説明

電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法、キャリアリサイクル方法、キャリア芯材及びキャリア

【課題】環境影響の少ない方法でキャリアの被覆樹脂を確実に、芯材の特性を劣化させることなく除去し、芯材を再利用できるキャリアの被覆樹脂分離方法を提供することである。
【解決手段】少なくとも芯材と被覆樹脂から構成される電子写真用キャリアを、電気伝導率(25℃)1.00μS・cm以下の純水又は超純水を超臨界状態とした超臨界水で処理することによって前記キャリアから前記被覆樹脂を分離する方法であって、前記処理時に、前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段により、流動或いは/及び移動させて、キャリアから被覆樹脂を分離し、次いで得られた芯材上の被覆樹脂残留物を、マイクロバブルまたはナノバブルを含有した水により洗浄分離することを特徴とする電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真、静電記録などに用いられる静電荷像二成分現像剤のキャリアを構成する芯材の再資源化及び再利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からキャリア粒子とトナー粒子との混合物からなるいわゆる二成分系乾式現像剤はよく知られている。この二成分系乾式現像剤(以降、単に「現像剤」ということがある)は、比較的大きな粒子表面上に微小なトナー粒子が、両粒子の摩擦により発生した磁気力により保持されており、静電潜像に近接すると静電潜像が形成する電界によるトナー粒子に対する潜像方向への吸引力が、トナー粒子とキヤリア粒子間の結合力に打ち勝って、トナー粒子が静電潜像上に吸引付着されて静電潜像が可視化されるものである。本発明が対象とする二成分系乾式現像剤に用いられるキャリアは、少なくとも磁性体粒子と樹脂から形成されている。この中には、比較的大きな磁性体の粒子表面に被覆樹脂を主成分とする層を形成した構成や、樹脂中に比較的小さな磁性体粉を均一に分散した状態の構成などが含まれる。現像剤は、現像によって消費されたトナーを補充しながら反復使用される。従って、キヤリアは長期間の使用中、常時にトナー粒子を所望する極性で、かつ充分な帯電量に摩擦帯電しなければならない。
【0003】
しかし、従来の現像剤は、粒子間の衝突、または粒子と現像機械との衝突などの機械的衝突で帯電特性が変化する傾向にある。例えば、キャリア表面の割れ、欠け、剥がれなどによる表面状態の変化が起こる場合や、摩擦作用による発熱でキヤリア表面上にトナー膜が形成され、いわゆるスぺント化が生ずる場合がある。このような場合、キャリアの帯電特性が使用時間と共に低下し、現像剤全体を取り替える必要が生じる。このようなキャリアの帯電特性の劣化に対し、様々な改良が提案されてきた。例えば、キャリア表面の割れ、欠け、剥がれというような機械的な強度を増すためには、被覆樹脂の改良や磁性体表面と被覆樹脂の接着性が改良されてきた。
【0004】
被覆樹脂としては様々な樹脂が提案されているが、特に機械的な強度を増すことができる架橋性の樹脂の提案が多い。一般的には、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂などが使用され、様々な架橋系や添加剤とともに用いられている。例えば、特許文献1では、ポリカルボジイミド樹脂を含む樹脂を架橋する方法、特許文献2、特許文献3では、特定の物性や構造を持つアクリル系樹脂を架橋する方法、特許文献4では、被覆樹脂をウレタン結合及び尿素結合からなる複合架橋構造を持たせる方法、特許文献5では、特定のシランカップリング剤を用いたシリコーン樹脂を用いる方法、特許文献6では被覆樹脂としてアルコール性水酸基を有する樹脂をフェノール系水酸基を持つ化合物で架橋する方法などが提案されている。また、この他にも芯材となる磁性体の表面に直接樹脂を重合する方法なども提案されている。例えば、特許文献7では、芯材表面に被覆樹脂を界面重合する方法、更にこれを架橋する方法なども提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの提案はいずれも機械的な強度や熱ストレスに対する安定性を改良していったものであるため、一般には芯材と被覆樹脂の分離は困難である。
更にスペント化を防止するために、キャリア表面に様々な樹脂を被覆する方法が提案されている。例えば、特許文献8では、被覆するシリコーン樹脂の硬化度合いを規定しており、より高い硬化度合いを提案している。
以上のように、本発明が対象とする二成分系乾式現像剤に用いられるキャリアの多くは、機械的な強度向上やスペント化防止のために被覆樹脂として架橋樹脂が用いられ、その被覆状態は芯材に対して非常に強固なものとなっている。
従来はこのような劣化した現像剤は回収・廃棄されていたが、近来、産業廃棄物による環境破壊が問題になっており、現像剤の再利用も課題の一つとなっている。この現像剤の再生に関しては、キャリア表面にスペント化したトナーを除去し性能を回復させる方法と、キャリアの被覆樹脂まで剥離して芯材を得て、被覆樹脂を再度設けて性能を回復する方法が提案されている。
【0006】
前者の例としては、特許文献9があり、キャリア表面にスペント化したトナーを加熱や溶剤洗浄などにより除去し、芯材をリサイクルする方法を提案している。この方法は、芯材に被覆された樹脂はそのままでリサイクルしようとする方法である。かかる方法によれば、主としてスペント化して特性が劣化したキャリアをリサイクルすることができる。
しかしながら、特性の劣化がスペント化だけではなくキャリア被覆樹脂の割れや、欠け、剥がれの場合は、スペント化したトナーを除去するだけでは特性は回復せず再利用ができない。また、上記公報記載の技術でも除去の困難なスペント化したトナーもあり、より強力な除去方法が求められている。更に溶剤で洗浄する場合はこの溶剤自体の後処理を考慮するとより環境影響の少ない方法が求められている。
【0007】
キャリアの被覆樹脂を剥離して芯材をリサイクルする方法としては、特許文献10が提案されている。この提案は、回収した現像剤を華氏1000度程度の高温で加熱し再生する方法であり、アクリル系樹脂のような熱可塑性樹脂をコーテイングしたキヤリアでは、このような熱処理により被覆樹脂も除去することが可能で、特性の劣化がスペント化だけではなくキャリア被覆樹脂の割れや、欠け、剥がれの場合でも、再使用する際に再度コーテイングをすることにより芯材を再利用することが可能である。
しかしながら、金属亜酸化物で所要の磁気特性を付与されたフェライト系キヤリアを芯材として用い、これを上記従来技術によって再生した場合、当初の芯材特性が元に戻らないという欠点があった。また、この高温加熱による再生方法が、熱を再利用する方法であれば環境影響を多少改善できるが、キャリアを構成する物質の中で燃焼熱を発生する樹脂などの可燃物が少ないため、効率的なサーマルリサイクルは期待できない。
【0008】
さらに、上記公報記載の技術を、キャリアの被覆樹脂に熱硬化性樹脂を用いた系に適用した場合においても、芯材からの被覆樹脂の剥離が十分に行なえないという欠点があることを本発明者等は確認した。また、さらに本発明者等は、被覆樹脂または該処理による生成物が芯材に付着したままであると、その再生した芯材に再度樹脂を被覆したものをキャリアとして用いた場合と、非再生の新規な芯材に樹脂を被覆したものをキャリアとして用いた場合とを、現像剤としての性能の観点から比較すると、明らかに前者の方が劣り、この性能の差は被覆樹脂が十分に剥離しているほど小さいことを検証した。
したがって、前者が後者と同等の性能を発揮するためには、再生芯材に残留樹脂が少ないほど、すなわち被覆剥離の度合いは高いことが望ましい。
以上のような理由から、従来の二成分系現像剤キャリアに関し、被覆樹脂と磁性体とを分離する方法及びリサイクル方法は、環境に対する影響が少ない被覆樹脂を確実に除去できず、しかも芯材の特性を劣化させてしまうため、実用上満足できるものではない。
【0009】
すなわち、化学的かつ機械的に堅牢なキャリアの被覆樹脂を除去するための条件と、所望の磁気特性を付与された磁性体の性能を損なわない条件を両立させることは、従来技術では達成し得なかったものである。特に、金属亜酸化物の所定結晶の粒子と被覆樹脂からなる粒状磁性材料に適用して、酸化物への酸化や逆の還元を伴わず、かつ結晶状態を乱さず、したがって磁気特性を劣化させずに磁気材料粒子体を回収することに関する従来技術は皆無である。
すなわち、キャリアの芯材として用いられる磁性体は、特定の結晶構造を有する亜酸化物であるため、リサイクル処理工程で、酸化などの化学変化や結晶構造に変化を生じることは避けなければならない。超臨界又は亜臨界状態の水中での樹脂の分解が、特許文献11に提案されている。これによれば、多くの樹脂が加水分解又は熱分解を受け、モノマー単位まで分解できることが示されている。また、特許文献12では、特に熱硬化性樹脂の超臨界又は亜臨界状態の水中での分解方法が示されている。特許文献13では、特に塩素含有プラスチック廃棄物の処理方法が示されている。これらは、主として大量の樹脂廃棄物をモノマー化し、無害化すると共に原材料化することを目的に行なわれ、その目的対象物に適した条件などを提案している。一方、特許文献14や特許文献15では、樹脂の分解条件を亜臨界条件に規定し、使用流体を過酸化水素水に規定した提案をしている。この方法では、特定の樹脂被膜はある程度除去できるが、過酸化水素水により酸化作用が進み金属亜酸化物の所定結晶の粒子からなる粒状磁性材料の特性が大きく損なわれる。特に、過酸化水素水による影響で粒状磁性材料の特性である抵抗が未使用芯材より高抵抗化したり、磁気特性変化(低下)があり、リサイクル化には適さない。
【0010】
上記のように多くの樹脂が超臨界条件または亜臨界条件で分解することが確認されているが、全ての樹脂が分解するわけではない。非特許文献1では、いくつかの熱硬化性樹脂の分解について研究結果を報告している。例えば、熱硬化性樹脂の一種であるフェノール樹脂は、超臨界水で処理しても分解率が低く、いわゆるチャー化が起こっていることを報告している。また、その他の樹脂についても分解に適切な条件範囲があることを示唆している。さらに、特許文献16、および特許文献17では、特に船の構造材などに用いられる繊維強化プラスチックなどの樹脂と他の物質の複合材料を対象物質として、その処理方法を条件と共に提案している。これらは、特定の目的対象物に対して、その形態や利用目的に応じて処理条件や処理のプロセスを提案しているものである。しかしながら、これらの公報は、樹脂と繊維などの芯材との分離を目的としたもので、芯材のリサイクルに関連した特性変化などについては言及していない。特に金属亜酸化物の所定結晶の粒子と被覆樹脂からなる粒状磁性材料に適用して、酸化物への酸化や逆の還元を伴わず、かつ結晶状態を乱さず、したがって、磁気特性を劣化させずに磁気材料粒子体を回収するためのものであることは示されていない。さらに、電子写真用キャリアに用いられている芯材には、一定の粒子径範囲を持ち、球形に近づくように高度に形状制御した磁性体が用いられており、これらが、超臨界水または亜臨界水によりどのような変化が起こるかについては、まったく示されていない。
【0011】
超臨界水または亜臨界水は、前記のように被処理物の処理に有効であるが、経済性を考慮した処理条件の設定も重要である。特に被処理物に対して使用する水の量が多い場合、熱エネルギーコストが処理費に与える影響は大きい。反面、被処理物の有効な変化にはある程度の水の量が必要である。具体的には、現像剤キャリアに被覆された樹脂が十分に剥離する水の量が必要である。したがって、被処理物単位重量あたりに要する水の量は、多ければ多いほど確実に被覆を除去できる反面、処理費用はかさむことになり、これらを両立する適当な条件設定が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の第一の目的は、電子写真用二成分現像剤のキャリアにおいて、芯材である磁性体を強固に被覆した樹脂を該磁性体から分離し、かつ分離後も芯材の諸特性に影響しないで、再び樹脂を被覆してもキャリアとして十分な性能をもたらすことができる、キャリアの被覆樹脂と芯材である磁性体の分離方法、及びリサイクル方法を提供するものである。すなわち、環境影響の少ない方法で被覆樹脂を確実に除去し、芯材の特性を劣化させない芯材を再利用できる樹脂との改良された分離手段、及びリサイクル方法を提供することである。
また、本発明の第二の目的は、環境影響の少ない方法でキャリアの被覆樹脂を確実に除去し、かつ経済的な処理条件を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、前記目的を達成のために鋭意検討を重ねた結果、思いがけずも、容器内において、少なくとも芯材と被覆樹脂から構成される電子写真用キャリアを、電気伝導率(25℃)1.00μS・cm以下の純水又は超純水を超臨界状態とした超臨界水で処理して前記芯材から前記被覆樹脂を分離するに際し、容器内において前記キャリアと該超臨界水を流動或いは/及び移動させて、キャリアから被覆樹脂を分離し、次いで得られた芯材上の被覆樹脂残留物を、マイクロバブルまたはナノバブルを含有した水により洗浄分離するという方法がこの目的を達成するのに有効であることを見出して、本発明に至った。上記目的は、本発明の(1)〜(15)によって達成される。
【0014】
(1)少なくとも芯材と被覆樹脂から構成される電子写真用キャリアを、電気伝導率(25℃)1.00μS・cm以下の純水又は超純水を超臨界状態とした超臨界水で処理することによって前記キャリアから前記被覆樹脂を分離する方法であって、前記処理時に、前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段により、流動或いは/及び移動させて、キャリアから被覆樹脂を分離し、次いで得られた芯材上の被覆樹脂残留物を、マイクロバブルまたはナノバブルを含有した水により洗浄分離することを特徴とする電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(2)前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段は、キャリアと超臨界水とを容器に収容し、該容器を運動させることによりキャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする前記(1)記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(3)前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段として、キャリアと超臨界水を収容する容器を回転させ該キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(4)前記容器の回転は5〜40rpmで連続回転、または不連続で間欠回転し、該キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする前記(3)に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(5)前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段として、キャリアと超臨界水を収容する容器をシーソー運動のような搖動運動させ該キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(6)前記容器の搖動運動は5〜30回/minで連続搖動、または不連続で間欠搖動し、搖動は水平ラインに対し上下10〜60°の範囲で運動し、該キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする前記(5)に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(7)前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段として、キャリアと超臨界水を収容する容器を振動させ該キャリアと超臨界水を振動させ流動或いは/及び移動させることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(8)前記容器の振動は、エアーバイブレーターのエアーによる、振動数が100〜6000min-1で連続振動、もしくは不連続の間欠振動であるか、または、超音波による、15〜40kHzの範囲の連続振動、もしくは不連続の間欠振動であることを特徴とする前記(7)に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(9)前記超臨界水の状態は超臨界温度が375℃以上420℃以下の範囲、かつ超臨界圧が22MPa以上35MPa以下の範囲であることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(10)前記芯材が、フェライト又はマグネタイトであることを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(11)前記キャリアと接触させた超臨界水中に含まれる被覆樹脂を構成する物質の分解物または溶解物を時間とともに分解させることを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(12)前記キャリアが、電子写真用現像剤の使用済みのキャリアまたはトナーを含有する現像剤中のキャリアであることを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
(13)前記(1)〜(12)のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法によりキャリアから前記被覆樹脂を分離し、得られた芯材を回収し洗浄・乾燥した後、この芯材に樹脂を再被覆して再使用することを特徴とするキャリアリサイクル方法。
(14)前記(1)〜(12)のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法で被覆樹脂が分離されてなることを特徴とするキャリア芯材。
(15)前記(14)に記載のキャリア芯材に樹脂が再被覆されてなることを特徴とするキャリア。
【発明の効果】
【0015】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明における上記(1)のキャリアの被覆樹脂と芯材の分離方法は、使用後の現像剤中のキャリアを超臨界水の条件下で処理し、被覆樹脂を加水分解、及び/または熱分解により芯材と分離するもので、従来の方法に比較して環境影響の少ない方法で確実に分離を行ない、より除去率の高い処理が可能なだけでなく、芯材自身も変質させないという効果がある。また、本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材の分離方法は、キャリアを超臨界水(純水or超純水)の条件下で容器内のキャリア及び超臨界溶媒を流動或いは/及び移動させる手段により流動或いは/及び移動させる事により、キャリア各粒子へ満遍なく溶媒が浸透するので、効率よく分離し、被覆樹脂を加水分解、及び/または熱分解により芯材と分離できる。これと同時またはその後、芯材を洗浄し、乾燥の後、芯材をキャリア用のリサイクルに供する方法である。被覆樹脂除去処理時は超臨界水による処理に加え、処理後の芯材の洗浄方法を本発明の方法で芯材表面に分離した付着物の再付着もなくきれいに被覆樹脂が分離できた芯材を得ることができる。この方法によれば、従来は廃棄していた芯材を再利用可能であり、地球環境保護の視点で寄与できるものである。また、処理液中から樹脂モノマーなどの有効成分を資源化することも可能であり、これも再資源化による環境保護に繋がる効果がある。本発明の被覆樹脂と芯材を分離する方法は、キャリアを処理する超臨界水の条件が温度375℃以上420℃以下、且つ22MPa以上35MPa以下であることにより、より効率的に分解またはリサイクルが可能であるという効果がある。
【0016】
また、本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、処理の対象となるキャリアが、少なくとも磁性体からなる芯材に、少なくともシリコーン樹脂を主成分とする架橋樹脂のような架橋された樹脂で被覆された構成であり、溶剤などでは溶解しにくい分離困難な被覆樹脂に対しても、従来の有効な技術がなかったが、超臨界状態の水中で処理することにより、被覆樹脂と磁性体からなる芯材を確実に分離するという効果がある。本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、処理の対象となるキャリアが少なくとも磁性体からなる芯材に熱架橋性樹脂が被覆された構成であり、燃焼などでは容易に分解しにくい被覆樹脂に対しても、超臨界状態の水中で処理することにより、被覆樹脂と磁性体を確実に分離するという効果がある。本発明に係わるキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、処理の対象となるキャリアが少なくとも磁性体からなる芯材にシリコーン樹脂が被覆された構成であり、溶剤、酸や塩基、燃焼などの様々な分離手段に対し、分離が困難なシリコーン被覆樹脂に対しても、超臨界状態の水中で処理することにより磁性体を確実に分離するという効果がある。本発明に係わるキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、処理の対象となるキャリアが少なくとも芯材としてフェライト、又はマグネタイトを用い、これに被覆樹脂が形成された構成である。フェライト又はマグネタイトは超臨界水中で比較的安定であるため、芯材自体が変質することなく分離またはリサイクル操作を行なうことができる。本発明の方法は、キャリアから被覆樹脂をより完全に分離することと、熱エネルギーを有効に利用することに効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】超臨界水によりキャリアから被覆樹脂分離処理を行う装置の一例の概略図である。
【図2】キャリアと超臨界水の流動或いは/及び移動を容器の回転により行う装置の一例の模式図である。
【図3】キャリアと超臨界水の流動或いは/及び移動を容器の搖動により行う装置の一例の模式図である。
【図4】キャリアと超臨界水の流動或いは/及び移動をエアーバイブレーターにより回転軸を振動させることにより容器を振動させて行う装置の一例の模式図である。
【図5】キャリアと超臨界水の流動或いは/及び移動を超音波により回転軸を振動させることにより容器を振動させて行う装置の一例の模式図である。
【図6】キャリアと超臨界水の流動或いは/及び移動をエアーバイブレーターにより吊り下げワイヤーを振動させることにより容器を振動させて行う装置の一例の模式図である。
【図7】キャリアと超臨界水の流動或いは/及び移動を超音波により吊り下げワイヤーを振動させることにより容器を振動させて行う装置の一例の模式図である。
【図8】芯材上の被覆樹脂残留物を、マイクロバブルまたはナノバブルを含有した水により分離する装置の一例の模式図である。
【図9】キャリアから被覆樹脂を分離した前後のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法は、少なくとも芯材と被覆樹脂から構成される電子写真用キャリアを、電気伝導率(25℃)1.00μS・cm以下の純水又は超純水を超臨界状態とした超臨界水によりキャリアから被覆樹脂を分離する方法であって、該被覆樹脂分離処理時に、該キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段により、流動或いは/及び移動させ、キャリアから被覆樹脂を分離することを特徴とする。
キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることにより、キャリア粒子間に超臨界水がまんべんなく浸透することができ、被覆樹脂をまんべんなく、分離ムラがない状態に分離できる。
キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段としては、キャリアと超臨界水を収容する容器を回転させる方法、シーソー運動のような搖動運動をさせる方法、振動させる方法等の容器の運動によりキャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段、及び容器内に攪拌手段等を設けることによりキャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段等が挙げられ、前記容器の運動によりキャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段が好ましい。
【0019】
本発明の容器回転によるキャリアと超臨界水の流動或いは/及び移動は、加熱処理時、5〜40rpmの範囲で連続回転、又は不連続で間欠回転することが好ましく、より好ましくは10〜30rpmの範囲で連続又は間欠回転することが好ましい。回転が、5rpm未満になると、容器の内容物がうまく流動/移動しきれない為、各キャリア粒子間に溶媒:超臨界水がまんべんなく浸透しないので被覆樹脂がまんべんなく分離できないので、被覆樹脂の分離むらができやすくなり好ましくない。反対に40rpmを超える回転数になると、遠心力により内容物:特にキャリアが容器内壁に引き付けられ流動せず、溶媒:超臨界水が各キャリア粒子に浸透しきれず、被覆樹脂をまんべんなく分離しきれず好ましくない。
【0020】
本発明の振動によるキャリアと超臨界水の流動或いは/及び移動は、容器を振動させる手段が用いられる。振動はエアーバイブレーターのエアーによる振動で、振動数は、100〜6,000min-1の範囲が好ましい。振動数が100min-1未満になると振動数が少ない為、加熱媒体及び容器内の内容物へ振動がうまく伝わらないのでうまく流動或いは/及び移動しきれなくなり、各キャリア粒子間に溶媒:超臨界水がまんべんなく浸透しない。その為、被覆樹脂がまんべんなく分離できない。振動数が6000min-1を超えると、振動が大きすぎ容器へのストレスが大きくなり破損したり、容器内のキャリアが激しく振動し内壁の破損を起こし問題となる。また、容器を加熱する高温媒体が激しい振動により、容器と加熱媒体とが均一に接触できない点、加熱媒体が振動により跳ねて危険であり、加熱が均一加熱ができなくなり好ましくない。振動は、加熱媒体から振動させても、容器自体を振動させてもどちらの方法でも良い。また、容器を回転させる方式との組合せでもよく、組合せの方がより分離効果が得られる。容器を回転させず振動のみで流動或いは/及び移動をさせる場合は、高温に耐えるワイヤー等で加熱媒体中に浸漬させ、ワイヤーを振動させ容器に振動を伝える方法や容器を回転させる冶具(回転シャフト)に振動を伝える方法どちらでもよい。
【0021】
エアーバイブレーター以外のキャリアを振動或いは/及び移動手段として、超音波振動も可能である。超音波による振動は、15〜40kHzの範囲が好ましく、振動はエアーバイブレーターの振動と同様に加熱媒体の振動でも、容器自体の振動のどちらの方法でもかまわない。超音波振動も振動が低いと加熱媒体からの振動伝達及び容器からの振動が小さい為、流動が起こりづらくなり好ましくない。振動が40kHzを超えると、電波法規制対象となる電磁波が発生し好ましくない。超音波の振動もエアーバイブレーターの振動伝達方法と同じ方法でよい。
【0022】
その他のキャリア流動/移動手段として、シーソーのような動きをする搖動運動でもかまわない。その場合の搖動は、5〜30回/minで連続搖動回転、または不連続で間欠搖動し、搖動は水平ラインから上下側へ10〜60°の範囲での運動が好ましい。搖動運動が10°未満になると、容器内のキャリアが流動或いは/及び移動せず、各キャリア粒子間に溶媒:超臨界水がまんべんなく浸透しない。その為、被覆樹脂がまんべんなく分離できないので、被覆樹脂の分離むらができやすくなり好ましくない。搖動運動が60°を超えると、容器回転と同様な結果がえられるが、回転数50rpmと同程度の容器運動になると、遠心力により内容物:特にキャリアが容器内壁に引き付けられ流動せず、溶媒:超臨界水が各キャリア粒子に浸透しきれず、被覆樹脂をまんべんなく分離しきれず好ましくない。また、搖動回転は、5回/minでは間欠運転に近い回転状態で内容物のゆっくりとした流動が起こり、30回/min程度の回転では芯材の表面を傷つけない限界回転域を示す。その範囲内での回転処理であれば、所望の剥離性が得られる。5回/min未満では、流動は起こるが純水等の溶媒がキャリア粒子への浸透が悪くなり、分離効果が落ちる。反対に30回/minを超えると、キャリア供回りしやすくなったり、表面が研磨されやすくなり品質劣化がおきる。
また、容器内のキャリア及び超臨界溶媒を流動或いは/及び移動させる方法として、前記方法に限定されるものではなく、流動或いは/及び移動の機能を有する方法ならば何でも良い。
【0023】
図1に本発明における超臨界処理水により被覆樹脂分離処理を行う装置の一例の概略図を示す。
本発明は、図1(A)(B)で示されるように、反応容器内へ処理しようとするキャリアと流体(純水又は超純水)を所定の量投入する。
純水又は超純水の量は、キャリアの被覆樹脂を剥離するためにはキャリア重量の1.5倍以上が好ましく、剥離性と経済性から3〜10倍の範囲がより好ましい。
反応容器上下は、内圧が変動しないようにねじ止めされ固定化する。そして、加熱容器のサンドバスの流動砂が設定温度になったら流動砂中に反応容器を所定の時間投入する。そして、純水又は長純水を超臨界水とし、キャリアと超臨界水を流動或いは移動させキャリアから被覆樹脂を分離する。加温設定時間になったら、氷等の入った冷却槽へ入れ急冷させ、常温常圧へ戻す。
【0024】
キャリアと超臨界水を流動或いは移動させる手段の模式図を図2〜図7に示す。
図2は容器を回転させキャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段の一例を示す模式図である。サンドバス中で前記反応容器を回転させる。回転させる方向は、いずれの方向であっても良く、水平方向であっても垂直方向であっても良い。
図3は容器を搖動運動させてキャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段の一例を示す模式図である。図3ではサンドバス中で前記反応容器を水平ラインに対して上下に運動させる。
図4〜図7は容器を振動させてキャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段の一例を示す模式図である。図4はエアーバイブレータにより、図5は超音波により、回転軸を振動させることにより容器を振動させる場合の例であり、上記の容器を回転させる方式と組み合わせることができる。図6はエアーバイブレータにより、図7は超音波により吊り下げワイヤーを振動させることにより、容器を振動させる場合の例である。
【0025】
被覆樹脂を分離する超臨界水に用いられる水は、電気伝導率(25℃)が1.00μS・cm以下の純水又は超純水が用いられる。電気伝導率が1.00μS・cmを超える水を使用すると、イオン等の不純物が多くなり、樹脂除去(分離)効果が弱くなるので好ましくない。水は、好ましくは電気伝導率(25℃)が0.10〜1.00μS・cmの純水、0.10μS・cm以下の超純水であり、より好ましくは電気伝導率(25℃)が0.10μS・cm以下の超純水がよい。超純水になると殆ど電気伝導率が低い為、イオン等の不純物は殆ど含まれないので超臨界処理時の芯材品質へのダメージが少ない。一般的に水の電気伝導率(25℃)は以下の様に紹介されている。
【0026】
【表1】

【0027】
すなわち、本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材の分離方法は、使用後の現像剤中のキャリアを超臨界水の条件下で分離処理し、被覆樹脂を加水分解、および/または、熱分解による作用と、溶解作用により芯材と分離するものである。また、本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、キャリアを分離処理する超臨界水の条件が温度が375℃以上420℃以下、且つ圧力22Mpa以上35MPa以下であることが好ましく、効率的な分解が可能であり、超臨界水では好ましくは380℃以上、且つ圧力25Mpa以上である。
さらにまた、本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法においては、超臨界水による分離処理が1分乃至90分間の間行なわれることが好ましい。被覆に使用されている樹脂の性質、超臨界水の温度圧力条件にもよるが、好ましくは1分乃至60分、より好ましくは5分乃至30分である。
【0028】
さらに、被覆樹脂を分離したキャリアの洗浄は、水中にマイクロバブルまたはナノバブルより微粒径の気泡を含有する水で洗浄処理する方法が好ましい。マイクロバブルまたはナノバブルより微粒径の気泡を含有する水は、電気伝導度(25℃)が10μS・cm以下の水が好ましい。好ましくは、1μS・cmのイオンを殆ど含有しない水が好ましい。電気伝導度が10μS・cmを超える水:例えば水道水のように多くのイオンを含有すると、洗浄時被覆樹脂分離後の芯材表面にイオンが付着し芯材特性を損なう。また、洗浄時にマイクロバブルまたはナノバブルの微粒気泡が含有されていると、洗浄時、芯材表面に分離した被覆樹脂成分や被覆樹脂中に含有されていたフィラー類の再付着物や芯材表面に分離しきれずに残留していた被覆樹脂分やフィラー類が前記微粒気泡の破裂時に発生する衝撃力により分離される。洗浄方法は、微粒気泡(マイクロバブルまたはナノバブル)を含む水中に浸漬させながら、超音波振動を付加させながら洗浄し、上澄み液を除去する方法や前記処理済みの芯材を含む洗浄液を吸引ろ過により除去する。洗浄は、2〜6回洗浄するが、好ましくは3〜5回がよい。洗浄回数が増すにつれて分離された被覆樹脂成分やフィラー類の残留物が減少していく。特に抵抗調整目的で使用しているフィラー類が芯材表面に残留すると、芯材の重要特性の1つである磁気特性の低下を招き好ましくない。従って洗浄は2回以上が好ましい。また、洗浄・分解物除去時、歩留低下以外の悪さとして、芯材も一部排出され、芯材粒径が変動する。芯材粒径が変動すると、再生後の現像剤の嵩密度、流動性に影響し、トナー濃度制御性、帯電量に影響してくるので好ましくない。洗浄回数が6回以上になるとこの傾向が現れ、7回以上に多くなると、その傾向がより顕著に表れてくるので好ましくない。
【0029】
マイクロバブルまたはナノバブル以下の微粒気泡を発生させる発生器から発生した気泡は、粒径が500μm以下の気泡を使用することが好ましく、粒径が100μm以下の気泡を使用することがより好ましい。気泡の平均粒径は、レーザー回折/散乱式の粒度測定装置(東日アプリケーションズ株製 LDSA3400A)にて測定する。気泡の直径は、芯材粒径が小径時はマイクロバブルよりも小さいナノバブル:1μm以下の気泡が好ましい。気泡径が小さくなると、芯材窪み部に付着した残留物もより効果的に洗浄できる。反対に気泡径が大きいと窪み部の内部に残留した付着物は効果的に洗浄できなくなる。また、洗浄時にナノバブルまたはマイクロバブル水に浸漬した被覆樹脂分離後の芯材に超音波振動の振動を与え、攪拌羽根で攪拌すると更に洗浄効果が上がる。攪拌羽根で攪拌しないと芯材に付着していた付着物が芯材近傍に浮遊し離れきれずにそのまま芯材上に残留するものもあり好ましくない。
前記以外の他方法として、例えば攪拌しながら芯材表面に機械的な摩擦を与えると、より確実に付着物を除去できる。その後、さらに超音波洗浄機などを用いてもよく限定されるものではない。
【0030】
図8にキャリアから被覆樹脂を分離して得られた芯材上の被覆樹脂残留物を、マイクロバブルまたはナノバブルを含有する水で洗浄処理する装置の一例の概略図を示す。図8の装置は、微粒気泡(マイクロバブルまたはナノバブル)を含む水中に被覆樹脂分離後の心材を浸漬させながら、超音波振動を付加させながら洗浄する。
【0031】
さらにまた、本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、処理の対象となるキャリアが少なくとも芯材としてフェライトやマグネタイトを用い、これに被覆樹脂が形成された構成であることが好ましい。フェライトは超臨界水中で安定であるため、芯材自体が変質することなく分離操作を行なうことができる。この際、超臨界水による処理が、非酸性条件下で行なわれることが好ましく、また、非酸化性かつ非還元性条件下で行なわれることが芯材の変質を防ぐ上でより好ましい。超臨界処理時に、還元作用が働いた場合は、それを補う為に微量の酸化剤を添加してもかまわない。
【0032】
また、本発明のキャリアのリサイクル方法は、キャリアを超臨界水の条件下で処理し、被覆樹脂を加水分解および/または熱分解による作用と溶解作用により芯材と分離し、これと同時またはその後芯材を分離し、これと同時またはその後芯材を洗浄し、乾燥後、芯材をキャリア用にリサイクルする方法である。芯材を回収、洗浄、乾燥する過程では、芯材を洗浄する時、マイクロバブルまたはナノバブルの微粒気泡を含有する水中に浸漬させ、吸引ろ過やタンク内で攪拌しながら超音波振動を付加する。乾燥後は粗目スクリーンを有する篩を通過させて、例えば被覆樹脂層を未だ分離していないか又は不如意の原因により所望粒径を超える大粒径の芯材を除去し、また細目スクリーンを有する篩を通過させて、例えば摩耗、衝突など何らかの原因で所望粒径未満となった小粒径の芯材を除去することができる。また、芯材を再びキャリア用芯材としてリサイクルする際に、無論バージン芯材を混合使用してもよい。さらに、処理液中から樹脂モノマー等の有効成分を資源化することも可能である。
【0033】
また、本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、被処理キャリアと接触させる超臨界水中に含まれる該キャリアを構成する物質の分解物および/または溶解物を時間とともに分解させることにより、特に被分解物が多い被処理物であるキャリアから、被覆樹脂を確実に分離し、かつ熱効率のよい処理が行なえる。
通常環境の水の比誘電率は78であり、被覆樹脂として用いるシリコーン樹脂やアクリル樹脂の比誘電率は3〜4であり、比誘電率が異なり、被覆樹脂は水には溶解しない。しかし、水は臨界点(374℃、22.1MPa)以上になると比誘電率は10以下まで下がり、被覆樹脂の比誘電率とかなり近くなる。比誘電率が近いものは互いに溶け合う。従って、キャリアを超臨界水の条件下で処理すると、キャリアの被覆樹脂が超臨界水に溶け込むようになる。樹脂単体での存在形態であれば溶け込むのは早いが、被覆樹脂は加熱処理により、芯材表面へ強固に固着(架橋して結着)しているので、溶け込みにくい。前記条件下で時間をかけていくと、芯材と被覆樹脂界面或いは樹脂中に超臨界水が浸透していき、被覆樹脂を溶解又は分解し、また、該溶解物及び/または分解物を時間とともに高分子から低分子へと分解していき、被覆樹脂を確実に分離することができる。
超臨界水中に含まれる分解物および/または溶解物が時間と共に分解している変化状態の検出方法としては、赤外吸光分析:IRやイオンクロマト分析があり、これら分析方法で定量分析することにより量変化を検出できる。
さらにまた、被処理物を処理系内に取り入れた初期において、既に処理に使用した超臨界水は熱水と被処理物を接触させることにより、熱エネルギーを有効に利用できる。さらにまた、本発明に係わるキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、容器と配管で構成される反応装置において、記載の方法と同様の効果が得られる。
【0034】
本発明が対象とするキャリアの芯材と複合形態は、比較的大きな芯材の粒子表面に被覆樹脂を主成分とする被覆層を形成した構成である。
【0035】
また、本発明が対象とするキャリアに含まれる芯材は、従来からの公知のものでよく、例えば鉄、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属、マグネタイト、へマタイト、フェライトなどの合金や前記強磁性体微粒子と樹脂との複合体等が挙げられる。これら芯材粒子の平均粒径は通常10〜1000μmである。ただし、芯材によっては超臨界水のある条件下では、酸化や加水分解を受けるため、このような環境下でより安定な芯材が好ましい。例えば、好適な対象芯材としては金属酸化物系などが挙げられる。この中で代表的なものは、フェライト、マグネタイトなどがある。ただし、超臨界状態の水で変質を受けやすい芯材であっても、被覆樹脂との関係で適切な温度、圧力、処理時間、添加物、更には適切な乾燥を加えれば、これを回避することが可能である。
【0036】
また、本発明が対象とするキャリアの被覆樹脂も従来からの公知のものでよく、被覆層を形成する樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル(例えばポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるシリコーン樹脂またはその変成品(例えばアルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等による変成品);ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニル、ポリ弗化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等の弗素樹脂;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素−ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。中でもトナースペントを防止する点で好ましいのは、シリコーン樹脂またはその変成品、弗素樹脂、特にシリコーン樹脂またはその変成品である。
【0037】
シリコーン樹脂としては、従来から知られているいずれのシリコーン樹脂であってもよく、下記式で示されるオルガノシロキサン結合のみからなるストレートシリコーンおよびアルキド、ポリエステル、エポキシ、ウレタンなどで変成したシリコーン樹脂が挙げられる。
【化1】

【0038】
上記、式中R1は水素原子、炭素原子1〜4のアルキル基またはフェニル基、R2およびR3は水素原子、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、炭素原子数2〜4のアリケニル基、炭素原子数2〜4のアルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エチレンオキシド基、グリシジル基または下記式で示される基である。
【化2】

上記、式中R4,R5はヒドロキシ基、カルボキシル基、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルケニルオキシ基、フェニル基、フェノキシ基、k,l,m,n,o,pは1以上の整数を示す。
上記、各置換基は未置換のもののほか、例えばアミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、アルキル基、フェニル基、エチレンオキサイド基、グリシジル基、ハロゲン原子のような置換基を有してもよい。
【0039】
更に、これらの樹脂は架橋剤などが加えられ、例えば熱処理などにより架橋を進められたものでもよい。このような熱架橋樹脂の被覆は、一般に溶剤や酸・塩基に不溶であり、熱処理をした場合、炭化物などが磁性体表面に付着するため、他の方法では磁性体からの確実な除去は難しいが、本発明の方法では分離が確実にできる。
【0040】
これらの中でもシリコーン樹脂を硬化させた樹脂皮膜は、多くの酸・塩基に対し安定であるばかりでなく、溶剤に不溶であり、かつ燃焼させてもなかなか除去できないものである。これらのシリコーン樹脂は従来から知られるシリコーン樹脂で良く、例えば市販品として、信越シリコーン社製のKR261、KR271、KR272、KR275、KR280、KR282、KR285、KR251、KR155、KR220、KR201、KR204、KR205、KR206、SA−4、ES−1001、ES1001N、ES1002T、KR3093や東レダウコーニング社製のSR2100、SR2101、SR2107、SR2110、SR2108、SR2109、SR2115、SR2400、SR2410、SR2411、SH805、SH806A、SH840などが挙げられる。
【0041】
本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、分離処理の対象となるキャリアが芯材に架橋された樹脂で被覆された構成であり、溶剤などでは溶解しにくい被覆樹脂に対しても、超臨界状態の水中で分離処理することにより、被覆樹脂と芯材を確実に分離する方法である。さらにまた、本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、処理の対象となるキャリアが少なくとも磁性体からなる芯材に熱架橋性樹脂で被覆された構成であり、燃焼などでは容易に分解しにくい被覆樹脂に対しても、超臨界状態の水中で処理することにより、被覆樹脂と磁性体を確実に分離する方法である。
さらにまた、本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法は、処理の対象となるキャリアが少なくとも磁性体からなる芯材に少なくともシリコーン樹脂を主成分とした樹脂で構成された樹脂膜が被覆された構成であり、溶剤、酸や塩基、燃焼などのさまざまな分離手段に対し分離が困難なシリコーン被覆樹脂に対しても、超臨界状態の水で処理することにより磁性体を確実に分離する方法である。
【0042】
本発明で用いられるキャリアは、被覆樹脂中にフィラーを分散していてもよい。使用するフィラーは、従来より公知のものでよく、例えばポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末の如き研磨剤;例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末の如き流動性付与剤又はケーキング防止剤;例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末の如き導電性付与剤;及び逆極性の有機微粒子又は無機微粒子である。
これらのフィラーは、粒径0.01〜10μm程度のものが好ましく、被覆樹脂100重量部に対して2〜30重量部添加されることが好ましく、さらには5〜20重量部が好ましい。このような添加物質が樹脂皮膜中にあっても本発明の処理に特に影響はない。
【0043】
本発明で用いられるキャリアは、その体積固有抵抗を制御するために、被覆層中に導電性付与材料を分散してもよい。分散される導電性付与剤は従来より公知のものでよく、導電性微粒子としてカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ−酸化アンチモン、酸化スズ−酸化インジウムなどの表面処理した微粒子などの導電性微粒子を用いることができるが、被覆層の削れにより導電性微粒子がトナー中に混入し、導電性微粒子が無色または白色以外の場合、カラー画像については色汚れの原因となる。
これらの導電性微粉末は、粒径0.01〜10μm程度のものが好ましく、被覆樹脂100重量部に対して2〜30重量部添加されることが好ましく、さらには5〜20重量部が好ましい。このような添加物質が樹脂皮膜中にあっても本発明の処理に特に影響はない。
【0044】
また、キャリア被覆層中には核体粒子との接着性を向上させたり、導電性付与剤の分散性を向上させる目的でシランカップリング剤、チタンカップリング剤等を添加してもよい。
本発明に用いるシランカップリング剤としては、下記一般式で示される化合物がある。
YRSiX3
但し、Xはけい素原子に結合している加水分解基でクロル基、アルコキシ基、アセトキシ基、アルキルアミノ基、プロペノキシ基などがある。
Yは有機マトリックスと反応する有機官能基でビニル基、メタクリル基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基などがある。
Rは炭素数1〜20のアルキル基またはアルキレン基である。
このシランカップリング剤の中でも、特に負帯電性を有する現像剤を得るには、Yにアミノ基を有するアミノシランカップリング剤が好ましく、正帯電性を有する現像剤を得るには、Yにエポキシ基を有するエポキシシランカップリング剤が好ましい。
【0045】
本発明が対象とするキャリアは、実際には使用後の現像剤として回収される。これはトナーとキャリアの混合物であるが、この混合物の状態で超臨界処理してもよいが、容易に分離可能なトナーは予め分離する方が望ましい。この分離方法としてブローオフなどの静電的な処理を行なう方法:乾式法や純水等に界面活性材と浸し、超音波振動等のエネルギーを加え、分離してもよい。ただし、キャリアにスペント化したトナーは容易に分離できない。これについては、超臨界処理する前処理と組み合わせてもよい。
例えば、溶剤による洗浄や加熱処理を行なってもよい。しかし、超臨界処理の時点で多少のトナーが混入しても樹脂と芯材の分離は問題なく行なえるため、大きな問題とはならない。
【0046】
本発明のキャリアを処理する超臨界水の場合、少なくとも温度:375〜420℃、圧力:22〜35MPaの範囲で適切に調整すればよいが、好ましくは温度:380〜400℃、圧力:25〜30MPaの範囲にある。これらの範囲の中で、更に好ましい範囲は、対象とするキャリアの被覆樹脂や芯材の構成により調整される。すなわち、被覆樹脂は迅速に分解するが、芯材は変質しないような条件が適する。また、超臨界水の温度・圧力の条件は、できるだけ高い方が処理時間を短くできるため、可能な範囲で高温・高圧の条件が適する。この範囲は、例えば超臨界水の場合は380℃以上、25MPa以上の範囲である。
【0047】
本発明のキャリアの被覆樹脂と芯材を分離する方法においては、キャリアに含まれる被覆樹脂を一部分離するだけでもよい。すなわち、キャリアの劣化が表面近傍だけであれば、表面近傍の樹脂を除去するだけでもよい。また、超臨界水よる樹脂の分解は、キャリア粒子の表面側から進行するため、この分解度も処理時間などにより制御できる。しかし、好ましい被覆樹脂の分離の割合は処理前の70%以上であり、より好ましくは80%以上、更に好ましいのは90%以上の範囲である。これは、特に処理後の芯材をバージン芯材と混合して被覆を施す場合、芯材の差が被覆後の現像剤の性能に影響するため、特に製造工程の安定化のためには、より高い被覆除去が望ましい。すなわち、より高い被覆除去がなされた処理後の芯材は、バージン芯材とまったく同じような製造条件で対応できるため、処理後の芯材を用いるにあたって特に対応を必要としない。
被覆樹脂の分離の割合は、蛍光X線による計測で被覆樹脂として使用した樹脂に含まれる元素分析を行い、分離前後差から算出する。分離後の減少を被覆除去率として求めることができる。
尚、被覆樹脂層の厚さは、品種により異なり、特に限定するものではない。
【0048】
また、キャリアを超臨界処理した後、芯材を洗浄し付着物を除去する工程、及び、その後乾燥する工程を経ることにより、キャリアに用いられていた芯材は再び樹脂被覆することができる状態となる。芯材を洗浄し、付着物を除去する工程では、被覆樹脂を分離したキャリアの洗浄は、上述の水中にマイクロバブルまたはナノバブル以下の微粒気泡を含有する水で洗浄処理する。
【実施例】
【0049】
以下、実施例と比較例によって本発明を説明する。
<実施例1>
本発明が対象とするキャリアの製造例を示す。
(キャリアの製造)
シリコーン樹脂(SR2400;東レダウコーニング社製) 45重量部
トルエン 125重量部
アルミナ (酸化アルミニウム;住友化学工業株式会社製) 5重量部
この被覆層形成液を平均粒径50μmの球状フェライト1000重量部の表面に流動床型塗布装置を用いて被覆層を形成し、キャリア粒子Aを得た。その時の被覆層の膜厚は、0.4μmであった。これにキャリア粒子Aを97重量部と市販トナー(RICOH imagioトナー タイプ7)7重量部を混合して現像剤Aを得た。
【0050】
複写機 imagio MPC5000(リコー社製)でこの現像剤を用いて、100万回の複写操作を行ない、使用後の現像剤を得た。この現像剤を複写機から取り出し、まず、ブローオフにより静電的にトナーを除去した。このときキャリア表面へのトナースペント量はごくわずかであった。これを処理サンプルAとした。
【0051】
(超臨界水による分離処理)
SUS316製の耐圧容器(外径3/8インチ、肉厚1.65mm、内容積10ml)に、処理サンプルA:2.0重量部、電気伝導率が0.08μS・cmの超純水3.0重量部を投入し、反応器上部から1MPaの加圧アルゴンガスを供給し加圧、1分放置後、約30秒かけて大気圧まで脱圧した。この加圧脱圧操作を3回繰り返し、反応器内の気体をアルゴンガスに置換したのち容器を密閉した。ついで385℃に加熱された流動砂浴にこの反応容器を投入し、15rpmで連続回転させた。これにより、反応容器内中の温度は385℃、圧力は25MPaに達する。30min後取り出し、氷水中に投入し急冷却した。
反応容器を開け反応物をガラス容器に取り出した。ガラス容器に取り出した反応物は、灰黒色の比較的大きな粒子が沈降しており、これがフェライト粒子であった。また、純水は白濁色に懸濁した状態であり、これが被覆樹脂及び被覆膜中のフィラーの粒子が溶出したものであった。また、ガラス壁面にわずかに油状成分が付着していた。
【0052】
尚、上記の反応容器材料の設定、反応容器内の圧力及び温度が限界以下であるかどうかは、以下のようにして確認した。
(超臨界条件の設定方法)
容器材料は、以下に示す使用限度圧力算定係数表により、使用容器材料の使用温度における圧力係数を算出した。実施例ではSUS316製のものを用いた。
【表2】

【0053】
容器内の圧力は、以下に示す使用限度圧力表から求めて設定する(表中の数値の単位は[MPa]である)。表3から使用容器材料SUS316の使用温度における使用限度圧力を求めた。使用限界圧力は45[MPa]×0.79=35.6[MPa]である。実施例における超臨界水の圧力は25MPaであり、耐圧性は十分であることが確認できる。
【表3】

表中のハッチング部は、今回の実施例、比較例で使用時の値を示す。
【0054】
(被覆樹脂分離後の洗浄方法)
反応物中から沈降している灰黒色粒子を取り出し、ナノバブルを含有した純水(気泡粒径:0.9μm)中に浸漬させ、超音波振動を10minかけながら攪拌羽根を回した。その時、ナノバブル水は、常に供給させオーバーフローさせ、付着物も槽外へ排出させるようにした。その処理を3回繰返し、その後100℃の恒温乾燥機で1時間乾燥し、評価サンプルAを得た。被覆樹脂除去率は95%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率は0.6%であった。
【0055】
(磁性体と被覆樹脂の分離の評価)
−SEMによる表面観察−
評価サンプルAに白金蒸着を行なった。走査型顕微鏡S−2400(日立製作所社製)で観察した。観察の条件は、加速電圧15KV、倍率2000倍である。その結果、評価サンプルAの表面からほぼシリコーン樹脂皮膜が除去分離され、芯材表面にはカス状の残留物は認められなかった。図9に、実施例1の被覆樹脂分離前後のキャリアのSEM観察写真を示す。
評価基準は、コート前の芯材表面に近い状態のものを◎、やや樹脂カス状物が残存しているものを○、被覆樹脂が半分程度残留している状態のものを△、芯材表面が僅かに見える状態のものを△×、被覆樹脂が殆ど除去できず芯材表面が見えていない状態のものを×として評価した。
【0056】
−純水の電気伝導率計測−
純水の電気伝導率は電気伝導率計ES−51ハンディタイプ(HORIBA製)にて計測した。
実施例1で使用した純水の電気伝導率(25℃)は、0.91μS・cmであった。
【0057】
−樹脂被膜除去確認−
X線マイクロアナライザーEMAX2700(堀場製作所社製)により評価サンプルAの表面の元素分析を行なった。このときの評価サンプルAのSi元素の検出量と、キャリア粒子AのSi元素の検出量を比較し、次のような式でシリコーン樹脂の除去率を計算した。
【数1】

評価は、被覆樹脂が90%以上分離できているものを◎、80%以上90%未満分離できているものを○、被覆樹脂が65%以上80%未満分離できているものを△、被覆樹脂が30%以上65%未満分離できているものを△×、被覆樹脂の分離が30%未満のものを×として評価した。
その結果、除去率は95%であった。
【0058】
−磁気特性評価−
膜除去処理による磁気特性変化を確認する為、磁気特性計測を実施した。測定器は、小型全自動振動試料型磁力計:VSM−C7−10A(東英工業株式会社製)にて2KOe印加時の飽和磁化、残留磁化、保持力の計測を行なった。
また、評価サンプルAの磁気特性結果は、使用前のキャリア芯材の物性とほぼ同等値であった。
磁気特性評価は、コート前の芯材の飽和磁化値(1KOe印加時)に対し、変化率が1%未満のものを◎、変化率が1〜3%のものを○、変化率が3〜5%のものを△、変化率が5〜10%のものを△×、変化率が10%以上のものを×として評価した。
【0059】
−マイクロバブル/ナノバブル粒径計測−
気泡の平均粒径は、レーザー回折/散乱式の粒度測定装置(東日アプリケーションズ株製 LDSA3400A)にて測定した。粒径はヒストグラム法により算出した。
【0060】
<実施例2>
実施例1の超臨界処理の条件を次のような条件で行ない、洗浄工程に用いたナノバブルを含有する純水を、マイクロバブル(気泡粒径:2.5μm)を含有する純水に変更した。その他の条件は実施例1と同様にして、評価サンプルBを得た。
超臨界処理時の流体を超純水から純水(電気伝導率:0.91μS・cm)に替えて、反応器内の温度と圧力はそれぞれ、実施例1と同じ385℃、25MPaに設定した。容器は、エアーバイブレーターにより吊るしているワイヤーに振動数が150min-1の振動を連続して与え、30min間処理した。その結果、評価サンプルBの電子顕微鏡写真からはかなりシリコーン樹脂が除去されていた。また、膜除去率は85%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率はやや変動し1.36%であった。
【0061】
<実施例3>
実施例1の超臨界処理の条件を次のような条件で行ない、洗浄工程に用いたナノバブルを含有する純水を、マイクロバブル(気泡粒径:2.5μm)を含有する純水に変更した。その他の条件は実施例1と同様にして、評価サンプルCを得た。
超臨界処理時の流体を超純水から純水(電気伝導率:0.91μS・cm)に替えて、反応器内の温度と圧力はそれぞれ、実施例1と同じ385℃、25MPaに設定した。容器は、ワイヤーで吊るし加熱媒体に浸漬し、ワイヤーから超音波振動子で15kHzの振動を連続して与え、30min間処理した。その結果、評価サンプルCは、電子顕微鏡写真からかなりシリコーン樹脂が除去されていた。また、膜除去率は90%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率はやや変動し1.06%であった。
【0062】
<実施例4>
処理条件は、次の条件以外は実施例1と同等の超臨界条件に設定して行ない、洗浄工程にマイクロバブル(気泡粒径:2.5μm)を含有する純水を用いた以外は実施例1と同様にして、評価サンプルDを得た。
変更条件は、超臨界処理時の流体を超純水から純水(電気伝導率:0.91μS・cm)に替えて、容器がシーソーの動きをする搖動器をセットし、ワイヤーで吊るした容器が水平ラインから上下に15°の範囲で15回/min揺動運動するように設定した。また、容器は加熱媒体中に浸漬するようにして、搖動を連続して与え、30min間処理した。その結果、評価サンプルDは、電子顕微鏡写真から回転処理と同様にかなりシリコーン樹脂が除去されていた。また、膜除去率は88%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率は少し変動し1.6%であった。
【0063】
<実施例5>
実施例1と同様に超臨界処理時の流体を超純水(電気伝導率:0.08μS・cm)にして30min間行なった。このような条件で反応容器内の温度・圧力は、それぞれ385℃、25MPaに達する。容器は、間欠回転(タイマーで60sec回転、60sec停止)を30rpmで処理した。ついで反応容器からビーカーに取り出し、上澄み液を除去した。次にこのビーカーにナノバブル水(気泡平均粒径:0.9μm)を含有した純水100mlを加え、攪拌羽根を回しながら超音波洗浄機中で10分間洗浄した後、沈降した粒子のみを取り出した。これを実施例1と同様に乾燥し、評価サンプルEを得た。この走査型顕微鏡の観察結果は、粒子の表面はほぼ評価サンプルAと同様にほぼシリコーン樹脂は除去されていた。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率は0.3%であった。また、膜除去率は87%であった。得られたサンプルEを用いて、実施例に示される処方、コート方法により、再被覆キャリアE1を得た。このE1を用いてキャリア粒子E1を97重量部と市販トナー(RICOH imagioトナー タイプ7)7重量部を混合して現像剤C2を得た。この時の現像剤物性は、リコー内の出荷時基準を満たしており、問題なかった。
ついで複写機imagio MPC5000(リコー社製)でこの現像剤を用いて、100万回の複写操作を行ない、使用後の現像剤を得た。この現像剤を複写機から取り出し、まず、ブローオフにより静電的にトナーを除去した。このときキャリア表面へのトナースペント量はごくわずかであり、耐久特性を含め問題となる品質事項はなかった。
【0064】
<実施例6>
実施例1の超臨界処理時の流体を超純水から純水(電気伝導率:0.91μS・cm)に替えた以外は同様の超臨界処理条件で、容器を5rpmで連続回転させ、30min被覆膜除去処理し、洗浄工程ではマイクロバブル含有の純水(気泡平均粒径:250μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、評価サンプルFを得た。その結果、評価サンプルFの走査型電子顕微鏡写真から、被覆樹脂はキャリア芯材の表面にはシリコーン樹脂が完全に除去されずかなり残っていた。また、除去率は79%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率は2.57%であった。
【0065】
<実施例7>
機種名Spirio 1510(現像剤名:RICOH DEVTYPE3)の使用後の現像剤を市場から回収して使用し、洗浄工程に用いたナノバブルを含有する純水を、マイクロバブル(気泡粒径:2.5μm)を含有する純水に変更した以外は、実施例1と同様にして評価サンプルGを得た。上記現像剤(RICOH DEVTYPE3)は、キャリアとして平均粒径50μmの球状フェライトを芯材として用いる代わりに、平均粒径50μmの球状マグネタイトを芯材として用いた以外は現像剤Aと同様にして作製された現像剤である。
その結果、評価サンプルGは走査型電子顕微鏡写真からはほとんどシリコーン樹脂が除去されていた。また、除去率は92%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率は1.51%であった。尚、市場から回収したRICOH DEVTYPE3に使用していたキャリアのコート膜は、出荷時の65%まで劣化したものであった。
【0066】
<実施例8>
実施例1の超臨界処理条件を次のような条件で行ない、洗浄工程に用いたナノバブルを含有する純水を、マイクロバブル(気泡粒径:2.5μm)を含有する純水に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルHを得た。超臨界処理時の流体を純水(電気伝導率:0.91μS・cm)に替え、反応器内の温度と圧力はそれぞれ、410℃、25MPaと高く設定した。その結果、評価サンプルHは電子顕微鏡写真からは、まだシリコーン樹脂が部分的に除去されていない部分があった。また、膜除去率は75%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率はやや変動し2.42%であった。
【0067】
<実施例9>
実施例1の超臨界処理条件を次のような条件で行ない、洗浄工程に用いたナノバブルを含有する純水を、マイクロバブル(気泡粒径:2.5μm)を含有する純水に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価サンプルIを得た。超臨界処理時の流体を純水(電気伝導率:0.91μS・cm)に替え、反応器内の温度と圧力はそれぞれ、370℃、20MPaとやや低く設定した。その結果、評価サンプルIは電子顕微鏡写真から、シリコーン樹脂が半分近く残留していた。また、膜除去率は76%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率はやや変動し1.51%であった。
【0068】
<比較例1>
反応容器に処理サンプルAを1.4重量部仕込み、超純水を過酸化水素水(濃度10%)に替え、洗浄工程に用いたナノバブルを含有する純水を、純水(マイクロバブル/ナノバブルを含まない)に変更した以外は、実施例1と同様にして評価サンプルJを得た。この評価サンプルJは走査型顕微鏡の観察結果は、粒子の表面はシリコーン樹脂は除去されていた。しかし、磁気特性結果は、使用前のキャリア芯材の物性に比べ10%以上低下していた。膜除去率は、95%と良好であったが、磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率は11.5%と非常に大きく低下し、芯材規格から外れていた。
【0069】
<比較例2>
実施例1の超臨界処理に用いた超純水を純水(電気伝導率:0.91μS・cm)に変更し、容器は回転せず固定した以外は実施例1の条件で超臨界処理を行なった。このような条件で反応容器内の温度・圧力は、それぞれ385℃、25MPaに達する。ついで反応容器からビーカーに取り出し、上澄み液を除去した。次にこのビーカーにマイクロバブルを含有しない純水100mlを加え超音波洗浄機で振動を与え攪拌羽根を回さず10分間洗浄した。この処理を3回繰返した後、沈降した粒子のみを取り出した。これを実施例1と同様に乾燥し、評価サンプルKを得た。このサンプルKは走査型顕微鏡の観察結果は、粒子の表面にはまだシリコーン樹脂とまたはフィラーの残留物と思われる残渣が残存していた。また、膜除去率は68%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率は4.8%と低下が大きく芯材抵抗規格を外れていた。
【0070】
<比較例3>
実施例1と同様にして得た処理サンプルAを、実施例1の超臨界処理に用いた超純水を純水(電気伝導率:0.91μS・cm)に変更した以外は実施例1と同じ条件で処理時間を100min行なった。この条件で反応容器内の温度・圧力は、それぞれ385℃、25.0MPaに達する。ついで反応容器からビーカーに取り出し、上澄み液を除去した。次にこのビーカーに水道水(電気伝導率:126μS・cm)(マイクロバブル/ナノバブルを含まない)100mlを加え攪拌羽根は回さず超音波洗浄機中で10分間洗浄した。この処理を3回繰り返した後、沈降した粒子のみを取り出した。これを実施例1と同様に乾燥し、評価サンプルMを得た。このサンプルMの走査型顕微鏡の観察結果は、粒子の表面にはまだ多くのシリコーン樹脂が残存している。膜除去率は、69%とやや悪かった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材の物性からの変化率は5.6%とやや大きく低下し、芯材の規格を外れていた。
【0071】
<比較例4>
実施例1と同様にして得た処理サンプルAを、実施例1の超臨界処理に用いた超純水を純水(電気伝導率:0.91μS・cm)に変更し、反応器内の温度と圧力をそれぞれ、395℃、30MPaと高く設定して処理した。容器は、エアーバイブレーターから振動が伝わるように吊るしてワイヤーに振動数が6,500min-1になるように振動を設定した。振動は連続して与え、30min間処理した。ついで実施例1の洗浄工程で用いたナノバブルを含有する純水を純水(マイクロバブル/ナノバブルを含まない)に変えた以外は実施例1と同様に洗浄、乾燥して、評価サンプルNを得た。その結果、評価サンプルNの電子顕微鏡写真からはシリコーン樹脂があまり除去されていなかった。膜除去率は71%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率はやや変動し2.4%であった。
【0072】
<比較例5>
処理条件は、次の条件以外は実施例4と同等の超臨界条件に設定して行ない、洗浄工程において純水(マイクロバブル/ナノバブルを含まない)で洗浄した以外は実施例4と同様にして、評価サンプルOを得た。
変更条件は、容器がシーソーの動きをする搖動器をセットし、ワイヤーで吊るした容器が水平ラインから上下に4°の範囲で15回/min揺動運動するように設定した。また、容器は加熱媒体中に浸漬するようにして、搖動を連続して与え、30min間処理した。その結果、評価サンプルOは、電子顕微鏡写真からあまりシリコーン樹脂は除去されていなかった。また、膜除去率は64%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率は少し変動し2.9%であった。
【0073】
<比較例6>
処理条件は、以下の条件以外は、実施例3と同等の超臨界処理条件で行ない、洗浄工程において純水(マイクロバブル/ナノバブルを含まない)で洗浄した以外は実施例3と同様にして、評価サンプルPを得た。反応器内の温度と圧力はそれぞれ、400℃、28MPaと高く設定した。容器は、ワイヤーで吊るし加熱媒体に浸漬し、ワイヤーから超音波振動子で10kHzの振動を連続して与え、30min間処理し評価サンプルPを得た。その結果、評価サンプルPは、電子顕微鏡写真からあまりシリコーン樹脂が除去されていなかった。また、膜除去率は59%であった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材からの変化率はやや変動し3.1%で芯材規格下限一杯であった。
【0074】
<比較例7>
実施例1と同様にして得た処理サンプルA作成し、以下の条件以外は全て実施例1の条件で処理時間を30min行なった。この条件の反応容器内の温度を270℃・圧力を10MPaにし処理溶媒/洗浄水を蒸留水に替えた。ついで反応容器からビーカーに取り出し、上澄み液を除去した。次にこのビーカーに蒸留水(電気伝導率:126μS・cm)100mlを加え攪拌羽根は回さず超音波洗浄機中で10分間洗浄した。この処理を3回繰り返した後、沈降した粒子のみを取り出した。これを実施例1と同様に乾燥し、評価サンプルQを得た。このサンプルQの走査型顕微鏡の観察結果は、粒子の表面にはまだ多くのシリコーン樹脂が残存している。膜除去率は、61%と悪かった。磁気特性は、使用前のキャリア芯材の物性からの変化率は5.4%とやや大きく低下し、芯材の規格を外れていた。
【0075】
キャリア芯材及びキャリアの物性評価結果
【表4】

【0076】
【表5】

【0077】
*:総合評価は、評価全項目で判断し直ぐにリサイクル化できる芯材を◎、一回の再処理が必要なものを○、少なくとも2回以上の再処理が必要なものを△、条件を含めた再処理が必要なものを△×、条件変動、再処理をしてもリサイクル化が困難なものを×として評価した。
【符号の説明】
【0078】
1・・マイクロバブル/ナノバブル発生器
2・・加圧液(水)供給部
3・・加圧空気供給部
4・・気液混合部
5・・気液混合液(マイクロorナノバブル液)送液ポンプ
6・・ナノバブル/マイクロバブルスットクタンク
7・・超音波発振器
8・・被覆樹脂分離後の芯材
9・・ナノバブル/マイクロバブル液攪拌羽根
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特開平05−127432号公報
【特許文献2】特開平05−216282号公報
【特許文献3】特開平05−216283号公報
【特許文献4】特開平05−197211号公報
【特許文献5】特開平07-114221号公報
【特許文献6】特開平08−87137号公報
【特許文献7】特開平06−194881号公報
【特許文献8】特公昭62−61948号公報
【特許文献9】特開平6−149132号公報
【特許文献10】特開昭47−12286号公報
【特許文献11】特開平05−31000号公報
【特許文献12】特開平10−24274号公報
【特許文献13】特開平9−111249号公報
【特許文献14】特開2007−206614号公報
【特許文献15】特許第4244197号
【特許文献16】特開平10−80674号公報
【特許文献17】特開平10−87872号公報
【非特許文献】
【0080】
【非特許文献1】平成9年度「ニューサンシャイン計画」先導研究開発新エネルギー・産業技術総合開発機構委託超臨界流体利用技術先導研究開発成果報告書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも芯材と被覆樹脂から構成される電子写真用キャリアを、電気伝導率(25℃)1.00μS・cm以下の純水又は超純水を超臨界状態とした超臨界水で処理することによって前記キャリアから前記被覆樹脂を分離する方法であって、前記処理時に、前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段により、流動或いは/及び移動させて、キャリアから被覆樹脂を分離し、次いで得られた芯材上の被覆樹脂残留物を、マイクロバブルまたはナノバブルを含有した水により洗浄分離することを特徴とする電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項2】
前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段は、キャリアと超臨界水とを容器に収容し、該容器を運動させることによりキャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする請求項1記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項3】
前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段として、キャリアと超臨界水を収容する容器を回転させ該キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項4】
前記容器の回転は5〜40rpmで連続回転、または不連続で間欠回転し、該キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする請求項3に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項5】
前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段として、キャリアと超臨界水を収容する容器をシーソー運動のような搖動運動させ該キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項6】
前記容器の搖動運動は5〜30回/minで連続搖動、または不連続で間欠搖動し、搖動は水平ラインに対し上下10〜60°の範囲で運動し、該キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させることを特徴とする請求項5に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項7】
前記キャリアと超臨界水を流動或いは/及び移動させる手段として、キャリアと超臨界水を収容する容器を振動させ該キャリアと超臨界水を振動させ流動或いは/及び移動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項8】
前記容器の振動は、エアーバイブレーターのエアーによる、振動数が100〜6000min-1で連続振動、もしくは不連続の間欠振動であるか、または、超音波による、15〜40kHzの範囲の連続振動、もしくは不連続の間欠振動であることを特徴とする請求項7に記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項9】
前記超臨界水の状態は超臨界温度が375℃以上420℃以下の範囲、かつ超臨界圧が22MPa以上35MPa以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項10】
前記芯材が、フェライト又はマグネタイトであることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項11】
前記キャリアと接触させた超臨界水中に含まれる被覆樹脂を構成する物質の分解物または溶解物を時間とともに分解させることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項12】
前記キャリアが、電子写真用現像剤の使用済みのキャリアまたはトナーを含有する現像剤中のキャリアであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法によりキャリアから前記被覆樹脂を分離し、得られた芯材を回収し洗浄・乾燥した後、この芯材に樹脂を再被覆して再使用することを特徴とするキャリアリサイクル方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれかに記載の電子写真用キャリアの被覆樹脂分離方法で被覆樹脂が分離されてなることを特徴とするキャリア芯材。
【請求項15】
請求項14に記載のキャリア芯材に樹脂が再被覆されてなることを特徴とするキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−83649(P2012−83649A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231487(P2010−231487)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】