電子回路モジュール
【課題】シールドカバーの天板部が凹んでも天板部が内部の電子部品と接触することを防止し、シールドカバーの高さも下げて小型化を図ることを課題とする。
【解決手段】電子回路モジュール10は、電子部品14〜20が実装された回路基板12と、電子部品14〜20を覆い、回路基板12上に搭載された金属板からなるシールドカバー22とを備える。シールドカバー22は、略四角形形状の天板部22aと、天板部22aの四隅に設けられた第1側壁部22bと、天板部22aから回路基板12に向かって延び、シールドカバー22の内側に折り曲げられた第2側壁部22cとを有する。天板部22aが上方から加圧された場合、天板部22aが凹むことによって第2側壁部22cがシールドカバー22の内側から外側に向かって移動し、回路基板22側の端部が回路基板22に接し、第1側壁部22bとともにシールドカバー22を支える。
【解決手段】電子回路モジュール10は、電子部品14〜20が実装された回路基板12と、電子部品14〜20を覆い、回路基板12上に搭載された金属板からなるシールドカバー22とを備える。シールドカバー22は、略四角形形状の天板部22aと、天板部22aの四隅に設けられた第1側壁部22bと、天板部22aから回路基板12に向かって延び、シールドカバー22の内側に折り曲げられた第2側壁部22cとを有する。天板部22aが上方から加圧された場合、天板部22aが凹むことによって第2側壁部22cがシールドカバー22の内側から外側に向かって移動し、回路基板22側の端部が回路基板22に接し、第1側壁部22bとともにシールドカバー22を支える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路モジュールに係わり、より詳しくは、金属製のカバーを備えた電子回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回路基板上に高周波用の電子部品が実装された電子回路モジュールには、電子部品を覆う金属製のシールドカバーを有するものがある。シールドカバーは通常、回路基板に半田を用いて固定されており、この状態でシールドカバーは電子部品を保護すると同時に、基板上の回路にグランドされることでノイズ対策としても機能する。このようなシールドカバーがその機能を充分に果たすためには、回路基板に対して電気的にも機械的にも確実に固定されている必要がある。
【0003】
シールドカバーを回路基板に固定する手法として、シールドカバーを回路基板に対して半田付けする方法があるが、シールドカバーの側壁部を全て回路基板に半田付けしてしまうと、その分の半田ランド等も必要となり、それだけ電子部品の実装領域が狭くなってしまう。また、シールドカバーの内部に実装された電子部品と半田とが接触しないように、電子部品はある程度カバーの内側に逃げて(避けて)配置しなければならず、これも電子部品の実装領域を狭くする要因となる。
【0004】
そこで、半田付けは、シールドカバーの側壁部の四隅のみとし、四隅でシールドカバーを固定してシールドカバーの四隅以外の側壁部は回路基板に半田付けをしない技術がある(例えば、特許文献1参照)。
この先行技術によれば、半田付けをする部分を必要最小限に抑えることで、回路基板上の電子部品の実装領域を広く確保することができると考えられる。また、この先行技術によれば、シールドカバーが、回路基板の四隅の位置で回路基板に固定され、シールドカバーの側壁が回路基板の端面と係合しているため、シールドカバーの位置決めを容易化することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−182007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、電子回路モジュールの小型化がますます進んでいる。
上述した先行技術のように平面的な問題として実装領域を確保するのみならず、高さ方向の問題として、電子回路モジュール自体の厚みもなるべく薄くすることが要求されている。
【0007】
ここで、電子回路モジュールは、部品実装装置(マウンタ等)でマザー基板等に実装されるものであるが、この場合、電子回路モジュールのカバーの天板部に吸着ノズルと呼ばれる管状の部材を当接させ、吸着ノズルの内部圧力を低下させることにより電子回路モジュールを吸着ノズルに吸着させてマザー基板等の所定位置に実装している。
【0008】
このとき、電子回路モジュールのカバーの天板部に吸着ノズルが当接する際、又は電子回路モジュールをマザー基板等の所定位置に載置する際には、吸着ノズルから天板部に力(マウント荷重)が加わり、カバーの天板部がカバーの内部に凹むことがある。
【0009】
このように天板部が凹み、天板部の凹んだ部分が内部の電子部品に接触すると、電子部品が故障するおそれがある。
したがって、天板部の凹みを考慮すると、天板部と内部の電子部品との間に、この凹みを見越した一定の隙間(クリアランス)を予め設けておかなければならない。このような隙間を予め設けておくことで、吸着ノズルの接触により天板部が凹んでも内部の電子部品と接触しないため、故障の原因も排除することができる。この点は、上述した先行技術の技術でも同様であり、天板部と内部の電子部品との間に、一定の隙間を設けておく必要がある。
【0010】
しかし、この隙間は、カバーの高さを下げるにあたっての障害となる。つまり、電子回路モジュールの相反する事象として、内部の電子部品を保護するためには、カバーの天板部と内部の電子モジュールとの間に一定の隙間を設けておかなければならないが、そうかといってこの隙間が大きくなれば電子モジュールの小型化が妨げられる。
【0011】
そこで本発明は、カバーの天板部が上方から加圧されて凹んだ場合であっても天板部が内部の電子部品と接触することがなく、それでいてカバーの高さも下げて電子モジュール自体の小型化を図ることができる技術の提供を課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
本発明の電子回路モジュール(電子回路ユニット、高周波モジュールでもよい)は、電子部品が実装された回路基板と、この電子部品を覆い、回路基板上に搭載された金属板からなるカバーとを備える。
【0013】
ここで、カバーは、略四角形形状の天板部と、天板部の周縁の一部に折り部を介して連接され、折り部によって天板部と略垂直に折り曲げられ、回路基板と連結してカバーを回路基板に固定する第1側壁部と、天板部の周縁の他の一部に折り部を介して連接され、天板部から回路基板に向かって延び、折り部によってカバーの内側に折り曲げられた第2側壁部とを有する。
【0014】
また、カバーの第2側壁部は、回路基板に接触することなく、回路基板との間に一定の隙間を保ってカバーの内側に配置されている通常状態と、天板部が上方から加圧され、天板部が凹むことによって、カバーの内側から外側に向かって移動し、回路基板側の端部が回路基板に接する接触状態とを移行可能である。
【0015】
本発明の電子回路モジュールにおいて、第2側壁部は、天板部が加圧されていない通常状態では、回路基板に接触することなく回路基板との間に一定の隙間を保ってカバーの内側に配置されている。第2側壁部は、カバーの内側方向に折り曲げられているため、このような通常状態ではカバーの内部に収納されている。
【0016】
また、第2側壁部は、天板部が上方から加圧されると、天板部が凹むことによって、カバーの内側から外側に向かって移動し、回路基板側の端部が回路基板に接する接触状態に移行する。すなわち、第2側壁部は、天板部が加圧されている状態では天板部の中央部分が凹み、その凹みに伴って第2側壁部がカバーの内部から外側に向かって移動する。
【0017】
そして、第2側壁部が回路基板に接することにより、第2側壁部がその状態において天板部と回路基板との間でつっぱり状態となり、天板部の加圧の力を受け止める機能を果たす。これにより、天板部が上方から加圧を受けても、天板部の凹みを最小限に抑えることができる。
【0018】
このように、天板部の凹みを最小限に抑えることにより、天板部が凹んで電子部品と接触して電子部品が故障することを防止することができる。また、天板部の凹みを最小限に抑えることにより、凹みを見越した天板部と電子部品との隙間(クリアランス)を最小限に抑えることができ、結果として、カバーの高さを下げて電子回路モジュールの小型化を実現することができる。
【0019】
本発明の電子回路モジュールの構成として、第1側壁部は、天板部の周縁の四隅に形成され、第2側壁部は、天板部の周縁の四隅を除いた部分に形成されていることが好ましい。
【0020】
この発明によれば、第1側壁部は天板部の周縁の四隅に形成され、第2側壁部は、天板部の周縁の四隅を除いた部分に形成されているので、天板部の四隅でカバーを安定して固定しつつ、天板部のその他の部分では、第2側壁部によって内部の電子部品をしっかり保護することができる。また、第1側壁部は、天板部を四隅で支えるので、天板部が上方から加圧を受けた際には、その加圧の力を均等に分散し、その分天板部の凹みを軽減させることができる。
【0021】
本発明の電子回路モジュールの構成として、第2側壁部は、接触状態では、回路基板に対して略垂直に接することが好ましい。
【0022】
この発明によれば、接触状態では、第2側壁部が回路基板に対して略垂直に接することになるため、カバーの天板部からの加圧を最適かつ効率のよい状態で受け止めることができる。
【0023】
本発明の電子回路モジュールの構成として、天板部は、部品実装装置の吸着ノズルが接触する際又は部品実装装置の吸着ノズルによって吸着されマザー基板の所定位置に載置される際に加わる圧力によって加圧がされることが好ましい。
【0024】
この発明によれば、天板部は、部品実装装置の吸着ノズルから受けるマウント荷重を想定して設計することができるため、部品実装装置で取り扱われるのに適し、かつ実装時のハンドリングに優れた電子回路モジュールを提供することができる。
【0025】
本発明の電子回路モジュールの構成として、天板部は、孔が設けられておらず、平坦な面を有することが好ましい。
【0026】
この発明によれば、天板部は、孔が設けられておらず、平坦な面を有するので、部品実装装置の吸着ノズルとの間に隙間ができず、吸着ノズルによる充分な吸着を実現することができる。これにより、想定外の加圧は除外され、想定している加圧を受けて問題なくマザー基板等へ電子回路モジュールを実装することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、カバーの第2側壁部を折り曲げて、カバーの内部に配置しておくことで、天板部が上方から加圧された際には、天板部が凹むことによって、第2側壁部がカバーの内側から外側に向かって移動し回路基板に接する。そして第2側壁部が第1側壁部とともにカバー全体を支えることになるため、天板部の凹みを最小限に抑えることができる。これにより、カバーの高さを下げて小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態の電子回路モジュール10の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図2】電子回路モジュール10の完成状態を示す斜視図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿う電子回路モジュール10の断面図である。
【図4】図2中のIV−IV線に沿う電子回路モジュール10の断面図である。
【図5】第1実施形態の電子回路モジュール10を部品実装装置の吸着ノズルで吸着する際の状態を説明する図である。
【図6】比較例の電子回路モジュール10Aを示す図である。
【図7】比較例の電子回路モジュール10Aを示す図である。
【図8】比較例の電子回路モジュール10Aを部品実装装置の吸着ノズルで吸着する際の状態を説明する図である。
【図9】第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとを比較して示す図である。
【図10】第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとの変位の度合いをシミュレーション解析によって表した図である。
【図11】第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとの製造工程の一部を簡略的に示した模式図である。
【図12】第2実施形態の電子回路モジュール10−2の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の電子回路モジュール10の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。電子回路モジュール10は、例えば高周波帯の無線通信機能(無線LAN、Bluetooth:登録商標)を有した高周波モジュール(ユニット)であり、このような電子回路モジュール10は、例えば携帯情報端末やノート型パソコン等に内蔵して設けられる。
【0030】
〔回路基板〕
電子回路モジュール10は回路基板12を有しており、回路基板12には図示しない電気回路が形成されている。このため回路基板12の実装面12a上には図示しない配線パターンが設けられている。なお、回路基板12は多層構造を有する形態であってもよく、その場合は回路基板12の内層にも配線パターンが設けられている。
【0031】
〔電子部品〕
回路基板12の実装面12a上には、複数の電子部品14,16,18,20等が実装されている。なお、ここでは図面の煩雑化を防止するため、限られた個数の電子部品14〜20のみを示しているが、実装面12a上にはその他の電子部品もまた実装されており、これらがある程度密集した状態で配置されている。
【0032】
実装される電子部品14〜20としては、例えば、集積回路をパッケージした高周波チップやFETアレイ、チップ抵抗やチップコイル、チップコンデンサ等の受動素子を挙げることができるが、その他のものであってもよい。このうち、比較的大型の電子部品14,16等は、例えば表面実装型のパッケージ部品であり、その外形は扁平な直方体形状をなす。これら電子部品14〜20は、例えばその底面(図1には現れていない)に予め設けられた半田バンプ等を介して回路基板12に実装されている。なお、これら電子部品14,16は、実装される部品の中でも実装面12aに占める面積が大きく、また実装面12a上でみて比較的上背(実装高さ)を有する部品である。
【0033】
〔穴部〕
例えば、回路基板12の隅位置(コーナー位置)には、それぞれスルーホール12b又は挿通穴12cが形成されている。これらスルーホール12bや挿通穴12cは、いずれも回路基板12を厚み方向に貫通して設けられている。またスルーホール12bの内壁面には、例えば導電性ペースト又は導電性めっきによる導電層(参照符号なし)が形成されている。なお導電層は、例えば図示しない電気回路のグランド(GND)に接続されている。
【0034】
〔シールドカバー〕
また電子回路モジュール10はシールドカバー22を有している。このシールドカバー22は、電子回路モジュール10の完成状態で回路基板12の実装面12a上の電子部品14〜20(その他の電子部品を含む)を覆うように配置され、電子部品14〜20を機械的及び電気的に保護する(外部からのノイズの遮断、外部への不要電波の輻射の防止)。
【0035】
シールドカバー22は、金属板をプレス加工して形成されており、その形状は図1に示される状態で下端面が全体的に開放された略半箱形をなしている。
ここで、シールドカバー22は、実装面12aと対向する天板部22aを有するほか、天板部22aの四隅に形成された第1側壁部22bと、天板部22aの四隅以外の側辺に形成された第2側壁部22cとを有する。
【0036】
天板部22aは、略四角形形状であり、その四隅にコーナー部(面取り部)24を有する。また、天板部22aには、孔が設けられておらず、天板部22aは平坦な面を有する部材である。
【0037】
第1側壁部22bは、天板部22aの周縁の四隅のコーナー部24に折り部28を介して連接され、折り部28によって天板部22aと略垂直に折り曲げられ、回路基板12と連結してシールドカバー22を回路基板12に固定する部材である。
【0038】
第2側壁部22cは、天板部22aの周縁のコーナー部24を除いた部分(天板部22aの4辺部分)に折り部30を介して連接され、天板部22aから回路基板12に向かって延び、折り部30によってシールドカバー22の内側に折り曲げられた部材である。第2側壁部22cの機能(動作形態)については後述する。
【0039】
〔脚部〕
また第1側壁部22bの下端部には、第1側壁部22bと一体に脚部22dが形成されている。これら脚部22dは回路基板12の四隅の第1側壁部22bにそれぞれ対応して配置されており、これら脚部22dはいずれも、第1側壁部22bから回路基板12(図1では下方)に向けて突出している。図1中に一点鎖線で示されているように、シールドカバー22が回路基板12に取り付けられた状態で、4つの脚部22dはそれぞれ対応する位置のスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入されるものとなっている。
【0040】
〔脚部の圧入〕
図2は、電子回路モジュール10の完成状態を示す斜視図である。上記のように、シールドカバー22が回路基板12に設置された状態で、4つの脚部22dはそれぞれ対応する位置のスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入されている。このとき、スルーホール12b及び挿通穴12cの内径は脚部22dの幅寸法に略等しく、このため脚部22dは、対応するスルーホール12b又は挿通穴12c内に圧入された状態にある。このときスルーホール12b内では、その導電層に対して脚部22dが圧着されることにより、導電層とシールドカバー22とが電気的に接続(圧着)されている。第1側壁部22bと回路基板12とは、各脚部22dがスルーホール12b及び挿通穴12cに挿入された状態で半田付け等によって固定される。シールドカバー22は、図示しない電気回路のグランド(GND)に接続されている。
【0041】
次に、第1実施形態の電子回路モジュール10の内部構造について説明する。
図3は、図2中のIII−III線に沿う電子回路モジュール10の断面図である。また図4は、図2中のIV−IV線に沿う電子回路モジュール10の断面図である。なお、これら図3及び図4においては、電子回路モジュール10の内部構造や各部の配置関係の理解を容易にするため、各部の寸法を誇張して表している。
【0042】
図3及び図4に示すように、シールドカバー22の内部には、電子部品14〜20が配置される。電子部品14〜20は、それぞれ底面において半田バンプ等の半田14a〜20aによって半田付けされている。
シールドカバー22の天板部22aと電子部品14〜20との間には、一定の隙間(クリアランス)が設けられる。この隙間は、天板部22aが凹んだ場合に、電子部品14〜20と接触しないようにするための空間である。
第2側壁部22cは、天板部22aから回路基板12に向かって延び、回路基板12に接触することなく、シールドカバー22の内側に折り曲げられている。
【0043】
次に、第2側壁部22cの機能(動作形態)について説明する。
図5は、第1実施形態の電子回路モジュール10を部品実装装置の吸着ノズルで吸着する際の状態を説明する図である。なお、図5においては、電子回路モジュール10の機能の理解を容易にするため、各部の寸法を誇張して表している。
【0044】
電子回路モジュール10は、図2に示す完成状態で、部品実装装置(マウンタ等)によって図示しないマザー基板等に実装される。この場合、電子回路モジュール10のシールドカバー22の天板部22aに吸着ノズルと呼ばれる管状の部材を当接させ、吸着ノズルの内部圧力を低下させることにより電子回路モジュール10を吸着ノズルに吸着させてマザー基板等の所定位置に実装している。以下、吸着時の様子について説明する。
【0045】
まず、図5(A)に示すように、電子回路モジュール10の上方から吸着ノズル50が下降してくる。このとき、第2側壁部22cは、回路基板12に接触することなく、回路基板12との間に一定の隙間を保って、シールドカバー22の内側に配置されている(通常状態)。
【0046】
ついで、図5(B)に示すように、吸着ノズル50が、電子回路モジュール10の天板部22aに当接する。この状態でもまだ、第2側壁部22cは、シールドカバー22の内部に収納されている。
【0047】
そして、図5(C)に示すように、吸着ノズル50が天板部22aを押し込み、天板部22aが上方から加圧される。この加圧は、吸着ノズル50が天板部22aに接触する際のみならず、マザー基板の所定位置に載置される際にも加わる力である。この加圧により、天板部22aが下方に凹むことによって、第2側壁部22cがシールドカバー22の内側から外側に向かって移動し、第2側壁部22cの回路基板12側の端部が回路基板12に接する状態となる(接触状態)。この接触状態では、第2側壁部22cは、回路基板12に対して略垂直に接し、シールドカバー22を支える。ここで、上記加圧を受けたときに、第2側壁部22cが回路基板12に対して略垂直に接するようにするためには、部品実装装置の加圧具合やシールドカバー22の材料・厚み等を考慮して、第2側壁部22cの移動具合を予め算定しておき、その分だけ第2側壁部22cをシールドカバー22の内部に折り曲げておくことで実現可能である。
【0048】
基本的には、図5(C)の状態で終了となるが、さらに加圧されると、図5(D)に示すように、第2側壁部22cが外側にすべって若干広がる。仮にこのような状態となっても、第2側壁部22cは、第1側壁部22bとともにシールドカバー22を支える。
第2側壁部22cは、初期状態(図5(A)の状態)で、シールドカバー22の内側に配置されているから、すべりにより第2側壁部22cがシールドカバー22の外側へ開いても、その広がりは小さなものとなり、結果として天板部22aの凹みを軽減することができる。
また、第2側壁部22cは、吸着ノズル50から加圧を受けることにより、通常状態から接触状態に移行可能であり、吸着ノズル50からの加圧が開放されることにより、接触状態から通常状態に移行可能である。
【0049】
図6及び図7は、比較例の電子回路モジュール10Aを示す図である。
図6に示すように、比較例の電子回路モジュール10Aは、第2側壁部22eが第1実施形態のようにシールドカバー22の内側に折り曲げられているものではなく、天板部22aや回路基板12に対して垂直に配置されているものである。図7に示すように、第2側壁部22eと回路基板12との間には、第1実施形態のような一定の隙間がなく、第2側壁部22eと回路基板12とは接触しているが、半田付け等によって固定されているものではなく、自由に移動可能である。
【0050】
そして、シールドカバー22が回路基板12に設置された状態で、4つの脚部22dをそれぞれ対応する位置のスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入し、半田等によって固定すると、図7に示すような完成状態の電子回路モジュール10Aとなる。
【0051】
図8は、比較例の電子回路モジュール10Aを部品実装装置の吸着ノズルで吸着する際の状態を説明する図である。
まず、図8(A)に示すように、電子回路モジュール10Aの上方から吸着ノズル50が下降してくる。このとき、第2側壁部22eは、回路基板12に接触している。
ついで、図8(B)に示すように、吸着ノズル50が、電子回路モジュール10Aの天板部22aに当接する。この状態でも、第2側壁部22eは、回路基板12に接触している。
そして、図8(C)に示すように、吸着ノズル50が、天板部22aを押し込み、天板部22aが上方から加圧される。このとき、第2側壁部22eは、シールドカバー22の外側に広がって垂直状態ではなくなる。第2側壁部22eは、垂直状態ではなくなるので、垂直状態の場合と比較して、シールドカバー22を支える力が弱まり、その分天板部22aも大きく凹んでしまう。
【0052】
基本的には、図8(C)の状態で終了となるが、さらに加圧されると、図8(D)に示すように、第2側壁部22eが外側にすべってさらに広がり、シールドカバー22を支える力がさらに弱まる。このように、第2側壁部22eは、かろうじてシールドカバー22を支えている状態となり、その分天板部22aの変位も大きくなる。
【0053】
図9は、第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとを比較して示す図である。図9(A)は、第1実施形態の電子回路モジュール10を示しており、図9(B)は、比較例の電子回路モジュール10Aを示している。
図9からも明らかなように、天板部22aに同じ加圧力が加わった場合、図9(A)の第1実施形態の電子回路モジュール10は、初期状態からY1だけ変位し、図9(B)の比較例の電子回路モジュール10Aは、Y2だけ変位した。この差、すなわち「Y2−Y1」が両形態の差となる。
【0054】
図10は、第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとの変位の度合いをシミュレーション解析によって表した図である。図10(A)は、第1実施形態の電子回路モジュール10の平面図であり、図10(B)は、比較例の電子回路モジュール10Aの平面図である。
【0055】
ここでは、CAE(Computer Aided Engineering)を用いて天板部22aの凹み具合を評価した。ここでCAEとは、製品設計を支援するコンピュータシステムであり、設計した構造物が強度等の要求性能を満たすか否かを計算する解析システムである。
【0056】
本シミュレーションでは、第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとを上方から同じ加圧力によって加圧した場合の変位の度合を解析した。第1実施形態の電子回路モジュール10では、第2側壁部22cの初期状態の折り曲げ角度を110度とし、比較例の電子回路モジュール10Aでは、第2側壁部22eの初期状態の折り曲げ角度を90度とした。なお、この折り曲げ角度は、第2側壁部を折り曲げていない展開状態での角度を0度とし、直角に折り曲げて90度となり(比較例)、さらに折り曲げて110度(第1実施形態)としている。
【0057】
図中、環状線A1の外側の領域は、電子回路モジュールの高さ方向において天板部22aが全く変位していない領域であり、環状線A4の内側の領域は、電子回路モジュールの高さ方向において天板部22aが最も変位している部分である。
【0058】
図10(A)に示すように、第1実施形態の電子回路モジュール10は、環状線A1の外側の領域が比較的広く、加圧によって変位した領域が狭いことを意味している。
これに対して、図10(B)に示すように、比較例の電子回路モジュール10Aは、環状線A1の外側の領域が、第1実施形態の電子回路モジュール10のものよりも広く、加圧によって変位した領域が広いことを意味している。
【0059】
また、環状線A4の内側の最も変位した領域については、第1実施形態の電子回路モジュール10の方が、比較例の電子回路モジュール10Aと比べて13%程度、変位量(たわみ量)が少ない結果となった。
【0060】
図11は、第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとの製造工程の一部を簡略的に示した模式図である。図11(A)は、第1実施形態の電子回路モジュール10を示し、図11(B)は、比較例の電子回路モジュール10Aを示している。なお、電子回路モジュールに関しては、回路基板12、天板部22a、第2側壁部22c,22eのみ示してある。
【0061】
電子回路モジュールは、例えば集合基板等に複数配列された電子回路モジュールがダイシング工程を経て分離され、個々の電子回路モジュールとして個片化される。具体的には、集合基板を回路基板12側から切削することにより(図中矢印A参照)、各電子回路モジュールを個片化することができる。
【0062】
このとき、回路基板12の裏面側(図中では上方)から、図示しない切削機等にて、回路基板12を切削するが、図11(A)に示すように、第1実施形態の電子回路モジュール10は、第2側壁部22cがシールドカバー22の内側に折り曲げられているため、第2側壁部22cの回路基板12側の端部が、隣り合う電子回路モジュール10同士で広い幅を確保することができる(図中X1参照)。したがって、回路基板12を切削する際(ダイシング時)には、第2側壁部22cを傷つける危険性を低減させることができるという効果がある。これにより、個々の電子回路モジュール10をより近接させたり、1つ1つの電子回路モジュール10の幅を広くしたりすることができ、平面的にも小型化に寄与することができる。
【0063】
これに対して、比較例の電子回路モジュール10Aは、図11(B)に示すように、第2側壁部22cが回路基板12と垂直であるため、第2側壁部22eの切断の危険性を回避するために、ある程度広めの幅(図中X2)を確保しておかなければならず、平面的に小型化を実現することができない。
【0064】
このように、第1実施形態の電子回路モジュール10によれば、天板部22aの凹みを最小限に抑えることにより、天板部22aが凹んで電子部品14〜20と接触して電子部品14〜20が故障することを防止することができる。また、天板部22aの凹みを最小限に抑えることにより、凹みを見越したシールドカバー22の隙間を最小限に抑えることができ、結果として、シールドカバー22の高さを下げて電子回路モジュール10の小型化を実現することができる。
【0065】
また、第1側壁部22bは、天板部22aの周縁の四隅に形成され、第2側壁部22cは、天板部の周縁の四隅を除いた部分に形成されているので、天板部22aの四隅でカバーを安定して固定しつつ、天板部22aのその他の部分では、第2側壁部22cによって内部の電子部品14〜20をしっかり保護することができる。また、第1側壁部22bは、天板部22aを四隅で支えるので、天板部22aが上方から加圧を受けた際には、その加圧の力を均等に分散し、その分天板部22aの凹みを軽減させることができる。
【0066】
さらに、第2側壁部22cは、回路基板12に対して略垂直に接することになるため(図5(C)参照)、シールドカバー22の天板部22aからの加圧を最適かつ効率のよい状態で受け止めることができる。
【0067】
さらにまた、天板部22aは、部品実装装置の吸着ノズル50から受けるマウント荷重を想定して設計することができるため、部品実装装置で取り扱われるのに適し、かつ実装時のハンドリングに優れた電子回路モジュール10を提供することができる。
【0068】
その上、天板部22aには、孔が設けられておらず、平坦な面を有するので、部品実装装置の吸着ノズル50との間に隙間ができず、吸着ノズル50による充分な吸着を実現することができる。これにより、想定外の加圧は除外され、想定している加圧を受けて問題なくマザー基板等へ電子回路モジュール10を実装することができる。
【0069】
〔第2実施形態〕
図12は、第2実施形態の電子回路モジュール10−2の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。なお、第1実施形態と共通する事項については同じ符号を付与するものとし、その重複した説明を省略する。
【0070】
第2実施形態の電子回路モジュール10−2と、第1実施形態の電子回路モジュール10とが異なる点は、第1実施形態では、第1側壁部22bがシールドカバー22の四隅に形成されていたのに対して、第2実施形態では、第1側壁部22bがシールドカバー22−2の辺上に形成されている点である。
【0071】
具体的には、シールドカバー22−2の天板部22aの短辺側に、2つの第1側壁部22bが配置され、その2つの第1側壁部22bの間に、シールドカバー22−2の内側に折り曲げられた第2側壁部22cが配置される。一方、シールドカバー22−2の天板部22aの長辺側には、シールドカバー22−2の内側に折り曲げられた第2側壁部22cのみが配置される。なお、これとは逆に、シールドカバー22−2の長辺側に、2つの第1側壁部22bを配置してもよい。
【0072】
そして、第1実施形態と同様に、第1側壁部22bの下方の脚部22dをスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入し、半田付け等によってシールドカバー22−2を回路基板12に固定することで、電子回路モジュール10−2が完成する。
【0073】
この第2実施形態のように、第1側壁部22bをシールドカバー22−2の四隅以外の場所に配置しても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、シールドカバー22−2が展開状態で簡素化され(第1実施形態のように第1側壁部22bがシールドカバー22から斜めに突出しないため)、より製造しやすい形態とすることができる。
【0074】
本発明は、上述した一実施形態に制約されることなく、各種の変形や置換を伴って実施することができる。また、一実施形態で挙げた電子回路モジュールの構成はいずれも好ましい例示であり、これらを適宜変形して実施可能であることはいうまでもない。
【0075】
上述した第1及び第2実施形態では、シールドカバー22,22−2を長方形状としているが、シールドカバー22,22−2は正方形状等であってもよい。
【0076】
また、第1及び第2実施形態で挙げたスルーホール12bや導電パターン12dの配置はあくまで一例であって、これら以外の配置を採用してもよいし、大きさ、配置個数等も適宜に変更することが可能である。
【0077】
また、電子回路モジュールは、高周波回路に限らず、その他の電子回路を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10,10−2 電子回路モジュール
12 回路基板
12a 実装面
12b スルーホール
12c 挿通穴
14,16,18,20 電子部品
14a,16a,18a,20a 半田
22,22−2 シールドカバー
22a 天板部
22b 第1側壁部
22c 第2側壁部
22d 脚部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路モジュールに係わり、より詳しくは、金属製のカバーを備えた電子回路モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回路基板上に高周波用の電子部品が実装された電子回路モジュールには、電子部品を覆う金属製のシールドカバーを有するものがある。シールドカバーは通常、回路基板に半田を用いて固定されており、この状態でシールドカバーは電子部品を保護すると同時に、基板上の回路にグランドされることでノイズ対策としても機能する。このようなシールドカバーがその機能を充分に果たすためには、回路基板に対して電気的にも機械的にも確実に固定されている必要がある。
【0003】
シールドカバーを回路基板に固定する手法として、シールドカバーを回路基板に対して半田付けする方法があるが、シールドカバーの側壁部を全て回路基板に半田付けしてしまうと、その分の半田ランド等も必要となり、それだけ電子部品の実装領域が狭くなってしまう。また、シールドカバーの内部に実装された電子部品と半田とが接触しないように、電子部品はある程度カバーの内側に逃げて(避けて)配置しなければならず、これも電子部品の実装領域を狭くする要因となる。
【0004】
そこで、半田付けは、シールドカバーの側壁部の四隅のみとし、四隅でシールドカバーを固定してシールドカバーの四隅以外の側壁部は回路基板に半田付けをしない技術がある(例えば、特許文献1参照)。
この先行技術によれば、半田付けをする部分を必要最小限に抑えることで、回路基板上の電子部品の実装領域を広く確保することができると考えられる。また、この先行技術によれば、シールドカバーが、回路基板の四隅の位置で回路基板に固定され、シールドカバーの側壁が回路基板の端面と係合しているため、シールドカバーの位置決めを容易化することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−182007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、電子回路モジュールの小型化がますます進んでいる。
上述した先行技術のように平面的な問題として実装領域を確保するのみならず、高さ方向の問題として、電子回路モジュール自体の厚みもなるべく薄くすることが要求されている。
【0007】
ここで、電子回路モジュールは、部品実装装置(マウンタ等)でマザー基板等に実装されるものであるが、この場合、電子回路モジュールのカバーの天板部に吸着ノズルと呼ばれる管状の部材を当接させ、吸着ノズルの内部圧力を低下させることにより電子回路モジュールを吸着ノズルに吸着させてマザー基板等の所定位置に実装している。
【0008】
このとき、電子回路モジュールのカバーの天板部に吸着ノズルが当接する際、又は電子回路モジュールをマザー基板等の所定位置に載置する際には、吸着ノズルから天板部に力(マウント荷重)が加わり、カバーの天板部がカバーの内部に凹むことがある。
【0009】
このように天板部が凹み、天板部の凹んだ部分が内部の電子部品に接触すると、電子部品が故障するおそれがある。
したがって、天板部の凹みを考慮すると、天板部と内部の電子部品との間に、この凹みを見越した一定の隙間(クリアランス)を予め設けておかなければならない。このような隙間を予め設けておくことで、吸着ノズルの接触により天板部が凹んでも内部の電子部品と接触しないため、故障の原因も排除することができる。この点は、上述した先行技術の技術でも同様であり、天板部と内部の電子部品との間に、一定の隙間を設けておく必要がある。
【0010】
しかし、この隙間は、カバーの高さを下げるにあたっての障害となる。つまり、電子回路モジュールの相反する事象として、内部の電子部品を保護するためには、カバーの天板部と内部の電子モジュールとの間に一定の隙間を設けておかなければならないが、そうかといってこの隙間が大きくなれば電子モジュールの小型化が妨げられる。
【0011】
そこで本発明は、カバーの天板部が上方から加圧されて凹んだ場合であっても天板部が内部の電子部品と接触することがなく、それでいてカバーの高さも下げて電子モジュール自体の小型化を図ることができる技術の提供を課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
本発明の電子回路モジュール(電子回路ユニット、高周波モジュールでもよい)は、電子部品が実装された回路基板と、この電子部品を覆い、回路基板上に搭載された金属板からなるカバーとを備える。
【0013】
ここで、カバーは、略四角形形状の天板部と、天板部の周縁の一部に折り部を介して連接され、折り部によって天板部と略垂直に折り曲げられ、回路基板と連結してカバーを回路基板に固定する第1側壁部と、天板部の周縁の他の一部に折り部を介して連接され、天板部から回路基板に向かって延び、折り部によってカバーの内側に折り曲げられた第2側壁部とを有する。
【0014】
また、カバーの第2側壁部は、回路基板に接触することなく、回路基板との間に一定の隙間を保ってカバーの内側に配置されている通常状態と、天板部が上方から加圧され、天板部が凹むことによって、カバーの内側から外側に向かって移動し、回路基板側の端部が回路基板に接する接触状態とを移行可能である。
【0015】
本発明の電子回路モジュールにおいて、第2側壁部は、天板部が加圧されていない通常状態では、回路基板に接触することなく回路基板との間に一定の隙間を保ってカバーの内側に配置されている。第2側壁部は、カバーの内側方向に折り曲げられているため、このような通常状態ではカバーの内部に収納されている。
【0016】
また、第2側壁部は、天板部が上方から加圧されると、天板部が凹むことによって、カバーの内側から外側に向かって移動し、回路基板側の端部が回路基板に接する接触状態に移行する。すなわち、第2側壁部は、天板部が加圧されている状態では天板部の中央部分が凹み、その凹みに伴って第2側壁部がカバーの内部から外側に向かって移動する。
【0017】
そして、第2側壁部が回路基板に接することにより、第2側壁部がその状態において天板部と回路基板との間でつっぱり状態となり、天板部の加圧の力を受け止める機能を果たす。これにより、天板部が上方から加圧を受けても、天板部の凹みを最小限に抑えることができる。
【0018】
このように、天板部の凹みを最小限に抑えることにより、天板部が凹んで電子部品と接触して電子部品が故障することを防止することができる。また、天板部の凹みを最小限に抑えることにより、凹みを見越した天板部と電子部品との隙間(クリアランス)を最小限に抑えることができ、結果として、カバーの高さを下げて電子回路モジュールの小型化を実現することができる。
【0019】
本発明の電子回路モジュールの構成として、第1側壁部は、天板部の周縁の四隅に形成され、第2側壁部は、天板部の周縁の四隅を除いた部分に形成されていることが好ましい。
【0020】
この発明によれば、第1側壁部は天板部の周縁の四隅に形成され、第2側壁部は、天板部の周縁の四隅を除いた部分に形成されているので、天板部の四隅でカバーを安定して固定しつつ、天板部のその他の部分では、第2側壁部によって内部の電子部品をしっかり保護することができる。また、第1側壁部は、天板部を四隅で支えるので、天板部が上方から加圧を受けた際には、その加圧の力を均等に分散し、その分天板部の凹みを軽減させることができる。
【0021】
本発明の電子回路モジュールの構成として、第2側壁部は、接触状態では、回路基板に対して略垂直に接することが好ましい。
【0022】
この発明によれば、接触状態では、第2側壁部が回路基板に対して略垂直に接することになるため、カバーの天板部からの加圧を最適かつ効率のよい状態で受け止めることができる。
【0023】
本発明の電子回路モジュールの構成として、天板部は、部品実装装置の吸着ノズルが接触する際又は部品実装装置の吸着ノズルによって吸着されマザー基板の所定位置に載置される際に加わる圧力によって加圧がされることが好ましい。
【0024】
この発明によれば、天板部は、部品実装装置の吸着ノズルから受けるマウント荷重を想定して設計することができるため、部品実装装置で取り扱われるのに適し、かつ実装時のハンドリングに優れた電子回路モジュールを提供することができる。
【0025】
本発明の電子回路モジュールの構成として、天板部は、孔が設けられておらず、平坦な面を有することが好ましい。
【0026】
この発明によれば、天板部は、孔が設けられておらず、平坦な面を有するので、部品実装装置の吸着ノズルとの間に隙間ができず、吸着ノズルによる充分な吸着を実現することができる。これにより、想定外の加圧は除外され、想定している加圧を受けて問題なくマザー基板等へ電子回路モジュールを実装することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、カバーの第2側壁部を折り曲げて、カバーの内部に配置しておくことで、天板部が上方から加圧された際には、天板部が凹むことによって、第2側壁部がカバーの内側から外側に向かって移動し回路基板に接する。そして第2側壁部が第1側壁部とともにカバー全体を支えることになるため、天板部の凹みを最小限に抑えることができる。これにより、カバーの高さを下げて小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態の電子回路モジュール10の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図2】電子回路モジュール10の完成状態を示す斜視図である。
【図3】図2中のIII−III線に沿う電子回路モジュール10の断面図である。
【図4】図2中のIV−IV線に沿う電子回路モジュール10の断面図である。
【図5】第1実施形態の電子回路モジュール10を部品実装装置の吸着ノズルで吸着する際の状態を説明する図である。
【図6】比較例の電子回路モジュール10Aを示す図である。
【図7】比較例の電子回路モジュール10Aを示す図である。
【図8】比較例の電子回路モジュール10Aを部品実装装置の吸着ノズルで吸着する際の状態を説明する図である。
【図9】第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとを比較して示す図である。
【図10】第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとの変位の度合いをシミュレーション解析によって表した図である。
【図11】第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとの製造工程の一部を簡略的に示した模式図である。
【図12】第2実施形態の電子回路モジュール10−2の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の電子回路モジュール10の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。電子回路モジュール10は、例えば高周波帯の無線通信機能(無線LAN、Bluetooth:登録商標)を有した高周波モジュール(ユニット)であり、このような電子回路モジュール10は、例えば携帯情報端末やノート型パソコン等に内蔵して設けられる。
【0030】
〔回路基板〕
電子回路モジュール10は回路基板12を有しており、回路基板12には図示しない電気回路が形成されている。このため回路基板12の実装面12a上には図示しない配線パターンが設けられている。なお、回路基板12は多層構造を有する形態であってもよく、その場合は回路基板12の内層にも配線パターンが設けられている。
【0031】
〔電子部品〕
回路基板12の実装面12a上には、複数の電子部品14,16,18,20等が実装されている。なお、ここでは図面の煩雑化を防止するため、限られた個数の電子部品14〜20のみを示しているが、実装面12a上にはその他の電子部品もまた実装されており、これらがある程度密集した状態で配置されている。
【0032】
実装される電子部品14〜20としては、例えば、集積回路をパッケージした高周波チップやFETアレイ、チップ抵抗やチップコイル、チップコンデンサ等の受動素子を挙げることができるが、その他のものであってもよい。このうち、比較的大型の電子部品14,16等は、例えば表面実装型のパッケージ部品であり、その外形は扁平な直方体形状をなす。これら電子部品14〜20は、例えばその底面(図1には現れていない)に予め設けられた半田バンプ等を介して回路基板12に実装されている。なお、これら電子部品14,16は、実装される部品の中でも実装面12aに占める面積が大きく、また実装面12a上でみて比較的上背(実装高さ)を有する部品である。
【0033】
〔穴部〕
例えば、回路基板12の隅位置(コーナー位置)には、それぞれスルーホール12b又は挿通穴12cが形成されている。これらスルーホール12bや挿通穴12cは、いずれも回路基板12を厚み方向に貫通して設けられている。またスルーホール12bの内壁面には、例えば導電性ペースト又は導電性めっきによる導電層(参照符号なし)が形成されている。なお導電層は、例えば図示しない電気回路のグランド(GND)に接続されている。
【0034】
〔シールドカバー〕
また電子回路モジュール10はシールドカバー22を有している。このシールドカバー22は、電子回路モジュール10の完成状態で回路基板12の実装面12a上の電子部品14〜20(その他の電子部品を含む)を覆うように配置され、電子部品14〜20を機械的及び電気的に保護する(外部からのノイズの遮断、外部への不要電波の輻射の防止)。
【0035】
シールドカバー22は、金属板をプレス加工して形成されており、その形状は図1に示される状態で下端面が全体的に開放された略半箱形をなしている。
ここで、シールドカバー22は、実装面12aと対向する天板部22aを有するほか、天板部22aの四隅に形成された第1側壁部22bと、天板部22aの四隅以外の側辺に形成された第2側壁部22cとを有する。
【0036】
天板部22aは、略四角形形状であり、その四隅にコーナー部(面取り部)24を有する。また、天板部22aには、孔が設けられておらず、天板部22aは平坦な面を有する部材である。
【0037】
第1側壁部22bは、天板部22aの周縁の四隅のコーナー部24に折り部28を介して連接され、折り部28によって天板部22aと略垂直に折り曲げられ、回路基板12と連結してシールドカバー22を回路基板12に固定する部材である。
【0038】
第2側壁部22cは、天板部22aの周縁のコーナー部24を除いた部分(天板部22aの4辺部分)に折り部30を介して連接され、天板部22aから回路基板12に向かって延び、折り部30によってシールドカバー22の内側に折り曲げられた部材である。第2側壁部22cの機能(動作形態)については後述する。
【0039】
〔脚部〕
また第1側壁部22bの下端部には、第1側壁部22bと一体に脚部22dが形成されている。これら脚部22dは回路基板12の四隅の第1側壁部22bにそれぞれ対応して配置されており、これら脚部22dはいずれも、第1側壁部22bから回路基板12(図1では下方)に向けて突出している。図1中に一点鎖線で示されているように、シールドカバー22が回路基板12に取り付けられた状態で、4つの脚部22dはそれぞれ対応する位置のスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入されるものとなっている。
【0040】
〔脚部の圧入〕
図2は、電子回路モジュール10の完成状態を示す斜視図である。上記のように、シールドカバー22が回路基板12に設置された状態で、4つの脚部22dはそれぞれ対応する位置のスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入されている。このとき、スルーホール12b及び挿通穴12cの内径は脚部22dの幅寸法に略等しく、このため脚部22dは、対応するスルーホール12b又は挿通穴12c内に圧入された状態にある。このときスルーホール12b内では、その導電層に対して脚部22dが圧着されることにより、導電層とシールドカバー22とが電気的に接続(圧着)されている。第1側壁部22bと回路基板12とは、各脚部22dがスルーホール12b及び挿通穴12cに挿入された状態で半田付け等によって固定される。シールドカバー22は、図示しない電気回路のグランド(GND)に接続されている。
【0041】
次に、第1実施形態の電子回路モジュール10の内部構造について説明する。
図3は、図2中のIII−III線に沿う電子回路モジュール10の断面図である。また図4は、図2中のIV−IV線に沿う電子回路モジュール10の断面図である。なお、これら図3及び図4においては、電子回路モジュール10の内部構造や各部の配置関係の理解を容易にするため、各部の寸法を誇張して表している。
【0042】
図3及び図4に示すように、シールドカバー22の内部には、電子部品14〜20が配置される。電子部品14〜20は、それぞれ底面において半田バンプ等の半田14a〜20aによって半田付けされている。
シールドカバー22の天板部22aと電子部品14〜20との間には、一定の隙間(クリアランス)が設けられる。この隙間は、天板部22aが凹んだ場合に、電子部品14〜20と接触しないようにするための空間である。
第2側壁部22cは、天板部22aから回路基板12に向かって延び、回路基板12に接触することなく、シールドカバー22の内側に折り曲げられている。
【0043】
次に、第2側壁部22cの機能(動作形態)について説明する。
図5は、第1実施形態の電子回路モジュール10を部品実装装置の吸着ノズルで吸着する際の状態を説明する図である。なお、図5においては、電子回路モジュール10の機能の理解を容易にするため、各部の寸法を誇張して表している。
【0044】
電子回路モジュール10は、図2に示す完成状態で、部品実装装置(マウンタ等)によって図示しないマザー基板等に実装される。この場合、電子回路モジュール10のシールドカバー22の天板部22aに吸着ノズルと呼ばれる管状の部材を当接させ、吸着ノズルの内部圧力を低下させることにより電子回路モジュール10を吸着ノズルに吸着させてマザー基板等の所定位置に実装している。以下、吸着時の様子について説明する。
【0045】
まず、図5(A)に示すように、電子回路モジュール10の上方から吸着ノズル50が下降してくる。このとき、第2側壁部22cは、回路基板12に接触することなく、回路基板12との間に一定の隙間を保って、シールドカバー22の内側に配置されている(通常状態)。
【0046】
ついで、図5(B)に示すように、吸着ノズル50が、電子回路モジュール10の天板部22aに当接する。この状態でもまだ、第2側壁部22cは、シールドカバー22の内部に収納されている。
【0047】
そして、図5(C)に示すように、吸着ノズル50が天板部22aを押し込み、天板部22aが上方から加圧される。この加圧は、吸着ノズル50が天板部22aに接触する際のみならず、マザー基板の所定位置に載置される際にも加わる力である。この加圧により、天板部22aが下方に凹むことによって、第2側壁部22cがシールドカバー22の内側から外側に向かって移動し、第2側壁部22cの回路基板12側の端部が回路基板12に接する状態となる(接触状態)。この接触状態では、第2側壁部22cは、回路基板12に対して略垂直に接し、シールドカバー22を支える。ここで、上記加圧を受けたときに、第2側壁部22cが回路基板12に対して略垂直に接するようにするためには、部品実装装置の加圧具合やシールドカバー22の材料・厚み等を考慮して、第2側壁部22cの移動具合を予め算定しておき、その分だけ第2側壁部22cをシールドカバー22の内部に折り曲げておくことで実現可能である。
【0048】
基本的には、図5(C)の状態で終了となるが、さらに加圧されると、図5(D)に示すように、第2側壁部22cが外側にすべって若干広がる。仮にこのような状態となっても、第2側壁部22cは、第1側壁部22bとともにシールドカバー22を支える。
第2側壁部22cは、初期状態(図5(A)の状態)で、シールドカバー22の内側に配置されているから、すべりにより第2側壁部22cがシールドカバー22の外側へ開いても、その広がりは小さなものとなり、結果として天板部22aの凹みを軽減することができる。
また、第2側壁部22cは、吸着ノズル50から加圧を受けることにより、通常状態から接触状態に移行可能であり、吸着ノズル50からの加圧が開放されることにより、接触状態から通常状態に移行可能である。
【0049】
図6及び図7は、比較例の電子回路モジュール10Aを示す図である。
図6に示すように、比較例の電子回路モジュール10Aは、第2側壁部22eが第1実施形態のようにシールドカバー22の内側に折り曲げられているものではなく、天板部22aや回路基板12に対して垂直に配置されているものである。図7に示すように、第2側壁部22eと回路基板12との間には、第1実施形態のような一定の隙間がなく、第2側壁部22eと回路基板12とは接触しているが、半田付け等によって固定されているものではなく、自由に移動可能である。
【0050】
そして、シールドカバー22が回路基板12に設置された状態で、4つの脚部22dをそれぞれ対応する位置のスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入し、半田等によって固定すると、図7に示すような完成状態の電子回路モジュール10Aとなる。
【0051】
図8は、比較例の電子回路モジュール10Aを部品実装装置の吸着ノズルで吸着する際の状態を説明する図である。
まず、図8(A)に示すように、電子回路モジュール10Aの上方から吸着ノズル50が下降してくる。このとき、第2側壁部22eは、回路基板12に接触している。
ついで、図8(B)に示すように、吸着ノズル50が、電子回路モジュール10Aの天板部22aに当接する。この状態でも、第2側壁部22eは、回路基板12に接触している。
そして、図8(C)に示すように、吸着ノズル50が、天板部22aを押し込み、天板部22aが上方から加圧される。このとき、第2側壁部22eは、シールドカバー22の外側に広がって垂直状態ではなくなる。第2側壁部22eは、垂直状態ではなくなるので、垂直状態の場合と比較して、シールドカバー22を支える力が弱まり、その分天板部22aも大きく凹んでしまう。
【0052】
基本的には、図8(C)の状態で終了となるが、さらに加圧されると、図8(D)に示すように、第2側壁部22eが外側にすべってさらに広がり、シールドカバー22を支える力がさらに弱まる。このように、第2側壁部22eは、かろうじてシールドカバー22を支えている状態となり、その分天板部22aの変位も大きくなる。
【0053】
図9は、第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとを比較して示す図である。図9(A)は、第1実施形態の電子回路モジュール10を示しており、図9(B)は、比較例の電子回路モジュール10Aを示している。
図9からも明らかなように、天板部22aに同じ加圧力が加わった場合、図9(A)の第1実施形態の電子回路モジュール10は、初期状態からY1だけ変位し、図9(B)の比較例の電子回路モジュール10Aは、Y2だけ変位した。この差、すなわち「Y2−Y1」が両形態の差となる。
【0054】
図10は、第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとの変位の度合いをシミュレーション解析によって表した図である。図10(A)は、第1実施形態の電子回路モジュール10の平面図であり、図10(B)は、比較例の電子回路モジュール10Aの平面図である。
【0055】
ここでは、CAE(Computer Aided Engineering)を用いて天板部22aの凹み具合を評価した。ここでCAEとは、製品設計を支援するコンピュータシステムであり、設計した構造物が強度等の要求性能を満たすか否かを計算する解析システムである。
【0056】
本シミュレーションでは、第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとを上方から同じ加圧力によって加圧した場合の変位の度合を解析した。第1実施形態の電子回路モジュール10では、第2側壁部22cの初期状態の折り曲げ角度を110度とし、比較例の電子回路モジュール10Aでは、第2側壁部22eの初期状態の折り曲げ角度を90度とした。なお、この折り曲げ角度は、第2側壁部を折り曲げていない展開状態での角度を0度とし、直角に折り曲げて90度となり(比較例)、さらに折り曲げて110度(第1実施形態)としている。
【0057】
図中、環状線A1の外側の領域は、電子回路モジュールの高さ方向において天板部22aが全く変位していない領域であり、環状線A4の内側の領域は、電子回路モジュールの高さ方向において天板部22aが最も変位している部分である。
【0058】
図10(A)に示すように、第1実施形態の電子回路モジュール10は、環状線A1の外側の領域が比較的広く、加圧によって変位した領域が狭いことを意味している。
これに対して、図10(B)に示すように、比較例の電子回路モジュール10Aは、環状線A1の外側の領域が、第1実施形態の電子回路モジュール10のものよりも広く、加圧によって変位した領域が広いことを意味している。
【0059】
また、環状線A4の内側の最も変位した領域については、第1実施形態の電子回路モジュール10の方が、比較例の電子回路モジュール10Aと比べて13%程度、変位量(たわみ量)が少ない結果となった。
【0060】
図11は、第1実施形態の電子回路モジュール10と、比較例の電子回路モジュール10Aとの製造工程の一部を簡略的に示した模式図である。図11(A)は、第1実施形態の電子回路モジュール10を示し、図11(B)は、比較例の電子回路モジュール10Aを示している。なお、電子回路モジュールに関しては、回路基板12、天板部22a、第2側壁部22c,22eのみ示してある。
【0061】
電子回路モジュールは、例えば集合基板等に複数配列された電子回路モジュールがダイシング工程を経て分離され、個々の電子回路モジュールとして個片化される。具体的には、集合基板を回路基板12側から切削することにより(図中矢印A参照)、各電子回路モジュールを個片化することができる。
【0062】
このとき、回路基板12の裏面側(図中では上方)から、図示しない切削機等にて、回路基板12を切削するが、図11(A)に示すように、第1実施形態の電子回路モジュール10は、第2側壁部22cがシールドカバー22の内側に折り曲げられているため、第2側壁部22cの回路基板12側の端部が、隣り合う電子回路モジュール10同士で広い幅を確保することができる(図中X1参照)。したがって、回路基板12を切削する際(ダイシング時)には、第2側壁部22cを傷つける危険性を低減させることができるという効果がある。これにより、個々の電子回路モジュール10をより近接させたり、1つ1つの電子回路モジュール10の幅を広くしたりすることができ、平面的にも小型化に寄与することができる。
【0063】
これに対して、比較例の電子回路モジュール10Aは、図11(B)に示すように、第2側壁部22cが回路基板12と垂直であるため、第2側壁部22eの切断の危険性を回避するために、ある程度広めの幅(図中X2)を確保しておかなければならず、平面的に小型化を実現することができない。
【0064】
このように、第1実施形態の電子回路モジュール10によれば、天板部22aの凹みを最小限に抑えることにより、天板部22aが凹んで電子部品14〜20と接触して電子部品14〜20が故障することを防止することができる。また、天板部22aの凹みを最小限に抑えることにより、凹みを見越したシールドカバー22の隙間を最小限に抑えることができ、結果として、シールドカバー22の高さを下げて電子回路モジュール10の小型化を実現することができる。
【0065】
また、第1側壁部22bは、天板部22aの周縁の四隅に形成され、第2側壁部22cは、天板部の周縁の四隅を除いた部分に形成されているので、天板部22aの四隅でカバーを安定して固定しつつ、天板部22aのその他の部分では、第2側壁部22cによって内部の電子部品14〜20をしっかり保護することができる。また、第1側壁部22bは、天板部22aを四隅で支えるので、天板部22aが上方から加圧を受けた際には、その加圧の力を均等に分散し、その分天板部22aの凹みを軽減させることができる。
【0066】
さらに、第2側壁部22cは、回路基板12に対して略垂直に接することになるため(図5(C)参照)、シールドカバー22の天板部22aからの加圧を最適かつ効率のよい状態で受け止めることができる。
【0067】
さらにまた、天板部22aは、部品実装装置の吸着ノズル50から受けるマウント荷重を想定して設計することができるため、部品実装装置で取り扱われるのに適し、かつ実装時のハンドリングに優れた電子回路モジュール10を提供することができる。
【0068】
その上、天板部22aには、孔が設けられておらず、平坦な面を有するので、部品実装装置の吸着ノズル50との間に隙間ができず、吸着ノズル50による充分な吸着を実現することができる。これにより、想定外の加圧は除外され、想定している加圧を受けて問題なくマザー基板等へ電子回路モジュール10を実装することができる。
【0069】
〔第2実施形態〕
図12は、第2実施形態の電子回路モジュール10−2の全体的な構成を概略的に示す分解斜視図である。なお、第1実施形態と共通する事項については同じ符号を付与するものとし、その重複した説明を省略する。
【0070】
第2実施形態の電子回路モジュール10−2と、第1実施形態の電子回路モジュール10とが異なる点は、第1実施形態では、第1側壁部22bがシールドカバー22の四隅に形成されていたのに対して、第2実施形態では、第1側壁部22bがシールドカバー22−2の辺上に形成されている点である。
【0071】
具体的には、シールドカバー22−2の天板部22aの短辺側に、2つの第1側壁部22bが配置され、その2つの第1側壁部22bの間に、シールドカバー22−2の内側に折り曲げられた第2側壁部22cが配置される。一方、シールドカバー22−2の天板部22aの長辺側には、シールドカバー22−2の内側に折り曲げられた第2側壁部22cのみが配置される。なお、これとは逆に、シールドカバー22−2の長辺側に、2つの第1側壁部22bを配置してもよい。
【0072】
そして、第1実施形態と同様に、第1側壁部22bの下方の脚部22dをスルーホール12b又は挿通穴12c内に挿入し、半田付け等によってシールドカバー22−2を回路基板12に固定することで、電子回路モジュール10−2が完成する。
【0073】
この第2実施形態のように、第1側壁部22bをシールドカバー22−2の四隅以外の場所に配置しても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、シールドカバー22−2が展開状態で簡素化され(第1実施形態のように第1側壁部22bがシールドカバー22から斜めに突出しないため)、より製造しやすい形態とすることができる。
【0074】
本発明は、上述した一実施形態に制約されることなく、各種の変形や置換を伴って実施することができる。また、一実施形態で挙げた電子回路モジュールの構成はいずれも好ましい例示であり、これらを適宜変形して実施可能であることはいうまでもない。
【0075】
上述した第1及び第2実施形態では、シールドカバー22,22−2を長方形状としているが、シールドカバー22,22−2は正方形状等であってもよい。
【0076】
また、第1及び第2実施形態で挙げたスルーホール12bや導電パターン12dの配置はあくまで一例であって、これら以外の配置を採用してもよいし、大きさ、配置個数等も適宜に変更することが可能である。
【0077】
また、電子回路モジュールは、高周波回路に限らず、その他の電子回路を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10,10−2 電子回路モジュール
12 回路基板
12a 実装面
12b スルーホール
12c 挿通穴
14,16,18,20 電子部品
14a,16a,18a,20a 半田
22,22−2 シールドカバー
22a 天板部
22b 第1側壁部
22c 第2側壁部
22d 脚部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された回路基板と、
前記電子部品を覆い、前記回路基板上に搭載された金属板からなるカバーとを備え、
前記カバーは、
略四角形形状の天板部と、
前記天板部の周縁の一部に折り部を介して連接され、前記折り部によって前記天板部と略垂直に折り曲げられ、前記回路基板と連結して前記カバーを前記回路基板に固定する第1側壁部と、
前記天板部の周縁の他の一部に折り部を介して連接され、前記天板部から前記回路基板に向かって延び、前記折り部によって前記カバーの内側に折り曲げられた第2側壁部とを有し、
前記第2側壁部は、
前記回路基板に接触することなく、前記回路基板との間に一定の隙間を保って前記カバーの内側に配置されている通常状態と、
前記天板部が上方から加圧され、前記天板部が凹むことによって、前記カバーの内側から外側に向かって移動し、前記回路基板側の端部が前記回路基板に接する接触状態とを移行可能であることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記第1側壁部は、
前記天板部の周縁の四隅に形成され、
前記第2側壁部は、
前記天板部の周縁の四隅を除いた部分に形成されていることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記第2側壁部は、
前記接触状態では、前記回路基板に対して略垂直に接することを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電子回路モジュールにおいて、
前記天板部は、部品実装装置の吸着ノズルが接触する際又は部品実装装置の吸着ノズルによって吸着されマザー基板の所定位置に載置される際に加わる圧力によって前記加圧がされることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電子回路モジュールにおいて、
前記天板部は、孔が設けられておらず、平坦な面を有することを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項1】
電子部品が実装された回路基板と、
前記電子部品を覆い、前記回路基板上に搭載された金属板からなるカバーとを備え、
前記カバーは、
略四角形形状の天板部と、
前記天板部の周縁の一部に折り部を介して連接され、前記折り部によって前記天板部と略垂直に折り曲げられ、前記回路基板と連結して前記カバーを前記回路基板に固定する第1側壁部と、
前記天板部の周縁の他の一部に折り部を介して連接され、前記天板部から前記回路基板に向かって延び、前記折り部によって前記カバーの内側に折り曲げられた第2側壁部とを有し、
前記第2側壁部は、
前記回路基板に接触することなく、前記回路基板との間に一定の隙間を保って前記カバーの内側に配置されている通常状態と、
前記天板部が上方から加圧され、前記天板部が凹むことによって、前記カバーの内側から外側に向かって移動し、前記回路基板側の端部が前記回路基板に接する接触状態とを移行可能であることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記第1側壁部は、
前記天板部の周縁の四隅に形成され、
前記第2側壁部は、
前記天板部の周縁の四隅を除いた部分に形成されていることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子回路モジュールにおいて、
前記第2側壁部は、
前記接触状態では、前記回路基板に対して略垂直に接することを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の電子回路モジュールにおいて、
前記天板部は、部品実装装置の吸着ノズルが接触する際又は部品実装装置の吸着ノズルによって吸着されマザー基板の所定位置に載置される際に加わる圧力によって前記加圧がされることを特徴とする電子回路モジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の電子回路モジュールにおいて、
前記天板部は、孔が設けられておらず、平坦な面を有することを特徴とする電子回路モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−4293(P2012−4293A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137120(P2010−137120)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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