにジッパーシール部14をジッパー部13の外方に設けることにより、レトルト処理の間にジッパー部13が開口することなく、密封状態を維持することが可能となる。
【0034】
また、側縁シール部11において、ジッパー部13と上縁シール部12との間には、料理の取出用開口部を引き裂きにより形成するためのノッチ16が形成されている。後述するように、このノッチ16から、電子レンジ加熱調理後のパウチ10を開封し、内容物を一気に皿に移すことにより内容物が撹拌されるので、料理の加熱ムラを容易に解消することが可能となる。
【0035】
また、パウチ10の表面には、電子レンジ加熱調理時にパウチ10が過度に膨張して破裂することを防止する蒸気抜き機構17が設けられている。蒸気抜き機構17としては、従来より電子レンジ対応包装袋で使用されているものを設けることができ、例えば、側縁シール部11の近傍に、弱化シール部18を設け、その弱化シール部18内に切欠19を形成したものとする。また、パウチ10の蒸気抜き機構17としては、密封されていたジッパー部13が電子レンジ加熱時にパウチ10が膨張する際の圧力で部分的に開口するようにジッパー部の嵌合を調整してもよい。
【0036】
なお、本発明において、パウチ自体の構成としては、蒸気抜き機構を備え、電子レンジで加熱調理できる袋状のレトルトパウチが挙げられる。具体的には、底面にマチをもたせたスタンディングパウチの他、底面及び側面にマチをもたせたガゼット袋や、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋等が挙げられる。中でも、パウチ10の最大充填可能量を増大するために、底面にマチをもたせたスタンディングパウチや、側面にもマチをもたせたガゼット袋等のマチを有するパウチを好ましく使用できる。
【0037】
また、本発明において、パウチ10の容積に関し、トマト煮込み料理の熟成感と固形具材そのものの味とがバランスよく感じられるトマト煮込み料理を得るために、トマト煮込み料理用ソースに浸漬した状態で電子レンジ加熱調理された固形具材に対し、浸漬していない状態で電子レンジ加熱調理された固形具材との割合をある程度確保する要請がある。この要請を満たすために、本願発明においては、パウチの最大密封充填容積の10〜40%、好ましくは10〜30%となるようにトマト煮込み料理用ソースをパウチに充填する。ここで、パウチの最大密封充填容積とは、パウチのジッパー部13を閉じた時に、パウチに密封充填できる最大の容積を意味する。最大密封充填容積の測定は、例えば、パウチに満杯量の清水を充填密封し、そのパウチ内の清水の容積をメスシリンダー等で測定することで行うことができる。
【0038】
さらに、レトルト処理においてトマト煮込み料理用ソースの中心部と外周部をムラなく均一に加熱し、加熱条件を緩くしても、中心部を120℃で4分間相当に加熱できるようにするため、図2に示すように、トマト煮込み料理用ソース30が充填されている状態で平板50の上に平置きして平らにならした場合のパウチ厚(以下、単にパウチ厚という)Lは、過度に厚くなると、トマト煮込み料理用ソース30のレトルト処理において、中心部が120℃4分間相当に加熱されるまでに、外周部が過度に加熱され、風味が低下する傾向があるので、好ましくは2cm以下、より好ましくは1.5cm以下、特に好ましくは1cm以下とする。
【0039】
また、本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品1には、電子レンジ加熱調理で最終的に得ようとする料理の種類、電子レンジ加熱の際にパウチ内に投入することが予定されている固形具材の種類、その固形具材の好ましい切り方、大きさ、投入量、パウチへの投入方法、電子レンジ加熱する際のパウチの姿勢、電子レンジ加熱に必要なワット数と時間、電子レンジ加熱後のパウチの開封方法などの説明表示40を備えることが好ましい。特に、説明表示40の具体的な内容として、固形具材の投入量、大きさ、電子レンジ加熱のワット数と時間については、これらが電子レンジ加熱後の調理の出来の善し悪しに大きく影響するため、できるだけ表示することが望まれる。
【0040】
このような説明表示40は、図1に示したように、パウチ10の表面に印刷することにより形成してもよく、電子レンジ調理用パウチ詰食品1の梱包箱等の外装材に印刷することにより形成してもよく、パウチ10とは別個の紙片に印刷し、その紙片を電子レンジ調理用パウチ詰食品1に添付するようにしてもよい。
【0041】
本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品1の製造方法としては、例えば、上縁シール部12が未シール状態のパウチ10を用意し、それにトマト煮込み料理用ソース30を充填して、上縁シール部12をヒートシールし、レトルト処理を施すことが挙げられる。
【0042】
次に、本発明の電子レンジ調理用パウチ詰食品を使用してトマト煮込み料理を製造する方法を説明する。
【0043】
まず、トマト煮込み料理用ソース30で煮込む対象の固形具材を電子レンジ調理用パウチ詰食品1に付された説明表示40を参照して選択し、説明表示40の内容に沿って必要に応じてパウチ10への投入サイズにカットする。
【0044】
次に、図3に示すように、電子レンジ調理用パウチ詰食品1のジッパー部13外方のノッチ15からパウチ10を引き裂いてジッパーシール部14を切除した後、ジッパー部13を開封し、そこから固形具材20を矢印のようにパウチ10内に投入する。この場合、固形具材20の洗浄水などが固形具材20に付着してパウチ10内に入るのは別として、固形具材20とは別に、味の調整などの目的でパウチ10内に水を加えることはしないようにすることが好ましい。水を加えると、パウチ10内で固形具材20が接するトマト煮込み料理用ソース30の濃度にバラツキが生じ、電子レンジ加熱調理後の固形具材20の味付けにもバラツキが生じることが懸念されるからである。なお、固形具材20の投入時に、必要に応じてパウチ10内にあく取りシートを投入してもよい。
【0045】
次に、ジッパー部13を閉じた後、蒸気抜き機構17から内容物がこぼれ難いように蒸気抜き機構17が上部にくるようにパウチ10を電子レンジ内に寝かせ、あるいは立て、その状態で所定のワット数と時間で電子レンジ加熱調理を行う。加熱調理の具体的条件としては、パウチ10に充填されているトマト煮込み料理用ソース30及び投入した固形具材20の合計100gあたり、好ましくは600W×3分相当以上の電子レンジ加熱条件が挙げられる。
【0046】
なお、図4に、電子レンジ加熱調理の際に、固形具材20が投入され、ジッパー部13を閉じ、電子レンジで加熱調理のための姿勢とした状態であって、電子レンジ加熱前の状態を示す。図4に示されるように、投入された固形具材20で規定されるパウチ内空間高さα(21(固形具材の最高位置)と32(固形具材の最低位置)との間: 換言すれば重力方向における固形具材の最大間隔)を、トマト煮込み料理用ソースの深さβ(31(ソース表面)と32(ソースまたは固形具材の最低位置)との間: 換言すれば重力方向深さ)の好ましくは1.2倍〜10倍、より好ましくは2倍〜10倍となるようにパウチ10に固形具材20を投入する。これにより、トマト煮込み料理用ソース30に浸漬しない固形具材を確保することができる。
【0047】
また、電子レンジ加熱調理により直接的にトマト煮込み料理用ソース30と固形具材20が加熱されるのに加え、ジッパー部が閉じられていることから、発生した蒸気によってもトマト煮込み料理用ソース30と固形具材20とがいわゆる蒸らし効果により加熱される。発生した蒸気は、蒸気抜き機構17から排出されるため、パウチ10は膨張しても、その破裂は防止される。これにより、パウチ10内に充填されていたトマト煮込み料理用ソース30と、それに浸漬していた及び浸漬していない固形具材20とがそれぞれ適度に加熱調理着色され、見た目も味も美味しい料理を作ることができる。そして、加熱調理後は、直ちに上縁シール部12近傍のノッチ16からパウチ10の上端部を引き裂いて開口し、パウチ10の料理を一気に大皿にあけて、トマト煮込み料理用ソース30に、それに浸漬していない固形具材20を絡め混合すれば、余り着色していない固形具材20も美味しそうな色に着色することができる。また、パウチ10内では料理に加熱ムラがあっても、パウチ10内の料理を大皿にあけることにより、料理が撹拌され、温度の均一化が図られる。また、加熱調理後のパウチ10は大変熱くなっていて、ジッパー部13を手で開封する作業を行うことが困難であるが、このようにノッチ16からパウチ10の上端部を引き裂いて料理を取り出すと開封作業を安全に行うことができる。
【実施例】
【0048】
実施例1(ズッキーニのトマト煮込み料理:可溶性固形分18%)
まず、パウチ内に投入する固形具材として、1口大(約5×20×40mm)にカットしたズッキーニ150gを用意した。
【0049】
次に、表1に示すトマト煮込み料理用ソース配合の材料(即ち、トマト水煮、トマトペースト、タマネギ(1cm角にカットした生タマネギ95部に対して、菜種油5部を加え、合計質量が60部になるまでソテーしたもの)、砂糖、菜種油、チキンブイヨン、加工澱粉(アセチル化アジピン酸架橋澱粉、日本エヌエスシー(株)製、商品名「コルフロ67」)、食塩、ニンニク粉末、油溶性パプリカ色素、清水)を鍋で混合加熱し、一定温度(90℃)に達温させることによりトマト煮込み料理用ソースを得た。
【0050】
次に、得られたトマト煮込み料理用ソース150gを弱化シール部と切欠とからなる蒸気抜き機構を有する図1のジッパー付きスタンドパウチ(パウチサイズ:縦220mm×横140mm×折込(マチ)40mm、材質:(パウチ)ポリエステル/ポリアミド/無延伸ポリプロピレン、(ジッパー部)ポリプロピレン、最大密封充填可能容積:820mL)に充填密封後、レトルト処理(115℃、15分間:中心部の加熱処理条件として120℃4分間相当)し、パウチ内にレトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソース150g(150mL)を充填してなる電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。充填されたトマト煮込み料理用ソースの粘度の測定値は7Pa・s、可溶性固形分は18%、a値は35であった。また、パウチ厚は0.7cmであった。
【0051】
【表1】

【0052】
得られた電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、先に用意したズッキーニ150gを投入し、再度ジッパーを閉じた。ズッキーニ投入後のパウチ厚は5cmであった。次に、電子レンジ内にズッキーニ投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように平置きした。このときのトマト煮込み料理用ソースの深さは、固形具材で規定されるパウチ内空間高さの1/4(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、トマト煮込み料理用ソースの深さの4倍)であった。これを電子レンジで加熱調理(600W×5分間)し、パウチの料理取出用のノッチを開封し、生じた開封部から大皿にあけ、全体を十分に混合した。
【0053】
得られたズッキーニのトマト煮込み料理は、ズッキーニの風味とトマトの風味が程よく調和し、また、ズッキーニ特有の好ましい食感と風味があり、大変好ましいものであった。トマト煮込み料理中のズッキーニ切断面は、ムラなく着色され大変好ましい外観であり、トマト煮込み料理のソース部分の色調は、適度な赤い色調であり、好ましいものであった。
【0054】
実施例2(ズッキーニのトマト煮込み料理:可溶性固形分23%)
実施例1において、トマト煮込み料理用ソースの配合のうちトマトペーストの配合量を45部に増やし、その増加分は清水の配合量を減らして補正した以外は実施例1と同様にして、電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。レトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソースの粘度の測定値は10Pa・s、可溶性固形分は23%、a値は36であった。また、パウチ厚は0.7cmであった。
【0055】
次に、実施例1と同様に得られた電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、ズッキーニ150gを入れ、再度ジッパーを閉じた。ズッキーニ投入後のパウチ厚は5cmであった。次に、ズッキーニ投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように電子レンジ内に平置きした。この場合のレトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソースの深さは、固形具材で規定されるパウチ内空間高さの1/4(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、トマト煮込み料理用ソースの深さの4倍)であった。これを電子レンジで加熱調理(600W×5分間)をし、パウチの料理取出用のノッチから開封し、生じた開封部から大皿にあけ、全体を十分に混合した。
【0056】
得られたズッキーニのトマト煮込み料理は、ズッキーニの風味とトマトの風味が程よく調和し、また、ズッキーニ特有の好ましい食感と風味があり、大変好ましいものであった。また、トマト煮込み料理中のズッキーニ切断面は、ムラなく着色され大変好ましい外観であり、トマト煮込み料理のソース部分の色調は、適度な赤い色調であり、好ましいものであった。
【0057】
実施例3(ズッキーニのトマト煮込み料理:可溶性固形分10%)
実施例1において、トマト煮込み料理用ソース配合のうちトマトペーストの配合量を6部に減らし、その減少分は清水の配合量を増やして補正した以外は実施例1と同様にして、電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。レトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソースの粘度の測定値は4Pa・s、可溶性固形分は18%、a値は33であった。また、パウチ厚は0.7cmであった。
【0058】
実施例1と同様に得られた電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、ズッキーニ150gを入れ、再度ジッパーを閉じた。ズッキーニ投入後のパウチ厚は5cmであった。次に、ズッキーニ投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように電子レンジ内に平置きした。この場合のレトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソースの深さは、固形具材で規定されるパウチ内空間高さの1/4(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、トマト煮込み料理用ソースの深さの4倍)であった。これを電子レンジで加熱調理(600W×5分間)をし、パウチの料理取出用のノッチから開封し、生じた開封部から大皿にあけ、全体を十分に混合した。
【0059】
得られたズッキーニのトマト煮込み料理は、ズッキーニの風味とトマトの風味が程よく調和した大変好ましいものであった。また、ズッキーニ特有の好ましい食感と風味があった。また、トマト煮込み料理中のズッキーニ切断面は、ムラなく着色され大変好ましい外観であり、トマト煮込み料理のソース部分の色調は、適度な赤い色調であり、好ましいものであった。
【0060】
比較例1〜3
実施例1〜3において、色素を配合しない他は実施例1〜3と同様にして電子レンジ調理用パウチ詰食品をそれぞれ得た。得られたトマト煮込み料理用ソースの可溶性固形分及びa値は以下のとおりである。
比較例1(可溶性固形分=18%、a値=28)
比較例2(可溶性固形分=23%、a値=29)
比較例3(可溶性固形分=10%、a値=27)
【0061】
試験例1
実施例1〜3及び比較例1〜3の電子レンジ調理用パウチ詰食品を用いて、実施例1と同様にズッキーニのトマト煮込み料理を得、大皿にあけて全体を十分に混合した料理についてトマト煮込み料理中のズッキーニ切断面の着色の程度とトマト煮込み料理のソース部分の色調を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0062】
<トマト煮込み料理中のズッキーニ切断面の着色の程度の評価記号>
A ムラなく着色され大変好ましい外観であった。
B やや着色が薄い部分があったものの問題の無い程度であった。
C 着色が薄い部分がありトマト煮込み料理としてやや不自然な外観であった。
D ほとんど着色がされていない部分が多くトマト煮込み料理として不自然な外観であった。
【0063】
<トマト煮込み料理のソース部分の色調の評価記号>
A 適度な赤い色調であり、好ましい。
B やや赤い色調が弱いが問題はない程度である。
C やや赤い色調が強いが問題はない程度である。
D 赤い色調が強すぎて不自然な外観であった。
【0064】
【表2】

【0065】
上記試験結果から、トマト煮込み料理用ソースの可溶性固形分が高い程、つまり、トマト濃縮度が高いソースほど、a値が高くなることがわかる。そして、トマト煮込み料理用ソースに色素を配合してa値を30以上とした場合にはズッキーニ切断面が好ましく着色されたことがわかる。
【0066】
試験例2
実施例1において、油溶性パプリカ色素の配合量を表の範囲に変えた以外は、実施例1と同様にして、7種類の電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。
【0067】
これら7種類の電子レンジ調理用パウチ詰食品を用いて、実施例1と同様にズッキーニのトマト煮込み料理を得、大皿にあけ、全体を十分に混合して得たトマト煮込み料理について、その中のズッキーニ切断面の着色の程度とトマト煮込み料理のソース部分の色調を試験例1と同様に評価した。得られた結果を表3に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
表3の試験結果から、トマト煮込み調理用ソースに色素を配合してa値を30以上とすると、ズッキーニ切断面が着色され、45以下であれば、トマト煮込み料理のソース部分の色調が不自然に赤くならないことがわかる。
【0070】
試験例3
実施例2及び実施例3のトマト煮込み料理用ソース配合において、色素の配合量を表4に示す量に変えて、レトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソースのa値が実施例1と同じになるように、それぞれ電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。これら得られた2種類の電子レンジ調理用パウチ詰食品と実施例1の電子レンジ調理用パウチ詰食品について、試験例1と同様にズッキーニのトマト煮込み料理を得、大皿にあけたトマト煮込み料理中のズッキーニ切断面の着色の程度とトマト煮込み料理のソース部分の色調を評価した。
【0071】
【表4】

【0072】
上記試験結果から、同じa値である場合、色素の添加量が多いほうがズッキーニの着色がされやすいことがわかる。他方、色素の添加量が多すぎてトマト煮込み料理用ソースのa値が45を超えるとトマト煮込み料理用ソースの色調が不自然に赤くなるため、より効果的なズッキーニの着色効果を得るためには、トマト煮込み料理用ソースの可溶性固形分を好ましくは20以下とし、色素を配合してトマト煮込み料理用ソースのa値を30以上とすることがよいことがわかる。
【0073】
実施例4(ズッキーニのトマト煮込み料理:可溶性固形分18%)
実施例1において、油溶性パプリカ色素を水溶性パプリカ色素に変えた以外は実施例1と同様にして、電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。レトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソースの粘度の測定値は7Pa・s、可溶性固形分は18%、a値は34であった。また、パウチ厚は0.7cmであった。
【0074】
実施例1と同様に電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、ズッキーニ150gを入れ、再度ジッパーを閉じた。ズッキーニ投入後のパウチ厚は5cmであった。次に、電子レンジ内にズッキーニ投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように平置きした。この場合のトマト煮込み料理用ソースの深さは、内容物の下端から上端までの1/4(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、トマト煮込み料理用ソースの深さの4倍)の高さに位置していた。これを電子レンジで加熱調理(600W×5分間)をし、パウチの料理取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけ、全体を十分に混合した。
【0075】
得られたズッキーニのトマト煮込み料理は、ズッキーニの風味とトマトの風味が程よく調和した大変好ましいものであった。また、ズッキーニ特有の好ましい食感と風味があった。一方、油溶性パプリカ色素を用いた実施例1と比べるとトマト煮込み料理中のズッキーニ切断面は、やや着色が薄い部分があったものの問題の無い程度であり、トマト煮込み料理のソース部分の色調は、適度な赤い色調であり、好ましいものであった。
【0076】
実施例5(ズッキーニのトマト煮込み料理:可溶性固形分18%)
実施例1において、油溶性パプリカ色素を紅麹色素に変えた以外は実施例1と同様にして、電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。レトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソースの粘度の測定値は7Pa・s、可溶性固形分は18%、a値は38であった。また、パウチ厚は0.7cmであった。
【0077】
実施例1と同様に電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、ズッキーニ150gを入れ、再度ジッパーを閉じた。ズッキーニ投入後のパウチ厚は5cmであった。次に、電子レンジ内にズッキーニ投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように平置きした。この場合のトマト煮込み料理用ソースの深さは、内容物の下端から上端までの1/4(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、トマト煮込み料理用ソースの深さの4倍)の高さに位置していた。これを電子レンジで加熱調理(600W×5分間)をし、パウチの料理取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけ、全体を十分に混合した。
【0078】
得られたズッキーニのトマト煮込み料理は、ズッキーニの風味とトマトの風味が程よく調和し、また、ズッキーニ特有の好ましい食感と風味があり、大変好ましいものであった。また、トマト煮込み料理中のズッキーニ切断面は、ムラなく着色され大変好ましい外観であり、トマト煮込み料理のソース部分の色調は、適度な赤い色調であり、好ましいものであった。
【0079】
実施例6(鶏肉のトマト煮込み料理:可溶性固形分18%)
まず、パウチ内に投入する固形具材として、1口大(約3cm角)にカットした鶏むね肉約200gを用意した。
【0080】
次に、実施例1において、加工澱粉を湿熱処理澱粉(日本エヌエスシー社製、「ノベーション2300」)に変えた以外は実施例1と同様にして、電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。レトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソースの粘度の測定値は7Pa・s、可溶性固形分は18%、a値は35であった。また、パウチ厚は0.7cmであった。
【0081】
続いて電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、鶏むね肉200gを入れ、再度ジッパーを閉じた。鶏むね肉投入後のパウチ厚は4cmであった。次に、電子レンジ内に鶏むね肉投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように平置きした。この場合のトマト煮込み料理用ソースの深さは、内容物の下端から上端までの1/2(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、トマト煮込み料理用ソースの深さの2倍)の高さに位置していた。これを電子レンジで加熱調理(600W×7分間)をし、パウチの料理取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけ、全体を十分に混合した。
【0082】
得られた鶏肉のトマト煮込み料理は、鶏肉の風味とトマトの風味が程よく調和した大変好ましいものであり、鶏肉は、鶏肉特有の好ましい食感と風味があった。また、鶏肉はムラなく着色され大変好ましい外観であり、トマト煮込み料理のソース部分の色調は、適度な赤い色調であり、好ましいものであった。
【0083】
実施例7(ナスのトマト煮込み料理:可溶性固形分18%)
まず、パウチ内に投入する固形具材として、1口大(約5×20×40mm)にカットしたナス150gを用意した。
【0084】
次に、実施例1と同様にして、電子レンジ調理用パウチ詰食品を得た。レトルト処理を経たトマト煮込み料理用ソースの粘度の測定値は7Pa・s、可溶性固形分は18%、a値は35であった。また、パウチ厚は0.7cmであった。
【0085】
実施例1と同様に電子レンジ調理用パウチ詰食品のジッパーを開封し、ナス150gを入れ、再度ジッパーを閉じた。ナス投入後のパウチ厚は5cmであった。次に、電子レンジ内にナス投入後の電子レンジ調理用パウチ詰食品を蒸気抜き機構が上面になるように平置きした。この場合のトマト煮込み料理用ソースの深さは、内容物の下端から上端までの1/4(即ち、固形具材で規定されるパウチ内空間高さが、トマト煮込み料理用ソースの深さの4倍)の高さに位置していた。これを電子レンジで加熱調理(600W×5分間)をし、パウチの料理取出用のノッチから開封してこれを大皿にあけ、全体を十分に混合した。
【0086】
得られたナスのトマト煮込み料理は、ナスの風味とトマトの風味が程よく調和し、また、ナス特有の好ましい食感と風味があり、大変好ましいものであった。また、トマト煮込み料理中のナス切断面は、ムラなく着色され大変好ましい外観であり、トマト煮込み料理のソース部分の色調は、適度な赤い色調であり、好ましいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施態様の電子レンジ調理用パウチ詰食品の正面図である。
【図2】電子レンジ調理用パウチ詰食品を平置きした状態の側面図である。
【図3】固形具材を投入するためにジッパー部を開口した電子レンジ調理用パウチ詰食品の正面図である。
【図4】固形具材をパウチに投入後、そのパウチを電子レンジで加熱調理する姿勢とした状態の電子レンジ調理用パウチ詰食品の側面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 電子レンジ調理用パウチ詰食品
10 パウチ
11 側縁シール部
12 上縁シール部
13 ジッパー部
14 ジッパーシール部
15 ノッチ
16 ノッチ
17 蒸気抜き機構
18 弱化シール部
19 切欠
20 固形具材
30 トマト煮込み料理用ソース
40 説明表示
50 平板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トマト煮込み料理用ソースがパウチに充填密封後レトルト処理されてなり、パウチ内に固形具材を投入し、電子レンジで加熱調理することによりトマト煮込み料理を得られるようにする電子レンジ調理用パウチ詰食品であって、
パウチが固形具材の投入口となるジッパー部と電子レンジによる加熱調理時に蒸気を排出する蒸気抜き機構とを有し、
トマト煮込み料理用ソースのL表色系におけるa値が30〜45であり、
トマト煮込み料理用ソースが、パウチの最大密封充填可能容積の10〜40%となる容積でパウチに充填密封されている
ことを特徴とする電子レンジ調理用パウチ詰食品。
【請求項2】
トマト煮込み料理用ソースのa値を30〜45となるように赤色色素がトマト煮込み料理用ソースに配合されている請求項1記載の電子レンジ調理用パウチ詰食品。
【請求項3】
赤色色素が、紅麹色素、ラック色素、コチニール色素、パプリカ色素、リコピン色素またはトウガラシ色素である請求項2記載の電子レンジ調理用パウチ詰食品。
【請求項4】
トマト煮込み料理用ソースが、可溶性固形分を9〜20質量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の電子レンジ調理用パウチ詰食品。
【請求項5】
トマト煮込み料理用ソースの粘度が0.1〜15Pa・sである請求項1〜4のいずれかに記載の電子レンジ調理用パウチ詰食品。
【請求項6】
電子レンジ調理に関する説明表示を有する請求項1〜5のいずれかに記載の電子レンジ調理用パウチ詰食品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の電子レンジ調理用パウチ詰食品を構成するパウチのジッパー部を開封し、そこから固形具材をパウチ内に投入してジッパー部を閉じ、電子レンジで加熱調理することを特徴とするトマト煮込み料理の製造方法。
【請求項8】
前記固形具材を、トマト煮込み料理用ソース1質量部に対して0.1〜5質量部の割合でパウチ内に投入する請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
固形具材を投入したパウチを、電子レンジで加熱調理のための姿勢とした場合に、投入された固形具材で規定されるパウチ内空間高さを、トマト煮込み料理用ソースの深さの1.2倍〜10倍となるように固形具材を投入する請求項7又は8記載の製造方法。
【請求項10】
パウチに充填されているトマト煮込み料理用ソース及び投入した固形具材の合計100gあたり、600W×3分相当以上の電子レンジ加熱を行う請求項7〜9のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−254293(P2009−254293A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107692(P2008−107692)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【出願人】(591116036)アヲハタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】