説明

電子写真現像剤用フェライトキャリア及びその製造方法、並びに該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤

【課題】 絶縁破壊電圧が高いため、電荷リークの発生を抑制でき、その結果、高画質が得られる電子写真現像剤用フェライトキャリア及びその製造方法、並びに該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤を提供すること。
【解決手段】 ジルコニウムを40〜500ppm含有することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリア等を用いる。そして、その製造方法、並びに該フェライトキャリアを用いた電子写真用現像剤を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等に用いられる二成分系電子写真現像剤用フェライトキャリア及びその製造方法、並びに該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤に関し、詳しくは絶縁破壊電圧が高いため、電荷リークの発生を抑制でき、その結果、高画質が得られる電子写真現像剤用フェライトキャリア及びその製造方法、並びに該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法に使用される二成分系現像剤はトナーとキャリアとにより構成されており、キャリアは現像剤ボックス内でトナーと混合攪拌され、トナーに所望の電荷を与え、電荷を帯びたトナーを感光体上の静電潜像に運び、トナー像を形成させる担体物質である。キャリアはトナー像を形成した後も、マグネットに保持され現像ロール上に残り、さらに再び現像ボックスに戻り、新たなトナー粒子と再び混合攪拌され、一定期間繰り返し使用される。
【0003】
この二成分系現像剤は、一成分系現像剤と異なり、キャリアが、トナー粒子を攪拌し、トナー粒子に所望の帯電性を付与すると共に、トナーを搬送する機能を有しており、現像剤設計において制御性がよいため、特に高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機の分野に広く使用されている。
【0004】
このような二成分系電子写真現像剤においては、高画質画像を得るために、キャリアとして酸化皮膜鉄粉、樹脂被覆鉄粉に代えて、Cu−Znフェライト、Ni−Znフェライト等のフェライトが用いられている。これらのフェライトキャリアは従来の鉄粉キャリアに比べ高画質画像を得るのに有利な特質を多く持っているが、表面の凹凸が粒子間及び粒子内で不均一であるため、特にその凸部からの電荷リークが激しく、高画質が得られにくいという課題がある。
【0005】
このため、フェライトに高抵抗、高絶縁破壊電圧を付与して電荷のリークを防止する試みが多くなされているが、充分ではない。例えば特許文献1等には、酸化ジルコニウム等の添加物を添加したフェライトキャリアが開示されており、添加物の添加により表面性や抵抗等を制御しようとするものである。しかし、これらの添加物をフェライト中に均一に分散することは困難であり、不均一さを助長するものであった。また、例えば非特許文献2に記載されているように、添加効果を発揮しようと多量の添加を行うと、粒成長を抑制したり、逆に過度に反応を進めたりして、均一性を失わせたり、他の不具合を発生させるものであった。
【0006】
【特許文献1】特開平8−194338号公報
【非特許文献2】「電子材料シリーズ フェライト 第43頁表3.2、丸善株式会社」
【0007】
このように、フェライトキャリアに高絶縁破壊電圧を付与し、高画像を得る試みは種々なされているが、上述のようにいまだ充分な効果は得られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、絶縁破壊電圧が高いため、電荷リークの発生を抑制でき、その結果として高画質が得られる電子写真現像剤用フェライトキャリア及びその製造方法、並びに該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、高絶縁破壊電圧を得るためには、電気的な抵抗を上げることと表面の凹凸を低減させることが望ましいことを見出した。そして、電気的抵抗を上げるためには、ジルコニウムを一定量含有させ、かつ均一に分散させることが望ましいことを知見し、また表面の凹凸を低減するためには、ジルコニウム含有量の上限を規定すること、及び製造工程においてスラリー粒径を制御することが有効であることを知見したものである。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0010】
すなわち、本発明(1)は、ジルコニウムを40〜500ppm含有することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリアを提供するものである。
【0011】
また、本発明(2)は、フェライト組成が、下記式(1)で示される上記電子写真現像剤用フェライトキャリアを提供するものである。
(MnO)x(MgO)y(Fe)z …(1)
(式中、x+y+z=100mol%、x=35〜45mol%、y=5〜15mol%、z=40〜60mol%)
【0012】
また、本発明(3)は、上記(1)式中の(MnO)及び/又は(MgO)の一部が、SrO、LiO、CaO、TiO、CuO、ZnO、NiOから選ばれる1種以上の酸化物で置換されている上記電子写真現像剤用フェライトキャリアを提供するものである。
【0013】
また、本発明(4)は、樹脂で表面が被覆されている上記電子写真現像剤用フェライトキャリアを提供するものである。
【0014】
また、本発明(5)は、フェライト原料を秤量、混合後、粉砕し、得られたスラリーを造粒、乾燥し、焼成を行う電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法において、焼成後のジルコニウム含有量が40〜500ppmとなるようにジルコニウム原料を添加することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明(6)は、上記ジルコニウム原料がフェライト原料と共に添加される上記電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明(7)は、上記粉砕にジルコニアビーズを含むビーズを用い、該ジルコニアビーズの磨耗により混入するジルコニアをジルコウム原料とする上記電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明(8)は、上記スラリーにおけるスラリー粒径が下記(1)〜(3)の範囲に調整される上記電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法を提供するものである。
(1)スラリー粒径(体積平均径)のD10=0.05〜3.0μm、D50=1〜3μm、D90=2〜4μm
(2)スラリー粒径(個数平均径):D50=0.05〜3.0μm
(3)上記スラリー粒径(体積平均径)が3μm以上の粒子の存在量が40体積%以下
【0018】
また、本発明(9)は、上記フェライトキャリアとトナーとからなる電子写真現像剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電子現像剤用フェライトキャリアは、ジルコニウムを微量含有させることによって、キャリアの絶縁破壊電圧が高くなり、電荷リークの発生を抑制できる。従って、このフェライトキャリアを用いた現像剤によって、高画質が達成される。また、本発明の製造方法によって、上記フェライトキャリアが工業的規模で生産性をもって得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0021】
<本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリア>
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリアは、ジルコニウムを含有する。その含有量は40〜500ppm、好ましくは50〜150ppmである。このようにジルコニウムを微量含有することによって、高い絶縁破壊電圧が得られ、電荷リークの発生が抑制される。ジルコニウムの含有量が40ppm未満では含有効果がなく、500ppmを超えると、粒界の成長が抑制され過ぎるため表面の凹凸が激しくなり、結果として凸部からの電荷リークが発生しやすくなる。なお、フェライトは、原料又はその製造工程においてジルコニウムを随伴不純物として含むが、その含有量は通常40ppm未満である。
【0022】
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリアは、ジルコニウムを上記範囲で含有していればその組成は特に限定されないが、好ましくは下記式(1)の組成を有するものである。
(MnO)x(MgO)y(Fe)z …(1)
(式中、x+y+z=100mol%、x=35〜45mol%、y=5〜15mol%、z=40〜60mol%)
【0023】
また、上記(1)式中の(MnO)及び/又は(MgO)の一部を、SrO、LiO、CaO、TiO、CuO、ZnO、NiOから選ばれる1種類以上の酸化物で置換してもよい。
【0024】
このような特定組成のフェライトは、磁化が高く、磁化の均一性がよく(磁化のばらつきが少なく)、しかもジルコニウムの分散性が良好であるため、本発明において好ましく用いられる。
【0025】
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリアは、耐久性を上げ、安定した画像特性を長期に渡って得ることを目的として、上記フェライト(キャリア芯材)の表面に樹脂被覆を施すことが好ましい。被覆樹脂としては、従来から知られている各種の樹脂を用いることが可能である。例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、シリコーン樹脂、あるいはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0026】
樹脂の被覆量は、キャリア芯材に対して0.01〜10.0重量%が好ましく、0.3〜7.0重量%がさらに好ましい。最も好ましくは0.5〜5.0重量%である。被覆量が0.01重量%未満ではキャリア表面に均一な被覆層を形成することが難しく、また10.0重量%を超えるとキャリア同士の凝集が発生してしまい、歩留まり低下等の生産性の低下と共に、実機内での流動性あるいは帯電量等の現像剤特性変動の原因となる。
【0027】
被覆された樹脂皮膜は現像機内の撹拌やドクターブレードへの衝突により大きなストレスを受けるため、剥離、摩耗し易い。またトナーがキャリア表面に付着するスペント現象も起こり易い。これらの問題点を解決し、長期にわたって安定した現像剤特性を保つためには、耐摩耗性、耐剥離性、耐スペント性が良好である、下記式(I)及び/又は(II)を含む樹脂であることが好ましい。また、これらを含むことにより撥水性に対しても効果を有する。
【0028】
【化1】

【0029】
上記式(I)及び/又は(II)を含む樹脂の例としては、上記したようなストレートシリコーン樹脂、有機変性シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0030】
また、上記被覆樹脂中には、帯電制御剤としてシランカップリング剤を含有することができる。これは被覆によって芯材露出面積を比較的小さくなるように制御した場合、帯電能力が低下することがあるが、各種シランカップリング剤を添加することにより、コントロールできるためである。使用できるカップリング剤の種類は特に限定されないが、負極性トナーの場合はアミノシランカップリング剤が、正極性トナーの場合はフッ素系シランカップリング剤が好ましい。
【0031】
また、上記被覆樹脂中には、導電性微粒子を添加することができる。これは被覆によって樹脂のコーティング量が比較的多くなるように制御した場合、絶対的な抵抗が高くなりすぎて現像能力が低下することがあるためである。しかし導電性微粒子はそれ自身の持つ抵抗が被覆樹脂や芯材としてのフェライトに比べ低抵抗であるため、添加量が多すぎると急激な電荷リークを引き起こすため、添加量としては、被覆樹脂の固形分に対し0.25〜20.0重量%であり、好ましくは0.5〜15.0重量%、特に好ましくは1.0〜10.0重量%である。導電性微粒子としては、導電性カーボンや酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、各種の有機系導電剤等の酸化物が挙げられる。
【0032】
本発明に係る電子写真用現像剤用フェライトキャリアの平均粒径は、好ましくは20〜100μmであり、さらに好ましくは25〜70μmである。平均粒径が20μm未満であると、キャリア付着が発生しやすくなり、白斑の原因となる。また、100μmを超えると、画質が粗くなり、所望の解像度が得られにくくなる。
【0033】
この平均粒径の測定は、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用いて測定される。
【0034】
また、本発明に係るキャリア芯材の抵抗は、好ましくは1×10〜1×1010Ωであり、さらに好ましくは1×10〜1×10Ωである。キャリア芯材の抵抗が1×10Ωであると、電荷リークが発生しやすくなり、白斑の原因となる。また、キャリア芯材の抵抗が1×1010Ωを超えると、高抵抗になりすぎるため、現像能力が低下する等の不具合が発生し易くなる。一方、樹脂被覆後の抵抗は、1×10〜1×1013Ωであり、好ましくは1×10〜1×1012である。樹脂被覆後の抵抗が1×10Ω未満であると、電荷リークが発生しやすくなり、白斑の原因となる。また、樹脂被覆後の抵抗が1×1013Ωを超えると、高抵抗になりすぎるため、現像能力が低下する等の不具合が発生し易くなる。
【0035】
これらキャリア芯材及び樹脂被覆後の抵抗の測定は、図1に示すような測定冶具を用いて行われる。同図において、1はキャリア(試料)、2は磁石、3は電極、4は絶縁物(フッ素樹脂板)をそれぞれ示す。すなわち、電極間間隔6.5mmの、平行平板電極(面積10×40mm)に試料40mgを秤量し挿入する。次いで磁石(表面磁束密度:1500ガウス、対向する部分の磁石の面積:10×30mm)をN極とS極を対向させ平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、東亜電波工業株式会社製SM−8210を用いて測定した。
【0036】
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリアの比表面積は、好ましくは0.05〜0.2m/g、さらに好ましくは0.06〜0.15m/gである。比表面積が0.05m/g未満であると画質が粗くなり、所望の解像度を得られにくく、0.2m/gを超えると流動性が悪くなるためか、画質が悪くなる。
【0037】
この比表面積の測定は、自動比表面積測定装置 GEMINI2360」(島津製作所社製)を用いて、吸着ガスであるNを吸着させてなされる。
【0038】
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリアの形状係数(SF−2)は、好ましくは100〜125、さらに好ましくは100〜115である。形状係数(SF−2)が125を超えると、キャリア表面の凹凸が激しく、凸部からの電荷リークが発生しやすくなり、白斑の原因となったり、解像度が劣化しやすくなる。
【0039】
この形状係数(SF−2)は、以下の式によって計算される。
形状係数(SF−2)=L/S/4π×100
(L:投影周囲長、S:投影面積)
形状係数SF−2は、走査型電子顕微鏡を用いてキャリア粒子を撮影し、その画像を画像解析ソフトImage−Pro Plus、Media Cybernetics社製)を用い解析した。また、これらの形状係数は、1粒子毎に算出し、50粒子の平均値を、そのキャリアの形状係数とした。ここで形状係数100は真円を示す。
【0040】
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリアの磁化は、好ましくは40〜100emu/g(Am/kg)、さらに好ましくは50emu/g(Am/kg)である。磁化が40emu/g(Am/kg)未満であると、キャリア付着が発生しやすくなり、白斑の原因となる。磁化が100emu/g(Am/kg)を超えると磁気ブラシの穂が硬くなるためか、画質が粗くなり、所望の解像度が得られにくくなる。
【0041】
この磁化の測定は、積分型B−HトレーサーBHU−60型((株)理研電子製)を使用して測定した。電磁石間に磁場測定用Hコイルおよび磁化測定用4πIコイルを入れる。この場合、試料は4πHコイルに入れる。電磁石の電流を変化させ磁場Hを変化させたHコイルおよび4πIコイルの出力をそれぞれ積分し、H出力をX軸に、4πIコイルの出力をY軸に、ヒステリシスループを記録紙に描く。ここで測定条件としては、試料充填量:約1g、試料充填セル:内径7mmφ±0.02mm、高さ10mm±0.4πIコイル:巻数30回にて測定した。
【0042】
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリアの見掛け密度は、好ましくは2.0〜2.5g/cm、さらに好ましくは2.1〜2.4g/cmである。見掛け密度が2.0g/cm未満であると、流動性が悪くなるため、画質が悪くなる。見掛け密度が2.5g/cmを超えると、磁気ブラシの穂が硬くなるためか、画質が粗くなり、所望の解像度が得られにくくなる。
【0043】
この見掛け密度の測定は、JIS−Z2504(金属粉の見掛密度試験法)に従って測定される。
【0044】
<本発明に係る現像剤用フェライトキャリアの製造方法>
次に、本発明に係る現像剤用フェライトキャリアの製造方法について説明する。
先ず、所定組成となるように、フェライト原料を適量秤量した後、ボールミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1〜20時間粉砕、混合する。このようにして得られた粉砕物を加圧成型器等によりペレット化した後、700〜1200℃の温度で仮焼成する。加圧成型器を使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化しても良い。また見掛け密度を下げたい場合は仮焼成の工程は省いてもよい。
【0045】
仮焼成後、さらにボールミル又は振動ミル等で粉砕した後、水及び必要に応じ分散剤、バインダー等を添加し、粘度調整後、造粒し、酸素濃度を制御し、1000〜1500℃の温度で1〜24時間保持し、本焼成を行う。仮焼後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕してもよい。
【0046】
本発明に係る製造方法では、焼成(本焼成)後のジルコニウム含有量が40〜500ppmとなるようにジルコニウム原料を添加する。
【0047】
ジルコニウム原料の添加は、フェライト原料と同時に添加するのが一般的である。このようなフェライト原料として酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0048】
また、上記粉砕において使用されるボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、ジルコニウムを効果的かつ均一にフェライトに分散させるためには、使用するメディアにジルコニアビーズを含むビーズを使用することが望ましい。
【0049】
これにより、上記のように予めジルコニウム原料を添加した場合にも、均一に分散できるし、予めジルコニウム原料を添加しない場合にも、これらのジルコニアビーズの摩耗により、微粒化した酸化ジルコニウムをフェライト組成物中に均一に分散させることができる。このようにジルコニアビーズの摩耗により酸化ジルコニウムを含有させる場合は、使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、その含有量をコントロールすることができる。
【0050】
本発明に係る製造方法では、得られたスラリーにおけるスラリー粒径が下記(1)〜(3)の範囲に調整されることが望ましい。
(1)スラリー粒径(体積平均径)のD10=0.05〜3μm、好ましくは0.05〜2μm、D50=1〜3μm、好ましくは1〜2.5μm、D90=2〜4μm、好ましくは2〜3.5μm
(2)スラリー粒径(個数平均径):D50=0.05〜3.0μm、好ましくは0.05〜2μm
(3)上記スラリー粒径(体積平均径)が3μm以上の粒子の存在量が40体積%以下、好ましくは35体積%以下
【0051】

上述のようなスラリー粒径にするためには、前述のような粉砕機で適度な時間、粉砕することによって達成できる。このような粉砕工程において、メディアを使用する場合は、各種のメディアやビーズが使用できる。粉砕機、粉砕するものの固さや粒径及び粉砕後の目標粒径等によって異なり、適宜、選択される。また、湿式ボールミル等で粉砕した後、高速剪断力を持つ粉砕機にて、さらに微粉砕することによって、上述のスラリー粒径を達成することもできる。このような微粉砕機としては、特に限定されるものではないが、例えば、高速回転式粉砕機、攪拌槽型媒体攪拌式粉砕機、流通管型媒体攪拌式粉砕機等が挙げられる。また、媒体攪拌式の粉砕機に使用する媒体としては、前述のような各種のメディアやビーズが使用できる。粉砕機、粉砕するものの固さや粒径及び粉砕後の目標粒径等によって異なるが、小粒径のビーズを使用することが好ましく、さらには0.3mm〜10mmの粒径を持つビーズを使用することが好ましい。
【0052】
このスラリー粒径は、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用いて測定される。
【0053】
上記のように、スラリー粒径をある一定の範囲に制御した上で、ジルコニウムを含有させることによって、粒成長を阻害することなく、粒子中にジルコニウムを均一に分散させることができ、ジルコニウム添加による所望の効果が得られる。
【0054】
このように本焼成して得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法等を用いて所望の粒径に粒度調整する。
【0055】
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化被膜処理を施し、電気抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば、300〜700℃で熱処理を行う。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm〜5μmであることが好ましい。0.1nm未満であると、酸化被膜層の効果が小さく、5μmを超えると、磁化が低下したり、高抵抗になりすぎるため、現像能力が低下する等の不具合が発生しや易くなる。また、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行ってもよい。
【0056】
また、上記フェライト(キャリア芯材)に、上述したような被覆樹脂を被覆する方法としては、公知の方法、例えば刷毛塗り法、乾式法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリドライ方式、万能攪拌機による液浸乾燥法等により被覆することができる。被覆率を向上させるためには、流動床による方法が好ましい。
【0057】
樹脂をキャリア芯材に被覆後、焼き付けする場合には、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、例えば固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉でもよく、もしくはマイクロウェーブによる焼き付けでもよい。焼き付けの温度は使用する樹脂により異なるが、融点又はガラス転移点以上の温度は必要であり、熱硬化性樹脂又は縮合架橋型樹脂等では、充分硬化が進む温度まで上げる必要がある。
【0058】
<本発明に係る電子写真用現像剤>
本発明に係る電子写真用現像剤について説明する。
【0059】
本発明の現像剤を構成するトナー粒子には、粉砕法によって製造される粉砕トナー粒子と、重合法により製造される重合トナー粒子とがある。本発明ではいずれの方法により得られたトナー粒子を使用することができる。
【0060】
粉砕トナー粒子は、例えば、結着樹脂、荷電制御剤、着色剤をヘンシェルミキサー等の混合機で充分に混合し、次いで、二軸押出機等で溶融混練し、冷却後、粉砕、分級し、外添剤を添加後、ミキサー等で混合することにより得ることができる。
【0061】
粉砕トナー粒子を構成する結着樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、さらにはロジン変性マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらは単独または混合して用いられる。
【0062】
荷電制御剤としては、任意のものを用いることができる。例えば正荷電性トナー用としては、ニグロシン系染料および4級アンモニウム塩等を挙げることができ、また、負荷電性トナー用としては、含金属モノアゾ染料等を挙げることができる。
【0063】
着色剤(色剤)としては、従来より知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー、フタロシアニングリーン等を使用することができる。その他、トナーの流動性、耐凝集性向上のためのシリカ粉体、チタニア等のような外添剤をトナー粒子に応じて加えることができる。
【0064】
重合トナー粒子は、懸濁重合法、乳化重合法、乳化凝集法、エステル伸長重合法、相転乳化法といった公知の方法で製造されるトナー粒子である。このような重合法トナー粒子は、例えば、界面活性剤を用いて着色剤を水中に分散させた着色分散液と、重合性単量体、界面活性剤及び重合開始剤を水性媒体中で混合攪拌し、重合性単量体を水性媒体中に乳化分散させて、攪拌、混合しながら重合させた後、塩析剤を加えて重合体粒子を塩析させる。塩析によって得られた粒子を、濾過、洗浄、乾燥させることにより、重合トナー粒子を得ることができる。その後、必要により乾燥されたトナー粒子に外添剤を添加する。
【0065】
さらに、この重合トナー粒子を製造するに際しては、重合性単量体、界面活性剤、重合開始剤、着色剤以外に、定着性改良剤、帯電制御剤を配合することができ、これらにより得られた重合トナー粒子の諸特性を制御、改善することができる。また、水性媒体への重合性単量体の分散性を改善するとともに、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。
【0066】
上記重合トナー粒子の製造に使用される重合性単量体に特に限定はないが、例えば、スチレン及びその誘導体、エチレン、プロピレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエステル及びメタクリル酸ジエチルアミノエステル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類等を挙げることができる。
【0067】
上記重合トナー粒子の調製の際に使用される着色剤(色材)としては、従来から知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー及びフタロシアニングリーン等を使用することができる。また、これらの着色剤はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等を用いてその表面が改質されていてもよい。
【0068】
上記重合トナー粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を使用することができる。
【0069】
ここで、アニオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン、脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等を挙げることができる。さらに、カチオン系界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩、アルキルアミノ酸等を挙げることができる。
【0070】
上記のような界面活性剤は、重合性単量体に対して、通常は0.01〜10重量%の範囲内の量で使用することができる。このような界面活性剤の使用量は、単量体の分散安定性に影響を与えるとともに、得られた重合トナー粒子の環境依存性にも影響を及ぼすことから、単量体の分散安定性が確保され、かつ重合トナー粒子の環境依存性に過度の影響を及ぼしにくい上記範囲内の量で使用することが好ましい。
【0071】
重合トナー粒子の製造には、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤には、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とがあり、本発明ではいずれをも使用することができる。本発明で使用することができる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、水溶性パーオキサイド化合物を挙げることができ、また、油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、油溶性パーオキサイド化合物を挙げることができる。
【0072】
また、本発明において連鎖移動剤を使用する場合には、この連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四臭化炭素等を挙げることができる。
【0073】
さらに、本発明で使用する重合トナー粒子が、定着性改善剤を含む場合、この定着性改良剤としては、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックス等を使用することができる。
【0074】
また、本発明で使用する重合トナー粒子が、帯電制御剤を含有する場合、使用する帯電制御剤に特に制限はなく、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等を使用することができる。
【0075】
また、重合トナー粒子の流動性向上等のために使用される外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素微粒子、アクリル微粒子等を挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0076】
さらに、水性媒体から重合粒子を分離するために使用される塩析剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の金属塩を挙げることができる。
【0077】
上記のようにして製造されたトナー粒子の平均粒径は、2〜15μm、好ましくは3〜10μmの範囲内にあり、重合トナー粒子の方が粉砕トナー粒子よりも、粒子の均一性が高い。トナー粒子が2μmよりも小さくなると、帯電能力が低下しカブリやトナー飛散を引き起こし易く、15μmを超えると、画質が劣化する原因となる。
【0078】
上記のように製造されたキャリアとトナーとを混合し、電子写真用現像剤を得ることができる。キャリアとトナーの混合比、即ちトナー濃度は、3〜15%に設定することが好ましい。3%未満であると所望の画像濃度が得にくく、15%を超えると、トナー飛散やかぶりが発生し易くなる。
【0079】
上記のように混合された現像剤は、有機光導電体層を有する潜像保持体に形成されている静電潜像を、バイアス電界を付与しながら、トナー及びキャリアを有する二成分現像剤の磁気ブラシによって反転現像する現像方式を用いたデジタル方式のコピー機、プリンター、FAX、印刷機等に使用することができる。また、磁気ブラシから静電潜像側に現像バイアスを印加する際に、DCバイアスにACバイアスを重畳する方法である交番電界を用いるフルカラー機等にも適用可能である。
【0080】
以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0081】
MnO:35mol%、MgO:14mol%、Fe:50mol%、SrO:1mol%になるように各フェライト原料を秤量、混合したもの100重量部に対して、焼成後にジルコニウム含有量が400ppm程度になるように酸化ジルコニウムを適量添加し、乾式振動ミルで3時間粉砕、混合し、加圧成型機にてペレット化する。その後、950℃で1時間保持し仮焼成を行った。これを湿式ボールミルで5時間粉砕した。湿式ボールミルのメディアは、約3mm(1/8インチ)径のステンレスビーズを用いた。得られたスラリーのスラリー粒径は表1に示す通りであった。
【0082】
このスラリーに分散剤及びバインダーを適量添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1250℃、酸素濃度1.5%で4時間保持し、本焼成を行なった。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、フェライト粒子の芯材を得た。
【0083】
これらフェライト粒子を芯材とし、シリコーン系樹脂(商品名:SR−2411、固形分20重量%、東レ・ダウコーニング社製)とγ−アミノプロピルトリエトキシシランを樹脂固形分に対して2重量%を秤量しトルエンに溶解させ、流動床コート装置を用いてキャリア芯材に対して0.5重量%をコーティングし、さらに250℃で3時間焼き付けを行い、上記樹脂によって被覆されたフェライトキャリアを得た。
【0084】
得られたキャリアの平均粒径は35.2μmであり、ジルコニウムの含有率は380ppmであった。このキャリアの各種特性及び物性(抵抗、比表面積、形状係数、磁化、見掛け密度)を表2に示す。なお、表1及び2に示される各種特性及び物性の測定方法は、上述した通りである。
【実施例2】
【0085】
MnO:39mol%、MgO:10mol%、Fe:50mol%、SrO:1mol%になるように各原料を秤量、混合、乾式振動ミルで3時間粉砕、混合し、加圧成型機にてペレット化する。その後、950℃で1時間保持し仮焼成を行った。これを湿式ボールミルで2時間粉砕した。湿式ボールミルのメディアは、約3mm(1/8インチ)径のステンレスビーズを使用した。次いで、流通管型媒体攪拌式粉砕機で粉砕を行った。この粉砕に際しては、メディアとして0.65mmのジルコニアビーズを用いた。得られたスラリーのスラリー粒径は表1に示す通りであった。
【0086】
このスラリーに分散剤及びバインダーを適量添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1250℃、酸素濃度1.5%で4時間保持し、本焼成を行なった。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、フェライト粒子の芯材を得た。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、フェライト粒子の芯材を得た。その後、実施例1と同様に、樹脂コーティングを行い樹脂被覆フェライトキャリアを得た。
【0087】
このキャリアの各種特性及び物性(Zr含有量、平均粒径、抵抗、比表面積、形状係数、磁化、見掛け密度)を表2に示す。
【実施例3】
【0088】
MnO:39mol%、MgO:10mol%、Fe:50mol%、SrO:1mol%になるように各原料を秤量、混合、乾式振動ミルで3時間粉砕、混合し、加圧成型機にてペレット化する。その後、950℃で1時間保持し仮焼成を行った。これを湿式ボールミルで2時間粉砕した。湿式ボールミルのメディアは、約3mm(1/8インチ)径のステンレスビーズを使用した。次いで、攪拌槽型媒体攪拌式粉砕機で2時間粉砕を行った。この粉砕に際しては、メディアとして0.65mmのジルコニアビーズを用いた。得られたスラリーのスラリー粒径は表1に示す通りであった。
【0089】
このスラリーに分散剤及びバインダーを適量添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1250℃、酸素濃度1.5%で4時間保持し、本焼成を行なった。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、フェライト粒子の芯材を得た。その後、実施例1と同様に、樹脂コーティングを行い樹脂被覆フェライトキャリアを得た。
【0090】
このキャリアの各種特性及び物性(Zr含有量、平均粒径、抵抗、比表面積、形状係数、磁化、見掛け密度)を表2に示す。
【比較例】
【0091】
(比較例1)
MnO:20mol%、Fe:80mol%になるように各原料を秤量、混合し、乾式振動ミルで3時間粉砕、混合し、加圧成型機にてペレット化する。その後、950℃で1時間保持し仮焼成を行った。これを湿式ボールミルで2時間粉砕した。湿式ボールミルのメディアは、約3mm(1/8インチ)径のステンレスビーズを用いた。得られたスラリーの粒径は表1に示す通りであった。
【0092】
このスラリーに分散剤及びバインダーを適量添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1290℃、酸素濃度0.1%で4時間保持し、本焼成を行った。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整した。その後重力選鉱により低磁力品を分別し、フェライト粒子の芯材を得た。その後、実施例1と同様に、樹脂コーティングを行い樹脂被覆フェライトキャリアを得た。
【0093】
このキャリアの各種特性及び物性(Zr含有量、平均粒径、抵抗、比表面積、形状係数、磁化、見掛け密度)を表2に示す。
【0094】
(比較例2)
MnO:48mol%、MgO:2mol%、Fe:50mol% 100重量部に対してZrO:0.5重量部を乾式振動ミルで3時間粉砕、混合し、加圧成型機にてペレット化する。その後、950℃で1時間保持し仮焼成を行った。これを湿式ボールミルで2時間粉砕した。湿式ボールミルのメディアは、約3mm(1/8インチ)径のステンレスビーズを用いた。得られたスラリーの粒径は表1に示す通りであった。
【0095】
このスラリーに分散剤及びバインダーを適量添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1250℃、酸素濃度0.3%で4時間保持し、本焼成を行なった。その後、解砕し、さらに分級として粒度調整した。その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、フェライト粒子の芯材を得た。その後、実施例1と同様に、樹脂コーティングを行い樹脂被覆フェライトキャリアを得た。
【0096】
このキャリアの各種特性及び物性(Zr含有量、平均粒径、抵抗、比表面積、形状係数、磁化、見掛け密度)を表2に示す。
【0097】
(現像剤調製例)
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られたフェライトキャリアと東芝テック社製市販のFANTASIA200用トナーを用い、トナー濃度7%になるように現像剤を調製した。
【0098】
この現像剤の画像評価(白斑、解像度)を行った。その結果を表2に示す。画像評価は、東芝テック社製市販のFANTASIA200を用いて行った。その際の画像評価を以下の条件でランク付けを行った。
(白斑)
適正露光条件下で現像を行い、画像上の白斑のレベルについてランク付けを行った。
◎:A3用紙10枚中に白斑がないこと
○:A3用紙10枚中に1〜5個
△:A3用紙10枚中に6〜10個
▲:A3用紙10枚中に11〜20個
×:A3用紙10枚中に21個以上
(解像度)
適正露光条件下で現像を行い、解像度を観察し、ランク付けを行った。
◎:非常に良い
○:良い
△:使用可能レベル
▲:悪い
×:非常に悪い
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
表1及び2の結果から明らかなように、ジルコニウムを特定の範囲で含有する実施例1〜3のフェライトキャリアは、ジルコニウムを随伴不純物の範囲で含有する比較例1のフェライトキャリア、及びジルコニウムを過剰に含有する比較例2のフェライトキャリアに比して、抵抗(フェライト芯材及び樹脂被覆後)が高く、また見掛け密度が大きい。そして、現像剤を用いた画像評価においても、実施例1〜3のフェライトキャリアを用いた現像剤は、比較例1〜2のフェライトキャリアを用いた現像剤に比して、白斑及び解像度のいずれも優れており、特に実施例2のフェライトキャリアを用いた現像剤が優れている。
【0102】
表1において、実施例2は、好適な範囲にあるとされている焼結前スラリー粒径を有するものであるが、これを焼成して得られたフェライトキャリアを現像剤に用いると、良好な画像特性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る電子写真現像剤用フェライトキャリアは、高い絶縁破壊電圧を有することから、電荷リークの発生を抑制することができる。このためこのフェライトキャリアを用いた電子写真用現像剤は、高画像を得ることができることから、特に高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機の分野に広く使用可能である。また、本発明に係る製造方法によって、上記フェライトキャリアが工業的規模で生産性をもって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、抵抗測定に用いられた測定冶具の説明図である。
【符号の説明】
【0105】
1:試料(キャリア芯材、樹脂被覆キャリア)
2:磁極
3:真鍮板
4:フッ素樹脂板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウムを40〜500ppm含有することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリア。
【請求項2】
フェライト組成が、下記式(1)で示される請求項1記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア。
(MnO)x(MgO)y(Fe)z …(1)
(式中、x+y+z=100mol%、x=35〜45mol%、y=5〜15mol%、z=40〜60mol%)
【請求項3】
上記(1)式中の(MnO)及び/又は(MgO)の一部が、SrO、LiO、CaO、TiO、CuO、ZnO、NiOから選ばれる1種以上の酸化物で置換されている請求項2記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア。
【請求項4】
樹脂で表面が被覆されている請求項1、2又は3記載の電子写真現像剤用フェライトキャリア。
【請求項5】
フェライト原料を秤量、混合後、粉砕し、得られたスラリーを造粒、乾燥し、焼成を行う電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法において、焼成後のジルコニウム含有量が40〜500ppmとなるようにジルコニウム原料を添加することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法。
【請求項6】
上記ジルコニウム原料がフェライト原料と共に添加される請求項5記載の電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法。
【請求項7】
上記粉砕にジルコニアビーズを含むビーズを用い、該ジルコニアビーズの磨耗により混入するジルコニアをジルコニウム原料とする請求項5又は6記載の電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法。
【請求項8】
上記スラリーにおけるスラリー粒径が下記(1)〜(3)の範囲に調整される請求項5、6又は7記載の電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法。
(1)スラリー粒径(体積平均径)のD10=0.05〜3.0μm、D50=1〜3μm、D90=2〜4μm
(2)スラリー粒径(個数平均径):D50=0.05〜3.0μm
(3)上記スラリー粒径(体積平均径)が3μm以上の粒子の存在量が40体積%以下
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のフェライトキャリアとトナーとからなる電子写真現像剤。

【図1】
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【公開番号】特開2006−17828(P2006−17828A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193149(P2004−193149)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000231970)パウダーテック株式会社 (91)
【Fターム(参考)】