説明

電子写真印刷機

【課題】正確で安定した印刷濃度制御を低コストで可能にする電子写真印刷機の提供。
【解決手段】電子写真印刷ユニットによって用紙に印刷した画像の濃度を計測する濃度センサ31を具備する濃度計測部と、濃度センサ31によって用紙の画像濃度を計測した計測データに基づいて電子写真印刷ユニットが用紙に印刷する画像濃度を調整する濃度制御部4とを具備している電子写真印刷機を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア液にトナー粒子を分散させてなる液体トナーを用いる湿式の電子写真印刷機に関し、特に、印刷濃度制御機能を具備する電子写真印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
液体トナー(以下、単にトナーとも言う)式の電子写真印刷機の印刷濃度制御技術としては、例えば、特許文献1に開示される技術が知られている。
この特許文献1の開示技術では、幅広の基準濃度パッチを用い、複数のフォトセンサによって、感光体ドラム表面に形成したトナー像の平均濃度を求め、この平均濃度と基準値とを比較し、現像装置の現像バイアスを制御して、画像濃度を適切に保つ。
この技術によれば、現像装置のアニロックスローラ(トナー供給ローラ)の印加電圧を自動で初期設定できる。また、長時間の運転で、帯電器や光学部品の幅方向の一部に劣化、汚れ等が生じ、基準濃度パッチの濃度が部分的にムラになっても、現像バイアスは平均濃度で設定されるので、画像濃度を適正に保てる。
【特許文献1】特開昭59−22060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、感光体ドラム表面のトナー像の濃度は、用紙の転写画像の濃度と相違する。このため、上述の特許文献1記載の技術では、正確な濃度合わせにはならない。
また、トナー像の濃度計測は複数のフォトセンサを使用して印刷幅方向を複数に分割して行うため、幅方向の濃度計測を細分化するほど、使用するフォトセンサの数が多くなり、コストが高く付く。
【0004】
本発明は、前記課題に鑑みて、正確で安定した印刷濃度制御を低コストで可能にする電子写真印刷機の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成を提供する。
第1の発明は、液体トナー式の電子写真印刷機であって、用紙に画像を印刷する電子写真印刷ユニットと、この電子写真印刷ユニットよりも前記用紙の送り方向下流側にて前記用紙の画像濃度を計測する濃度センサを前記用紙の幅方向に移動させる濃度計測部と、前記濃度センサによって用紙幅方向複数箇所について計測した画像濃度の平均値を予め設定しておいた濃度基準値と比較し、前記電子写真印刷ユニットが前記用紙に印刷する画像濃度を前記濃度基準値と一致させるように制御する濃度制御部とを具備することを特徴とする電子写真印刷機を提供する。
第2の発明は、前記濃度計測部は、その駆動を制御するセンサ移動制御部への入力指令に基づいて用紙幅方向複数箇所に前記濃度センサによる画像濃度計測位置を設定可能であり、前記濃度センサを、設定された複数の前記画像濃度計測位置のそれぞれについて、予め設定しておいた停止時間を確保して、用紙幅方向に移動させることを特徴とする第1の発明の電子写真印刷機を提供する。
第3の発明は、前記センサ移動制御部に前記画像濃度計測位置の設定指令を入力するための操作端末を具備することを特徴とする第2の発明の電子写真印刷機を提供する。
第4の発明は、前記センサ移動制御部は、電子写真印刷ユニットによる印刷幅に応じて前記画像濃度計測位置を自動設定する機能を有することを特徴とする第2又は第3の発明の電子写真印刷機を提供する。
第5の発明は、前記用紙にその幅方向に延在する帯状の濃度制御用パッチを印刷し、前記濃度センサが前記濃度制御用パッチの用紙幅方向複数箇所について計測した画像濃度に基づいて、前記電子写真印刷ユニットが前記用紙に印刷する画像濃度を制御することを特徴とする第1〜4のいずれかの発明の電子写真印刷機を提供する。
第6の発明は、多色印刷を行う電子写真印刷機であり、前記濃度基準値が各色毎に設定されており、前記用紙の長手方向に位置をずらして各色毎の前記濃度制御用パッチを印刷し、各色毎に、前記濃度センサが前記濃度制御用パッチの用紙幅方向複数箇所について画像濃度を計測し、計測した画像濃度の平均値が前記濃度基準値となるように、前記電子写真印刷ユニットが前記用紙に印刷する画像濃度を各色毎に制御することを特徴とする特徴とする第5の発明の電子写真印刷機を提供する。
第7の発明は、電子写真印刷ユニットへの用紙の供給量が予め設定しておいた設定値に達したときに、前記濃度制御用パッチを自動印刷し、濃度制御用パッチの印刷後に印刷運転を自動停止することを特徴とする第5又は第6の発明の電子写真印刷機を提供する。
第8の発明は、前記濃度制御用パッチの印刷後に、前記濃度センサによる画像濃度の計測動作を自動で行うことを特徴とする第7の発明の電子写真印刷機を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る電子写真印刷機によれば、濃度センサによって用紙幅方向複数箇所について計測した画像濃度に基づいてその平均値が予め設定しておいた濃度基準値となるように前記電子写真印刷ユニットが前記用紙に印刷する画像濃度を制御する構成であり、用紙に実際に印刷された画像濃度に基づく画像濃度制御であるため、従来に比べて、正確で安定した濃度制御を実現できる。液体トナーの性質、用紙の性質、用紙送り速度等にも左右されることなく、正確で安定した濃度制御を実現できる。
また、用紙の幅方向複数箇所における画像濃度の計測を、用紙幅方向に移動する濃度センサによって行うので、複数のセンサを用いる従来技術に比べて、低コストで濃度計測を行える。しかも、用紙幅方向に移動する濃度センサによる濃度計測は、用紙幅方向における計測位置(画像濃度計測位置)を任意に設定できるため、印刷条件(印刷幅、印刷品質等)に応じた計測位置の設定を容易に実現できる。画像濃度計測位置の用紙幅方向における設定数も任意に決めることができる。このため印刷条件(印刷幅、印刷品質等)に応じた適切な濃度計測を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施した電子写真印刷機の一例について、図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る電子写真印刷機1の構成を示す全体図、図2は電子写真印刷機1の濃度制御システムを説明するブロック図、図3は電子写真印刷機1の電子写真印刷ユニット2によって用紙に印刷する濃度制御用パッチを示す図、図4は電子写真印刷ユニット1の濃度センサによる画像濃度の計測動作を説明する図、図5は濃度センサを用紙幅方向に移動して用紙の画像濃度を計測する濃度計測部の構成を模式的に示す図である。
なお、図1において、上側を上、下側を下、として説明する。
【0008】
図1において電子写真印刷機1は、多色印刷を行うために複数設けられた電子写真印刷ユニット2(以下、プリンタとも言う)と、これらプリンタ2を経た用紙101に印刷された画像の濃度を計測するための濃度計測部3と、濃度計測部3の濃度センサ31によって用紙101の画像濃度を計測した計測データに基づいてプリンタ2の駆動を制御し、プリンタ2が用紙101に印刷する画像濃度を調整する濃度制御部4とを具備している。
【0009】
プリンタ2(電子写真印刷ユニット)は、トナー粒子をキャリア液に分散してなる液体トナー2a(以下、単にトナーとも言う)を用いる湿式の電子写真印刷装置である。
このプリンタ2は、感光体ドラム21の表面に、露光によって静電潜像を形成し、トナーを用いて前記静電潜像を可視像化したトナー像を形成し、このトナー像を用紙101に転写することで用紙101に画像を印刷する構成のものであり、周知構成の電子写真印刷装置を採用できる。
【0010】
図1中、符号22は感光体ドラム21の表面を均一に帯電させる帯電装置、23は前記帯電装置22によって帯電された感光体ドラム21表面の電荷を露光によって除去して静電潜像を形成する露光装置、24はトナー2aを感光体ドラム21に供給して前記感光体ドラム21表面に前記静電潜像を可視像化したトナー像を形成する現像装置、25は用紙101を感光体ドラム21側に押さえ込むためのバックアップローラである。
【0011】
現像装置24は、感光体ドラム21に接して回転する現像ローラ241と、トナー2aを収容するタンク242と、現像ローラ241に接して回転して前記タンク242内のトナー2aを現像ローラ241に供給するアニロックスローラ243とを具備する。そして、アニロックスローラ243から現像ローラ241に転写するようにして供給されたトナーを、現像ローラ241から感光体ドラム21に供給するように構成されている。
【0012】
なお、本発明に係るプリンタ2としては、感光体ドラム21と用紙101との間に、感光体ドラム21表面のトナー像を用紙101に転写するための転写ローラ等の中間転写体を具備する構成等も採用可能であることは言うまでも無い。
【0013】
電子写真印刷機1に設けられた複数のプリンタ2は、印刷色が互いに異なる。
図示例では、長尺帯状の用紙101を採用している。
電子写真印刷機1にあっては、用紙101を、該電子写真印刷機1の機内のプリンタ2に順次経由させて各色の印刷を行うことで、多色印刷を実現する。
【0014】
本実施形態の電子写真印刷機1は、具体的には、4台のプリンタ2を具備している。
また、ここでは、4台のプリンタ2は、その印刷色が、用紙101の送り方向上流側から下流側へ、黄(Yellow)、マゼンタ(Magenta)、シアン(Cyan)、黒(Black)の順で配列されている。
図1に記載した「Y」、「M」、「C」、「K」は、「Y」が黄(Yellow)、「M」がマゼンタ(Magenta)、「C」がシアン(Cyan)、「K」が黒(Black)、を示す略号として用いており、プリンタ2の印刷色に対応させて記載している。また、本明細書においても、プリンタ2の印刷色について、以下、「Y」、「M」、「C」、「K」の略号を用いて説明する場合がある。
但し、プリンタ2の印刷色の配列順はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
また、上述のプリンタ2は、全て、用紙101の同じ面(用紙101の片面)に画像を印刷するものとする。
【0015】
なお、上述の「Y」、「M」、「C」、「K」の略号は、図2、図3においても、後述の濃度制御用パッチ5の色に対応させて付記した。本明細書においては、濃度制御用パッチ5の色についても、「Y」、「M」、「C」、「K」の略号を用いて説明する。
「Y」、「M」、「C」、「K」の4色の濃度制御用パッチは、各色に対応する印刷色のプリンタ2によって形成される。
【0016】
図示例の電子写真印刷機1では、複数(図示例では4台)のプリンタ2を上下多段に設置した構成を例示している。
この電子写真印刷機1にあっては、用紙101を、該電子写真印刷機1の機内での縦方向の送り移動(図示例では最下段のプリンタ2の下方から上方への送り移動)によって上下多段の電子写真印刷ユニット2を順次経由させることで、多色印刷が実現される。
なお、符号12は無端ベルトであり、回転駆動されて用紙101の送り移動を補助する。また、符号13は用紙101の送り移動用のガイドローラである。
【0017】
ここで説明する電子写真印刷機1は、電子写真印刷ユニット2へ供給する用紙の供給量が予め設定しておいた設定値に達したときに、プリンタ2によって、図2、図3に示す如く用紙101にその幅方向に延在する帯状の濃度制御用パッチ5を自動印刷し、濃度制御用パッチ5の印刷後に印刷運転を自動停止する。その後、濃度計測部3を駆動させ、濃度センサ31によって濃度制御用パッチ5の画像濃度を計測する計測動作と、この計測動作によって得られた濃度計測値に基づいてプリンタ2が用紙101に印刷する画像濃度を調整する印刷濃度調整動作とを自動で行う。
【0018】
電子写真印刷ユニット2へ供給する用紙の供給量は、例えば、長尺帯状の用紙101をロール状に巻き上げた原反102の外径寸法の計測、原反102から送り移動される用紙101に接して回転するカウンター付きローラによる計測などによって、電子写真印刷機1全体の駆動制御用の制御装置にて把握される。そして、供給量が予め設定しておいた設定値に達したときに、この制御装置からの指令により濃度制御用パッチ5を印刷し、印刷運転の自動停止、計測動作、印刷濃度調整動作が行われる。
【0019】
図1中、符号11は原反102外径を計測するセンサであり、用紙供給量の計測用のセンサとして機能する。
電子写真印刷機1に、該印刷機1にて印刷して機外へ送り出した用紙101を所望の仕上げ寸法の平判に加工する切断加工機が併設されている場合、この切断加工機にて加工した用紙枚数によって、用紙供給量を把握するようにしても良い。
【0020】
濃度制御用パッチ5の印刷を実行する供給量の設定値は適宜設定できるが、例えば、原反102の用紙残量が僅かとなったことを検知するように設定すると、濃度制御用パッチ5の印刷結果に基づく電子写真印刷機1の調整作業を、原反102の交換作業と合わせて行える。
【0021】
前記濃度制御用パッチ5は、各色のプリンタ2によって個別に形成される。
電子写真印刷機1は、前記用紙101の長手方向に位置をずらして各色毎の前記濃度制御用パッチ5を用紙101の幅方向に延在する帯状に印刷する。
図示例では、電子写真印刷機1は、4台のプリンタ2によって、4本の濃度制御用パッチ5を互いに並列に形成する。4本の濃度制御用パッチ5は、その印刷範囲が、例えば12インチの帳票サイズ内に収まるようにする。1本の濃度制御用パッチ5は、1台のプリンタ2のみによって形成される。
なお、図中、「Y」、「M」、「C」、「K」の4色の濃度制御用パッチ5について、区別のため符号51〜54を付した。符号51の濃度制御用パッチの色は「Y」、52の濃度制御用パッチの色は「M」、53の濃度制御用パッチの色は「C」、54の濃度制御用パッチの色は「K」である。
【0022】
(濃度計測部)
濃度計測部3は、電子写真印刷機1において、プリンタ2よりも、用紙101の送り方向下流側に設置されている。具体的には、電子写真印刷機1に設けられている複数のプリンタ2の内、用紙101の送り方向において最も下流側に位置するもの(図示例では、印刷色が「K」のプリンタ2)よりも下流側に設置されている。
【0023】
図3、図4に示すように、前記濃度計測部3は、濃度センサ31を用紙101の幅方向に移動(サイドレー動作)して、前記用紙101に印刷されている画像の濃度を計測するものである。
濃度センサ31は、非接触形の光学濃度計である。
【0024】
この濃度計測部3は、濃度センサ31と、濃度センサ31を用紙幅方向に移動するセンサ移動機構32(例えば図5に例示したセンサ移動機構32)とを具備している。
図5において、符号33は、センサ移動機構32の駆動制御用のセンサ移動制御部33である。また、図5に示すように、センサ移動制御部33には、該センサ移動制御部33への指令入力用の操作端末34(例えば、操作パネル)が結線されている。
そして、この濃度計測部3は、濃度センサ31を、用紙101の印刷面(プリンタ2によって画像が印刷された面)に沿ってその幅方向に移動することで、用紙101の幅方向の複数箇所について、前記用紙101に印刷されている画像の濃度を計測する(つまり、計測動作を行う)。
【0025】
前記センサ移動制御部33は、ここでは、電子写真印刷機1全体の駆動制御用の制御装置の一部であるが、制御装置とは別に独立して設けられていても良い。
【0026】
図4に示すように、図示例の濃度計測部3における濃度センサ31の移動は、用紙101の印刷面から外れた位置に設定した原点位置310から開始され、用紙101の幅方向複数箇所に予め設定された画像濃度計測位置311〜314を経由して、原点位置310に復帰する。
但し、各画像計測位置311〜314にて、予め設定しておいた停止時間だけ濃度センサ31を停止させる。この停止時間にて、濃度センサ31によって、用紙101に印刷されている画像の濃度を計測する。
【0027】
原点位置310及び画像濃度計測位置311〜314は一列に配列されており、原点位置310から移動を開始した濃度センサ31は、画像濃度計測位置311〜314の内、原点位置310から最も近いものから順に停止して濃度計測を行う。前記停止時間の経過後に、原点位置310から遠い側の画像濃度計測位置に移動し、濃度計測を行う。つまり、濃度センサ31による濃度計測を、順次、原点位置310から遠い側の画像濃度計測位置に移行する。そして、濃度センサ31は、原点位置310から最も遠い所に位置する画像濃度計測位置(図4においては、符号314の画像濃度計測位置)に到達し、前記停止時間が経過したら、原点位置310まで移動される。
【0028】
濃度計測部3における濃度センサ31の移動は、上述に限定されない。
例えば、濃度センサ31が、原点位置310から最も遠い所に位置する画像濃度計測位置314に到達して停止し、前記停止時間が経過した後、この濃度センサ31による濃度計測を、原点位置310から遠い側の画像濃度計測位置から、順次、原点位置310から近い側の画像濃度計測位置に移行して実施し、原点位置310に復帰させるようにしても良い。
また、最初の濃度計測を、原点位置310から最も遠い所に位置する画像濃度計測位置314にて行い、その後、濃度計測を、順次、原点位置310から近い側の画像濃度計測位置に移行して実施し、原点位置310に復帰させるようにしても良い。
濃度計測部3における濃度センサ31の移動は、全ての画像濃度計測位置311〜314について濃度計測(各画像濃度計測位置311〜314について、濃度センサ31を前記停止時間だけ停止させる)が行われれば良く、濃度計測を行う画像濃度計測位置311〜314の順番は適宜設定し得る。
【0029】
また、本発明は、必ずしも、原点位置310を、用紙101の印刷面から外れた位置に設定した構成に限定されない。例えば、複数の画像濃度計測位置311〜314の内の1つを原点位置として設定することも可能である。
また、用紙101を介してその両側に、濃度センサ31の待機位置を設定し、一方の待機位置から移動を開始した濃度センサ31が、全ての画像濃度計測位置311〜314について濃度計測を完了した後、他方の待機位置に停止するようにしても良い。
【0030】
多色印刷用の電子写真印刷機1にあっては、各色毎の前記濃度制御用パッチ5は前記用紙101の長手方向に位置をずらして形成されるため、計測動作を、複数本の濃度制御用パッチ5の内、用紙送り方向において最も下流側に位置するものから、順次、用紙送り方向上流側のものに移行して、全ての濃度制御用パッチ5について濃度計測を行うようにする。
ここでは、濃度計測部3にて直線的にサイドレー動作される濃度センサ31の移動直線31a(図3参照。仮想直線)の位置は電子写真印刷機1において一定であり、各濃度制御用パッチ5と濃度センサ31(詳細には濃度センサ31の移動直線31a)との位置合わせは、用紙の送り移動によって実現される。
なお、本発明はこれに限定されず、例えば、印刷運転の停止後に用紙長手方向に沿ってセンサ移動機構32(図5参照)を移動させて、各濃度制御用パッチ5と濃度センサ31(詳細には濃度センサ31の移動直線)との位置合わせとを実現する構成としても良い。
【0031】
図5は、濃度計測部3の一例を示す。
図5に示す濃度計測部3のセンサ移動機構32は、無端ベルト321を、互いに離隔して設けられた一対のプーリ322a、322bに巻き掛けて張設し、この無端ベルト321に取り付けたセンサ固定用部材323に濃度センサ31を固定したものであり、一対のプーリ322a、322bの一方又は両方の回転駆動によって無端ベルト321を回転させることで濃度センサ31を移動するように構成されている。
但し、センサ移動機構32としては、用紙幅方向への濃度センサ31のサイドレー動作を実現できるものであれば良く、図5に例示した無端ベルト方式のものに限定されず、様々な構成のものを採用できる。
【0032】
なお、ここでは、濃度センサ31として、電子写真印刷機1に設けられている複数のプリンタ2に対応する複数色の濃度制御用パッチ5の全色について画像濃度計測を行えるものを用い、濃度計測部3には濃度センサ31が1個のみ設けられている構成となっているが、例えば、画像濃度計測を行う対象の色が互いに異なる複数の濃度センサを一括してセンサ移動機構32によって移動できるようにした構成等も採用可能である。画像濃度計測を行う対象の色が互いに異なる複数の濃度センサを用いた構成であれば、5色以上の多色の印刷についても対応できる。
図5に例示した濃度計測部3の場合は、センサ移動機構32の無端ベルト31に取り付けられているセンサ固定部材323に、画像濃度計測を行う対象の色が互いに異なる複数の濃度センサを固定することで、これら濃度センサを一括してサイドレー動作させることができる。
【0033】
濃度計測部3による複数の画像濃度計測位置は、操作端末34からの指令入力によって個別に設定できる。設定後の調整(再設定)も操作端末34からの指令入力によって行える。画像濃度計測位置の数(設定数)の増減も可能である。
画像濃度計測位置の選択によって、用紙101の幅方向における印刷幅や、要求される印刷品質等に対応して、最適な濃度計測を行うことができる。例えば、用紙幅方向において、印刷する図柄の分布に偏りがある場合、図柄が多い領域に対応させて画像濃度計測位置の設定数を多くする(画像濃度計測位置の密度を高くする)、といったことも可能である。
【0034】
また、この電子写真印刷機1においては、電子写真印刷ユニット2による印刷幅に応じて前記画像濃度計測位置を自動設定する機能を有することが好ましい。
例えば、電子写真印刷機1全体の駆動制御用の制御装置にて、電子写真印刷ユニット2による印刷幅が入力されたとき、センサ移動制御部33が、前記印刷幅に応じて、予め設定しておいた数(複数)の画像濃度計測位置を等間隔に自動設定するようにする。また、この自動設定の後、必要に応じて、操作端末34からの指令入力によって、画像濃度計測位置の個別調整、設定数の増減を行えるようにする。これにより、印刷幅に対応した画像濃度計測位置の個別調整、設定数の増減を楽に行える。印刷幅の変更にも柔軟に対応できる。用紙幅に対応する印刷幅が設定されている場合、用紙幅の入力に対応して、センサ移動制御部33が、前記印刷幅に応じて、予め設定しておいた数(複数)の画像濃度計測位置を自動設定するようにしても良い。
【0035】
(濃度制御部、画像濃度制御動作)
次に、濃度制御部4、及び、電子写真印刷機1における画像濃度制御動作について説明する。
図2において、濃度制御部4は、前記濃度計測部3の濃度センサ31によって用紙幅方向複数箇所の画像濃度計測位置について計測した画像濃度の平均値を算出し、この平均値を予め設定しておいた濃度基準値と比較し、電子写真印刷ユニット2が前記用紙101に印刷する画像濃度を前記濃度基準値と一致させるように制御するものである。
この濃度制御部4は、電子写真印刷機1全体の駆動制御用の制御装置の一部であっても良く、前記制御装置とは別個に独立した構成であっても良い。
【0036】
図2に示すように、濃度制御部4は、演算処理部41と指令出力部42とを具備する。
演算処理部41には、濃度センサ31に接続されている濃度センサコントローラ35から濃度センサ31による濃度計測値が入力される。
演算処理部41には、予め濃度基準値が設定(記憶)されている。ここで説明する電子写真印刷機1のように、多色印刷の場合は、色毎の濃度基準値が演算処理部41に設定される。
演算処理部41は、濃度センサコントローラ35から入力された濃度計測値に基づいて、濃度センサ31によって用紙幅方向複数箇所の画像濃度計測位置について計測した画像濃度(濃度計測値)の平均値を算出する。そして、この平均値と濃度基準値とを比較し、その差から濃度補正値を算出する。
【0037】
ここで、画像濃度(濃度計測値)の平均値は、1本の濃度制御用パッチ5について複数の画像濃度計測位置にて計測した濃度計測値の平均値である。この平均値と濃度基準値との比較は、濃度制御用パッチ5の色に対応する色の濃度基準値を用いて行うことは言うまでも無い。
複数のプリンタ2に対応して用紙101に印刷された複数本の濃度制御用パッチ5については、その色毎に、平均値の算出、濃度基準値との比較を行い、濃度補正値を算出する。
【0038】
図2において、符号244は、現像装置24の現像ローラ241に高電圧を出力(印加)する電源部であり、この電源部244からの出力電圧が現像ローラ241の感光体ドラム21に対する現像バイアスとなる。
指令出力部42は、演算処理部41にて算出された濃度補正値に基づいて前記電源部244の出力電圧を制御する制御信号(制御指令)を出力する。
この制御信号は、デジタル信号の出力電圧として出力され、D/A変換ユニット245にてアナログ信号に変換されて、電源部244に入力される。
図2において、濃度センサ31、濃度センサコントローラ35、濃度制御部4、D/A変換ユニット245、電源部244、現像ローラ241、アニロックスローラ243は、この電子写真印刷機1における濃度制御システムを構成する。
【0039】
図2においては、電源部244は、アニロックスローラ243に結線されている。
現像ローラ241、アニロックスローラ243は、ともに、金属等で形成された硬質の芯体の外側に、導電性ウレタンゴム等の弾力性及び導電性を有する表面材を周設した構成になっており、互いに接する現像ローラ241及びアニロックスローラ243は、感光体ドラム21に対する電位が同じに揃うようになっている。このため、アニロックスローラ243への電圧印加によって、現像ローラ241に現像バイアスとなる電圧が印加される。
なお、本発明は、アニロックスローラ243を介することなく現像ローラ241に直接、電源部244から電圧を印加する構成としても良いことは言うまでも無い。
【0040】
演算処理部41が算出する濃度補正値は、電子写真印刷ユニット2が前記用紙101に印刷する画像濃度を前記濃度基準値と一致させるように、電源部244が出力する電圧値を制御するものである。
濃度制御部4から出力された指令に基づいて、電源部244が出力電圧を調整すること(画像濃度制御動作)で、電子写真印刷ユニット2が前記用紙101に印刷する画像濃度が前記濃度基準値と一致するように調整される。
【0041】
図3に例示したように、1本の濃度制御用パッチ5について4箇所の画像濃度計測位置311〜314を設定して、濃度計測値の平均値、濃度補正値を算出する場合について説明する。
この場合、4箇所の画像濃度計測位置311〜314の濃度計測値をD1、D2、D3、D4とすると、その平均値Tは(D1+D2+D3+D4)/4で表すことができる。
濃度補正値をP、濃度基準値をA、演算係数をBとすると、P=(A−T)×Bの関係が成り立つ。
ここで演算係数Bは、濃度計測値の平均値と濃度基準値との差を、電源部244が出力する電圧値に換算(濃度値と電圧値との換算)するための係数である。
【0042】
また、この電子写真印刷機1が印刷する複数本の濃度制御用パッチ5について、それぞれ、上述の画像濃度制御動作が実施されることで、印刷する全色について、 電子写真印刷ユニット2が前記用紙101に印刷する画像濃度が前記濃度基準値と一致するように調整される。
【0043】
この電子写真印刷機1によれば、上述のように、濃度センサ31によって用紙幅方向複数箇所について計測した画像濃度に基づいてその平均値が予め設定しておいた濃度基準値となるように前記電子写真印刷ユニット2が前記用紙101に印刷する画像濃度を制御する構成であり、用紙101に実際に印刷された画像濃度に基づく画像濃度制御である。このため、従来に比べて、正確で安定した濃度制御を実現できる。液体トナーの性質、用紙の性質、用紙送り速度等にも左右されることなく、正確で安定した濃度制御を実現できるといった利点もある。
【0044】
また、用紙101の幅方向複数箇所における画像濃度の計測を、用紙幅方向に移動する濃度センサ31によって行うので、複数のセンサを用いる従来技術に比べて、低コストで濃度計測を行える。しかも、用紙幅方向に移動する濃度センサによる濃度計測は、用紙幅方向における計測位置(画像濃度計測位置)を任意に設定できるため、印刷条件(印刷幅、印刷品質等)に応じた計測位置の設定を容易に実現できる。画像濃度計測位置の用紙幅方向における設定数も任意に決めることができる。このため印刷条件(印刷幅、印刷品質等)に応じた適切な濃度計測を行える。
【0045】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、適宜変更が可能であることは言うまでも無い。
用紙としては、長尺帯状のものに限定されず、平判のものであっても良い。平判の用紙としては、例えば、JIS規格のA3サイズ、A4サイズといった紙加工仕上げ寸法に仕上げられたもの、仕上げ前の原紙寸法のもの等、を採用できる。
平判の用紙の場合、用紙供給量の把握を用紙枚数を計数するカウンターによって行うことができる。
【0046】
また、本発明は、多色印刷用の電子写真印刷機に限定されず、電子写真印刷ユニットを1つのみ有する単色印刷用の電子写真印刷機にも適用可能である。
また、本発明は、濃度制御用パッチを印刷する機能を有するものに限定されない。濃度制御用パッチを印刷する機能を有していない電子写真印刷機にあっては、用紙における1色刷り部分を濃度制御用パッチの如く使用して、濃度計測部の濃度センサによって用紙幅方向の複数箇所の画像濃度を計測し、印刷濃度を制御することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る1実施形態の電子写真印刷機の構成を示す全体図である。
【図2】図1の電子写真印刷機の濃度制御システムを説明するブロック図である。
【図3】図3は電子写真印刷機の電子写真印刷ユニットによって用紙に印刷する濃度制御用パッチを示す図である。
【図4】図4は電子写真印刷ユニットの濃度センサによる画像濃度の計測動作を説明する図である。
【図5】図5は濃度センサを用紙幅方向に移動して用紙の画像濃度を計測する濃度計測部の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1…電子写真印刷機、11…(用紙原反の外径計測用の)センサ、2…電子写真印刷ユニット(プリンタ)、21…感光体ドラム、24…現像装置、241…現像ローラ、242…タンク、243…アニロックスローラ、244…電源部、245…D/C変換ユニット、3…濃度計測部、31…濃度センサ、311〜314…画像濃度計測位置、32…センサ移動機構、33…センサ移動制御部、34…操作端末(操作パネル)、35…濃度センサコントローラ、4…濃度制御部、41…演算処理部、42…指令出力部、5、51〜54…濃度制御用パッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体トナー式の電子写真印刷機であって、
用紙に画像を印刷する電子写真印刷ユニットと、この電子写真印刷ユニットよりも前記用紙の送り方向下流側にて前記用紙の画像濃度を計測する濃度センサを前記用紙の幅方向に移動させる濃度計測部と、前記濃度センサによって用紙幅方向複数箇所について計測した画像濃度の平均値を予め設定しておいた濃度基準値と比較し、前記電子写真印刷ユニットが前記用紙に印刷する画像濃度を前記濃度基準値と一致させるように制御する濃度制御部とを具備することを特徴とする電子写真印刷機。
【請求項2】
前記濃度計測部は、その駆動を制御するセンサ移動制御部への入力指令に基づいて用紙幅方向複数箇所に前記濃度センサによる画像濃度計測位置を設定可能であり、前記濃度センサを、設定された複数の前記画像濃度計測位置のそれぞれについて、予め設定しておいた停止時間を確保して、用紙幅方向に移動させることを特徴とする請求項1記載の電子写真印刷機。
【請求項3】
前記センサ移動制御部に前記画像濃度計測位置の設定指令を入力するための操作端末を具備することを特徴とする請求項2記載の電子写真印刷機。
【請求項4】
前記センサ移動制御部は、電子写真印刷ユニットによる印刷幅に応じて前記画像濃度計測位置を自動設定する機能を有することを特徴とする請求項2又は3記載の電子写真印刷機。
【請求項5】
前記用紙にその幅方向に延在する帯状の濃度制御用パッチを印刷し、前記濃度センサが前記濃度制御用パッチの用紙幅方向複数箇所について計測した画像濃度に基づいて、前記電子写真印刷ユニットが前記用紙に印刷する画像濃度を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真印刷機。
【請求項6】
多色印刷を行う電子写真印刷機であり、前記濃度基準値が各色毎に設定されており、
前記用紙の長手方向に位置をずらして各色毎の前記濃度制御用パッチを印刷し、各色毎に、前記濃度センサが前記濃度制御用パッチの用紙幅方向複数箇所について画像濃度を計測し、計測した画像濃度の平均値が前記濃度基準値となるように、前記電子写真印刷ユニットが前記用紙に印刷する画像濃度を各色毎に制御することを特徴とする特徴とする請求項5記載の電子写真印刷機。
【請求項7】
電子写真印刷ユニットへの用紙の供給量が予め設定しておいた設定値に達したときに、前記濃度制御用パッチを自動印刷し、濃度制御用パッチの印刷後に印刷運転を自動停止することを特徴とする請求項5又は6記載の電子写真印刷機。
【請求項8】
前記濃度制御用パッチの印刷後に、前記濃度センサによる画像濃度の計測動作を自動で行うことを特徴とする請求項7記載の電子写真印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−192920(P2009−192920A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34712(P2008−34712)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】