説明

電子入力ペン

【課題】赤外光を吸収するインクで形成した所定のパターンを有するドット情報が施された所定の用紙に手書きした筆跡情報を、筆記体が通過した領域のドット情報を位置データとしてデジタル的に算出し記録する電子入力ペンにおいて、前記用紙に手書きした手書き情報を、視認可能な筆跡で該筆跡が用紙に施されたドット情報を損なう事無く容易に消去することができる電子入力ペンを得ることを目的とする。
【解決手段】電子入力ペンの筆記体として、赤外光を透過し、消しゴムで消去可能な鉛芯を有したものとする。具体的には、鉛芯として、少なくとも窒化硼素と、シリカ又は粘土を成分とした焼結体の気孔内部にインクを充填してなる色鉛芯を用い、該色鉛芯をチャックが樹脂で形成された繰出機構を備えた、ケースに着脱自在に挿着してなるシャープペンシル体に収納したものを、ケースに着脱自在に挿着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光を吸収するインクで所定のパターンを有するドット情報が施された所定の用紙に手書きした手書き情報を、用紙上に視認可能な筆跡を形成するとともに、筆跡情報を記録可能な電子入力ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、赤外光を吸収するインクで所定のパターンを有するドット情報が施された用紙に手書きした手書き情報を、視認可能な筆跡を形成するケースの先端部に配設した筆記体と、赤外光を発光する発光手段と、用紙からの赤外光の反射を受光する受光手段とを備え、処理手段により前記用紙に発光した反射光を受光し、前記筆記体が通過した領域のドット情報を位置データとして算出し、記録手段により前記位置データを記録してなる電子入力ペンについては知られており、こうした電子入力ペンに他機能を付設したものが、例えば特開2003−308163号公報等により提案されている。
【0003】
前記電子入力ペンについては既に販売もされており、図を用いて簡単に構造を説明すると、先ず、前記電子入力ペンの使用にあたっては専用の用紙が必要である。その専用の用紙100は、図2に示すように、赤外光を吸収するインクで、直交する格子101、102の交点から上下左右のいずれかにずれて各ドット103が施されてる。
【0004】
電子入力ペン1の構造は、図1に示すように、先ずケース2の先端部内に、前記用紙100に手書きした手書き情報を視認可能な筆跡とするために筆記体としてボールペン3(収納されているインクは、当然赤外光を透過するものである。)が挿着してある。ボールペン3は、筆記先端3aがケース2の先端開口部4より出没可能に、繰出機構(図示せず)に付設して着脱可能に配設してある。ボールペン3の後方には、ボールペンの筆記先端3aをケースの先端開口部4より繰出して筆記した際の筆圧を検出する筆圧センサー5が連接して設けてある。また、ケース2の先端内部には、前記開口部3とは別に形成した赤外光照射/受光用孔6を通して赤外光が照射/受光可能に、赤外光を発光する手段であるダイオード7と、該ダイオード7からの赤外光の照射に基づく用紙からの赤外光の反射を受光する手段であるカメラ8が配設してある。また、該カメラ8を通じて、前記ボールペンの筆記先端3aが通過した領域のドット情報を位置データとして算出する処理手段9と、前記位置データを記録するメモリ(記録手段)10と、前記位置データを外部へ送信する送信手段11と、前記ダイオード7、カメラ8、処理手段9等の前記した各手段等への電源を供給する電源部12が配設されている。
【0005】
従来、こうした電子入力ペンにおいては、用紙に手書きした手書き情報を視認可能な筆跡とするために、筆記体として油性インクが収容されたボールペンが装着されている。当然、用紙に書かれた筆跡は、砂消しゴムや修正テープ等で視認できないようにすることはできるが、用紙に施されたドットを傷つけてしまったりドット情報を判読できないものにしてしまう。すなわち、ドット情報を損なう事無く、容易に消去することができない。しかし、最近、こうした電子入力ペンの用途が多方面から提案されており、用紙に記載された筆跡を容易に消去可能な筆記体を配設したものの要望がある。
【0006】
こうした要望に応えるには、筆記体として消しゴムで消去可能なインクを収納したボールペンを装着すれば良い。この点に関して、特開2004−94558号「デジタルペン」公報により開示されている。しかし、ボールペンの機能上、チップ先端のインクが乾燥してインクの粘度が上昇してしまうと、ボールペンチップの先端に装着されたボールの回転が滑らかにならず、チップ先端から用紙へのインク流動(転写)が不具合となり、筆跡の線が途中で切れたり筆記できない等の悪影響を及すという問題があり、現在提供されている消しゴムで消去可能なゲルインクは一般的な油性ボールペンより前記問題が生じやすく、キャップをせずに長時間放置しておく構造には向いていない。そこで電子入力ペンにチップ先端の乾燥を防ぐためのキャップを設ければよいが、使い勝手が悪くなり現実問題として採用しがたい。
【0007】
一方、筆跡を用紙に施されたドット情報を損なう事無く消しゴムで容易に消去できるものとして鉛芯からなる鉛筆やシャープペンシルがある。しかし、一般的に鉛芯には炭素が含有されており、この炭素は、電子回路部分に悪影響を与えたり、赤外光を吸収してしまうので、前記用紙に手書きされた筆跡により用紙に施されたドット情報の判読ができなくなり、電子入力ペンの筆記手段としての機能を果たさない。用紙に手書きされた筆跡は、赤外光を吸収しないことが必要充分条件である。こうした炭素を有さず消しゴムで消去可能な鉛芯として、窒化硼素と粘土と有機高分子化合物とからなる混練物を、押し出し成形して色鉛芯素材を形成し、さらにこの色鉛芯素材を、高温で焼成する際に、酸化雰囲気を、焼成工程の一部又は全部に用いることにより、前記の有機高分子化合物を該色鉛芯素材より除去して、白色多孔質焼結体の色鉛芯素材とし、さらにこの白色多孔質焼結体の色鉛芯素材にインキを含浸させてなる色鉛芯が、特公昭51−41376号公報より開示されている。
【特許文献1】特開2003−308163号公報
【特許文献2】特開2004−94558号公報
【特許文献3】特公昭51−41376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は前記事実に鑑み、赤外光を吸収するインクで形成した所定のパターンを有するドット情報が施された所定の用紙に手書きした筆跡情報を、筆記体が通過した領域のドット情報を位置データとしてデジタル的に算出し記録する電子入力ペンにおいて、前記用紙に手書きした手書き情報を、視認可能な筆跡で該筆跡が用紙に施されたドット情報を損なう事無く容易に消去することができる電子入力ペンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
「1.赤外光を吸収するインクで所定のパターンを有するドット情報が施された用紙に手書きした手書き情報を、視認可能な筆跡を形成するケースの先端部に配設した筆記体と、赤外光を発光する発光手段と、用紙からの赤外光の反射を受光する受光手段とを備え、処理手段により前記用紙に発光した反射光を受光し、前記筆記体が通過した領域のドット情報を位置データとして算出し、記録手段により前記位置データを記録してなる電子入力ペンにおいて、前記筆記体が、赤外光を透過し、消しゴムで消去可能な鉛芯を備えたものであることを特徴とする電子入力ペン。
2.前記筆記体が、少なくとも窒化硼素と、シリカ又は粘土を成分とした焼結体の気孔内部にインクを充填してなる色鉛芯を収納しチャックが樹脂で形成された繰出機構を備えた、ケースに着脱自在に挿着してなるシャープペンシル体である、前記1項に記載の電子入力ペン。」
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子入力ペンは、筆記体として、赤外光を吸収しない、消しゴムで消去可能な鉛芯なので、手書きした筆跡は視認可能であり、電子入力ペンとして用紙に施されたドット情報を感知でき、用紙に記載された筆跡を容易に消しゴムで消去することができる。
【0011】
また、こうした電子入力ペン専用の用紙は、前記したような特殊なドット情報が印刷されているために、決して安価な物ではなく、用紙に記載された筆跡を消去できることで再度使用する事ができるという利点がある。
【0012】
請求項2に係る発明の電子入力ペンは、赤外光を吸収しない、消しゴムで消去可能な鉛芯として具体的に挙げた、窒化硼素とシリカ又は粘土を成分とした焼結体の気孔内部にインクを充填してなる色鉛芯は、折れやすいという欠点があるが、チャックを樹脂で形成したシャープペンシル体に収納することで、金属製のチャックで挟持する場合よりその欠点を改善できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の電子入力ペンは、筆記体として装着されているボールペンに変えて、赤外光を吸収しない、消しゴムで消去可能な鉛芯を収納したシャープペンシル体を挿着するものである。シャープペンシル体は、従来から知られている構造であり特別な構造を有するものではなく、図示していないが、一般的な、芯タンクの前方にチャックや締具等からなる芯挟持機構を連設した構造のもので、電子入力ペンのケースに挿着できるような形状に形成する。
【0014】
鉛芯として、本出願人が販売している、シリカを水に分散させた後、酸化硼素と水に溶解させたポリビニールアルコールを加えて水を蒸発させながら混練したものを押し出し成形して色鉛芯素材を形成し、この色鉛芯素材を焼成して得られた焼結体を色インキ中に浸漬して、焼結体の気孔中に色インキを含浸させて製造された色鉛芯を用い、少なくともチャックが樹脂で形成したシャープペンシル体の芯タンクに収納し、このシャープペンシル体を従来のボールペンに換えて電子入力ペンに挿着した。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の電子入力ペンは、専用の用紙に記載された筆跡を容易に消しゴムで消去することができるので、例えば、幼児や子供達に対する用途として、問題に対する回答欄として採用した場合に、回答欄に何度でも回答を書き換えることができ、最終的な回答を用紙にも記録として残せるし、電子データとして残せる等、使用用途が拡がる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の電子入力ペンの概略図である。
【図2】本発明に係る電子入力ペンに使用される専用の用紙に施されたドットの状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 電子入力ペン
2 ケース
3 ボールペン
7 ダイオード
8 カメラ
9 処理手段
10 メモリ
11 送信手段
12 電源部
100 用紙
103 ドット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光を吸収するインクで所定のパターンを有するドット情報が施された用紙に手書きした手書き情報を、視認可能な筆跡を形成するケースの先端部に配設した筆記体と、赤外光を発光する発光手段と、用紙からの赤外光の反射を受光する受光手段とを備え、処理手段により前記用紙に発光した反射光を受光し、前記筆記体が通過した領域のドット情報を位置データとして算出し、記録手段により前記位置データを記録してなる電子入力ペンにおいて、前記筆記体が、赤外光を透過し、消しゴムで消去可能な鉛芯を備えたものであることを特徴とする電子入力ペン。
【請求項2】
前記筆記体が、少なくとも窒化硼素と、シリカ又は粘土を成分とした焼結体の気孔内部にインクを充填してなる色鉛芯を収納しチャックが樹脂で形成された繰出機構を備えた、ケースに着脱自在に挿着してなるシャープペンシル体である、請求項1に記載の電子入力ペン。


【図1】
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【図2】
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