説明

電子写真印刷機の印刷画像補正方法及びその装置

【課題】感光体ドラムの交換時において、感光体ドラムごとの加工歪みや組み付け誤差に起因する転写位置の周期的なズレを低コストで、かつ簡単に補正できるようにする。
【解決手段】印字ヘッド3にて感光体ドラム1の周面に作像された画像を用紙4上に印刷するようにした電子写真印刷機の印刷画像補正方法において、標準タコ信号に基づく印刷信号を印字ヘッドに入力して、感光体ドラムが1回転する間にわたって所定のタコ信号数ごとにチェックマーク9を用紙上に印刷し、このチェックマークの各間隔の周期的なズレをカメラ10にて検出し、このチェックマークの間隔のズレに基づいて、この各チェックマークの間隔ごとにタコ信号のパルス幅を補正し、その後の印刷を、上記補正したタコ信号に基づいて印刷を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体ドラムを用いた電子写真印刷機において、この感光体ドラムの交換時の感光体ドラムごとの加工歪みや組み付け誤差に起因する転写位置の周期的なズレを自動的に補正するようにした電子写真印刷機の印刷画像補正方法、及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷機では、修理、メンテナンス等で感光体ドラムを交換すると、感光体ドラムごとの加工歪みや組み付け誤差等により、芯振れや真円に対する歪みが発生してしまう。そして、その回転軸心と感光体ドラム表面との距離(回転半径)が不均一に変動し、このような状態の感光体ドラムを一定の回転角速度で駆動すると、感光体ドラムの周面速度が周期的に変動し、感光体ドラムによる用紙へのトナーの転写位置に周期的ズレが生ずる。また、この感光体ドラム速度変動は、感光体ドラムを駆動するギヤ、ベルト等の駆動装置の振れや加工誤差に起因する場合もある。
【0003】
このような不具合に対して、従来は転写位置のズレを補正する手段として、固定レジストマークを印刷してある移動体上に、感光体ドラムによる画像形成ごとに画像レジストマークを印刷し、画像形成中に両レジストマークのズレ量を常時検出して画像形成を補正するようにしたものが特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2659191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術にあっては、印刷画像ごとに常時ズレの監視、補正を行うため、移動体の読み取り誤差による補正誤差がつきまとってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、感光体ドラムの交換時において、1度だけ測定、補正を行うことで、感光体ドラムごとの加工歪みや組み付け誤差に起因する転写位置の周期的なズレを低コストで、かつ簡単に補正できる印刷画像補正方法、及びその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電子写真印刷機の印刷画像補正方法は、印字ヘッドにて感光体ドラムの周面に作像された画像を用紙上に印刷するようにした電子写真印刷機の印刷画像補正方法において、標準タコ信号に基づく印刷信号を印字ヘッドに入力して、感光体ドラムが1回転する間にわたって所定のタコ信号数ごとにチェックマークを用紙上に印刷し、このチェックマークの各間隔の周期的なズレをカメラにて検出し、このチェックマークの間隔のズレに基づいて、この各チェックマークの間隔ごとにタコ信号のパルス幅を補正し、その後の印刷を、上記補正したタコ信号に基づいて印刷を行うようにした。
【0008】
そして上記転写画像補正方法において、補正タコ信号の出力後のチェックマークの間隔が等間隔になった後は、このチェックマークの印刷を行わないようにした。
【0009】
また、上記転写画像補正方法を実施するための本発明に係る転写画像補正装置は、印字ヘッドにて感光体ドラムの周面に作像された画像を用紙上に印刷するようにした電子写真印刷機の印刷画像補正装置において、感光体ドラムの回転位置を検出する感光体ドラム回転位置検出手段と、感光体ドラムにて用紙上に所定の間隔で印刷されたチェックマークの間隔ズレを検出するカメラと、上記カメラにての検出に基づいて各チェックマーク間隔ごとのパルス幅を補正して、この補正後のタコ信号を印字ヘッドに出力する制御装置とからなる構成になっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電子写真印刷機の印刷画像補正方法によれば、1度だけ測定、補正を行うことで、感光体ドラムの交換時においての感光体ドラムごとの加工歪みや組み付け誤差に起因する転写位置の周期的なズレを低減することができる。
【0011】
また、この補正時のチェックマーク(レジストマーク)の読み取りは補正操作時のみで、印刷中にはこのチェックマークを使用しないため、高速印刷でも読み取り誤差を生じることなく正確に画像ズレの補正を行うことができて、マークの印刷、読み取りに必要なトナー、電力の消費を抑えることができる。
【0012】
その上、感光体ドラムの交換時のオペレータの負担を軽くして電子写真印刷機としての稼働率の向上、操作性の向上を図ることができる。
【0013】
そして本発明に係る電子写真印刷機の画像補正装置によれば、上記した画像補正方法を低コストで、かつ簡単に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明方法を実施する装置を概略的に示す説明図である。
【図2】感光体ドラムの1回転当りのドラム速度変動及び、これに対するタコ周波数の補正を示す説明図である。
【図3】感光体ドラムの周面速度の変動に対するタコ信号の補正を説明する線図である。
【図4】本発明方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明方法を実施する装置を概略的に示すもので、図中1は感光体ドラム、2はこの感光体ドラムに転接するバックアップローラ、3は上記感光体ドラム1に潜像を形成する印字ヘッドであり、この印字ヘッド3にて形成された潜像は、感光体ドラム1の上記印字ヘッド3より回転方向下流側の外周面に対向して設けられた現像装置(図示せず)にて顕像化され、この顕像が上記感光体ドラム1とバックアップローラ2間を走行する用紙(被印刷物)4に印字されるようになっている。
【0017】
印字ヘッド3にはLEDヘッドが用いられている。これはヘッドの長手方向に印刷画点に相当するドット光源をライン状に配列し、印刷画像に応じてドット光源を点滅させるものである。そしてこの印字ヘッド3には、PC−BIPを用いた制御装置5からタコ(TACH)信号、CUE信号にて印字データが展開されるようになっている。
【0018】
感光体ドラム1の一側端には鉄片6が設けてあり、またこの鉄片6を設けた感光体ドラム1の側端面に対向する位置に、上記感光体ドラム1の1回転ごとの鉄片6の通過を検出する近接センサ7が設けてある。そして、この近接センサ7による鉄片6を読み取ることにより、感光体ドラム1の回転方向の原点を検出してパルス発生装置8に入力するようになっている。このパルス発生装置8からは上記原点から原点までの間、すなわち感光体ドラム1が1回転する間に、例えば1260パルスのタコ信号が出力されるようになっている。
【0019】
タコ信号は印字ヘッド3のLEDを1回走査させるパルス状のタイミング信号で、原点検出後、次の原点を検出(感光体ドラムが1回転)するまで、パルス発信装置8より一定数波数、例えば1260パルスの標準波形S1が発信されるようになっている。
【0020】
ここで、例えば10パルスごとの正寸点Co1,Co2,Co3…Co126において、印字ヘッド3のLEDを走査、発光させて感光体ドラム1に露光を行うと、感光体ドラム1に上記10パルス相当の間隔Cのチェックマーク画像が形成され、上記用紙4にこのチェックマーク9が印刷されるようになっている。このときのチェックマーク9は、感光体ドラム1の1回転、すなわち感光体ドラム1の周長Lにおいて126個(図1では簡略的に示している)印刷されることになる。そしてこのチェックマーク9の間隔Cは、カメラ10にて検出して制御装置5にフィードバックするようになっている。
【0021】
このとき、感光体ドラム1が加工歪み、組み付け誤差、あるいは駆動系の振れ等により、これの1回転の間に図2の上側にて示したように、周期的にドラム速度が変動している場合、タコ信号の標準波形は一定間隔であるから、ドラム速度が速い部分では画像(印字見当)が伸び、遅い部分では画像が縮むことになる。このため、このときに用紙4上に印刷されたチェックマーク9の間隔Cは、上記ドラム速度の変動により変化してしまう。
【0022】
すなわち、画像が伸びた部分のチェックマーク9の間隔Cは、上記正寸点間隔の10パルスより長い、例えば12パルス、11パルス相当の画像間隔となり、縮んだ部分のチェックマーク9の間隔Cは、正寸点間隔の10パルスより短い、例えば9パルス、8パルス相当の画像間隔となる。
【0023】
この画像の伸び縮みを打ち消すには、図2の下側で示すように、タコ周波数を補正して、画像が伸びる部分でのタコ周波数を速く(時間を短く)して時間が縮まる印字を行い、画像が縮まる部分でのタコ周波数を遅く(時間を長く)して時間が伸びる印字を行う。
【0024】
感光体ドラム1の1回転当りのタコ信号のパルス数は一定であるから、画像が伸びる場合で、タコ信号の周波数を速くするということは単位時間でのパルス数を多くし、画像が縮む場合で、タコ信号の周波数を遅くするということは単位時間でのパルス数を少なくすることになる。このタコ信号の制御は、制御装置5のPC−BIPにて行われる。そしてこの制御で得られた感光体ドラム1の固有のパルス幅補正値で印字ヘッド3を駆動(走査、発光)することで、感光体ドラム1の周面速度の変動により生じる周期的な画像の伸び、縮みがキャンセルされ、製品印刷時の転写位置のズレが常時低減される。なお、この補正が完了したあとはチェックマーク9の印刷は不要である。
【0025】
図3は、感光体ドラム1の周面速度の変動に対するタコ信号の補正を説明する線図である。
【0026】
図3において、感光体ドラム1の1回転におけるタコ信号のパルス数は1260パルスである。このタコ信号は、印字ヘッド3を1回走査させるタイミング信号で、原点検出後、次の原点を検出(感光体ドラム1が1回転)するまでで、標準時ではパルス発信装置8により一定周波数(等間隔)の基準波形S1が発信される。
【0027】
ここで、例えば基準波形S1の一定間隔Co、例えば10パルスごとの正寸点Co1,Co2,Co3…Co126において、印字ヘッド3のLEDを走査、発光させて感光体ドラム1に露光を行うと、感光体ドラム1に10パルス相当のピッチCoのチェックマーク画像が、上記正寸点(Co1,Co2,Co3…)ごとに形成され、図1においてのチェックマーク9として印刷される。そして、この各チェックマーク9がカメラ10にて順次計測点C1,C2,C3…として計測される。
【0028】
このとき上記したように、感光体ドラム1の周面速度がV1のように周期的に変化すると、カメラ10にて計測される上記10パルスのピッチCoごとに印字されるチェックマーク9の計測点C1,C2,C3…間の間隔は、速度が速い計測点C1,C2での間隔C1dが12パルス、間隔C2dが11パルス相当の各画像(印字見当)の伸びが生じる。一方、速度が遅い計測点C4,C5,C6では、間隔C4dが9パルス、間隔C5dが8パルス、間隔C6dが9パルス相当の各画像の縮みが生じる。
【0029】
この各計測点C1,C2,C3…間での間隔C1d,C2d,C3d…がカメラ10から検出値として制御装置5にフィードバックされ、制御装置5ではこの検出値に基づいて補正された補正タコ信号S2が図3に示されるように出力される。
【0030】
このときの補正タコ信号S2では、上記画像の伸びと縮みを打ち消すために、画像が伸びる計測点C1,C2の区間では、補正がタコ信号S2の周波数を速くして早いタイミングで印字ヘッド3のLEDを走査、発光し、逆に速度が遅い計測点C4,C5,C6では周波数を遅くして遅いタイミングでLEDを走査、発光して補正を行う。
【0031】
すなわち、補正がタコ信号S2では、正寸点C01,C02までは周波数を速くしてこの正寸点C01間では標準タコ信号S1での10パルス分の周期に12パルスを出力し、正寸点C02間では上記10パルス分の周期に11パルスを出力する。そしてそれ以降順次周波数を落として、正寸点C5間では上記10パルス分の周期に8パルスを出力し、正寸点C06間では10パルス分の周期に9パルス出力するように補正が行われる。このようにして正寸点C01〜C0126の各箇所においてパルス幅が補正される。
【0032】
上記のように補正された補正タコ信号S2により、標準タコ信号S1と同様に10パルスごとに印字ヘッド3のLEDを走査、発光させてチェックマーク9を印刷することにより、感光体ドラム1の周面速度が速く、画像が伸びる計測点C1,C2ではタコ信号のパルス幅が狭く、10カウントごとの露光が補正前より早いタイミングで行われ、逆に周面速度が遅く、画像が縮む計測点C4,C5では、タコ信号のパルス幅が広く10カウントごとの露光が遅いタイミングで行われ、これにより感光体ドラム1には均一な正寸点Coのパルス信号ごとの画像が形成された後、用紙4に転写される。そしてこのときの用紙4に転写されたチェックマーク9の間隔Cは均一になる。
【0033】
上記用紙4に印刷されるチェックマーク9の間隔が均一であることがカメラ10を通して確認された後は、印字ヘッド3には引き続いて補正タコ信号S2が出力されるが、10カウントごとのチェックマークの印刷は行わない。
【0034】
上記作用をブロック図にて示すと図4のようになる。この図に示すように、まず用紙4へのチェックマーク9の印刷を開始し(ステップ1)、ついでカメラ10にて検出したチェックマーク9間のタコ信号のパルス数をカウントし(ステップ2)、カウントされたタコパルス数と正寸時のパルス数を比較し(ステップ3)、正寸と一致しない箇所のタコパルス出力を補正後の出力に変更する(ステップ4)。そしてその後のチェックマーク9の印刷を終了する(ステップ5)。
【符号の説明】
【0035】
1…感光体ドラム、2…バックアップローラ、3…印字ヘッド、4…用紙、5…制御装置、6…鉄片、7…カメラ、8…パルス発生装置、9…チェックマーク、10…カメラ、S1…標準タコ信号、S2…補正タコ信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドにて感光体ドラムの周面に作像された画像を用紙上に印刷するようにした電子写真印刷機の印刷画像補正方法において、
標準タコ信号に基づく印刷信号を印字ヘッドに入力して、感光体ドラムが1回転する間にわたって所定のタコ信号数ごとにチェックマークを用紙上に印刷し、
このチェックマークの各間隔の周期的なズレをカメラにて検出し、
このチェックマークの間隔のズレに基づいて、この各チェックマークの間隔ごとにタコ信号のパルス幅を補正し、
その後の印刷を、上記補正したタコ信号に基づいて印刷を行うようにした
ことを特徴とする電子写真印刷機の印刷画像補正方法。
【請求項2】
補正タコ信号の出力後のチェックマークの間隔が等間隔になった後は、このチェックマークの印刷を行わないようにしたことを特徴とする請求項1記載の電子写真印刷機の印刷画像補正方法。
【請求項3】
印字ヘッドにて感光体ドラムの周面に作像された画像を用紙上に印刷するようにした電子写真印刷機の印刷画像補正装置において、
感光体ドラムの回転位置を検出する感光体ドラム回転位置検出手段と、
感光体ドラムにて用紙上に所定の間隔で印刷されたチェックマークの間隔ズレを検出するカメラと、
上記カメラにての検出に基づいて各チェックマーク間隔ごとのパルス幅を補正して、この補正後のタコ信号を印字ヘッドに出力する制御装置とからなる
ことを特徴とする電子写真印刷機の印刷画像補正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−164518(P2011−164518A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30042(P2010−30042)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】