説明

電子印鑑画像の生成方法

【課題】 シーリングワックス固有の煌びやかな光沢のある画像を表現し、電子印鑑画像として生成することができるようにする。
【解決手段】 本発明の電子印鑑画像13の生成装置1は、鱗片形状のビットマップデータ15や光の反射を表現する鱗片形状のビットマップデータ16、それにワニスのトップコートを表現するビットマップデータ17等を必要に応じて重畳させることにより生成されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリングワックスの画像表現を電子捺印とすることを可能とする電子印鑑画像に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この分野における電子印鑑画像の生成技術分野に関しては、特許文献1記載の電子封蝋画像の生成方法、装置、プログラム及び該プログラムが記載されたコンピュータ読取り可能な記録媒体を例示する。このシステムは、溶かした蝋の表面に刻印の凸凹が形成されてなる封蝋を画像表現した電子封蝋画像を生成するもので、電子封蝋画像の生成途中で、該電子封蝋画像における前記凸凹以外の部分を1又は2以上の攪乱情報に応じて変形する変形手段を備えているようにしている。
【0003】
このシステムに用いられる攪乱情報としては、乱数情報や電子封蝋画像の生成中における日付情報、時刻情報、又は、これらの組合せ情報や、気象情報等を用いるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−234369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の生成システムで作成されるシーリングワックス画像は、コンピュータで読取り可能なR、G、Bの調整による発色で画質的に十分耐えうるものではなく、そもそもシーリングワックスは、シェラックやテルペン系の樹脂を主成分としているため、ソリッドな単色でシーリングワックスを画像表現する場合には、有機顔料と樹脂が十分に相溶した態様と、その表面に薄っすらと滲みでたような、奥行きのある透明感を表現する必要がある。
【0006】
更に、シェラックやテルペン系の樹脂が主成分であるシーリングワックスは、固有の艶やかなワニス等にも用いられるような樹脂に、金属粉や無機系顔料を混練したものであるので、現物では相溶せず、分散した態様であり、マイカを用いた無機のパール系顔料やアルミ粉や真鍮粉を用いた金属系顔料の場合、主に光が照射された部分において、奥行きがあるような、樹脂中に分散された、もしくは配向された鱗片型をした顔料から固有の煌びやかな色彩や、乱反射する光の態様を表現することは困難であった。
【0007】
この無機系顔料の色相、光沢、乱反射する光をモニター画面により実物らしく表現したり、それらをプリントアウトする場合、光が照射されている標高の高いフレーム部分を主に、樹脂中で配向された燐片型の微粉末が、光の屈折率に乗じて乱反射するように表現しなければならないのであるが、現物の写真画像から再現性のある刻印部分や再現性のないフレーム部分、更に光の角度等を個別に変化させることは困難なもので、顔料固有の形状が損なわれたりするため、リアリティーの無い表現しか出来ないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の発明の電子印鑑画像の生成方法は、シーリングワックスを画像表現した電子印鑑画像の生成方法であり、凹凸により表現された再現性のある刻印部分と、その画像の周囲には、攪乱情報により生成されるフレーム画像との組み合わせで、当核画像の任意の部分に、彩度の違う微粉末の顔料を生成し、乱反射したように表現するようにしている。
【0009】
第2の発明の電子印鑑画像の生成方法としては、前記第1の発明の刻印部分及びフレームの生成において、フレームの標高の高さや刻印部の文字に、方向性のある光の照射や陰影の重畳により表現したもので、主に光が照射された部分に配設された彩度の違う微粉末の顔料が乱反射したように表現する態様を例示する。
【0010】
第3の発明の電子印鑑画像の生成方法としては、前記第1又は第2の発明において、彩度の違う微粉末の顔料を表現するために用いるデータが、粒度や密度が違う複数の生成用ビットマップデータが用意され、それを必要に応じ用いる態様を例示する。
【0011】
第4の発明の電子印鑑画像の生成方法としては、前記第1〜第3の発明において用いられる彩度の違う微粉末の顔料が、鱗片型をしたビットマップデータから生成されたものである態様を例示する。
【0012】
第5の発明の電子印鑑画像の生成方法としては、前記第1〜第4の発明において用いられるビットマップデータが、略中央部分を支点とし、乱数情報に基づいて変化する態様を例示する。
【0013】
第6の発明の電子印鑑画像の生成方法としては、前記第1〜第5の発明において生成される電子印鑑画像に、ワニスを表現する画像を重畳させる態様を例示する。
【0014】
第7の発明の電子印鑑画像の保存方法としては、表示された画面と、更に当該ビットマップデータの位置情報は同一であるが、鱗片型データ夫々が乱数情報により変化したものが同時に保存される態様を例示する。
【0015】
以上において、鱗片型の顔料を表現するためのビットマップデータとしては、不均一な配置や密度に限定されるものではなく、個々の気泡痕部分や鱗片を表現するデータの角度が変化しているだけのものでも、粒度に変化があるだけのものでも良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係わる電子印鑑画像の生成方法、保存方法、装置、プログラムや当該プログラムが記録されたコンピューターでの読み取り可能な記録媒体によれば、個体ごとにユニークで美しい電子印鑑画像を生成することができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を具体化した電子印鑑の生成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同生成装置により生成される電子印鑑画像の生成処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】同生成装置により生成されるシーリングワックスを表すもので、鱗片形状の無機系または金属系の微粉末状の顔料が樹脂中に分散されている状態を示す図である。
【図4】本発明に用いられる鱗片形状のビットマップデータで、実際の写真から抽出した彩度を鱗片形状とし、ランダムに配置したものを表す図である。
【図5】本発明に用いられる鱗片形状のビットマップデータで、光が照射された部分において、光が乱反射する態様を表現するときに用いられるデータを表す図である。
【図6】本発明に用いられる透明なワニスのトップコートを表現するビットマップデータで、図(a)は塗布面に塗布されたクリアー塗料の一部をビットマップデータとして利用することを表す斜視図、(b)はその断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図6は本発明を具体化した電子印鑑画像の生成に用いられる一実施形態の生成装置を示している。
【0019】
以下、本発明をこの生成装置1に具体化した実施形態について、同生成装置1を使用して実施する生成方法、コンピュータプログラム、ビットマップデータについて図面に基づいて説明する。
【0020】
本発明の電子印鑑画像の生成装置1は、図1に示すように、全体のシステムを制御する制御装置2と表示装置3、それらを操作したりデータを入力したりするための入力装置4を内蔵している。
【0021】
制御装置2は、処理手段として、電子印鑑画像生成処理手段5、時計手段6、乱数発生手段7、画像立体化情報設定手段8を備えている。記憶手段9として、ビットマップデータ記憶手段10、刻印部画像記憶手段11、色情報記憶手段12を備え、これらの各処理手段5〜8、及び記憶手段10〜12を実現するプログラムは、制御装置2が内蔵する記憶装置(図示略)や外部記憶装置に記憶されている。この記憶装置の記憶内容は、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録することが出来、これらのプログラムを記録した記録媒体により、所望の電子印鑑画像を生成することが可能となる。
【0022】
次に、各記憶手段について具体的に説明する。ビットマップデータ記憶手段10は、本発明において用いられる、滑らかな部分や、表面に表れる気泡が弾けた痕等、ワニスのトップコートを表現するビットマップデータ17や、光が照射された部分において、樹脂中に分散もしくは配向された無機系または金属系顔料の微粉末14、鱗片型をした金属粉や無機系顔料固有の煌びやかな色彩のビットマップデータ15や、乱反射する光の態様を表現するためのビットマップデータ16を記憶している。刻印部画像記憶手段11は、フレームの基本となるような画像や、溶けたシーリングワックスに刻印を捺印し、冷却されたシーリングワックスが当該刻印の再現性のある凸凹により、立体的に賦形されるようにするためのもので、モノクロの版下同様、2値画像として記憶されている。色情報記憶手段12は、電子印鑑画像を生成するときに用いられる色情報を記憶している。
【0023】
次に、電子印鑑画像生成処理手段5の処理内容について、時計手段6、乱数発生手段7、画像立体化情報設定手段8の処理内容とともに、図2に示すフローチャートを参照して説明する。
【0024】
まず、プログラムを起動させ(ステップ101)、電子印鑑画像生成処理手段5が、刻印部画像記憶手段11から取得したデータにより、電子印鑑画像生成情報取得処理を行う(ステップ102)。
【0025】
時計手段6と乱数発生手段7で取得した情報を元に、フレーム画像2値画像生成処理を行う(ステップ103)。
【0026】
フレーム画像に対し、後述の電子印鑑画像3次立体化処理(ステップ109)で凹凸に傾斜をつける為に、前処理としてフレーム画像1次画像立体化処理を行い(ステップ104)、凹凸の山の部分に丸みを表現する為に、フレーム画像階調調整処理を行う(ステップ105)。
【0027】
刻印部画像記憶手段11より取得したデータに刻印部版下画像2値画像生成処理を行い(ステップ106)、後述の電子印鑑画像3次立体化処理(ステップ109)で凹凸に傾斜をつける為に、前処理として刻印部版下画像2次画像立体化処理を行い(ステップ107)、フレーム画像と刻印部版下画像を重ね合わせるフレーム画像内円画像合成処理を行う(ステップ108)。
【0028】
画像立体化情報設定手段8より取得した情報を元に、電子印鑑画像3次立体化処理を行い(ステップ109)、凹凸画像を生成する。
【0029】
色情報記憶手段12により取得した情報を元に、電子印鑑画像着色処理を行う(ステップ110)。
【0030】
ビットマップデータ記憶手段10より取得したビットマップデータを、電子印鑑画像に重畳させる電子印鑑画像ビットマップデータ重畳処理を行う(ステップ111)。
【0031】
この時に用いられるビットマップデータは、例えばステップ110で黄金色のような着色をする場合には、図4のような金色の顔料粒を表現するため、実際に写真撮影した黄金から、近似の2色を選択し、その画像から抽出した鱗片形状のビットマップデータ15を下層部、つまり画像のすぐ上に載せ、次に光が照射されているような部分には、その光により顔料が乱反射したように見せるための、光の反射を表現するための鱗片形状のビットマップデータ16、更にワニスのトップコートを表現するビットマップデータ17や煤等のビットマップデータを重畳させることにより、よりリアルなシーリングワックスの画像を生成することができる。
【0032】
また、前記ワニスのトップコートを表現するビットマップデータ17は、実際の写真画像から抽出したもので、黒い艶消しの塗布面18の上に、溶剤で適宜に希釈させたワニスを塗布し樹脂層19とし、任意の部分を写真撮影した後、塗布面18の色を画像処理により消去したものをワニスのトップコートを表現するビットマップデータ17として利用可能で、ただのトップコートとしての利用に止まらず、表面に気泡痕20を発生させたり、ワニスの艶消し度や希釈の違いにより塗布面の肉厚を変えたりし、好みのものを選択して使用することが出来る。
【0033】
この重畳処理の後に、画像に重畳させたデータの端部等の不要な部分のトリミング等の電子印鑑画像不要部削除処理を行い(ステップ112)、プログラムを終了する(ステップ113)。
【0034】
以上のように構成された本例の電子印鑑画像の生成方法によれば、シーリングワックスに用いられる樹脂本来の艶やかさ等を容易に生成することが出来る。
【0035】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)本発明の電子印鑑画像に用いられるビットマップデータが同一のもので、位置を ずらし複数のデータを重畳させて利用すること。
(2)本発明の電子印鑑画像に用いられるビットマップデータが、光が照射された特定 の部分にのみ重畳させて利用すること。
(3)本発明の電子印鑑画像に用いられるビットマップデータが、シーリングワックス の溶融時に発生するような煤の写真画像であること。
(4)本発明の電子印鑑画像が、紙に型押しされたエンボスのような立体的に表現され たもので、影や勾配の部分に用いられるビットマップデータが、型押し時に出来る紙 の破断した態様を表すようなデータによるものであること。
【符号の説明】
【0036】
1 電子印鑑画像の生成装置
2 制御装置
3 表示装置
4 入力装置
5 電子印鑑画像生成処理手段
6 時計手段
7 乱数発生手段
8 画像立体化情報設定手段
9 記憶手段
10 ビットマップデータ記憶手段
11 刻印部画像記憶手段
12 色情報記憶手段
13 電子印鑑画像
14 無機系または金属系顔料の微粉末
15 鱗片形状のビットマップデータ
16 光の反射を表現する鱗片形状のビットマップデータ
17 ワニスのトップコートを表現するビットマップデータ
18 塗布面
19 樹脂層
20 気泡痕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーリングワックスを画像表現した電子印鑑画像の生成方法であり、凹凸により表現された再現性のある刻印部分と、その画像の周囲には、攪乱情報により生成されるフレーム画像との組み合わせで、当該画像の任意の部分に、彩度の違う微粉末の顔料を生成し、乱反射したように表現することを特徴とする電子印鑑画像の生成方法。
【請求項2】
前記刻印部分及びフレームの生成において、フレームの標高の高さや刻印部の文字に、方向性のある光の照射や陰影の重畳により表現したもので、主に光が照射された部分に配設された彩度の違う微粉末の顔料が乱反射したように表現することを特徴とする請求項1記載の電子印鑑画像の生成方法。
【請求項3】
前記彩度の違う微粉末の顔料を表現するために用いるデータが、粒度や密度が違う複数の生成用ビットマップデータが用意され、それを必要に応じ用いていることを特徴とする請求項1及び2記載の電子印鑑画像の生成方法。
【請求項4】
前記彩度の違う微粉末の顔料が、鱗片型をしたビットマップデータから生成されたものであることを特徴とする請求項1〜3記載の電子印鑑画像の生成方法。
【請求項5】
前記ビットマップデータが、略中央部分を支点とし、乱数情報に基づいて変化することを特徴とする請求項1〜4記載の電子印鑑画像の生成方法。
【請求項6】
前記ビットマップデータが、ワニスを表現するもので、略クリアな表面が、平滑な部分と硬化するときに発生する気泡痕や風の影響による凸凹等の部分を含んでいる画像で、前記1〜5のシーリングワックス画像に重畳させて形成される電子印鑑画像の生成方法。
【請求項7】
前記生成された電子印鑑画像を保存する場合において、表示された画面と、更に当該ビットマップデータの位置情報は同一であるが、気泡痕部分や鱗片型データ夫々が乱数情報により変化したものが同時に保存されることを特徴とする電子印鑑画像の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−33429(P2013−33429A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178140(P2011−178140)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(594189176)有限会社高尾商事 (7)
【出願人】(511115619)株式会社アストロ (1)
【Fターム(参考)】