説明

電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置

【課題】長期間の繰り返し使用に対しても、機械的/電気的耐久性に優れ、異常画像の発生がない高耐久な電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが前記導電性支持体側からこの順で積層された感光層を含む積層体A、または電荷発生層と電荷輸送層とが前記導電性支持体側からこの順で積層された感光層およびその上に形成された表面保護層を含む積層体Bが形成されてなり、最表面層となる、前記積層体Aの電荷輸送層または前記積層体Bの表面保護層が耐磨耗性の改良剤として中空シリカを含有することを特徴とする電子写真感光体により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる、優れた耐久性を有する電子写真感光体およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真感光体には、有機感光体(以下「電子写真感光体」と共に「感光体」ともいう)が広く用いられている。
有機感光体は、可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料が開発し易いこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いことなどの利点がある反面、機械的強度や化学的な耐久性が低く、多数枚のプリント時に感光体の静電特性の劣化や表面の傷の発生などを起こし易いという欠点を有する。
【0003】
すなわち、有機感光体の表面には、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段などにより電気的および機械的な外力が直接加えられ、また材料劣化の条件に曝されるため、それらに対する耐久性が要求される。
具体的には、摩擦による感光体表面の摩耗や傷の発生、コロナ帯電時に発生するオゾンなどの活性酸素、チッソ酸化物による表面の劣化に対する耐久性が要求されるが、現状の感光体では不十分である。
【0004】
上記のような耐久性の問題を解決するために、感光体の層構成を電荷発生層と電荷輸送層の積層構成にし、表面層の電荷輸送層を高強度でかつ活性ガスが透過し難い均一層にし、電荷輸送層の膜厚を20μmより厚くする構成が多く採用されている。しかし、感光体の耐久性および高画質化の要求に対して、未だ十分な解決策とはなり得ていない。
【0005】
また、感光体の耐摩耗特性を改良する方法として、硬化性シリコーン樹脂を含有する保護層を設ける技術(例えば、特開平3−155558号公報:特許文献1参照)、感光体の最表面層に無機粒子を含有させる技術(例えば、特開平1−205171号公報:特許文献2)が提案されている。
しかしながら、これらの耐摩耗性の改良技術は、画像形成を繰り返し、多数枚の複写画像を形成すると、画像濃度や鮮鋭性が低下する傾向がみられ、別の課題を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−155558号公報
【特許文献2】特開平1−205171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、長期間の繰り返し使用に対しても、機械的/電気的耐久性に優れ、異常画像の発生がない高耐久な感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、感光体の最表面層に中空シリカを含有させることにより、機械的/電気的耐久性に優れ、異常画像の発生がない高耐久な感光体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明によれば、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが前記導電性支持体側からこの順で積層された感光層を含む積層体A、または電荷発生層と電荷輸送層とが前記導電性支持体側からこの順で積層された感光層およびその上に形成された表面保護層を含む積層体Bが形成されてなり、最表面層となる、前記積層体Aの電荷輸送層または前記積層体Bの表面保護層が耐磨耗性の改良剤として中空シリカを含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記の感光体と、前記感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期間の繰り返し使用に対しても、機械的/電気的耐久性に優れ、異常画像の発生がない高耐久な感光体およびそれを備えた画像形成装置を提供することができる。すなわち、本発明によれば、耐刷性に優れ、長期の使用にわたっても電気的安定性を保持し、画像上の劣化などが発生しない、安定した感光体およびそれを用いた画像形成装置を提供することができる。
【0012】
従来の表面層に無機粒子を含有する感光体では、繰り返し画像を形成した場合に、感度が悪化して画像濃度の低下がみられるが、本発明の中空シリカを含有する感光体では、感度の悪化が少なく画像濃度の低下が見られない。これは、中空シリカが中空部分を有し、通常のバルクの無機粒子よりも誘電率が低く、感光体の電気特性の悪化を招きにくいためと考えられる。
【0013】
本発明の感光体は、中空シリカが積層体Aの電荷輸送層または積層体Bの表面保護層の全固形分に対して1.0〜20.0重量%含有されてなることにより、また中空シリカが、1.0〜5.0μmの一次粒径を有することにより、上記の効果がさらに発揮される。
【0014】
本発明の感光体は、感光層が電荷輸送物質として後述する一般式(I)、特に副式(II)で示されるエナミン系化合物を含有することにより、さらに良好な電気特性および耐刷性を得ることができる。
また、本発明の感光体は、積層体Aまたは積層体Bの最表面層が後述する一般式(III)で表されるジアミン化合物を最表面層に含有することにより、上記の効果が得られると共に、耐オゾン性、耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性が付与され、画像ボケなどの画像不良の発生を抑制することができる。
さらに、本発明の感光体は、導電性支持体と少なくとも感光層を含む積層体Aまたは積層体Bとの間に中間層を有することにより、上記の効果が得られると共に、導電性支持体の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、感光層の成膜性を高め、導電性支持体と感光層との密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の感光体の要部の構成を示す模式側面図である。
【図2】本発明の感光体の要部の構成を示す模式側面図である。
【図3】本発明の画像形成装置の要部の構成を示す模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の感光体は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが前記導電性支持体側からこの順で積層された感光層を含む積層体A、または電荷発生層と電荷輸送層とが前記導電性支持体側からこの順で積層された感光層およびその上に形成された表面保護層を含む積層体Bが形成されてなり、最表面層となる、前記積層体Aの電荷輸送層または前記積層体Bの表面保護層が耐磨耗性の改良剤として中空シリカを含有することを特徴とする。
【0017】
積層体の最表面層が含有する中空シリカは、中空構造を有し、感光体の製造において他の構成成分と共に層形成可能なのものであれば、特に限定されず、後述する実施例で用いたような市販品を用いることができる。
本発明において「シリカ」とは、二酸化珪素(SiO2)を意味する。
【0018】
中空シリカが中空構造を有することおよびその一次粒径は、例えば、株式会社日立製作所社製、型式:H−7100FAのような透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて、粒子の粒径を測定する通常の方法で観察することにより確認することができる。
具体的には、常温硬化性のエポキシ樹脂中に粒子を充分分散させた後、包埋し、硬化させて、ブロック状の試料を作製する。作製したブロックをダイヤモンド歯を備えたミクロトームを用いて、厚さ80〜200nmの薄片状に切り出して測定用試料を作製する。
次いで、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて10000倍に拡大し、粒子を写真撮影し、例えば、画像処理装置(ニコレ社製、製品名:ルーゼックスF)などを用いて、撮影された100個の粒子の画像情報を演算処理して、一次粒径を求める。また、それらの画像から粒子が中空構造を有することを確認することができる。
【0019】
本発明の感光体は、後述するような構成を有するが、導電性支持体上に少なくとも感光層を含み形成され積層体は、電荷発生層と電荷輸送層とが導電性支持体側からこの順で積層された感光層を含む積層体A、または電荷発生層と電荷輸送層とが導電性支持体側からこの順で積層された感光層およびその上に形成された表面保護層を含む積層体Bであり、かつ中空シリカが、積層体Aの電荷輸送層または積層体Bの表面保護層の全固形分に対して1.0〜20.0重量%含有されてなるのが好ましい。
中空シリカの積層体Aの電荷輸送層または積層体Bの表面保護層の全固形分に対する含有量が1.0重量%未満であれば、耐摩耗性の向上効果が期待できず、一方、20.0重量%を超えると、残留電位の上昇、書き込み光透過率の低下に伴う画像濃度の低下が大きく問題となることがある。
中空シリカの好ましい一次粒径は、耐摩耗性および電気特性の点で、0.1〜5.0μm、より好ましくは0.1〜1.0μmである。
【0020】
次に、本発明の感光体の構成について具体的に説明するが、本発明は以下の説明の形態により限定されるものではない。
図1および2は本発明の感光体の要部の構成を示す模式断面図である。
図1の感光体は、導電性材料からなるシート状の導電性支持体11上に中間層18が形成され、その上に電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13、中空シリカ19およびバインダ樹脂17を含有する電荷輸送層16とが導電性支持体側からこの順で積層された感光層14を含む積層体Aが形成されてなる。
図2の感光体は、導電性材料からなるシート状の導電性支持体11上に中間層18が形成され、その上に電荷発生物質12を含有する電荷発生層15と、電荷輸送物質13およびバインダ樹脂17を含有する電荷輸送層16とが導電性支持体側からこの順で積層された感光層14、および中空シリカ19を含有する表面保護層150を含む積層体Bがこの順で形成されてなる。
上記の感光層14は、電荷発生層15と電荷輸送層16とが積層されていることから、「積層型感光層」ともいう。積層順は逆順でもよいが、感光体性能の点で図1および2の積層順が好ましい。
以下に各層の構成について説明する。
【0021】
[導電性支持体11]
導電性支持体は、感光体の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、その構成材料は、当該技術分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料:ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる支持体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどが挙げられる。これらの中でも、JIS3003系、JIS5000系およびJIS6000系などのアルミニウム合金が特に好ましい。
【0022】
導電性支持体の形状は、図3に示すような円筒状(ドラム状)に限定されず、シート状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
導電性支持体の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品、熱水などによる表面処理、着色処理、表面を粗面化するなどの乱反射処理が施されていてもよい。
【0023】
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本発明による感光体を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体の表面で反射されたレーザ光と感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。そこで、導電性支持体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
【0024】
[中間層(「下引き層」ともいう)18]
本発明の感光体は、導電性支持体11と感光層14を含む積層体との間に中間層18を有するのが好ましい。
中間層は、導電性支持体から感光層への電荷の注入を防止する機能を有する。すなわち、感光層の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。
また、導電性支持体の表面を被覆する中間層は、導電性支持体の表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、感光層の成膜性を高め、導電性支持体と感光層との密着性を向上させることができる。
【0025】
中間層は、例えば、樹脂材料を適当な溶剤に溶解させて中間層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
【0026】
樹脂材料としては、後述する感光層に含まれるものと同様のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用できる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が特に好ましい。
アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、2−ナイロンおよび12−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロンおよびN−アルコキシエチル変性ナイロンのように、ナイロンを化学的に変性させた樹脂などが挙げられる。
【0027】
樹脂材料を溶解または分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、ジクロロエタン、クロロホルムもしくはトリクロロエタンなどの塩素系溶剤、アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
【0028】
また、中間層用塗布液は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、中間層の体積抵抗値を容易に調節でき、感光層への電荷の注入をさらに抑制できると共に、各種環境下において感光体の電気特性を維持できる。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどが挙げられる。
【0029】
中間層用塗布液におけるバインダ樹脂と金属酸化物粒子との合計重量Cと溶剤の重量Dとの比率(C/D)は、1/99〜40/60が好ましく、2/98〜30/70が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の重量Eと金属酸化物粒子の重量Fとの比率E/Fは、90/10〜1/99が好ましく、70/30〜5/95が特に好ましい。
【0030】
中間層用塗布液の塗布方法は、塗布液の物性および生産性などを考慮に入れて最適な方法を適宜選択すればよく、例えば、ディップコート法、スプレー法、ノズル法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法および浸漬塗布法などが挙げられる。
これらの塗布方法の中でも、浸漬塗布法は、塗布液を満たした塗工槽に基体を浸漬した後、一定速度または逐次変化する速度で引上げることによって基体の表面に層を形成する方法であり、比較的簡単で、生産性および原価の点で優れているので、感光体の製造に好適に用いることができる。浸漬塗布法に用いる装置には、塗布液の分散性を安定させるために、超音波発生装置に代表される塗布液分散装置が設けられていてもよい。
【0031】
塗膜の乾燥工程における温度は、使用した有機溶剤を除去し得る温度であれば特に限定されないが、50〜140℃が適当であり、80〜130℃が特に好ましい。
乾燥温度が50℃未満では、乾燥時間が長くなることがある。また、乾燥温度が140℃を超えると、感光体の繰返し使用時の電気的特性が悪化して、得られる画像が劣化するおそれがある。
このような感光層の製造における温度条件は、中間層のみならず後述する感光層などの層形成や他の処理においても共通する。
【0032】
中間層の膜厚は特に限定されないが、0.01〜20μmが好ましく、0.05〜10μmが特に好ましい。
中間層の膜厚が0.01μm未満では、中間層として実質的に機能しなくなり、導電性支持体の欠陥を被覆して均一な表面性を得ることができず、導電性支持体からの感光層への電荷の注入を防止することができなくなるおそれがある。一方、中間層の膜厚が20μmを超えると、均一な中間層を形成し難く、また感光体の感度も低下するおそれがある。
なお、導電性支持体の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、中間層とすることができる。
【0033】
[電荷発生層15]
電荷発生層は、画像形成装置などにおいて半導体レーザ光などの照射された光を吸収することによって電荷を発生する機能を有し、電荷発生物質を主成分とし、必要に応じてバインダ樹脂や添加剤を含有する。
【0034】
電荷発生物質としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料およびトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料;インジゴおよびチオインジゴなどのインジゴ系顔料;ペリレンイミドおよびペリレン酸無水物などのペリレン系顔料;アントラキノンおよびピレンキノンなどの多環キノン系顔料;オキソチタニウムフタロシアニンなどの金属フタロシアニンおよび無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料;スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料;ならびにセレンおよび非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などが挙げられ、露光波長域に感度を有するものを適宜選択して用いることができる。これらの電荷発生物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
電荷発生層は、結着性を向上させる目的でバインダ樹脂を含有していてもよい。
バインダ樹脂としては、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用でき、電荷発生物質との相溶性に優れるものが好ましい。
具体的には、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、これらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などが挙げられる。共重合体樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂およびアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などが挙げられる。バインダ樹脂はこれらに限定されるものではなく、この分野において一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することができる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
電荷発生物質とバインダ樹脂との配合比率は、電荷発生物質の割合が10〜99重量%の範囲にあることが好ましい。電荷発生物質の割合が10重量%未満であると、感度が低下することがある。また、電荷発生物質の割合が99重量%を超えると、電荷発生層の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少して画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多くなることがある。
【0037】
電荷発生層は、公知の乾式法および湿式法により形成することができる。
乾式法としては、例えば、電荷発生物質を導電性支持体上に形成された中間層の表面に真空蒸着する方法が挙げられる。
湿式法としては、例えば、電荷発生物質、必要に応じてバインダ樹脂および添加剤を適当な有機溶剤に溶解または分散して電荷発生層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体上または導電性支持体上に形成された中間層の表面に塗布し、次いで乾燥して溶剤を除去する方法が挙げられ、生産性の点で湿式法が好ましい。
【0038】
溶剤としては、例えばジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類;1,2−ジメトキシエタンなどのエチレングリコールのアルキルエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
バインダ樹脂溶液中に電荷発生物質を分散させる前に、電荷発生物質は、予め粉砕機によって粉砕処理されていてもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミルおよび超音波分散機などが挙げられる。
電荷発生物質をバインダ樹脂溶液中に溶解または分散させるために、ペイントシェーカ、ボールミルおよびサンドミルなどの分散機を用いることができる。このとき、容器および分散機を構成する部材から摩耗などによって不純物が発生し、塗布液中に混入しないように、分散条件を適宜設定するのが好ましい。
その他の工程やその条件は、中間層の形成に準ずる。
【0040】
電荷発生層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.1〜1μmである。
電荷発生層の膜厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感光体の感度が低下するおそれがある。また、電荷発生層の膜厚が5μmを超える場合には、電荷発生層内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体の感度が低下するおそれがある。
【0041】
[電荷輸送層16]
電荷輸送層は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ感光体表面まで輸送する機能を有し、電荷輸送物質およびバインダ樹脂、必要に応じて添加剤を含有する。
【0042】
電荷輸送物質13としては、当該分野で用いられる化合物を使用できる。
具体的には、カルバゾール誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、多環芳香族化合物、インドール誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、エナミン誘導体、ベンジジン誘導体、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマー(ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、エチルカルバゾール−ホルムアルデヒド樹脂、トリフェニルメタンポリマー、ポリ−9−ビニルアントラセンなど)、ポリシランなどが挙げられる。これらの電荷輸送物質は1種を単独でまたは2種以上を組み合せて使用することができる。
【0043】
これら種々の電荷輸送物質の中でも、電気特性、耐久性および化学的安定性において、一般式(I)で示されるエナミン系化合物が特に優れている。
【化1】

【0044】
[式中、
Ar1およびAr2は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり、Ar1およびAr2はそれらに結合する原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく;
Ar3は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;
【0045】
Ar4およびAr5は、同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり、Ar4およびAr5は共に水素原子ではなく、それらに結合する原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく;
aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子であり;
mは、1〜6の整数であり、mが2以上のとき、複数のaは同一でも異なってもよくかつそれらに結合する原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく;
【0046】
1は、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基であり;
2、R3およびR4は、同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;
nは、0〜3の整数であり、nが2または3のとき、複数のR2およびR3はそれぞれ同一でも異なってもよく、nが0のとき、Ar3は置換基を有してもよい1価の複素環残基である]
【0047】
一般式(I)で示されるエナミン系化合物の中でも、副式(II)で示されるエナミン系化合物が特に好ましい。
【化2】

【0048】
[式中、
b、cおよびdは、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、ハロゲン原子または水素原子であり;
i、kおよびjは、同一または異なって、1〜5の整数であり、i、kまたはjが2以上のとき、対応する複数のb、cまたはdはそれぞれ同一でも異なってもよくかつそれらに結合する原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく;
a、m、Ar4およびAr5は、一般式(I)と同義である]
【0049】
一般式(I)および副式(II)における置換基について説明する。
Ar1およびAr2の置換基を有してもよいアリール基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜6のジアルキルアミノ基およびハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。
具体的には、フェニル基、p−トリル基、4−メトキシフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。
Ar1およびAr2の置換基を有してもよい1価の複素環残基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい1価の複素環残基が挙げられる。
具体的には、ベンゾチアゾリル基、チエニル基などが挙げられる。
【0050】
Ar3の置換基を有してもよいアリール基としては、Ar1およびAr2の置換基を有してもよいアリール基と同様のものが挙げられる。
具体的には、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−イソプロピルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−メトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、2,5−ジメチル−4−メトキシフェニル基、4−ビフェニリル基、p−テルフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、2−メチル−4−メトキシ−1−ナフチル基、4−(4−メチル−フェノキシ)フェニル基、4−(フェニルチオ)フェニル基、2,5−ジメチル−4−(フェニルチオ)フェニル基などが挙げられる。
【0051】
Ar3の置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基が挙げられる。
具体的には、シクロへキシル基、シクロペンチル基、4、4−ジメチルシクロへキシル基などが挙げられる。
Ar3の置換基を有してもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、2−チエニルメチル基、1−ナフチルメチル基などが挙げられる。
Ar3の置換基を有してもよい1価の複素環残基としては、フリル基、チエニル基、5−メチル−2−フリル基、5−メチル−2−チエニル基、5−メチル−N−エチルカルバゾールー4−イル基が挙げられる。
【0052】
Ar4およびAr5の置換基を有してもよいアリール基としては、Ar3の置換基を有してもよいアリール基と同様のものが挙げられる。
具体的には、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−イソプロピルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−(2−フルオロエチル)フェニル基、4−メトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2−メチル−4−メトキシフェニル基、2,5−ジメチル−4−メトキシフェニル基、4−ビフェニリル基、p−テルフェニル基、4−ジメチルアミノフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、4−メトキシ−1−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、2−メチル−4−メトキシ−1−ナフチル基、9−アントリル基、1−ピレニル基、4−(4−メチル−フェノキシ)フェニル基、4−(フェニルチオ)フェニル基、2,5−ジメチル−4−(フェニルチオ)フェニル基、p−(フェニルチオ)フェニル基およびp−スチリルフェニル基などが挙げられる。
【0053】
Ar4およびAr5の置換基を有してもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基および1−メトキシエチル基などが挙げられる。
Ar4およびAr5の置換基を有してもよい1価の複素環残基としてはAr3の置換基を有してもよいアルキル基と同様のものが挙げられる。
具体的には、8−クロマニル基、フリル基、チエニル基、5−メチル−2−フリル基、5−メチル−2−チエニル基、5−メチル−N−エチルカルバゾールー4−イル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、N−メチルインドリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基などが挙げられる。
【0054】
Ar4およびAr5は、原子または原子団を介して互いに結合し、環構造を形成してもよい。結合する原子の具体例としては、酸素原子および硫黄原子などが挙げられ、結合する原子団の具体例としては、アルキル基を有する窒素原子などの2価の原子団ならびにメチレン、エチレンおよびメチルメチレンなどのアルキレン基、ビニレンおよびプロペニレンなどの不飽和アルキレン基、オキシメチレン(化学式:−O−CH2−)などのヘテロ原子を含むアルキレン基、チオビニレン(化学式:−S−CH=CH−)などのヘテロ原子を含む不飽和アルキレン基などの2価基などが挙げられる。
【0055】
aの置換基を有してもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基および1−メトキシエチル基などが挙げられる。
aの置換基を有してもよいアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基およびイソプロポキシ基などが挙げられる。
aの置換基を有してもよいジアルキルアミノ基としては、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基およびジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
aの置換基を有してもよいアリール基としては、例えばフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−メトキシフェニル基などが挙げられる。
aのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0056】
1のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
1の置換基を有してもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基および1−メトキシエチル基などが挙げられる。
【0057】
2、R3およびR4の置換基を有してもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基および1−メトキシエチル基などが挙げられる。
2、R3およびR4の置換基を有してもよいアリール基としては、例えばフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−メトキシフェニル基などが挙げられる。
2、R3およびR4の置換基を有してもよい1価の複素環残基としては、Ar1、Ar2およびAr3と同様のものが挙げられる。
【0058】
b、cおよびdの置換基を有してもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基および1−メトキシエチル基などが挙げられる。
b、cおよびdの置換基を有してもよいアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基およびイソプロポキシ基などが挙げられる。
b、cおよびdの置換基を有してもよいジアルキルアミノ基としては、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基およびジイソプロピルアミノ基などが挙げられる。
b、cおよびdの置換基を有してもよいアリール基としては、Ar1、Ar2およびAr3と同様のものが挙げられる。
b、cおよびdの置換基を有してもよいアリールオキシ基としては、例えば4-メチルフェノキシ基が挙げられる。
b、cおよびdの置換基を有してもよいアリールチオ基としては、例えばフェニールチオ基が挙げられる。
b、cおよびdのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0059】
一般式(1)で示されるエナミン系化合物の中で、特性、原価および生産性などの観点から特に優れた化合物としては、Ar1およびAr2がフェニル基であり、Ar3がフェニル基、トリル基、p−メトキシフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基またはチエニル基であり、Ar4およびAr5のうちの少なくともいずれか一方がフェニル基、p−トリル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基、チエニル基またはチアゾリル基であり、R1、R2、R3およびR4が共に水素原子であり、nが1であるものが挙げられる。
【0060】
上記の一般式(I)で示されるエナミン系化合物は、特許第3881651号公報記載の方法の方法で製造することができ、具体例としては以下の表1に示される。
【0061】
【表1】

【0062】
電荷輸送層に用いられるバインダ樹脂としては、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用でき、電荷発生物質との相溶性に優れるものが好ましい。
具体的には、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体樹脂およびそれらの共重合体樹脂、ならびにポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂などの樹脂、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレートおよびポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗値が1013Ω以上であって電気絶縁性に優れ、かつ成膜性、電位特性などにも優れるので好ましく、ポリカーボネートが特に好ましい。
【0063】
電荷輸送物質とバインダ樹脂との比率A/Bは、好ましくは10/12〜10/30で用いられる。
比率A/Bが10/30未満でありバインダ樹脂の比率が高くなると、浸漬塗布法によって電荷輸送層を形成する場合、塗布液の粘度が増大するので、塗布速度低下を招き生産性が著しく悪くなる。また塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層に白濁が発生することがある。
一方、比率A/Bが10/12を超えてバインダ樹脂の比率が低くなると、バインダ樹脂の比率が高いときに比べて耐刷性が低くなり、感光層の摩耗量が増加することがある。
【0064】
電荷輸送層は、成膜性、可撓性および表面平滑性を向上させるために、必要に応じて、可塑剤またはレベリング剤などの添加剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えばフタル酸エステルなどの二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィンおよびエポキシ型可塑剤などが挙げられる。
レベリング剤としては、例えばシリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
【0065】
電荷輸送層は、電荷発生層と同様に、電荷輸送物質およびバインダ樹脂、必要に応じて添加剤を適当な有機溶剤中に溶解または分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液を導電性支持体上に形成された電荷発生層の表面に塗布し、次いで乾燥して溶剤を除去する湿式法により形成することができる。
【0066】
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタンおよびジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサンおよびジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、ならびにN,N−ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。また必要に応じてアルコール類、アセトニトリルまたはメチルエチルケトンなどの溶剤をさらに加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、地球環境に対する配慮から、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。これらの溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
電荷輸送層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜40μmである。
電荷輸送層の膜厚が5μm未満であると、感光体表面の帯電保持能が低下することがある。また、電荷輸送層の膜厚が50μmを超えると、感光体の解像度が低下することがある。
【0068】
本発明の感光層は、積層体の最表面層が、抗酸化剤として、一般式(III):
【化3】

【0069】
[式中、
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいヘテロ原子含有シクロアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;
1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6は、同一または異なって、置換基を有してもよい鎖状のアルキレン基であり;
Zは、i) −Ar5−、ii) −Ar5−Ar6−またはii) −Ar5−W−Ar6
(式中、Ar5およびAr6は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基または置換基を有してもよい2価の複素環残基であり;Wは、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよい鎖状もしくは枝分かれ状のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である)である]
で示されるジアミン化合物を含有するのが好ましい。
【0070】
一般式(III)のジアミン化合物の中でも、化学物質としての分解または変質などの化学的安定性、原料入手の容易性、製造の容易性および収率の高さならびに製造コストなどの点で、一般式(III)のY1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6が直鎖状のアルキレン基であるジアミン化合物、すなわち副式(IV):
【0071】
【化4】

【0072】
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Y5、Y6およびZは、一般式(III)における定義と同義であり;l、m、nおよびpは、同一または異なって1〜3の整数である)
で示されるジアミン化合物が好ましい。
【0073】
さらに、一般式(III)のY1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6がメチレン基であるジアミン化合物、すなわち副式(V):
【0074】
【化5】

【0075】
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4およびAr5は、一般式(III)における定義と同義である)
で示されるジアミン化合物が特に好ましい。
【0076】
一般式(III)、副式(IV)および副式(V)における各置換基について説明する。
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4の置換基を有してもよいアリール基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数2〜6のジアルキルアミノ基およびハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基が挙げられる。
具体的には、フェニル基、o−トリル基、2,4−キシリル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシ−4−メチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、4−ジエチルアミノフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられ、これらの中でも、フェニル基、o−トリル基、4−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が特に好ましい。
【0077】
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4の置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基が挙げられる。
具体的には、シクロへキシル基、シクロペンチル基、4,4−ジメチルシクロへキシル基などが挙げられ、これらの中でも、シクロへキシル基が特に好ましい。
【0078】
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4の置換基を有してもよい1価の複素環残基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい1価の複素環残基が挙げられる。
具体的には、フリル基、4−メチルフリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基テトラヒドロフリル基、テトラメチルテトラヒドロフリル基などが挙げられ、これらの中でも、フリル基、ベンゾフリル基が特に好ましい。
【0079】
1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6の置換基を有してもよい直鎖状のアルキレン基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよいアルキレン基が挙げられる。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基などが挙げられ、これらの中でも、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。
【0080】
ZにおけるAr5およびAr6の置換基を有してもよいアリレン基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基および炭素数1〜4のアルコキシ基で置換されていてもよいアリレン基が挙げられる。
具体的には、p−フェニレン基、m−フェニレン基、メチル−p−フェニレン基、メトキシ−p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、ベンゾオキサゾレン基、ビフェニリレン基などが挙げられ、これらの中でも、p−フェニレン基、m−フェニレン基、メチル−p−フェニレン基、メトキシ−p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基が好ましく、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基が特に好ましい。
【0081】
ZにおけるAr5およびAr6の置換基を有してもよい2価の複素環残基としては、例えば1,4−フランジイル基、1,4−チオフェンジイル基、2,5−ベンゾフランジイル基、2,5−ベンゾオキサゾールジイル基およびN−エチルカルバゾール−3,6−ジイル基などが挙げられる。
【0082】
ZにおけるWの置換基を有してもよい直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のアルキレン基としては、例えば炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン化アルキル基で置換されていてもよいアルキレン基もしくはシクロアルキリデン基が挙げられる。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基などのアルキレン基;シクロヘキシリデニル基、4,4−ジメチルシクロヘキシリデニル基、シクロペンチリデニル基などシクロアルキリデン基が挙げられ、これらの中でも、メチレン基、エチレン基が特に好ましい。
【0083】
副式(V)における置換基Ar1、Ar2、Ar3およびAr4が、同一または異なって、置換基を有してもよいフェニル基またはシクロヘキシル基であり、かつAr5がフェニレン基またはビフェニレン基であるのが好ましい。
さらに、副式(V)における置換基Ar1、Ar2、Ar3およびAr4がフェニル基または4−メトキシフェニル基であるか、または置換基Ar1およびAr4が2,4−キシリル基でありかつ置換基Ar2およびAr3がシクロヘキシル基であるのが好ましい。
【0084】
本発明のジアミン化合物の具体例を表1に示す。
なお、以下の表2−1〜2−6において置換基を次のような略号で示す。
−Me−:メチレン基
−Et−:エチレン基
−Tr−:トリメチレン基
−Dm−:2,2−ジメチルトリメチレン基
【0085】
【表2−1】

【0086】
【表2−2】

【0087】
【表2−3】

【0088】
【表2−4】

【0089】
【表2−5】

【0090】
【表2−6】

【0091】
表2に示される本発明のジアミン化合物の中でも、例示化合物No.1、2、4、8、14、22、29、38、50、53および57が好ましく、例示化合物No.1、2が特に好ましく、例示化合物No.2がさらに好ましい。
本発明のジアミン化合物は、特開2009−14851公報に記載の方法で製造することができる。
【0092】
本発明のジアミン化合物は、感光体の最表面層、すなわち図1の感光体では電荷輸送層、図2の感光体では表面保護層に含有させることにより、感光体に耐窒素酸化物性などの耐酸化性ガス性を付与することができ、画像ボケ等の画像不良の発生を抑制することができる。これは、本発明のジアミン化合物が窒素酸化物、塩素酸化物、硫黄酸化物などの酸化性ガスを補足することで表面層のバインダ樹脂および電荷輸送物質の劣化を抑えることができるためと推察される。
したがって、本発明のジアミン化合物を表面層に含有する感光体は、優れた電子写真特性を有し、システムから発生するオゾン、窒素酸化物の影響を受け難く、繰返し使用しても安定した特性および画質を有し、極めて高い耐久性を達成することができる。
【0093】
感光体の最表面層への本発明のジアミン化合物の配合は、各層の塗布形成時に各塗布液に本発明のジアミン化合物を添加すればよい。
その配合量は、図1の感光体では電荷輸送層および図2の感光体では表面保護層の全固形分に対して、それぞれ0.1〜10重量%および0.2〜15重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜5重量%および0.5〜10重量%である。
本発明のジアミン化合物の配合量が上記の範囲よりも少ないと画像ボケなどの画像不良を抑制できないことがあり、上記の範囲よりも多いと残留電位の上昇など電気特性の悪化を引き起こすことがある。
【0094】
[表面保護層150]
本発明の感光体は、図2に示すように、感光層上に表面保護層を有していてもよい。
表面保護層は、感光体の耐久性を向上させる機能を有し、バインダ樹脂および本発明のジアミン化合物、必要に応じて添加剤を含有する。また、表面保護層は、電気特性安定化のために、電荷輸送層と同一の1種または2種以上の電荷輸送物質を含有してもよい。
【0095】
バインダ樹脂としては、当該分野で用いられる結着性を有する樹脂を使用でき、例えば、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの樹脂が挙げられる。これらのバインダ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、摩耗特性、電気的特性を考慮した場合、ポリカーボネート、ポリアリレートが特に好ましい。
【0096】
表面保護層は、例えば、バインダ樹脂および本発明のジアミン化合物、必要に応じて添加剤および電荷輸送物質を適当な溶剤に溶解させて保護層形成用塗布液を調製し、この塗布液を感光層の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
その他の工程およびその条件は、中間層、電荷輸送層および電荷輸送層の形成に準ずる。
【0097】
表面保護層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは1.0〜8.0μmである。
長期的に繰り返し使用される感光体は、機械的に耐久性が高く、摩耗し難いように設計される。しかし実機内では、帯電部材などから、オゾンおよびNOxガスなどが発生して感光体の表面に付着し、画像流れを発生させる。この画像流れを防止するために、感光層をある一定速度以上に摩耗する必要があり、長期的な繰り返し使用を考慮した場合、表面保護層は少なくとも1.0μm以上の膜厚が好ましい。また、表面保護層の膜厚が8.0μmを超えると、残留電位上昇や微細ドット再現性の低下の問題が発生することがある。
【0098】
[画像形成装置]
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写されたトナー像を記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする。
図面を用いて本発明の画像形成装置およびその動作について説明するが、以下の記載内容に限定されるものではない。
【0099】
図3は、本発明の画像形成装置の要部の構成を示す模式側面図である。
図3の画像形成装置(レーザプリンタ)100は、本発明の感光体1と、露光手段(半導体レーザ)31と、帯電手段(帯電器)32と、現像手段(現像器)33と、転写手段(転写帯電器)34と、搬送ベルト(図示せず)と、定着手段(定着器)35、クリーニング手段(クリーナ)36とを含んで構成される。符号51は記録媒体(記録紙または転写紙)を示す。
【0100】
感光体1は、図示しない画像形成装置100本体に回転自在に支持され、図示しない駆動手段によって回転軸線44回りに矢符41方向に回転駆動される。駆動手段は、例えば電動機と減速歯車とを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体を構成する導電性支持体に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転駆動させる。帯電手段(帯電器)32、露光手段31、現像手段(現像器)33、転写手段(転写帯電器)34およびクリーニング手段(クリーナ)36は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢符41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って設けられる。
【0101】
帯電器32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電手段である。
露光手段31は、例えば、青色半導体レーザを光源として備え、光源から出力されるレーザービームの光を、帯電器32と現像器33との間の感光体1の表面に照射することによって、帯電された感光体1の外周面に対して画像情報に応じた露光を施す。光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査され、これらが結像して感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電器32により均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザービームの照射および非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
【0102】
現像器33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を、現像剤(トナー)によって現像する現像手段であり、感光体1を臨んで設けられ、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0103】
転写帯電器34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像であるトナー像を、図示しない搬送手段によって矢符42方向から感光体1と転写帯電器34との間に供給される記録媒体である転写紙51上に転写させる転写手段である。転写帯電器34は、例えば、帯電手段を備え、転写紙51にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙51上に転写させる接触式の転写手段である。
【0104】
クリーナ36は、転写帯電器34による転写動作後に感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収する清掃手段であり、積層型感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。また、このクリーナ36は、図示しない除電ランプと共に設けられる。
【0105】
また、画像形成装置100には、感光体1と転写帯電器34との間を通過した転写紙51が搬送される下流側に、転写された画像を定着させる定着手段である定着器35が設けられる。定着器35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して設けられ、加熱ローラ35aに押圧されて当接部を形成する加圧ローラ35bとを備える。
また、符号37は 転写紙と感光体を分離する分離手段、38は画像形成装置の各手段を収容するケーシングを示す。
【0106】
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動手段によって矢符41方向に回転駆動されると、露光手段31による光の結像点よりも感光体1の回転方向上流側に設けられる帯電器32によって、感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
【0107】
次いで、露光手段32から、感光体1の表面に対して画像情報に応じた光が照射される。感光体1は、この露光によって、光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
露光手段33による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に設けられる現像器33から、静電潜像の形成された感光体1の表面にトナーが供給されて静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0108】
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写帯電器34との間に、転写紙51が供給される。転写帯電器34によって、供給された転写紙51にトナーと逆極性の電荷が与えられ、感光体1の表面に形成されたトナー像が、転写紙51上に転写される。
トナー像の転写された転写紙51は、搬送手段によって定着器35に搬送され、定着器35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの当接部を通過する際に加熱および加圧され、トナー像が転写紙51に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙51は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
【0109】
一方、転写帯電器34によるトナー像の転写後も感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーナ36によって積層型感光体1の表面から剥離されて回収される。このようにしてトナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電ランプからの光によって除去され、感光体1の表面上の静電潜像が消失する。その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
【実施例】
【0110】
以下に製造例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、これらの製造例および実施例により本発明が限定されるものではない。
なお、製造例で得られた化合物の化学構造、分子量および元素分析は、以下の装置および条件により測定した。
【0111】
(化学構造)
核磁気共鳴装置:NMR(ブルカーバイオスピン社製、型式:DPX−200)
サンプル調整 約4mg試料/0.4m(CDCl3)
測定モード 1H(通常)
【0112】
(分子量)
分子量測定装置:LC−MS(サーモクエスト社製、
フィネガン LCQ Deca マススペクトロメーターシステム)
LCカラム GL-Sciences Inertsil ODS-3 2.1×100mm
カラム温度 40℃
溶離液 メタノール:水=90:10
サンプル注入量 5μl
検出器 UV254nmおよびMS ESI
【0113】
(元素分析)
元素分析装置:パーキン エールマー社製、Elemental Analysis 2400
サンプル量: 約2mgを精秤
ガス流量(ml/分):He=1.5、O2=1.1、N2=4.3
燃焼管温度設定:925℃
還元管温度設定:640℃
なお、元素分析は、差動熱伝導度法による炭素(C)、水素(H)および窒素(N)同時定量法により分析した。
【0114】
(製造例1)
同一または異なる2種のアミン化合物としてジベンジルアミン、ジハロゲン化合物として4,4’−ビス(クロロメチル)フェニルを用い、次の反応式にしたがって、例示化合物No.2を製造した。
【0115】
【化6】

【0116】
無水1,4−ジオキサン50ml中に4,4’−ビス(クロロメチル)フェニル6.06g(1.0当量)とジベンジルアミン10.0g(2.1当量)を加え、アイスバスにて氷点下に冷却した。この溶液中に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン6.86g(2.2当量)を徐々に加えた。その後、アイスバスを除去し、油浴を用いて徐々に加熱して反応温度を100〜110℃まで上げ、100〜110℃を保つように加熱しながら4時撹拌した。反応終了後、反応溶液を放冷し、生じた沈殿を濾取し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤(エタノール:酢酸エチル=8:2〜7:3)で再結晶を行うことによって、白色粉末状化合物11.9gを得た。
【0117】
NMR、LC−MS、元素分析およびFT−IRにより、得られた化合物の化学構造、分子量および元素分析を測定し、次のような結果を得て、目的の化合物が得られたことを確認した。
<分子量>
計算値 496.3
実測値 497.5
(LC−MSにおいてプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピーク)
<元素分析値>
理論値 C:87.05%、H:7.31%、N:5.64%
実測値 C:86.75%、H:6.98%、N:5.35%
【0118】
(製造例2)
ジハロゲン化合物として4,4’−ビス(クロロメチル)フェニルの代わりに4,4’−ビス(クロロメチル) 1,1’−ビフェニルを用いたこと以外は、製造例1と同様にして、例示化合物No.1を製造した。
NMR、LC−MS、元素分析およびFT−IRにより、得られた化合物の化学構造、分子量および元素分析を測定し、次のような結果を得て、目的の化合物が得られたことを確認した。
<分子量>
計算値 572.3
実測値 573.2
(LC−MSにおいてプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピーク)
<元素分析値>
理論値 C:88.07%、H:7.04%、N:4.89%
実測値 C:87.25%、H:6.88%、N:4.42%
【0119】
(実施例1)
酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:タイベークTTO−D−1)3重量部および共重合ポリアミド(ナイロン)(東レ株式会社製、商品名:アミランCM8000)2重量部を、メチルアルコール25重量部に加え、ペイントシェーカーにて8時間分散処理して中間層用塗布液3リットルを調製した。
得られた中間層用塗布液を、導電性支持体として直径30mm、長さ357mmのアルミニウム製のドラム状支持体を浸漬した後引き上げ、得られた塗膜を自然乾燥させて、導電性支持体上に膜厚1μmの中間層を形成した。
【0120】
予め、次のようにして電荷発生物質として使用する、下記構造式で示されるオキソチタニルフタロシアニンを得た。
【0121】
【化7】

【0122】
ジイミノイソインドリン29.2gおよびスルホラン200mlを混合し、さらにチタニウムテトライソプロポキシド17.0gを加え、窒素雰囲気下、140℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を放冷した後、析出物を濾取し、クロロホルムおよび2%の塩酸水溶液で順次洗浄し、さらに水およびメタノールで順次洗浄し、乾燥させて青紫色の結晶物25.5gを得た。
得られた化合物の化学分析の結果、上記構造式で示されるオキソチタニルフタロシアニンであることを確認した(収率88.5%)。
【0123】
得られたチタニルフタロシアニン1重量部およびブチラール樹脂(電気化学工業株式会社製、商品名:BM−2)1重量部を、メチルエチルケトン98重量部に加え、ペイントシェーカにて2時間分散処理して電荷発生層用塗布液3リットルを調製した。
得られた電荷発生層用塗布液を、中間層形成の場合と同様の浸漬法で、中間層上に塗布し、得られた塗膜を自然乾燥させて、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0124】
次いで、中空シリカ粒子(平均粒径0.1μm、日鉄鉱業株式会社製、商品名:シリナックス)67gおよびポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)67gを、テトラヒドロフラン320gに加え、混合した。得られた混合物を、粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M−110P)を用いて、1Pass分散処理して電荷輸送層用一次分散塗布液0.4リットルを調製した。
【0125】
次いで、電荷輸送物質としての一般式(1)で表される表1に示す例示化合物No.5のエナミン系化合物200g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)330gおよび抗酸化剤のジアミン化合物としての製造例1で得られた例示化合物No.2 5.0g、レベリング剤としてのシリコンオイルSH200(東レ・ダウコーニング社製)0.04gを、テトラヒドロフラン1980gに加え、混合して溶解させた。
【0126】
得られた溶解液に電荷輸送層用一次分散塗布液を混合し、ボールミルにて15時間攪拌処理して電荷輸送層用二次分散塗布液3リットルを調製した。
得られた電荷輸送層用二次分散塗布液を、中間層形成の場合と同様の浸漬法で、電荷発生層上に塗布し、得られた塗膜を130℃で1時間乾燥させて、膜厚25μmの電荷輸送層を形成し、図1に示す感光体を得た。
【0127】
(実施例2)
電荷輸送層用一次分散塗布液の調製において、中空シリカ粒子(平均粒径0.1μm、日鉄鉱業株式会社製、商品名:シリナックス)に代えて、中空シリカ(平均粒径2.3μm、鈴木油脂工業株式会社製、商品名:ゴッドボールB−6C)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0128】
(実施例3)
電荷輸送層用一次分散塗布液の調製において、中空シリカ粒子(平均粒径0.1μm、日鉄鉱業株式会社製、商品名:シリナックス)67gおよびポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)67gをそれぞれ6.0gにし、テトラヒドロフラン320gを100gにしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0129】
(実施例4)
電荷輸送層用一次分散塗布液の調製において、中空シリカ粒子(平均粒径0.1μm、日鉄鉱業株式会社製、商品名:シリナックス)67gおよびポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)67gをそれぞれ175gにし、テトラヒドロフラン320gを1000gにしたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0130】
(実施例5)
電荷輸送層用二次分散塗布液の調製において、電荷輸送物質としての例示化合物No.5のエナミン系化合物に代えて、表1に示す例示化合物No.3のエナミン系化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0131】
(実施例6)
電荷輸送層用二次分散塗布液の調製において、製造例1で得られた例示化合物No.2のジアミン化合物に代えて、製造例2で得られた例示化合物No.1のジアミン化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0132】
(実施例7)
電荷輸送層用二次分散塗布液の調製において、電荷輸送物質としての例示化合物No.5のエナミン系化合物に代えて、下記構造式で表されるトリフェニルアミン系化合物(TPD)(東京化成工業株式会社製、商品名:D2448)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0133】
【化8】

【0134】
(実施例8)
電荷輸送層用二次分散塗布液の調製において、製造例1で得られた例示化合物No.2のジアミン化合物を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0135】
(比較例1)
電荷輸送層用一次分散塗布液の調製において、中空シリカ粒子(平均粒径0.1μm、日鉄鉱業株式会社製、商品名:シリナックス)を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0136】
(比較例2)
電荷輸送層用一次分散塗布液の調製において、中空シリカ粒子(平均粒径0.1μm、日鉄鉱業株式会社製、商品名:シリナックス)に代えて、中空状ではないシリカ粒子(平均粒径0.1μm、株式会社トクヤマ製、商品名:シルフィルNSS−3N)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0137】
(比較例3)
電荷輸送層用一次分散塗布液の調製において、中空シリカ粒子(平均粒径0.1μm、日鉄鉱業株式会社製、商品名:シリナックス)に代えて、中空状ではないシリカ粒子(平均粒径0.25μm、株式会社アドマテックス製、商品名:SO-E1)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0138】
(実施例9)
実施例1と同様にして、導電性支持体上に中間層および電荷発生層を形成した。
次いで、電荷輸送物質としての一般式(1)で表される表1に示す例示化合物No.5のエナミン系化合物100g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)150g、レベリング剤としてのシリコンオイルSH200(東レ・ダウコーニング社製)0.02gを、テトラヒドロフラン1050gに加え、混合して溶解させ、電荷輸送層用塗布液1.4リットルを調製した。
得られた電荷輸送層用塗布液を、中間層形成の場合と同様の浸漬法で、電荷発生層上に塗布し、得られた塗膜を120℃で1時間乾燥させて、膜厚15μmの電荷輸送層を形成した。
【0139】
次いで、中空シリカ粒子(平均粒径0.1μm、日鉄鉱業株式会社製、商品名:シリナックス)34.0gおよびポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)34.0gを、シクロヘキサノン320gに加え、混合した。得られた混合物を、粒子分散装置(マイクロフルイディックス社製、型式:M−110P)を用いて、1Pass分散処理して保護層用一次分散塗布液0.4リットルを調製した。
次いで、電荷輸送物質としての一般式(1)で表される表1に示す例示化合物No.5のエナミン系化合物100g、ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、商品名:TS2050)265gおよびジアミン化合物として製造例1で得られた例示化合物No.2 2.50g、レベリング剤としてのシリコンオイルSH200(東レ・ダウコーニング社製)0.02gを、シクロヘキサノン1800gに加え、混合して溶解させた。
【0140】
得られた溶解液に保護層用一次分散塗布液を混合し、ボールミルにて15時間攪拌処理して保護層用二次分散塗布液2.7リットルを調製した。
得られた保護層用二次分散塗布液を、中間層形成の場合と同様の浸漬法で、電荷輸送層上に塗布し、得られた塗膜を150℃で1時間乾燥させて、膜厚10μmの保護層を形成し、図2に示す感光体を得た。
【0141】
(比較例4)
保護層用一次分散塗布液の調製において、中空シリカ粒子(平均粒径0.1μm、日鉄鉱業株式会社製、商品名:シリナックス)に代えて、中空状ではないシリカ粒子(平均粒径0.1μm、株式会社トクヤマ製、商品名:シルフィルNSS−3N)を用いたこと以外は、実施例9と同様にして感光体を作製した。
以上の実施例1〜9および比較例1〜4の感光体における最表面層の構成成分およびそれらの含有量を表3に示す。
【0142】
【表3】

【0143】
[評価]
作製した実施例1〜9および比較例1〜4の各感光体を、試験用に改造したデジタル複写機(シャープ株式会社製、型式:MX−4501)の黒色用ユニットに装着し、30万枚画像形成することにより、以下のようにして、電気特性(感度および感度の安定性)、耐刷性および画像ボケを評価した。
【0144】
[電気特性評価]
試験用のデジタル複写機から現像器を取り外し、代わりに現像部位に表面電位計(トレック・ジャパン社製、型式:model 344)を取り付けた。この複写機を用いて、温度25℃、相対湿度50%の常温/常湿(N/N:Normal Temperature/Normal Humidity)環境中において、レーザ光による露光を施さなかった場合の感光体の表面電位を−600Vに調整した。その状態でレーザ光により露光(0.4μJ/cm2)を施した場合の感光体の表面電位を露光電位VL(V)として測定した。
【0145】
得られたVLから下記の基準で感度を評価した。この露光電位VLの絶対値が小さい程、高感度であると評価した。
<判定基準>
A:|VL|<100(V)
B:100(V)≦|VL|<130(V)
C:130(V)≦|VL|
【0146】
[耐刷性]
デジタル複合機に備わるクリーニング器のクリーニングブレードが、感光体に接する圧力、いわゆるクリーニングブレード圧を21gf/cm(2.06×10-1N/cm:初期線圧)に調整した。N/N環境下で、文字テストチャート(ISO19752)を記録紙10万枚に印刷することで、耐刷試験を行なった。
耐刷試験開始時と10万枚画像形成後の感光層の厚みを、膜厚測定装置(フィルメトリックス社製、型式:F−20−EXR)を用いて測定した。
耐刷試験開始時の膜厚と30万枚画像形成後の膜厚との差から、感光体ドラム10万回転あたりの削れ量を求め、得られた削れ量から下記の基準で耐刷性を評価した。
なお、削れ量が多い程、耐刷性が悪いと評価した。
【0147】
<判定基準>
A:削れ量<0.5μm/10万回転
B:0.5μm/10万回転≦削れ量<0.8μm/10万回転
C:0.8μm/10万回転≦削れ量
【0148】
[画像ボケ]
耐刷試験後の感光体の画像ボケ発生レベルを確認するために、30万枚画像形成後の感光体を温度35℃、相対湿度85%の環境下に6時間放置後、A3版中性紙の全面に、ハーフトーン画像(マクベス濃度計で相対反射濃度0.4)と6dot格子画像を印字した。得られた印字画像の状態を目視観察し、下記の基準で評価した。
<判定基準>
A:ハーフトーン、格子画像ともに画像ボケ発生なし(良好)
B:ハーフトーン画像のみに感光体長軸方向の薄い帯状濃度の低下が認められる
(実用上問題なし)
C:画像ボケによる格子画像の欠損もしくは線幅の細りが発生
(実用上問題あり)
以上の評価結果を表4に示す。
【0149】
【表4】

【0150】
表4の結果から、次のことがわかる。
(1)最表面層の電荷輸送層や表面保護層に中空シリカを含有する感光体(実施例1〜9)は、シリカを含有しない感光体や粒状シリカを含有する感光体よりも、電気特性と耐刷性との両立が可能であることがわかる。
(2)電子輸送物質として本発明のエナミン系化合物を含有する感光体(実施例1〜8および9)は、別の電子輸送物質を含有する感光体(実施例7)よりも、電気特性および耐刷性が良好であることがわかる。
(3)本発明のジアミン化合物を含有する感光体(実施例1〜7および9)は、それを含有しない感光体(実施例8)よりも、画像ボケに対して良好であることがわかる。これは、本発明のジアミン化合物が、窒素酸化物、塩素酸化物、硫黄酸化物などの酸化性ガスを補足して、最表面層のバインダ樹脂および電荷輸送物質の劣化を抑えているためと考えられる。
【0151】
(4)中空シリカを含有しない感光体(比較例1)は、削れ量が多く、ライフが短くなることがわかる。
(5)中空シリカの含有量が全固形分に対して1.0〜20重量%であれば(特に、実施例3および4参照)、電気特性と耐刷性との両立が可能であることがわかる。
(6)中空状でない粒状シリカを含有する感光体(比較例2〜4)は、削れ量は中空シリカを用いた場合と大差はないが、感度が悪く、実使用上問題のあることがわかる。これは、中空シリカは中空部分を有していることから通常の無機粒子よりも誘電率が低く、感光体の電気特性の悪化を招き難いためと考えられる。
【符号の説明】
【0152】
1、2 電子写真感光体
11 導電性支持体
12 電荷発生物質
13 電荷輸送物質
14 感光層(積層型感光層)
15 電荷発生層
16 電荷輸送層
17 バインダ樹脂(結着樹脂)
18 中間層(下引き層)
19 中空シリカ
150 表面保護層
【0153】
31 露光手段(半導体レーザ)
32 帯電手段(コロナ帯電器)
33 現像手段(現像器)
33a 現像ローラ
33b ケーシング
34 転写手段(転写帯電器)
35 定着手段(定着器)
35a 加熱ローラ
35b 加圧ローラ
36 クリーニング手段(クリーナ)
36a クリーニングブレード
36b 回収用ケーシング
37 分離手段
38 ハウジング
41、42 矢符
44 回転軸線
51 記録媒体(記録紙または転写紙)
100 画像形成装置(レーザプリンタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に、少なくとも電荷発生層と電荷輸送層とが前記導電性支持体側からこの順で積層された感光層を含む積層体A、または電荷発生層と電荷輸送層とが前記導電性支持体側からこの順で積層された感光層およびその上に形成された表面保護層を含む積層体Bが形成されてなり、最表面層となる、前記積層体Aの電荷輸送層または前記積層体Bの表面保護層が耐磨耗性の改良剤として中空シリカを含有することを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記中空シリカが、前記積層体Aの電荷輸送層または前記積層体Bの表面保護層の全固形分に対して1.0〜20.0重量%含有されてなる請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記中空シリカが、1.0〜5.0μmの一次粒径を有する請求項1または2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記感光層が、電荷輸送物質として、一般式(I):
【化1】

[式中、
Ar1およびAr2は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり、Ar1およびAr2はそれらに結合する原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく;
Ar3は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;
Ar4およびAr5は、同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり、Ar4およびAr5は共に水素原子ではなく、それらに結合する原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく;
aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子であり;
mは、1〜6の整数であり、mが2以上のとき、複数のaは同一でも異なってもよくかつそれらに結合する原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく;
1は、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基であり;
2、R3およびR4は、同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;
nは、0〜3の整数であり、nが2または3のとき、複数のR2およびR3はそれぞれ同一でも異なってもよく、nが0のとき、Ar3は置換基を有してもよい1価の複素環残基である]
で示されるエナミン系化合物を含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記エナミン系化合物が、副式(II):
【化2】

[式中、
b、cおよびdは、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、ハロゲン原子または水素原子であり;
i、kおよびjは、同一または異なって、1〜5の整数であり、i、kまたはjが2以上のとき、対応する複数のb、cまたはdはそれぞれ同一でも異なってもよくかつそれらに結合する原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく;
a、m、Ar4およびAr5は、一般式(I)と同義である]
で示される請求項4に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記積層体Aまたは積層体Bの最表面層が、抗酸化剤として、一般式(III):
【化3】

[式中、
Ar1、Ar2、Ar3およびAr4は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいヘテロ原子含有シクロアルキル基または置換基を有してもよい1価の複素環残基であり;
1、Y2、Y3、Y4、Y5およびY6は、同一または異なって、置換基を有してもよい鎖状のアルキレン基であり;
Zは、i) −Ar5−、ii) −Ar5−Ar6−またはii) −Ar5−W−Ar6
(式中、Ar5およびAr6は、同一または異なって、置換基を有してもよいアリレン基または置換基を有してもよい2価の複素環残基であり;Wは、置換基を有してもよいシクロアルケニル基、置換基を有してもよい鎖状もしくは枝分かれ状のアルキレン基、酸素原子または硫黄原子である)である]
で示されるジアミン化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記導電性支持体と少なくとも感光層を含む積層体Aまたは積層体Bとの間に中間層を有する請求項1〜6のいずれか1つに記載の電子写真感光体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の電子写真感光体と、前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電された前記電子写真感光体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、露光によって形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、現像によって形成された前記トナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、転写された前記トナー像を前記記録媒体上に定着して画像を形成する定着手段と、前記電子写真感光体に残留するトナーを除去し回収するクリーニング手段と、前記電子写真感光体に残留する表面電荷を除電する除電手段を少なくとも備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−103619(P2012−103619A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254078(P2010−254078)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】