説明

電子内視鏡システムにおけるノイズ除去方法及び装置

【課題】撮像素子からの出力信号に高ゲインを掛けることなく観察画像の縞ノイズを除去する。
【解決手段】撮像素子を有する内視鏡と、該撮像素子からの出力信号に基づいて画像を生成するビデオプロセッサとを備える電子内視鏡システムにおいて、撮像素子の連続する第1から第3のラインにおいて、注目画素と隣接画素に基づいて求められる該注目画素の輝度と、第1のラインにおいて注目画素に隣接する画素と隣接画素から求められる輝度と、第3のラインにおいて注目画素に隣接する画素と隣接画素から求められる輝度とを用いて、第1の画素の輝度と第3の画素の輝度の平均値を求め、第2のラインにおいて注目画素と隣接画素のいずれかの画素が飽和しているか否かを判定し、飽和している場合は注目画素の輝度を該平均値を用いて補正し、これらの処理を第2のラインの各画素に対して繰り返し実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡の撮像素子からの画像信号において発生する縞ノイズの除去方法及び除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体腔内に細径で長尺の挿入部を挿入することによって対象部位を観察及び撮像を行うことができる電子内視鏡を備える電子内視鏡システムが広く用いられている。電子内視鏡システムでは、電子内視鏡の挿入部の先端部に設けられた撮像素子によって体腔内の部位を撮像し、電子内視鏡に接続されたビデオプロセッサによって撮像素子が生成する画像信号を処理して撮像画像を生成してモニタに出力する。
【0003】
撮像素子では、ドライバからの水平同期信号や垂直同期信号などの駆動信号に基づいて、光電変換された出力信号が読み出される。撮像素子からの出力信号は、ビデオプロセッサの信号処理回路において、相関二重サンプリング、オートゲインコントロール、ホワイトバランス、エンハンス、γ補正などの画像処理が施され観察画像に変換され、さらに色調整やノイズリダクションなどの信号処理を施された後モニタに出力され、観察画像がモニタに表示される。
【0004】
撮像素子からの出力信号の読み出しの一例として、特許文献1に開示される構成が挙げられる。特許文献1の電子内視鏡システムにおいては、撮像素子であるCCD(Charge-Coupled Device)は出力が複数ある複数チャンネル読み出し型のCCDである。このCCDをCCD水平転送駆動パルス発生回路から出力される同一タイミングのパルスによって駆動する。そして、CCDからの出力信号に対する処理を、チャンネル数と同数でありかつ同一構成を有する回路によって行い、これらの回路で処理された信号をデジタルで合成する。従って、1水平転送期間内にチャンネル数と同数のライン分の信号電荷が読み出される。
【0005】
ここで、CCDから出力されるRAWデータに基づいて観察画像を生成する過程において、インターレース走査によって輝度を算出する方法について説明する。図1に、CCDのベイヤ画素配列を示す。ベイヤ画素配列では、CCDの総画素数Nに対して、緑の解像度はN/2、赤および青の解像度はN/4になるため、各画素毎に周辺の画素の出力を用いて補間演算を行うことによりN個のR,G,Bの組が生成される。図1に示すように、R,G,Bの3原色は、互いに隣接する4画素におけるWr,Gb,Gr,Wbの4補色により生成される。そして、各画素の輝度は、水平方向のラインにおいて隣接する2画素の画素値の平均値から求められる。すなわち、ベイヤ画素配列内の任意の隣接する2ライン、すなわち奇数ラインと偶数ラインの組に注目し、任意の奇数ラインの輝度をY、該奇数ラインに隣接する偶数ラインの輝度をYとし、Wr,Gb,Gr,Wbに対応する画素における画素値をそれぞれVWr,VGb,VGr,VWbとすると、Yは(VWr+VGb)/2で、またYは(VGr+VWb)/2で与えられる。ここで、シアン、マゼンタ、黄、緑に対応する画素値を、それぞれVCy,VMg,VYe,Vとすると、
Wr=VCy+VMg
Wb=VCy+V
Gr=VYe+VMg
Gb=VYe+V
であるため、
=(VWr+VGb)/2=(VCy+VMg+VYe+V)/2、
=(VGr+VWb)/2=(VYe+VMg+VCy+V)/2、
が成り立つ。
【0006】
図2は、12ビット信号処理により観察画像を生成する場合の、Wr,Wb,Gr,Gbに対応する画素における、受光量に対する各輝度の推移を示すグラフである。12ビット信号であるため、各画素の輝度の飽和値は電子的な閾値として値4095が設定されている。図2の一点鎖線のグラフLに代表されるように、RAWデータにおける各画素の輝度は、受光量が大きくなるにつれて、輝度の変化が小さくなる特性を示すため感度が悪くなる。そこで、従来では、グラフLの受光量が小さい範囲における線形部分のみを用いるべく、CCDの出力信号にゲインを掛けている。ゲインを掛けることにより、各画素の輝度は、図2の実線の各グラフが示すように、飽和値に達するまで画素の受光量に対して略リニアに変化する特性を示す。なお、掛けるゲインを高くするにつれて、実線の各グラフの傾きは大きくなる。
【0007】
ここで、画素における輝度が飽和値に達しない場合は、奇数ラインの輝度Yと偶数ラインの輝度Yとは同じ値となるため、奇数ラインと偶数ラインとの間で輝度差は発生しない、すなわち観察画像において縞となるノイズは発生しない。しかし、Wr,Gb,Gr,Wbに対応する画素の各輝度はそれぞれ異なる受光量にて飽和値に達するため、奇数ライン内又は偶数ライン内の画素に飽和値に達する画素が存在する場合、奇数ラインと偶数ラインとの間で輝度差が発生する。図2に示すグラフの場合、Wrに対応する画素の輝度が飽和値に達するまでは、奇数ライン及び偶数ラインの輝度は、破線のグラフが示すように、同じ値を取りながら推移する。しかし、Wrに対応する画素の輝度が飽和値に達すると、それ以降は二点鎖線の各グラフが示すように、受光量の増加に対する奇数ラインの輝度の増加が偶数ラインの輝度の増加に比べて緩やかになり、奇数ラインの輝度と偶数ラインの輝度との差が生じる。すなわち、グラフの斜線部の領域が示すように、奇数ラインと偶数ラインとの間に輝度差が生じる。この結果、観察画像に縞ノイズが発生してしまう。
【0008】
そこで従来は、ライン間の輝度差を補正して縞ノイズを除去するために、輝度のゲインアップを行うことや、信号処理回路において縞の繰り返しの周波数を減衰させるフィルタ処理を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−313434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来においては、CCDからの出力信号に高ゲインを掛けているため、ランダムノイズが発生し、画像信号のS/N比が悪化する可能性がある。従って、観察画像の品質が低下する可能性がある。一方、掛けるゲインを低くすると、ランダムノイズの発生やS/N比の悪化は回避しやすくなるものの、図2に示す実線の各グラフの傾きが小さくなり、各輝度の飽和値に達する受光量が大きく異なってくるため、斜線部の領域が大きくなる。すなわち、観察画像において縞ノイズが目立ってきてしまう。
【0011】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、撮像素子からの出力信号に対して高ゲインを掛けることなく縞ノイズを除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の縞ノイズ除去方法は、撮像素子を有する電子内視鏡と、撮像素子からの出力信号に基づいて画像を生成するビデオプロセッサとを備える電子内視鏡システムにおける縞ノイズ除去方法であって、撮像素子の任意の連続する第1から第3のラインにおいて、第2のラインのいずれかの画素を注目画素とみなし、注目画素の画素値と、第2のライン内の注目画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、注目画素の輝度を求める注目画素の輝度算出ステップと、第2のラインにおいて注目画素及び注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和しているか否かを判定する飽和判定ステップと、第2のラインにおいて注目画素及び注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していると判定された場合は、第1のラインにおける注目画素に隣接する画素の画素値と第3のラインにおける注目画素に隣接する画素の画素値とから求められる補正値を用いて、注目画素の輝度を補正する輝度補正ステップと、第2のラインにおいて注目画素及び注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していないと判定された場合は、注目画素の輝度算出ステップにより求められる輝度を注目画素の輝度と決定する輝度決定ステップとを有し、第2のラインとして撮像素子の各ラインを順次指定して、指定された第2のラインの各画素に対して各ステップを繰り返し実行する。好ましくは、縞ノイズ除去方法は、第1のラインにおいて注目画素に対応する第1の画素の画素値と、第1のライン内の第1の画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、第1の画素の輝度を求める第1の画素の輝度算出ステップと、第3のラインにおいて注目画素に対応する第2の画素の画素値と、第3のライン内の第2の画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、第2の画素の輝度を求める第2の画素の輝度算出ステップと、第1の画素の輝度と第2の画素の輝度の平均値を求める輝度平均値算出ステップとをさらに有し、輝度補正ステップにおいて、当該平均値を補正値として用いる。これにより、注目画素を有するラインと隣接するラインとの間に発生した輝度差を解消して縞ノイズの発生を防止することができる。
【0013】
また、好ましくは、第2のラインにおいて注目画素及び注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していると判定された場合、平均値が注目画素の輝度の値を超えるときは、第2のラインの輝度の値として平均値を採用し、平均値が注目画素の輝度の値を超えないときは、第2のラインの輝度の値として注目画素の輝度の値を採用する。従って、注目画素を有するラインの画素が飽和する場合に、当該ラインが隣接するラインよりも先に飽和して隣接するラインとの輝度差が発生したときに輝度差を解消して縞ノイズを除去することができる。
【0014】
また、本発明の縞ノイズ除去装置は、撮像素子を有する電子内視鏡と、撮像素子からの出力信号に基づいて画像を生成するビデオプロセッサとを備える電子内視鏡システムであって、ノイズ除去部を備え、ノイズ除去部は、撮像素子の任意の連続する第1から第3のラインのデータを格納するラインメモリと、ラインメモリに格納された第1から第3のラインのデータから第1から第3のラインの画素の輝度を計算する輝度計算部と、ラインメモリに格納された第2のラインのデータから第2のラインの画素の飽和状態を判定する飽和状態判定部と、第2のラインの画素の輝度を補正する輝度補正部とを有し、輝度計算部は、第2のラインのいずれかの画素を注目画素とみなし、注目画素の画素値と、第2のライン内の注目画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、注目画素の輝度を求め、飽和状態判定部は、第2のラインにおいて注目画素及び注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和しているか否かを判定し、輝度補正部は、第2のラインにおいて注目画素及び注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していると判定された場合は、第1のラインにおける注目画素に隣接する画素の画素値と第3のラインにおける注目画素に隣接する画素の画素値とから求められる補正値を用いて、注目画素の輝度を補正し、第2のラインにおいて注目画素及び注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していないと判定された場合は、輝度計算部により求められる輝度を注目画素の輝度と決定し、ラインメモリには、撮像素子の各ラインのデータが1ラインずつ遅延して順次格納されていく。さらに、輝度計算部は、第1のラインにおいて注目画素に対応する第1の画素の画素値と、第1のライン内の第1の画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、第1の画素の輝度を求め、第3のラインにおいて注目画素に対応する第2の画素の画素値と、第3のライン内の第2の画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、第2の画素の輝度を求め、さらに、第1の画素の輝度と第2の画素の輝度の平均値を求め、輝度補正部は、当該平均値を補正値として用いる。
【0015】
輝度補正部は、第2のラインにおいて注目画素及び注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していると判定された場合、平均値が注目画素の輝度の値を超えるときは、第2のラインの輝度の値として平均値を採用し、平均値が注目画素の輝度の値を超えないときは、第2のラインの輝度の値として注目画素の輝度の値を採用する。また、ノイズ除去部は、電子内視鏡あるいはビデオプロセッサに設けられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の縞ノイズ除去方法によれば、撮像素子の出力信号に対して高ゲインを掛けることなく隣接するライン間で発生した輝度差を解消して縞ノイズを除去することができるため、ランダムノイズを発生させることなく診断に良好な観察画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、CCDの画素配列を示す図である。
【図2】図2は、各画素の輝度および図1の画素配列における奇数ラインと偶数ラインとの輝度差を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の一実施形態におけるノイズ除去方法を採用した電子内視鏡システムの概略を示すブロック図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態におけるノイズ除去方法を採用した電子内視鏡のノイズ除去部の概略を示すブロック図である。
【図5】図5(a)は、本発明の一実施形態におけるCCDの注目画素及び隣接画素を示す図であり、図5(b)は、本発明の一実施形態におけるCCDの注目画素及び隣接画素の画素値の例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態におけるノイズ除去の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態におけるノイズ除去方法について説明する。
【0019】
図3は、本実施形態におけるノイズ除去方法を用いる電子内視鏡システム100の概略を示すブロック図である。電子内視鏡1の電気的消去可能読み取り専用メモリ(EEPROM)9には、画素数やフレームレートなど、CCD4固有のプロパティ情報があらかじめ格納されている。電子内視鏡1がビデオプロセッサ2に接続されると、EEPROM9に格納されているプロパティ情報がペリフェラルドライブ11に読み込まれた後にシステムコントロール部12に送られる。システムコントロール部12は、電子内視鏡1のEEPROM9から得られるCCD4の駆動特性に関する情報に基づいて、CCD4やビデオプロセッサ2などの制御を切り替える。また、システムコントロール部12は、電子内視鏡1内のEEPROM9に格納されている情報、電子内視鏡1の操作部に設けられた各種操作用のボタン6やビデオプロセッサ2に設けられたパネルスイッチ14の操作、ビデオプロセッサ2に接続されたキーボード15からの入力に基づいて画像処理部10の動作を制御する。例えば、システムコントロール部12はフレームレートの情報に基づいて画像処理部10の動作を制御する。
【0020】
ビデオプロセッサ2の光源部13で発生した光は、ライトガイド5によって電子内視鏡1の挿入部の先端に伝搬され、照明光として患者の体腔内の観察対象物に照射される。対象部位からの反射光は、挿入部の先端に設けられた対物光学系(図示せず)を介してCCD4に進行する。CCD4の撮像面は、電子内視鏡1の挿入部において、挿入部の先端に設けられた対物光学系によって観察対象物の像が結ばれる位置に配置されている。また、電子内視鏡1の操作部に設けられた各種操作用のボタン6を操作することにより、操作信号がビデオプロセッサ2内のシステムコントロール部12に送られ、静止画像や動画の記録、送気、送水などの種々の処理が行なわれる。
【0021】
CCD4によって光電変換された撮像信号は、図示しない処理部によって増幅、サンプルホールド処理、A/D変換、ノイズ除去などの前処理が施された後、色変換部7とノイズ除去部8に送られる。色変換部7では、CCD4の出力信号が色差信号Cb,Crに変換される。また、ノイズ除去部8では、CCD4の出力信号が輝度信号Yに変換されて縞ノイズを除去する処理が行われる。図4は、ノイズ除去部8の概略を示すブロック図である。ノイズ除去部8において、CCD4の互いに隣接する3つのラインのデータが、1ラインごとにラインメモリ20,21,22に格納される。なお、ラインメモリ20,21,22には、出力信号がそれぞれ1ラインずつ遅延して格納される。
【0022】
図5(a)は、任意の注目画素とその周辺の画素P1〜P9を示す図である。ラインメモリ20には画素P7,P8,P9を含むラインの出力信号が、ラインメモリ21には画素P4,P5,P6を含むラインの出力信号が、ラインメモリ22には画素P1,P2,P3を含むラインの出力信号がそれぞれ格納されている。各ラインメモリ20,21,22に格納されているデータは、輝度計算部24に送られる。また、ラインメモリ21のデータは、飽和状態判定部23にも送られる。飽和状態判定部23は、ラインメモリ21内の画素を1つずつ注目画素P5として順次設定する。ここで、注目画素P5とは、CCDの画素マトリクスにおいて、図5(a)に示すように互いに隣接する任意の9つの画素P1〜P9を1つの群とし、この1群の画素のうち中心にある画素をいう。飽和状態判定部23は、それぞれの注目画素P5について、注目画素P5及び隣接画素P4,P6のいずれかの画素の画素値が飽和値に達しているか否かを判定し、判定結果を飽和状態信号として輝度補正部25に送る。画素P4,P5,P6のいずれかが飽和している場合は、飽和状態信号が1に設定され、いずれも飽和していない場合は、飽和状態信号が0に設定される。
【0023】
続いて図5(a)を参照しながら画素の輝度の算出方法について説明する。輝度計算部24は、ラインメモリ20,21,22に格納されているデータに基づいて注目画素P5の輝度と縞ノイズを除去するための補正輝度とを算出する。まず、輝度計算部24は、ラインメモリ21内のいずれかの画素を注目画素P5とし、注目画素P5の上下左右斜めに配置されている8つの画素を図5(a)に示すように画素P1〜P3,P4,P6,P7〜P9とみなす。ここで、画素Pk(k=1〜9)の画素値をVk、輝度をYPkとし、注目画素P5の輝度YP5が、
P5=(V4+V5)/2
で与えられるとする。また、注目画素P5の上側に隣接する画素P2の輝度Yが、
=(V1+V2)/2(=YP2
で与えられ、注目画素P5の下側に隣接する画素P8の輝度Yが、
=(V7+V8)/2(=YP8
で与えられるとする。そして、補正輝度Y’を注目画素の上側と下側に隣接する画素の各輝度の平均値とすると、
Y’=(Y+Y)/2
となる。
【0024】
例えば、注目画素P5として奇数ラインのWrに対応する任意の画素を選択した場合を考える。このとき、図5(a)に示すように、画素P1〜P9の画素値を、それぞれVWb(P1),VGr(P2),VWb(P3),VGb(P4),VWr(P5),VGb(P6),VWb(P7),VGr(P8),VWb(P9)とする。すると、
P5=(V4+V5)/2=(VGb(P4)+VWr(P5))/2、
=(V1+V2)/2=(VWb(P1)+VGr(P2))/2、
=(V7+V8)/2=(VWb(P7)+VGr(P8))/2、
となる。また、補正輝度Y’は、
Y’=(Y+Y)/2=(VWb(P1)+VGr(P2)+VWb(P7)+VGr(P8))/4
となる。
【0025】
輝度計算部24は、輝度YP5及び補正輝度Y’を算出してそれぞれ輝度補正部25に送る。そして、輝度補正部25は、輝度YP5、補正輝度Y’、飽和状態判定部23からの飽和状態信号に基づいて注目画素P5の輝度を補正する。そして、画素マトリクスの任意のラインにおいて列を1列ずつずらして注目画素を順次指定し、当該ライン内のすべての画素について注目画素の輝度計算、補正輝度計算、及び飽和状態の判定を行って注目画素の輝度補正を行う。当該ライン内のすべての画素に対する輝度補正が完了したら、行を1行ずらして新しいラインを指定し、新しいライン内のすべての画素について同様の処理を行う。こうして画素マトリクス内のすべての画素について輝度補正を行う。具体的な補正方法については後述する。
【0026】
ここで図6に示す、本実施形態のノイズ除去部8における縞ノイズ除去処理のフローチャートを参照する。ステップS101において、輝度計算部24により注目画素P5の輝度YP5が計算される。続いてステップS103において、輝度計算部24により注目画素P5の上下の隣接画素の輝度の平均値Y’が計算される。次にステップS105に進み、飽和状態判定部23において画素P4,P5,P6のいずれかの画素が飽和しているか否かを判定する。飽和していると判定された場合はステップS107に進む。画素P4,P5,P6のいずれかが飽和している場合は、注目画素P5を含むラインと上下のラインとの間に輝度差が発生しているとみなす。ステップS107においては、輝度補正部25には値が1である飽和状態信号が送られる。画素P4,P5,P6のいずれかが飽和しているので、輝度補正部25は、ステップS103で計算されたY’を補正輝度としてY’がYP5よりも大きい値か否かを判定する。Y’がYP5よりも大きい場合はステップS109に進み、輝度補正部25によって補正後の輝度YoutとしてY’が設定される。従って、上の例で注目画素P5を奇数ラインのWrに対応する画素とした場合は、注目画素P5の輝度(VGb(P4)+VWr(P5))/2が、(VWb(P1)+VGr(P2)+VWb(P7)+VGr(P8))/4に補正され、補正された値がYoutとして設定される。
【0027】
一方、ステップS105において画素P4,P5,P6のいずれも飽和していないと判定された場合は、注目画素P5を含むラインと上下のラインとの間に輝度差は発生していないとみなし、輝度補正を行わない。従って、ステップS111に進む。ステップS111においては、輝度補正部25には値が0である飽和状態信号が送られる。そして、輝度補正部25によって補正後の輝度YoutとしてYP5が設定される。また、ステップS107において、YP5がY’以上の値を取る場合もステップS111に進んで補正後の輝度YoutにYP5が設定される。従って、上の例で注目画素P5を奇数ラインのWrに対応する画素とした場合は、注目画素P5の輝度(VGb(P4)+VWr(P5))/2が、補正されずにYoutとして設定される。
【0028】
以上の処理により、図2のグラフに示したようにWrに対応する画素の輝度がGb,Gr,Wbに対応する他の画素の輝度よりも先に飽和値に達して隣接するラインとの間に輝度差が生じる場合でも、飽和した画素を注目画素P5として上記の判定を行い、飽和値に達した画素を有するラインの輝度を隣接するラインの輝度に合わせることにより、輝度差を解消して観察画像における縞ノイズの発生を防止することができる。
【0029】
色変換部7により変換された色差信号とノイズ除去部8により補正された輝度信号は、画像処理部10に送られる。画像処理部10は、受信した色差信号及び輝度信号に対してクランプ、ニー、γ補正、補間処理、AGC(Auto Gain Control)、A/D変換などの所定の信号処理を施して、その処理信号を、図示省略されたフレームメモリにフレーム単位でバッファリングする。バッファリングされた信号は、所定のタイミングでフレームメモリから掃き出されて、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)などの所定の規格に準拠した映像信号に変換されてモニタ3に出力される。これにより、体腔内の観察画像がモニタ3に表示される。
【0030】
以上が、本発明の実施形態に関する説明である。なお、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲においてさまざまな変形が可能である。上記の説明では、撮像素子としてCCDを想定しているが、例えば各画素に別個のフィルタ特性を有する4種類の色フィルタを配設し(黄(Ye)、マゼンダ(Mg)、シアン(Cy)、及びフィルタ無しをマトリクス状に規則的に配置するなど)、各画素の出力をマトリクス演算する構成としたCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)にも本発明を適用して上記の効果を達成することが可能である。
【0031】
また、上記の説明では、注目画素などの輝度を算出するにあたって左隣の画素の画素値との平均値を用いているが、右隣の画素の画素値との平均値や両隣の画素の画素値との平均値を用いて計算してもよい。すなわち、上記の説明において、注目画素P5の輝度YP5を、(V5+V6)/2として求めることもできるし、(V4+2×V5+V6)/4として求めることもできる。さらに、画素P2や画素P8などその他の画素の輝度についても同様に求めることができる。また、上記の説明では、縞ノイズ除去を行うノイズ除去部8を電子内視鏡1側に設けているが、ビデオプロセッサ2に設けてもよいし、ノイズ除去部8の各処理部のうち、一部を電子内視鏡1側に設け、残りの処理部をビデオプロセッサ2側に設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 電子内視鏡
2 ビデオプロセッサ
4 CCD
8 ノイズ除去部
20〜21 ラインメモリ
23 飽和状態判定部
24 輝度計算部
25 輝度補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を有する電子内視鏡と、該撮像素子からの出力信号に基づいて画像を生成するビデオプロセッサとを備える電子内視鏡システムにおける縞ノイズ除去方法であって、
前記撮像素子の任意の連続する第1から第3のラインにおいて、第2のラインのいずれかの画素を注目画素とみなし、該注目画素の画素値と、該第2のライン内の該注目画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、該注目画素の輝度を求める注目画素の輝度算出ステップと、
前記第2のラインにおいて前記注目画素及び該注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和しているか否かを判定する飽和判定ステップと、
前記第2のラインにおいて前記注目画素及び該注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していると判定された場合は、前記第1のラインにおける該注目画素に隣接する画素の画素値と前記第3のラインにおける該注目画素に隣接する画素の画素値とから求められる補正値を用いて、該注目画素の輝度を補正する輝度補正ステップと、
前記第2のラインにおいて前記注目画素及び該注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していないと判定された場合は、前記注目画素の輝度算出ステップにより求められる輝度を該注目画素の輝度と決定する輝度決定ステップと、を有し、
前記第2のラインとして前記撮像素子の各ラインを順次指定して、該指定された第2のラインの各画素に対して各ステップを繰り返し実行する、
ことを特徴とする電子内視鏡システムにおける縞ノイズ除去方法。
【請求項2】
前記縞ノイズ除去方法は、
前記第1のラインにおいて前記注目画素に対応する第1の画素の画素値と、該第1のライン内の該第1の画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、該第1の画素の輝度を求める第1の画素の輝度算出ステップと、
前記第3のラインにおいて前記注目画素に対応する第2の画素の画素値と、該第3のライン内の該第2の画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、該第2の画素の輝度を求める第2の画素の輝度算出ステップと、
前記第1の画素の輝度と前記第2の画素の輝度の平均値を求める輝度平均値算出ステップと、をさらに有し、
前記輝度補正ステップにおいて、前記平均値を前記補正値として用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡システムにおける縞ノイズ除去方法。
【請求項3】
前記第2のラインにおいて前記注目画素及び該注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していると判定された場合、前記平均値が該注目画素の輝度の値を超えるときは、該第2のラインの輝度の値として該平均値を採用し、該平均値が該注目画素の輝度の値を超えないときは、該第2のラインの輝度の値として該注目画素の輝度の値を採用することを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡システムにおける縞ノイズ除去方法。
【請求項4】
撮像素子を有する電子内視鏡と、該撮像素子からの出力信号に基づいて画像を生成するビデオプロセッサとを備える電子内視鏡システムであって、
ノイズ除去部を備え、
前記ノイズ除去部は、
前記撮像素子の任意の連続する第1から第3のラインのデータを格納するラインメモリと、
前記ラインメモリに格納された前記第1から第3のラインのデータから前記第1から第3のラインの画素の輝度を計算する輝度計算部と、
前記ラインメモリに格納された前記第2のラインのデータから前記第2のラインの画素の飽和状態を判定する飽和状態判定部と、
前記第2のラインの画素の輝度を補正する輝度補正部と、を有し、
前記輝度計算部は、
前記第2のラインのいずれかの画素を注目画素とみなし、該注目画素の画素値と、該第2のライン内の該注目画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、該注目画素の輝度を求め、
前記飽和状態判定部は、
前記第2のラインにおいて前記注目画素及び該注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和しているか否かを判定し、
前記輝度補正部は、
前記第2のラインにおいて前記注目画素及び該注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していると判定された場合は、前記第1のラインにおける該注目画素に隣接する画素の画素値と前記第3のラインにおける該注目画素に隣接する画素の画素値とから求められる補正値を用いて、該注目画素の輝度を補正し、
前記第2のラインにおいて前記注目画素及び該注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していないと判定された場合は、前記輝度計算部により求められる輝度を該注目画素の輝度と決定し、
前記ラインメモリには、前記撮像素子の各ラインのデータが1ラインずつ遅延して順次格納されていく、
ことを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項5】
前記輝度計算部は、
前記第1のラインにおいて前記注目画素に対応する第1の画素の画素値と、該第1のライン内の該第1の画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、該第1の画素の輝度を求め、
前記第3のラインにおいて前記注目画素に対応する第2の画素の画素値と、該第3のライン内の該第2の画素に隣接する少なくとも1つの画素の画素値とに基づいて、該第2の画素の輝度を求め、
さらに、前記第1の画素の輝度と前記第2の画素の輝度の平均値を求め、
前記輝度補正部は、前記平均値を前記補正値として用いる、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子内視鏡システム。
【請求項6】
前記輝度補正部は、前記第2のラインにおいて前記注目画素及び該注目画素に隣接する画素のいずれかの画素が飽和していると判定された場合、前記平均値が該注目画素の輝度の値を超えるときは、該第2のラインの輝度の値として該平均値を採用し、該平均値が該注目画素の輝度の値を超えないときは、該第2のラインの輝度の値として該注目画素の輝度の値を採用することを特徴とする請求項5に記載の電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記ノイズ除去部は、前記電子内視鏡に設けられることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の電子内視鏡システム。
【請求項8】
前記ノイズ除去部は、前記ビデオプロセッサに設けられることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200514(P2011−200514A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71775(P2010−71775)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】