説明

電子写真用トナー、現像剤、及び画像形成装置

【課題】印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生を抑制でき、よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる電子写真用トナーを提供することを目的とする。
【解決手段】結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と、前記トナー母粒子に外添される外添剤とを含み、前記外添剤が、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理した表面処理粒子を含有することを特徴とする電子写真用トナーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナー、前記電子写真用トナーを含む現像剤、及び前記現像剤を用いる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びこれらの複合機等の電子写真方式を利用した画像形成装置は、像担持体、像担持体の表面を均一に帯電するための帯電装置、像担持体上に静電潜像を形成するための露光装置、像担持体上の静電潜像をトナー像に現像するための現像装置、及び像担持体上のトナー像を用紙上に転写するための転写装置等を備える。前記画像形成装置は、上記各装置によって、上述のようにトナー像を用紙上に転写することによって、画像を用紙上に形成する。
【0003】
このような画像形成装置としては、モノクロ印刷だけではなく、カラー画像を形成するカラー印刷機能を備えたものが利用されてきている。具体的には、例えば、1つの感光体ドラムからなる1ドラム方式のカラー複写機や多機能周辺装置(MFP)等の画像形成装置が用いられている。しかしながら、このような1ドラム方式の画像形成装置は、1枚の用紙にカラー印刷する際、ブラック、イエロー、シアン、及びマゼンタ等の各色の、用紙に対する現像毎に、像担持体である感光体ドラムを回転させる必要がある。よって、カラー印刷を行う際の印刷速度は、モノクロ印刷を行う際の印刷速度に比べ、約1/4に低下するという問題があった。すなわち、カラー印刷は、モノクロ印刷に比べ、約4倍の時間を要するという問題があった。そこで、カラー印刷機能を備えた画像形成装置は、印刷時間の短時間化、すなわち、印刷の高速化が求められていた。このような要求を満たすものとして、タンデム方式のカラー画像形成装置等が挙げられる。
【0004】
タンデム方式のカラー画像形成装置とは、具体的には、例えば、電子写真方式で像担持体上に形成されたトナー像を1次転写した後、用紙等の被転写材に2次転写するための中間転写ベルトを備え、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びブラック(K)等の複数色のトナーを中間転写ベルト上で重ね合わせることでカラー画像を形成する画像形成装置である。このようなカラー画像形成装置は、複数色のトナーを重ね合わせるために、中間転写ベルトに沿って各色に対応する現像装置が並設されている。そして、中間転写ベルト上には、前記現像装置の各感光体ドラムによるYMCK4色のトナー像が互いに重ね合わされるように順次転写(1次転写)されてカラー画像が形成される。そして、この中間転写ベルト上に形成されたカラー画像は、中間転写ベルトに対向して設置された2次転写ローラによって用紙等の被転写材上に転写(2次転写)される。このように、各色に対応するトナー像を、それぞれの像担持体上に形成し、さらに、それらのトナー像を重ね合わせることによって、カラー画像を形成することによって、タンデム方式のカラー画像形成装置は、高速印刷を実現している。
【0005】
一方、カラー印刷は、例えば、4色のトナーを用いて1つの画像を形成するので、モノクロ印刷に比べ、単色の印字率が大きく変動する傾向にある。そして、特定の色のトナーの印字率が低い状態が続く等の場合、画像を形成させているにもかかわらず、長期間あまり使用されないトナーが存在することになる。
【0006】
一方、電子写真方式を利用した画像形成装置は、長期間にわたって画像形成を行うと、かぶり等が発生しやすくなり、良好な画像を形成されにくくなる傾向があることが知られている。特に、上記のような、形成される画像によって印字率が大きく変化するカラー画像形成装置では、長期間にわたって画像形成を行った場合、例えば、低濃度印字を長期間繰り返し行った後に高濃度印字を行ったとき等に、かぶりが発生しやすく、良好な画像を形成されにくくなる傾向が強かった。
【0007】
上記のようなかぶりの発生を抑制するために、下記特許文献1及び下記特許文献2に記載のトナー等が検討されている。
【0008】
特許文献1には、着色樹脂微粒子(トナー母粒子)と外添剤を含み、前記外添剤が、脂肪酸及び/又は脂肪酸金属塩により処理された無機微粉末を含むトナーが記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、少なくとも結着樹脂及び磁性粉を含有するトナー粒子(トナー母粒子)と、添加剤(外添剤)とで構成された電子写真用磁性トナーにおいて、前記添加剤が、脂肪酸アルミニウムで表面処理して疎水化した超微粒子酸化チタンと、疎水化シリカとを含有し、前記超微粒子酸化チタンが、比表面積80〜120m/g、疎水化度50〜80重量%、アルミナ含有量0.4〜1.1重量%である電子写真用磁性トナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−43733号公報
【特許文献2】特開平10−161340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のように、脂肪酸又はその金属塩により処理された無機微粒子を、外添剤として含有するトナーは、無機微粒子の有する、研磨性や流動性を高めるという機能を充分に発揮できないおそれがあり、長期間にわたって高画質な画像を得ることが困難であった。特に、感光体ドラムとして、アモルファスシリコン感光体を備えた画像形成装置においては、研磨性の低下により、画像形成に関与しないトナー等の不純物が感光体ドラム上に付着する、いわゆるフィルミングが発生するおそれがあった。
【0012】
また、本発明者等は、本発明に至る際、低濃度印字を長期間繰り返し行った場合、上述したように、長期間あまり使用されないトナーが存在することに着目した。そして、低濃度印字を長期間繰り返し行った後で高濃度印字を行った場合、かぶりが発生しやすくなる理由を以下のように推察した。
【0013】
まず、上記のような、画像形成装置が駆動しているにもかかわらず、長期間使用されなかった現像剤には、ストレスがかかり、現像剤に含まれるトナーは、所定の電荷を失う等のトナーの性能が低下すると考えた。そして、この状態で、印字率の高い高濃度印字を行うと、その後、トナーが補給される。そうすると、性能が低下したトナーと新たに補給したトナーとでは、帯電量の差が生じており、トナー間で電荷の移動が発生してしまうと考えた。そうすると、性能が低下したトナーは、より電荷を失い、現像に好適な帯電量からより離れてしまい、その結果、逆極性の電荷を有するトナーの比率の高い現像剤となってしまうと考えた。よって、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合、現像剤のトナーの逆帯電量比率が高くなるため、トナーが露光部(画像部)に移行せずに、露光部(画像部)以外に移行するために、非露光部(非画像部:白紙部)にトナーが付着する、いわゆるかぶりが発生すると考えた。
【0014】
一方、上記かぶりの発生の抑制には、性能が低下したトナーを画像形成装置から除去した後に、新たなトナーを補給することが考えられる。具体的には、例えば、新たなトナーを補給する前に、性能が低下したトナーを、強制的に感光体ドラムに移行させ、像担持体上のトナー像を用紙上に転写した後に像担持体上に残留するトナーを像担持体上から除去するためのドラムクリーニング装置や、2次転写後に中間転写ベルト上に残留するトナーを中間転写ベルト上から除去するためのベルトクリーニング装置等のクリーニング装置を用いて、性能が低下したトナーを画像形成装置から除去する方法等が考えられる。
【0015】
しかしながら、上記の方法では、画像を形成させない場合にも、トナーが消費されることとなり、好ましくないと考えた。
【0016】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生を抑制でき、よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる電子写真用トナーを提供することを目的とする。また、前記電子写真用トナーを含む現像剤、及び前記現像剤を用いる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者等は、上記の事情に鑑みて、以下のような本発明に想到するに到った。
【0018】
本発明の一態様に係る電子写真用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と、前記トナー母粒子に外添される外添剤とを含み、前記外添剤が、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理した表面処理粒子を含有することを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生を抑制でき、よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。
【0020】
このことは、上記構成のトナーが、印字率の低い低濃度印字を長期間にわたって行っても、帯電量変化の少ないトナーであることによると考えられる。具体的には、以下のことによると考えられる。
【0021】
アクリル系樹脂微粒子やメタクリル系樹脂微粒子等の樹脂微粒子は、正帯電性を有する。そして、その樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理した表面処理粒子は、負帯電性を有する。なお、表面処理粒子が負帯電性を有する理由は、脂肪酸金属塩が前記樹脂微粒子の表面上に被覆した状態になるために、負帯電性を有すると考えられる。よって、このような表面処理粒子は、初期状態では、負帯電性を有するが、低濃度印字を行っている時のような、現像剤にストレスがかかる混合攪拌を行うと、表面処理粒子から徐々に脂肪酸金属塩が離脱していき、正帯電性を示すようになると考えられる。よって、前記表面処理粒子は、低濃度印字を行うことによって、徐々に、トナーが正に帯電していくことに寄与すると考えられる。
【0022】
一方、トナー母粒子の、前記表面処理粒子以外の各成分、特に前記表面処理粒子以外の外添剤のほとんどは、混合攪拌とともに、徐々に負帯電性を示すようになると考えられる。よって、前記表面処理粒子を含まないトナー母粒子は、低濃度印字を行うことによって、徐々に、負に帯電していくと考えられる。
【0023】
したがって、前記表面処理粒子を含有するトナーは、低濃度印字を行っても、上記のように、帯電量の変化が中和されると考えられる。よって、上記構成のトナーは、印字率の低い低濃度印字を長期間にわたって行っても、帯電量変化の少ないトナーであると考えられる。
【0024】
そして、上記トナーは、帯電量変化の少ないトナーであるので、かぶりの発生を抑制でき、よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができると考えられる。
【0025】
また、前記表面処理粒子が、前記トナー母粒子100質量部に対して、0.01〜1質量部含有させることが好ましい。このような構成によれば、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生をより抑制できる。よって、より長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。このことは、前記表面処理粒子の、トナーの帯電量変化を抑制させる効果をより発揮させることができるためであると考えられる。
【0026】
また、前記外添剤が、無機微粒子を含み、前記表面処理粒子が、前記外添剤100質量部に対して、0.25〜30質量部含有させることが好ましい。このような構成によれば、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生をより抑制できる。よって、より長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。このことは、前記無機微粒子が、低濃度印字を行うことによって、負に帯電したとしても、前記表面処理粒子の、トナーの帯電量変化を抑制させる効果をより発揮させることができるためであると考えられる。
【0027】
また、前記表面処理粒子が、前記樹脂微粒子1質量部に対して、前記脂肪酸金属塩を0.001〜0.1質量部添加して得られた粒子であることが好ましい。このようにして得られた表面処理粒子は、トナーの初期帯電量上昇を抑制するのに効果的であり、また繰り返し低濃度印字を行ってトナーにストレスがかかった際に逆帯電のトナーの発生を防止する効果がある。
【0028】
また、前記脂肪酸金属塩が、炭素数12〜24の飽和脂肪酸の金属塩であることが好ましい。このような構成によれば、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生をより抑制できる。このことは、トナーの帯電量変化を抑制させる効果をより発揮させることができる表面処理粒子を得られるためであると考えられる。
【0029】
また、前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸及びラウリン酸の少なくともいずれかの金属塩であることが好ましい。このような構成によれば、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生をより抑制できる。このことは、トナーの帯電量変化を抑制させる効果をより発揮させることができる表面処理粒子を得られるためであると考えられる。
【0030】
また、前記樹脂微粒子が、アクリル系樹脂微粒子及びメタクリル系樹脂微粒子の少なくともいずれかであることが好ましい。このような構成によれば、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生をより抑制できる。このことは、樹脂微粒子の正帯電性が好適であるので、前記表面処理粒子から徐々に脂肪酸金属塩が離脱していく際に、トナーの帯電量が好適に調整されるためであると考えられる。
【0031】
また、アモルファスシリコン感光体を備えた画像形成装置に使用されることが好ましい。このような画像形成装置に、例えば、無機微粒子を表面処理した外添剤を含むトナーを用いると、一般的には、研磨性が不充分となり、フィルミングが発生しやすい傾向がある。本発明に係る電子写真用トナーを用いることによって、このような画像形成装置であっても、研磨性を充分に発揮したまま、かぶりを抑制することができる。よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。
【0032】
また、本発明の他の一態様に係る現像剤は、前記電子写真用トナーとキャリアとを含むことを特徴とする。このような構成によれば、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生を抑制でき、よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。
【0033】
また、本発明の他の一態様に係る画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の像担持体と、各像担持体に対向して配置され、表面に現像剤のトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、前記各像担持体の表面にそれぞれ供給する、複数の現像ローラとを備え、前記各像担持体が、それぞれアモルファスシリコン感光体であり、前記現像剤として、前記現像剤を用いることを特徴とする。このような構成によれば、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生を抑制でき、よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生を抑制でき、よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる電子写真用トナーを提供することができる。また、前記電子写真用トナーを含む現像剤、及び前記現像剤を用いる画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】画像形成装置の全体構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0037】
[トナー]
本発明の一態様に係る電子写真用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と、前記トナー母粒子に外添される外添剤とを含み、前記外添剤が、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理した表面処理粒子を含有することを特徴とする。
【0038】
<トナー母粒子>
前記トナー母粒子は、結着樹脂及び着色剤を含有し、トナー母粒子として使用可能な形態のものであれば、特に限定されない。前記トナー母粒子としては、球形であることが好ましく、その粒子径としては、体積平均径で、3〜9μmであることが好ましい。なお、ここでの体積平均径は、例えば、レーザ回折散乱法等による測定や、一般的な粒度計等を用いた測定によって、計測することができる。
【0039】
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、従来からトナー母粒子の結着樹脂として用いられるものであれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等が挙げられる。この中でも、ポリエステル系樹脂が、低温定着性に優れ、非オフセット温度範囲が広い点から好ましく用いられる。また、前記結着樹脂としては、上記各結着樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合又は共縮重合によって得られるもの等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のものが挙げられる。
【0041】
前記アルコール成分としては、ポリエステル系樹脂を合成するためのアルコールとして使用可能なものであれば、特に限定されない。また、前記アルコール成分としては、分子内に水酸基が2個以上のアルコール(2価以上のアルコール)が含まれている必要がある。前記アルコール成分として用いられるもののうち、2価のアルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類等が挙げられる。また、前記アルコール成分として用いられるもののうち、3価以上のアルコールとしては、具体的には、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。この中でも、ビスフェノール類が、着色剤やワックス等の、結着樹脂以外のトナー母粒子の成分の、トナー母粒子中での分散性、耐熱保存性、低温定着性、及び帯電安定性に優れる点から好ましく、ビスフェノールAであることがより好ましい。また、前記アルコール成分としては、上記各成分を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
また、前記カルボン酸成分としては、ポリエステル系樹脂を合成するためのカルボン酸として使用可能なものであれば、特に限定されない。また、前記カルボン酸成分としては、カルボン酸だけではなく、カルボン酸の、酸無水物や低級アルキルエステル等も含まれる。そして、前記カルボン酸成分としては、カルボン酸が分子内に水酸基が2個以上であるもの(2価以上のカルボン酸)が含まれている必要がある。前記カルボン酸として用いられるもののうち、2価のカルボン酸としては、具体的には、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、アルキルコハク酸、及びアルケニルコハク酸等が挙げられる。アルキルコハク酸としては、例えば、n−ブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸等が挙げられ、アルケニルコハク酸としては、例えば、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等が挙げられる。また、前記カルボン酸として用いられるもののうち、3価以上のカルボン酸としては、具体的には、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等が挙げられる。この中でも、フマル酸が、帯電安定性、及び環境安定性に優れている点から好ましい。また、前記カルボン酸成分としては、上記各成分を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
前記結着樹脂としては、定着性の観点から、上記のような熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂のみである必要はなく、架橋剤や熱硬化性樹脂を熱可塑性樹脂に組み合わせて用いてもよい。このように結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性の低下を抑制しつつ、トナーの保存安定性、形態保持性及び耐久性等を向上させることができる。
【0044】
(着色剤)
前記着色剤としては、トナーとして所望の色になるように、公知の顔料や染料を用いることができる。具体的には、例えば、色に応じて、以下のような着色剤が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー180等が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。赤色顔料として、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド238等が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。青色顔料としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15−3等が挙げられる。緑色顔料としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等が挙げられる。白色顔料としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0045】
前記着色剤の添加量としては、好適な画像濃度を達成するためにも、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部であることが一般的であり、2〜5質量部であることが好ましい。
【0046】
(電荷制御剤)
前記トナー母粒子には、帯電性等を向上させるために、電荷制御剤を含有させることが一般的である。前記電荷制御剤としては、従来からトナー母粒子の電荷制御剤として用いられているものであれば、特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、ニグロシン、4級アンモニウム塩化合物、及び樹脂にアミン系化合物を結合させた樹脂タイプの電荷制御剤等の正帯電性を示す電荷制御剤等が挙げられる。この中でも、4級アンモニウム塩化合物が、帯電安定性に優れ、さらに帯電立ち上りが速い点から好ましい。また、前記電荷制御剤の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.5〜10質量部添加することが好ましく、さらに1〜5質量部添加することがより好ましい。前記電荷制御剤の添加量が少なすぎる場合、所定極性にトナーを安定して帯電することが困難となり、かぶりが発生しやすくなる傾向がある。また、前記電荷制御剤の添加量が多すぎる場合、耐環境性、特に高温高湿下での帯電不良、画像不良となり、感光体汚染等の欠点が生じやすくなる傾向がある。
【0047】
(ワックス)
前記トナー母粒子には、定着性やオフセット性等を向上させるために、ワックスを含有させることが一般的である。前記ワックスとしては、従来からトナー母粒子のワックスとして用いられているものであれば特に限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、カルナバワックスやサトウキビワックス、木ワックス等の植物性ワックス;蜜ワックスや昆虫ワックス、鯨ワックス、羊毛ワックスなどの動物性ワックス;フィッシャートロプシュ(以下、「FT」と記すことがある)ワックスやポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素系ワックス等が挙げられる。これらの中では、前記結着樹脂中での分散性に優れている点から、FTワックスやポリエチレンワックス等の合成炭化水素系ワックスが好ましく、FTワックスがより好ましい。前記ワックスの添加量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜20質量部添加することが好ましい。前記添加量が少なすぎる場合には、充分なワックスの効果が得られない傾向があり、また、多すぎる場合には、耐ブロッキング性が低下し、またトナーからの脱離が生じるおそれがある。
【0048】
(製造方法)
また、前記トナー母粒子の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0049】
まず、上記の、結着樹脂及び着色剤等のトナー母粒子の各成分を混合機等で混合する。前記混合機としては、公知のものを使用でき、例えば、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミル等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル、ハイブリダイゼーションシステム、コスモシステム等が挙げられる。
【0050】
次に、得られた混合物を混練機等で溶融混練する。前記混練機としては、公知のものを使用でき、例えば、2軸押出機、三本ロールミル、ラボブラストミル等が挙げられ、2軸押出機が好適に用いられる。また、溶融混練時の温度としては、前記結着樹脂の軟化点以上であって、前記結着樹脂の熱分解温度未満の温度であることが好ましい。
【0051】
次に、得られた溶融混練物を冷却して固形物とし、その固形物を粉砕機等で粉砕する。前記粉砕機としては、公知のものを使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機等の気流式粉砕機や衝撃式粉砕機等が挙げられ、気流式粉砕機が好適に用いられる。
【0052】
最後に、得られた粉砕物を分級機等で分級する。分級することによって、過粉砕物や粗粉を除去することができ、所望のトナー母粒子を得ることができる。前記分級機としては、公知のものを使用でき、例えば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)等の風力分級機や遠心力分級機等が挙げられ、風力分級機が好適に用いられる。
【0053】
<外添剤>
前記外添剤が、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理した表面処理粒子を含有する。そして、前記外添剤としては、研磨性や流動性を高めるために、前記表面処理粒子以外に、無機微粒子等の他の外添剤を含有することが一般的である。
【0054】
前記表面処理粒子は、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理したものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、樹脂微粒子と脂肪酸金属塩とを混合して得られたもの等が挙げられる。
【0055】
また、前記樹脂微粒子は、トナーの外添剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、アクリル系樹脂を主成分とするアクリル系樹脂微粒子、メタクリル系樹脂を主成分とするメタクリル系樹脂微粒子、及びフッ素系樹脂等が挙げられる。この中でも、アクリル系樹脂微粒子及びメタクリル系樹脂微粒子が帯電性の点から好ましい。また、前記樹脂微粒子としては、上記樹脂微粒子を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
また、前記樹脂微粒子としては、球形であることが好ましく、その粒子径としては、体積平均径で、30〜500nmであることが好ましい。なお、ここでの体積平均径は、例えば、レーザ回折散乱法等による測定や、一般的な粒度計等を用いた測定によって、計測することができる。
【0057】
前記脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、特に限定されないが、炭素数12〜24の飽和脂肪酸であることが好ましい。前記炭素数が小さすぎると、室温で固体でない為、使用するのが困難という傾向がある。また、前記炭素数が大きすぎると、前記表面処理粒子の帯電性を調整しにくくなり、かぶりを抑制する効果を充分に発揮できなくなるという傾向がある。また、前記脂肪酸としては、直鎖状のものであっても、分岐があってもよいが、直鎖状のものが好ましい。具体的には、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸、及びアラギジン酸等が挙げられる。この中でも、ステアリン酸及びラウリン酸が、樹脂微粒子の表面へ良好に付着する点から好ましい。また、前記脂肪酸としては、上記脂肪酸を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
また、前記脂肪酸金属塩の金属としては、脂肪酸と塩を形成できる金属であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、及びリチウム、等が挙げられる。この中でも、亜鉛及びマグネシウムが、帯電性に優れている点から好ましい。また、前記金属としては、上記金属を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
よって、前記脂肪酸金属塩としては、具体的には、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム、及びステアリン酸カルシウム等が挙げられる。この中でも、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、及びラウリン酸亜鉛が、帯電安定性に優れる点から好ましい。また、前記脂肪酸金属塩としては、上記各脂肪酸金属塩を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
また、前記脂肪酸金属塩の添加量としては、前記樹脂微粒子1質量部に対して、0.001〜0.1質量部であることが好ましい。前記脂肪酸金属塩の添加量が少なすぎると、初期のトナーの帯電性が高くなりすぎる傾向がある。また、前記脂肪酸金属塩の添加量が大きすぎると、負帯電性が強すぎて、かぶり防止効果が低下する傾向がある。よって、このような添加量で得られた表面処理粒子は、トナーの初期帯電量上昇を抑制するのに効果的であり、また繰り返し低濃度印字を行ってトナーにストレスがかかった際に逆帯電のトナーの発生を防止する効果がある。
【0061】
また、前記表面処理粒子以外の外添剤としては、上述したように、無機微粒子等が挙げられる。前記無機微粒子としては、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子、及びマグネタイト粒子等が挙げられる。この中でも、シリカ粒子及び酸化チタン粒子が、流動性、帯電性、及び研磨性に優れる点から好ましい。また、前記無機微粒子としては、上記無機微粒子を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
また、前記表面処理粒子が、前記トナー母粒子100質量部に対して、0.01〜1質量部含有させることが好ましい。前記トナー母粒子に対する前記表面処理粒子の含有量が少なすぎると、帯電量を向上させる効果が弱く、かぶりが発生しやすくなるという傾向がある。また、前記トナー母粒子に対する前記表面処理粒子の含有量が多すぎると、攪拌等のストレス受けた前後での表面処理粒子の帯電変動がトナー全体の帯電量に及ぼす影響が大きくなりすぎて、逆に帯電量が不安定になり、かぶりを生じやすくなるという傾向がある。よって、上記含有量範囲内であると、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生をより抑制できる。よって、より長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。このことは、前記表面処理粒子の、トナーの帯電量変化を抑制させる効果をより発揮させることができるためであると考えられる。
【0063】
また、前記外添剤が、無機微粒子を含み、前記表面処理粒子が、前記外添剤100質量部に対して、0.25〜30質量部含有させることが好ましい。前記外添剤全量に対する前記表面処理粒子の含有量が少なすぎると、帯電量を向上させる効果が弱く、かぶりが発生しやすくなるという傾向がある。また、前記外添剤全量に対する前記表面処理粒子の含有量が多すぎると、攪拌等のストレス受けた前後での表面処理粒子の帯電変動がトナー全体の帯電量に及ぼす影響が大きくなりすぎて、逆に帯電量が不安定になり、かぶりを生じやすくなるという傾向がある。よって、上記含有量範囲内であると、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生をより抑制できる。よって、より長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。このことは、前記無機微粒子が、低濃度印字を行うことによって、負に帯電したとしても、前記表面処理粒子の、トナーの帯電量変化を抑制させる効果をより発揮させることができるためであると考えられる。
【0064】
また、得られたトナーは、後述するような、アモルファスシリコン感光体を備えた画像形成装置に使用されることが好ましい。このような画像形成装置に、例えば、無機微粒子を表面処理した外添剤を含むトナーを用いると、一般的には、研磨性が不充分となり、フィルミングが発生しやすい傾向がある。前記トナーを用いることによって、このような画像形成装置であっても、研磨性を充分に発揮したまま、かぶりを抑制することができる。よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。このことは、前記トナーは、上記のように、無機微粒子には表面処置等を施さないことによると考えられる。
【0065】
[現像剤]
前記トナーを含有する現像剤としては、前記トナーを含み、キャリアを含まない1成分現像剤であってもよいし、前記トナーとキャリアとを含む2成分現像剤であってもよいが、2成分現像剤が好適に用いられる。ここでは、2成分現像剤について説明する。なお、本発明の他の一態様に係る現像剤は、前記電子写真用トナーとキャリアとを含むことを特徴とする。
【0066】
(キャリア)
前記キャリアとしては、現像剤のキャリアとして用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、フェライトキャリアや、キャリアコア材である磁性体粒子の表面を樹脂で被覆したもの等が挙げられる。キャリアコア材として、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体金属、これらの合金、希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライト等のソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライト等の鉄系酸化物、これらの混合物等の磁性体材料を、焼結及びアトマイズ等を行うことによって製造した磁性体粒子が挙げられる。
【0067】
上述のようにして得られたキャリアコア材の表面を被覆する表面コート剤として、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等の結着樹脂とポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂との混合物等が挙げられる。
【0068】
キャリアの粒子径は、一般に電子顕微鏡法による粒径で表して20〜200μmの範囲内であることが好ましく、30〜150μmの範囲内であることがより好ましい。キャリアの見掛け密度は、磁性材料を主体とする場合は磁性体の組成や表面構造等によっても相違するが、一般に3000〜8000kg/mの範囲内であることが好ましい。
【0069】
前記トナーとキャリアとを含む2成分現像剤中のトナー濃度は、1〜20重量%である。好ましくは3〜15重量%である。トナー濃度が1重量%未満の場合には、画像濃度が薄くなりすぎる。一方、トナー濃度が20重量%を超える場合には、現像装置内でトナー飛散が発生し、機内汚れや転写紙等の背景部分にトナーが付着する不具合が生じる虞がある。
【0070】
本実施形態の現像剤は、前記トナーを前記キャリアと適切な割合で混合した2成分現像剤であり、例えば、後述の画像形成装置で使用することができる。
【0071】
[画像形成装置]
前記トナーや前記現像剤を用いる画像形成装置としては、電子写真方式の画像形成装置であれば、特に限定されない。具体的には、上述したように、感光体ドラムとして、アモルファスシリコン感光体を備えた画像形成装置が、耐久性の面で好ましい。また、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。ここでは、感光体ドラムとして、アモルファスシリコン感光体を備えたタンデム方式のカラー画像形成装置について説明する。なお、本発明の他の一態様に係る画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の像担持体と、各像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、前記各像担持体の表面にそれぞれ供給する、複数の現像ローラとを備え、前記各像担持体が、それぞれアモルファスシリコン感光体であり、前記現像剤として、前記現像剤を用いることを特徴とする。
【0072】
図1は、画像形成装置1の全体構成を示す概略断面図である。ここでは、画像形成装置1としては、カラープリンタ1を例に挙げて説明する。
【0073】
前記カラープリンタ1は、図1に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙Pに転写された画像に対して定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、前記機器本体1aの上面には、前記定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0074】
前記給紙部2は、給紙カセット21、ピックアップローラ22、給紙ローラ23,24,25、及びレジストローラ対26を備えている。前記給紙カセット21は、前記機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。前記ピックアップローラ22は、前記給紙カセット21の図1に示す右上方位置に設けられ、前記給紙カセット21に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。前記給紙ローラ23,24,25は、前記ピックアップローラ22によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。前記レジストローラ対26は、前記給紙ローラ23,24,25によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで前記画像形成部3に供給する。
【0075】
また、前記給紙部2は、前記機器本体1aの図1に示す右側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラ27とをさらに備えている。このピックアップローラ27は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。前記ピックアップローラ27によって取り出された用紙Pは、前記給紙ローラ23,25によって用紙搬送路に送り出され、前記レジストローラ対26によって、所定のタイミングで前記画像形成部3に供給される。
【0076】
前記画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にトナー像が1次転写される中間転写ベルト11と、この中間転写ベルト11上のトナー像を前記給紙カセット21から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラ12とを備えている。
【0077】
前記画像形成ユニット7は、上流側(図1では左側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての感光体ドラム71が矢符(反時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体ドラム71の周囲には、帯電器75、露光装置76、現像装置72、クリーニング装置73及び除電器74等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。なお、感光体ドラム71としては、例えば、感光層がアモルファスシリコンを含有するアモルファスシリコン感光体等が挙げられる。
【0078】
前記帯電器75は、矢符方向に回転されている感光体ドラム71の周面を均一に帯電させる。前記帯電器75としては、例えば、スコロトロン帯電器等が挙げられる。前記露光装置76は、いわゆるレーザ走査ユニットであり、前記帯電器75によって均一に帯電された感光体ドラム71の周面に、画像読取装置等から入力された画像データに基づくレーザ光を照射し、前記感光体ドラム71上に画像データに基づく静電潜像を形成する。前記現像装置72は、静電潜像が形成された感光体ドラム71の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト11に1次転写される。前記クリーニング装置73は、中間転写ベルト11へのトナー像の1次転写が終了した後、前記感光体ドラム71の周面に残留しているトナーを清掃する。前記除電器74は、1次転写が終了した後、前記感光体ドラム71の周面を除電する。前記クリーニング装置73及び前記除電器74によって清浄化処理された感光体ドラム71の周面は、新たな帯電処理のために帯電器75へ向かい、新たな画像形成に備える。
【0079】
前記中間転写ベルト11は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体ドラム71の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラ13、ベルト支持ローラ14、バックアップローラ15、及び1次転写ローラ16等の複数のローラに架け渡されている。また、前記中間転写ベルト11は、各感光体ドラム71と対向配置された1次転写ローラ16によって感光体ドラム71に押圧された状態で、前記複数のローラによって無端回転するように構成されている。
【0080】
前記駆動ローラ13は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、前記中間転写ベルト11を無端回転させるための駆動力を与える。前記ベルト支持ローラ14、及び前記バックアップローラ15は、回転自在に設けられ、駆動ローラ13による前記中間転写ベルト11の無端回転に伴って回転する従動ローラである。これらの従動ローラ14,15は、前記駆動ローラ13の主動回転に応じて中間転写ベルト11を介して従動回転するとともに、前記中間転写ベルト11を支持する。
【0081】
前記1次転写ローラ16は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を前記中間転写ベルト11に印加する。そうすることによって、各感光体ドラム71上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム71と前記1次転写ローラ16との間で、前記駆動ローラ13の駆動により矢符(時計回り)方向に周回する中間転写ベルト11に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。なお、前記1次転写ローラ16は、前記感光体ドラム71を回転させる駆動モータから駆動力を得て回転するものである。
【0082】
前記2次転写ローラ12は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、前記中間転写ベルト11上に1次転写されたトナー像は、前記2次転写ローラ12と前記バックアップローラ15との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像が形成される。
【0083】
前記定着部4は、前記画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラ41と、この加熱ローラ41に対向配置され、周面が加熱ローラ41の周面に押圧当接される加圧ローラ42とを備えている。
【0084】
そして、前記画像前記部3で前記2次転写ローラ12により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが前記加熱ローラ41と前記加圧ローラ42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、前記排紙部5へ排紙されるようになっている。また、前記カラープリンタ1では、前記定着部4と前記排紙部5との間に適所に搬送ローラ6が配設されている。
【0085】
前記画像形成装置1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記のようなタンデム方式の画像形成装置では、上述したように、印字率の大きく変化するが、前記現像剤を用いることによって、印字率の大きく変化する印刷を長期間行った場合であっても、かぶりの発生を抑制でき、よって、長期間にわたって高画質な画像を形成することができる。
【実施例】
【0086】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0087】
(表面処理粒子aの製造方法)
攪拌器、温度計、窒素導入管、還流冷却器及び滴下ロートを装着した、2リットルのセパラブル・フラスコに、イオン交換水100質量部と、モノステアリン酸エチレングリコール(界面活性剤)1質量部とを投入し、液温が80℃になるまで昇温した。その後、開始剤として、(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩)0.1部を添加し、メタクリル酸メチル70質量部、メタクリル酸部ブチル30質量部を滴下し、3時間80℃に維持した。得られた液体を限外ろ過装置により精製し、スプレードライにて乾燥することによって、粉体(メタクリル系樹脂微粒子)が得られた。
【0088】
そして、得られたメタクリル系樹脂微粒子1質量部と、その表面処理剤としてステアリン酸亜鉛(日油株式会社製のジンクステアリレートS−Z)0.01質量部とをヘンシェルミキサに添加し、それらを混合した。そうすることによって、表面処理粒子aが得られた。
【0089】
(表面処理粒子の帯電量の測定方法)
得られた表面処理粒子aの帯電量を以下のようにして測定した。まず、得られた表面処理粒子a1質量部と、平均粒径40μmのフェライトキャリア(パウダーテック株式会社製のF−300)100質量部とを、ターブラーシェーカーミキサに投入し、それらを所定時間混合した。そして、得られた、混合物を吸引式帯電量測定装置(トレック社のq/mメータ MODEL 210HS)で測定した。
【0090】
その結果、表面処理粒子aの、5分間混合後の帯電量は、−40μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、20μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、20μC/gであった。
【0091】
(表面処理粒子b)
ステアリン酸亜鉛の代わりに、ステアリン酸マグネシウム(堺化学工業株式会社製のSM−1000)を用いること以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子bが得られた。
【0092】
そして、得られた表面処理粒子bの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子bの、5分間混合後の帯電量は、−35μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、25μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、25μC/gであった。
【0093】
(表面処理粒子c)
ステアリン酸亜鉛の代わりに、ラウリン酸亜鉛(堺化学工業株式会社製のZ−12F)を用いること以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子cが得られた。
【0094】
そして、得られた表面処理粒子cの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子cの、5分間混合後の帯電量は、−45μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、15μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、15μC/gであった。
【0095】
(表面処理粒子d)
メタクリル系樹脂微粒子の代わりに、アクリル系樹脂微粒子を用いること以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子dが得られた。
【0096】
そして、得られた表面処理粒子dの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子dの、5分間混合後の帯電量は、−40μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、18μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、18μC/gであった。
【0097】
なお、前記アクリル系樹脂微粒子は、以下のようにして得られたものである。
【0098】
攪拌器、温度計、窒素導入管、還流冷却器及び滴下ロートを装着した、2リットルのセパラブル・フラスコに、イオン交換水1100重量部、ポリビニルアルコール0.4重量部、アクリル酸メチル300重量部を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら、液温が80℃になるまで昇温した。過硫酸カリウム1.0重量部、チオ硫酸ナトリウム1.1重量部を投入して重合を開始させた。その後、アクリル酸3重量部、イオン交換水100重量部を10分で滴下し、その後反応温度を70℃に保持して、3時間反応させた。得られたラテックスに酢酸マグネシウム1.0重量部を添加し、スプレードライヤーにて乾燥し、ジェットミルにて解砕して、アクリル系樹脂微粒子を得た。
【0099】
(表面処理粒子e)
メタクリル系樹脂微粒子に、ステアリン酸亜鉛を混合させる処理の代わりに、フロロシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製のFS1265)を混合させる処理(フッ素処理)を施したこと以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子eが得られた。
【0100】
そして、得られた表面処理粒子eの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子eの、5分間混合後の帯電量は、−40μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、−35μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、−35μC/gであった。
【0101】
(表面処理粒子f)
ステアリン酸亜鉛の代わりに、アミノ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製のKF−8004)を用いること以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子fが得られた。
【0102】
そして、得られた表面処理粒子fの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子fの、5分間混合後の帯電量は、20μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、5μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、5μC/gであった。
【0103】
(表面処理粒子g)
メタクリル系樹脂微粒子の代わりに、フッ素系樹脂微粒子(ダイキン工業株式会社製のルブロンL−2)を用い、ステアリン酸亜鉛を混合させる処理の代わりに、アミノシラン系シランカップリング剤(東京化成工業株式会社製のA0774)を混合させる処理(アミノシラン処理)を施したこと以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子gが得られた。
【0104】
そして、得られた表面処理粒子gの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子gの、5分間混合後の帯電量は、10μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、−10μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、−10μC/gであった。
【0105】
(表面処理粒子h)
ステアリン酸亜鉛(日油株式会社製のジンクステアリレートS−Z)を0.01質量部添加する代わりに、0.0005質量部添加すること以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子hが得られた。
【0106】
そして、得られた表面処理粒子hの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子hの、5分間混合後の帯電量は、−10μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、20μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、20μC/gであった。
【0107】
(表面処理粒子i)
ステアリン酸亜鉛(日油株式会社製のジンクステアリレートS−Z)を0.01質量部添加する代わりに、0.001質量部添加すること以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子iが得られた。
【0108】
そして、得られた表面処理粒子iの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子iの、5分間混合後の帯電量は、−25μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、15μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、20μC/gであった。
【0109】
(表面処理粒子j)
ステアリン酸亜鉛(日油株式会社製のジンクステアリレートS−Z)を0.01質量部添加する代わりに、0.1質量部添加すること以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子jが得られた。
【0110】
そして、得られた表面処理粒子jの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子jの、5分間混合後の帯電量は、−50μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、10μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、20μC/gであった。
【0111】
(表面処理粒子k)
ステアリン酸亜鉛(日油株式会社製のジンクステアリレートS−Z)を0.01質量部添加する代わりに、0.2質量部添加すること以外、上記表面処理粒子aの製造方法と同様にすることによって、表面処理粒子kが得られた。
【0112】
そして、得られた表面処理粒子kの帯電量は、上記の表面処理粒子の帯電量の測定方法を用いて測定した結果、以下のような帯電量であった。表面処理粒子kの、5分間混合後の帯電量は、−60μC/gであり、30分間混合後の帯電量は、5μC/gであり、120分間混合後の帯電量は、20μC/gであった。
【0113】
表面処理粒子a〜kについての、上記各事項を、表1にまとめて示す。
【0114】
【表1】

【0115】
表1からわかるように、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理した表面処理粒子(表面処理粒子a〜d、及びh〜k)は、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩以外の表面処理剤で表面処理した表面処理粒子(表面処理粒子e〜g)と異なり、帯電量が、フェライトキャリアとの混合時間に応じて、負から正へと移行する。このことから、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理した表面処理粒子(表面処理粒子a〜d、及びh〜k)は、徐々に負に帯電していく、前記表面処理粒子を含まないトナー母粒子と中和する効果を発揮できることがわかる。
【0116】
さらに、脂肪酸金属塩の添加量が、樹脂微粒子1質量部に対して0.001〜0.1質量部である場合(表面処理粒子a〜d、i及びj)は、0.001質量部未満である場合(表面処理粒子h)や0.1質量部を超える場合(表面処理粒子k)と比較して、帯電量の変化が大きい。このことから、脂肪酸金属塩の添加量が、樹脂微粒子1質量部に対して0.001〜0.1質量部である場合(表面処理粒子a〜d、i及びj)は、上記中和する効果をより発揮できることがわかる。
【0117】
[実施例1]
(ブラックトナーの製造)
まず、結着樹脂として、ビスフェノールAとフマル酸とを重縮合して得られたポリエステル樹脂(花王株式会社製のタフトンNE−1110)100質量部、着色剤として、カーボンブラック(三菱化学株式会社製のMA−100)4質量部、ワックスとして、フィッシャートロプシュワックス(日本精蝋株式会社のFT−100)3質量部、電荷制御剤として、4級アンモニウム塩化合物(オリエント化学工業株式会社製のP−51)2重量部を、ヘンシェルミキサ(日本コークス工業株式会社製)で2分間混合した。その後、得られた混合物を2軸押出機(株式会社池貝製のPCM−30)で溶融混練した。そして、得られた溶融混練物を気流式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製のジェットミルIDS−2)で微粉砕し、風力分級機(ホソカワミクロン株式会社製のTPS分級機)で分級処理した。そうすることによって、体積平均径8μmのトナー母粒子が得られた。なお、トナー母粒子の体積平均径は、粒度計(ベックマンコールター株式会社製のマルチサイザー3)によって、測定した。
【0118】
次に、得られたトナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、シリカ粒子(キャボット社製のTG−820)1質量部、酸化チタン粒子(テイカ株式会社製のJR−405)1.5質量部、前記表面処理粒子a0.1質量部を添加し、同上のヘンシェルミキサで、3000rpm、10分間混合した。そうすることによって、トナー(外添剤が外添されたトナー母粒子)が得られた。なお、前記表面処理粒子aの、トナー母粒子100質量部に対する含有量は、0.1質量部である。また、前記表面処理粒子aの、外添剤全量100質量部に対する含有量は、約3.85質量部である。
【0119】
(イエロートナーの製造)
カーボンブラック4質量部の代わりに、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー180)2質量部添加したこと以外、上記ブラックトナーの製造と同様に製造した。
【0120】
(シアントナーの製造)
カーボンブラック4質量部の代わりに、シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15−3)3質量部添加したこと以外、上記ブラックトナーの製造と同様に製造した。
【0121】
(マゼンタトナーの製造)
カーボンブラック4質量部の代わりに、マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド238)3質量部添加したこと以外、上記ブラックトナーの製造と同様に製造した。
【0122】
(現像剤の製造)
上記のようにして得られた各トナーをそれぞれ、フェライトキャリア100質量部に対して、10質量部の割合(トナー濃度)となるように配合した。そうすることによって、現像剤が得られた。
【0123】
[実施例2]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子bを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0124】
[実施例3]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子cを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0125】
[実施例4]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子dを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0126】
[実施例5]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子hを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0127】
[実施例6]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子iを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0128】
[実施例7]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子jを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0129】
[実施例8]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子kを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0130】
[実施例9]
前記表面処理粒子aを、前記トナー母粒子100質量部に対して0.005質量部を添加すること以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。なお、前記表面処理粒子aの、トナー母粒子100質量部に対する含有量は、0.005質量部であり、前記表面処理粒子aの、外添剤全量100質量部に対する含有量は、約0.2質量部である。
【0131】
[実施例10]
前記表面処理粒子aを、前記トナー母粒子100質量部に対して0.01質量部を添加すること以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。なお、前記表面処理粒子aの、トナー母粒子100質量部に対する含有量は、0.01質量部であり、前記表面処理粒子aの、外添剤全量100質量部に対する含有量は、約0.4質量部である。
【0132】
[実施例11]
前記表面処理粒子aを、前記トナー母粒子100質量部に対して1質量部を添加すること以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。なお、前記表面処理粒子aの、トナー母粒子100質量部に対する含有量は、1質量部であり、前記表面処理粒子aの、外添剤全量100質量部に対する含有量は、約28.57質量部である。
【0133】
[実施例12]
前記表面処理粒子aを、前記トナー母粒子100質量部に対して1.2質量部を添加すること以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。なお、前記表面処理粒子aの、トナー母粒子100質量部に対する含有量は、1.2質量部であり、前記表面処理粒子aの、外添剤全量100質量部に対する含有量は、約32.43質量部である。
【0134】
[実施例13]
前記トナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、シリカ粒子(キャボット社製のTG−820)3.5質量部、酸化チタン粒子(テイカ株式会社製のJR−405)1質量部、前記表面処理粒子a0.01質量部を添加すること以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。なお、前記表面処理粒子aの、トナー母粒子100質量部に対する含有量は、0.01質量部であり、前記表面処理粒子aの、外添剤全量100質量部に対する含有量は、約0.22質量部である。
【0135】
[実施例14]
前記トナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、シリカ粒子(キャボット社製のTG−820)3質量部、酸化チタン粒子(テイカ株式会社製のJR−405)1質量部、前記表面処理粒子a0.01質量部を添加すること以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。なお、前記表面処理粒子aの、トナー母粒子100質量部に対する含有量は、0.01質量部であり、前記表面処理粒子aの、外添剤全量100質量部に対する含有量は、約0.25質量部である。
【0136】
[実施例15]
前記トナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、シリカ粒子(キャボット社製のTG−820)1.4質量部、酸化チタン粒子(テイカ株式会社製のJR−405)1質量部、前記表面処理粒子a1質量部を添加すること以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。なお、前記表面処理粒子aの、トナー母粒子100質量部に対する含有量は、1質量部であり、前記表面処理粒子aの、外添剤全量100質量部に対する含有量は、約29.41質量部である。
【0137】
[実施例16]
前記トナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、シリカ粒子(キャボット社製のTG−820)1質量部、酸化チタン粒子(テイカ株式会社製のJR−405)1質量部、前記表面処理粒子a1質量部を添加すること以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。なお、前記表面処理粒子aの、トナー母粒子100質量部に対する含有量は、1質量部であり、前記表面処理粒子aの、外添剤全量100質量部に対する含有量は、約33.33質量部である。
【0138】
[比較例1]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子eを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0139】
[比較例2]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子fを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0140】
[比較例3]
表面処理粒子aの代わりに、表面処理粒子gを用いたこと以外、実施例1と同様にして、トナー及び現像剤を製造した。
【0141】
[評価]
得られたトナー及び現像剤については、以下のような方法で評価した。
【0142】
まず、京セラミタ株式会社製のカラーMFP(KM−C3232)を評価機として用い、得られた各現像剤をスタート現像剤として用い、さらに、得られた各トナーを補給用トナーとして用いて、温度20〜23℃、相対湿度50〜65%RHの、常温常湿環境下で画像形成して、下記の評価を行った。
【0143】
具体的には、まず、前記スタート現像剤を、前記評価機にセットし、前記評価機の電源を入れて安定させた。その後、画像を出力させた。なお、この画像を初期画像とした。次に、補給用トナーを補給しながら、印字率0.1%の画像を2000枚印字した。なお、2000枚目の画像を低濃度印刷画像とした。その後、補給用トナーを補給しながら、印字率30%の画像を1000枚印字した。なお、1000枚目(初期画像から3000枚目)の画像を高濃度印刷画像とした。
【0144】
(画像濃度)
前記初期画像、前記低濃度印刷画像、及び前記高濃度印刷画像の各画像には、2×2cmのソリッド画像が、用紙の搬送方向左側端部近傍の位置、中央部、及び右側端部近傍の位置の3箇所に形成されている。
【0145】
形成された画像の各ソリッド画像について、反射濃度計(Gretag Macbeth社製のRD−19A:SpectroEyeLT)を用いて反射濃度を測定した。そして、その平均値を得られた画像の画像濃度とした。そして、初期画像から500枚ずつ画像濃度を測定した。
【0146】
測定した画像濃度の下限値が1.2以上であれば、「○」と評価し、1以上1.2未満であれば、「△」と評価し、1未満であれば、「×」と評価した。
【0147】
(かぶり)
得られた画像において、前記反射濃度計で測定した白紙相当部の画像濃度の値から、ベースペーパー(すなわち、画像出力前の白紙)の画像濃度の値を引いた値をかぶり濃度とした。そして、初期画像から500枚ずつかぶり濃度を測定した。
【0148】
前記かぶり濃度の最大値が、0.007以下であれば、「◎」と評価し、0.007を超え0.010以下であれば、「○」と評価し、0.010を超え0.020以下であれば、「△」と評価し、0.020を超えるのであれば、「×」と評価した。
【0149】
(帯電量)
前記初期画像、前記低濃度印刷画像、及び前記高濃度印刷画像を印字した直後の現像剤を取り出し、上記と同様の方法で各帯電量を測定した。
【0150】
各評価結果は、表2に示す。
【0151】
【表2】

【0152】
表2からわかるように、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理した表面処理粒子を外添剤として含有する場合(実施例1〜16)は、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩以外の表面処理剤で表面処理した表面処理粒子を外添剤として含有する場合(比較例1〜3)と比較して、画像濃度が同程度であったとしても、かぶり濃度の低かった。このことは、帯電量の変化が少ないことによると考えられる。
【0153】
さらに、脂肪酸金属塩の添加量が、樹脂微粒子1質量部に対して0.001〜0.1質量部である場合(実施例1〜5及び実施例8)は、0.001質量部未満である場合(実施例6)や0.1質量部を超える場合(実施例7)と比較して、よりかぶり濃度が低かった。このことは、帯電量の変化がより少ないことによると考えられる。
【0154】
また、前記トナー母粒子100質量部に対する前記表面処理粒子の含有量が、0.01〜1質量部である場合(例えば、実施例10及び実施例11等)は、前記含有量が0.01質量部未満である場合(実施例9)と比較して、よりかぶり濃度が低かった。また、実施例10及び実施例11等は、前記含有量が1質量部を超える場合(実施例10)と比較して、かぶり濃度を低く維持したまま、画像濃度が高かった。このことも、帯電量の変化がより少ないことによると考えられる。
【0155】
また、前記外添剤100質量部に対する前記表面処理粒子の含有量が、0.25〜30質量部である場合(例えば、実施例14及び実施例15等)は、前記含有量が0.25質量部未満である場合(実施例13)と比較して、よりかぶり濃度が低かった。また、実施例10及び実施例11等は、前記含有量が30質量部を超える場合(実施例16)と比較して、かぶり濃度を低く維持したまま、画像濃度が高かった。このことも、帯電量の変化がより少ないことによると考えられる。
【符号の説明】
【0156】
1 画像形成装置(カラープリンタ)
2 給紙部
3 画像形成部
4 定着部
5 排紙部
6 搬送ローラ
7 画像形成ユニット
11 中間転写ベルト
12 2次転写ローラ
13 駆動ローラ
14 ベルト支持ローラ
15 バックアップローラ
16 1次転写ローラ
21 給紙カセット
22 ピックアップローラ
23,24,25 給紙ローラ
26 レジストローラ対
27 ピックアップローラ
41 加熱ローラ
42 加圧ローラ
71 感光体ドラム
72 現像装置
73 クリーニング装置
74 除電器
75 帯電器
76 露光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母粒子と、
前記トナー母粒子に外添される外添剤とを含み、
前記外添剤が、樹脂微粒子を脂肪酸金属塩で表面処理した表面処理粒子を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
【請求項2】
前記表面処理粒子が、前記トナー母粒子100質量部に対して、0.01〜1質量部含有させることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
前記外添剤が、無機微粒子を含み、
前記表面処理粒子が、前記外添剤100質量部に対して、0.25〜30質量部含有させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
前記表面処理粒子が、前記樹脂微粒子1質量部に対して、前記脂肪酸金属塩を0.001〜0.1質量部添加して得られた粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
前記脂肪酸金属塩が、炭素数12〜24の飽和脂肪酸の金属塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項6】
前記脂肪酸金属塩が、ステアリン酸及びラウリン酸の少なくともいずれかの金属塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項7】
前記樹脂微粒子が、アクリル系樹脂微粒子及びメタクリル系樹脂微粒子の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項8】
アモルファスシリコン感光体を備えた画像形成装置に使用されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真用トナー。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の電子写真用トナーとキャリアとを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項10】
各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の像担持体と、
各像担持体に対向して配置され、表面に現像剤のトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、前記各像担持体の表面にそれぞれ供給する、複数の現像ローラとを備え、
前記各像担持体が、それぞれアモルファスシリコン感光体であり、
前記現像剤として、請求項9に記載の現像剤を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−33716(P2011−33716A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178105(P2009−178105)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】