説明

電子内視鏡

【課題】電子内視鏡装置において、撮像素子駆動信号の劣化を抑制する。
【解決手段】内視鏡挿入部の先端部11Aに撮像素子23を設ける。内視鏡操作部に、中継部26を設ける。操作部に設けられた中継部26に、撮像素子駆動回路27を設ける。内視鏡基部13に設けられたシステムクロックジェネレータ17のクロック信号に基づいてドライバ21から撮像素子23の駆動信号に対応する小振幅信号を出力する。センサクロック伝送経路30を介して伝送される小振幅信号を中継部26に設けられたレシーバ28で受信する。撮像素子駆動回路27において、小振幅信号に基づいて、撮像素子23に直接印加される駆動信号を生成し、センサクロック伝送経路31を介して撮像素子23へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スコープ本体と主要な映像信号処理を行うプロセッサ装置とが分離・離間して設けられる電子内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡では、挿入部先端に設けられた撮像素子からの映像信号をスコープ基端部に接続されるカメラコントロールユニット(プロセッサ装置)へと送り、所定の映像信号処理を施した後、モニタに表示する。挿入部先端は極めてスペースが限られるため、撮像素子を駆動するための駆動回路や映像信号を処理のための主なデバイスは、プロセッサ装置やスコープ基端部側の適当な場所(プロセッサ装置への接続を行うコネクタを備える内視鏡基部など)に配置される。このため、駆動信号は挿入部先端とプロセッサ装置とを結ぶ信号ケーブルを通して撮像素子へと送られ、得られた映像アナログ信号も、信号ケーブルを介してプロセッサ装置やスコープ基端部に配置されたアナログフロントエンド回路等へと送られる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−342531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば医療用の電子内視鏡では、信号ケーブルの長さが数メートルにおよぶため、撮像素子から信号ケーブルを介して伝送されるアナログ映像信号や、スコープ基端部側から信号ケーブルを介して伝送される撮像素子駆動信号に劣化が生じる。また、伝送路が長いことから伝送路がアンテナとなり電磁的な干渉の問題、例えばアナログ映像信号と撮像素子駆動信号との間におけるクロストークの問題などが発生する。
【0005】
本発明は、電子内視鏡装置において、撮像素子駆動信号の劣化を抑制することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子内視鏡は、先端部に撮像素子が設けられる挿入部と、挿入部の基端部に設けられる操作部と、プロセッサ装置に連結されるコネクタを備える内視鏡基部と、操作部と内視鏡基部とを連絡するユニバーサルコードとを備えた電子内視鏡であって、内視鏡基部側から第1伝送路を介してセンサクロック信号を受信し、撮像素子の駆動信号を生成する撮像素子駆動回路を備える中継部と、中継部から撮像素子へと駆動信号を伝送する第2伝送経路とを備え、中継部が、挿入部よりも基端部より、かつ内視鏡基部よりも先端部よりに配置されることを特徴としている。
【0007】
中継部は、操作部に設けられることが好ましい。第1伝送経路は、例えば差動伝送または光伝送を含む。また、第1伝送経路を介した通信は双方向通信であり、これにより伝送路の数を低減し、ユニバーサルコードを細径化できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子内視鏡装置において、撮像素子駆動信号の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態である電子内視鏡(スコープ本体)の構成を示す模式的な外観図である。
【図2】第1実施形態のスコープ本体の電気的な構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】第2実施形態のスコープ本体の電気的な構成を模式的に示すブロック図である。
【図4】双方向通信の第1の例の構成を示すブロック図である。
【図5】第1の例の双方向通信におけるタイミングチャートである。
【図6】双方向通信の第2の例の構成を示すブロック図である。
【図7】第2の例の双方向通信におけるタイミングチャートである。
【図8】混合信号C/Dの周波数スペクトル分布と、フィルタの帯域特性を示すグラフである。
【図9】双方向通信の第3の例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態である電子内視鏡の構成を示す模式的な外観図である。
【0011】
電子内視鏡システムは、スコープ本体(電子内視鏡)10と、スコープ本体10が接続され、各種画像処理を行うとともに、スコープ本体10に照明光を供給するプロセッサ装置(図示せず)と、プロセッサ装置に接続され、スコープ本体10で撮影された映像を表示するモニタ装置(図示せず)などから一般に構成される。図1には、スコープ本体(電子内視鏡)10の外観が示される。
【0012】
スコープ本体10は、体内や管孔内に挿入される可撓性を有する管状の挿入部11と、挿入部11の基端部に設けられ、ユーザによって保持され、操作される操作部12と、スコープ本体10をプロセッサ装置(図示せず)に連結するためのコネクタを備える内視鏡基部13と、操作部12と内視鏡基部13の間を連絡するユニバーサルコード14とから構成される。従来周知のように、挿入部11の先端部11Aには撮像素子(図2参照)が設けられ、先端部11Aから照射される照明光により、被写体の映像が撮像素子により撮影される。なお、照明光は通常スコープ本体10内に配設されたライトガイドを通してプロセッサ装置から供給される。
【0013】
図2は、図1に示されたスコープ本体10の電気的な構成を模式的に示すブロック図である。なお、図示されないが、照明光に係る光学的構成は、例えばライトガイドを用いた従来周知のものであり、本実施形態の場合、プロセッサ装置内に設けられた光源からライトガイドを介して挿入部11の先端部11Aにまで光が伝送される。しかし、プロセッサ装置外に別体の光源装置を設ける構成とすることも、また、LED等の光源を先端部11Aに設け、照明光を直接照射する構成とすることもできる。
【0014】
本実施形態の内視鏡基部13には、例えばI/Oポート15、制御回路16、システムクロックジェネレータ17、信号処理回路(DSP)18、電源回路19、システムクロック伝送用のドライバ21、アナログフロントエンド22などが設けられる。内視鏡基部13は、コネクタを含むI/Oポート15を介してプロセッサ装置(図示せず)に電気的に接続される。I/Oポート15には、制御回路16、システムクロックジェネレータ17、信号処理回路(DSP)18、電源回路19等が接続される。
【0015】
制御回路16はスコープ本体10全般の制御を行うもので、各デバイスとの間において、必要に応じてデータの遣り取りを行う。また、システムクロックジェネレータ17は、スコープ本体10内で必要とされる様々なクロック信号の生成を行う。例えば、システムクロックジェネレータ17からは、センサクロック伝送用のドライバ21や信号処理回路(DSP)18に、必要とされる信号が出力される。
【0016】
挿入部11(図1参照)の先端部11Aには、CCDやCMOSなどの撮像素子23が設けられる。被写体像は、撮像レンズ24を介して撮像素子23において撮像される。撮像素子23は、挿入部11、操作部12、ユニバーサルコード14を通して配線される信号ケーブル(映像信号伝送経路)25を介して内視鏡基部13に設けられたアナログフロントエンド(AFE)22に接続され、撮像素子23からのアナログ映像信号は、アナログフロントエンド22を介して信号処理回路18へと送られ、所定の画像処理を施された後、I/Oポート15を介してプロセッサ装置へと送出される。
【0017】
なお、アナログフロントエンド22は、例えば初段増幅回路、相関二重サンプリング回路、ADコンバータを備え、映像信号伝送経路25からのアナログ映像信号は、初段増幅回路で所定のゲインで増幅された後、相関二重サンプリング回路においてサンプリングされ、ADコンバータにおいてデジタル映像信号に変換されて、信号処理回路18へと送られる。
【0018】
また、第1実施形態のスコープ本体10は、先端部11Aと内視鏡基部13の間、例えば操作部12(図1参照)に、中継部26を備える。中継部26には撮像素子駆動回路27、レシーバ28、電源回路29などが設けられ、レシーバ28は、ユニバーサルコード14(図1参照)内に配設されたセンサクロック伝送経路30を介して、内視鏡基部13のドライバ21からセンサクロック信号を受信する。センサクロック伝送経路30は、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)を用いた差動伝送路であり、小振幅の信号が伝送される。小振幅の信号は、例えば実際に撮像素子を駆動する信号の振幅を相対的に低減した信号である。なお、センサクロック伝送経路30は、例えば光伝送路であってもよい。
【0019】
レシーバ28で受信された小振幅の信号は、撮像素子駆動回路27へと送られ、これに基づいて、撮像素子23に直接印加される駆動信号が生成される(例えば電圧の異なる大振幅の駆動信号)。撮像素子駆動回路27において生成された駆動信号は、センサクロック伝送経路31を介して先端部11Aに設けられた撮像素子23へと伝送され印加される。
【0020】
なお、撮像素子駆動回路27には、中継部26に設けられた電源回路29から電力が供給され、電源回路29には、内視鏡基部13の電源回路19から電力が供給される。また、電源回路29は、先端部11Aの撮像素子23にも電力を供給する。
【0021】
以上のように、本発明の第1実施形態の構成によれば、挿入部と内視鏡基部の間に中継部を設け、中継部までは相対的に小さい振幅で信号を伝送し、中継部において相対的に大きい振幅の撮像素子駆動信号を生成することで、大振幅の信号伝送距離を大幅に短くすることができる。これにより、撮像素子駆動信号による映像信号などとの間のクロストークの影響等も低減でき、EMCが向上する。
【0022】
なお、本実施形態では、中継部をスコープ本体の操作部に設けたが、中継部の設置場所としては、例えば体内には実際に挿入されない位置(挿入部よりも基端部よりの位置)の中で、内視鏡基部よりもより先端部に近い場所が選ばれる。
【0023】
図3は、第2実施形態の電子内視鏡の構成を示すブロック図であり、図3を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
【0024】
第1実施形態では、図示、説明を省略したが、一般に、電子内視鏡の操作部には、静止画撮影用の操作ボタンなど、使用者により操作される操作スイッチが幾つか設けられている。操作スイッチを操作した情報は、制御信号として操作部から内視鏡基部やプロセッサ装置側へと伝送される。第1実施形態において、制御信号は、専用の制御信号伝送経路を通して、中継部から内視鏡基部へと伝送される。これに対して、第2実施形態では、センサクロック伝送経路に双方向通信を用い、センサクロック伝送経路を通して制御信号の伝送を行う。なお、それ以外の構成については、第1実施形態と同様であり、同様の構成については第1実施形態と同じ参照符号を用い、その説明を省略する。
【0025】
第2実施形態では、第1実施形態の内視鏡基部13に設けられたドライバ21、中継部26に設けられたレシーバ28に替えてトランシーバ32、33が用いられる。第2実施形態の内視鏡基部13Aに設けられたトランシーバ32からは、第1実施形態のドライバ21と同様に、撮像素子を駆動するための小振幅の信号が出力される。出力された信号は、センサクロック伝送経路30を通して中継部26Aに設けられたトランシーバ33で受信され、撮像素子駆動回路27へと出力される。撮像素子駆動回路27では、第1実施形態と同様に撮像素子23に印加される撮像素子駆動信号が生成され、センサクロック伝送経路31を通して撮像素子23へと出力される。
【0026】
また、中継部26Aに設けられたトランシーバ33には、操作スイッチ(不図示)等が設けられた操作回路34が接続され、各操作スイッチの操作情報が制御信号としてトランシーバ33に入力される。トランシーバ33に入力された制御信号は、センサクロック伝送経路30を通して、内視鏡基部13Aに設けられたトランシーバ32へと伝送され、例えば制御回路16に入力される。制御信号が、例えば静止画撮影用のスイッチ操作に対応するときには、制御回路16は、信号処理回路18、あるいはI/Oポート15を介してプロセッサ装置(不図示)へ静止画像を取得する指令を出力する。
【0027】
また、双方向通信の例としては、トランシーバ32から出力される周期的なクロック信号の振幅を拡大するとともに、トランシーバ33において拡大されたクロック信号に制御信号を重畳することが考えられる(第1の例)。また、双方向通信の別の例としては、トランシーバ32から出力されるクロック信号の周波数とトランシーバ33から出力される制御信号の周波数を大きく異なる周波数に設定することによって、各信号を周波数で分離出来るようにし、双方向通信を行う事が考えられる(第2の例)。更に、トランシーバ32、33、センサクロック伝送経路30で構成される通信路が光伝送の場合は、波長多重等によって双方向化を実現できる(第3の例)。
【0028】
以下、図4、図5を参照して第1の例の双方向通信について、図6〜図8を参照して第2の例の双方向通信について、図9を参照して、第3の例による双方向通信について説明する。
【0029】
図4は、第1の例の双方向通信における構成を示すブロック図であり、図4に示される第1の例では、トランシーバ32、33は、トランシーバ32A、33Aと表記する。
【0030】
図4に示されるように、第1の例において、内視鏡基部13A側のトランシーバ32Aは、例えばスイッチ素子(例えばトランジスタ)Q1、タイミング回路35、DFF回路36をからなる。システムクロックジェネレータ17から出力されるクロック信号CLK1は、スイッチ素子Q1に入力され、そのオン/オフを制御するとともに、タイミング回路35に入力される。タイミング回路35ではクロック信号CLK1に基づき、DFF回路36のクロック端子CLKに入力されるサンプル/ホールド信号S/Hが生成される。
【0031】
第1の例においてセンサクロック伝送径路30は、特性インピーダンスZoの同軸ケーブル30Aであり、スイッチ素子Q1がオン状態のとき(CLK1がローのとき)、同軸ケーブル30Aにはスイッチ素子Q1を通して電圧Vssが印加される。また、同軸ケーブル30AはDFF回路36の端子Dに接続されており、その電圧は図5を参照して後述するように、サンプルホールド信号S/Hに基づいて電圧Vth2を閾値として(Vth2以上の電圧のとき)検出され、端子Qから操作情報DATA2として制御回路16に出力される。
【0032】
一方、操作部26Aのトランシーバ33Aは、操作回路34からの操作情報D_DATAにしたがって切換を行うスイッチSW1と、同軸ケーブル30Aに接続され、システムクロックジェネレータ17からのクロック信号を撮像素子駆動回路27へ伝送するバッファ37と、スイッチSW1と同軸ケーブル30Aの間に設けられたマッチング抵抗R(=Zo)とから構成される。なおスイッチSW1は、操作情報D_DATAのハイ/ローに基づいて、マッチング抵抗Rを介した同軸ケーブル30AをグラウンドGND、電圧Vddの何れか一方に択一的に接続する。また、バッファ37は、電圧Vth1を閾値として(Vth1以上の電圧のとき)撮像素子駆動回路27に出力を行う。
【0033】
図5のタイミングチャートに、図4の回路構成によって行われる双方向通信の一例を示す。図5(a)には、システムクロックジェネレータ17から出力されるクロック信号CLK1が示され、図5(b)には操作部26Aの操作回路34から出力される操作情報(操作信号)D_DATAの一例が示される。また、図5(c)に、上記構成により、クロック信号CLKと操作情報D_DATAが重畳された信号CLK1_D(同軸ケーブル30Aの電圧)が示される。
【0034】
前述したように、クロック信号CLK1がローのときには、スイッチ素子Q1がオン状態となり、同軸ケーブル30Aは電圧Vssとなる。一方、クロック信号CLK1がハイのときには、スイッチ素子Q1がオフ状態となり、信号CLK1_Dのレベル(同軸ケーブル30Aの電圧)は、スイッチSW1により選択されているGNDまたはVddとなる。すなわち図5に示されるように、操作情報(操作信号)D_DATAがローの間は、CLK1_DはVssまたはVddとなり、操作情報(操作信号)D_DATAがハイの間は、VssまたはGNDとなる。
【0035】
サンプル/ホールド信号S/Hは、図5(d)に示されるように、クロック信号CLK1に対してπ/2位相が遅れた信号であり、DFF回路36は、S/H信号の立ち上がりのタイミングで電圧Vth2を閾値として信号CLK1_Dを検出する。すなわち、Vth2は、Vddよりも高くGND電圧よりも低く設定され、DFF回路36の端子Qは、図5(e)のように、信号CLK1_Dにおいて電圧Vth2よりも高いGND電圧が検出されてから次に電圧Vddが検出されるまでの間、ハイの状態に維持される。また、次にGND電圧が検出されるまでの間は、ローの状態に維持される。したがって、図5(e)に示される操作情報(操作信号)DATA2は、D_DATA信号の位相がπ/2遅れたものとなる。
【0036】
また、図5(c)に示されるように、Vth1はGND電圧よりも高く、Vssよりも低い電圧に設定される。したがって、バッファ37は、CLK1_D信号がVssのときのみ信号を撮像素子駆動回路27に出力し、これは図5(a)のクロック信号CLK1に対応する。
【0037】
以上のように、伝送経路30Aには、クロック信号と制御信号とが重畳された信号電圧が印加され、トランシーバ33Aではクロック信号が抽出され、トランシーバ32Aでは制御信号が抽出される。
【0038】
図6は、第2の例の双方向通信における構成を示すブロック図であり、図6に示される第2の例では、トランシーバ32、33は、トランシーバ32B、33Bと表記する。
【0039】
上述したように第2の例の双方向通信では、トランシーバ32Bから出力されるクロック信号CLKの周波数とトランシーバ33Bから出力される制御信号(操作情報)DATAの周波数を大きく異なる周波数に設定することによって、各信号を周波数で分離出来るようにし、双方向通信を行う。
【0040】
図6に示されるように、内視鏡基部13Aのトランシーバ32Bは、バッファ回路38、39とフィルタ回路40を備えるとともに終端回路を含み、バッファの入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低く構成される。すなわち、同軸ケーブル30A(特性インピーダンス:Zo)は、マッチング回路R(=Zo)、クロック信号出力バッファ38を介してシステムクロックジェネレータ17に接続されるとともに、制御信号バッファ39、ローパスフィルタ40を介して制御回路16に接続される。
【0041】
システムクロックジェネレータ17からは、クロック出力信号バッファ38、マッチング回路Rを介してクロック信号CLKが同軸ケーブル30Aへと出力される。また、同軸ケーブル30Aの信号は、制御信号バッファ39、ローパスフィルタ40を介して制御回路16へと出力される。
【0042】
一方、操作部26Aのトランシーバ33Bは、バッファ回路41、42とフィルタ回路43を備えるとともに終端回路を含み、トランシーバ32Bと同様バッファの入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低く構成される。すなわち、同軸ケーブル30Aはクロック信号バッファ41、ハイパスフィルタ43を介して撮像素子駆動回路27に接続されるとともに、マッチング回路R(=Zo)、制御信号出力バッファ42を介して操作回路34に接続される。
【0043】
次に図7(a)に、クロック信号出力バッファ38を介してシステムクロックジェネレータ17から出力されるクロック信号CLKのタイミングチャート、図7(b)に制御信号出力バッファ42を介して操作回路34から出力される操作情報(制御信号)DATAのタイミングチャートを示すとともに、図7(c)に同軸ケーブル30Aにおいて図7(a)のクロック信号CLKと図7(b)の操作情報DATAが混合された合成信号C/Dのタイミングチャートを示す。
【0044】
また、図7(d)には、図7(c)の混合信号C/Dからハイパスフィルタ43を通して抽出される図7(a)のクロック信号CLKに対応するクロック信号CLK−OUTが示され、図7(e)には図7(c)の混合信号C/Dからローパスフィルタ40を通して抽出される図7(b)の操作情報DATAに対応する制御信号DATA−OUTが示される。
【0045】
なお、フィルタ40、43の帯域特性の一例を図8に示す。図8には、混合信号C/Dの周波数スペクトルの分布と、フィルタ40、43が透過する帯域特性が示され、f−DATAは、操作情報DATAの成分、f−CLKはクロック信号CLKの成分を表す。また、図8には各信号の高調波成分も示されている。図8に示されるように、ローパスフィルタ(LPF)、ハイパスフィルタ(HPF)の特性を設定することにより、各トランシーバ32B、33Bにおいて、混合信号C/Dから、操作情報DATAおよびクロック信号CLKを分離できる。なお、高周波側を利用するクロック信号については、特に基本波に対する狭帯域フィルタを用いることが好ましい。
【0046】
図9は、第3の例の双方向通信における構成を示すブロック図であり、図9に示される第3の例では、トランシーバ32、33を、トランシーバ32C、33Cと表記する。なお、第3の例の双方向通信は、上述したように、トランシーバ32C、33Cが光伝送を用いる場合であり、センサクロック伝送経路30は、光ファイバなどの光伝送路30Bとして構成される。
【0047】
内視鏡基部13Aのトランシーバ32Cは、例えば発光素子(例えばLD)、発光素子LD1の発光を制御する駆動回路(LD駆動回路)44、受光素子(例えばPD)、受光素子PD1の信号を増幅する増幅器45と、発光素子LD1からの光を光伝送路30Bに入射させ、光伝送路30Bからの光を受光素子PD1へと導く光学系とから構成される。
【0048】
この光学系は、例えばビームスプリッタ46と集光レンズ系47から構成され、発光素子LD1からは、例えば850nm(相対的に長波長)の波長の光が照射され、ビームスプリッタ46および集光レンズ系47を介して光伝送路30Bに入射される。また、発光素子LD1の発光は、システムクロックジェネレータ17からのクロック信号に基づきLD駆動回路44により制御される。
【0049】
また、ビームスプリッタ46は、光伝送路30Bから射出される光のうち、上記850nmの光よりも相対的に短波長の光(発光素子LD2の光、例えば波長650nm)を発光素子LD1とは異なる方向に偏向するもので、偏向された光は、受光素子PD1へと導かれ電気信号に変換されて増幅器45を介して制御回路16へと出力される。
【0050】
一方、操作部26Aのトランシーバ33Cは、発光素子(例えばLD)、発光素子LD2を駆動する駆動回路(LD駆動回路)48、受光素子(例えばPD)、受光素子PD2の信号を増幅する増幅器49と、発光素子LD2からの光を光伝送路30Bに入射させ、光伝送路30Bからの光を受光素子PD2へと導く光学系とから構成される。
【0051】
この光学系は、例えばビームスプリッタ50と集光レンズ系51から構成され、発光素子LD2からは、上述した650nmの波長(相対的に短波長)の光が照射され、ビームスプリッタ50および集光レンズ系51を介して光伝送路30Bに入射される。また、発光素子LD2の発光は、操作回路34からの操作情報(制御信号)に基づきLD駆動回路48により制御される。
【0052】
ビームスプリッタ50は、ビームスプリッタ46と略同じもので、発光素子LD2からの光を偏向し、集光レンズ系51を通して光伝送路30Bに入射される。なお、光伝送路30Bから照射される発光素子LD1の光(波長850nm)は、ビームスプリッタ50を直進し、受光素子PD2へと導かれ電気信号に変換されて増幅器49を介して撮像素子駆動回路27へと出力される。
【0053】
以上のように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、センサクロック伝送経路をセンサクロック信号と制御信号で兼用することで(双方向通信に用いることで)、伝送路の数を低減することができる。
【0054】
なお、第2実施形態では、双方向通信される信号として、操作スイッチの操作に基づく制御信号を例に説明を行ったが、センサ信号など、その他の様々な情報を伝達するのに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 スコープ本体(電子内視鏡)
11 挿入部
11A 先端部
12 操作部
13、13A 内視鏡基部
14 ユニバーサルコード
21 ドライバ
22 アナログフロントエンド(AFE)
23 撮像素子
26、26A 中継部
28 レシーバ
29 電源回路
30 センサクロック伝送経路(第1伝送路)
31 センサクロック伝送経路(第2伝送路)
32、33 トランシーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に撮像素子が設けられる挿入部と、前記挿入部の基端部に設けられる操作部と、プロセッサ装置に連結される内視鏡基部と、前記操作部と前記内視鏡基部とを連絡するユニバーサルコードとを備えた電子内視鏡であって、
前記内視鏡基部側から第1伝送路を介してセンサクロック信号を受信し、前記撮像素子の駆動信号を生成する撮像素子駆動回路を備える中継部と、
前記中継部から前記撮像素子へと前記駆動信号を伝送する第2伝送経路とを備え、
前記中継部が、前記挿入部よりも基端部より、かつ前記内視鏡基部よりも先端部よりに配置される
ことを特徴とする電子内視鏡。
【請求項2】
前記中継部が前記操作部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡。
【請求項3】
前記第1伝送経路が差動伝送または光伝送を含むことを特徴とする請求項2に記載の電子内視鏡。
【請求項4】
前記第1伝送経路を介した通信が双方向通信であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電子内視鏡。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−152225(P2011−152225A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14632(P2010−14632)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】