説明

電子写真装置用クリーニングブレード

【課題】小径、球形トナーを用いた場合であっても、低温環境下で長時間停止直後及び低温環境下での連続使用中においても良好なクリーニング性能を有する電子写真装置用クリーニングブレードを提供する。
【解決手段】像担持体に当接、摺擦して残留トナーを除去する弾性ブレード部材を有する電子写真装置用クリーニングブレードであって、該弾性ブレード部材が(1)から(4)を満たすことを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。(1) 式(a)で表される10 ℃での応力緩和率が25 %以下
【数1】


(2)国際ゴム硬さ(IRHD)が65以上、80以下。(3) 引張り試験における100%引張り時の応力が3.0 MPa以上、5.0MPa以下。(4) 動的粘弾性試験におけるtanδのピーク温度が−20℃以上、0 ℃以下。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の静電転写プロセスを利用した電子写真装置に用いられるクリーニングブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター、ファクシミリ等に代表される電子写真装置では、感光体等の像担持体の外周面を一様に帯電し、被複写画像を介して露光して形成した静電潜像に、トナーを付着してトナー像とし、それを紙等の転写材に転写して画像を形成している。トナー像の転写後の感光体の外周面上には、トナーが残留するため、クリーニングブレードを感光体の外周面に当接、摺擦して残留トナーの除去を行い、次の画像形成に備えている。
【0003】
クリーニングブレードは金属製等の板状の支持金具(ホルダー)の片端にゴム製のブレード部材を一体化し、ホルダーを装置に固定して設けられる。ブレード部材は、耐摩耗性等の機械的強度に優れ、且つ当接応力による永久変形等のクリ−プ性が低いことから、ポリエステル系ウレタンエラストマー、中でも熱硬化性ポリエステル系ウレタンエラストマーが使用されている。
【0004】
ウレタンエラスマーは、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤及び触媒を用い、プレポリマー法、セミワンショット法、ワンショット法等により製造される。例えば、プレポリマー法によりクリーニングブレードを製造する場合は、ポリイソシアネートとポリオールを用いてプレポリマーを調製し、このプレポリマーに鎖延長剤及び触媒を添加した後、これを成形用の金型に注入して硬化させて製造される。
【0005】
クリーニングブレードにより感光体上の残留トナーを完全に除去するためには、感光体外周面上へのブレード部材の接触が、常に一定の状態に保たれている必要がある。そのため、クリーニングブレードと感光体の位置関係を規制したり、支持金具をバネで加圧したりする方法が一般的に行われている。
【0006】
しかし、ウレタンエラストマー製のブレードは、硬度が高すぎると、当接する感光体を傷つけるおそれがあり、低すぎると、耐磨耗性が不充分となりエッジ部分に欠けが生じ、欠損部分からトナーがすり抜けてクリーニング不良が発生することがある。
【0007】
近年、電子写真装置は高解像度化のために、使用するトナーが小径化され、その形状が球形化されており、従来と比べ感光体とクリーニングブレード間のトナーのすり抜けが生じやすく、クリーニング不良が発生しやすくなっている。また、電子写真複写機、レーザービームプリンターの普及に伴い、従来よりも幅広い環境で使用されるようになり、特に低温環境下(10 ℃以下)では、ブレード部材に用いられるウレタンエラストマーのゴム性の低下により、クリーニング不良が発生しやすい。その中でも、低温環境下で一晩放置後、朝一番で使用する際、特にクリーニング不良が発生しやすい。低温におけるクリーニング性能は、tanδのピーク温度と相関があり、tanδのピーク温度を電子写真装置の使用温度に想定されている温度以下に設定することで、低温でのクリーニング性能を向上させ得ることが報告されている(特許文献1)。また、球形トナーに対するクリーニング性能は、300%モジュラスと引裂き強度を規定することで、クリーニング性が向上することが報告されている(特許文献2)。しかしながら、特許文献1のクリーニングブレードは、電子写真装置の高画質化に伴う小径且つ、球形トナーに対してクリーニング性能は充分とはいえず、特許文献2のクリーニングブレードは、低温環境下におけるクリーニング性能は充分とはいえない。
【特許文献1】特開平11−212418
【特許文献2】特開2002−72799
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、小径、球形トナーを用いた場合であっても、低温環境下で長時間停止直後及び低温環境下での連続使用中においても良好なクリーニング性能を有する電子写真装置用クリーニングブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、像担持体に当接、摺擦して残留トナーを除去する弾性ブレード部材を有する電子写真装置用クリーニングブレードであって、該弾性ブレード部材が(1)から(4)を満たすことを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレードに関する。
(1) 式(a)で表される10 ℃での応力緩和率が25 %以下
【0010】
【数1】

【0011】
(2)国際ゴム硬さ(IRHD)が65以上、80以下
(3) 引張り試験における100%引張り時の応力が3.0 MPa以上、5.0MPa以下
(4) 動的粘弾性試験におけるtanδのピーク温度が−20℃以上、0 ℃以下。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子写真装置用クリーニングブレードは、小径、球形トナーを用いた場合であっても、低温環境下で長時間停止直後及び低温環境下での連続使用中においても良好なクリーニング性能を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の電子写真装置用クリーニングブレードは、像担持体に当接、摺擦して残留トナーを除去する弾性ブレード部材を有する電子写真装置用クリーニングブレードであって、該弾性ブレード部材が(1)から(4)を満たすことを特徴とする。
(1) 式(a)で表される10 ℃での応力緩和率が25 %以下
【0014】
【数2】

【0015】
(2)国際ゴム硬さ(IRHD)が65以上、80以下
(3) 引張り試験における100%引張り時の応力が3.0 MPa以上、5.0MPa以下
(4) 動的粘弾性試験におけるtanδのピーク温度が−20℃以上、0 ℃以下。
【0016】
上記弾性ブレード部材は、(1)10℃における式(a)から求められる応力緩和率が25%以下である。弾性ブレード部材において、10℃における式(a)で表される応力緩和率が25%以下であると、低温環境下で長時間放置したとき、感光体表面にかかる弾性ブレードのエッジ部の線圧が低下するのを抑制し、クリーニング不良の発生を抑制することができる。
【0017】
応力緩和率は以下の方法により求めた値を採用することができる。作製したブレード部材から厚さ0.5mmの短冊状の試験片を切り出し、この試験片を応力測定機(TMA/SS 6000:セイコーインスツルメンツ社製)に測定長さが10mmになるように固定する。キャビティ内環境を10℃にし、1mmの変位を与え60分間保持する。変位を与えた瞬間の応力と、60分後の応力を測定し、測定値から式(a)より応力緩和率を算出する。
【0018】
また、上記弾性ブレード部材は、(2)国際ゴム硬さ(IRHD)が65以上、80以下である。弾性ブレード部材において、硬度が65°(IRHD)以上であれば、トナーの摺り抜けを抑制することができ、硬度が80°(IRHD)以下であれば、感光体の磨耗を抑制することができる。
【0019】
国際ゴム硬さ(IRHD)は、ウォーレス(H.W.WALLACE)社製の硬度計を用い、JIS K6253に準拠した測定方法による測定値を採用することができる。
【0020】
また、上記弾性ブレード部材は、(3)引張り試験における100%引張り時の応力(M100)が3.0 MPa以上、5.0MPa以下である。弾性ブレード部材において、M100が3.0MPa以上であれば、感光体表面にかかるエッジ部の線圧が充分であり、エッジ部の変形を抑制することができ、トナーの摺り抜けやエッジ部の欠けによるクリーニング不良の発生を抑制することができる。M100が5.0MPa以下であれば、感光体表面にかかるエッジ部の線圧が過大となるのを抑制し、エッジ部や、感光体表面の磨耗の発生を抑制することができる。
【0021】
引張り試験における100%引張り時の応力は、引張り試験機(ユニトロンTS−3013:上島製作所製)を用い、JIS K6251に準拠した測定方法による測定値を採用することができる。
【0022】
また、上記弾性ブレード部材は、(4)動的粘弾性試験におけるtanδのピーク温度が−20℃以上、0 ℃以下である。動的粘弾性試験におけるtanδのピーク温度が−20℃以上であれば、エッジ部の過激な動きに伴う磨耗を抑制することができ、0 ℃以下であれば、低温環境下での連続使用時において充分な弾性を有し、低温環境におけるクリーニング不良の発生を抑制できる。
【0023】
tanδピーク温度は、以下の測定方法による測定値を採用することができる。ブレード部材から短冊状の試験片を切り出し、この試験片を測定長さが20mmとなるように誘電損失測定機(DMS6100:セイコーインスツルメンツ社製)に固定する。試験片に振幅5μm、周波数10Hzで歪みをかけ、昇温スピード2℃/minにて、約0.5℃毎に−30℃から60℃までのtanδを測定する。tanδの値が最大になる温度をtanδのピーク温度とする。
【0024】
上記弾性ブレード部材が(1)から(4)を満たすことにより、小粒径、球形トナーを使用しても、低温環境下で良好なクリーニング性能を有する。
【0025】
上記弾性ブレード部材は、ウレタンエラストマー材料を用いて形成されたものであることが好ましい。
【0026】
かかるウレタンエラストマー材料としては、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤及びウレタン硬化用触媒を含有する液状組成物であることが好ましい。
【0027】
上記ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有するものであればよく、例えば、以下のものを挙げることができる。4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルジイソシネート。トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジイソシアネート、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート。オルトトルイジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、ジメチルジイソシアネート等。これらは単独で用いても、二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうち、特に、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を好ましいものとして挙げることができる。
【0028】
上記ポリイソシアネートとともに用いられるポリオールとしては、2以上の水酸基を有するものであればよく、例えば、以下のものを挙げることができる。ポリエチレンアジペートポリエステルポリオール、ポリブチレンアジペートポリエステルポリオール、ポリヘキシレンアジペートポリエステルポリオール、ポリエチレン−プロピレンアジペートポリエステルポリオール。ポリエチレン−ブチレンアジペートポリエステルポリオール、ポリエチレン−ネオペンチレンアジペートポリエステルポリオール等のアジペート系ポリエステルポリオール。カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等ポリエーテルポリオール。ポリカーボネートジオール等。これらは単独で用いても、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0029】
上記鎖延長剤は、ウレタンエラストマー鎖を延長可能なものであればよく、ポリオールを用いることができる。具体的には以下のものを挙げることができる。1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、へキサンジオール、1,4−シクロへキサンジオール、1,4−シクロへキサンジメタノール、キシリレングリコール。トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,2,6−へキサントリオール等の分子量200以下のポリオール。
【0030】
上記ウレタン硬化用触媒は、イソシアヌレート化触媒とウレタン化触媒に大別され、これらのうちいずれか1種を用いてもよいが、イソシアヌレート化触媒とウレタン化触媒を併用することが好ましい。ウレタン硬化用触媒としては、三級アミン等のアミン系化合物、有機金属化合物等を用いることができ、具体的には、以下のものを挙げることができる。上記イソシアヌレート化触媒としては、N−エチルピペリジン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−エチルモルフォリン等の第3級アミン。テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩。トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩。酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリン酸、吉草酸、オクチル酸、ミリスチン酸、ナフテン酸等のカルボン酸のアルカリ金属塩。これらは単独で用いても、二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうち、カルボン酸のアルカリ金属塩は、成形後のブルームを抑制し、他の部品の汚染を抑制できることから、好ましい。
【0031】
上記ウレタン化触媒としては、一般に用いられるポリウレタン硬化用の触媒を使用することができ、例えば三級アミン触媒等を挙げることができる。ジメチルエタノールアミン、N、N,N’−トリメチルアミノプロピルエタノールアミン等のアミノアルコール。トリエチルアミン等のトリアルキルアミン。N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミン。トリエチレンジアミン、ピペラジン系、トリアジン系等。また、ポリウレタンの成形に用いられる金属触媒でもよく、ジブチル錫ジラウレート等を例示することができる。これらは単独で用いても、二種以上組み合わせて使用してもよい。これらのうち、アミノアルコールは反応性とともに、成形後のブルームを抑制し、他の部品の汚染を抑制できることから、好ましく、さらに好ましくは、N,N−ジメチルアミノヘキサノールである。
【0032】
イソシアヌレート化触媒の使用量は、ポリオールとポリイソシアネートとの合計の質量に対し、0.01 質量%以下であることが、好ましい。イソシアヌレート化触媒が0.01質量%以下であれば、イソシアネートが多くなり応力緩和率が過大となるのを抑制することができる。
【0033】
上記ウレタンエラストマー材料中、ポリイソシアネート100質量部に対し、ポリオールは150質量部以上、300質量部以下、鎖延長剤は10質量部以上、20質量部以下であることが好ましい。また、ウレタン硬化用触媒の使用量は、ウレタンエラストマー材料の合計質量に対し、0.02質量%以上、0.05質量%以下であることが好ましい。
【0034】
上記ウレタンエラストマー材料には、必要に応じて、触媒、顔料、可塑剤、防水剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を配合することができる。
【0035】
このようなウレタンエラストマー材料を用いて弾性ブレード部材を製造するには、プレポリマー法、ワンショット法、セミポリマー法及び擬プレポリマー法等を使用することができる。その一例として、プレポリマー法を適用した成型方法を以下に説明する。
【0036】
まず、クリーニングブレード用成形型を準備し、支持部材となるホルダーを配置する。次に、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールとを混合して予め部分的に重合したプレポリマーと、ウレタン硬化用触媒及び鎖延長剤とを注型機に投入し、ミキシングチャンバー内で攪拌し液状混合物を得る。これを上記成形型内に注入し、反応硬化させ、次いで硬化物を脱型し、所定の寸法に切断することにより、ホルダー上にポリウレタンエラストマーからなる弾性ブレード部材が成形されたクリーニングブレードを製造することができる。ホルダーの弾性ブレード部材を成形する部位には、接着剤を塗布しておくことが好ましい。
【0037】
上記方法では成形型にホルダーを配置した弾性ブレード部材の成形方法を説明したが、成形型にホルダーを配置せず、弾性ブレード部材を成型した後、ホルダーに接着することも可能である。
【0038】
上記ウレタンエラストマー材料から得られた弾性ブレード部材において、
(5)ポリイソシアネート濃度が0.95ミリモル/g以上、1.15 ミリモル/g以下
(6)鎖延長剤の濃度が0.25 ミリモル/g以上、0.50 ミリモル/g以下
(7)ウレタン基濃度が1.50 ミリモル/g以上、1.80 ミリモル/g以下であることが好ましい。
【0039】
弾性ブレード部材が(5)ポリイソシアネート濃度が0.95ミリモル/g以上であるとウレタンエラストマー中のハードセグメント量が充分となり、軟らかくなるのを抑制し、上記条件(1)〜(4)を満たす。一方、ポリイソシアネート濃度が1.15ミリモル/g以下であれば、ハードセグメント量が過量となり高硬度になるのを抑制し、上記条件(1)〜(4)を満たす。
【0040】
弾性ブレード部材が(6)鎖延長剤の濃度が0.25ミリモル/g以上であればウレタンエラストマー中のハードセグメント量が充分となり、軟らかくなるのを抑制し、上記条件(1)〜(4)を満たす。一方、鎖延長剤の濃度が0.50ミリモル/g以下であれば、ハードセグメント量が過量となり高硬度になるのを抑制し、上記条件(1)〜(4)を満たす。
【0041】
弾性ブレード部材が(7)ウレタン基の濃度が1.50ミリモル/g以上であれば分子鎖間の凝集が充分となり、軟らかくなるのを抑制し、上記条件(1)〜(4)を満たす。一方、ウレタン基の濃度が1.80ミリモル/g以下であれば、分子鎖間の凝集が過大となり高硬度になるのを抑制し、上記条件(1)〜(4)を満たす。
【0042】
上記ブレード部材中のポリイソシアネート濃度、鎖延長剤濃度は、それぞれの仕込み量(g)及びその分子量によりモル数を求め、以下の式(b)、(c)により求めることができる。また、ウレタン基濃度は、以下の式(e)、(f)により求めたポリオール及び鎖延長剤の水酸基数より以下の式(d)により求めることができる。ポリオールの水酸基価はJISK1557−1に準じた測定方法により得られた測定値を採用することができる。
【0043】
【数3】

【0044】
【数4】

【0045】
【数5】

【0046】
【数6】

【0047】
【数7】

【0048】
本発明の電子写真装置用クリーニングブレードの一例を図1に示す。図1に示す電子写真装置用クリーニングブレードは、金属製のホルダー(剛性板状体)130に本発明のブレード部材150が取り付けられている。なお、電子写真装置用クリーニングブレードにおけるブレード部材の形成位置や形状は、ブレード部材が感光ドラムと当接可能なように適宜選択できる。
【0049】
本発明の電子写真装置用クリ−ニングブレードは、例えば、複写機、レーザービームプリンター、エルイーディープリンター(LEDプリンター)、ファクシミリ、電子写真製版システム等の静電転写プロセスを利用した電子写真装置に用いられる。また、これらの装置において、クリーニングブレードの他、像担持体、帯電部材、現像部材等の複数の部材を一体的に組み込み、電子写真装置本体に着脱可能としたプロセスカートリッジとして適用することができる。
【0050】
本発明の電子写真装置用クリーニングブレードを適用した電子写真装置の一例として、図2に示すものを挙げることができる。図2に示す画像形成装置では、感光体等の像担持体51が、支軸を中心に図面上時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。この像担持体51の表面は、コロナ放電器や帯電ローラー等の帯電部材52により所定の極性、電位に一様に帯電処理される。均一に帯電処理を受けた像担持体51の表面は、次いで、露光手段Lにより目的画像情報の露光(レーザービーム走査露光,原稿画像のスリット露光など)を受け、目的の画像情報に対応した静電潜像53が形成される。その静電潜像53は、次いで、現像部材54によりトナー画像として順次に可視像化される。
【0051】
像担持体51の表面に形成されたトナー画像は、次いで、転写部材55により転写材Pの表面側に転写されていく。なお、転写材Pは、不図示の給紙手段から像担持体51の回転と同期取りされて適正なタイミングをもって像担持体51と転写部材55との間の転写部へ搬送される。転写部材55は、ローラタイプであってもよい。また、4色のトナーを用いてカラー画像を出力するカラーLBP等においては、各色のカラー画像を順次ローラーやベルト等の中間転写体に重畳して転写した後、転写材Pの表面側に転写される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは、像担持体55から分離されて加熱定着ローラー等の定着部材58により像定着を受け、画像形成物として出力される。
【0052】
転写後、像担持体51の表面は、本発明の電子写真装置用クリーニングブレード56で残留トナー等の付着汚染物の除去を受けて洗浄面化され、繰り返して作像に供される。
【実施例】
【0053】
次に本発明の電子写真装置用クリーニングブレードについて実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
[ウレタンエラストマー材料の調製]
(A)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、(B)ポリブチレンアジペートポリエステルポリオール(PBA,数平均分子量2000)とを表1に示す割合で混合し、80℃窒素雰囲気下120分間反応させ、プレポリマーを得た。一方、(C)1,4−ブタンジオール(1,4−BD)及びトリメチロールプロパン(TMP)、(D)ポリへキシレンアジペートポリエステルポリオール(PHA,数平均分子量1000)並びに(E)触媒を、表1に示す割合で混合し、硬化剤を得た。
【0055】
上記プレポリマーと上記硬化剤中のポリオールの分子量を以下の方法により求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)用の単分散ポリスチレンについて、ピークカウント数と単分散ポリスチレンの数平均分子量 との検量線をGPCにより以下の条件で作成した。カラム:G3000PWXL×2本(東ソー社製)、溶出溶媒:20mMリン酸緩衝液、検出器:示差屈折計、流速:0.5mL/分、試料溶液使用量:10μL、カラム温度:45℃とした。求めた検量線から平均分子量を算出した。
【0056】
[電子写真装置用クリーニングブレードの製造]
予め支持部材としてホルダーを用意し、片端面に接着剤を塗布した。上型と下型で構成されるクリーニングブレード用成形型に、上記ホルダーを接着剤を塗布した片端部がキャビティ内に突出した状態に配置し、調製したウレタンエラストマー材料をキャビティ内に注入した。これを130℃の加熱温度で反応硬化させ、次いで硬化物を脱型し、所定の寸法に切断することで、ホルダー上に弾性ブレード部材が成形された電子写真装置用クリーニングブレードを作製した。
【0057】
得られたクリーニングブレードについて、応力緩和率、硬度、引張り試験における100%モジュラス、tanδピーク温度を上記の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
表中の数値の単位は、質量部であり、記号は以下のものを示す。
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT:日本ポリウレタン工業(株)製)
PBA:ポリブチレンアジペートポリエステルポリオール(ニッポラン4010:日本ポリウレタン工業(株)製)
1,4−BD:1,4−ブタンジオール(三菱化学(株)製)
TMP:トリメチロールプロパン(三菱ガス化学(株)製)
PHA:ポリヘキシレンアジペートポリエステルポリオール(ニッポラン164:日本ポリウレタン工業(株)製)
ウレタン化触媒(カオライザー No.25:花王(株))
ヌレート化触媒(P15:エアプロダクツジャパン社製)
[実機評価]
得られた電子写真装置用クリーニングブレードについて、レーザービームプリンター(LBP−2510:キヤノン社製)に組み込み、長時間停止後のクリーニング性、低温(10℃)での500回連続画像形成(30%)におけるクリーニング性の評価を行った。クリーニング不良による画像不良が認められない場合を〇、軽微な画像不良が認められた場合を△、顕著な画像不良が認められた場合を×とした。結果を表3に示す。
【0061】
[実施例2〜4、比較例1〜3]
表1、2に示す割合でプレポリマー及び硬化剤を使用した他は実施例1と同様に、電子写真装置用クリーニングブレードを作製し、評価を行った。結果を表3、4に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
表3、4に示すように、実施例1〜4では、長時間停止後および500枚画出し後において、クリーニング不良が発生しなかった。これに対し、比較例1では応力緩和率が大きいため低温での長時間停止後に充分な当接圧が得られず、クリーニング不良が発生した。また、引っ張り試験でのM100が5.0MPaよりも大きいため、感光ドラム表面の削れにより画像不良が発生した。比較例2では、tanδのピーク温度が高いため、低温でのゴム性が不十分であり、クリーニング不良が発生した。また、比較例3では引っ張り試験でのM100の値が3.0 MPa以下であるため、クリーニングに必要な当接圧が得られず、クリーニング不良が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の電子写真装置用クリーニングブレードの一例を示す側面図である。
【図2】本発明の電子写真装置用クリーニングブレードを適用し得る電子写真装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0066】
130 ホルダー
150 ブレード部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に当接、摺擦して残留トナーを除去する弾性ブレード部材を有する電子写真装置用クリーニングブレードであって、
該弾性ブレード部材が(1)から(4)を満たすことを特徴とする電子写真装置用クリーニングブレード。
(1) 式(a)で表される10 ℃での応力緩和率が25 %以下
【数1】

(2)国際ゴム硬さ(IRHD)が65以上、80以下
(3) 引張り試験における100%引張り時の応力が3.0 MPa以上、5.0MPa以下
(4) 動的粘弾性試験におけるtanδのピーク温度が−20℃以上、0 ℃以下。
【請求項2】
弾性ブレード部材がウレタンエラストマー材料を用いて形成されたことを特徴とする請求項1記載の電子写真装置用クリーニングブレード。
【請求項3】
弾性ブレード部材が(5)から(7)を満たすことを特徴とする請求項2記載の電子写真装置用クリーニングブレード。
(5)ポリイソシアネート濃度が0.95ミリモル/g以上、1.15 ミリモル/g以下
(6)鎖延長剤の濃度が0.25 ミリモル/g以上、0.50 ミリモル/g以下
(7)ウレタン基濃度が1.50 ミリモル/g以上、1.80 ミリモル/g以下。
【請求項4】
ポリイソシアネートが4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートであることを特徴とする請求項3記載の電子写真装置用クリーニングブレード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−282294(P2009−282294A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134220(P2008−134220)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】