説明

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び、電子写真画像形成装置

【課題】電子写真感光体内部の電荷の蓄積を抑制する。
【解決手段】円筒状の基体1と、基体1上に設けられる下引層4であって、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、且つ、厚さが3μm以上15μm以下である下引層4と、下引層4上に設けられる感光層2であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層2と、を備えた電子写真感光体。


〔一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示し、m及びnは、各々独立に、0以上4以下の整数を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び、電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体が用いられた画像形成装置には、感光体の表面を帯電させるための帯電手段と、この帯電した表面に対して光を照射し静電潜像を形成するための露光手段と、この静電潜像を現像してトナー像を形成するための現像手段と、このトナー像を記録媒体に転写するための転写手段と、を順次配置した画像形成プロセスが採用されている。
【0003】
この画像形成装置においては、トナー像を記録媒体へ転写した後の感光体中に残留した残留電位を消去するため、例えば光を照射して除電する除電手段が設けられたシステムと、該除電手段を有さないシステムとが採用されている。
【0004】
例えば、導電性基体上に、電荷発生剤としてのフタロシアニン系化合物、正孔輸送剤および電子輸送剤を結着樹脂中に含有し、フタロシニン系化合物の含有量が結着樹脂の質量に対して0.1質量%以上4質量%以下であり、感光層の膜厚が10μm以上35μm以下であり、且つ露光波長780nm、露光エネルギー1.0μm/cmで測定した正極性と負極性の感度の絶対値の差が500V以下である単層型の感光体を使用し、除電手段を有さないシステムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、正孔輸送剤に特定の構造を有するアミン化合物を用いた感光層を備えた除電手段を有さないシステムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−312075号公報
【特許文献2】特開2008−281723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、層厚が3μm以上15μm以下である下引層と、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層とを備えない場合比べ、感光体内部の電荷の蓄積を抑制する電子写真感光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に係る発明は、
円筒状の基体と、
前記基体上に設けられる下引層であって、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、且つ、厚さが3μm以上15μm以下である下引層と、
前記下引層上に設けられる感光層であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層と、
を備えた電子写真感光体である。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示し、m及びnは、各々独立に、0以上4以下の整数を示す。
【0011】
請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、且つ、
トナー像の記録媒体への転写後かつ帯電前に、前記電子写真感光体における電荷を除電する除電手段を備えず、電子写真画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジである。
【0012】
請求項3に係る発明は、
請求項1に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段と、
を備え、電子写真画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジである。
【0013】
請求項4に係る発明は、
請求項1に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像を帯電されたトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体および前記トナー像に対し前記トナーとは逆極性の電圧を印加して前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、
且つ、前記トナー像の記録媒体への転写後かつ帯電前に、前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段を有さない電子写真画像形成装置である。
【0014】
請求項5に係る発明は、
請求項1に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像を帯電されたトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体および前記トナー像に対し前記トナーとは逆極性の電圧を印加して前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段と、
を有する電子写真画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、層厚が3μm以上15μm以下である下引層と、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層とを備えない場合比べ、感光体内部の電荷の蓄積を抑制する電子写真感光体を提供する。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、除電手段を備えていなくても、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、層厚が3μm以上15μm以下である下引層と、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層とを備える電子写真感光体を備えない場合比べ、感光体内部の電荷の蓄積を抑制するプロセスカートリッジを提供する。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、層厚が3μm以上15μm以下である下引層と、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層とを備える電子写真感光体と除電手段とを備えない場合比べ、感光体内部の電荷の蓄積をより抑制するプロセスカートリッジを提供する。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、除電手段を備えていなくても、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、層厚が3μm以上15μm以下である下引層と、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層とを備える電子写真感光体を備えない場合比べ、感光体内部の電荷の蓄積を抑制する電子写真画像形成装置を提供する。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、層厚が3μm以上15μm以下である下引層と、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層とを備える電子写真感光体と除電手段とを備えない場合比べ、感光体内部の電荷の蓄積をより抑制する電子写真画像形成装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図2】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図3】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図4】実施形態に係る電子写真感光体を示す概略部分断面図である。
【図5】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図6】実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<電子写真感光体>
本実施形態に係る電子写真感光体(以下単に「感光体」とも称する)は、円筒状の基体と、前記基体上に設けられる下引層であって、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、且つ、厚さが3μm以上15μm以下である下引層と、前記下引層上に設けられる感光層であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層と、を備えている。
【0022】
【化2】

【0023】
一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示し、m及びnは、各々独立に、0以上4以下の整数を示す。
【0024】
感光体を上記構成とすることで感光体内部の電荷の蓄積を抑制する理由は、明らかではないが、下記の作用によるためと推測される。
感光体が備える下引層は、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、且つ、下引層の厚さを3μm以上15μm以下とすることで、下引層中に、負電荷が蓄積することを抑制すると考えられる。感光体内部の負電荷の蓄積を抑制することで、対となって発生し得る正電荷の蓄積も併せて抑制し得ると考えられる。また、下引層よりも上に設けられる感光層に、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(以下、「特定重合体」とも称する)を含有することにより、感光層中における正孔輸送性が向上し、感光体内部に電荷が蓄積しにくくなると考えられる。
【0025】
さらに、感光層が、下引層よりも上側(下引層の、基体がある側とは反対の側)に設けられていることで、下引層に何らかの相互作用を与え、下引層が、より一層、負電荷を蓄積しにくくなると考えられる。
【0026】
したがって、本実施形態にかかる感光体を用いることで、感光体内部に電荷が蓄積することを抑制し得ると考えられる。
その結果、次のような効果を発現し得ると考えられる。
【0027】
一般に、露光による帯電と現像により感光体に静電的に付着したトナー像は、感光体にトナーとは逆極性の電圧を印加することにより、記録媒体に転写される。感光体が電荷を蓄積しにくく、電荷が流れ易いことで、感光体にトナーとは逆極性の電圧を印加したときに、露光部と非露光部との表面電位差が無くなり易い。すなわち、露光部と非露光部との表面電位差が生ずることにより、感光体表面の付着すべき場所にトナーが付着しなかったり、本来付着すべきでない場所にトナーが付着する「画像メモリー」と称される現象を抑制し得ると考えられる。
また、電子写真画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」とも称する)が、除電手段を有さず、感光体に逆極性の電圧を印加する転写手段が、感光体の表面電位を除去する除電手段も担う装置である場合には、転写手段においてのみ除電作用が施される。そのため、露光部と非露光部との表面電位差が残り、残留電位の増加により所望の濃度の画像を形成することができなくなる濃度異常や、かぶりを抑制し得ると考えられる。
画像形成装置が、除電手段を有する場合には、感光体の蓄積電荷をより一層除去し得るため、表面電位差がより無くなり易く、既述の画像メモリーを抑制し得ると考えられる。
【0028】
次いで、本実施形態に係る感光体の構成について詳細に説明する。
本実施形態に係る電子写真感光体は、円筒状の基体と、前記基体上に設けられる下引層であって、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、且つ、厚さが3μm以上15μm以下である下引層と、前記下引層上に設けられる感光層であって、一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層と、を備える。
感光体は、更に、表面層として、感光体の最上面を形成する保護層を備えていてもよい。
【0029】
以下、電子写真感光体について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付することとし、重複する説明は省略する。
図1は、実施形態に係る電子写真用感光体の好適な一実施形態を示す模式断面図である。図2乃至図4はそれぞれ他の実施形態に係る電子写真感光体を示す模式断面図である。
【0030】
図1に示す電子写真感光体は、機能分離型の感光層2を有する感光体であり、基体1上に、下引層4、及び感光層2を、この順に設けて構成される。感光層2は、下引層4側から順に、電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの2層で構成される。
【0031】
図2に示す電子写真感光体は、機能分離型の感光層2を有する感光体であり、基体1上に、下引層4、感光層2、及び保護層5を、この順に設けて構成される。感光層2は、下引層4側から順に、電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの2層から構成される。
【0032】
図3に示す電子写真感光体は、機能分離型の感光層2を有する感光体であり、図1に示す電子写真感光体と同様に、基体1上に、下引層4、及び感光層2を、この順に設けて構成されるが、感光層2内の電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの積層順序が異なる。図3における感光層2は、下引層4側から順に、電荷輸送層2Bおよび電荷発生層2Aの2層で構成される。
【0033】
図4は、基体1上に、機能一体型の感光層6を有する感光体であり、下引層4、及び感光層6を、この順に設けて構成される。感光層6は、図1に示す電荷発生層2Aおよび電荷輸送層2Bの機能が一体となった層である
以下、電子写真感光体を構成する各層について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0034】
〔基体〕
基体としては、円筒状の導電性を有する基体が用いられる。
導電性を有する基体としては、特に制限されず、例えば、薄膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、導電性付与剤を塗布又は含浸させたプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0035】
基体として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0036】
〔下引層〕
下引層は、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、且つ、厚さが3μm以上15μm以下である。
下引層は、基体表面における光反射抑制、基体から感光層への不要な電荷の流入抑制等の目的で設けられ、下引層が金属酸化物および電子受容性材料を含有することで、下引層に負電荷が蓄積することを抑制し得る。また、層厚は、薄いほど下引層に負電荷を蓄積しにくく、15μmを上限とする。また、下引層の機能を発現するため、3μmを下限とする。下引層の層厚は、3μm以上15μm以下であることが好ましく、5μm以上10μm以下であることがより好ましい。
金属酸化物および電子受容性材料は、例えば、結着樹脂に分散し、下引層用塗布液として基体上に付与される。
【0037】
金属酸化物としては、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が挙げられる。金属酸化物は、1種のみでも、複数種を併用してもよい。金属酸化物の形状は、特に制限されず、粒状でも平板状でもよいが、一般に粒状の金属酸化物が用いられ、また、体積抵抗率(粉体抵抗)が10Ω・cm以上1011Ω・cm以下のものが望ましく用いられる。
金属酸化物の体積抵抗率を10Ω・cm以上1011Ω・cm以下とする観点から、金属酸化物は、上記の中でも酸化亜鉛が望ましく用いられる。
【0038】
また、金属酸化物は、表面処理を行ったものでもよく、表面処理の異なるもの、または、粒子径の異なるものなど2種以上混合して用いてもよい。金属酸化物の体積平均粒径は50nm以上2000nm以下(望ましくは60以上1000以下)の範囲であることが望ましい。
また、金属酸化物は、BET法による比表面積が10m/g以上のものが望ましく用いられる。
【0039】
下引層は、金属酸化物に加えて、電子受容性材料を含有する。
電子受容性材料としては、例えば、クロラニル、ブロモアニル等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物、3,3’,5,5’テトラ−t−ブチルジフェノキノン等のジフェノキノン化合物等の電子輸送性物質などが望ましく、特にアントラキノン構造を有する化合物が望ましい。さらに、ヒドロキシアントラキノン系化合物、アミノアントラキノン系化合物、アミノヒドロキシアントラキノン系化合物等、アントラキノン構造を有する電子受容性材料が望ましく用いられ、具体的にはアントラキノン、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が挙げられる。中でも、アリザリン、キニザリン、アントラルフィン、プルプリン等が好ましい。
【0040】
これらの電子受容性材料の含有量は任意に設定してもよいが、望ましくは金属酸化物に対して0.01質量%以上20質量%以下含有される。さらに0.05質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0041】
電子受容性材料は、金属酸化物と別個に下引層に含まれていてもよいし、金属酸化物表面にあらかじめ付着させておいて、下引層に含まれていてもよい。
電子受容性材料を、金属酸化物と別個に下引層に含ませるには、下引層を形成するための下引層用塗布液に、電子受容性材料と、金属酸化物とをそれぞれ添加するだけでよい。表面に電子受容性材料が付着した金属酸化物を下引層に含ませるには、金属酸化物表面に電子受容性材料を付着させた後、下引層用塗布液に、表面に電子受容性材料が付着した金属酸化物を添加すればよい。
金属酸化物表面に電子受容性材料を付着させる方法(以下、単に「付着処理」という)としては、乾式法、または、湿式法が挙げられる。
【0042】
乾式法にて付着処理を施す場合には金属酸化物をせん断力の大きなミキサ等で攪拌しながら、直接または有機溶媒に溶解させた電子受容性材料を滴下、乾燥空気や窒素ガスとともに噴霧させることによって処理される。添加または噴霧する際には溶剤の沸点以下の温度で行われることが望ましい。添加または噴霧した後、さらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けの温度、時間については任意の範囲で実施される。
【0043】
湿式法としては、金属酸化物を溶剤中で攪拌し、超音波、サンドミルやアトライター、ボールミル等を用いて分散し、電子受容性材料を添加し攪拌または分散したのち、溶剤除去することで処理される。溶剤除去方法はろ過または蒸留により留去される。溶剤除去後にはさらに100℃以上で焼き付けを行ってもよい。焼き付けの温度、時間については任意の範囲で実施される。湿式法においては表面処理剤を添加する前に金属酸化物含有水分を除去してもよく、その例として付着処理に用いる溶剤中で攪拌加熱しながら除去する方法、溶剤と共沸させて除去する方法を用いてもよい。
【0044】
また、金属酸化物は、表面に電子受容性材料を付着する前に、予め表面処理を施してもよい。表面処理剤としては、公知の材料から選択される。例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、界面活性材等が挙げられる。特に、シランカップリング剤が望ましく用いられる。さらにアミノ基を有するシランカップリング剤も望ましく用いられる。
【0045】
表面処理方法は公知の方法であればいかなる方法でも使用し得るが、乾式法または湿式法を用いることがよい。また、電子受容性材料の付与とカップリング剤等による表面処理とを並行して行ってもよい。
【0046】
下引層中の金属酸化物に対するシランカップリング剤の量は、任意に設定されるが、金属酸化物に対して0.5質量%以上10質量%以下が望ましい。
【0047】
下引層に含有される結着樹脂としては、公知のいかなるものでも使用し得るが、例えばポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送性基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂等が用いられる。中でも上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が望ましく用いられる。これらを2種以上組み合わせて使用する場合には、その混合割合は、必要に応じて設定される。
【0048】
尚、下引層用塗布液中の、電子受容性材料が付着した金属酸化物とバインダー樹脂との比率、または電子受容性材料が付着していない金属酸化物とバインダー樹脂との比率は、任意に設定される。
【0049】
下引層中には種々の添加剤を用いてもよい。添加剤としては、多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料、ジルコニウムキレート化合物、チタニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等の公知の材料が用いられる。シランカップリング剤は金属酸化物の表面処理に用いられるが、添加剤としてさらに塗布液に添加して用いてもよい。
【0050】
下引層用塗布液を調製するための溶媒としては公知の有機溶剤、例えばアルコール系、芳香族系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、ケトンアルコール系、エーテル系、エステル系等から選択される。
【0051】
また、金属酸化物、電子受容性材料等の下引層を構成する成分の分散に用いる溶剤は単独または2種以上混合して用いてもよい。混合する際、使用される溶剤としては、混合溶剤としてバインダー樹脂を溶かし得る溶剤であれば、いかなるものでも使用される。
【0052】
下引層を構成する成分の分散方法としては、ロールミル、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、コロイドミル、ペイントシェーカーなどの公知の方法が用いられる。さらにこの下引層を設けるときに用いる塗布方法としては、ブレード塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、ビード塗布法、エアーナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0053】
このようにして得られた下引層用塗布液を用い、基体上に下引層が成膜される。
また、下引層は、ビッカース強度が35以上とすることが望ましい。
【0054】
また、下引層の表面粗さ(十点平均粗さ)はモアレ像防止のために、使用される露光用レーザー波長λの1/4n(nは上層の屈折率)から1/2λまでに調整される。表面粗さ調整のために下引層中に樹脂などの粒子を添加してもよい。樹脂粒子としてはシリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子等が用いられる。
【0055】
また、表面粗さ調整のために下引層を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、湿式ホーニング、研削処理等が用いられる。
【0056】
塗布したものを乾燥させて下引層を得るが、通常、乾燥は溶剤を蒸発させ、製膜し得る温度で行われる。
【0057】
〔感光層〕
感光層は、下引層上に設けられ、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体(特定重合体)を含有する。
【0058】
【化3】

【0059】
一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示し、m及びnは、各々独立に、0以上4以下の整数を示す。
【0060】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられ、中でもフッ素原子が好ましい。
炭素数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよく、直鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、分岐状のアルキル基としては、イソプロピル基、tert−ブチル基等が挙げられる。中でも、直鎖状のアルキル基であることが好ましく、炭素数は1以上3以下であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、及びプロピル基が好ましい。
【0061】
炭素数5以上7以下のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数6以上12以下のアリール基としては、フェニル基、トリル基、メチシル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0062】
一般式(1)におけるm及びnは、各々独立に、0以上4以下の整数を示す。mが2以上4以下であるとき、Rは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。nが2以上4以下であるとき、Rは、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
特定重合体は、一般式(1)で表される繰り返し単位のほかに、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む共重合体であることが好ましい。
【0064】
【化4】

【0065】
一般式(2)中、R及びRは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示し、m及びnは、各々独立に、0以上4以下の整数を示す。Xは、−CR−、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基、−O−、−S−、−SO−又は−SO−を示す。R及びRは、各々独立に、水素原子、トリフルオロメチル基、炭素数1以上6以下のアルキル基又は炭素数6以上12以下のアリール基を表す。
【0066】
一般式(2)におけるR及びRで表されるハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、および炭素数6以上12以下のアリール基、ならびに、m及びnは、一般式(1)におけるR及びRで表されるハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、および炭素数6以上12以下のアリール基、ならびに、m及びnと同義である。
【0067】
Xが−CR−で表され、R及びRが、各々独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基で表される場合、当該炭素数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状のアルキル基であっても、分岐状のアルキル基であってもよく、例えば、メチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。中でもメチル基が好ましい。
Xが−CR−で表され、R及びRが、各々独立に、炭素数6以上12以下のアリール基で表される場合、当該炭素数6以上12以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0068】
炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基であるものとしては、1,1−シクロヘキシル基、1,1−シクロオクチル基等が挙げられ、中でも、1,1−シクロヘキシル基が好ましい。
炭素数2以上10以下のα,ω−アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、オクチレン基等が挙げられる。
【0069】
Xは、上記の中でも、Xが−CR−で表され、R及びRが、各々独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基で表される基、または、炭素数5以上11以下の1,1−シクロアルキレン基であることが好ましい。さらには、Xが−CR−で表され、R及びRが、いずれもメチル基である基、または、1,1−シクロヘキシレン基であることがより好ましい。
【0070】
特定重合体中の一般式(1)で表される繰り返し単位の割合をa〔mol%〕とし、一般式(2)で表される繰り返し単位の割合をb〔mol%〕としたとき、両者の量比(a/b)は、0.05以上0.9以下であることが好ましい。a/bが0.05以上であると、感光体内部の電荷蓄積を抑制し易く、a/bが0.9以下であることで特定重合体が部分的に結晶化することを抑え、感光体用の結着樹脂として望ましい。
特定重合体は、一般式(1)で表される繰り返し単位および、一般式(2)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位(以下、「繰り返し単位c」という)を含む共重合体であってもよいが、繰り返し単位cの特定重合体中の割合は、10〔mol%〕以下である。
【0071】
繰り返し単位cは、絶縁性樹脂の繰り返し単位や、有機光導電性ポリマーの繰り返し単位等を用い得る。
絶縁性樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等が挙げられる。
有機光導電性ポリマーとしては、例えば、およびポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等が挙げられる。
【0072】
一般式(1)で表される繰り返し単位、及び、必要に応じて一般式(2)で表される繰り返し単位を含んで構成される特定重合体は、例えば、下記一般式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビフェニル化合物、及び下記一般式(4)で表されるビスフェノール化合物を用い、ホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物との重縮合、あるいはビスアリールカーボネートとのエステル交換反応などの方法によって合成される。
【0073】
【化5】

【0074】
一般式(3)及び一般式(4)中、R、R、R、R、m、n、及びXは、一般式(1)及び一般式(2)におけるR、R、R、R、m、n、及びXと同義である。
【0075】
一般式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビフェニル化合物としては、具体的には、例えば、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルビフェニル、4,4′−ジヒドロキシ−2,2′−ジメチルビフェニル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジシクロヘキシルビフェニル、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジヒドロキシビフェニル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジフェニルビフェニル等が挙げられる。
【0076】
一般式(4)で表されるビスフェノール化合物としては、具体的には、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)イソブタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(2−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(2−tert−アミル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ブタン、ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシ−5−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1−フェニル−1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0077】
一般式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビフェニル化合物と、一般式(4)で表されるビスフェノール化合物は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよいし、また、それぞれ、1種または2種以上の、一般式(3)で表される4,4′−ジヒドロキシビフェニル化合物と、一般式(4)で表されるビスフェノール化合物とを混合して用いてもよい。
【0078】
一般式(1)で表される繰り返し単位を含んで構成される特定重合体の具体例(BP−1乃至BP−18)を例示するが、特定重合体は以下の例示化合物に限定されるものではない。複数種の繰り返し単位を含む重合体における繰り返し単位の量比はモル比を表す。
以下、下記の具体例(BP−1乃至BP−18)を、それぞれ、特定重合体BP−1、特定重合体BP−2等と称する。
【0079】
【化6】

【0080】
【化7】

【0081】
【化8】

【0082】
特定重合体の粘度平均分子量(Mv)は、強度と溶解性および塗布性の観点からの観点から、30000以上70000以下であることが好ましい。
特定重合体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
特定重合体の感光層(感光層が、機能分離型の感光層である場合は電荷発生層および電荷輸送層、機能一体型の感光層である場合は当該機能一体型の感光層)中の含有量は、感光層の全固形分質量に対し、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。30質量%以上であることで、特定重合体の強度を保持し得る状態となり、80質量%以下であることで、別に添加する電荷発生材料や電荷輸送材料の機能を確保し得る。特定重合体の感光層中の含有量は、感光層の全固形分質量に対し、50質量%以上65質量%以下であることがより好ましい。
【0084】
感光層は、既述のように、機能分離型である場合は電荷発生層および電荷輸送層の2層で構成され、機能一体型である場合には1層で構成される。
特定重合体は、結着樹脂として機能し得ると共に、電荷輸送性を有し、感光層が機能分離型である場合は電荷輸送層に含まれることが好ましい。
特定重合体が電荷輸送層に含まれる場合、特定重合体の電荷輸送層中の含有量は、電荷輸送層の全固形分質量に対し、30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、50質量%以上65質量%以下であることがより好ましい。
以下、機能分離型の感光層が備える電荷発生層および電荷輸送層について説明する。
【0085】
−電荷発生層−
電荷発生層は、例えば、電荷発生材料と結着樹脂中とを含んで構成される。かかる電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料が挙げられ、特に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.7゜、9.3゜、16.9゜、17.5゜、22.4゜及び28.8゜に強い回折ピークを有する無金属フタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.5゜、9.9゜、12.5゜、16.3゜、18.6゜、25.1゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも9.6゜、24.1゜及び27.2゜に強い回折ピークを有するチタニルフタロシアニン結晶が挙げられる。その他、電荷発生材料としては、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等が挙げられる。また、これらの電荷発生材料は、単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
電荷発生層を構成する結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷発生材料と結着樹脂の配合比は、例えば10:1乃至1:10の範囲が望ましい。
【0087】
電荷発生層の形成の際には、上記成分を溶剤に加えた電荷発生層用塗布液が使用される。
【0088】
電荷発生層用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0089】
電荷発生層用塗布液を下引き層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0090】
電荷発生層の膜厚は、望ましくは0.01μm以上5μm以下、より望ましくは0.05μm以上2.0μm以下の範囲に設定される。
【0091】
−電荷輸送層−
電荷輸送層は、電荷輸送材料と、必要に応じて結着樹脂と、を含んで構成される。
電荷輸送材料としては、例えば、2,5−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール誘導体、1,3,5−トリフェニル−ピラゾリン、1−[ピリジル−(2)]−3−(p−ジエチルアミノスチリル)−5−(p−ジエチルアミノスチリル)ピラゾリン等のピラゾリン誘導体、トリフェニルアミン、N,N′−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン、トリ(p−メチルフェニル)アミニル−4−アミン、ジベンジルアニリン等の芳香族第3級アミノ化合物、N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−N,N′−ジフェニルベンジジン等の芳香族第3級ジアミノ化合物、3−(4′−ジメチルアミノフェニル)−5,6−ジ−(4′−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン等の1,2,4−トリアジン誘導体、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,1−ジフェニルヒドラゾン等のヒドラゾン誘導体、2−フェニル−4−スチリル−キナゾリン等のキナゾリン誘導体、6−ヒドロキシ−2,3−ジ(p−メトキシフェニル)ベンゾフラン等のベンゾフラン誘導体、p−(2,2−ジフェニルビニル)−N,N−ジフェニルアニリン等のα−スチルベン誘導体、エナミン誘導体、N−エチルカルバゾール等のカルバゾール誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体などの正孔輸送物質、クロラニル、ブロアントラキノン等のキノン系化合物、テトラアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、チオフェン化合物等の電子輸送物質、及び上記した化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体などが挙げられる。これらの電荷輸送材料は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
電荷輸送層を構成する結着樹脂としては、既述の特定重合体のほかに、公知の結着樹脂を用いてもよい。特定重合体以外の結着樹脂としては、例えば、ビスフェノールAタイプあるいはビスフェノールZタイプ等のポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、塩素ゴム等の絶縁性樹脂、及びポリビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン等の有機光導電性ポリマー等があげられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
なお、電荷輸送材料と上記結着樹脂(特定重合体を含む全結着樹脂)との配合比は、例えば10:1乃至1:5が望ましい。
【0093】
電荷輸送層は、上記成分を溶剤に加えた電荷輸送層用塗布液を用いて形成される。
電荷輸送層用塗布液中に粒子(例えば、後述のフッ素系樹脂粒子)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0094】
電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法を用いられる。
電荷輸送層の膜厚は、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上40μm以下の範囲に設定される。
【0095】
以上、機能分離型の感光層が備える電荷発生層および電荷輸送層について説明したが、感光層が機能一体型である場合には、以下の態様であることが望ましい。
機能一体型の感光層中の電荷発生材料の含有量は10質量%以上85質量%以下程度、望ましくは20質量%以上50質量%以下である。また、電荷輸送材料の含有量は5質量%以上50質量%以下とすることが望ましい。機能一体型感光層(電荷発生/電荷輸送層)の形成方法は、電荷発生層や電荷輸送層の形成方法と同様である。機能一体型感光層(電荷発生/電荷輸送層)の層厚は5μm以上50μm以下程度が望ましく、10μm以上40μm以下とするのが更に望ましい。
【0096】
〔保護層〕
保護層は、感光体の表面層となる層であり、例えば、導電性材料と結着樹脂とを含んで構成される。また、保護層は、例えば、重合性官能基を有する電荷輸送性材料の硬化膜で構成されていてもよい。硬化膜は、必要に応じて、他の樹脂を含んでいてもよい。
なお、保護層の構成は、周知の構成が採用される。
【0097】
ここで、感光体の表面層となる層(例えば、保護層、保護層を備えない感光体である場合には、電荷輸送層等)は、更に、感光体表面の耐汚染物付着性、潤滑性を改善するために、フッ素系樹脂粒子を含んでいてもよい。フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン、3フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂粒子や「第8回ポリマー材料フォ−ラム講演予稿集 p89」に示される、フッ素樹脂と水酸基を有するモノマーとを共重合させた樹脂粒子が挙げられる。特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂の粒子が好ましい。
フッ素系樹脂粒子の一次粒径は0.05μm以上1μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。一次粒径が0.05μmを下回ると分散時の凝集が進みやすくなる。一方、1μmを上回ると画質欠陥が発生し易くなる。
【0098】
電荷輸送層が表面層となる場合、電荷輸送層の全固形分に対するフッ素系樹脂粒子の含有量は2質量%以上15質量%以下であることが好ましい。なお、電荷輸送層の全固形分に対するフッ素系樹脂粒子の含有量が2質量%未満の場合、フッ素系樹脂粒子分散による電荷輸送層の改質が不十分となることがある。また、当該含有量が15質量%を超えると、分散性が悪化し、膜強度の低下が生じることがある。
【0099】
表面層中にフッ素系樹脂粒子を分散させるための塗布液の分散方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等のメディアレス分散機が利用できる。さらに、高圧ホモジナイザーとして、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0100】
また、表面層中のフッ素系樹脂粒子の分散安定剤として、フッ素系界面活性剤や、フッ素系グラフトポリマーを用いることで、塗布液としての分散性が安定する。フッ素系グラフトポリマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、スチレン化合物等からなるマクロモノマー及びパーフルオロアルキルエチルメタクリレートよりグラフト重合された樹脂が好ましい。
フッ素系界面活性剤やフッ素系グラフトポリマーの含有量は、フッ素系樹脂粒子の全質量に対して1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0101】
また、同様の目的で、表面層にはシリコーンオイル等のオイルを添加してもよい。シリコーンオイルとしては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、フェニルメチルシロキサン等のシリコーンオイル、アミノ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、カルボキシル変性ポリシロキサン、カルビノ−ル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、メタクリル変性ポリシロキサン、メルカプト変性ポリシロキサン、フェノール変性ポリシロキサン等の反応性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0102】
〔画像形成装置/プロセスカートリッジ〕
第1の実施形態に係る画像形成装置は、既述の本実施形態に係る電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を帯電されたトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体および前記トナー像に対し前記トナーとは逆極性の電圧を印加して前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、且つ、前記トナー像の記録媒体への転写後かつ帯電前に、前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段を有さない電子写真画像形成装置である。
【0103】
第2の実施形態に係る画像形成装置は、既述の本実施形態に係る電子写真感光体と、前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を帯電されたトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、前記電子写真感光体および前記トナー像に対し前記トナーとは逆極性の電圧を印加して前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段と、を有する電子写真画像形成装置である。
【0104】
また、第1の本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る電子写真感光体を少なくとも備え、且つ、トナー像の記録媒体への転写後かつ帯電前に、前記電子写真感光体における電荷を除電する除電手段を備えず、電子写真画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジである。
第2の本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る電子写真感光体と、前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段と、を備え、電子写真画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジである。
【0105】
本実施形態に係る画像形成装置とプロセスカートリッジを、第1の実施形態に係る画像形成装置と、第1の実施形態に係るプロセスカートリッジを例に、図5を用いて詳細に説明する。
図5は、実施形態に係る画像形成装置100を示す概略構成図である。
図5に示される画像形成装置100は、既述の電子写真感光体7を備えるプロセスカートリッジ300と、露光装置(露光手段)9と、転写装置(転写手段)40と、中間転写体50と、を備える。なお、画像形成装置100において、露光装置9はプロセスカートリッジ300の開口部から電子写真感光体7に露光可能な位置に配置されており、転写装置40は中間転写体50を介して電子写真感光体7に対向する位置に配置されており、中間転写体50はその一部が電子写真感光体7に接触して配置されている。
【0106】
図5におけるプロセスカートリッジ300は、ハウジング内に、電子写真感光体7、帯電装置(帯電手段)8、現像装置(現像手段)11、及びクリーニング装置(清掃手段)13を一体に支持している。
現像装置11は、トナーを含有する現像剤(図示せず)を収容する。
クリーニング装置13は、ブレード(クリーニングブレード)131を有しており、ブレード131は、電子写真感光体7の表面に接触するように配置されている。なお、ブレードは、導電性或いは絶縁性の繊維状部材と併用してもよい。
【0107】
また、図5では、クリーニング装置13として、潤滑材14を感光体7の表面に供給する繊維状部材132(ロール状)を備え、また、クリーニングをアシストする繊維状部材133(平ブラシ状)を用いた例を示してあるが、これらは必要に応じて使用される。
以下、各部材について説明する。
なお、符号は省略して説明する。
【0108】
〔帯電装置〕
帯電装置としては接触帯電方式を利用した帯電器が挙げられる。また接触帯電方式ではローラー、ブラシ、フィルム等の種々の公知の形態が用いられるが、特にローラー状の帯電部材が望ましい。ローラー状の帯電部材については感光体に対して250mgf以上600mgf以下の圧力で接触することが望ましい。
【0109】
ローラー状の帯電部材は帯電部材として有効な電気抵抗(10Ω以上10Ω以下)に調整された材料から構成される物であり、単層または複数の層から構成されていても構わない。
【0110】
帯電部材を構成する材質としてはウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等からなるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を配合したものが用いられる。
【0111】
さらにナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の導電性付与剤を配合し、得られた塗料をディッピング、スプレー、ロール塗布等の手法により積層して用いてもよい。
【0112】
〔露光装置〕
露光装置としては、公知の露光装置が用いられる。例えば、露光光源として、微小スポット径を形成する単一の発光レーザ素子や、複数の半導体レーザ(発光点)が平面内に二次元配列された面発光レーザ素子により発光されたレーザをポリゴンミラーにより屈折させるもの、複数のLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)素子を直線または千鳥状に配置したものなどがある。該光源は画像処理装置からの書込用画像データに応じた光を感光体ドラムに照射することで画像の書きこみが行われる。書きこみ時の光量は、感光体の表面上で0.5mJ/m以上5.0mJ/m以下であることが望ましい。
【0113】
〔現像装置〕
現像装置としては、公知の現像装置であればよく、例えば、キャリアとトナーとからなる現像ブラシを感光体に接触させて現像させる二成分現像方式の現像装置や、導電ゴム搬送ロール(現像ロール)上にトナーを付着させ感光体にトナーを現像する接触式一成分現像方式の現像装置などが利用される。
【0114】
二成分現像方式の場合、現像ロールの回転方向は感光体の回転方向と同方向でも逆方向でもよい。なお、現像ロールに印加する電界は直流でも直流に交流を重畳させてもよい。
【0115】
また、現像ロール表面に形成される磁気ブラシは、感光体に面する磁気ブラシ密度が変化しないよう層規制部材により層規制されることによって、磁気ブラシ密度が適正な範囲内に調整されることが望ましい。
【0116】
現像ロールに印加する電圧は、トナーの正規の極性が負極性である場合、−50V以下−600V以上が望ましく、さらに望ましくは−100V以下−350V以上である。
【0117】
〔トナー〕
トナーとしては、公知のトナーであれば特に限定されない。また、トナーには、結着樹脂や着色剤が含まれ、必要に応じて離型剤が含まれていてもよい。さらに、トナーには、フッ素樹脂粒子等の外添剤が添加されていてもよい。
【0118】
また、トナーには、さまざまな特性を制御するために、種々の成分を含有させてもよい。例えば、磁性トナーとして用いる場合、磁性粉(例えばフェライトやマグネタイト)、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金またはこれら金属を含む化合物などが含有させられる。さらに、4級アンモニウム塩、ニグロシン系化合物やトリフェニルメタン系顔料等の通常使用される帯電制御剤を選択して含有させてもよい。
【0119】
さらに、トナーには、無機粒子からなる研磨剤に加えて、必要に応じて潤滑剤、転写助剤等の公知の外添剤を外添してもよい。
【0120】
トナーを製造する方法は、特に制約されるものではないが、例えば、通常の粉砕法や、分散媒中で作製する湿式溶融球形化法や、懸濁重合、分散重合、乳化重合凝集法等の既知の重合法によるトナー製造法などが用いられる。
【0121】
〔キャリア〕
現像剤がトナーとキャリアとからなる二成分現像剤である場合、使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが用いられる。例えば、酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物などの芯材のみからなるキャリア(ノンコートキャリア)や、これら芯材の表面に樹脂層を設けた樹脂コートキャリア等が用いられる。
【0122】
以上に説明したキャリアを用いた二成分現像剤では、トナーとキャリアとの混合比(質量比)が、トナー:キャリア=1:100乃至30:100の範囲であることが望ましく、3:100乃至20:100の範囲がより望ましい。
【0123】
〔転写装置〕
転写装置は、感光体およびトナー像に対しトナーとは逆極性の電圧を印加して感光体上に形成されたトナー像を転写部にて記録媒体に転写させる装置である。第1の実施形態に係る画像形成装置に備えられる転写装置(転写手段)は、画像形成装置に、トナー像の記録媒体への転写後かつ帯電前に、前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段を有さないため、転写装置が除電機能をも有する。すなわち、第1の実施形態に係る画像形成装置に備えられる転写装置(転写手段)は、感光体およびトナー像に対しトナーとは逆極性の電圧を印加して感光体上に形成されたトナー像を転写部にて記録媒体に転写させると共に、帯電された感光体における電位を除電する装置である。なお、除電装置(除電手段)を別途有する第2の実施形態に係る画像形成装置に備えられる転写装置(転写手段)も、除電機能を兼ね備えていてもよい。
【0124】
転写装置としては、公知の方式を利用したものが使用される。例えば、コロトロンやスコロトロン等の非接触方式のもの、転写ロールを用いた接触方式のものが挙げられる。
また、感光体からトナー像を転写する際には、記録媒体を静電的に吸着して搬送し感光体上のトナー像を転写する転写ベルト方式を利用した直接転写方式が挙げられるが、直接記録媒体に転写する方式には限られず、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体を用いた中間転写方式であってもよい。
【0125】
〔クリーニング装置〕
クリーニング手段としては公知のクリーニング方式が利用される。例えば、クリーニングブレードを用いる場合、クリーニングブレードは感光体表面に接触する部分が弾性を有する部材からなり、該弾性を有する部材の100%モジュラスが6.5MPa以上であることが望ましく、7.0Mpa以上であることがより望ましく、9.0MPa以上であることがさらに望ましい。一方、弾性を有する部材の100%モジュラスは19.6MPa以下であることが望ましく、15.0MPa以下であることがより望ましい。
【0126】
また、弾性を有する部材は、その破断伸びが250%以上であることが望ましく、300%以上であることがより望ましく、350%以上であることがさらに望ましい。
【0127】
クリーニングブレードを構成する材料としては、公知のゴム体が用いられる、またその他の材料を添加してもよい。ゴム体としては、特に限定されないが、ゴムウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、アクリロニトリルゴム、ブタジエン系ゴム、スチレン系ゴムあるいはこれらの複合材が用いられる。また、クリーニングブレードの形状としては板状が好適に用いられ、遠心成形、押し出し成形、型成形等を利用して形成される。
【0128】
〔除電装置〕
既述のとおり、第1の実施形態に係る画像形成装置においては、電子写真感光体における電荷を除電するための除電装置を有さないが、第2の実施形態に係る画像形成装置においては、除電装置を有する。
除電装置としては、公知の除電装置を用いればよく、トナー像の記録媒体への転写後かつ帯電前に、感光体の電位を除去し得るものであればよい。例えば、既述の除電機能を有する転写装置のように、感光体に対し、電圧を調節して印加して除電する装置であってもよいし、感光体に対して光除電を行う光除電装置であってもよい。
【0129】
図6は、他の実施形態に係る画像形成装置120を示す概略断面図である。
図6に示される画像形成装置120は、プロセスカートリッジ300を4つ搭載したタンデム方式のフルカラー画像形成装置である。
画像形成装置120では、中間転写体50上に4つのプロセスカートリッジ300がそれぞれ並列に配置されており、1色に付き1つの電子写真感光体が使用される構成となっている。なお、画像形成装置120は、タンデム方式であること以外は、画像形成装置100と同様の構成を有している。
【実施例】
【0130】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「%」および「部」はすべて質量基準である。
【0131】
〔実施例1〕
(基体)
基体として、円筒状のアルミニウム基材を用意した。
【0132】
(下引層)
−金属酸化物粒子−
酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)100部をメタノール500部と攪拌混合し、シランカップリング剤として、KBM603(信越化学社製)1.25部を添加し、2時間攪拌した。その後、メタノールを減圧蒸留にて留去し、120℃で3時間焼き付けを行い、シランカップリング剤で表面が処理された酸化亜鉛(ZnO)粒子M1を得た。
【0133】
−下引層用塗布液1−
・酸化亜鉛粒子M1(金属酸化物) 60部
・アリザリン(電子受容性材料) 0.6部
・ブロック化イソシアネート(硬化剤) 13.5部
〔スミジュール3173、住友バイエルンウレタン社製〕
・ブチラール樹脂(結着樹脂)〔BM−1、積水化学社製〕 15部
・メチルエチルケトン(溶剤) 85部
【0134】
上記組成の混合溶液38部と、メチルエチルケトン25部とを混合し、直径1mmのガラスビーズを用いて、サンドミルにて4時間の分散を行い、分散液Dを得た。次いで、分散液Dに下記組成の成分を混合して、下引層用塗布液1を得た。
【0135】
・ジオクチルスズジラウレート(触媒) 0.005部
・シリコーン樹脂粒子〔トスパール145、GE東芝シリコーン社製〕 4.0部
【0136】
下引層用塗布液1を、浸漬塗布法にて直径30mmのアルミニウム基材上に塗布し、180℃、40分の乾燥硬化を行い厚さ15μmの下引層を得た。
【0137】
(電荷発生層)
・クロロガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生材料) 15部
〔CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも
7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有する。〕
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂 10部
〔VMCH、日本ユニオンカーバイト社製〕
・n−ブチルアルコール 300部
【0138】
上記組成の混合物を、直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて4時間分散し、電荷発生層用塗布液を得た。得られた電荷発生層用塗布液を、下引層上に浸漬塗布し、乾燥して、厚みが0.2μmの電荷発生層を得た。
【0139】
(電荷輸送層)
下記組成の成分を、20℃の液温に保ち、48時間攪拌混合し、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を得た。
・4フッ化エチレン樹脂粒子〔体積平均粒径:0.2μm〕 0.6部
・フッ化アルキル基含有メタクリルコポリマー 0.015部
〔GF300、東亜合成株式会社社製、重量平均分子量:30,000〕
・テトラヒドロフラン(溶剤) 4部
・トルエン(溶剤) 1部
【0140】
次いで、下記組成の成分を混合して、電荷輸送材料溶液を得た。
・結着樹脂(特定重合体BP−1)〔粘度平均分子量:55000〕 6部
〔特定重合体の具体例として既述した化合物〕
・電荷輸送材料 4部
〔下記T−1で表される化合物と下記T−2で表される化合物との混合系、
混合比T−1:T−2=50:50(モル比)〕
・2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(酸化防止剤) 0.1部
・テトラヒドロフラン(溶剤) 24部
・トルエン(溶剤) 11部
【0141】
【化9】

【0142】
得られた電荷輸送材料溶液に、4フッ化エチレン樹脂粒子懸濁液を加えて攪拌混合して得た混合液を、マイクロ流路を有する貫通式チャンバーを装着した高圧ホモジナイザー〔吉田機械興行社製〕を用いて、500kgf/cmで分散処理を6回繰り返した。
得られた分散液に、フッ素変性シリコーンオイル〔商品名:FL−100、信越シリコーン社製〕を5ppm添加し、十分に撹拌して電荷輸送層用塗布液1を調製した。
【0143】
得られた電荷輸送層用塗布液1を、電荷発生層上に塗布して135℃で30分間乾燥し、厚さが20μmの電荷輸送層を形成し、実施例1の電子写真感光体とした。
【0144】
〔実施例2〕
実施例1の下引層の形成において、下引層用塗布液1の塗布厚を変更し、厚さ10μmの下引層を形成した以外は、実施例1と同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例2の電子写真感光体を得た。
【0145】
〔実施例3〕
実施例1の電荷輸送層用塗布液1の調製において、電荷輸送材料溶液中の結着樹脂(特定重合体BP−1)を、特定重合体BP−2〔粘度平均分子量:54000〕に変更した以外は、同様にして電荷輸送層用塗布液2を調製した。
実施例2の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1を電荷輸送層用塗布液2に変更した以外は同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例3の電子写真感光体を得た。
【0146】
〔実施例4〕
実施例1の電荷輸送層用塗布液1の調製において、電荷輸送材料溶液中の結着樹脂(特定重合体BP−1)を、特定重合体BP−3〔粘度平均分子量:60000〕に変更した以外は、同様にして電荷輸送層用塗布液3を調製した。
実施例2の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1を電荷輸送層用塗布液3に変更した以外は同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例4の電子写真感光体を得た。
【0147】
〔実施例5〕
実施例1の電子写真感光体の作製において、下引層用塗布液1の塗布厚を変更し、厚さ5μmの下引層を形成した以外は、実施例1と同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例5の電子写真感光体を得た。
【0148】
〔実施例6〕
実施例1における酸化亜鉛粒子M1の作製において、酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)の代わりに、酸化スズ(平均粒子径:70nm、三菱マテリアル社製)を用いた他は同様にして、表面がシランカップリング剤で処理された酸化スズ(SnO)粒子M2を作製した。次いで、下引層用塗布液1の調製において、酸化亜鉛粒子M1の代わりに、酸化スズ粒子M2を用いた下引層用塗布液2を調製した。
実施例1の電子写真感光体の作製において、下引層用塗布液1の代わりに下引層用塗布液2を用いて下引層を形成したほかは同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例6の電子写真感光体を得た。
【0149】
〔実施例7〕
実施例1における酸化亜鉛粒子M1の作製において、酸化亜鉛(平均粒子径:70nm、テイカ社製、比表面積値:15m/g)の代わりに、酸化チタン(石原産業 CR-EL)を用いた他は同様にして、表面がシランカップリング剤で処理された酸化チタン粒子M3を作製した。次いで、下引層用塗布液1の調製において、酸化亜鉛粒子M1の代わりに、酸化チタン粒子M3を用いた下引層用塗布液3を調製した。
実施例1の電子写真感光体の作製において、下引層用塗布液1の代わりに下引層用塗布液3を用いて下引層を形成したほかは同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例7の電子写真感光体を得た。
【0150】
〔実施例8〕
下引層用塗布液1の調製において、アリザリン(電子受容性材料)の代わりに、トリニトロフルオレノン(電子受容性材料)を用いた下引層用塗布液4を調製した。
実施例1の電子写真感光体の作製において、下引層用塗布液1の代わりに下引層用塗布液4を用いて下引層を形成したほかは同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例8の電子写真感光体を得た。
【0151】
〔実施例9〕
実施例1の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1の塗布厚を変更し、厚さ10μmの電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例9の電子写真感光体を得た。
【0152】
〔実施例10〕
実施例1の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1の塗布厚を変更し、厚さ30μmの電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例10の電子写真感光体を得た。
【0153】
〔実施例11〕
実施例1の電荷輸送層用塗布液1の調製において、電荷輸送材料溶液中の結着樹脂(特定重合体BP−1)を、特定重合体BP−5〔粘度平均分子量:50000〕に変更した以外は、同様にして電荷輸送層用塗布液4を調製した。
実施例2の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1を電荷輸送層用塗布液4に変更した以外は同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例11の電子写真感光体を得た。
【0154】
〔実施例12〕
実施例1の電荷輸送層用塗布液1の調製において、電荷輸送材料溶液中の結着樹脂(特定重合体BP−1)を、特定重合体BP−6〔粘度平均分子量:50000〕に変更した以外は、同様にして電荷輸送層用塗布液5を調製した。
実施例2の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1を電荷輸送層用塗布液5に変更した以外は同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例12の電子写真感光体を得た。
【0155】
〔実施例13〕
実施例1の電荷輸送層用塗布液1の調製において、電荷輸送材料溶液中の結着樹脂(特定重合体BP−1)を、特定重合体BP−10〔粘度平均分子量:50000〕に変更した以外は、同様にして電荷輸送層用塗布液6を調製した。
実施例2の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1を電荷輸送層用塗布液6に変更した以外は同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例13の電子写真感光体を得た。
【0156】
〔実施例14〕
実施例1の電荷輸送層用塗布液1の調製において、電荷輸送材料溶液中の結着樹脂(特定重合体BP−1)を、特定重合体BP−11〔粘度平均分子量:50000〕に変更した以外は、同様にして電荷輸送層用塗布液7を調製した。
実施例2の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1を電荷輸送層用塗布液7に変更した以外は同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例14の電子写真感光体を得た。
【0157】
〔実施例15〕
実施例1の電荷輸送層用塗布液1の調製において、電荷輸送材料溶液中の結着樹脂(特定重合体BP−1)を、特定重合体BP−15〔粘度平均分子量:50000〕に変更した以外は、同様にして電荷輸送層用塗布液8を調製した。
実施例2の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1を電荷輸送層用塗布液8に変更した以外は同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例15の電子写真感光体を得た。
【0158】
〔実施例16〕
実施例1の電荷輸送層用塗布液1の調製において、電荷輸送材料溶液中の結着樹脂(特定重合体BP−1)を、特定重合体BP−17〔粘度平均分子量:50000〕に変更した以外は、同様にして電荷輸送層用塗布液9を調製した。
実施例2の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1を電荷輸送層用塗布液9に変更した以外は同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた実施例16の電子写真感光体を得た。
【0159】
〔比較例1〕
実施例1の電子写真感光体の作製において、下引層用塗布液1の塗布厚を変更し、厚さ17μmの下引層を形成した以外は、実施例1と同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた比較例1の電子写真感光体を得た。
【0160】
〔比較例2〕
実施例1の電子写真感光体の作製において、下引層用塗布液1の塗布厚を変更し、厚さ23μmの下引層を形成した以外は、実施例1と同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた比較例2の電子写真感光体を得た。
【0161】
〔比較例3〕
下引層用塗布液1の調製において、アリザリン(電子受容性材料)を含まない下引層用塗布液101を調製した。
実施例1の電子写真感光体の作製において、下引層用塗布液1の代わりに下引層用塗布液101を用いて下引層を形成したほかは同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた比較例3の電子写真感光体を得た。
【0162】
〔比較例4〕
電荷輸送層用塗布液1の調製において、BP−1の代わりに、下記比較化合物1の重合体〔粘度平均分子量:50000〕を用いた以外は、同様にして電荷輸送層用塗布液101を調製した。
実施例1の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1の代わりに電荷輸送層用塗布液101を用いて電荷輸送層を形成したほかは同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた比較例4の電子写真感光体を得た。
【0163】
【化10】

【0164】
〔比較例5〕
比較例2の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1の代わりに電荷輸送層用塗布液101を用いて電荷輸送層を形成したほかは同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた比較例5の電子写真感光体を得た。
【0165】
〔比較例6〕
比較例3の電子写真感光体の作製において、電荷輸送層用塗布液1の代わりに電荷輸送層用塗布液101を用いて電荷輸送層を形成したほかは同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた比較例6の電子写真感光体を得た。
【0166】
〔比較例7〕
下引層用塗布液1の調製において、酸化亜鉛粒子M1を含まない下引層用塗布液102を調製した。
実施例1の電子写真感光体の作製において、下引層用塗布液1の代わりに下引層用塗布液102を用いて下引層を形成したほかは同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた比較例7の電子写真感光体を得た。
【0167】
〔比較例8〕
実施例1の電子写真感光体の作製において、下引層用塗布液1を塗布せず、下引層を形成しなかったほかは同様にして、電荷発生層上に厚さ20μmの電荷輸送層を備えた比較例8の電子写真感光体を得た。
【0168】
<画像形成>
上述のようにして実施例および比較例の電子写真感光体を、富士ゼロックス社製、DocuCentreIII C3300改造機に適用し、画像メモリーおよび耐久性評価を行った。評価方法および評価基準の詳細は次のとおりである。また、評価結果を表1に示した。
【0169】
1.画像メモリー評価
実施例1乃至実施例9及び比較例1乃至比較例8の電子写真感光体を、除電装置を有するDocuCentreIII C3300改造機に装着し、常温常湿(20℃、40%RH)の環境下において、画像メモリーの評価を行った。具体的には、1サイクル目で文字画像を形成し、2サイクル目で30%ハーフトーン画像を形成したときの、1サイクル目の画像履歴が残るかどうかで判断した。さらに、DocuCentreIII C3300改造機から除電装置を取り外した後、同様に評価を行った。
【0170】
−評価基準−
A:1サイクル目の履歴なし
B:1サイクル目の履歴が一部見える部分もある
C:1サイクル目の履歴が全体薄く見える
D:1サイクル目の履歴が全体濃く見える
【0171】
2.耐久性評価
実施例1乃至実施例9及び比較例1乃至比較例8の電子写真感光体を、除電装置を有するDocuCentreIII C3300改造機に装着し、低温低湿(10℃、20%RH)の環境下にて1万枚の画像形成テストを行い、次いで、高温高湿(28℃、75%RH)の環境下で1万枚の画像形成テストを行った。その後、50%ハーフトーン(黒)の画像形成を行い、得られた画像を下記評価基準で評価した。耐久性評価においても、DocuCentreIII C3300改造機から除電装置を取り外した系で評価を行った。
【0172】
−評価基準−
A:良好
B:わずかに画像濃度低下
C:著しく低画像濃度
D:スジ状の欠陥発生
【0173】
【表1】

【0174】
表1中、感光層(電子輸送層)欄の「種類」欄は、電子輸送層中の結着樹脂の種類(特定重合体BP−1等)を表し、「比較1」は、既述の比較化合物1を表す。
【0175】
表1に示した結果から明らかなように、実施例の電子写真感光体は、画像メモリー及び耐久性に優れ、高画質、長寿命を実現し得ることが確認された。また、かかる電子写真感光体を用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジは、高画質、長寿命を実現し得る。
【符号の説明】
【0176】
1 基体、2 感光層、2A 電荷発生層、2B 電荷輸送層、4 下引層、5 保護層、6 機能一体型の感光層(電荷発生/電荷輸送層)、7 電子写真感光体、8 帯電装置、9 露光装置、11 現像装置、13 クリーニング装置、14 潤滑材、40 転写装置、50 中間転写体、100、120 画像形成装置、300 プロセスカートリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の基体と、
前記基体上に設けられる下引層であって、金属酸化物および電子受容性材料を含有し、且つ、厚さが3μm以上15μm以下である下引層と、
前記下引層上に設けられる感光層であって、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する感光層と、
を備えた電子写真感光体。
【化1】


〔一般式(1)中、R及びRは、各々独立に、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数5以上7以下のシクロアルキル基、又は炭素数6以上12以下のアリール基を示し、m及びnは、各々独立に、0以上4以下の整数を示す。〕
【請求項2】
請求項1に記載の電子写真感光体を少なくとも備え、且つ、
トナー像の記録媒体への転写後かつ帯電前に、前記電子写真感光体における電荷を除電する除電手段を備えず、電子写真画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジ。
【請求項3】
請求項1に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段と、
を備え、電子写真画像形成装置に対して着脱自在なプロセスカートリッジ。
【請求項4】
請求項1に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像を帯電されたトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体および前記トナー像に対し前記トナーとは逆極性の電圧を印加して前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、を有し、
且つ、前記トナー像の記録媒体への転写後かつ帯電前に、前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段を有さない電子写真画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像を帯電されたトナーにより現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記電子写真感光体および前記トナー像に対し前記トナーとは逆極性の電圧を印加して前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記電子写真感光体における電荷を除電するための除電手段と、
を有する電子写真画像形成装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−180457(P2011−180457A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45833(P2010−45833)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】