説明

電子写真感光体の製造方法

【課題】アルミニウム支持体上に少なくとも感光層を設ける電子写真感光体の製造方法において初期から耐久後までリークによる画像欠陥のない電子写真感光体を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム支持体上に少なくとも感光層を設ける電子写真感光体の製造方法において、該アルミニウム支持体を洗浄後、洗浄したアルミニウム支持体に対する接触角が20°以下でかつ粘度が2.0mPa・s以下の液体状の着色剤を該アルミニウム支持体に塗布し着色剤層を設けて着色することにより、該支持体表面の凸部状欠陥を濃度差で判別する検査で検出し選別した後、該着色剤層を除去してから感光層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム支持体上に少なくとも感光層を設ける電子写真感光体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置に用いられる像保持部材として、電子写真感光体があり、高生産性、材料設計の容易性および将来性の観点から、有機光導電性物質による有機電子写真感光体の開発が行われている。
【0003】
有機電子写真感光体は、有機光導電性物質を結着樹脂とともに溶解または分散させて感光層塗布液を作製し、それを導電性支持体上に塗布、乾燥することにより製造される。
【0004】
このような電子写真感光体には、導電性支持体上に存在する突起状の欠陥、感光層塗布液内の異物や感光体製造工程中に付着する異物による欠陥が存在することがある。これらの欠陥は、電子写真画像上の黒点や白点等の画像不良または欠陥となったり、感光体の絶縁破壊の原因となったりする。従って、実際の使用上に問題となる欠陥に関しては検査にて検出し、取り除く必要がある。なお、これらの内、導電性支持体上に存在する突起状の欠陥が原因であることが多い。このような検査は、従来、人による目視検査が行われていたが、大量の検査を人手で行うには多くの人員が必要で、また、人によって検査結果のバラツキや疲労による検査能力の低下という問題がある。そのため、近年、人の目視検査に代わる欠陥検査方法及び装置が提案されている。その代表的なものとして光学的な技術(特許文献1〜2参照)と電気的な技術(特許文献3〜4参照)が提案されている。
【0005】
そこで、これらの欠陥は感光体製造時の検査工程において検出して選別する必要がある。その検査方法としては、感光体表面に電圧を印加して、欠陥部に流れる過大電流や欠陥の有無による電流変化を検出して、欠陥の有無を評価する方法が挙げられる(特許文献3参照)。また、初期においては画像欠陥となっていないが、繰り返し使用により画像欠陥として顕在化する微小欠陥を検査する方法としては、特定の導電性ローラを用いて高圧の直流電圧を印加する検査方法が挙げられる(特許文献4参照)。
【0006】
ところが、これらの技術は電子写真感光体の感光層を設けた後に検査を行うものであるため、支持体上に画像上問題となるはずの突起状の欠陥が存在する場合でも、感光層を設けることになる。つまり、その分の電子写真感光体を製造するのに用いられた感光材料が無駄になっていた。
【0007】
一方、電子写真感光体に用いられる導電性支持体の検査について、次の方法が提案されている。すなわち、電子写真感光体に用いられる支持体は感光層を設ける前に洗浄することが通常行われる。洗浄された支持体の洗浄度合いを検査する方法として、素管を冷却し、発生した結露に走査光を当て結露からの拡散反射光を受光、電気信号に変換し表面汚染の有無を判断する検査方法がある(特許文献5参照)。
【0008】
また、素管に暗所でUVを拡散照射し汚染部に発生する色ムラを紫外線防止窓を通し確認し素管の良否を判定する検査方法がある(特許文献6参照)。
【0009】
また、洗浄後の素管表面に墨汁を塗布あるいは吹きつけて洗浄状態を墨汁の弾きで判別する検査方法がある(例えば、特許文献7参照)。
【0010】
これらはすべて支持体の洗浄度合いを調べる検査方法であり、これらの方法では導電性支持体上に画像上問題となるはずの突起状の欠陥の有無を判断することは出来ない。
【0011】
他方、電子写真感光体に用いられる導電性支持体の製造方法としては次の方法が提案されている。すなわち、押出工程と引抜工程とを順次的に実施したのち、化学的表面溶解処理を実施することにより、押出・引抜アルミニウム管の表面に生じているササクレ状の微細凸状欠陥を溶失させ、凸状欠陥に起因して生じていた一様帯電時のスパークをなくす製造方法がある(例えば、特許文献8参照)。
【0012】
また、引抜きまたはしごき工程を経た無切削アルミニウム管に、陽極酸化処理を施して陽極酸化皮膜を形成したのち、該陽極酸化皮膜を化学的に溶解除去することにより、アルミニウム管の表面に生じている「ササクレ状」の凸状欠陥を溶失させ、凸状欠陥に起因して生じていた一様帯電時等のリークをなくす製造方法がある(特許文献9参照)。
【0013】
しかしながら、これらは表面溶解処理するものであり、アルミニウム支持体表面を化学的に変化させる工程が必要であり、工程が複雑になる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6−137844号公報
【特許文献2】特開平11−118449号公報
【特許文献3】特公平2−43134号公報
【特許文献4】特開平9−325169号公報
【特許文献5】特開平07−012739号公報
【特許文献6】特開2001−099787号公報
【特許文献7】特開平06−019172号公報
【特許文献8】特開平04−326357号公報
【特許文献9】特開平06−148921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、初期から繰り返し使用後までリークによる画像欠陥が発生しにくい電子写真感光体を製造する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、円筒状アルミニウム支持体の上に少なくとも感光層を設ける電子写真感光体の製造方法において、該アルミニウム支持体を洗浄後、洗浄したアルミニウム支持体に対する接触角が20°以下でかつ粘度が2.0mPa・s以下の液体状の着色剤を該アルミニウム支持体上に塗布し着色剤層を設けて着色することにより、該アルミニウム支持体表面の凸部状欠陥を該着色剤層の濃度差で判別する検査で検出し選別した後、該着色剤層を除去してから該アルミニウム支持体上に感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、初期から繰り返し使用後までリークによる画像欠陥が発生しにくい電子写真感光体を製造する製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明において液体状の着色剤が電子写真感光体の支持体表面の凸部状欠陥に付着している様子の一例を示す。
【図2】本発明で支持体表面の凸部状欠陥を判別する検査に用いる光学的検査装置の一例の概略構成を示す。
【図3】本発明による電子写真感光体を有する中間転写方式のカラー電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電子写真感光体の製造方法について説明する。
【0020】
本発明のアルミニウム支持体上に少なくとも感光層を設ける電子写真感光体の製造方法における該アルミニウム支持体表面の凸部状欠陥を着色剤層の濃度差で判別する検査方法について説明する。
【0021】
まず、アルミニウム支持体について説明する。本発明で述べるアルミニウム支持体とは、アルミニウム以外の微量の金属を含んでも良いアルミニウム単独で構成される支持体及びアルミニウム合金で構成される支持体を示す。
【0022】
本発明のアルミニウム支持体は、切削工程、押し出し工程、あるいは引抜き工程のうちの少なくとも一つの工程を経て作製される。作製されたアルミニウム支持体には針状突起物からなる凸状部が存在することがある。切削工程はコストが高い為、切削工程以外の工程を経てアルミニウム支持体を製造する方が好ましいが、切削工程を経ず作製されるアルミニウム支持体には特に凸状部の存在確率が高い。一般的には押し出し工程後、引抜き工程を実施しアルミニウム支持体を製造することが多い。
本発明における支持体の形状は、円筒状である。
また、支持体の表面は、切削処理、粗面化処理、又はアルマイト処理を施してもよい。
【0023】
次に、アルミニウム支持体の洗浄方法について説明する。
アルミニウム支持体は、電子写真特性、画像特性、さらには経時安定性の見地からも、該支持体は、感光層形成時には清浄であることが求められる。従って、各種手法にて支持体の洗浄を行う。洗浄方法としては、一般的にフロン系またはハロゲン系炭化水素類の有機溶剤または/および水を含む水系洗浄液を用い、洗浄時には洗浄液の温度を上げたり、超音波と併用する方法があり、本発明のアルミニウム支持体を洗浄する方法としてこれらの方法が利用できる。
【0024】
次に本発明のアルミニウム支持体上に少なくとも感光層を設ける電子写真感光体の製造方法において、該アルミニウム支持体の凸部状欠陥を判別する検査について述べる。
【0025】
該検査は少なくとも次の2つの工程を実施する検査である。まず、該アルミニウム支持体を洗浄後、洗浄済みアルミニウム支持体に対する接触角が20°以下でかつ粘度が2.0mPa・s以下の液体状の着色剤を該アルミニウム支持体に塗布し着色剤層を設けて着色する第1工程と着色剤層を設けた該支持体の凸部状欠陥を着色剤層の濃度差で判別する第2工程(光学検査工程)である。なお、本発明の検査を行った後は、該支持体から該着色剤層を除去して、感光層を形成し電子写真感光体を製造する。
【0026】
まず、アルミニウム支持体の凸部状欠陥を判別する検査の第1工程を説明する。
第1工程で用いる液体状の着色剤について説明する。図1(a)(b)に示すように、液体状の着色剤101はアルミニウム支持体の表面102に表面積に応じて一様に付着することが望ましい。該支持体表面の凸部状欠陥103は表面積が大きいので着色剤の付着量も大きくなり、濃度差が良く現れることになる。
従って、本発明に用いられる液体状の着色剤としては、感光層を塗布する予定の洗浄済みアルミニウム支持体に対する接触角が20°以下でかつ粘度が2.0mPa・s以下の液体状の着色剤である。なお、本発明では、液体状の着色剤の粘度は24℃で測定したときの粘度である。
【0027】
接触角の測定方法としては、協和界面科学社製のCA−Sロール型接触角計により測定する方法であり、感光層を塗布する予定の洗浄済みアルミニウム支持体に本発明に用いられる液体状の着色剤を滴下しその液滴の接触角を測定する方法である。粘度の測定方法としては一般的に用いられる回転式(B型)粘度計を用いて測定する。洗浄済みアルミニウム支持体に対する接触角が大きいと、着色剤の弾きが生じ、それが付着ムラになり凸部とは異なる部分での濃度差となってしまい、20°を超える場合には画像欠陥となる凸部状欠陥の検出が不可能となる。また、5°未満であると着色剤が流れ落ち易くなることがあり凸部状欠陥の検出には不利であるので、本発明に用いられる液体状の着色剤の洗浄済みアルミニウム支持体に対する接触角は5°以上20°以下であることが好ましい。一方、液体状の着色剤の粘度が大きい場合にも、付着ムラが起こり凸部とは異なる部分での濃度差となってしまい、2.0mPa・sを超える場合には画像欠陥となる凸部状欠陥の検出が不可能となる。また、0.6mPa・s未満であると着色剤が流れ落ち易くなることがあり凸部状欠陥の検出には不利であるので、本発明に用いられる液体状の着色剤の粘度は0.6mPa・s以上2.0mPa・s以下であることが好ましい。
また、液体状の着色剤の構成材料(例えば有機溶媒)として、構成材料自体の接触角が小さいものを用いるほど、該着色剤の接触角も小さくなる傾向にある。
【0028】
液体状の着色剤中の固形分割合の測定は加熱乾燥重量法で行う。具体的には秤量されたアルミケーキカップに1〜2gの液体状の着色剤を滴下し秤量する。液体状の着色剤の質量をR1(g)とする。着色剤の固形分のみが残る温度で一定時間加熱乾燥し、アルミケーキカップに残った着色剤を秤量し、着色剤の固形分の質量をR2(g)とする。R1とR2の値から液体状の着色剤の固形分を以下の式(1)で求める。
着色剤の固形分(%)=R2/R1×100 (1)
【0029】
液体状の着色剤中の固形分の割合は2.0質量%以下であることが好ましい。2.0質量%を超えると凸部と凸部でない平坦部における濃度差が生じにくく判別しづらい、または付着ムラが起こりやすい傾向にある。また液体状の着色剤中の固形分の割合は0.5質量%未満の場合には十分着色できなかったり、着色剤が流れ落ち易くなることがあり、凸部状欠陥の検出には不利であるので、0.5質量%以上であることが好ましい。
【0030】
液体状の着色剤を塗布、乾燥したときの乾燥後の着色剤の膜厚は2.0μm以下であることが好ましい。2.0μmを超えると凸部と凸部でない平坦部で濃度差が生じにくく判別しづらく、凸部を超える膜厚になる場合には、凸部を被覆してしまうため、濃度差で凸部を判別しにくくなる。また、濃度差で凸部を判別しやすくするために、液体状の着色剤を塗布、乾燥したときの乾燥後の着色剤の膜厚は0.2μm以上が好ましい。0.2μm未満の場合にはCCDカメラ等での識別がしにくい場合がある可能性がある。
【0031】
また、該液体状の着色剤には少なくとも樹脂と有機溶媒が含有されることが好ましく、この場合には、含有される樹脂と有機溶媒の溶解パラメータ値はそれぞれ10.0以下であることが好ましく、かつ該樹脂と有機溶媒の溶解パラメータ値の差が3.0以内であることが好ましい。該樹脂と該有機溶剤の溶解パラメータが10.0を超えるとアルミニウム支持体へのなじみが悪くなる傾向があり、付着ムラが起こり凸部状欠陥の判別がしづらくなる。また、溶解パラメータ値の差が3.0を超えると該樹脂が該有機溶剤に十分混ざらずに存在してしまう為、着色剤の成分として用いると付着ムラが起こり凸部状欠陥の判別がしづらくなる。
また、該樹脂の溶解パラメータ値は7.3以上が好ましく、該有機溶剤の溶解パラメータ値は8.5以上が好ましい。該樹脂の溶解パラメータ値が7.3未満または/かつ、該有機溶剤の溶解パラメータ値が8.5未満の場合には着色剤に用いた場合は着色剤が凸部に選択的に付着しづらい場合があり好ましくない。
含有される樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、フェノキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、エチルセルロース樹脂、カゼイン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、または、これらの樹脂の繰り返し構造単位のうち2つ以上を含む共重合体、例えば、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマーが挙げられる。
含有される有機溶媒としてはアルコール類、スルホキシド類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、脂肪族ハロゲン化炭化水素類または芳香族化合物を好適に用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン(以下THFとする)、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、ジブチルフタレート、シクロヘキサノンが挙げられる。
【0032】
該液体状の着色剤の着色成分としては、染料、顔料あるいは有色の樹脂があるが、特に顔料が好ましい。これは着色の度合いが最も大きくなり濃度差での判別がしやすくなる為である。また、該液体状の着色剤に含有される顔料は有機顔料、無機顔料のいずれでも構わないが、特に無機顔料であることが好ましい。無機顔料が有色無機顔料の場合には着色することで凸部状欠陥を濃度差により判別し、無色無機顔料の場合には顔料表面の光反射による凸部状欠陥の濃度差による判別が可能となるため、より判別方法の可能性が拡がる。
【0033】
また、液体状の着色剤に含有される顔料の、液体状の着色剤中の体積平均粒径はCAPA−500で測定し、0.30μm乃至0.90μmであることが好ましい。凸部に着色剤が付着し着色するには0.30μm以上の体積平均粒径が好ましく、また0.90μm以上の体積平均粒径の場合には凸部の形状に追随しなくなる恐れがあるためこの範囲が適当である。
【0034】
液体状の着色剤を塗布する方法は浸漬塗布法、スプレー塗布法、又は蒸着法があるが浸漬塗布法であることが好ましい。浸漬塗布法が最も簡便であることもその理由であるが、本発明では凸部の表面を均一に着色し、平坦部との濃度差で判別する方法であるので、浸漬塗布法が最も好ましい。
【0035】
凸部状欠陥を濃度差で判別する検査に用いられる検出器の光源の波長の光に対する該着色剤層の透過率は30乃至70%であることが好ましい。さらには、凸部状欠陥を濃度差で判別する検査に用いられる検出器の光源の波長の光に対する該着色剤層の透過率は40乃至60%であることがより好ましい。これは、濃度差により凸部状欠陥を判別する場合、凸部と平坦部との濃度差が重要であり、平坦部が着色されすぎても凸部との判別がしづらくなることと、十分に着色されていないと凸部と平坦部との濃度差が検出され難いからである。着色剤層の透過率を測定する方法は、該検出器の光源の波長の光の透過率を測定できる装置、例えば日本分光株式会社製V−570(UV/VIS/NIR Spectrophotometer)を用いて行い、ガラス上に該着色剤層を実際に付着する濃度及び膜厚で塗布し、その透過率を測定する。
【0036】
次に、アルミニウム支持体の凸部状欠陥を判別する検査の第2工程を説明する。
第2工程は、電子写真感光体に、例えば白色の光を照射し、該光の反射光を光電変換素子からなる受光手段により測定し、測定された電流値に基づいて、電子写真感光体の凸部状欠陥の有無を判定する工程である。
【0037】
第2工程における光源とは、例えばハロゲンランプを光源として、光ファイバーと光学フィルターを利用し、帯状光束として電子写真感光体へ投光できる形態のものが挙げられる。光源の波長は、着色剤層の透過率を適切にするものが好ましく、着色剤層に用いられる着色剤の吸収波長に一致するか近いものが好ましい。反射光とは、正反射光及び散乱反射光が挙げられる。光電変換素子からなる受光手段とは、例えばラインセンサー型CCDカメラが挙げられる。判定に用いる閾値は、凸部状欠陥がある電子写真感光体を検査した際の光電変換センサーの電流値に基づいて凸部状欠陥を検出できるレベルに設定する。
【0038】
図2に本発明で支持体表面の凸部状欠陥を判別する検査に用いる光学的検査装置の一例の概略構成を示す。図2に示すように光源22の光を光照射装置23を用い被検査体21の表面に照射し、光照射された被検査体21の表面を正反射光受光用一次元型CCDラインセンサ25及び散乱反射光受光用一次元型CCDラインセンサ24でスキャンして、測定をする。その両者のカメラ信号をカメラ信号合成装置26で合成し、合成された信号をアナログ信号処理装置27、特徴量生成装置28で識別、判定用のデータに変換する。この際にカメラ信号合成装置26より端面寸法測定装置29にもデータを転送して、端面寸法測定データも作成する。この両者のデータを信号制御装置30を介して識別・判定装置31に転送して、識別・判定を行うように構成した。
【0039】
本発明の電子写真感光体の感光層について説明する。
本発明の製法では感光層を設ける前に支持体上の着色剤層は除去する。除去する方法は何れでも良いが、機械的な方法により支持体表面の形状を変化させる方法や化学的に支持体を変化させる方法は好ましくなく、有機溶剤により溶解して除去する方法、水洗浄による方法等の機械的、化学的な変化を起こさない方法が好ましい。
【0040】
本発明の電子写真感光体の感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)であってもよいが、電子写真特性の観点からは積層型が好ましい。また、積層型感光層には、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層と、支持体側から電荷輸送層、電荷発生層の順に積層した逆層型感光層があるが、電子写真特性の観点からは順層型が好ましい。さらに、耐久性能向上を目的とし感光層上に保護層を設けることも可能である。
【0041】
支持体の傷を被覆することを目的として、支持体と感光層との間に導電層を設けてもよい。導電層は、カーボンブラック、金属粒子の如き導電性粒子を結着樹脂に分散させて形成することができる。導電層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜30μmであることがより好ましい。
【0042】
支持体または導電層の上に、接着機能及び/又はバリア機能を有する中間層を設けてもよい。中間層は、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、エチルセルロース樹脂、カゼイン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂の如き樹脂を適当な溶剤に溶解し、これを支持体または導電層上に塗布・乾燥することにより形成することができる。中間層の膜厚は0.05〜5μmであることが好ましく、特には0.3〜1μmであることがより好ましい。
【0043】
電荷発生層について述べる。
【0044】
電荷発生層は、電荷発生物質を、その0.3〜4倍量(質量比)の結着樹脂および溶剤とともに、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、又は液衝突型高速分散機を使用する方法でよく分散し、得られた分散液を、塗布・乾燥することにより形成することができる。なお、結着樹脂を電荷発生物質の分散後投入してもよいし、電荷発生物質に成膜性があれば結着樹脂を使用しなくてもよい。電荷発生物質としては、例えば、セレン−テルル、ピリリウム、チアピリリウム染料、フタロシアニン、アントアントロン、ジベンズピレンキノン、トリスアゾ、シアニン、アゾ(トリスアゾ、ジスアゾ、モノアゾ)、インジゴ、キナクリドン、非対称キノシアニンの如き顔料が挙げられる。結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂及びエポキシ樹脂が挙げられる。電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることがより好ましい。
【0045】
次に、電荷輸送層について述べる。
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤で溶解し、得られた塗布液を、塗布・乾燥することにより形成することができる。電荷輸送物質と結着樹脂との質量比は5:1〜1:5であることが好ましく、特には3:1〜1:3であることがより好ましい。電荷輸送層の膜厚は5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0046】
電荷輸送物質としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、トリアリルメタン化合物、チアゾール化合物が挙げられる。
【0047】
電荷輸送層の結着樹脂としては、熱可塑性樹脂および硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、フェノキシ樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、エチルセルロース樹脂、カゼイン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、または、これらの樹脂の繰り返し構造単位のうち2つ以上を含む共重合体、例えば、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマーが挙げられる。また、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレンの有機光導電性ポリマーからも選択できる。
【0048】
有機光導電性物質である電荷発生物質、電荷輸送物質などは、一般に紫外線、オゾン、オイルによる汚れ、金属に弱いため、感光層を保護することを目的として、感光層上に保護層を設け、これを電子写真感光体の表面層としてもよい。
【0049】
電子写真感光体の表面層となる保護層は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−アクリル酸コポリマーの如き結着樹脂と適当な溶剤に溶解し、得られた塗布液を感光層上に塗布・乾燥することにより形成することができる。また、保護層の結着樹脂として縮合系モノマーや不飽和基をもつラジカル重合系モノマーから得られる樹脂を用いる場合は、塗布液を塗布した後、熱または紫外線などのエネルギー光を当てて硬化し、保護層を形成してもよい。保護層の膜厚は0.05〜20μmであることが好ましい。
【0050】
本発明の電子写真感光体の表面層には、必要に応じて、金属、導電性金属酸化物の如き導電性粒子または電荷輸送物質をさらに含有させてもよい。
【0051】
上記各層を形成する際、塗布する方法としては、浸漬塗布法、スプレー塗布法、スピナー塗布法、ブレード塗布法、ロール塗布法が挙げられる。
図3に、本発明の電子写真感光体を有する電子写真装置の概略構成の一例として、中間転写方式のカラー電子写真装置およびインライン方式のカラー電子写真装置を説明する。なお、以下の説明において、4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の例を挙げたが、本発明における「カラー」とは、4色に限定されるものではなく、多色、すなわち2種以上の色である。
【0052】
図3において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
【0053】
回転駆動される電子写真感光体1の周面は、帯電手段(一次帯電手段)3により、正または負の所定電位に均一に帯電され、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。この際の露光光は、目的のカラー画像の第1色成分像(例えばイエロー成分像)に対応した露光光である。こうして電子写真感光体1の周面に、目的のカラー画像の第1色成分像に対応した第1色成分静電潜像(イエロー成分静電潜像)が順次形成されていく。
【0054】
張架ローラー12および二次転写対向ローラー13によって張架された中間転写体(中間転写ベルト)11は、矢印方向に電子写真感光体1とほぼ同じ周速度(例えば電子写真感光体1の周速度に対して97〜103%)で回転駆動される。
【0055】
電子写真感光体1の周面に形成された第1色静電潜像は、第1色成分現像手段(イエロー成分現像手段)5Yの第1色トナー(イエロートナー)により現像されて第1色トナー画像(イエロートナー画像)となる。次いで、電子写真感光体1の周面に形成担持されている第1色トナー画像が、一次転写手段6pからの一次転写バイアスによって、電子写真感光体1と一次転写手段(一次転写ローラー)6pとの間を通過する中間転写体11の周面に順次一次転写されていく。
【0056】
第1色トナー画像転写後の電子写真感光体1の周面は、クリーニング手段7によって一次転写残トナーの除去を受けて清浄面化された後、次色の画像形成に使用される。
【0057】
第2色トナー画像(マゼンタトナー画像)、第3色トナー画像(シアントナー画像)、第4色トナー画像(ブラックトナー画像)も、第2色成分現像手段(マゼンタ成分現像手段)5M、第3色成分現像手段(シアン成分現像手段)5C、第4色成分現像手段(ブラック成分現像手段)5Kにより、第1色トナー画像と同様にして電子写真感光体1の周面に形成され、中間転写体11の周面に順次転写される。こうして中間転写体11の周面に目的のカラー画像に対応した合成トナー画像が形成される。第1色〜第4色の一次転写の間は、二次転写手段(二次転写ローラー)6s、電荷付与手段(電荷付与ローラー)7rは中間転写体11の周面から離れている。
【0058】
中間転写体11の周面に形成された合成トナー画像は、二次転写手段6sからの二次転写バイアスによって、転写材供給手段(不図示)から二次転写対向ローラー13と二次転写手段6sとの間(当接部)に中間転写体11の回転と同期して取り出されて給送された転写材(紙など)Pに順次二次転写されていく。
【0059】
合成トナー画像の転写を受けた転写材Pは、中間転写体11の周面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることによりカラー画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
【0060】
合成トナー画像転写後の中間転写体11の周面には電荷付与手段7rが当接される。電荷付与手段7rは、中間転写体11の周面の二次転写残トナーに一次転写時と逆極性の電荷を付与する。一次転写時と逆極性の電荷が付与された二次転写残トナーは、電子写真感光体1と中間転写体11との当接部およびその近傍において、電子写真感光体1の周面に静電的に転写される。こうして合成トナー画像転写後の中間転写体11の周面は、転写残トナーの除去を受けて清浄面化される。電子写真感光体1の周面に転写された二次転写残トナーは、電子写真感光体1の周面の一次転写残トナーとともに、クリーニング手段7によって除去される。中間転写体11から電子写真感光体1への二次転写残トナーの転写は、一次転写と同時に行うことができるため、スループットの低下を生じない。
【0061】
また、クリーニング手段7による転写残トナー除去後の電子写真感光体1の周面を、前露光手段からの前露光光により除電処理してもよいが、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【実施例】
【0062】
以下に、具体的な実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0063】
(実施例1)
酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部、酢酸エチル286.5部からなる溶液を約20時間、ボールミルで分散し液体状の着色剤C−1を調製した。着色剤C−1の粘度を前述の回転式B型粘度計で測定したところ測定5回平均で1.2mPa・Sであった。着色剤C−1の固形分の割合も測定し、5回平均で1.2wt%であった。
また、着色剤の一部をそれに用いた溶剤で透過率が0.8乃至1.0の間になるように希釈し、(株)堀場製作所製の超遠心式自動粒度分布測定装置(CAPA700)を用いて回転数3000rpmの条件で、体積平均粒径を測定したところ測定5回平均で0.50μmであった。
【0064】
着色剤を0.3μmの膜厚でガラス上に塗布し、温度80℃で5分間乾燥した。このガラス上の着色剤層の透過率を、前述の日本分光株式会社製V−570(UV/VIS/NIR Spectrophotometer)にて測定した。波長780nmにおける着色剤層の透過率は50%であった。
【0065】
次に3000番系アルミニウム合金を用い、押し出し工程後、引抜き工程を実施して作製された直径24mm、長さ246mm、肉厚1mmのシリンダーを支持体(円筒状アルミニウム支持体)とし用い、該支持体に対して水洗浄を行った。
【0066】
該支持体に対する液体状の着色剤C−1の接触角を協和界面科学社製の接触角計CA−Sロール型にて測定した。接触角は測定5回平均で15°であった。測定の為に滴下した着色剤はウェスにて綺麗にふき取った。
【0067】
次に該支持体上に上記の着色剤を浸漬塗布法にて塗布し、温度80℃で5分間乾燥した。着色剤層の膜厚は0.3μmであった。この支持体を図2に示す検査装置を用いて支持体表面の凸部状欠陥の有無を検査した。予め、支持体表面の平坦部から突出している凸部の高さが0μmの時に濃度差値が1となるように、50.0μmの時に濃度差値が256となるように256階調の解像度でセッティングし、濃度差値と凸部状欠陥の高さを対応させた。但し、凸部状欠陥の高さが50.0μmを超える時も濃度差値は256を示す。この液体状着色剤の塗布から凸部状欠陥の有無の検査までの作業を10000本の支持体について連続的に行い凸部状欠陥の高さが0〜9.9μmをAランク、10.0〜40.0μmをBランク、40.0μm以上をCランクとし3ランクに選別した。その後、再度支持体を水洗浄し、着色層を剥離した。この時、先に選別した各支持体のランクは水洗浄後も識別できるように支持体内面にマーキングしておいた。
【0068】
次に、酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)30部、アクリル樹脂(商品名:J−899、大日本インキ化学工業(株)製、固形分70%)50部、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、GE東芝シリコーン(株)製、平均粒径2μm)8部、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)0.02部からなる溶液を約20時間、ボールミルで分散し導電層用塗料を調製した。この導電層用塗料を各支持体上に浸漬法によって塗布し、温度140℃のオーブンで1時間加熱硬化することにより、膜厚が10μmの導電層を形成した。
【0069】
次に、導電層を形成した円筒状アルミニウム支持体の上にそれぞれ下記のようにして感光層を設けた。
すなわち、CuKα特性X線回折のブラック角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニン20部、下記構造式(2)のカリックスアレーン化合物0.2部、
【化1】

ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX−1、積水化学製)10部およびシクロヘキサノン600部を直径1mmガラスビーズを用いたサンドミル装置で4時間分散した後、酢酸エチル700部を加えて電荷発生層用分散液を調製した。これを浸漬コーティング法で導電層上に塗布し、温度80℃のオーブンで15分間加熱乾燥することにより、膜厚が0.170μmの電荷発生層を形成した。
【0070】
次いで下記構造式(3)の正孔輸送性化合物70部
【化2】

およびポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)社製)100部をモノクロロベンゼン600部およびメチラール200部の混合溶媒中に溶解して調製した電荷輸送層用塗料を用いて、前記電荷発生層上に電荷輸送層を浸漬塗布し、温度100℃のオーブンで30分間加熱乾燥することにより、膜厚が15μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。これらの工程を先の支持体すべてについて連続的に行った。
【0071】
次に、製造した電子写真感光体の評価について説明する。
評価装置として、図3に示す構成の中間転写方式のカラー電子写真装置であるキヤノン(株)製カラーレーザープリンターLBP−2040(白黒毎分16枚/カラー毎分4枚機)を用い、電子写真感光体について評価を行った。
【0072】
まず、この上記電子写真感光体を取り付けたカートリッジを該カラー電子写真装置に取り付け、以下のように初期評価を行った。
初期評価として、この装置を用い、また転写材としてA4普通紙を用いて、モノクロで桂馬パターンのハーフトーン画像を1枚出力した。
【0073】
次に、初期評価に引き続き以下のように耐久評価(耐久性の評価)を行った。耐久評価は前記初期評価後、前記電子写真感光体を取り付けたカートリッジを前記カラー電子写真装置の取り付けたまま以下のような操作を行った。すなわち、横線1ドット250スペースのパターン画像を転写材としてA4普通紙を用いて、20秒毎に2枚出力する間欠モードで500枚の画像出力を行った後、引き続き、転写材としてA4普通紙を用いて、モノクロで桂馬パターンのハーフトーン画像を1枚出力した。これを初期評価から数えてA4普通紙合計30061枚まで行った。
以上の出力した画像についてリークによる画像欠陥の評価を行った。本発明でいうところのリークによる画像欠陥とは出力したハーフトーン画像上に電子写真感光体一周分の周期毎に現れる黒ポチ欠陥を示す。なお、前記評価においてA4普通紙合計30061枚までに黒ポチ欠陥が現れた場合にはNGと判断し、画像出力をそこで中断し、次の電子写真感光体に取り替え新しいカートリッジを用いて評価を行った。
【0074】
初期評価のハーフトーン画像でNGとなったものを電子写真感光体ランクcとし、耐久評価において途中のハーフトーン画像でNGとなったものを電子写真感光体ランクbとする。初期及び耐久評価においてハーフトーン画像でNGが発生せず30060枚の耐久をすべて終えたものは電子写真感光体ランクaとする。
【0075】
支持体上に着色層を設けた時のランク(A、B、C)と製造した電子写真感光体についてのランク(a〜c)との対応を見比べたときのランクAのうちのランクaの数の割合(「検査良好度1(%)」という)と、ランクBのうちのランクbの数の割合(「検査良好度2(%)」という)と、ランクCのうちのランクcの数の割合(「検査良好度3(%)」という)がそれぞれ100%に近い方が着色剤を用いた支持体の検査が良好に出来ていると考えた。本実施例においては、これら検査良好度1(%)〜検査良好度3(%)はすべて100%であり大変良好の検査ができていた。
以上の評価結果を表1及び表2に示す。
【0076】
(実施例2)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部を酸化亜鉛(ZnO)2.5部に、酢酸エチル286.5部をキシレン286.5部に変えて着色剤C−2とし、着色剤層の膜厚を0.4μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0077】
(実施例3)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部をチタン酸バリウム(BaTiO)2.5部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をメタクリレート樹脂3.2部に、酢酸エチル286.5部をジブチルフタレート286.5部に変えて着色剤C−3とし、着色剤層の膜厚を0.2μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0078】
(実施例4)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部を酸化ジルコニウム(ZrO)3.0部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をAS樹脂(アクリロニトリル−スチレンコポリマー、アクリロニトリル/スチレン比=1/1)1.6部に、酢酸エチル286.5部を酢酸ブチル286.5部に変えて着色剤C−4とし、着色剤層の膜厚を0.5μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0079】
(実施例5)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部を酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)3.2部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をポリメチルメタクリレート樹脂0.2部に、酢酸エチル286.5部を酢酸エチル500.0部に変えて着色剤C−5とし、着色剤層の膜厚を0.7μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0080】
(実施例6)
実施例5の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)3.2部を酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部に変えて着色剤C−6とし、着色剤層の膜厚を0.5μmとした以外は実施例5と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0081】
(実施例7)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部を酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)4.5部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をポリメチルメタクリレート樹脂0.5部に、酢酸エチル286.5部をイソプロパノール330.0部に変えて着色剤C−7とし、着色剤層の膜厚を0.3μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0082】
(実施例8)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部を酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)4.5部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をポリメチルメタクリレート樹脂0.7部に、酢酸エチル286.5部を酢酸エチル500.0部に変えて着色剤C−8とし、着色剤層の膜厚を0.3μmとし、着色剤の塗布法を浸漬塗布法からスプレー塗布法に変えた以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0083】
(実施例9)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部を酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)1.8部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をブチラール樹脂1.2部に、酢酸エチル286.5部をアセトン250.0部に変えて着色剤C−9とし、着色剤層の膜厚を2.0μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0084】
(実施例10)
実施例1の着色剤調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部をアゾ顔料であるペリレン2.5部に、酢酸エチル286.5部をエタノール12.7部に変えて着色剤C−10とし、着色剤層の膜厚を1.0μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0085】
(実施例11)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部を酸化鉄(III)(Fe)2.5部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をブチラール樹脂1.0部に、酢酸エチル286.5部をTHF286.5部に変えて着色剤C−11とし、着色剤層の膜厚を1.0μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0086】
(実施例12)
実施例1の着色剤の調製においてポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をブチラール樹脂1.0部に、酢酸エチル286.5部をシクロヘキサノン286.5部に変えて着色剤C−12とし、着色剤層の膜厚を1.0μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0087】
(実施例13)
実施例1の着色剤においてポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をブチラール樹脂1.0部に変えて着色剤C−13とし、着色剤層の膜厚を1.0μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0088】
(比較例1)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部をカーボン粒子2.5部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をビニルアルコール・アクリル酸塩共重合体0.2部に、酢酸エチル286.5部を水500.0部に変えて着色剤C−14とし、着色剤層の膜厚を0.5μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0089】
(比較例2)
実施例1の着色剤の調製において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部をアゾ顔料のペリノン3.5部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部を酢酸ビニル0.1部に、酢酸エチル286.5部をアセトリトリル450.0部に変えて着色剤C−15とし、着色剤層の膜厚を0.5μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0090】
(比較例3)
実施例1の着色剤において酸化チタン(商品名:TITANIX JR、テイカ(株)製)2.5部をチタニルフタロシアニン5.0部に、ポリメチルメタクリレート樹脂1.0部をポリアクリロニトリル4.0部に、酢酸エチル286.5部をTHF250.0部に変えて着色剤C−16とし、着色剤層の膜厚を1.5μmとした以外は実施例1と同様に、着色剤の調製、着色剤層の形成、支持体の検査、着色剤の剥離、電子写真感光体の作製を行い、着色剤の支持体に対する接触角、着色剤の粘度、着色剤層の透過率、着色剤の固形分、着色剤の体積平均粒径の測定と初期及び耐久評価を行った。その結果を表1及び表2に示す。
【0091】
【表1】

【表2】

【符号の説明】
【0092】
101 液体状の着色剤
102 アルミニウム支持体の表面
103 凸部状欠陥
1 電子写真感光体
3 帯電手段(一次帯電手段)
4 露光光(画像露光光)
7 クリーニング手段(クリーニングブレード)
8 定着手段
21 被検査体
22 光源
23 光照射装置
24 散乱反射光受光用一次元型CCDラインセンサ
25 正反射光受光用一次元型CCDラインセンサ
26 カメラ信号合成装置
27 アナログ信号処理装置
28 特徴量生成装置
29 端面寸法測定装置
30 信号制御装置
31 識別・判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状アルミニウム支持体の上に少なくとも感光層を設ける電子写真感光体の製造方法において、該アルミニウム支持体を洗浄後、洗浄したアルミニウム支持体に対する接触角が20°以下でかつ粘度が2.0mPa・s以下の液体状の着色剤を該アルミニウム支持体上に塗布し着色剤層を設けて着色することにより、該アルミニウム支持体表面の凸部状欠陥を該着色剤層の濃度差で判別する検査で検出し選別した後、該着色剤層を除去してから該アルミニウム支持体上に感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項2】
凸部状欠陥を判別する検査に用いられる検出器の光源の波長の光に対する該着色剤層の透過率が30乃至70%である請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項3】
凸部状欠陥を判別する検査に用いられる検出器の光源の波長の光に対する該着色剤層の透過率が40乃至60%である請求項2に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項4】
該液体状の着色剤中の固形分の割合が2.0質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項5】
該着色剤層の膜厚が2.0μm以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項6】
該液体状の着色剤に少なくとも樹脂と有機溶媒が含有され、該樹脂と有機溶媒の溶解パラメータ値がそれぞれ10.0以下であり、かつ該樹脂と有機溶媒の溶解パラメータ値の差が3.0以内である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】
該液体状の着色剤に少なくとも顔料が含有される請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項8】
該顔料が無機顔料である請求項7に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項9】
該液体状の着色剤中の該顔料の体積平均粒径が0.30μm乃至0.90μmである請求項7または8に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項10】
該液体状の着色剤を浸漬塗布法で塗布する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate