説明

電子写真用転写シート

【課題】 乾式電子写真方式による印字おいて、耐水性及び画質に優れ、且つ折り加工性が良好な電子写真用転写シートを提供。
【解決手段】 少なくとも、顔料含有トナー受像層(A)、熱可塑性フィルム層(B)および紙基材からなる芯材層(C)を順次積層した構造を有し、前記熱可塑性フィルム層(B)が、ポリオレフィン系樹脂および無機フィラーからなる密度0.5〜0.9g/cmおよび厚み10〜50μmの2軸延伸フィルムであり、前記紙基材が平滑度80秒以上およびCD伸縮率0.19以下であり、かつ前記転写シートを水に1週間浸漬後、その吸水率が55%以下であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式トナーによる電子写真方式を用いた印字装置に使用する電子写真用転写シート(以下、転写シートと称することがある。)に関するものである。さらに詳しくは、画質、耐水性および折り加工適性の良好な電子写真用転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートロール定着式電子写真プリンターには普通紙であるPPC用紙及びポリエステルフィルムを表面処理したOHPシートが使用されている。しかしPPC用紙は耐水性、耐薬品性や強度が要求されない用途での使用に限定されており、またOHPシートは耐水性や耐薬品性はあるが、透明なためOHP用途に使用が限定されている。
【0003】
しかし、近年、電子写真プリンターが広範な分野へ浸透し、例えば、ゴルフのスコアカードやレストランのメニュー、図面、地図、マニュアル等の作成にも用いられるようになり、画質だけでなく、折り加工適性と耐水性が必要となってきた。
【0004】
転写シートが耐水性を有するためには、フィルムであることが望ましいが、ポリエステルフィルムは非常に硬く、折り加工適性が無い。一方、ポリプロピレンを主体とした合成紙(特公昭46−40794号公報(特許文献1))は、柔らかく折り加工適性は良好であるが、トナー定着時のヒートロール表面温度が170〜200℃付近まで高温になる乾式電子写真プリンターで印字すると、合成紙では主原料であるポリプロピレンの融点を越えているため、熱によるカールが発生し印画物が丸まり、定着用ヒートロール部で、合成紙が融着して断紙する等の走行性に問題があった。
【0005】
上記問題を解決するために、紙基材または熱可塑性ポリエステル樹脂フィルムからなる芯材層に、ポリプロピレンが主体である合成紙を用いた熱可塑性フィルム層を接着・積層した電子写真用転写シートが、特開2002−258509号公報(特許文献2)で開示されている。しかし、単に積層体を形成しただけでは、高温/高湿度環境や低温/低湿度環境などで印字した場合、感光体から電子写真用転写シートへのトナーの転写効率が低いことによる画質不良が発生することがあるため、積層体の少なくとも一方の表面に導電処理を施した熱可塑性フィルム層を接着・積層した積層体を使用した電子写真用転写シートが知られている。
【0006】
たとえば、特開2002−258509号公報(特許文献2)に導電処理後の表面抵抗値1×10〜1×1012Ωが好ましいとの記載がある。特開2001−337478号公報(特許文献3)では、ポリプロピレンを主成分とする合成紙からなる支持体と、その少なくとも一面上に合成ヘクトライト粘土鉱物を含有するトナー受像層を設けることで、温度10〜30℃、相対湿度30〜85%RHまでの範囲における前記トナー受像層の表面電気抵抗値が、1×10〜1×10Ωの範囲にする電子写真用転写シートが開示されている。しかし合成ヘクトライト粘土鉱物を含有するトナー受像層は、水分によって膨潤してしまい、良好な耐水性が得られなかった。また界面活性剤系の帯電防止剤は、比較的低分子であるため、ブリードが起こりやすいため、べたつきやトナー受像層でのトナーの密着性が低下し、十分な耐水性が得られていない。
【0007】
また導電性と耐水性の両方を兼ね備えた帯電防止剤を配合した導電層に関し、特開2007−188055号報(特許文献4)に開示されている。しかし良好な耐水性が得られるが、芯材層(C)の耐水性が低く、水に浸漬すると芯材層から熱可塑性フィルム層(B)が剥がれてしまう。
【0008】
そこで、特開2002−91049号公報(特許文献5)では、導電層を設けたポリエステルフィルムを貼合する芯材層に耐水性塗工剤やポリオレフィン系フィルムを融着させたパルプ原紙を用いることが開示されている。しかしながら、このような手段では、耐水性は向上させることが出来るが、芯材層の平滑性が低く、白紙外観で凹凸が観られ、高品位な白紙外観並びに画質を得ることが出来ていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭46−40794号公報
【特許文献2】特開2002−258509号公報
【特許文献3】特開2001−337478号公報
【特許文献4】特開2007−188055号公報
【特許文献5】特開2002−91049号公報
【特許文献6】特開平5−25463号公報
【特許文献7】特開平7−150130号公報
【特許文献8】特開平7−316544号公報
【特許文献9】特開平8−104787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、乾式電子写真方式による印字おいて、画質、耐水性および折り加工適性の良好な電子写真用転写シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電子写真用転写シートは、少なくとも、顔料含有トナー受像層(A)(以下、トナー受像層と称することがある。)、熱可塑性フィルム層(B)および紙基材からなる芯材層(C)を順次積層した構造を有し、前記熱可塑性フィルム層(B)が、ポリオレフィン系樹脂および無機フィラーからなる密度0.5〜0.9g/cmおよび厚み10〜50μmの2軸延伸フィルムであり、前記紙基材が平滑度80秒以上およびCD伸縮率0.19以下であり、かつ前記転写シートを水に1週間浸漬後、その吸水率が55%以下であることを特徴とするものである。前記転写シートを23℃/50%RHで調湿後に、前記トナー受像層(A)の表面電気抵抗値が1×10〜1×1012Ω/□であることが好ましく、前記紙基材が、音速法により測定した超音波伝播速度に関し、抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aおよび135°の伝播速度bとした(伝播速度b)/(伝播速度a)比が、1.00±0.08であることがより好ましい。
【0012】
また前記トナー受像層(A)の塗布量が、0.1〜15g/mであることが好ましく、前記トナー受像層(A)中の、前記顔料の粒径が、0.1〜15μmであることが好ましく、前記顔料の含有量が、0.05〜9g/mであることが好ましく、さらにその顔料とバインダーの比率が、(1/9)〜(9/1)であることが好ましい。
【0013】
前記トナー受像層(A)中に、さらに高分子帯電防止剤を含有することが好ましく、前記高分子帯電防止剤が、ポリエステルマクロモノマーとイオン性残基を有するビニル系モノマーの共重合体、芳香族スルホン酸アミン塩(共)重合体および変性ポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム塩から選ばれた少なくとも1種であることがより好ましく、さらに好ましくは前記バインダー100質量部に対し、前記高分子帯電防止剤が1〜100質量部含有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、乾式電子写真方式による印字おいて、画質、耐水性および折り加工適性の良好な電子写真用転写シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な態様を詳細に説明する。
本発明では、トナー受像層の耐水性および折り加工適性に優れる電子写真用転写シートを得るには、熱可塑性フィルム層(B)に、ポリオレフィン系樹脂および無機フィラーからなるフィルムの厚みが10〜50μmで、密度が0.5〜0.9g/cmの2軸延伸フィルムを用いることが重要である。
【0016】
本発明における熱可塑性フィルム層(B)の厚みは、10〜50μmであり、好ましくは20〜40μmである。前記熱可塑性フィルム層(B)の厚みが10μm未満では機械的強度が不十分となり、熱によるカールを十分に防止できないことがあり、厚みが50μmを超えると、静電容量の低下によりトナー転写効率が低下し、画像品質が低下することがあり、好ましくない。またフィルムが厚くなり、折り加工がし難くなることがある。前記熱可塑性フィルム層(B)に用いる2軸延伸フィルムの密度は0.5〜0.9g/cmが好ましい。前記密度が0.5g/cm未満では機械的強度が不十分となることがある。また0.9g/cmを超えると、トナーの密着性が低下することがあり、フィルムの硬度が高く、良好な折り加工が出来なくなることがあり、好ましくない。
【0017】
本発明で使用する熱可塑性フィルムとしては、例えば高密度ポリエチレンや中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリブチレンテレフタレートやその共重合体、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン等を挙げることができる。なかでもポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。前記ポリオレフィン系樹脂のなかでは、耐薬品性及びコストの面からプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。プロピレン系樹脂としてはプロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体ないしシンジオタクティック重合体等がある。またエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとプロピレンとを共重合させた、様々な立体規則性を有するプロピレンを主成分とする共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも、3元系以上の多元系でも良く、またランダム共重合体でもブロック共重合体でも良い。プロピレン系樹脂には、プロピレン単独重合体よりも融点が低い樹脂を2〜25質量%配合して使用することが好ましい。そのような融点が低い樹脂として、高密度または低密度のポリエチレンが例示される。熱可塑性樹脂としては、上記の熱可塑性樹脂のなかから1種を選択して単独で使用しても良いし、2種以上を適宜選択して組み合わせて使用しても良い。
【0018】
前記熱可塑性樹脂には、必要に応じて無機フィラー、有機フィラー、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤等を添加することができる。無機フィラーを添加する場合には、粒径0.01〜5μmのものが好ましく使用される。具体的には、炭酸カルシウム、焼成クレー、シリカ、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナ等を使用することができる。有機フィラーを添加する場合は、主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合には、有機フィラーとしてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状オレフィン、ポリスチレン、ポリメタクリレート等の重合体であって、ポリオレフィン系樹脂の融点より高い融点ないしはガラス転移温度を持つ重合体を使用することができる。無機フィラー及び/または有機フィラーを添加する場合は、好ましくは3〜50質量%の範囲内で添加する。
【0019】
安定剤を添加する場合は、通常0.001〜1質量%の範囲内で添加する。具体的にはフェノール系、リン系、アミン系の安定剤を使用することができる。光安定剤を添加する場合は、通常0.001〜1質量%の範囲内で添加する。具体的にはアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の光安定剤等を使用することができる。分散剤や滑剤は、例えば、無機フィラーを分散させる目的で使用する。添加量は通常0.01〜4質量%の範囲内とすることが好ましい。具体的にはシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びこれらの塩等を使用することができる。
【0020】
本発明における熱可塑性フィルムの成形方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法の中から適宜選択して成形することができる。例えばスクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等の方法を用いて成形することができる。
【0021】
また本発明における熱可塑性フィルムは一軸または二軸延伸したものが好ましい。延伸は通常用いられる種々の方法のいずれかによって行うことができる。延伸の温度は、非結晶性樹脂の場合は使用する熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上、結晶性樹脂の場合には非結晶部分のガラス転移温度以上から結晶部の融点以下の熱可塑性樹脂に好適な温度範囲で行うことができる。具体的には熱可塑性樹脂の融点より2〜50℃低い温度が好ましい。
【0022】
延伸方法としては、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを利用した横延伸、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸等の方法を用いることができる。延伸倍率は用いる合成樹脂の特性等を考慮して適宜決定する。例えば合成樹脂としてプロピレン単独重合体ないしその共重合体を使用するときには、一方向に延伸するときには2〜10倍が好ましく、二軸延伸の場合は、面積倍率で10〜50倍であることが好ましい。
【0023】
無機フィラーや有機フィラーを含有する合成樹脂を延伸すれば、内部に微細な空孔を有する多孔性樹脂延伸フィルムを得ることができる。また延伸した熱可塑性フィルムは単層からなるものであっても良いし、多層構造を有するものであっても良い。
【0024】
本発明では、電子写真用転写シートの耐水性を向上させるために、前記紙基材は、CD伸縮率が0.19以下であり、且つ電子写真用転写シートの吸水率は55%以下であることを特徴とする。
【0025】
本発明者等は、水中に1週間、電子写真用転写シートを浸漬すると、水中で或いは乾燥後に、熱可塑性フィルム層(B)と芯材層(C)との間で、剥がれの発生について鋭意検討した結果、電子写真用転写シートを水に浸漬すると、芯材層(C)が伸び、更に乾燥させると縮む、即ち芯材層(C)が水への浸漬で大きく伸び、熱可塑性フィルム層(B)の伸びが追随できないと、両層の間で剥がれてしまう。また水での浸漬の伸びに追随出来ても、水から取り出された芯材層(C)は、乾燥すると縮むので、熱可塑性フィルム層(B)は芯材層(C)から剥がれてしまうことが判った。そこで、芯材層(C)の水への浸漬による伸びを小さくするためには、芯材層(C)のCD伸縮率を0.19以下に調整し、且つ電子写真用転写シートを水中に1週間浸漬した後の、転写シートの吸水率を55%以下の調整すること、好ましくは前記紙基材の音速法により測定した超音波伝播速度において、抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比が、1.00±0.08とすることにより、芯材層(C)の伸びを抑制し、熱可塑性フィルム層(B)の剥がれを防止できることが判明した。
【0026】
本発明の各層は、以下のように得られる。
(紙基材)
本発明に用いられる紙基材を形成するパルプについては、製法や種類等について特に限定するものではなく、KP、SPのような化学パルプ、SGP、RGP、BCTMP、CTMP等の機械パルプや、ECFパルプやTCFパルプ等の塩素フリーパルプ、脱墨パルプのような古紙パルプ、あるいはケナフ、バガス、竹、藁、麻等のような非木材パルプ、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリノジック繊維等の有機合成繊維、さらにはガラス繊維、セラミック繊維、カーボン繊維等の無機質繊維等を挙げることが出来る。
【0027】
紙基材中には必要に応じて填料、歩留向上剤、紙力増強剤、定着剤、内添サイズ剤、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙用内添助剤を適宜配合することができる。なお、填料としては、特に限定するものではないが、一般に上質紙に用いられる各種の顔料、例えばカオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機顔料系の密実型、微小中空型、貫通孔型の粒子を挙げることが出来る。
【0028】
紙基材の抄紙方法については特に限定するものではなく、例えば抄紙pHが4.5付近である酸性抄紙法、また中性サイズ剤および/または炭酸カルシウム等のアルカリ性填料を主成分として含み、抄紙pH約6の弱酸性から抄紙pH約9の弱アルカリ性の中性抄紙法等、全ての抄紙方法に適用することができ、抄紙機も長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機、傾斜ワイヤー抄紙機等の公知の抄紙機を適宜使用することができる。
【0029】
またサイズプレス、ビルブレード、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレスを使用して、表面サイズ剤やワックス類の撥水剤を澱粉、ポリビニルアルコールなどと混ぜて、原紙に塗布や含浸させることも出来る。更に、通常の塗工に用いられる顔料を配合することも可能である。
【0030】
紙基材のCD伸縮率や抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比が、1.00±0.08とするためには、抄紙機での抄紙条件を制御する。その方法としては原料ジェットの流出速度とワイヤー速度との比(J/W比)の制御、ワイヤーシェーキングの制御、ウェットパートでのドロー調整、乾燥ゾーンでのドローの調整等があり、これらの方法を単独であるいは適宜組み合わせることによって、CD伸縮率や抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比を所望の範囲に制御することができる。なお、J/W比や各種のドロー等の抄紙条件は抄紙機毎に異なるので、抄紙条件を限定できないが、芯材のCD伸縮率を0.19以下や、抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比を前記の範囲内1.00±0.08にすれば、本発明の課題を解決可能である。
【0031】
また湿潤紙力増強剤等の配合や填料の多配合によっても、紙基材のCD伸縮率を0.19以下に調整出来る。またパルプ処方の内添や外添サイズプレス液で、サイズ剤やワックス類の撥水剤を多配合することで、電子写真用転写シートの吸水率を55%以下に調整することが可能である。
【0032】
上記にて作成された本発明に用いる芯材層(C)用紙基材は、白紙並びに画像部の平滑性を高めるために、平滑度80秒以上に調整される。平滑化処理は、スーパーキャレンダ、グロスキャレンダ、ソフトキャレンダ等の公知の装置を用いてオンマシンやオフマシンにて行われる。加圧装置の圧力、加熱温度、ニップ数等の処理条件は適宜調節される。
【0033】
本発明では、白紙並びに画像部の平滑性を高めるために、紙基材上に顔料塗工層を設け、更に、スーパーキャレンダ、グロスキャレンダ、ソフトキャレンダ等の公知の装置を用いた平滑化処理をオンマシンやオフマシンにて行われる。加圧装置の圧力、加熱温度、ニップ数等の処理条件は適宜調節され、平滑度500秒以上に調整することが好ましく、1000秒以上であれば更に好ましい。
【0034】
顔料塗工層には、公知の無機顔料や有機顔料を使用することが出来る。無機顔料としては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等が挙げられる。有機顔料としては、例えばポリスチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体系樹脂、スチレン−アクリル共重合体系樹脂、スチレン−メタアクリル共重合体系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂等が挙げられる。有機顔料としては、密実型、中空型、貫通孔型、コア/シェル型のものを挙げることが出来る。これらの中から1種あるいは2種以上が適宜選択して用いられる。
【0035】
接着剤としては、水溶性或いは水分散性の高分子化合物を用いることができ、例えばカチオン化澱粉、両性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、天然ゴム等の天然あるいは半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン−ブタジエン系、メチルメタクリレート−ブタジエン系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン−無水マレイン酸系樹脂、メラミン系樹脂等の合成高分子化合物等を挙げることができる。接着剤は、必要に応じて1種あるいは2種以上が適宜選択される。接着剤の塗工液への配合量としては、塗工層100質量部(固形分)に対して、15質量部以下が好ましい。配合量が15質量部を超えると、コストアップとなることがある。
【0036】
本発明に用いられる塗工液には、必要に応じてさらに、各種助剤、例えば界面活性剤、pH調節剤、粘度調節剤、保水剤、柔軟剤、光沢付与剤、ワックス類、分散剤、流動変性剤、導電剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、耐水化剤、可塑剤、防腐剤、香料等が適宜配合される。
【0037】
本発明において紙基材上に設ける顔料塗工層の合計塗工量は、特に限定されるものではないが、紙基材を原紙とし、その片面に対し乾燥質量で2〜25g/m、好ましくは5〜20g/mである。塗工量が2g/m未満の場合、塗工層を原紙上に均一に形成するのは困難であり、一方、25g/mを超えると、コストアップとなることがある。
【0038】
本発明に用いられる芯材層(C)の厚みは、特に限定されないが、一般には50〜200μmの厚さである。厚さが50μm未満であると、得られる電子写真用転写シートの機械的強度が不十分となる場合があり、且つ変形に対する反発力が不十分となり、印刷または印字の際に生じる電子写真用転写シートのカールを十分に防止できないことがある。また厚さが200μmを超えると、得られた電子写真用転写シートの厚みが過大となり、プリンターの転写シート供給部に供給可能枚数が減少する不都合や、芯材層の凸凹による画質の低下や転写シートの風合いが劣ることがあり、好ましくない。
【0039】
印字後のネジレカールについても、前記紙基材の抄紙時、抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比を1.00±0.08の範囲内に制御することによって、向上効果が顕著である。これは、2つの対角線方向での超音波伝播速度比が、本発明では抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比が、1.00±0.08の範囲内である場合は、繊維配向を制御することによって、プリンター印字の際に、転写シートが熱収縮する場合、縦横均等に繊維の収縮が起こるためである。
【0040】
(トナー受像層(A))
本発明に用いる高分子帯電防止剤は、トナー受像層中でブリードが起こりにくいため、べたつきがなく、トナー受像層へのトナーの密着性が良好で、十分な耐水性を付与するものである。このような高分子帯電防止剤は、特開平5−25463号公報(特許文献6)、特開平7−150130号公報(特許文献7)、特開平7−316544号公報(特許文献8)あるいは特開平8−104787号公報(特許文献9)などに記載されている公知の方法によって合成することが可能である。
【0041】
その内、高分子帯電防止剤としては、芳香族スルホン酸アミン塩共重合体である高分子帯電防止剤(特許文献9、特開平8−104787号公報)、あるいは変性ポリオキシエチレントリアルキルアンモニウム塩である高分子帯電防止剤が、トナー受像層の表面電気抵抗値の調整および耐水性の観点から好ましく使用できる。
【0042】
トナー受像層の、23℃/50%RHで調湿後の表面電気抵抗値は、1×10〜1×1012Ω/□であることが好ましい。より好ましくは、1×10〜1×1011Ω/□が好ましい。表面電気抵抗値が1×10Ω/□未満の場合には、プリンター機種によっては、電子写真用転写シートがトナー転写中に定着ロールなどの導電性部材に接触したときに、トナー受像層表面に通電パスが形成されるため、転写電流のバランスが乱れ、トナー転写効率が低下することがある。一方、表面電気抵抗が、1×1012Ω/□を超えるときは、電子写真用転写シート同士が静電気により、密着するため重送の原因となり、好ましくない。
【0043】
帯電防止剤の配合比率は、帯電防止剤の種類、トナー受像層に含まれるバインダーの種類、顔料の種類、あるいはバインダーと顔料の配合比率、そしてトナー受像層の塗布量によって異なるが、バインダー100質量部に対して1〜100質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましい。1質量部未満の場合は、表面電気抵抗値の調整が困難になる場合があり、一方、100質量部を越える場合には、トナー受像層へのトナー密着性や耐水性が低下するおそれがあり、好ましくない。
【0044】
安定剤を添加する場合は、通常0.001〜1質量%の範囲内で添加することが好ましい。具体的には立体障害フェノール系、リン系、アミン系の安定剤を使用することができる。光安定剤を添加する場合は、通常0.001〜1質量%の範囲内で添加する。具体的には立体障害アミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系の光安定剤等を使用することができる。分散剤や滑剤は、顔料を分散させる目的で使用することもできる。添加量は、0.01〜4質量%の範囲内がより好ましい。具体的にはシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びこれらの塩等を使用することができる。これらは、表面電気抵抗を調整する目的にて、品質を損なわない範囲で添加することも可能である。
【0045】
本発明の顔料含有トナー受像層(A)は、モース硬度2〜8の無機顔料及びASTM D 1525に基づき測定したビカット軟化点が70℃以上、好ましくは100℃以上の有機顔料から選ばれた少なくとも1種の顔料を含有することが好ましい。
【0046】
無機顔料は、モース硬度が2〜8、好ましくは2〜6のものである。例として石膏、岩塩、カオリン、雲母、大理石、炭酸カルシウム、蛍石、アパタイト、クレーなどを挙げることができる。モース硬度が2未満の無機顔料では、搬送傷防止効果が得られないことがある。モース硬度が8を超えると、印刷中にプリンターの感光体、転写ベルト、定着ロールなどの部材を傷める可能性あり、好ましくない。一方、有機顔料の場合は、ASTM D 1525に基づき測定したビカット軟化点が70℃以上、より好ましくは100℃以上のものから選ばれる。ビカット軟化点が、70℃未満の場合は、定着ロールにおいて熱履歴を受けたときに有機顔料自体が熱変形しやすくなるため、搬送傷の防止効果が低下することがある。本発明に好ましい有機顔料の例としては、ナイロン−6、ナイロン−12等のポリアミド系樹脂類、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイドポリサルフォン、ポリフェニルサルファイド、ポリアリルサルフォン、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。これら有機および無機顔料の中でもコストならびに白色度の観点から、炭酸カルシウムまたはポリアミド系樹脂類のような顔料が、特に好ましい。
【0047】
有機顔料または無機顔料の粒径が、0.1〜15μmであることであることが好ましい。粒径が0.1μm未満の場合には、搬送傷を防止する効果が十分でないことがある。また15μmより大きい場合、電子写真用転写シート表面のざらつきや、質感が低下するため好ましくない。なお、顔料の形状については特に制限が無いが、球状、紡錘状、扁平状などが例示される。
【0048】
本発明におけるトナー受像層中の顔料の含有量は、顔料が5g/m以上含有する通常の印刷用塗工層と比較し、少量でも搬送傷防止効果が発現する。具体的には、0.1〜9g/mの範囲で使用可能であるが、0.1〜2g/mが好ましく、さらに、0.3〜1g/mが好ましい。前記含有量が、0.1g/m未満のときは、搬送傷防止効果が発現しにくくなり、9g/mを超えると、表面がざらつき、質感が低下するため好ましくない。またこのような顔料を配合することによって、印字後の静電気による転写シート間の密着性も大きく改善出来、両面印字の際に、給紙性や印字後の紙揃えなどの後工程での作業性が著しく改善出来る。
【0049】
バインダーは、例えばポリエステル樹脂、ポルアミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン樹脂、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂、塩化ゴム、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、アルキッドフェノール樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体等の1つまたはそれ以上の中から選ぶことができる。熱可塑性フィルムへの接着性強化のための添加樹脂としてはポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン等の樹脂が好ましい。バインダーの配合量は、(顔料/バインダー)の質量比率として(1/9)〜(9/1)が好ましく、より好ましくは、(3/7)〜(7/3)である。顔料比率の少ない(1/9)未満の場合は、搬送傷防止効果を発現するには多量の塗料が必要となるため好ましくない。一方、顔料比率の多い(9/1)を越える場合は、顔料の熱可塑性フィルムへの接着が不足することがあり、好ましくない。
【0050】
(熱可塑性フィルム層(B))
本発明では、熱可塑性フィルム層(B)は芯材層(C)の片面もしくは両面に接着することが出来る。芯材層(C)の片面にのみ熱可塑性フィルム層(B)を接着する場合には、芯材層(C)の接着面と反対面に、合成樹脂層、顔料と接着剤などからなる塗布層を設けてカール防止処理をすることが好ましい。塗布層には、さらに、印刷適性、給排紙適性、ブロッキング防止性を付与することが可能であり、また耐水性、耐油性、防滑性を付与することや、感熱記録、熱転写記録やインクジェット記録などの各種記録適性などを付与することも勿論可能である。
【0051】
熱可塑性フィルム層(B)を芯材層(C)の両面に接着する場合、積層される熱可塑性フィルムは表裏とも同じフィルムであっても良いし、表裏フィルムの種類が異なっても良いが、芯材層(C)の一方の面にポリプロピレン系樹脂フィルムを積層する場合には、他方の面にもポリプロピレン系樹脂フィルムを積層すると、白紙カール及び印画後カールを防止する点で好ましい。
【0052】
芯材層(C)の少なくとも片面に、熱可塑性フィルム層(B)を接着・積層する方法としては、特に限定されるものではないが、ウェットラミネート法、エキストルージョンラミネート法、ドライラミネート法、ワックスラミネート法等の公知の技術が用いられる。なお一般的にはドライラミネート法が広く用いられており、このとき使用される接着剤としては、ポリエーテル系、ポリエステル系などの高分子接着剤成分に、ポリイソシアネート系、エポキシ系等の硬化剤を配合したものが用いられることが多い。接着剤の塗工量は、1〜30g/mの範囲が望ましい。芯材層(C)の両面に熱可塑性フィルム層(B)を接着・積層する場合、カールバランスを保つために、表面側フィルム層、裏面側フィルム層の接着剤の塗工量を同一にするのが好ましい。高画質化のためにエキストルージョンラミネート法も好ましく用いられる。
【実施例】
【0053】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、勿論本発明はこれによって限定されるものではない。なお実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0054】
実施例1
<芯材層>
[紙基材の作成]
LBKP(フリーネス(CSF)=450ml)100部のパルプスラリーに、軽質炭酸カルシウム(商品名;PC、白石カルシウム社製)5部、カチオン化澱粉(商品名;エースK100、王子コーンスターチ社製)1.0部、アルケニル無水コハク酸(商品名;ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.08部、および硫酸バンド0.6部を添加して紙料を調製した。続いて、この紙料を用いて長網抄紙機でJ/W比を調整して、繊維配向比が1.3になるように抄紙し、その抄紙工程でサイズプレス装置を用いて乾燥質量が2g/mとなるように澱粉を塗布し、その後にマシンキャレンダで王研式平滑度400秒になるように平滑化処理し、坪量157g/mの紙基材を得た。
【0055】
<熱可塑性フィルム>
2軸延伸PPフィルム(#35)(商品名:OP N−2、東セロ社製、厚み35μm,密度0.72g/cm)を用いた。
【0056】
<トナー受像層>
トナー受像層用塗料の調製
炭酸カルシウム微粒子 100質量部
(商品名:TP−121、奥多摩工業社製、モース硬度3、長径2〜3μm、短径0.1〜1μmの紡錘形状)
ポリウレタンアイオノマー(商品名:ハイドランAP40、DIC社製)100質量部
帯電防止剤 5質量部
(アルキルエーテルフォスフェートのカリウム塩系、商品名:エレクトロストリッパーF、花王社製)
分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 1質量部
固形分濃度が6%になるように配合し、市販の攪拌機を用いて分散を行った。
【0057】
<塗工>
バーコータで乾燥後の塗布量が1.5g/mとなるように熱可塑性フィルムに塗布、乾燥し、トナー受像層を積層した熱可塑性フィルムを得た。
【0058】
<電子写真用転写シートの作成>
トナー受像層を積層した熱可塑性フィルムと紙基材を、{トナー受像層/熱可塑性フィルム/紙基材/熱可塑性フィルム/トナー受像層}の構成になるように、ポリウレタン系接着剤(商品名:AD−593、東洋モートン社製)を用いて、接着剤塗工量5g/mで、ドライラミネート方式で接着・積層して電子写真用転写シートを得た。その評価結果を表1に示す。
【0059】
実施例2
実施例1の芯材層としての紙基材の作成で、抄造時のJ/W比の変更により、繊維配向比を1.7にした以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例3
実施例1の芯材層としての紙基材の作成で、紙料の調製で、ポリアクリル−エピクロルヒドリン系湿潤紙力増強剤(商品名;AF−255、荒川化学工業社製)を0.2部とポリアクリルアミド系紙力増強剤(商品名;PS−1226、荒川化学工業社製)を0.5部、追加配合した以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
【0061】
実施例4
実施例1の芯材層としての紙基材の作成で、紙料の調製で、カチオン化澱粉(商品名;エースK100、王子コーンスターチ社製)を1.5部、アルケニル無水コハク酸(商品名;ファイブラン81K:日本エヌエスシー社製)を0.14部、および硫酸バンドを1.0部と添加量を増して紙料を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
【0062】
実施例5
実施例1の芯材層としての紙基材の作成の抄紙工程のサイズプレス装置を用いて、澱粉を乾燥質量で2g/mとマレイン酸系表面サイズ剤(商品名;ポリマロン1354、荒川化学工業社製)を乾燥質量で0.1g/mとなるように塗布した以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
【0063】
実施例6
実施例1の芯材層としての紙基材の作成の抄紙工程のサイズプレス装置を用いて澱粉を乾燥質量で1g/mとポリエチレン系エマルジョン(商品名;ノプコートPEM17、サンノプコ社製)を1g/m、更にマレイン酸系表面サイズ剤(商品名;ポリマロン1354、荒川化学工業社製)を0.1g/mとなるように塗布した以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
【0064】
実施例7
実施例3の芯材層としての紙基材で、マシンキャレンダの条件を変更し、王研式平滑度60秒に調整した以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
【0065】
実施例8
実施例1と同じ紙基材の両面に、下記顔料塗工液を塗設し、スーパーキャレンダで平滑化処理して、王研式平滑度2000秒に調整した芯材層(C)を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
[塗工液の調製]
水に、カオリン(商品名;ミラグロス91、エンゲルハード社製)50部、分散剤(商品名;アロンA−9、東亞合成社製)0.01部を加え、コーレス分散機で分散して、固形分濃度72%のカオリン分散液を得た。この分散液に、固形分濃度75%の重質炭酸カルシウム(商品名;FMT−97、ファイマテック社製)を固形分で50部加え、顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、酸化澱粉(商品名;エースA、王子コーンスターチ社製)3部、スチレン−ブタジエン系共重合体(商品名;T2531E、JSR社製)10部を添加・撹拌し、さらに水を加えて、固形分濃度が60%の塗工液を調製した。
[塗工層の形成]
上記塗工液を、片面当たりの乾燥塗工量が12g/mとなるようにブレードコータを用いて、実施例1で得られた紙基材の両面に塗工した。その際の熱風乾燥は160℃で行い、スーパーキャレンダ処理した。
【0066】
実施例9
実施例8で用いた熱可塑性フィルムを2軸延伸PPフィルム(#35)(商品名:OP N−2、東セロ社製、厚み35μm,密度0.72g/cm)から2軸延伸PPフィルム(商品名:乳白OP Nw−2、東セロ社製、厚み30μm,密度0.85g/cm)に変更した以外は、実施例8と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
【0067】
実施例10
実施例8のトナー受像層の処方中に、下記トナー受像層用塗料のように樹脂微粒子を追加で配合した以外は、実施例8と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
<トナー受像層>
トナー受像層用塗料の調製
炭酸カルシウム微粒子 100質量部
(商品名:TP−121、奥多摩工業社製、モース硬度3、長径2〜3μm、短径0.1〜1μmの紡錘形状)
樹脂微粒子(ナイロン) 20質量部
(商品名;Orgasol 2001 EXD Nat 1、平均粒径10μm、ビカット軟化点143℃、アルケマ社製)
ポリウレタンアイオノマー(商品名:ハイドランAP40、DIC社製)100質量部
帯電防止剤 5質量部
(アルキルエーテルフォスフェートのカリウム塩系、商品名:エレクトロストリッパーF、花王社製)
分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 1質量部
固形分濃度が6%になるように配合し、市販の攪拌機を用いて分散を行った。
【0068】
実施例11
トナー受像層を下記に変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表1に示す。
<トナー受像層用塗料の調製>
炭酸カルシウム微粒子 100質量部
(商品名:TP−121、奥多摩工業社製、モース硬度3、長径2〜3μm、短径0.1〜1μmの紡錘形状)
ポリウレタン樹脂 100質量部
(商品名:タケラックT−3350、三井武田ケミカル社製)
帯電防止剤(商品名:ニッカタイボー、日本化成社製) 5質量部
分散剤(商品名:アロンA−9、東亞合成社製) 1質量部
固形分濃度が6%となるように、希釈溶剤としてトルエンとMEKの1:1混合溶剤を用い、撹拌混合して塗料を得た。なお本実施例で用いる帯電防止剤は、ポリエステルマクロモノマーと4級アンモニウム塩基を有するビニル系モノマーの共重合体である。
【0069】
実施例12
実施例11で用いたトナー受像層用塗料において、帯電防止剤を芳香族スルホン酸アミン塩共重合体系に変更した以外は実施例11と同様に電子写真用転写シートを作成し、評価した。その結果を表1に示す。
【0070】
実施例13
実施例1の<芯材層>の[紙基材の作成]において、J/W比の調整と合わせ、ワイヤーシェーキの制御、ウェットパートでのドロー調整、乾燥ゾーンでのドローを調整して、繊維配向比が1.3で、且つ抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比が、1.04になるように抄紙した以外は、実施例1と同様にして紙基材を得、更に電子写真用転写シートを作成、評価した。その結果を表1に示す。
【0071】
実施例14
実施例2の<芯材層>の[紙基材の作成]において、J/W比の調整と合わせ、ワイヤーシェーキの制御、ウェットパートでのドロー調整、乾燥ゾーンでのドローを調整して、繊維配向比が1.3で、且つ抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比が、1.08になるように抄紙した以外は、実施例2と同様にして紙基材を得、更に電子写真用転写シートを作成、評価した。その結果を表1に示す。
【0072】
実施例15
実施例8の<芯材層>の[紙基材の作成]において、J/W比の調整と合わせ、ワイヤーシェーキの制御、ウェットパートでのドロー調整、乾燥ゾーンでのドローを調整して、繊維配向比が1.3で、且つ抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比が、1.01になるように抄紙した。また、その抄紙工程でサイズプレス装置を用いて乾燥質量が2g/mとなるように澱粉を塗布し、その後にマシンキャレンダで王研式平滑度20秒になるように平滑化処理し、坪量157g/mの紙基材を得た。塗工については、実施例8と同様にして電子写真用転写シートを作成、評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
比較例1
実施例1の芯材層としての紙基材の作成で、抄造時のJ/W比の変更により、繊維配向比を1.9にした以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表2に示す。
【0074】
比較例2
実施例2の芯材層としての紙基材の作成で、紙料の調製で、カチオン化澱粉(商品名;エースK100、王子コーンスターチ社製)0.2部、アルケニル無水コハク酸(商品名;ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)を0.01部、および硫酸バンド0.3部の添加に減配して紙料を調製した以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表2に示す。
【0075】
比較例3
実施例1の芯材層としての紙基材で、マシンキャレンダの条件を変更し、王研式平滑度40秒に調整した以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表2に示す。
【0076】
比較例4
実施例5の熱可塑性フィルムを2軸延伸PPフィルム(#35)(商品名:OP N−2、東セロ社製、厚み35μm,密度0.72g/cm)から2軸延伸PPフィルム(商品名:TPRA60 ユポ・コーポレーション社製、厚み60μm、密度1.02g/cm)に変更した以外は、実施例5と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表2に示す。
【0077】
比較例5
実施例1の芯材層としての紙基材を、ポリエステルフィルム(商品名:ルミラーS10#188、東レ社製、厚み188μm、密度1.05g/cm)へ変更した以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成した。その評価結果を表2に示す。
【0078】
比較例6
実施例1で、トナー受像層を塗工しないこと以外は、実施例1と同様にして電子写真用転写シートを作成し、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0079】
比較例7
実施例1のトナー受像層用塗料が、バインダー、帯電防止剤および分散剤のみで調製したこと以外は、実施例1と同様にして、電子写真用転写シートを作成し、評価を行った。その結果を表2に示す。
【0080】
<白紙評価>
(1)表面電気抵抗値
作成し電子写真用転写シートを、23℃/50%RHの環境下にて10時間調湿した後、表面電気抵抗値を電気抵抗計(商品名;R12704、Advantest社製)にて測定した。なお表1および表2中、1×E+10Ω/□は1×1010Ω/□であることを表す。
【0081】
(2)CD伸縮率の測定
本発明の伸縮率の測定方法は、以下の通り、ISO8226に準じて測定した。
具体的な測定方法としては、電子写真用転写シートの幅方向において幅15mm、長さ150mmの短冊状の紙片を採取する。この紙片をクランプで挟み、所定加重を掛け、23℃/50%RHの環境下で30分保持し、次に、湿度を50%RH→85%RH(3時間)→25%RH(3時間)→85%RH(3時間)→25%RH(3時間)→80%RH(4時間)→25%RH(4時間)のように変化させる。(括弧内は保持時間を示す。)
下記に示す式から、紙片の伸縮率(X)を求めた。
X={(L80−L25)/(W80−W25)}
なおL80、L25、W80、W25は以下の通りである。
L80:最終サイクルの80%RHの紙片の長さ(mm)
L25:最終サイクルの25%RHの紙片の長さ(mm)
W80:最終サイクルの80%RHの紙片の重さ(g)
W25:最終サイクルの25%RHの紙片の重さ(g)
【0082】
(3)超音波伝播速度比の測定
芯材層(C)の音速法により測定した超音波伝播速度に関し、抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bの(伝播速度b)/(伝播速度a)比の算出方法は次の通りである。
対角線超音波伝播速度比の測定方法 JIS P−0201に示されているY15,T11の大きさに10枚の転写シートを用意し、温度23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室において12時間調湿した後、各一枚ずつについて超音波伝播速度計(商品名;SST 250、野村商事社製)で、抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aと135°の伝播速度bを測定して、(伝播速度b)/(伝播速度a)で表される対角線超音波伝播速度比を求める。10枚の測定値の平均値を伝播速度比とする。
【0083】
(4)吸水率の測定
電子写真用転写シートサンプルを14cm×5cmに切り、水に立てて浸漬する。1週間後のサンプル質量と浸漬前の質量から吸水率を計算する。
吸水率(%)=(浸漬後質量−浸漬前質量)×100
【0084】
(5)平滑度の測定 王研式平滑度測定器によって測定した。
【0085】
(6)白紙外観評価
電子写真用転写シート表面の凹凸を目視評価。
◎:白紙表面に凹凸が観られず、非常に滑らかな外観。
○:白紙表面に若干凹凸が観られるが、滑らかな外観。
△:白紙表面に凹凸が観られるが、実用上、問題ない外観。
×:白紙表面に著しく凹凸が観られ、実用上、問題となる外観。
【0086】
<トナー転写性、プリンター搬送傷、トナー密着性、耐水性および折り加工適性の評価>
A4サイズに整えた電子写真用転写シートを、乾式電子写真プリンター(商品名;magicolor 2430DL、コニカミノルタ社製)でA4サイズに画像の大きさを拡大したISO/JIS−SCID画像(名称;N3a 果物かご)を片面に印字し、以下の方法にてトナー転写性、画像部平滑性、トナー密着性、プリンター搬送傷および耐水性、印字後ネジレカールを評価し、その結果を表1〜2に示す。
ここでのトナー転写性、画像部平滑性、トナー密着性およびプリンター搬送傷の評価において、下記基準で評価した。
◎:非常に優れている。
○:良好である。
△:実用上、問題ないレベル(許容レベル)。
×:実用上、問題となるレベル。
A)トナー転写性
原画像に対してトナーの転写の状態や、抜け等の発生の有無を目視評価。
B)画像部平滑性
画像部分の凹凸を目視評価。
C)トナー密着性
印字後、受像面が表面になるよう転写シートを長辺が2等分するように折り目をつけた後、折り目にそって指でこすり、折り目からのトナーの剥離状態を目視観察。
D)プリンター搬送傷
受像面および裏面の分離爪や送りロールに起因した傷の有無を目視観察
E)耐水性(熱可塑性フィルム層の剥がれ)
トナー画像部を1週間、水に浸漬し、芯材層(C)から熱可塑性フィルム層(B)が剥離状態している状態を目視で評価。
◎:1週間浸漬して剥離が無いもの
○:1週間浸漬して端部に若干の剥離が観られるもの
△:1週間浸漬して端部にやや剥離が観られるが、実用上問題ないもの
×:1週間浸漬して著しい剥離が観られ、実用上問題があるもの
F)耐水性(トナー剥がれ)
トナー画像部を24時間、水に浸漬した後、取り出し、ペーパータオル(商品名:ネピアキッチンタオル、王子ネピア社製)で擦り、トナー画像の剥離状態を目視で評価。
◎:トナー画像の剥離が全く無いもの
○:若干のトナー画像の剥離があるもの
△:ややトナー画像の剥離が観られるが、実用上問題ないもの
×:著しいトナー画像の剥離が観られ、実用上問題あるもの
G)折り加工適性
印字後、受像面が表面になるよう転写シートを長辺が2等分するように折り目をつけた後、折り目にそって指で擦る。折り目部分の状態(折り目部分が切れるか否か、折り目部が綺麗な線状になるか否か、折った後、直ぐに元に状態に開いてしまうか否か)を目視観察。
◎:折り目部が綺麗な線状になり、折った後も元の状態に戻らないもの
○:折った後も元の状態に戻らないが、若干開いているもの
△:折った後も元の状態に戻るが、実用上問題ないもの
×:折り目部が汚く、折った後も直ぐに元の状態に戻り、実用上問題があるもの、または折り目部分が切れてしまうもの
H)印字後の静電密着性
転写シート10枚を連続して印字し、排出トレイに積層させる。積層した印字物をテーブル上で揃える。(揃え性の状態を官能評価)
◎:冊を全く捌かなくても綺麗に端部が揃うもの
○:冊を1回捌くと綺麗に端部が揃うもの
△:冊を3回捌くと綺麗に端部が揃い、実用上問題がない
×:冊を4回以上捌いても端部が揃わず実用上問題があるもの
I)印字後のネジレカール
転写シートの、1)短辺を持って吊るし、下方の辺のカール量を測定、次に、2)長辺を持って吊るし、下方の辺のカール量を測定、3)先に測定した短辺とは逆の短辺を持って吊るし、下方の辺のカール量を測定、最後に、4)先に測定した長辺とは逆の長辺を持って吊るし、下方の辺のカール量を測定する。印字面側へのカールを+、印字面と反対面側へのカールを−で表記し、+と−で最大値を求める。
◎:ネジレカールが20mm以下で大変良好で、印字物の形状が大変良好なもの
○:ネジレカールが20〜50mm以下で、印字物に若干のネジレがあるが、良好なもの
△:ネジレカールが50〜80mmで、印字物にネジレあるが、実用上問題ないもの
×:ネジレカールが80mmを超えて、印字物に大きくネジレがあり、実用上問題があるもの
【0087】
表1に示すように、本発明に基づく実施例で得た電子写真用転写シートは、画質および安定したプリンター走行性、耐水性、折り加工適性およびトナー密着性を有し、搬送傷防止効果を有する。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る電子写真用転写シートは、安定したプリンター走行性を有し、またプリンター機種によらず良好な画質を得られるばかりでなく、プリンター搬送傷がなく、耐水性やトナー密着性が優れ、且つ折り加工適性に優れているので、POPなどの掲示物を印刷に適しており、実用上極めて有用であり、その産業界に寄与するところ大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、顔料含有トナー受像層(A)、熱可塑性フィルム層(B)および紙基材からなる芯材層(C)を順次積層した構造を有する電子写真用転写シートであって、前記熱可塑性フィルム層(B)が、ポリオレフィン系樹脂および無機フィラーからなる密度0.5〜0.9g/cmおよび厚み10〜50μmの2軸延伸フィルムであり、前記紙基材が平滑度80秒以上およびCD伸縮率0.19以下であり、かつ前記転写シートを水に1週間浸漬後、その吸水率が55%以下であることを特徴とする電子写真用転写シート。
【請求項2】
前記転写シートを23℃/50%RHで調湿後、前記トナー受像層(A)の表面電気抵抗値が1×10〜1×1012Ω/□である請求項1記載の電子写真用転写シート。
【請求項3】
前記紙基材が、音速法により測定した超音波伝播速度に関し、抄紙の縦方向に対してなす角が45°の伝播速度aおよび135°の伝播速度bとした(伝播速度b)/(伝播速度a)比が、1.00±0.08である請求項1または2記載の電子写真用転写シート。

【公開番号】特開2010−20283(P2010−20283A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43894(P2009−43894)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】