説明

電子内視鏡装置

【課題】 内視鏡画像をネットワークに転送する場合、誤って個人情報を流出するのを防ぐ。
【解決手段】 ビデオスコープ50が接続されるプロセッサ10に、プロセッサ信号処理回路28と直接接続されたネットワーク出力処理回路48を設ける。ネットワーク出力処理回路48において、プロセッサ信号処理回路28から出力された映像信号を処理し、コンピュータ80を介して観察画像データをネットワーク上へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を有するビデオスコープを備えた電子内視鏡装置に関し、特に、被写体像に患者名等の文字情報、キャラクタ情報を重ねて表示させるスーパーインポーズ処理に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡装置では、ビデオスコープによる観察画像に患者名、日付等の文字情報を重ねて表示、記録するため、スーパーインポーズ処理が施される。すなわち、撮像素子から読み出された画像信号に基づいて生成される映像信号に対し、文字情報等に応じたキャラクタ信号を重畳させ、モニタ、プリンタ、コンピュータなどの外部機器へ出力する。内視鏡に関わる学会への発表やネットワーク上など公の場で観察画像を提示する場合、患者のプライバシー保護の観点から患者名などの個人情報を削除する必要がある。このような問題に対処する方法として、例えば、スーパーインポーズする文字情報を画像ごとに選択する回路が設けられる(特許文献1参照)。この場合、外部機器の数に合わせて映像信号を生成して出力し、外部機器の種類に応じてスーパーインポーズされる文字情報が変更される。
【特許文献1】特開平11−341484号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電子内視鏡装置のメンテナンスとしてネットワークを利用するサービスが可能であり、病院内に設置された電子内視鏡装置から内視鏡画像をサービスセンターなどへネットワーク経由で転送し、画質等を判断して装置の状態を点検することができる。しかしながら、作業者が誤操作をして、映像信号に本来表示すべきでない個人情報(患者名など)をスーパーインポーズさせてしまった場合、ネットワーク上に個人情報が流出してしまい、第3者が個人情報を不正に使用する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の電子内視鏡装置は、撮像素子を有するビデオスコープを備えた電子内視鏡装置であって、被写体像に応じて前記撮像素子から読み出される画像信号に基いて映像信号を生成し、ネットワーク用映像信号と、外部機器用映像信号とを出力する信号処理回路と、個人情報に関するキャラクタ信号を前記外部機器用映像信号にスーパーインポーズするスーパーインポーズ回路と、前記ネットワーク用映像信号が直接入力されるとともに、前記ネットワーク用映像信号を信号処理してネットワークへ出力するネットワーク用信号処理回路とを備える。ここで個人情報とは、患者名など第3者に開示すべきでない情報を意味する。
【0005】
ネットワーク専用の回路が信号処理回路と直接接続され、スーパーインポーズ用回路とは独立している。そのため、作業者が誤操作し、個人情報が誤ってネットワークへ流れる心配がない。
【0006】
メンテナンスにおいて明るさ、色などの画質が適正であるか否か点検する場合、送られてきた内視鏡画像を生成しているビデオスコープの特性、あるいはあらかじめ設定されているゲイン値などの色データ等の情報が必要になる。そのため、内視鏡画像の画質および該内視鏡画像を生成したビデオスコープの特性に関連するデータのうち少なくともいずれか一方を、前記ネットワーク用映像信号に選択的に付加する画像関連データ付加手段を設けるのがよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内視鏡画像をネットワークに転送する場合、誤って個人情報を流出させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態である電子内視鏡装置について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態である電子内視鏡装置のブロック図である。
【0010】
電子内視鏡装置は、CCD54を有するビデオスコープ50と、CCD54から読み出される画像信号を処理するプロセッサ10とを備え、被写体像を表示するモニタ32やキーボード34A、およびネットワーク送信用のコンピュータ80がプロセッサ10に接続される。ビデオスコープ50は、プロセッサ10に着脱自在に接続される。
【0011】
プロセッサ10のランプ点灯スイッチ(図示せず)がON操作されると、ランプ制御部11Aを含むランプ電源11からランプ12へ電源が供給される。ランプ12から放射された光は、集光レンズ(図示せず)等を介してビデオスコープ50内に設けられたライトガイド51の入射端51Aに入射する。ライトガイド51は、ランプ12から放射される光をビデオスコープ50の先端側へ伝達する光ファイバー束であり、ライトガイド51を通った光は出射端51Bから出射し、拡散レンズである配光レンズ(図示せず)を介して観察部位Sに光が照射される。
【0012】
観察部位Sにおいて反射した光は対物レンズ(図示せず)を通ってCCD54に到達し、これにより観察部位Sの被写体像がCCD54の受光面に形成される。本実施形態では、カラー撮像方式として単板同時式が適用されており、CCDの受光面上にはイエロー(Ye)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)の色要素が市松状に並べられた補色カラーフィルタ(図示せず)が受光面の各画素に対応するよう配置されている。CCD54では、補色カラーフィルタを通る色に応じた被写体像の画像信号が光電変換により発生し、所定時間間隔ごとに1フレームもしくは1フィールド分の画像信号が、色差線順次方式に従って順次読み出される。カラーテレビジョン方式として例えばNTSC方式が適用されており、1/30秒間隔ごとに1フレーム(1/60秒間隔ごとに1フィールド)分の画像信号が順次読み出され、初期信号処理回路55へ送られる。初期信号処理回路55では、増幅処理等が実行され、画像信号はプロセッサ10のプロセッサ信号処理回路28へ送られる。
【0013】
プロセッサ信号処理回路28では、輝度信号と色信号に分離する分離処理、R、G、B信号を生成するマトリクス演算、ホワイトバランス調整、ガンマ補正、輝度、色差信号生成処理など様々な処理が実行され、映像信号が生成される。ここではカラーTV規格に合わせて3つの出力系統が用意されており、モニタ32などの外部機器用の映像信号が3系統に分かれてプロセッサ信号処理回路28から出力される。出力された映像信号は、スイッチ回路42、44、46を介してエンコーダ32、34、36へ送信される。エンコーダ32、34、36では所定の処理が映像信号に対して施され、NTSCコンポジット信号、Y/C分離信号(Sビデオ信号)、RGB分離信号がそれぞれ生成されてモニタ32へ出力可能となる。これにより、被写体像がモニタ32に映し出される。一方、プロセッサ信号処理回路28では、入力された画像信号に基いて被写体像の明るさを示す輝度値が算出され、輝度データがシステムコントロール回路22へ送られる。
【0014】
ネットワーク出力処理回路48は、映像信号をネットワーク上へ送信するための専用回路であり、プロセッサ信号処理回路28と直接接続されている。プロセッサ信号処理回路28から生成された映像信号がネットワーク出力処理回路48へ送られると、ネットワーク出力用の処理が映像信号に対して施される。処理された映像信号はコンピュータ80へ送信され、インターネットなどのネットワークを介してサービスセンターなどへ映像データが送られる。
【0015】
CPU24を含むシステムコントロール回路22はプロセッサ10全体を制御し、ランプ電源11のランプ制御部11A、プロセッサ信号処理回路28などの各回路に制御信号を出力する。タイミングコントロール回路30では、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスがプロセッサ10内の各回路に出力される。RAM26には、ビデオスコープ50から送られてくるスコープ固有のスコープデータ、あるいは画質調整のため設定される色データ、調光データなどが格納される。色データは、ホワイトバランス調整などにおいて設定されるゲイン値などのデータであり、調光データは測光方式(平均測光、ピーク測光)など調光に関するデータである。
【0016】
ビデオスコープ50内には、ビデオスコープ50全体を制御するスコープ制御部56、データ書き換え可能なEEPROM57が設けられている。スコープ制御部56はEEPROM57からデータを読み出すとともに、初期信号処理回路55を制御する。ビデオスコープ50がプロセッサ10に接続されると、スコープ制御部56とシステムコントロール回路22との間で適時データが送受信され、必要に応じてスコープ制御部56からシステムコントロール回路22へ、あるいは、システムコントロール回路22からスコープ制御部56へデータが送信される。データとしては。CCD54の画素数などビデオスコープ50の特性に関するデータ等が送信される。
【0017】
ランプ12とライトガイド51の入射端51Aとの間には、集光レンズに加えて照明光量を調整する絞り16が設けられている。輝度データに基づいてシステムコントロール回路22からペリフェラルコントロール回路23へ制御信号が送信されると、被写体像の明るさが適正となるように絞り16が開閉して調光する。
【0018】
OSD回路31は、モニタ32に表示される観察画像に患者名等の文字情報を重ねて表示するため、システムコントロール回路22から送られてくるキャラクタコードに基づき、スイッチ回路42、44、46へキャラクタ信号を送信する。スイッチ回路42、44、46はシステムコントロール回路22によって切替タイミングが制御され、所定の文字情報がモニタ32の所定位置へ表示されるように、スイッチ切替用の制御信号が適正なタイミングでスイッチ回路42、44、46へ送信される。これにより、映像信号の間にキャラクタ信号が適切なタイミングで間挿され、観察画像に文字情報がスーパーインポーズされる。
【0019】
プロセッサ10では、スコープデータや色データなどの情報をネットワークへ送る観察画像に付加することが可能であり、プロセッサ10のフロントパネルには、それらデータを転送するための転送ボタン49が設けられている。転送ボタン49が操作されると、RAM26に格納された調光データ、色データ、スコープデータといった画質などに関係する観察画像関連データが、ネットワーク出力処理回路48へ送られる。観察画像関連データとともに映像信号がサービスセンターへ送信されると、観察画像関連データに基づいて画質を診断し、内視鏡装置の点検が行われる。
【0020】
このように本実施形態によれば、プロセッサ10にネットワーク出力処理回路48が設けられる。プロセッサ信号処理回路28から出力された映像信号は直接ネットワーク出力処理回路48に入力され、個人情報が含まれない観察画像データがコンピュータ80を介してネットワーク上に送信される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態である電子内視鏡装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
10 プロセッサ
22 システムコントロール回路
28 プロセッサ信号処理回路
31 OSD回路
42、44、46 スイッチ回路
48 ネットワーク出力処理回路
50 ビデオスコープ
54 CCD(撮像素子)
55 初期信号処理回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を有するビデオスコープを備えた電子内視鏡装置であって、
被写体像に応じて前記撮像素子から読み出される画像信号に基いて映像信号を生成し、ネットワーク用映像信号と、外部機器用映像信号とを出力する信号処理回路と、
個人情報に関するキャラクタ信号を前記外部機器用映像信号にスーパーインポーズするスーパーインポーズ回路と、
前記ネットワーク用映像信号が直接入力されるとともに、前記ネットワーク用映像信号を信号処理してネットワークへ出力するネットワーク用信号処理回路と
を備えたことを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】
内視鏡画像の画質および該内視鏡画像を生成したビデオスコープの特性に関連するデータのうち少なくともいずれか一方を、前記ネットワーク用映像信号に選択的に付加する画像関連データ付加手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−247104(P2006−247104A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67194(P2005−67194)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】