説明

電子写真機器用導電性ロール

【課題】ブリードによる汚染を生じず、組成が均一な導電性ベース層を備え、ロール電気抵抗のばらつきが解消された電子写真機器用導電性ロールの提供をその目的とする。
【解決手段】
軸体1と、その外周に形成されるベース層2と、表層3とを備えた電子写真機器用導電性ロールであって、上記ベース層2が、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤および重合開始剤の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真機器用導電性ロールに関するものであり、詳しくは、主に、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真機器の帯電ロールや現像ロール等として用いられる電子写真機器用導電性ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、接触帯電方式の電子写真複写機における画像形成は、次のようにして行われる。すなわち、まず、感光ドラムに帯電ロールを圧接して感光ドラム表面を一様に帯電させ、光学系を介して感光ドラム表面に原稿像を投射し、光が投射された部分の帯電を打ち消すことにより、静電潜像を形成する。つぎに、現像ロール表面に均一にトナーを担持させ、このトナーを上記静電潜像に付着させてトナー像を形成した後、このトナー像を複写紙に転写する。このようにして、複写画像を得ることができる。
【0003】
そして、上記のような、帯電ロール、現像ロール等といった電子写真機器用導電性ロールは、一般に、軸体となる芯金の外周に、導電性ゴム組成物からなるベース層(基層)が所定の厚さで形成され、構成されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−256335公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電子写真機器用導電性ロールは、均一なトナーの付着や帯電性の付与が要求されており、電気抵抗の均一性が要求される。そのため、上記ベース層における電気抵抗は、均一かつ安定したものであることが重要である。
【0005】
また、上記電子写真機器用導電性ロールは、感光ドラム等の各部材と圧接して使用される。これにより、トナーや各部材とのストレスが大きくなると、トナー融着が発生したり、感光ドラムとの均一な接触が得られず帯電が不均一になったりし、画像に不具合が生じる等のトラブルが発生しやすい。そのため、ロールの低硬度化が要求される。また、前述のようにベース層の材料にゴムを使用する場合、通常、パラフィンオイルのような可塑剤を添加する方法で硬度低下させることができるが、オイルのブリードによる汚染の心配がある。また、ゴムでは組成がどうしても均一になり難いため、ロールの箇所により電気抵抗のばらつきが出るといった懸念がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ブリードによる汚染を生じず、組成が均一な導電性ベース層を備え、ロール電気抵抗のばらつきが解消された電子写真機器用導電性ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の電子写真機器用導電性ロールは、軸体と、その外周に形成されるベース層とを備えた電子写真機器用導電性ロールであって、上記ベース層が、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤および重合開始剤の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなるという構成をとる。
【0008】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ね、その研究の過程で、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤(熱硬化剤)および重合開始剤(熱によって酸を発生し、その酸がエポキシ化合物のグリシジル環を開環し、硬化触媒として作用するもの)の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物を、電子写真機器用導電性ロールのベース層材料とし、そのエポキシ組成物を熱硬化させることにより、上記ベース層を構成することを想起した。上記エポキシ組成物は、導電性を有するとともに、液状で比較的低粘度であり、例えば導電剤を添加した場合でも効率よく分散できる。そのため、上記エポキシ組成物は、組成の均一化が容易であり、ベース層の材料にゴムを使用したとき(エピハロヒドリンゴム等のゴムをエポキシ組成物中に添加したときも含む)のような電気抵抗のばらつきが解消でき、さらに、上記のように低粘度であるため、加工性にも優れる。しかも、上記組成物中のエポキシ化合物が、柔軟なオキシアルキレン構造を分子中にもつため、その熱硬化体からなるベース層は、汚染の原因となる可塑剤を添加することなく、低硬度性を発現する。これらのことから、本発明者らは、上記エポキシ組成物の熱硬化体からなるベース層を備えた導電性ロールは、電子写真機器用導電性ロールとして所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明の電子写真機器用導電性ロールは、そのベース層が、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤および重合開始剤の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなるものである。そのため、上記ロールは、低硬度化を達成でき、しかも、ブリードによる汚染を生じずに済む。さらに、上記ベース層が、導電性を備え、かつ組成が均一であることから、ロール電気抵抗のばらつきを抑えることができる。したがって、帯電ロール、現像ロール等として優れた性能を発揮することができる。
【0010】
特に、上記ベース層形成用のエポキシ組成物が、イオン導電剤を含有すると、ロールの低硬度化を阻害せず、ロールの電気抵抗を均一に低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明の電子写真機器用導電性ロール(以下、「導電性ロール」と略す)は、例えば、図1に示すように、軸体1の外周面に沿ってベース層2が形成され、その外周面に表層3が形成されて、構成されている。そして、本発明では、先に述べたように、上記ベース層2が、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤および重合開始剤の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなるものであることを、その特徴としている。ここで「主成分」とは、組成物の特性に大きな影響を与えるもののことであり、通常は、全体の50重量%以上を意味する。
【0013】
上記軸体1は特に制限するものではなく、例えば金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体等が用いられる。そして、その材料としては、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したもの等があげられる。また、必要に応じ軸体1上に接着剤、プライマー等を塗布することができる。なお、接着剤、プライマー等は必要に応じて導電化してもよい。
【0014】
上記軸体1の外周に形成されるベース層2の材料としては、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤(熱硬化剤)および重合開始剤(熱によって酸を発生し、その酸がエポキシ化合物のグリシジル環を開環し、硬化触媒として作用するもの)の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物が用いられる。そのため、上記硬化剤と重合開始剤とは、単独で用いても、併せて用いてもよい。
【0015】
上記オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物としては、例えば、メタンジオールジグリシジルエーテル、1,2−エタンジオールジグリシジルエーテル、1,3−プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1.7−ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテル、1,10−デカンジオールジグリシジルエーテル、1,11−ウンデカンジオールジグリシジルエーテル、1,12−ドデカンジオールジグリシジルエーテル、1.13−トリデカンジオールジグリシジルエーテル、1.14−テトラデカンジオールジグリシジルエーテル、1,15−ペンタデカンジオールジグリシジルエーテル、1,16−ヘキサデカンジオールジグリシジルエーテル、ポリモノメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリオクタメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリノナメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリウンデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリドデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリトリデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリペンタデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリヘプタデカメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、C12アルキルグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2エチルヘキシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブトキシポリエチレングリコールグリシジルエーテル、エチレングリコール−エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、グリセリン−エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル等があげられる。そして、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、0℃〜150℃の範囲内で液状状態であるエポキシ化合物が、(低粘度で)加工性等に優れるため、好ましい。
【0016】
また、上記エポキシ化合物は、その数平均分子量(Mn)が130〜6000の範囲内のものが好ましく、特に好ましくは、数平均分子量(Mn)400〜3000のものである。すなわち、上記エポキシ化合物の数平均分子量(Mn)が130未満であると、ロールの低硬度化がなされ難いからであり、逆に、上記数平均分子量(Mn)が6000を超えると、常温で高粘度もしくはワックス状態になるため、加工性が悪くなるおそれがある。
【0017】
上記エポキシ化合物とともに用いられる硬化剤としては、例えば、アミン類、酸無水物類、多価フェノール類、イミダゾール類、ブレンステッド酸塩類、アミンのBF3 錯体化合物、有機酸ヒドラジッド類、ジシアンジアミド類、ポリカルボン酸類等があげられる。そして、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0018】
上記アミン類としては、具体的には、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5,5]ウンデカン等の脂肪族及び脂環族アミン類、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン類、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−ウンデセン−7、1,5−アザビシクロ−(4,3,0)−ノネン−7等の3級アミン類、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、メタキシレンジアミン、エチレンジアミンおよびその塩類等があげられる。
【0019】
上記酸無水物類としては、具体的には、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の環状脂肪族酸無水物類等があげられる。
【0020】
上記多価フェノ−ル類としては、具体的には、カテコ−ル、レゾルシン、ハイドロキノン、ビスフェノ−ルF、ビスフェノ−ルA、ビスフェノ−ルS、ビフェノ−ル、フェノ−ルノボラック類、クレゾ−ルノボラック類、ビスフェノ−ルA等の2価フェノ−ルのノボラック化物類、トリスヒドロキシフェニルメタン類、アラルキルポリフェノ−ル類、ジシクロペンタジエンポリフェノ−ル類等があげられる。
【0021】
上記イミダゾール類としては、具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等があげられる。また、上記ブレンステッド酸塩類としては、具体的には、脂肪族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩等があげられる。また、上記有機酸ヒドラジッド類としては、具体的には、アジピン酸ジヒドラジッド、フタル酸ジヒドラジッド等があげられる。また、上記ポリカルボン酸類としては、具体的には、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、トリメリット酸、カルボキシル基含有ポリエステル等があげられる。
【0022】
また、上記エポキシ化合物とともに用いられる重合開始剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、カチオン重合開始剤等があげられる。そして、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0023】
上記カチオン重合開始剤としては、具体的には、六フッ化リン化合物、六フッ化アンチモン化合物、三フッ化ホウ素エーテル錯化合物、三フッ化ホウ素等のようなカチオン系またはプロトン酸触媒等があげられる。
【0024】
そして、ベース層2形成用のエポキシ組成物における上記硬化剤の配合量は、そのエポキシ化合物100重量部(以下、「部」と略す)に対して1〜200部の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは、2〜150部の範囲内である。また、ベース層2形成用のエポキシ組成物における上記重合開始剤の配合量は、そのエポキシ化合物100部に対して0.01〜20部の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは、0.1〜10部の範囲内である。すなわち、上記硬化剤や重合開始剤が、上記規定の範囲未満であると、ベース層2の熱硬化が充分になされないからであり、逆に、上記硬化剤や重合開始剤が、上記規定の範囲を超えると、重合開始剤および硬化剤の未反応分がブリードしてしまうからである。
【0025】
なお、上記ベース層2形成用のエポキシ組成物は、このように、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤および重合開始剤の少なくとも一方を含有するものであるが、必要に応じ、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等の導電剤が、適宜に添加される。なかでも、ベース層2の低硬度化(ロールの低硬度化)を阻害せず、ベース層2の電気抵抗の均一化が良好になされる点において、イオン導電剤が好ましい。また、上記エポキシ組成物には、必要に応じ、3級アミン類(ベンジルジメチルアミン等)等の硬化促進剤、充填剤、着色剤等も、適宜に添加される。
【0026】
そして、上記ベース層2用材料は、それにより形成されるベース層2の体積抵抗率が、5.0×105 〜5.0×108 Ω・cmの半導電領域内となるよう、適宜調製される。なお、上記体積抵抗率は、その材料の熱硬化体からなるサンプルシートに対し、JIS−K−6911に記載の方法に準拠し、測定される。
【0027】
上記ベース層2の外周に形成される表層3の形成材料としては、例えば、N−メトキシメチル化ナイロン等のポリアミド系樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。また、導電性付与のため、必要により、カーボンブラック、金属酸化物、四級アンモニウム塩、ホウ酸塩等の導電剤等を適宜に添加してもよい。
【0028】
また、上記表層3の形成用材料は、有機溶剤に溶解等され、コーティング液として使用に供される。上記有機溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メタノール、トルエン、イソプロピルアルコール、メチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。このコーティング液は、粘度を0.005〜10Pa・sに設定することが、塗工性等の点で好ましい。
【0029】
ここで、本発明の導電性ロールは、例えば、つぎのようにして作製することができる。
【0030】
すなわち、まず、前記ベース層2形成用のエポキシ組成物の各成分を、攪拌羽根を有する攪拌機等により混合することにより、ベース層2用材料(組成物)を調製する。また、前記表層3用の各成分を有機溶剤に溶解し、サンドミル等で分散することにより、表層3用材料(コーティング液)も調製する。
【0031】
ついで、円筒状金型の中空部に、金属製の軸体1をセットし、上記円筒状金型と軸体1との空隙部に、上記ベース層2用材料を注型した後、金型に蓋をし、加熱(50〜180℃で、1〜300分の加熱)して、ベース層2用材料を架橋させる。その後、上記円筒状金型から脱型することにより、軸体1の外周面にベース層2が形成されてなるベースロールを得る。そして、上記ベースロールの外周に、上記表層3形成用のコーティング液を塗工する。この塗工法は、例えば、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法等の方法が適用できる。そして、上記塗工後、乾燥および加熱(120〜200℃で20〜90分)を行うことにより、目的とする導電性ロールを製造することができる(図1参照)。
【0032】
この導電性ロールにおいて、ベース層2の厚みは、0.5〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは、厚み1〜6mmの範囲である。また、表層3の厚みは、3〜100μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは、厚み5〜50μmの範囲である。
【0033】
また、本発明の導電性ロールは、そのロール抵抗が108 Ω・cm以下となるよう設定することが好ましい。上記ロール抵抗は、例えば、上記ロールを金属ドラムに押し付け、その状態で、金属ドラムを回転させながら、電流を連続印加させて測定される。
【0034】
なお、本発明の導電性ロールの例として、図1に示すような二層構造のものをあげたが、本発明はこれに限定されるものでなく、ロールの用途等に応じ、ベース層2と表層3との間に中間層を介在させたりして、適宜の数の層が形成される。ただし、最内層であるベース層2は、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤および重合開始剤の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなるものである必要がある。
【0035】
そして、本発明の導電性ロールは、低硬度化を達成でき、しかも、ブリードによる汚染を生じずに済み、さらに、そのベース層が、導電性を備え、かつ組成が均一であることから、ロール電気抵抗のばらつきを抑えることができる。したがって、帯電ロール、現像ロール等の電子写真機器用導電性ロールとして優れた性能を発揮することができる。
【0036】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
まず、実施例および比較例に先立ち、ロールのベース層の材料として、下記に示す材料を準備した。
【0038】
〔エポキシ化合物a〕
ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(数平均分子量:950)(四日市合成社製、エポゴーセーPT)
〔エポキシ化合物b〕
ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(数平均分子量:768)(ナガセケムテックス社製、EX−931)
〔エポキシ化合物c〕
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(数平均分子量:526)(ナガセケムテックス社製、EX−832)
〔エポキシ化合物d〕
1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(数平均分子量:230)(ナガセケムテックス社製、デコナール−EX−212L)
〔エポキシ化合物e〕
ポリブタジエンエポキシド(ダイセル化学工業社製、エポリードPB3600)
〔エポキシ化合物f〕
ビスフェノールF型エポキシ化合物(DIC社製、エピクロン830)
【0039】
〔硬化剤a〕
メタキシレンジアミン(三菱ガス化学社製)
〔硬化剤b〕
無水フタル酸(和光純薬工業社製)
〔硬化剤c〕
イミダゾール系硬化剤(四国化成工業社製、キュアゾールC11Z−CN)
〔重合開始剤〕
芳香族スルホニウム塩(三新化学社製、サンエイドSI100L)
〔硬化促進剤〕
ベンジルジメチルアミン(和光純薬工業社製)
【0040】
〔イオン導電剤〕
四級アンモニウム塩(東京化成工業社製、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート(TPAHS))
【0041】
〔固形エピクロロヒドリンゴム(ECO)〕
日本ゼオン社製、Hydrin T3106
〔固形エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)〕
JSR社製、JSR EP27
【0042】
〔可塑剤〕
パラフィンオイル(出光興産社製、ダイアナプロセスPW32)
〔滑剤〕
ステアリン酸(花王社製、ルナックS−20)
〔亜鉛華(ZnO)〕
ハクスイラック社製
〔カーボンブラック〕
三菱化学社製、ケッチェンブラックEC300J
〔老化防止剤〕
大内新興化学工業社製、ノクラックNS−6
〔硫黄〕
鶴見化学社製、サルファックスPMC
〔加硫促進剤a〕
テトラメチルチウラムモノサルファイド(三新化学社製、サンセラーTT)
〔加硫促進剤b〕
ジベンゾチアゾールジスルフィド(大内新興化学工業社製、ノクセラーDM)
【0043】
〔実施例1〜11、比較例1〜4〕
上記材料を、下記の表1および表2に示す割合で配合し、攪拌羽根を有する攪拌機によって攪拌することにより、ベース層用組成物(樹脂組成物)A〜Mを調製した。また、上記材料を、下記の表3に示す割合で配合し、ミキサーで混練することにより、ベース層用組成物(ゴム組成物)N〜Oを調製した。このようにして、ベース層用組成物A〜Oを得た。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
続いて、上記ベース層用組成物A〜Oのいずれか(後記の表4および表5参照)を、直径12mmのステンレス製の芯金を組み込んだロール成形用金型に注入し、60℃で3時間の加熱後、さらに120℃で3時間加熱して組成物を熱硬化させ、その後、脱型することにより、芯金の外周にベース層(厚み2mm)が形成されてなるベースロールを得た。つぎに、N−メトキシメチル化ナイロン100部と、導電性酸化スズ60部と、クエン酸1部とを、メタノール−トルエン混合溶液(メタノール:トルエン=7:3)500部に溶解し、攪拌羽根を有する攪拌機によって攪拌することにより、コーティング液を調製した。そして、上記ベースロールを、このように調製したコーティング液中に浸漬して引き上げた後(ディッピング法)、185℃×60分のオーブン加熱加硫を行い、表層(厚み6μm)を形成した。このような工程を経て、2層構造の導電性ロールを得た。
【0048】
上記のようにして得られた実施例1〜11、比較例1〜4の導電性ロールについて、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表4および表5に併せて示した。
【0049】
〔デュロメータ硬度〕
表層形成前のベースロールについて、JIS−K−6253に記載の方法に準拠し、デュロメータ硬度(タイプA)を測定した。なお、この値が65以下であれば、低硬度性に優れていることを示す。
【0050】
〔ロール抵抗〕
上記作製した導電性ロールを、金属ドラムに押し付け(ロールの片端に対し4.9Nの荷重となるよう、ロール両端に荷重をかけて押し付け)、その状態で、金属ドラムを30rpmで回転させながら(導電性ロールは連れ回りする)、DC200μAの定電流を連続印加させたときのロール抵抗(Ω・cm)を測定した。なお、この値が108 Ω・cm未満であれば、導電性に優れていることを示す。
【0051】
〔ブリード性〕
上記作製した導電性ロールを、金属ドラムに押し付け(ロールの片端に対し4.9Nの荷重となるよう、ロール両端に荷重をかけて押し付け)、その状態で、50℃×95%RH環境に2週間放置した。そして、上記放置後、ロール表面のブリード性をマイクロスコープ観察にて目視評価した。すなわち、ブリードが目視で確認されないものを○、ブリードが若干確認されるものを△、ブリードが顕著に確認されるものを×と評価した。
【0052】
〔帯電ロール評価〕
上記作製したロールを、帯電ロールとしてプリンター(ヒューレット・パッカード社製、LASERJET 4700)にセットし、文字チャートの画出しを行った。そして、初期のプリント画像を目視で確認し、画像にむらの無いものを○、画像にむらがわずかに見られるものを△、画像むらが多いものを×と評価した。
【0053】
〔現像ロール評価〕
上記作製したロールを、現像ロールとしてプリンター(ヒューレット・パッカード社製、LASERJET 3600)にセットし、文字チャートの画出しを行った。そして、プリント画像にかぶりが見られないものを○、わずかにかぶりが見られるものを△、かぶりが顕著に見られるものを×と評価した。
【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
上記表の結果より、実施例品は、低硬度で、ロール抵抗も低く、導電性に優れ、ブリードも生じないことがわかる。そして、帯電ロールや現像ロールとして用いたとき、良好なプリント画像が得られた。
【0057】
これに対し、通常のエポキシ化合物をベース層用材料として用いた比較例1,2品は、高硬度であり、ロール抵抗も高かった。そのため、帯電ロールや現像ロールとして用いたとき、良好なプリント画像が得られなかった。ゴム組成物をベース層用材料として用いた比較例3,4品は、その組成物中の可塑剤によりブリードがみられた。また、比較例4品は、ベース層用材料としてカーボンブラックを添加し、導電性に優れるが、その反面、硬度が高くなり、帯電ロールや現像ロールとして用いたとき、良好なプリント画像が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の導電性ロールは、帯電ロール、現像ロール等の電子写真機器用導電性ロールとして好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の導電性ロールの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 軸体
2 ベース層
3 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、その外周に形成されるベース層とを備えた電子写真機器用導電性ロールであって、上記ベース層が、オキシアルキレン構造を有するエポキシ化合物を主成分とし、その硬化剤および重合開始剤の少なくとも一方を含有するエポキシ組成物の熱硬化体からなることを特徴とする電子写真機器用導電性ロール。
【請求項2】
上記エポキシ組成物が、イオン導電剤を含有する請求項1記載の電子写真機器用導電性ロール。

【図1】
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【公開番号】特開2009−237359(P2009−237359A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84578(P2008−84578)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】