説明

電子制御装置

【課題】一方のケースがダイカスト成形により形成され他方のケースがプレス成形により形成される筐体構造について、その防水機能を低下させることなく当該筐体の小型化を図り得る電子制御装置を提供する。
【解決手段】下ケース20がダイカスト成形により形成され、上ケース30がプレス成形により形成される。そして、下ケース20の周縁部23には、当該下ケース20の外側面24に連なる平坦面25が当該装置の幅方向に沿うように形成されるとともに、この平坦面25の内側から外側面24に沿い突出する突出壁部26が形成される。また、上ケース30の周縁部33は、外側面24と平坦面25と突出壁部26の外側壁面26aとにシール材40を介して接合するように、段状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板を筐体内部に収容した、車両などの制御を行う電子制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子制御装置として、回路基板を間に配置した状態で2つのケースを互いに接合して筐体を構成することによって、この筐体の内部に回路基板を収容する構造を採用したものが知られている。このような電子制御装置では、防水性を確保するための構造を有することがあり、例えば、一方のケースの周縁部に溝を設け、この溝にシール材を配置するとともに、他方のケースの周縁部に凸部を形成し、2つのケースを接合させるときに、他方の凸部を一方の溝にシール材を介して接合させることによって、防水性を確保している。このような防水構造による防水性能は、筐体とシール材の接触面における筐体の外側から内側までの最短長さ(以下、この長さを「リークパス」という)によって表され、通常、リークパスが長いほど、優れた防水性を有している。
【0003】
また、成型した樹脂、プレス加工した鋼材またはアルミ合金、およびアルミダイカストなどが、上述した防水機能以外に必要となる性能に応じて、例えば、価格、重量、微細加工性、放熱性および電気雑音遮断性能(以下、「電雑性能」という)に応じて、筐体の材料として使い分けられている。例えば、アルミダイカストの筐体を用いた場合、前述した防水のための溝や凸部などを容易に形成できるとともに、小型で、優れた放熱性および電雑性能を有した電子制御装置が得られる。
【0004】
また、従来の電子制御装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この電子制御装置の筐体は、PBT等の樹脂製であり、略四角箱状のケースとこのケースの開放側を閉塞するカバーとから構成されている。ケースの開口縁部に沿い設けられる枠状の壁部には、外部方向に環状に突出する外側凸部が形成される枠状のゴム製のパッキンが取り付けられている。そして、ケースの開口部を覆うように、カバーをケース側に押しつけると、カバーの周囲に設けられた外壁が、パッキンの外側凸部を内部側に押圧した状態にて、外側凸部の先端面上を摺動するようにして移動する。これにより、ケースとカバーとが一体となった状態では、パッキンの外側凸部がケースの外壁の内側面を押圧した状態となるので、パッキンの弾力により、この部分で筐体がシールされて、筐体内への浸水を防止している。
【0005】
また、特許文献2に開示される電子装置では、アルミニウムをプレス加工することによって形成されるケースおよびベースから筐体が構成され、この筐体内に回路基板と、当該筐体の内部空間を防水するシール材と、回路基板からの放熱性を向上させる熱伝導材とが収容されている。そして、ベースの、熱伝導材の配置部位とシール材の配置部位との間に、熱伝導材の配置部位に対して内面側に突起する突起部が設けられている。これにより、組立時に、回路基板およびケースによって押されたシール材が、ベースの固定部と対向する回路基板との間の隙間を介して移動する場合でも、突起部によってシール材が堰き止められて、シール材と熱伝導材との接触を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−258450号公報
【特許文献2】特開2007−184428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7(A)は、両ケース2,3がダイカスト成形により形成される従来の筐体構造を例示する拡大断面図であり、図7(B),(C)は、第1ケース2がダイカスト成形により形成され、第2ケース5がプレス成形により形成される従来の筐体構造を例示する拡大断面図である。
しかし、ダイカスト成形により形成される筐体では、より低価格で軽量な電子制御装置を得ることは困難である。また、例えば樹脂で筐体を構成した場合は、低価格で軽量な電子制御装置を得られるものの、優れた放熱性や電雑性能を確保するには、表面処理などの追加加工が必要となり、その場合、低価格で実現することが困難である。また、アルミ合金などをプレス加工した場合は、微細加工性に劣り、例えば深い溝や高さの大きな凸部の形成が困難で、優れた防水性を確保するためには、溝の幅を大きくすることでその幅方向にリークパスを確保する必要があり、その分、筐体のサイズが大きくなってしまう。
【0008】
例えば、図7(A)に例示するように、ダイカスト成形により形成される第1ケース2および第2ケース3から筐体1が構成され、第1ケース2に形成される溝部2aと第2ケース3に形成される突起3aとをシール部材4を介して接合することで、防水性が確保される。突起3aは高精度に形成されることから当該突起3aの幅方向の長さX1aを短くでき、溝部2aの端面から第1ケース2の外側面までの長さ(幅方向長さ:図7での左右方向長さ)X1を短くできるため、当該電子制御装置の小型化が図れるものの、低価格化および軽量化を図ることは困難である。なお、図7(A)に示す幅方向長さX1は、例えば、4.5mmであり、X1aは、例えば、1.5mmである。
【0009】
そこで、電子制御装置の低価格化および軽量化等を図るために、図7(B),(C)に例示するように、プレス成形により形成される第2ケース5を採用することができる。しかしながら、図7(B)に例示する筐体構造では、第2ケース5の突起5aの曲率半径を小さくできないことから突起5aの幅方向の長さX2aが長くなってしまい、リークパスを確保するために第1ケース2の溝部2bの幅方向の長さが長くなる。このため、溝部2bの端面から第1ケース2の外側面までの幅方向長さX2が長くなり、当該電子制御装置の小型化を図ることが困難になる。なお、図7(B)に示す幅方向長さX2は、例えば、8mmであり、X2aは、例えば、3mmである。
【0010】
また、図7(C)に例示する筐体構造のように、上記幅方向に占めるリークパスを短くして電子制御装置の上記幅方向の長さを短くするために、第1ケース2の平坦面2cだけでなく外側面2dにもシール材4を塗布することが考えられる。しかしながら、外側面2dにシール材4を単に塗布すると、このシール材4が外側面2dに沿うように垂れ下がってしまうため、平坦面2cに対して外側面2d部分のリークパスを長くすることができない。このため、幅方向長さX3が長くなってしまい、電子制御装置の上記幅方向の長さが長くなり、当該電子制御装置の小型化を図ることが困難になる。なお、図7(C)に示す幅方向長さX3は、例えば、7.5mmである。
【0011】
また、上述した特許文献1に開示される電子制御装置の筐体は、両ケースがPBT等の樹脂製であり、上述した特許文献2に開示される電子装置の筐体は、両ケースがプレス成形により形成されているため、一方のケースがダイカスト成形により形成され、他方のケースがプレス成形により形成される筐体構造には、そのまま適用することができないという問題がある。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、一方のケースがダイカスト成形により形成され他方のケースがプレス成形により形成される筐体構造について、その防水機能を低下させることなく当該筐体の小型化を図り得る電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の電子制御装置は、ダイカスト成形により形成される第1ケース(20)の周縁部(23)とプレス成形により形成される第2ケース(30)の周縁部(33)とをシール材(40)を介して接合した状態で、これら両ケースを組み付けて構成される筐体(11)内に回路基板(12)が収容される電子制御装置(10)であって、前記第1ケースの周縁部の少なくとも一部には、当該第1ケースの外側面(24)に連なる平坦面(25)が当該装置の幅方向に沿うように形成されるとともに、この平坦面の内側から前記外側面に沿い突出する突出壁部(26)が形成され、前記第2ケースの周縁部は、前記外側面と前記平坦面と前記突出壁部の外側壁面(26a)とに前記シール材を介して接合するように、段状に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子制御装置において、前記外側面の一部には、前記第2ケースの周縁部よりも外側に突出する突出部(28)が形成されることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電子制御装置において、前記平坦面には、前記突出壁部よりも外側に係合部(27)が形成され、前記第2ケースの周縁部には、前記両ケースの組み付け時に前記係合部が係合する被係合部(37)が形成されることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記係合部および前記被係合部は、前記両ケースを締結する締結部材(14)の近傍にて係合するようにそれぞれ形成されることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記係合部および前記被係合部は、前記周縁部の隅部にて係合するようにそれぞれ形成されることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置において、前記第2ケースの周縁部は、前記外側面に前記シール材を介して接合する第1接合部(34)と、前記平坦面に前記シール材を介して接合する第2接合部(35)と、前記突出壁部の外側壁面に前記シール材を介して接合する第3接合部(36)と、が、段状に折り曲げて形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する各実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明では、第1ケースがダイカスト成形により形成され、第2ケースがプレス成形により形成される。そして、第1ケースの周縁部の少なくとも一部には、当該第1ケースの外側面に連なる平坦面が当該装置の幅方向に沿うように形成されるとともに、この平坦面の内側から外側面に沿い突出する突出壁部が形成される。また、第2ケースの周縁部は、外側面と平坦面と突出壁部の外側壁面とにシール材を介して接合するように、段状に形成される。
【0020】
このように、第1ケースがダイカスト成形により形成され、第2ケースがプレス成形により形成されるので、両ケースをそれぞれダイカスト成形する場合と比較して、低コスト化を図ることができる。
また、第1ケースと第2ケースとは、第1ケースにおける外側面、平坦面および突出壁部の外側壁面と、第2ケースにおける周縁部とを、シール材を介して接合される。このため、筐体とシール材の接触面における筐体の外側から内側までの最短長さ、すなわち、リークパスは、外側面、平坦面および外側壁面とシール材との外側から内側に向かう方向の接触長さとなる。これにより、平坦面の幅方向長さ(外側から内側に向かう方向の長さ)を短くしても、外側面および外側壁面により必要な防水機能を維持するためのリークパスを確保することができる。平坦面の幅方向長さを短くすることで筐体の幅方向長さも短くなるので、上記構成により、防水機能を維持しつつ平坦面の幅方向長さを短くして当該筐体の小型化を図ることができる。
【0021】
特に、第2ケースの周縁部は、外側面、平坦面および外側壁面にシール材を介して接合するように、段状に形成されることから、高精度の加工を必要としない形状であるので、プレス成形により第2ケースを形成することができる。
したがって、一方のケースがダイカスト成形により形成され他方のケースがプレス成形により形成される筐体構造について、その防水機能を低下させることなく当該筐体の小型化を図ることができる。
【0022】
請求項2の発明では、外側面の一部には、第2ケースの周縁部よりも外側に突出する突出部が形成されるため、筐体に対して落下等の外力が作用する場合には、第2ケースの周縁部よりも先に第1ケースの突出部に対して上記外力が作用しやすくなる。これにより、第1ケースに対して比較的強度の弱い第2ケースを、落下等の外力から好適に保護することができる。
【0023】
請求項3の発明では、平坦面には、突出壁部よりも外側に係合部が形成され、第2ケースの周縁部には、両ケースの組み付け時に係合部が係合する被係合部が形成される。これにより、両ケースの組み付け時には、係合部が被係合部に係合するため、第1ケースにおける外側面、平坦面および外側壁面と、第2ケースにおける周縁部との接合位置のばらつきが抑制される。このように接合位置のばらつきが抑制されることからリークパスのばらつきが抑制されるので、接合位置のばらつきに起因する防水機能の低下を抑制することができる。
【0024】
請求項4の発明では、係合部および被係合部は、両ケースを締結する締結部材の近傍にて係合するようにそれぞれ形成される。このため、締結部材による締結時には、係合部および被係合部の係合により第1ケースと第2ケースとが位置決めされるので、防水機能の低下の抑制に加えて、締結部材を用いた第1ケースと第2ケースとの締結作業を容易に実施することができる。
【0025】
請求項5の発明では、係合部および被係合部は、周縁部の隅部にて係合するようにそれぞれ形成される。周縁部のうち隅部では、他の部位と比較して、平坦面の外側から内側に向かう方向の長さが長くなるので、係合部を設けることでシール材との接触面積が小さくなる影響を低減することができる。
【0026】
請求項6の発明では、第2ケースの周縁部は、外側面にシール材を介して接合する第1接合部と、平坦面にシール材を介して接合する第2接合部と、突出壁部の外側壁面にシール材を介して接合する第3接合部とが、段状に折り曲げて形成される。このように、プレス成形により段状に折り曲げて各接合部を形成することで、第1ケースの外側面、平坦面および外側壁面の形状に応じた第2ケースの周縁部の形状を、容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係る電子制御装置を示す説明図である。
【図2】図1から上ケースを取り外した状態を示す平面図である。
【図3】下ケースを示す説明図である。
【図4】両ケースの周縁部近傍を示す拡大断面図である。
【図5】図5(A)は、筐体の隅部近傍を拡大して示す拡大図であり、図5(B)は、図5(A)に示す5B−5B線相当の切断面による断面図である。
【図6】シール材の塗布位置を示す説明図である。
【図7】図7(A)は、両ケースがダイカスト成形により形成される従来の筐体構造を例示する拡大断面図であり、図7(B),(C)は、第1ケースがダイカスト成形により形成され、第2ケースがプレス成形により形成される従来の筐体構造を例示する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の電子制御装置を具現化した一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電子制御装置10を示す説明図であり、図1(A)は側面図であり、図1(B)は上面図である。図2は、図1から上ケース30を取り外した状態を示す平面図である。
この電子制御装置10は、防水構造を有しており、例えば車両(図示せず)のエンジンルームに配置され、運転者による運転操作などに応じて、エンジン(図示せず)の制御を実行する機能を有する装置である。
【0029】
図1および図2に示すように、電子制御装置10は、筐体11と、コネクタ13を有する板状の回路基板12を備えている。筐体11は、回路基板12の厚さ方向に分割された上ケース30(第2ケース)および下ケース20(第1ケース)をシール材40を介して接合することで構成され、回路基板12のほぼ全体が、上ケース30および下ケース20の内側に構成されたスペースに収容されている。
【0030】
回路基板12は、矩形の板状に形成されており、その両面には、多数の電子部品(図示せず)が実装されている。また、回路基板12の一側端部には、多数のピンを有するコネクタ13が取り付けられている。このコネクタ13は、回路基板12の各種の電子部品や回路を駆動させるための電力を供給するとともに、各種の信号の送受信を行うために、外部コネクタ(図示せず)を接続するためのものである。このように構成される回路基板12は、後述する下ケース20に対して、例えば、ねじ止めによって固定されている(図2参照)。
【0031】
次に、下ケース20および上ケース30について、図3〜図6を用いて詳細に説明する。図3は、下ケース20を示す説明図である。図4は、両ケース20,30の周縁部近傍を示す拡大断面図である。図5(A)は、筐体11の隅部近傍を拡大して示す拡大図であり、図5(B)は、図5(A)に示す5B−5B線相当の切断面による断面図である。図6は、シール材40の塗布位置を示す説明図である。なお、図6では、説明の便宜上、シール材40が塗布される領域にクロスハッチングを施している。
【0032】
図3に示す下ケース20は、アルミダイカスト成形により形成されており、底壁21と、この底壁21の外周縁のうち一縁(以下、開口側縁部21aという)を除きコネクタ13が露出する部位を開口するように連結する周壁22とを有している。
【0033】
周壁22は、上ケース側から見て略コ字状に形成されており、内側の隅部には、回路基板12を下方から支持するための2つの台座22aが設けられている。両台座22aの端面には、回路基板12を締結するためのねじが螺合するねじ孔22bがそれぞれ形成されている。また、周壁22には、その上ケース側端部のうち両隅部とこれら両隅部と開口側縁部21aとの中間部位とに、下ケース20を締結する締結部材としてねじ14が螺合するねじ孔22cが4箇所形成されている。
【0034】
周壁22の上ケース側端部のうち開口側縁部21aから離間して平行となる部位(以下、周縁部23という)には、図4に示すように、当該周壁22の外側面24に対して略直角に連なる平坦面25が当該装置の幅方向(図4の左右方向)に沿うように形成されている。また、周縁部23には、平坦面25の内側から外側面24に沿い突出する突出壁部26が設けられており、この突出壁部26の外側の面(以下、外側壁面26aという)は、平坦面25に対して略直角に連なるように形成されている。
【0035】
図3および図5に示すように、周縁部23の隅部であって平坦面25のうちねじ孔22cの近傍には、突出壁部26よりも外側にて凸状に突出する係合部27がそれぞれ形成されている。周壁22の外側の両隅部には、外側面24から外側に段状に突出する突出部28がそれぞれ設けられている。これら両突出部28は、両ケース20,30の組み付け時に、後述する上ケース30の第1接合部34よりも外側に突出するようにそれぞれ形成されている(図5参照)。
【0036】
また、底壁21の開口側縁部21aと、周壁22の内側面のうち開口側(図3の下側)の端部とには、コネクタ13の外面に形成される係合凸部(図示略)がシール材を介して接合されることで、下ケース20およびコネクタ13間の防水機能を発揮するための溝部29が形成されている。
【0037】
上ケース30は、例えば鋼材をプレス成形することで形成されており、略矩形状の天板31と、その外周縁から下ケース側に延びる環状の側板32とを有している。側板32は、その下ケース側が、下ケース20の周縁部23と回路基板12の一側端部とにシール材40を介して接合されるように形成されている。この側板32には、その下ケース側のうち周壁22の上ケース側端部に接合される部位に、下ケース20の各ねじ孔22cに対応する4つの切り欠き32aがそれぞれ形成されている。
【0038】
図4に示すように、側板32の下ケース側のうち周縁部23に接合される部位(以下、周縁部33という)は、周縁部23に対して、外側面24にシール材40を介して接合する第1接合部34と、平坦面25にシール材40を介して接合する第2接合部35と、突出壁部26の外側壁面26aにシール材40を介して接合する第3接合部36と、が、段状に折り曲げて形成されている。
【0039】
図5に示すように、周縁部33の隅部であって切り欠き32aの近傍には、両ケース20,30の組み付け時に下ケース20の両係合部27が係合する略コ字状の切り欠き37がそれぞれ形成されている。なお、係合部27および切り欠き37は、特許請求の範囲に記載の「係合部」および「被係合部」の一例に相当し得る。
【0040】
図6からわかるように、下ケース20における周壁22の上ケース側端部および回路基板12の一側端部と上ケース30における側板32の下ケース側との間には、シール材40が塗布されている。このシール材40は、例えば湿気硬化型のシリコン接着剤で構成されており、硬化することによって、回路基板12が組み付けられた上ケース30と下ケース20とが互いに接合される。
【0041】
これにより、図4に示すように、下ケース20の周縁部23と上ケース30の周縁部33との間において、リークパスLが確保されることとなる。具体的には、リークパスLは、外側面24および第1接合部34とシール材40との接触長さと、平坦面25および第2接合部35とシール材40との接触長さと、外側壁面26aおよび第3接合部36とシール材40との接触長さと、の各接触長さを加算した長さとなる。
【0042】
このため、コネクタ13のコネクタ面が露出する方向(図1(B)の矢印α参照)における電子制御装置10の長さを短くするために、第1接合部34から外側壁面26aまでの長さ(幅方向長さ:図4での左右方向長さ)X、すなわち、平坦面25の幅方向長さ(外側から内側に向かう方向の長さ)を短くしても、外側面24および第1接合部34と外側壁面26aおよび第3接合部36とにより必要な防水機能を維持するためのリークパスを確保することができる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る電子制御装置10では、下ケース20がダイカスト成形により形成され、上ケース30がプレス成形により形成される。そして、下ケース20の周縁部23には、当該下ケース20の外側面24に連なる平坦面25が当該装置の幅方向に沿うように形成されるとともに、この平坦面25の内側から外側面24に沿い突出する突出壁部26が形成される。また、上ケース30の周縁部33は、外側面24と平坦面25と突出壁部26の外側壁面26aとにシール材40を介して接合するように、段状に形成される。
【0044】
このように、下ケース20がダイカスト成形により形成され、上ケース30がプレス成形により形成されるので、両ケースをそれぞれダイカスト成形する場合と比較して、低コスト化を図ることができる。
【0045】
また、下ケース20と上ケース30とは、下ケース20における外側面24、平坦面25および突出壁部26の外側壁面26aと、上ケース30における周縁部33とを、シール材40を介して接合される。これにより、平坦面25の幅方向長さを短くしても、外側面24および外側壁面26aにより必要な防水機能を維持するためのリークパスLが確保され、平坦面25の幅方向長さを短くすることで筐体11の幅方向長さも短くなるので、上記構成により、防水機能を維持しつつ平坦面25の幅方向長さを短くして当該筐体11の小型化を図ることができる。
【0046】
特に、上ケース30の周縁部33は、外側面24にシール材40を介して接合する第1接合部34と、平坦面25にシール材40を介して接合する第2接合部35と、突出壁部26の外側壁面26aにシール材40を介して接合する第3接合部36とが、段状に折り曲げて形成されている。このように、周縁部33は、高精度の加工を必要としない形状であるので、下ケース20の外側面24、平坦面25および外側壁面26aの形状に応じた上ケース30の周縁部33の形状を、プレス成形により容易に形成することができる。
したがって、下ケース20がダイカスト成形により形成され上ケース30がプレス成形により形成される筐体構造について、その防水機能を低下させることなく当該筐体11の小型化を図ることができる。
【0047】
また、外側面24の一部には、上ケース30の周縁部33よりも外側に突出する突出部28が形成されるため、筐体11に対して落下等の外力が作用する場合には、上ケース30の周縁部33よりも先に下ケース20の突出部28に対して上記外力が作用しやすくなる。これにより、下ケース20に対して比較的強度の弱い上ケース30を、落下等の外力から好適に保護することができる。
【0048】
さらに、平坦面25には、突出壁部26よりも外側に係合部27が形成され、上ケース30の周縁部33には、両ケース20,30の組み付け時に係合部27が係合する切り欠き37が形成されている。これにより、両ケース20,30の組み付け時には、係合部27が切り欠き37に係合するため、下ケース20における外側面24、平坦面25および外側壁面26aと、上ケース30における周縁部33の各接合部34〜36との接合位置のばらつきが抑制される。このように接合位置のばらつきが抑制されることからリークパスLのばらつきが抑制されるので、接合位置のばらつきに起因する防水機能の低下を抑制することができる。
【0049】
さらにまた、係合部27および切り欠き37は、両ケース20,30を締結するねじ14の近傍にて係合するようにそれぞれ形成される。このため、ねじ14による締結時には、係合部27および切り欠き37の係合により下ケース20と上ケース30とが位置決めされるので、防水機能の低下の抑制に加えて、ねじ14を用いた下ケース20と上ケース30との締結作業を容易に実施することができる。
【0050】
特に、係合部27および切り欠き37は、周縁部23,33の隅部にて係合するようにそれぞれ形成される。周縁部23のうち隅部では、他の部位と比較して、平坦面25の外側から内側に向かう方向の長さが長くなるので、係合部27を設けることでシール材40との接触面積が小さくなる影響を低減することができる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)周壁22において外側面24、平坦面25および突出壁部26が形成される周縁部23は、上ケース側端部のうち開口側縁部21aから離間して平行となる部位に設けられることに限らず、上ケース側端部のうち開口側縁部21aに直交する部位にも設けられてもよい。この場合、上記直交する部位に接合される側板32の下ケース側の部位にも上述した各接合部34〜36を形成することができる。これにより、コネクタ13のコネクタ面が露出する方向に直交する方向(図1(B)の矢印αに直交する方向)における筐体11の長さを短くして、当該電子制御装置10の小型化を図ることができる。
【0052】
(2)下ケース20は、アルミダイカスト成形により形成されることに限らず、他の材料を用いたダイカスト成形により形成されてもよい。また、上ケース30は、鋼材をプレス成形することで形成されることに限らず、他の板材を用いたプレス成形により形成されてもよい。
【0053】
(3)上述した回路基板12に代えて、コネクタ13を省略した回路基板を用いることにより、回路基板全体を筐体内に収容させてもよい。また、本発明による電子制御装置を、車両のエンジン以外の電子制御が行われる任意の制御対象の電子制御装置として用いてもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
10…電子制御装置
11…筐体
12…回路基板
13…コネクタ
14…ねじ(締結部材)
20…下ケース(第1ケース)
23…周縁部
24…外側面
25…平坦面
26…突出壁部
26a…外側壁面
27…係合部
28…突出部
30…上ケース(第2ケース)
33…周縁部
34…第1接合部
35…第2接合部
36…第3接合部
37…切り欠き(被係合部)
40…シール材
L…シールパス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカスト成形により形成される第1ケースの周縁部とプレス成形により形成される第2ケースの周縁部とをシール材を介して接合した状態で、これら両ケースを組み付けて構成される筐体内に回路基板が収容される電子制御装置であって、
前記第1ケースの周縁部の少なくとも一部には、当該第1ケースの外側面に連なる平坦面が当該装置の幅方向に沿うように形成されるとともに、この平坦面の内側から前記外側面に沿い突出する突出壁部が形成され、
前記第2ケースの周縁部は、前記外側面と前記平坦面と前記突出壁部の外側壁面とに前記シール材を介して接合するように、段状に形成されることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記外側面の一部には、前記第2ケースの周縁部よりも外側に突出する突出部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記平坦面には、前記突出壁部よりも外側に係合部が形成され、
前記第2ケースの周縁部には、前記両ケースの組み付け時に前記係合部が係合する被係合部が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記係合部および前記被係合部は、前記両ケースを締結する締結部材の近傍にて係合するようにそれぞれ形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記係合部および前記被係合部は、前記周縁部の隅部にて係合するようにそれぞれ形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記第2ケースの周縁部は、前記外側面に前記シール材を介して接合する第1接合部と、前記平坦面に前記シール材を介して接合する第2接合部と、前記突出壁部の外側壁面に前記シール材を介して接合する第3接合部と、が、段状に折り曲げて形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−33784(P2013−33784A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168012(P2011−168012)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】