電子写真用感光体、電子写真用感光体周方向特定位置検出システム、電子写真用感光体ユニットの製造方法及び電子写真装置
【課題】電子写真用感光体の周方向ホームポジションを誤検出なく検出することを実現し、かつ、周方向ホームポジションの視覚認識性及び剥れに対する耐久性も実現可能な電子写真用感光体及び電子写真用感光体周方向特定位置検出システムを提供する。
【解決手段】円筒状基体上に光導電層を形成した電子写真用感光体であって、円筒状基体の端部面に、凹部と、前記凹部の上に付着された塗料からなり、かつ表面が平滑形状であるマークが、少なくとも一つ形成されている。
【解決手段】円筒状基体上に光導電層を形成した電子写真用感光体であって、円筒状基体の端部面に、凹部と、前記凹部の上に付着された塗料からなり、かつ表面が平滑形状であるマークが、少なくとも一つ形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に使用される電子写真用感光体、電子写真用感光体ユニットの製造方法及び当該電子写真用感光体を使用した電子写真装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真用感光体を利用した画像形成装置としては、複写機、ファクシミリ装置、コンピュータの出力手段であるプリンタなどに広く利用されている。このような画像形成装置は、例えば、その画質の良さや高速なプリントアウトなどの特徴を有しているため、注目を浴びている。
そのような画像形成装置においては、近年急速にデジタル化、カラー化が進んでいる。又、画像形成装置は、文字だけでなく、写真や絵などの画像を形成する機会が急増している。その結果、画像形成装置の高画質化への要求は、以前に増して高まっている。ここでいう「高画質」とは、例えば、高解像であること及び濃度ムラが小さいことを指している。特に、濃度ムラの判別は人の目にとって容易なこともあり、濃度ムラの低減に対する要求は極めて高いものとなっている。
【0003】
濃度ムラの発生要因の一つとして、電子写真用感光体の帯電特性や光感度特性の不均一性が挙げられる。帯電特性や光感度特性の不均一性は、電子写真用感光体を構成する薄膜の品質や厚みの不均一性に起因する。
このような課題に対して、近年においては電子写真用感光体の製造方法や製造装置の改良が進み、電子写真用感光体を構成する薄膜の品質や厚みの不均一性は低減され、その結果濃度ムラの低減も進んできている。
【0004】
しかしながら、未だ改善の余地を有しているのが現状である。例えば、安定性や耐久性に優れる高速複写機に使用されることが多いアモルファスシリコン(a−Si)を含んだ電子写真用感光体(以下、a−Si感光体とも略記する。)の場合、その製造方法として一般的にプラズマCVD法が利用される。しかし、プラズマCVD法の特色上、電子写真用感光体として必要なサイズ全体に渡って、品質及び厚みの均一な膜を形成することは容易ではない。
特許文献1には、このような課題に対応した画像形成装置が開示されている。特許文献1に記載の画像形成装置では、予め測定された電子写真用感光体の帯電特性の分布に対応した特性情報を記憶するメモリが電子写真用感光体に搭載された画像形成装置が開示されている。画像形成装置は、上記特性情報に基づいて露光手段の露光動作を制御し、画像濃度の不均一性を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−227452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の画像形成装置において、電子写真用感光体周方向における露光制御を行う場合においては、電子写真用感光体の帯電特性情報のみならず周方向基準位置(以下、「ホームポジション」とも呼ぶ。)情報を予め測定する必要がある。
又、電子写真用感光体を画像形成装置に設置する際に、電子写真用感光体の周方向ホームポジションに合わせて電子写真用感光体を画像形成装置に設置する場合があるため、電子写真用感光体の周方向ホームポジションは視覚的に容易に認識できるものである必要がある。
【0007】
従って、電子写真用感光体には周方向ホームポジションとして視覚的に認識できるマークが設けられる必要があり、かつ前記マークは帯電特性を測定する際に、帯電特性測定装置に設けられた周方向ホームポジション検出機構によって検出可能である必要がある。
さらには前述した各工程における作業及び各工程間における輸送等において、前記マークは剥れに対する耐久性が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、まず、電子写真用感光体の帯電特性を測定する際に周方向ホームポジションを検出するための検討を行った。
周方向ホームポジションを示すマークを設置する場所としては、マーク設置による画像への影響を極力無くすために、電子写真用感光体における感光面以外の部分、即ち電子写真用感光体の端部面である必要がある。
【0009】
図1(a)及び(b)は電子写真用感光体1001の端部面を模式的に表した図であり、図1(a)における電子写真用感光体1001を図中A方向から見た面を図1(b)に示し端部面1002としている。
次に、電子写真用感光体の周方向ホームポジションを検出する装置としては、電子写真用感光体に対して非接触でマークを検出することが好ましいため、レーザー光を電子写真用感光体の端部面に照射し、その直接反射光の強さを測定することで電子写真用感光体に設けられたマークを検出する方法が一般的である。具体的には、照射光がマークを通過する際に、直接反射光が弱まることでマークを検出する。
【0010】
図2は直接反射光を測定する場合の模式図であり、レーザー光源2001より電子写真用感光体の端部面2002に照射した光2003の直接反射光2004の強度をセンサー2005によって測定している。
しかしながら、電子写真用感光体の端部面2002においては、プラズマCVD法において電子写真用感光体を製造する過程で、堆積膜が付着したり、微小な傷が形成されてしまう場合がある。そうした場合においては、照射光2003が前記堆積膜や微小な傷を通過した際に、直接反射光2004が弱まる場合があり、マークとの識別が安定してできない場合がある。
この問題に対して、本発明者らは鋭意検討した。その結果、照射したレーザー等の光の散乱光の強さを測定すること、かつ塗料を電子写真用感光体の端部面に付着させることでマークを形成しマーク表面を平滑な形状とすることにより、前述したような誤検出の問題を解消することができることを見出した。
【0011】
図3は散乱光を測定する場合の模式図であり、図3(a)は塗料が付着されていない部分を測定する場合であり、図3(b)は塗料によるマーク部分3001を測定する場合である。又、レーザー光源3002より電子写真用感光体の端部面3003に照射した光3004の散乱光3005の強度をセンサー3006によって測定している。
ここで、塗料が付着していない部分と塗料が付着している部分とでは、表面の平滑性に違いが生じる。その結果、表面が平滑である塗料を付着した部分の方が光の散乱が少なくなる為に、散乱光3005の強度に差が生じ、塗料によるマーク3001を検出することができる。
又、周方向ホームポジションを示すマークとして塗料を付着させることにより、視覚的にも容易に周方向ホームポジションを認識できる形態とすることができる。従って、電子写真用感光体を画像形成装置に設置する際においても、電子写真用感光体の周方向ホームポジションに合わせて電子写真用感光体を画像形成装置に容易に設置することができ、前述したような視覚認識性の課題も解消することができる。
本発明者らは、次に、塗料を付着させることで形成させたマークの剥れに対する耐久性の検討を行い、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し前記凹部の上に塗料を付着させることで塗料の密着性を向上させることを見出した。その結果、前述した各工程における作業及び各工程間における輸送等においてマークの剥れに対する耐久性の課題も解消することができる。
【0012】
図4(a)(b)は電子写真用感光体の端部面4001に形成された凹部4002と凹部の上に付着させた塗料4003の模式図の一例である。又、図4(c)は図4(b)の点線Bでの断面図である。
以上のように、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、前記凹部の上に塗料を付着させ表面が平滑なマークを形成することで周方向ホームポジションとする。さらに、電子写真用感光体の帯電特性を測定する際に周方向ホームポジションを検出する手段として、レーザー光を電子写真用感光体の端部面に照射しその散乱光を検出することにより、前述した課題に対し大きな効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の電子写真用感光体は、円筒状基体上に光導電層を形成した電子写真用感光体において、円筒状基体の端部面に、凹部と、前記凹部の上に付着された塗料で形成され、かつ表面が平滑形状であるマークが、少なくとも一つ形成されていることを特徴としている。
又、本発明の電子写真用感光体周方向特定位置検出システムは、円筒状基体の端部面にレーザーを照射した結果生じる散乱光を測定することで、円筒状基体の端部面に形成されたマーク位置を検出することで周方向特定位置を検出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、円筒状基体の端部面に凹部を形成し、かつ凹部の上に塗料を付着させ表面が平滑なマークを形成することで周方向ホームポジションとする。さらに、レーザー光を円筒状基体の端部面に照射しその散乱光によってマークを検出する。以上により、電子写真用感光体の周方向ホームポジションを誤検出なく検出することを実現し、かつ周方向ホームポジションの視覚認識性及び剥れに対する耐久性も実現可能な電子写真用感光体及び電子写真用感光体周方向特定位置検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る電子写真用感光体の端部面を示す模式図である。
【図2】電子写真用感光体の周方向ホームポジション検出方法の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に係る電子写真用感光体の周方向ホームポジション検出方法の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る電子写真用感光体の端部面に形成された凹部と凹部の上に付着させた塗料の一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る溝が環状に繋がった形態の例を示す模式図である。
【図6】本発明に係る円筒状基体の端部面の接線方向を示す模式図である。
【図7】本発明に係る電子写真用感光体ユニットの一例を示す模式図である。
【図8】本発明に係る電子写真装置における電子写真感光体ユニット周辺の一例を示す模式図である。
【図9】本発明に係る堆積膜形成装置の一例を示す模式図である。
【図10】電子写真用感光体の端部面に塗料のみを付着させたマークの一例を示す模式図である。
【図11】電子写真用感光体の梱包ケースの一例を示す模式図である。
【図12】本発明に係る電子写真用感光体の端部面に形成された凹部と凹部の上に付着させた塗料の例を示す模式図である。
【図13】電子写真用感光体の特性測定手段の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に用いられる円筒状基体の端部面に形成される凹部としては、物理的にへこんだ形状であれば特に限定はされない。しかしながら、凹部の上に付着される塗料の平滑部を確保すること、及び塗料の密着性を確保するという観点からは溝が環状に繋がった形態であることがより好ましい。又、ここでいう環状とは図5(a)、(b)、(c)に一例として示すように、溝が繋がった形状を意味する。
本発明に用いられる電子写真用感光体周方向特定位置検出システムにおいて用いられる、円筒状基体の端部面に照射する光としては特に制限はないが、測定精度の面で照射光のスポット径は小さい方が好ましいため、レーザー光を用いることが好ましい。
【0016】
本発明に用いられる円筒状基体の端部面に付着される塗料としては、円筒状基体の端部面に付着可能であり、視覚的に認識可能な色彩であれば特に限定されるものではない。しかしながら、円筒状基体の材料としては金属、中でもアルミニウムが使用されることが多いため、アルミニウムに対する付着力が強い塗料を使用することが好ましい。又、レーザー光の散乱光によるマーク検出精度の面からは、円筒状基体の端部面凹部の上にマークとして塗料を付着させた後に、塗料の表面を平滑形状とする。従って、表面を平滑形状とすることが可能な程度の粘性を持つ塗料を使用する。
又、ここでいう平滑形状とは、算術平均粗さ:Ra(JIS B 0601−1994、但し、測定対象物が小さいため、評価長さを0.3mmに固定)において、0.1μm以下を満たす形状を意味する。
【0017】
次に、それぞれの電子写真用感光体を図11に示すような発泡スチロール製の梱包ケースに入れ、物流試験標準(JIS Z0232)に従い、振動試験装置(EMIC CORP.Model 905−FN)に設置した。
又、本発明においては、レーザー光の散乱光によるマーク検出精度の面からは、円筒状基体の端部面の凹部以外の部分の上にも塗料が付着されることが好ましい。それにより、円筒状基体の端部面に付着させた後の塗料の表面をより平滑な形状とすることができるからである。
又同様の観点から、前記凹部以外の部分に付着された塗料の、前記円筒状基体の端部面の接線方向における長さは0.5mm以上であることが好ましい。又、マークによる周方向位置特定精度の面では、前記凹部以外の部分に付着された塗料の、前記接線方向における長さは2.0mm以下であることが好ましい。
円筒状基体の端部面の接線方向とは、図6に示す矢印の方向である。
【0018】
又、本発明においては、レーザー光の散乱光によるマーク検出精度の面からは、円筒状基体の端部面に形成される凹部が、溝が環状に繋がった形態である場合、環状の溝によって囲まれかつ塗料が付着された部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さが0.5mm以上であることが好ましい。
尚、環状の溝によってに囲まれた部分の長さとは図5に示すCの部分である。
【0019】
又、本発明において用いられる周方向特定位置特定システムとしては、マーク検出精度の面からは、レーザーを照射した結果生じる散乱光を測定することが好ましい。図3は散乱光をモニターする場合の模式図であり、レーザー光源3002より端部面3003に照射した光3004の散乱光3005の強度をセンサー3006によって測定している。
このような散乱光3005の強度を測定する場合においては、照射光3004が端部面に形成された堆積膜や微小な傷を通過した際に、散乱光の強度の変化が小さいために、マークとの識別が安定してできるのである。
【0020】
又、本発明における電子写真用感光体ユニットにおいて使用されるフランジの少なくとも一つには周方向ホームポジションを示すマークが少なくとも一つ設けられている。そして、電子写真用感光体の端部面に設けられたマークとフランジに設けられたマークの位置関係が所定の位置関係となるように電子写真用感光体にフランジが組み付けられることを特徴としている。
図7は電子写真用感光体ユニットの模式図の一例であり、電子写真用感光体7001の端部面7002に周方向ホームポジションを示すマーク7003が形成されている。又、電子写真用感光体7001にはフランジ7004が設置され、フランジ7004にも周方向ホームポジションを示すマーク7005が形成されている。そして、電子写真用感光体の端部面のマーク7003の位置とフランジ7004のマーク7005の位置が揃うように電子写真用感光体7001にフランジ7004が組みつけられている。
【0021】
又、本発明における電子写真装置は、電子写真用感光体ユニットの回転機構を有し、この回転機構は周方向特定位置特定部材を有する。又、本発明における電子写真装置は、電子写真用感光体ユニットの周方向特定位置特定部材を検出する機構を有する。さらには、電子写真用感光体ユニットを電子写真装置に設置することで、電子写真用感光体ユニットの周方向特定位置特定部材とフランジに設けられたマークの位置関係が所定の位置関係となることを特徴としている。
図8(a)は電子写真装置における電子写真用感光体ユニット周辺を示す模式図の一例であり、電子写真用感光体ユニット8001は回転軸8002に固定ネジ8003で固定される。又、回転軸8002には周方向特定位置特定部材8004が取り付けられており、周方向ホームポジション検出ユニット8005の間を周方向特定位置特定部材8004が通過することで周方向ホームポジションを検出する。
【0022】
図8(b)は電子写真用感光体ユニットに組みつけられたフランジ8006と回転軸8002と固定ネジ8003を図8(a)におけるDの方向から見た場合の模式図の一例である。固定ネジ8003は凸形状の部分を有している。回転軸8002には溝が形成されている。フランジ8006には溝E、F、Gが形成されている。溝Fはフランジ8006のマーク8007に対して所定の位置に形成されている。
図8(c)に示すように回転軸8002の溝とフランジ8006の溝E、F、Gにより凸形状の溝が形成される。図8(d)に示すように、固定ネジ8003の凸形状の部分を、前述した回転軸8002とフランジ8006による凸形状の溝にはめ込むことで電子写真用感光体ユニット8001は回転軸8002に固定される。この際、固定ネジの凸部におけるHの方向と、回転軸8002に形成された溝のHの方向と、フランジ8006に形成された溝Fが揃うように取り付けられる。その結果、固定ねじの凸部におけるHの方向と、フランジ8006のマーク8007、電子写真用感光体の端部面8008のマーク8009が揃う。
又、図8における周方向特定位置特定部材8004は回転軸8002に形成された凸形状の溝のHの方向と所定の位置関係となるように設置されている。
この結果、電子写真用感光体の端部面8008のマーク8009と周方向特定位置特定部材8004が常に所定の位置関係となるように、電子写真用感光体ユニットは電子写真装置に組みつけられ、電子写真用感光体の周方向ホームポジションの検出が可能となる。
【0023】
図9は、a−Si電子写真用感光体を作製するために供される、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法を行なう堆積膜形成装置の一例を模式的に示している。
この堆積膜形成装置は、反応容器9000と、反応容器9000の中を減圧するための排気装置9001から構成されている。反応容器9000の中には、アースに接続された補助基体9002と、円筒状基体9003を加熱するための基体加熱ヒーター9004と、ガス導入管9005が設置されている。又、反応容器9000の側壁部は導電性材料からなる放電電極9006で構成され、放電電極9006と反応容器9000の他の部分は絶縁碍子9007によって絶縁されている。放電電極9006にはマッチングボックス9008を介して13.56MHzの高周波電源9009が接続されている。
不図示の原料ガス供給手段を構成する各ボンベは、原料ガス導入バルブ9010を介して反応容器9000の中のガス導入管9005に接続されている。
反応容器9000は排気管9011を有し、真空計9012、メインバルブ9013を介して排気装置9001で真空排気される構成である。
【0024】
以下、図9の装置を用いた、a−Si電子写真用感光体の作製方法の一例について説明する。
例えば、旋盤(図示せず)を用いて表面に鏡面加工を施した円筒状基体9003を、反応容器9000の中の基体加熱ヒーター9004を取り囲むように補助基体9002に設置し、キャップ9014を設置する。
次に、メインバルブ9013を開いて反応容器9000及びガス導入管9005の中を排気する。真空計9012の読みが0.67Pa以下になった時点で原料ガス導入バルブ9010を開き、加熱用の不活性ガス、一例としてアルゴンをガス導入管9005より反応容器9000の中に導入する。そして、反応容器9000の中が所望の圧力になるように加熱用の不活性ガスの流量と、メインバルブ9010の開口量あるいは排気装置9001の排気速度を調整する。その後、不図示の温度コントローラーを作動させて基体加熱ヒーター9004により円筒状基体9003を加熱し、円筒状基体9003の温度を50℃〜500℃の所望の温度に制御する。円筒状基体9003が所望の温度に加熱されたところで、不活性ガスを徐々に止めながら、成膜用の所定の原料ガスを反応容器9000の中に徐々に導入する。原料ガスは、例えば、SiH4、Si2H6、CH4、C2H6の如き材料ガスや、B2H6、PH3の如きドーピングガスであり、不図示のマスフローコントローラーによって、原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際に、反応容器9000の中を数十Paから数百Paの圧力に維持するように、真空計9012を見ながらメインバルブ9013の開口量あるいは排気装置9001の排気速度を調整する。
【0025】
以上の手順によって成膜準備を完了した後、円筒状基体9003の表面に堆積膜を形成する。反応容器9000の中の圧力が安定したことを確認した後に、高周波電源9009を所望の電力に設定して高周波電力を放電電極9006に供給し高周波グロー放電を生起させる。このときマッチングボックス9008を調整して、反射電力が最小となるようにし、高周波電力の入射電力から反射電力を差し引いた実効値を所望の値にする。この放電エネルギーによって、反応容器9000の中に導入した原料ガスが分解され、円筒状基体9003の表面に所定の堆積膜が形成される。尚、膜形成を行なっている間は円筒状基体9003をその中心軸線周りに駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させてもよい。所望の膜厚の堆積膜が形成された後に、高周波電力の供給を止め、反応容器9000の中への原料ガスの流入を止める。必要に応じて原料ガス種、高周波電力等の条件を変更して複数の堆積膜を順次形成する。その後、反応容器9000の中を一旦高真空に引き上げてから堆積膜形成工程を終える。以上の操作によってa−Si電子写真用感光体を作製する。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
<実施例1>
図9に示すプラズマ処理装置を用いて、円筒状基体上(円筒状基体の表面)に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、第1光導電層、第2光導電層、第3光導電層、表面層の順に成膜を行いプラス帯電a−Si感光体を作製した。周波数がRF帯の高周波電源を用いた。
尚、本例では20本の電子写真用感光体を作製した。
作製したそれぞれの電子写真用感光体の端部面に図4に示すような溝が環状に繋がった形状の凹部を形成し、その上に塗料を付着させることによってマークを形成した。この際、溝によって環状に囲まれかつ塗料が付着された部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さはそれぞれのドラムにおいて1.3mm〜1.8mmであった。
【0027】
尚、本例においては、シャチハタ製TATスタンプインキ<スペシャルタイプ>M−365を塗料として使用している。
作製したそれぞれの電子写真用感光体において、図3に示すようにレーザー光3004を電子写真用感光体の端部面3003に照射し、電子写真用感光体を円周方向に回転させ、その際の散乱光3005の強度を測定した。電子写真用感光体が一周する間の散乱光3005の強度が予め定めた値より小さくなった部分を求めることでマーク位置を検出し、周方向ホームポジションとした。
【0028】
尚、それぞれの電子写真用感光体において、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とし、20本の内のマーク誤検出が発生した割合を表2に示した。
次に、それぞれの電子写真用感光体を図11に示すような発泡スチロール製の梱包ケースに入れ、物流試験標準(JIS Z0232)に従い、振動試験装置(EMIC CORP.Model 905−FN)に設置した。
尚、図11(a)は梱包ケースの外観全体像であり、図11(b)は梱包ケースの内部を示した模式図である。
そして、x、y、z軸の各方向において、周波数10Hz〜100Hz、加速度1G、掃引方向LIN SWEEP、往復掃引時間5分、試験時間1時間で振動試験を行った。振動試験終了後に、それぞれの電子写真用感光体を梱包ケースより取り出した後、塗料の有無を確認し、塗料が無くなっている割合を求め表3に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
<比較例1>
実施例1で作製したそれぞれの電子写真用感光体において、図2に示すようにレーザー光2003を電子写真用感光体の端部面2002に照射し、電子写真用感光体を円周方向に回転させ、その際の直接反射光2004の強度を測定した。電子写真用感光体が一周する間の直接反射光2004の強度が予め定めた値より小さくなった部分を求めることでマーク位置を検出し、周方向ホームポジションとした。
尚、それぞれの電子写真用感光体において、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とし、20本の内のマーク誤検出が発生した割合を表2に示した。
【0031】
<比較例2>
実施例1と同様の方法で、20本の電子写真用感光体を作製し、作製したそれぞれの電子写真用感光体の端部面に図5(a)に示すような溝が環状に繋がった形状の凹部を形成することのみによってマークを形成した。凹部の上には塗料を付着させなかった。この際、溝によって環状に囲まれた部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さはそれぞれ1.3mm〜1.8mmであった。
作製したそれぞれの電子写真用感光体において、実施例1と同様に、図3に示すようにレーザー光3004を電子写真用感光体の端部面3003に照射し、電子写真用感光体を円周方向に回転させ、その際の散乱光3005の強度を測定した。電子写真用感光体が一周する間の散乱光3005の強度が予め定めた値より小さくなった部分を求めることでマーク位置を検出し、周方向ホームポジションとした。
尚、それぞれの電子写真用感光体において、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とし、20本の内のマーク誤検出が発生した割合を表2に示した。
【0032】
<比較例3>
実施例1と同様の方法で、20本の電子写真用感光体を作製し、作製したそれぞれの電子写真用感光体の端部面に図10に示すように塗料を付着させることでマークを形成した。凹部を形成しなかった。
尚、図10(b)は図10(a)におけるB線での断面図である。
又、塗料が付着された部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さはそれぞれ1.3mm〜1.8mmであった。尚、実施例1と同じ塗料を使用した。
作製したそれぞれの電子写真用感光体において、実施例1と同様にマーク位置を検出し、周方向ホームポジションとした。
尚、それぞれの電子写真用感光体において、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とし、20本の内のマーク誤検出が発生した割合を表2に示した。
次に、実施例1と同様の方法で振動試験を行い、振動試験後の塗料の有無を確認し、塗料が無くなっている割合を求め表3に示した。
<実施例1、比較例1〜3の評価>
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表2に示すように、実施例1においては比較例1、比較例2及び比較例3よりも誤検知の発生を抑制することができた。
さらに、表3に示すように、実施例1においては、比較例3よりも塗料の密着性が向上していることが分かる。
即ち、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、かつ凹部の上に塗料を付着させることで周方向ホームポジションを示すマークを形成する。さらに、電子写真用感光体の端部面にレーザーを照射しその散乱光によってマークを検出する。以上により、誤検知無く電子写真用感光体の周方向ホームポジションを検出することができた。さらには、塗料の密着性も向上させることができた。
【0036】
<実施例2>
実施例1で作製した20本の電子写真用感光体の端部面に、次に示す(イ)〜(ハ)のパターンでマークを形成した。即ち電子写真用感光体一本に付きマークは四つ形成されている。又、それぞれのマークは、図12(a)に示す配置で設けられている。
(イ)図12(b)に示すように、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、凹部分に塗料を付着させてマークを形成した。
(ロ)図12(c)に示すように、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、凹部と凹部以外の部分に塗料を付着させてマークを形成した。尚、凹部以外に塗料が付着された部分の電子写真用感光体の端部面の接線方向の長さは0.3mmとした。
(ハ)図12(d)に示すように、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、凹部と凹部以外の部分に塗料を付着させてマークを形成した。尚、凹部以外に塗料が付着された部分の電子写真用感光体の端部面の接線方向の長さは0.5mmとした。
尚、実施例1と同じ塗料を使用した。
【0037】
作製したそれぞれの電子写真用感光体において、実施例1と同様にマーク位置を検出した。
尚、実施例1で設置したマーク、及び(イ)〜(ハ)で設置したマークそれぞれにおいて、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とした。20本の電子写真用感光体それぞれについて5回マーク検出を行い、全100回のマーク検出内のマーク誤検出が発生した割合を表4に示した。
ここで、マーク誤検出の割合が3%未満の場合においては、再測定すればマーク検出されると考えられるので、実用上問題ないレベルと判断する。
【0038】
【表4】
【0039】
表4に示すように、すべての実施例において、実用上問題無いレベルであることが確認された。さらには、実施例1及び実施例2(ハ)が最もマーク誤検出を抑制することができた。
即ち、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、かつ凹部と凹部以外の部分の上に塗料を付着させてマークを形成し、凹部以外で塗料が付着した部分の円筒状基体の端部面の接線方向の長さを0.5mm以上とすることで、安定したマーク検出を実現することができた。
【0040】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で電子写真用感光体を作製し、端部面に図5(b)に示すような凹部を形成し、その上に塗料を付着させることによってマークを形成した。
尚、本例においては、溝によって環状に囲まれかつ塗料が付着された部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さは1.5mmであった。
尚、実施例1と同じ塗料を使用した。
次に、マークを設置した電子写真用感光体を図13に示すような電子写真用感光体特性測定手段を用い、帯電特性を測定した。図13に示した電子写真用感光体特性測定手段は、電子写真用感光体13001の周囲に、帯電器13002、画像露光光13003を照射する画像露光手段(図示せず)、電位センサ13004及び前露光手段13005を配置している。又、帯電特性を測定すると同時に、図3に示す方法によってマーク位置を検出し、周方向ホームポジション情報も測定した。
【0041】
次に、帯電特性及び周方向ホームポジション情報を測定された電子写真用感光体にフランジを組み付け、電子写真用感光体ユニットを製造した。尚、図7は本例において製造された電子写真用感光体ユニットの模式図であり、電子写真用感光体の端部面に設けられたマークとフランジに設けられたマークが揃うように電子写真用感光体にフランジは組み付けられている。
次に、図8に示すように電子写真用感光体ユニットを電子写真装置に設置した。さらに、予め測定した電子写真用感光体の帯電特性及び周方向ホームポジション情報を電子写真装置に記憶させた。
尚、ここでいう電子写真用感光体の帯電特性とは、電子写真用感光体の表面の帯電特性分布を意味する。
【0042】
次に、電子写真装置に記憶された、帯電特性及び周方向ホームポジション情報を基づいて電子写真装置の露光動作を制御して(以下、露光制御と呼ぶ)画像形成を行った。その結果、露光制御を行わない場合と比較して、画像濃度が均一な良好な画質の画像が得られた。
尚、ここでいう露光制御とは、電子写真装置に記憶された帯電特性に基づいて、電子写真用感光体の表面において帯電特性が高い部分と低い部分で露光量を変え、電子写真用感光体面内における帯電特性を均一にする制御を意味する。
【符号の説明】
【0043】
4001:端部面
4002:凹部
4003:塗料付着部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に使用される電子写真用感光体、電子写真用感光体ユニットの製造方法及び当該電子写真用感光体を使用した電子写真装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真用感光体を利用した画像形成装置としては、複写機、ファクシミリ装置、コンピュータの出力手段であるプリンタなどに広く利用されている。このような画像形成装置は、例えば、その画質の良さや高速なプリントアウトなどの特徴を有しているため、注目を浴びている。
そのような画像形成装置においては、近年急速にデジタル化、カラー化が進んでいる。又、画像形成装置は、文字だけでなく、写真や絵などの画像を形成する機会が急増している。その結果、画像形成装置の高画質化への要求は、以前に増して高まっている。ここでいう「高画質」とは、例えば、高解像であること及び濃度ムラが小さいことを指している。特に、濃度ムラの判別は人の目にとって容易なこともあり、濃度ムラの低減に対する要求は極めて高いものとなっている。
【0003】
濃度ムラの発生要因の一つとして、電子写真用感光体の帯電特性や光感度特性の不均一性が挙げられる。帯電特性や光感度特性の不均一性は、電子写真用感光体を構成する薄膜の品質や厚みの不均一性に起因する。
このような課題に対して、近年においては電子写真用感光体の製造方法や製造装置の改良が進み、電子写真用感光体を構成する薄膜の品質や厚みの不均一性は低減され、その結果濃度ムラの低減も進んできている。
【0004】
しかしながら、未だ改善の余地を有しているのが現状である。例えば、安定性や耐久性に優れる高速複写機に使用されることが多いアモルファスシリコン(a−Si)を含んだ電子写真用感光体(以下、a−Si感光体とも略記する。)の場合、その製造方法として一般的にプラズマCVD法が利用される。しかし、プラズマCVD法の特色上、電子写真用感光体として必要なサイズ全体に渡って、品質及び厚みの均一な膜を形成することは容易ではない。
特許文献1には、このような課題に対応した画像形成装置が開示されている。特許文献1に記載の画像形成装置では、予め測定された電子写真用感光体の帯電特性の分布に対応した特性情報を記憶するメモリが電子写真用感光体に搭載された画像形成装置が開示されている。画像形成装置は、上記特性情報に基づいて露光手段の露光動作を制御し、画像濃度の不均一性を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−227452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の画像形成装置において、電子写真用感光体周方向における露光制御を行う場合においては、電子写真用感光体の帯電特性情報のみならず周方向基準位置(以下、「ホームポジション」とも呼ぶ。)情報を予め測定する必要がある。
又、電子写真用感光体を画像形成装置に設置する際に、電子写真用感光体の周方向ホームポジションに合わせて電子写真用感光体を画像形成装置に設置する場合があるため、電子写真用感光体の周方向ホームポジションは視覚的に容易に認識できるものである必要がある。
【0007】
従って、電子写真用感光体には周方向ホームポジションとして視覚的に認識できるマークが設けられる必要があり、かつ前記マークは帯電特性を測定する際に、帯電特性測定装置に設けられた周方向ホームポジション検出機構によって検出可能である必要がある。
さらには前述した各工程における作業及び各工程間における輸送等において、前記マークは剥れに対する耐久性が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、まず、電子写真用感光体の帯電特性を測定する際に周方向ホームポジションを検出するための検討を行った。
周方向ホームポジションを示すマークを設置する場所としては、マーク設置による画像への影響を極力無くすために、電子写真用感光体における感光面以外の部分、即ち電子写真用感光体の端部面である必要がある。
【0009】
図1(a)及び(b)は電子写真用感光体1001の端部面を模式的に表した図であり、図1(a)における電子写真用感光体1001を図中A方向から見た面を図1(b)に示し端部面1002としている。
次に、電子写真用感光体の周方向ホームポジションを検出する装置としては、電子写真用感光体に対して非接触でマークを検出することが好ましいため、レーザー光を電子写真用感光体の端部面に照射し、その直接反射光の強さを測定することで電子写真用感光体に設けられたマークを検出する方法が一般的である。具体的には、照射光がマークを通過する際に、直接反射光が弱まることでマークを検出する。
【0010】
図2は直接反射光を測定する場合の模式図であり、レーザー光源2001より電子写真用感光体の端部面2002に照射した光2003の直接反射光2004の強度をセンサー2005によって測定している。
しかしながら、電子写真用感光体の端部面2002においては、プラズマCVD法において電子写真用感光体を製造する過程で、堆積膜が付着したり、微小な傷が形成されてしまう場合がある。そうした場合においては、照射光2003が前記堆積膜や微小な傷を通過した際に、直接反射光2004が弱まる場合があり、マークとの識別が安定してできない場合がある。
この問題に対して、本発明者らは鋭意検討した。その結果、照射したレーザー等の光の散乱光の強さを測定すること、かつ塗料を電子写真用感光体の端部面に付着させることでマークを形成しマーク表面を平滑な形状とすることにより、前述したような誤検出の問題を解消することができることを見出した。
【0011】
図3は散乱光を測定する場合の模式図であり、図3(a)は塗料が付着されていない部分を測定する場合であり、図3(b)は塗料によるマーク部分3001を測定する場合である。又、レーザー光源3002より電子写真用感光体の端部面3003に照射した光3004の散乱光3005の強度をセンサー3006によって測定している。
ここで、塗料が付着していない部分と塗料が付着している部分とでは、表面の平滑性に違いが生じる。その結果、表面が平滑である塗料を付着した部分の方が光の散乱が少なくなる為に、散乱光3005の強度に差が生じ、塗料によるマーク3001を検出することができる。
又、周方向ホームポジションを示すマークとして塗料を付着させることにより、視覚的にも容易に周方向ホームポジションを認識できる形態とすることができる。従って、電子写真用感光体を画像形成装置に設置する際においても、電子写真用感光体の周方向ホームポジションに合わせて電子写真用感光体を画像形成装置に容易に設置することができ、前述したような視覚認識性の課題も解消することができる。
本発明者らは、次に、塗料を付着させることで形成させたマークの剥れに対する耐久性の検討を行い、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し前記凹部の上に塗料を付着させることで塗料の密着性を向上させることを見出した。その結果、前述した各工程における作業及び各工程間における輸送等においてマークの剥れに対する耐久性の課題も解消することができる。
【0012】
図4(a)(b)は電子写真用感光体の端部面4001に形成された凹部4002と凹部の上に付着させた塗料4003の模式図の一例である。又、図4(c)は図4(b)の点線Bでの断面図である。
以上のように、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、前記凹部の上に塗料を付着させ表面が平滑なマークを形成することで周方向ホームポジションとする。さらに、電子写真用感光体の帯電特性を測定する際に周方向ホームポジションを検出する手段として、レーザー光を電子写真用感光体の端部面に照射しその散乱光を検出することにより、前述した課題に対し大きな効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の電子写真用感光体は、円筒状基体上に光導電層を形成した電子写真用感光体において、円筒状基体の端部面に、凹部と、前記凹部の上に付着された塗料で形成され、かつ表面が平滑形状であるマークが、少なくとも一つ形成されていることを特徴としている。
又、本発明の電子写真用感光体周方向特定位置検出システムは、円筒状基体の端部面にレーザーを照射した結果生じる散乱光を測定することで、円筒状基体の端部面に形成されたマーク位置を検出することで周方向特定位置を検出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、円筒状基体の端部面に凹部を形成し、かつ凹部の上に塗料を付着させ表面が平滑なマークを形成することで周方向ホームポジションとする。さらに、レーザー光を円筒状基体の端部面に照射しその散乱光によってマークを検出する。以上により、電子写真用感光体の周方向ホームポジションを誤検出なく検出することを実現し、かつ周方向ホームポジションの視覚認識性及び剥れに対する耐久性も実現可能な電子写真用感光体及び電子写真用感光体周方向特定位置検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る電子写真用感光体の端部面を示す模式図である。
【図2】電子写真用感光体の周方向ホームポジション検出方法の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に係る電子写真用感光体の周方向ホームポジション検出方法の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る電子写真用感光体の端部面に形成された凹部と凹部の上に付着させた塗料の一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る溝が環状に繋がった形態の例を示す模式図である。
【図6】本発明に係る円筒状基体の端部面の接線方向を示す模式図である。
【図7】本発明に係る電子写真用感光体ユニットの一例を示す模式図である。
【図8】本発明に係る電子写真装置における電子写真感光体ユニット周辺の一例を示す模式図である。
【図9】本発明に係る堆積膜形成装置の一例を示す模式図である。
【図10】電子写真用感光体の端部面に塗料のみを付着させたマークの一例を示す模式図である。
【図11】電子写真用感光体の梱包ケースの一例を示す模式図である。
【図12】本発明に係る電子写真用感光体の端部面に形成された凹部と凹部の上に付着させた塗料の例を示す模式図である。
【図13】電子写真用感光体の特性測定手段の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に用いられる円筒状基体の端部面に形成される凹部としては、物理的にへこんだ形状であれば特に限定はされない。しかしながら、凹部の上に付着される塗料の平滑部を確保すること、及び塗料の密着性を確保するという観点からは溝が環状に繋がった形態であることがより好ましい。又、ここでいう環状とは図5(a)、(b)、(c)に一例として示すように、溝が繋がった形状を意味する。
本発明に用いられる電子写真用感光体周方向特定位置検出システムにおいて用いられる、円筒状基体の端部面に照射する光としては特に制限はないが、測定精度の面で照射光のスポット径は小さい方が好ましいため、レーザー光を用いることが好ましい。
【0016】
本発明に用いられる円筒状基体の端部面に付着される塗料としては、円筒状基体の端部面に付着可能であり、視覚的に認識可能な色彩であれば特に限定されるものではない。しかしながら、円筒状基体の材料としては金属、中でもアルミニウムが使用されることが多いため、アルミニウムに対する付着力が強い塗料を使用することが好ましい。又、レーザー光の散乱光によるマーク検出精度の面からは、円筒状基体の端部面凹部の上にマークとして塗料を付着させた後に、塗料の表面を平滑形状とする。従って、表面を平滑形状とすることが可能な程度の粘性を持つ塗料を使用する。
又、ここでいう平滑形状とは、算術平均粗さ:Ra(JIS B 0601−1994、但し、測定対象物が小さいため、評価長さを0.3mmに固定)において、0.1μm以下を満たす形状を意味する。
【0017】
次に、それぞれの電子写真用感光体を図11に示すような発泡スチロール製の梱包ケースに入れ、物流試験標準(JIS Z0232)に従い、振動試験装置(EMIC CORP.Model 905−FN)に設置した。
又、本発明においては、レーザー光の散乱光によるマーク検出精度の面からは、円筒状基体の端部面の凹部以外の部分の上にも塗料が付着されることが好ましい。それにより、円筒状基体の端部面に付着させた後の塗料の表面をより平滑な形状とすることができるからである。
又同様の観点から、前記凹部以外の部分に付着された塗料の、前記円筒状基体の端部面の接線方向における長さは0.5mm以上であることが好ましい。又、マークによる周方向位置特定精度の面では、前記凹部以外の部分に付着された塗料の、前記接線方向における長さは2.0mm以下であることが好ましい。
円筒状基体の端部面の接線方向とは、図6に示す矢印の方向である。
【0018】
又、本発明においては、レーザー光の散乱光によるマーク検出精度の面からは、円筒状基体の端部面に形成される凹部が、溝が環状に繋がった形態である場合、環状の溝によって囲まれかつ塗料が付着された部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さが0.5mm以上であることが好ましい。
尚、環状の溝によってに囲まれた部分の長さとは図5に示すCの部分である。
【0019】
又、本発明において用いられる周方向特定位置特定システムとしては、マーク検出精度の面からは、レーザーを照射した結果生じる散乱光を測定することが好ましい。図3は散乱光をモニターする場合の模式図であり、レーザー光源3002より端部面3003に照射した光3004の散乱光3005の強度をセンサー3006によって測定している。
このような散乱光3005の強度を測定する場合においては、照射光3004が端部面に形成された堆積膜や微小な傷を通過した際に、散乱光の強度の変化が小さいために、マークとの識別が安定してできるのである。
【0020】
又、本発明における電子写真用感光体ユニットにおいて使用されるフランジの少なくとも一つには周方向ホームポジションを示すマークが少なくとも一つ設けられている。そして、電子写真用感光体の端部面に設けられたマークとフランジに設けられたマークの位置関係が所定の位置関係となるように電子写真用感光体にフランジが組み付けられることを特徴としている。
図7は電子写真用感光体ユニットの模式図の一例であり、電子写真用感光体7001の端部面7002に周方向ホームポジションを示すマーク7003が形成されている。又、電子写真用感光体7001にはフランジ7004が設置され、フランジ7004にも周方向ホームポジションを示すマーク7005が形成されている。そして、電子写真用感光体の端部面のマーク7003の位置とフランジ7004のマーク7005の位置が揃うように電子写真用感光体7001にフランジ7004が組みつけられている。
【0021】
又、本発明における電子写真装置は、電子写真用感光体ユニットの回転機構を有し、この回転機構は周方向特定位置特定部材を有する。又、本発明における電子写真装置は、電子写真用感光体ユニットの周方向特定位置特定部材を検出する機構を有する。さらには、電子写真用感光体ユニットを電子写真装置に設置することで、電子写真用感光体ユニットの周方向特定位置特定部材とフランジに設けられたマークの位置関係が所定の位置関係となることを特徴としている。
図8(a)は電子写真装置における電子写真用感光体ユニット周辺を示す模式図の一例であり、電子写真用感光体ユニット8001は回転軸8002に固定ネジ8003で固定される。又、回転軸8002には周方向特定位置特定部材8004が取り付けられており、周方向ホームポジション検出ユニット8005の間を周方向特定位置特定部材8004が通過することで周方向ホームポジションを検出する。
【0022】
図8(b)は電子写真用感光体ユニットに組みつけられたフランジ8006と回転軸8002と固定ネジ8003を図8(a)におけるDの方向から見た場合の模式図の一例である。固定ネジ8003は凸形状の部分を有している。回転軸8002には溝が形成されている。フランジ8006には溝E、F、Gが形成されている。溝Fはフランジ8006のマーク8007に対して所定の位置に形成されている。
図8(c)に示すように回転軸8002の溝とフランジ8006の溝E、F、Gにより凸形状の溝が形成される。図8(d)に示すように、固定ネジ8003の凸形状の部分を、前述した回転軸8002とフランジ8006による凸形状の溝にはめ込むことで電子写真用感光体ユニット8001は回転軸8002に固定される。この際、固定ネジの凸部におけるHの方向と、回転軸8002に形成された溝のHの方向と、フランジ8006に形成された溝Fが揃うように取り付けられる。その結果、固定ねじの凸部におけるHの方向と、フランジ8006のマーク8007、電子写真用感光体の端部面8008のマーク8009が揃う。
又、図8における周方向特定位置特定部材8004は回転軸8002に形成された凸形状の溝のHの方向と所定の位置関係となるように設置されている。
この結果、電子写真用感光体の端部面8008のマーク8009と周方向特定位置特定部材8004が常に所定の位置関係となるように、電子写真用感光体ユニットは電子写真装置に組みつけられ、電子写真用感光体の周方向ホームポジションの検出が可能となる。
【0023】
図9は、a−Si電子写真用感光体を作製するために供される、13.56MHzの高周波電源を用いたRFプラズマCVD法を行なう堆積膜形成装置の一例を模式的に示している。
この堆積膜形成装置は、反応容器9000と、反応容器9000の中を減圧するための排気装置9001から構成されている。反応容器9000の中には、アースに接続された補助基体9002と、円筒状基体9003を加熱するための基体加熱ヒーター9004と、ガス導入管9005が設置されている。又、反応容器9000の側壁部は導電性材料からなる放電電極9006で構成され、放電電極9006と反応容器9000の他の部分は絶縁碍子9007によって絶縁されている。放電電極9006にはマッチングボックス9008を介して13.56MHzの高周波電源9009が接続されている。
不図示の原料ガス供給手段を構成する各ボンベは、原料ガス導入バルブ9010を介して反応容器9000の中のガス導入管9005に接続されている。
反応容器9000は排気管9011を有し、真空計9012、メインバルブ9013を介して排気装置9001で真空排気される構成である。
【0024】
以下、図9の装置を用いた、a−Si電子写真用感光体の作製方法の一例について説明する。
例えば、旋盤(図示せず)を用いて表面に鏡面加工を施した円筒状基体9003を、反応容器9000の中の基体加熱ヒーター9004を取り囲むように補助基体9002に設置し、キャップ9014を設置する。
次に、メインバルブ9013を開いて反応容器9000及びガス導入管9005の中を排気する。真空計9012の読みが0.67Pa以下になった時点で原料ガス導入バルブ9010を開き、加熱用の不活性ガス、一例としてアルゴンをガス導入管9005より反応容器9000の中に導入する。そして、反応容器9000の中が所望の圧力になるように加熱用の不活性ガスの流量と、メインバルブ9010の開口量あるいは排気装置9001の排気速度を調整する。その後、不図示の温度コントローラーを作動させて基体加熱ヒーター9004により円筒状基体9003を加熱し、円筒状基体9003の温度を50℃〜500℃の所望の温度に制御する。円筒状基体9003が所望の温度に加熱されたところで、不活性ガスを徐々に止めながら、成膜用の所定の原料ガスを反応容器9000の中に徐々に導入する。原料ガスは、例えば、SiH4、Si2H6、CH4、C2H6の如き材料ガスや、B2H6、PH3の如きドーピングガスであり、不図示のマスフローコントローラーによって、原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際に、反応容器9000の中を数十Paから数百Paの圧力に維持するように、真空計9012を見ながらメインバルブ9013の開口量あるいは排気装置9001の排気速度を調整する。
【0025】
以上の手順によって成膜準備を完了した後、円筒状基体9003の表面に堆積膜を形成する。反応容器9000の中の圧力が安定したことを確認した後に、高周波電源9009を所望の電力に設定して高周波電力を放電電極9006に供給し高周波グロー放電を生起させる。このときマッチングボックス9008を調整して、反射電力が最小となるようにし、高周波電力の入射電力から反射電力を差し引いた実効値を所望の値にする。この放電エネルギーによって、反応容器9000の中に導入した原料ガスが分解され、円筒状基体9003の表面に所定の堆積膜が形成される。尚、膜形成を行なっている間は円筒状基体9003をその中心軸線周りに駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させてもよい。所望の膜厚の堆積膜が形成された後に、高周波電力の供給を止め、反応容器9000の中への原料ガスの流入を止める。必要に応じて原料ガス種、高周波電力等の条件を変更して複数の堆積膜を順次形成する。その後、反応容器9000の中を一旦高真空に引き上げてから堆積膜形成工程を終える。以上の操作によってa−Si電子写真用感光体を作製する。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
<実施例1>
図9に示すプラズマ処理装置を用いて、円筒状基体上(円筒状基体の表面)に、表1に示す条件で電荷注入阻止層、第1光導電層、第2光導電層、第3光導電層、表面層の順に成膜を行いプラス帯電a−Si感光体を作製した。周波数がRF帯の高周波電源を用いた。
尚、本例では20本の電子写真用感光体を作製した。
作製したそれぞれの電子写真用感光体の端部面に図4に示すような溝が環状に繋がった形状の凹部を形成し、その上に塗料を付着させることによってマークを形成した。この際、溝によって環状に囲まれかつ塗料が付着された部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さはそれぞれのドラムにおいて1.3mm〜1.8mmであった。
【0027】
尚、本例においては、シャチハタ製TATスタンプインキ<スペシャルタイプ>M−365を塗料として使用している。
作製したそれぞれの電子写真用感光体において、図3に示すようにレーザー光3004を電子写真用感光体の端部面3003に照射し、電子写真用感光体を円周方向に回転させ、その際の散乱光3005の強度を測定した。電子写真用感光体が一周する間の散乱光3005の強度が予め定めた値より小さくなった部分を求めることでマーク位置を検出し、周方向ホームポジションとした。
【0028】
尚、それぞれの電子写真用感光体において、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とし、20本の内のマーク誤検出が発生した割合を表2に示した。
次に、それぞれの電子写真用感光体を図11に示すような発泡スチロール製の梱包ケースに入れ、物流試験標準(JIS Z0232)に従い、振動試験装置(EMIC CORP.Model 905−FN)に設置した。
尚、図11(a)は梱包ケースの外観全体像であり、図11(b)は梱包ケースの内部を示した模式図である。
そして、x、y、z軸の各方向において、周波数10Hz〜100Hz、加速度1G、掃引方向LIN SWEEP、往復掃引時間5分、試験時間1時間で振動試験を行った。振動試験終了後に、それぞれの電子写真用感光体を梱包ケースより取り出した後、塗料の有無を確認し、塗料が無くなっている割合を求め表3に示した。
【0029】
【表1】
【0030】
<比較例1>
実施例1で作製したそれぞれの電子写真用感光体において、図2に示すようにレーザー光2003を電子写真用感光体の端部面2002に照射し、電子写真用感光体を円周方向に回転させ、その際の直接反射光2004の強度を測定した。電子写真用感光体が一周する間の直接反射光2004の強度が予め定めた値より小さくなった部分を求めることでマーク位置を検出し、周方向ホームポジションとした。
尚、それぞれの電子写真用感光体において、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とし、20本の内のマーク誤検出が発生した割合を表2に示した。
【0031】
<比較例2>
実施例1と同様の方法で、20本の電子写真用感光体を作製し、作製したそれぞれの電子写真用感光体の端部面に図5(a)に示すような溝が環状に繋がった形状の凹部を形成することのみによってマークを形成した。凹部の上には塗料を付着させなかった。この際、溝によって環状に囲まれた部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さはそれぞれ1.3mm〜1.8mmであった。
作製したそれぞれの電子写真用感光体において、実施例1と同様に、図3に示すようにレーザー光3004を電子写真用感光体の端部面3003に照射し、電子写真用感光体を円周方向に回転させ、その際の散乱光3005の強度を測定した。電子写真用感光体が一周する間の散乱光3005の強度が予め定めた値より小さくなった部分を求めることでマーク位置を検出し、周方向ホームポジションとした。
尚、それぞれの電子写真用感光体において、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とし、20本の内のマーク誤検出が発生した割合を表2に示した。
【0032】
<比較例3>
実施例1と同様の方法で、20本の電子写真用感光体を作製し、作製したそれぞれの電子写真用感光体の端部面に図10に示すように塗料を付着させることでマークを形成した。凹部を形成しなかった。
尚、図10(b)は図10(a)におけるB線での断面図である。
又、塗料が付着された部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さはそれぞれ1.3mm〜1.8mmであった。尚、実施例1と同じ塗料を使用した。
作製したそれぞれの電子写真用感光体において、実施例1と同様にマーク位置を検出し、周方向ホームポジションとした。
尚、それぞれの電子写真用感光体において、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とし、20本の内のマーク誤検出が発生した割合を表2に示した。
次に、実施例1と同様の方法で振動試験を行い、振動試験後の塗料の有無を確認し、塗料が無くなっている割合を求め表3に示した。
<実施例1、比較例1〜3の評価>
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表2に示すように、実施例1においては比較例1、比較例2及び比較例3よりも誤検知の発生を抑制することができた。
さらに、表3に示すように、実施例1においては、比較例3よりも塗料の密着性が向上していることが分かる。
即ち、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、かつ凹部の上に塗料を付着させることで周方向ホームポジションを示すマークを形成する。さらに、電子写真用感光体の端部面にレーザーを照射しその散乱光によってマークを検出する。以上により、誤検知無く電子写真用感光体の周方向ホームポジションを検出することができた。さらには、塗料の密着性も向上させることができた。
【0036】
<実施例2>
実施例1で作製した20本の電子写真用感光体の端部面に、次に示す(イ)〜(ハ)のパターンでマークを形成した。即ち電子写真用感光体一本に付きマークは四つ形成されている。又、それぞれのマークは、図12(a)に示す配置で設けられている。
(イ)図12(b)に示すように、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、凹部分に塗料を付着させてマークを形成した。
(ロ)図12(c)に示すように、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、凹部と凹部以外の部分に塗料を付着させてマークを形成した。尚、凹部以外に塗料が付着された部分の電子写真用感光体の端部面の接線方向の長さは0.3mmとした。
(ハ)図12(d)に示すように、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、凹部と凹部以外の部分に塗料を付着させてマークを形成した。尚、凹部以外に塗料が付着された部分の電子写真用感光体の端部面の接線方向の長さは0.5mmとした。
尚、実施例1と同じ塗料を使用した。
【0037】
作製したそれぞれの電子写真用感光体において、実施例1と同様にマーク位置を検出した。
尚、実施例1で設置したマーク、及び(イ)〜(ハ)で設置したマークそれぞれにおいて、マークが検出されなかった場合をマーク誤検出とした。20本の電子写真用感光体それぞれについて5回マーク検出を行い、全100回のマーク検出内のマーク誤検出が発生した割合を表4に示した。
ここで、マーク誤検出の割合が3%未満の場合においては、再測定すればマーク検出されると考えられるので、実用上問題ないレベルと判断する。
【0038】
【表4】
【0039】
表4に示すように、すべての実施例において、実用上問題無いレベルであることが確認された。さらには、実施例1及び実施例2(ハ)が最もマーク誤検出を抑制することができた。
即ち、電子写真用感光体の端部面に凹部を形成し、かつ凹部と凹部以外の部分の上に塗料を付着させてマークを形成し、凹部以外で塗料が付着した部分の円筒状基体の端部面の接線方向の長さを0.5mm以上とすることで、安定したマーク検出を実現することができた。
【0040】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で電子写真用感光体を作製し、端部面に図5(b)に示すような凹部を形成し、その上に塗料を付着させることによってマークを形成した。
尚、本例においては、溝によって環状に囲まれかつ塗料が付着された部分の、円筒状基体の端部面の接線方向における長さは1.5mmであった。
尚、実施例1と同じ塗料を使用した。
次に、マークを設置した電子写真用感光体を図13に示すような電子写真用感光体特性測定手段を用い、帯電特性を測定した。図13に示した電子写真用感光体特性測定手段は、電子写真用感光体13001の周囲に、帯電器13002、画像露光光13003を照射する画像露光手段(図示せず)、電位センサ13004及び前露光手段13005を配置している。又、帯電特性を測定すると同時に、図3に示す方法によってマーク位置を検出し、周方向ホームポジション情報も測定した。
【0041】
次に、帯電特性及び周方向ホームポジション情報を測定された電子写真用感光体にフランジを組み付け、電子写真用感光体ユニットを製造した。尚、図7は本例において製造された電子写真用感光体ユニットの模式図であり、電子写真用感光体の端部面に設けられたマークとフランジに設けられたマークが揃うように電子写真用感光体にフランジは組み付けられている。
次に、図8に示すように電子写真用感光体ユニットを電子写真装置に設置した。さらに、予め測定した電子写真用感光体の帯電特性及び周方向ホームポジション情報を電子写真装置に記憶させた。
尚、ここでいう電子写真用感光体の帯電特性とは、電子写真用感光体の表面の帯電特性分布を意味する。
【0042】
次に、電子写真装置に記憶された、帯電特性及び周方向ホームポジション情報を基づいて電子写真装置の露光動作を制御して(以下、露光制御と呼ぶ)画像形成を行った。その結果、露光制御を行わない場合と比較して、画像濃度が均一な良好な画質の画像が得られた。
尚、ここでいう露光制御とは、電子写真装置に記憶された帯電特性に基づいて、電子写真用感光体の表面において帯電特性が高い部分と低い部分で露光量を変え、電子写真用感光体面内における帯電特性を均一にする制御を意味する。
【符号の説明】
【0043】
4001:端部面
4002:凹部
4003:塗料付着部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状基体上に光導電層を形成した電子写真用感光体であって、前記円筒状基体の端部面に、凹部と、前記凹部の上に付着された塗料で形成され、かつ表面が平滑形状であるマークが、少なくとも一つ形成されていることを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項2】
前記塗料が前記凹部以外の部分にも付着されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
【請求項3】
前記凹部以外の部分に付着された塗料の前記端部面の接線方向における長さが0.5mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真用感光体。
【請求項4】
前記凹部は溝が環状に繋がった形状からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真用感光体。
【請求項5】
前記環状の溝によって囲まれかつ塗料が付着された部分の、前記接線方向における長さが0.5mm以上であることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用感光体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真用感光体の周方向特定位置を検出するシステムであって、前記端部面に光を照射した結果生じる散乱光を測定することで前記マーク位置を検出し、周方向特定位置を検出することを特徴とする電子写真用感光体周方向特定位置検出システム。
【請求項7】
前記端部面に照射される光がレーザー光であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真用感光体周方向特定位置検出システム。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の電子写真用感光体に少なくとも一つのフランジを取り付けた電子写真用感光体ユニットにおいて、前記フランジの少なくとも一つには少なくとも一つのマークが設けられ、前記端部面に設けられたマークと前記フランジに設けられたマークの位置関係が所定の位置関係となるように前記電子写真用感光体の端部にフランジが組み付けられることを特徴とする電子写真用感光体ユニットの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法で製造された電子写真用感光体ユニットを使用する電子写真装置において、前記電子写真装置は前記電子写真用感光体ユニットの回転機構を有し、前記回転機構は周方向特定位置特定部材を有し、前記電子写真装置は前記周方向特定位置特定部材を検出する機構を有し、前記電子写真用感光体ユニットを前記電子写真装置に設置することで、前記周方向特定位置特定部材と前記フランジに設けられたマークの位置関係が所定の位置関係となることを特徴とする電子写真装置。
【請求項1】
円筒状基体上に光導電層を形成した電子写真用感光体であって、前記円筒状基体の端部面に、凹部と、前記凹部の上に付着された塗料で形成され、かつ表面が平滑形状であるマークが、少なくとも一つ形成されていることを特徴とする電子写真用感光体。
【請求項2】
前記塗料が前記凹部以外の部分にも付着されていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用感光体。
【請求項3】
前記凹部以外の部分に付着された塗料の前記端部面の接線方向における長さが0.5mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の電子写真用感光体。
【請求項4】
前記凹部は溝が環状に繋がった形状からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真用感光体。
【請求項5】
前記環状の溝によって囲まれかつ塗料が付着された部分の、前記接線方向における長さが0.5mm以上であることを特徴とする請求項4に記載の電子写真用感光体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真用感光体の周方向特定位置を検出するシステムであって、前記端部面に光を照射した結果生じる散乱光を測定することで前記マーク位置を検出し、周方向特定位置を検出することを特徴とする電子写真用感光体周方向特定位置検出システム。
【請求項7】
前記端部面に照射される光がレーザー光であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真用感光体周方向特定位置検出システム。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の電子写真用感光体に少なくとも一つのフランジを取り付けた電子写真用感光体ユニットにおいて、前記フランジの少なくとも一つには少なくとも一つのマークが設けられ、前記端部面に設けられたマークと前記フランジに設けられたマークの位置関係が所定の位置関係となるように前記電子写真用感光体の端部にフランジが組み付けられることを特徴とする電子写真用感光体ユニットの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法で製造された電子写真用感光体ユニットを使用する電子写真装置において、前記電子写真装置は前記電子写真用感光体ユニットの回転機構を有し、前記回転機構は周方向特定位置特定部材を有し、前記電子写真装置は前記周方向特定位置特定部材を検出する機構を有し、前記電子写真用感光体ユニットを前記電子写真装置に設置することで、前記周方向特定位置特定部材と前記フランジに設けられたマークの位置関係が所定の位置関係となることを特徴とする電子写真装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−276812(P2010−276812A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128497(P2009−128497)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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