説明

電子制御装置

【課題】回路基板からカバー部材に伝達された電気ノイズを効果的に低減し得る電子制御装置を提供する。
【解決手段】アルミ合金製の液圧制御ブロック3及びカバー部材4と、液圧制御機器類を駆動するパワー電子回路を有する合成樹脂材のバスバー構成体11と、バスバー構成体を介して液圧制御機器の駆動を制御するプリント基板12とを備え、このプリント基板をバスバー構成体に固定するねじ部材19の頭部19a側に固定されたアースプレート25の上端部を、カバー部材の下面4dに弾接させる一方、ねじ部材の軸部19b下端部側に設けられたアーススプリング26の下端縁26aを、ソレノイドケース8の上面に弾接させて、前記カバー部材と液圧制御ブロックとを電気的に導通させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両のアンチロックブレーキシステム(ABS)を制御するための電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の例えばアンチロックブレーキシステムなどに用いられる電子制御装置としては、例えば、以下の特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この従来の電子制御装置は、車体に電気的に導通したアルミ合金材からなる液圧制御ブロックと、該液圧制御ブロックの上端部に設けられた樹脂製のケースと、該ケースの上部に設けられたカバーと、該カバー内に収容された回路基板と、を備えている。
【0004】
前記ケースには、電気接続部材が取り付けられており、この電気接続部材は、一端側が前記回路基板の接地部にカバー内で接続され、他端側が液圧制御ブロックの上面に圧接している。これによって、液圧制御ブロックと回路基板の接地部が電気的に導通して同位となることから、回路基板の電子部品の電気ノイズを低減するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−290596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の電子制御装置にあっては、前記カバーが金属製の場合には、前記回路基板とカバーが近接して配置されていることから、回路基板で発生した電気ノイズがカバーを介して外部に放射されるおそれがある。
【0007】
また、前記液圧制御ブロックには、電動モータや増減圧弁などの駆動アクチュエータが設けられて、これらの電気ノイズがケースを介してカバーに伝達されて外部に放射されるおそれがある。
【0008】
本発明は、前記従来の電子制御装置の技術的課題に鑑みて案出されたもので、回路基板などからカバー部材に伝達された電気ノイズを効果的に低減し得る電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、液圧制御機器類が設けられた金属製の液圧制御ブロックと、該液圧制御ブロックに被嵌した金属製のカバー部材と、液圧制御ブロックとカバー部材との間に保持されて、前記液圧制御機器類を駆動する電子制御機構と、を備え、前記電子制御機構は、前記液圧制御機器類を駆動するパワー電子回路を有する合成樹脂材のバスバー構成体と、該バスバー構成体を介して前記液圧制御機器類の駆動を制御する回路基板とからなり、複数の電子部品が実装された前記回路基板を、固定手段によって前記バスバー構成体に重合状態に固定し、前記固定手段を介して前記カバー部材と前記液圧制御ブロックとを電気的に導通させる導通手段を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路基板からカバー部材に伝達された電気ノイズを、導通手段によって液圧制御ブロックに逃がすことができるので、カバー部材での電気ノイズを効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電子制御装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】本実施形態の電子制御装置の横断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電子制御装置をABSに適用した実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0013】
まず、前記ABSの概略を説明すると、図外のブレーキペダルの踏み込み量に応じたブレーキ圧を発生させるマスターシリンダと、該マスターシリンダと前輪左右(FR、FL)側及び後輪左右(RL、RR)側の各ホイールシリンダとを連通させるメイン通路と、該メイン通路に設けられて、マスターシリンダから各ホイールシリンダへのブレーキ液圧を制御する後述の常開ソレノイド型の増圧弁及び常閉ソレノイド型の減圧弁と、前記メイン通路に設けられて、各ホイールシリンダにブレーキ液圧を吐出するポンプと、前記各ホイールシリンダ内から排出されたブレーキ液を、前記減圧弁を介して貯留すると共に、ポンプの作動によりブレーキ液をメイン通路に供給するリザーバタンクと、を備えている。
【0014】
前記増圧弁は、通常ブレーキ操作時においてマスターシリンダからのブレーキ液圧を各ホイールシリンダに供給可能に制御する一方、減圧弁は、各ホイールシリンダの内圧が所定以上になって、車輪にスリップが発生した際に開弁して、該ブレーキ液をリザーバタンクに戻すようになっている。
【0015】
かかる増減圧を、電子制御装置によって開閉制御することによって、各ホイールシリンダ内のブレーキ液圧を増圧、減圧、保持制御するようになっている。
【0016】
前記電子制御装置は、図1及び図2に示すように、ケーシング1と、該ケーシング1に保持された複数の電子制御機構2と、を備えている。
【0017】
前記ケーシング1は、車体に電気的に導通した下側の液圧制御ブロック3と、該液圧制御ブロック3の上部に組み付けられた前記電子制御機構2を上方から被嵌するカバー部材4と、を備えている。
【0018】
前記液圧制御ブロック3は、アルミニウム合金材によってほぼ立方体状に一体に形成され、上面側には、前記複数の増圧弁5及び減圧弁6の下部を挿通保持させる複数の保持穴7が上下方向に沿って形成されていると共に、前記各増圧弁5及び減圧弁6の上端部に結合されて内部に電磁コイルが収容された金属製のソレノイドケース8が保持されている。このソレノイドケース8は、下面が前記液圧制御ブロック3の上面3aに当接されて電気的に導通している。
【0019】
また、液圧制御ブロック3の内部には、液圧制御機器類の一部を構成する前記増圧弁5や減圧弁6に連通する前記メイン通路やサブ通路、さらにメイン通路にブレーキ油圧を供給するポンプ及び該ポンプを駆動させる電動モータなどの液圧ユニットが設けられている。さらに、液圧制御ブロック3の上部四隅には、固定ボルト14が螺着される雌ねじ孔9が形成されている。
【0020】
前記カバー部材4は、アルミニウム合金材によって、液圧制御ブロック3の外形に沿った薄皿状に形成され、平坦状の上壁4aと、該上壁4aの外周縁に一体に形成された環状の側壁4bと、該側壁4bの下端外周部に連続一体に設けられた矩形枠状のフランジ部4cと、から構成されている。
【0021】
前記フランジ部4cには、このカバー部材4が後述するプリント基板12を被嵌した状態でバスバー構成体11の上端部外周に係止する複数の係止片10が下方へ突設されている。この各係止片10は、前記フランジ4cの各辺の長手方向ほぼ中央位置に設けられて、先端外側に係止爪10aがそれぞれ形成されている。
【0022】
前記液圧制御ブロック3とカバー部材4との間に配置された前記電子制御機構2は、前述のように、各増圧、減圧弁5、6に開閉作動の切換信号を出力し、また前記電動モータのステータに電力を供給するためのパワー電子回路や、ラジオノイズ(電磁ノイズ)を低減させる電磁フィルタ回路などを一体に形成したバスバー構成体11と、該バスバー構成体11の上部に重合状態に配置され、前記電動モータなどの駆動を制御するための回路基板であるプリント基板12と、を備えている。
【0023】
前記バスバー構成体11は、合成樹脂材によるモールディングによってブロック板状に形成され、図1に示すように、外形が前記液圧制御ブロック3やカバー部材4の外形状に沿ってほぼ矩形状に形成されている。また、前記バスバー構成体11の上端外周部には、前記カバー部材4の係止片10の係止爪10aが内側の貫通孔にそれぞれ係入して弾性的に係止する4つの係合部13が一体に設けられている。さらに、バスバー構成体11の外周部の隅部には、前記固定ボルト14が挿通されるボルト挿通孔11aがそれぞれ上下方向に貫通形成されている。
【0024】
また、前記バスバー構成体11の下端外周部には、図2に示すように、前記液圧制御ブロック3の上面外周側に弾接してシールする環状シール15が嵌着溝を介して固定されている。
【0025】
前記バスバー構成体11の前端部には、バッテリーと接続される電源コネクタや、前記電動モータに電力を供給するモータコネクタ、レゾルバやCAN通信、I/Oなどの各種信号の伝達経路となる信号コネクタとからなるコネクタ構成体16が一体に設けられている。
【0026】
さらに、前記バスバー構成体11の表面や内部には、前記電源コネクタに接続された電源負極側バスバー及び電源正極側バスバーなどの配電パターンや、モータへの出力用バスバーや電源正極側バスバーなどの多くの配電パターンが形成されている。
【0027】
また、前記電源コネクタやモータコネクタ及び信号コネクタに接続された複数の端子群17や、モータリレーや後述する半導体スイッチ素子(FET)を駆動するための制御信号用の端子群18などがバスバー構成体11の上面11bから突出している。
【0028】
また、バスバー構成体11の下面11cには、前記パワー電子回路の電子部品や、フィルタ電子回路の構成部品である複数のアルミ電解コンデンサ及びノーマルコイル、コモンコイル、複数のセラミックコンデンサなどが実装されている。
【0029】
さらに、前記バスバー構成体11の上面11bの所定位置には、図2及び図3に示すように、前記プリント基板12を固定手段であるねじ部材19によって固定支持する一つの筒状部20が一体に立設されている。
【0030】
前記ねじ部材19は、上面にドライバー治具用の十字溝が形成された一端側の頭部19aと、該頭部19aの下面に有するフランジ部19cを介して一体に設けられて、外周に雄ねじが切られた他端側の軸部19bとから構成されている。
【0031】
前記筒状部20は、前記バスバー構成体11とプリント基板12との間に所定幅の隙間Sを形成するものであって、その軸方向の長さがバスバー構成体11の上面やプリント基板12の下面に実装される後述の電子部品が干渉しない程度の長さに設定されている。
【0032】
また、この筒状部20の内部には、前記バスバー構成体11をも連続して貫通した貫通孔21が上下方向に沿って穿設されていると共に、筒状部20側の貫通孔21の内周面には、金属製のスリーブ22が圧入などによって一体的に固定されている。このスリーブ22は、内周面に前記ねじ部材19の軸部19b外周に有する前記雄ねじが螺着する雌ねじが形成されている。
【0033】
前記プリント基板12は、図2及び図3に示すように、合成樹脂材によってほぼ正方形状の薄板状に形成され、中央寄りの前記バスバー構成体11の筒状部20に対応した位置にねじ挿通孔23が貫通形成されている。このねじ挿通孔23のねじ部材19の挿通側、つまり、プリント基板上面12a側の孔縁には、ほぼ円環状の導電片24が一体に設けられている。この導電片24は、中央に前記ねじ部材19の軸部19bが挿通される挿通孔24aが形成されていると共に、露出した上面に前記ねじ部材19のフランジ部19cが着座するようになっている。
【0034】
このプリント基板12は、マイクロコンピュータを含む複数の電子部品である例えば半導体スイッチ素子(MOS−FET)や加速度センサ30などが実装されていると共に、内部に制御回路の一部である配電パターンが形成されている。そして、前記電動モータの駆動信号がこのプリント基板12で作られるようになっている。なお、前記加速度センサ30は、プリント基板12が前記ねじ部材19によって固定される近傍に実装されている。
【0035】
さらに、このプリント基板12の一側部や他側部にそれぞれ形成された複数の端子孔12cには、バスバー構成体11の前記各端子群17,18のピン17a、18aが挿通されつつ半田付けによって接続されている。
【0036】
前記加速度センサ30は、音叉式センサであって、離調周波数が500〜900Hzであり、当該離調周波数でプリント基板12が共振すると、この加速度センサ30が共振してセンサ出力がドリフト(オフセット)してしまう。
【0037】
前記プリント基板12のねじ部材19の固定部近傍では、プリント基板12の振動周波数を1000〜1300Hzに上げることができ、加速度センサ30の離調周波数と重なることがなく、センサ出力のドリフトに対して有利である。
【0038】
そして、前記液圧制御ブロック3とカバー部材4との間には、図1〜図3に示すように、前記ねじ部材19を介して両者3,4を電気的に導通させる導通手段が設けられている。
【0039】
前記導通手段は、前記ねじ部材19の頭部19a側に設けられて、カバー部材4の上壁下面4dに弾接したアースプレート25と、前記ねじ部材19の軸部19bと前記ソレノイドケース8との間に弾装されたアーススプリング26とから構成されている。
【0040】
前記アースプレート25は、導電性の細長い薄板をほぼ凹状に折曲形成したものであって、平坦状の基部25aと、該基部25aの両側縁からカバー部材4方向に立ち上がった立ち上がり片25b、25bと、を備えている。前記基部25aは、中央に前記ねじ部材19の軸部19bが挿通する挿通孔25cが貫通形成されていると共に、前記ねじ部材19のフランジ部19cと導電片24との間に挟持固定されるようになっている。前記両立ち上がり片25b、25bは、上端部25d、25dが外方へ折曲形成されて、前記カバー部材4の下面4dに弾接している。
【0041】
前記アーススプリング26は、金属材によってコイルスプリング状に形成され、上端部が前記貫通孔21内に収容保持されて上端縁26aがねじ部材19の軸部19b下端縁に弾接していると共に、貫通孔21から下方へ突出した下端部の下端縁26bが前記ソレノイドケース8の上面(図1の黒点T)に弾接している。
【0042】
〔組付手順〕
以下、電子制御装置の組付手順について説明する。まず、予め液圧制御ブロック3に、前記各増圧、減圧弁5、6やポンプ、電動モータ、リザーバなどを組み付けて油圧ユニットを構成する。また、前記パワー電子回路とフィルタ電子回路の配電パターンをモジュール化して前記バスバー構成体11を一体的に形成すると共に、該バスバー構成体11に前記電解コンデンサなどの複数の電子部品を実装しておく。さらに、前記プリント基板12の配電パターンや前記各半導体スイッチ素子などの各種の電子部品を実装しておく。
【0043】
また、前記ねじ部材19の軸部19bに、前記挿通孔25cを介して前記アースプレート25を予め仮装着しておく。
【0044】
続いて、前記バスバー構成体11の筒状部20の上面に、前記プリント基板12をねじ挿通孔22の下面孔縁を当接させて載置するが、このとき、同時に前記各端子孔12cに対応する前各記端子ピン17a、18aを位置決めしながら挿通する。
【0045】
次に、アースプレート25が仮装着された状態で前記ねじ部材19の軸部19b先端を導電片24のボルト挿通孔24aからスリーブ22に挿入して、そのまま該ねじ部材19を、雌雄ねじを介して螺着しつつ所定のトルクでねじ込んでいく。
【0046】
そうすると、前記アースプレート25は、基部25aがねじ部材19のフランジ部19cと導電片24との間に挟持状態にねじ止め固定されると同時に、前記アーススプリング26全体が圧縮変形しつつ上端縁26aが軸部19bの下端縁に弾接すると共に、下端縁26bがソレノイドケース8の上面に弾接する。
【0047】
これによって、プリント基板12は、バスバー構成体11の上方位置に固定されると共に、プリント基板12とソレノイドケース8の導通性が確保される。
【0048】
その後、前記各端子孔12cに挿通された状態で各端子ピン17a、18aをプリント基板12に半田付ける。これによって、互いに電気的に接続される。
【0049】
次に、前記カバー部材4の外周に接着剤を塗布した後、該カバー部材4をプリント基板12とバスバー構成体11の上方から被嵌しつつ各係止片10の各係止爪10aをバスバー構成体11の各係止部13の係止孔に弾性変形を利用して係入すると、各係止爪10aが係止孔の下部孔縁に係止することによって、バスバー構成体11に簡単に組み付けることができる。
【0050】
続いて、前記バスバー構成体11を、環状シール15を介して液圧制御ブロック3の上面に位置決めしながら仮止め状態に載置した後に、前記各固定ボルト14によって液圧制御ブロック3に締め付け固定する。その後、前記バスバー構成体11の前記貫通孔21内に、前記アーススプリング26を予め挿入して、下端縁26bをソレノイドケース8の上面に当接しておく。これによって、各構成部品の組み付け作業が完了する。
【0051】
このとき、前記アースプレート25は、両上端部25d、25dの上面が自身の弾性力によってカバー部材4の上壁4a下面4dに弾接する。また、前記アースプレート25の基部25aは、ねじ部材19の頭部19aとプリント基板12との間に挟持されて電気的に導通している。ねじ部材19の基部19aは、アーススプリング26と弾接しており、ソレノイドケース80の肩部と電気的に導通している。さらに、ソレノイドケース8は、液圧制御ブロック3と電気的にも当接していることから、これにより、前記カバー部材4と液圧制御ブロック3との間の導通性が確保される。
【0052】
このように、本実施形態では、ねじ部材19とアースプレート25及びアーススプリング26によって液圧制御ブロック3とカバー部材4を電気的に導通することによって、両者3,4を同電位とすることができる。このため、前記プリント基板12からカバー部材4に伝達された電気ノイズ、詳しくはモータやソレノイドの駆動電流の変化(切り換え)に起因した磁界変化がノイズとしてモータまたはソレノイドの電流ラインに発生した電気ノイズを液圧制御ブロック3側、つまり車体側へ流すことができる。これにより、前記カバー部材4での電気ノイズを効果的に低減することができる。したがって、プリント基板12に設けられた信号ラインへのノイズ重畳を抑制できる。
【0053】
しかも、前記導電片24を介してプリント基板12で発生する電気ノイズも直接的に液圧制御ブロック3に伝達することもできるので、プリント基板12で発生した電気ノイズも効果的に低減できる。
【0054】
また、外部から前記カバー部材4に伝達された電気ノイズも液圧制御ブロック3に流すことができるので、前記プリント基板12へのノイズ伝達を十分に抑制できる。
【0055】
さらに、前記プリント基板12に実装された加速度センサ30は、ねじ部材19による固定位置の近傍に配置されていることから、加速度センサ30への振動伝達を効果的に阻止することができるので、加速度検出精度の低下を抑制できる。
【0056】
また、前記両者3,4の導通性を、既存のねじ部材19を利用して確保するようにしたため、製造コストの低減化が図れる。
【0057】
すなわち、前記アースプレート25を、ねじ部材19のねじトルクによってプリント基板12に固定し、前記アーススプリング26を、ねじ部材19のねじ込み力を利用してソレノイドケース8に弾接させるようにしたため、別異のアース接続部材を形成して、これをバスバー構成体に固定するなどの場合に比較して構造が簡素化されて、製造作業が容易になる。
【0058】
また、前記アーススプリング26の下端縁26bを、液圧制御ブロック3に直接弾接させるではなく、既存のソレノイドケース8に弾接させたため、前記アーススプリング26の軸長を十分に短尺化することができる。これによって、前述のように、ねじ部材19をねじ込んでアーススプリング26に圧縮力が付与された際に、径方向へ不用意に倒れたりねじれ変形するといったことがなく、常時直線性を維持することが可能になる。したがって、ソレノイドケース8に対する安定した弾接作用が得られる。
【0059】
さらに、前記ねじ部材19を単にねじ込むことによって、前記プリント基板12に対するアースプレート25の固定と、アーススプリング26の弾接力を同時に得ることができるため、これらの組付作業も容易になる。
【0060】
さらに、前記アースプレート25とアーススプリング26のばね力によって、ねじ部材19を介してカバー部材4とプリント基板12及びソレノイドケース8が常時に弾接していることから、たとえ振動が発生しても液圧制御ブロック3とカバー部材4の導通性を常に安定して維持することができる。
【0061】
特に、前記アースプレート25が、カバー部材4の上壁下面4dに弾接し、アーススプリング26がソレノイドケース8にそれぞれ弾接していることから、前記ねじ部材19を含めた導通手段の全体の長さの自由度が高くなる。
【0062】
この結果、前記液圧制御ブロック3とカバー部材4及びバスバー構成体11の上下方向の寸法誤差や組み付け誤差が生じても、前記各アースプレート25とアーススプリング26の長さ方向の撓み変形によって前記各誤差を吸収することができるので、位置決めや組付作業が容易になる。
【0063】
また、前記アースプレート25とアーススプリング26を、ねじ部材19上下のデッドスペースに配置したことから、該デッドスペースの有効利用が図れる。この結果、装置の大型化と回路配置の変更を抑制できる。
【0064】
さらに、本実施形態では、パワー電子回路とフィルタ電子回路の配電パターンなどを一体的にモジュール化して薄型のバスバー構成体11として構成したため、電子制御装置の上下方向の高さを十分に小さくすることが可能になり、装置全体の小型化(薄型化)が図れると共に、軽量化も図れる。
【0065】
また、本実施形態では、前記カバー部材4を、単に各係止片10と各係止部13を利用してバスバー構成体11にワンタッチで結合させることができるので、このカバー部材4の組付作業が良好になる。
【0066】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、前記ねじ部材19を介してアースプレート25とアース26を導通させるのではなく、例えば、ねじ部材19の軸部19b外周に円筒状の導電材を被嵌して、この導電材を介して両者25,26を導通させることも可能である。
【0067】
また、固定手段としては、ボルトとナットを利用したものや、導電性のリベットなどを利用することも可能である。
【0068】
さらに、前記アースプレート25を、一方側の立ち上がり片25bのみとすることも可能である。また、例えば、ケーシング1やバスバー構成体11の形状や構造を任意に変更することも可能である。
【0069】
さらに、電子制御装置の適用対象装置としては、ABSの他にトラクションコントロール装置に適用することも可能である。
【0070】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕前記固定手段を、ねじ部材によって構成すると共に、前記回路基板の所定位置に、前記ねじ部材を挿通するねじ挿通孔を貫通形成すると共に、該ねじ挿通孔のねじ挿通側の孔縁に導電片を設け、該導電片とねじ部材の頭部との間に、前記アースプレートを挟持固定したことを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
〔請求項b〕前記アースプレートを、前記固定手段によって固定される平坦状の基片と、該基片の両端からカバー部材方向へ立ち上がった立ち上がり片とによって凹状に形成し、該両立ち上がり片の各上端部を外方へ折曲形成して、該各上端部の上面を前記カバー部材の下面に弾接したことを特徴とする請求項2〜aのいずれかに記載の電子制御装置。
〔請求項c〕前記バスバー構成体の上面に円筒部を一体に形成すると共に、該円筒部の内周に、前記ねじ部材が螺着する雌ねじが形成された金属製のスリーブを一体的に固定したことを特徴とする請求項aまたはbに記載の電子制御装置。
〔請求項d〕前記アーススプリングの一端部を、前記ねじ部材の軸部先端縁に弾接すると共に、他端部を前記ソレノイドケースの上面に弾接させたことを特徴とする請求項a〜cのいずれか一項に記載の電子制御装置。
【符号の説明】
【0071】
1…ケーシング
2…電子制御機構
3…液圧制御ブロック
3a…上面
4…カバー部材
4d…下面
5・6…増圧、減圧弁(液圧制御機器類)
8…ソレノイドケース
11…バスバー構成体
12…プリント基板(回路基板)
19…ねじ部材(固定手段)
19a…頭部
19b…軸部
19c…フランジ部
20…筒状部
21…貫通孔
23…ねじ挿通孔
24…導電片
25…アースプレート(導通手段)
25a…基部
25b…立ち上がり片
25c…挿通孔
25d…上端部
26…アーススプリング(導通手段)
26a…上端縁
26b…下端縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御機器類が設けられた金属製の制御ブロックと、該制御ブロックに被嵌した金属製のカバー部材と、制御ブロックとカバー部材との間に保持されて、前記制御機器類を駆動する電子制御機構と、を備え、
前記電子制御機構は、前記制御機器類を駆動するパワー電子回路を有する合成樹脂材のバスバー構成体と、該バスバー構成体を介して前記制御機器類の駆動を制御する回路基板とからなり、
複数の電子部品が実装された前記回路基板を、金属製の固定手段によって前記バスバー構成体に重合状態に固定し、
前記固定手段を介して前記カバー部材と前記制御ブロックとを電気的に導通させる導通手段を設けたことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記導通手段は、基部が前記固定手段の一端側に固定され先端部が前記カバー部材の下面に弾接した導電材のアースプレートと、一端部が前記固定手段の他端側に弾接し、他端部が前記制御機器類を介して制御ブロックに弾接した導電材のアーススプリングと、から構成したことを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記制御機器類は、ブレーキ液圧を増圧あるいは減圧する弁機構を備え、前記アーススプリングの他端部を、前記各弁機構を構成する金属製のソレノイドケースに弾接させて、前記カバー部材と制御ブロックとを導通させたことを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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