説明

電子回路ユニット

【課題】スルーホールの切断面に導体層や半田のバリが発生するのを防止できる電子回路ユニットを提供する。
【解決手段】大判基板8に形成された円筒形状のスルーホール10にシールドカバー3の脚片3aを挿入して半田付けした後、このスルーホール10を2分する位置で大判基板8を方形状に切断することによって多数個取りされる電子回路ユニット1において、回路基板2の切断ラインに接する半円筒形状のスルーホール4の内壁に導体層4aの存在しない非導体部4bを形成すると共に、切断ラインと対向する脚片3aの外表面に半田レジスト処理として耐熱性樹脂フィルム5を貼着し、大判基板8のスルーホール10をダイシングブレードで切断したときに、スルーホール10の切断面に導体層10aや半田11のバリが発生しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の部品実装面をシールドカバーで覆っている電子回路ユニットに係り、特に、大判基板の多数の部品実装領域にそれぞれ回路部品やシールドカバーを実装した後、その大判基板をダイシングブレード等で矩形状に切断することによって多数個取りされる電子回路ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大判基板を格子状の境界線によって多数の部品実装領域に区分しておき、各部品実装領域に回路部品とシールドカバーを実装した後、大判基板を境界線に沿ってダイシングブレード等で切断することにより、個々の完成品を多数個取りするという電子回路ユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は従来例に係る電子回路ユニットの斜視図、図10は該電子回路ユニットの製造方法で用いられる大判基板にシールドカバーを実装した状態を示す平面図、図11は図10のE部拡大図である。図9に示すように、この電子回路ユニット100は、平面視矩形状の回路基板101と、回路基板101上に実装された図示せぬ回路部品を覆うシールドカバー102とを備えており、回路基板101は後述する大判基板103を細分割することで得られる。回路基板101の各側面には半円筒形状のスルーホール101aが形成されており、スルーホール101aの内壁には銅メッキからなる導体層が設けられている。シールドカバー102は金属板を箱形に折り曲げ加工したものからなり、その各側板には脚片102aが下方に向けて形成されている。これら脚片102aは回路基板101の対応するスルーホール101aに挿入されており、脚片102aとスルーホール101aの導体層とを半田付けすることにより、シールドカバー102は回路基板101上に取り付けられている。図10に示すように、前述した大判基板103の表面は縦横に延びる格子状の境界線104によって多数の部品実装領域に仮想的に区分されており、各部品実装領域には図示せぬ配線パターンが形成されている。また、各境界線104の中間位置には円筒形状のスルーホール105が形成されており、このスルーホール105の内壁には銅メッキからなる導体層106が全周に亘って設けられている(図11参照)。
【0004】
このように概略構成された大判基板103から個々の電子回路ユニット100を多数個取りする場合、まず、各部品実装領域に形成された配線パターンのランド部に回路部品を半田付けする。次に、大判基板103のスルーホール105にクリーム半田を充填した後、各部品実装領域毎にシールドカバー102の各脚片102aをスルーホール105に挿入し、この状態で大判基板103をリフロー炉に搬送して脚片102aをスルーホール105の導体層106に半田付けする。この場合、1つのスルーホール105に対して隣接する2つのシールドカバー102の脚片102aが挿入され、これら対をなす2つの脚片102aが共通のスルーホール105の導体層106に半田付けされる。しかる後、大判基板103を各境界線104に沿ってダイシングブレード等により切断し、この大判基板103を各部品実装領域毎に細かく分割することにより、図9に示すように、細分割された回路基板101上にシールドカバー102が取り付けられた個々の電子回路ユニット100の完成品を多数個取りすることができる。その際、図11に示すように、大判基板103に形成された円筒形状のスルーホール105をダイシングブレード等で切断して2分することにより、回路基板101の各側面に半円筒形状のスルーホール101aが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−335966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来技術では、大判基板103を境界線104に沿ってダイシングブレード等で切断することにより、回路基板101上にシールドカバー102が取り付けられた個々の電子回路ユニット100を多数個取りするようにしているが、図11に示すように、大判基板103に形成されたスルーホール105をダイシングブレード等で切断する際に、スルーホール105の内壁に設けられた導体層106とスルーホール105内に充填された半田107とが共に切断されるため、これら導体層106と半田107の切断面にバリが発生してしまう。その結果、完成品の電子回路ユニット100をマザー基板に実装したときに、導体層106や半田107から剥離した導電性のバリがマザー基板上に落下して短絡事故を誘発するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、スルーホールの切断面に導体層や半田のバリが発生するのを防止できる電子回路ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、方形状の切断ラインに沿う外側縁に半割形状のスルーホールが形成された回路基板と、この回路基板の部品実装面を覆うシールドカバーとを備え、前記シールドカバーに形成された脚片が前記スルーホールの内壁に設けられた導体層に半田付けされている電子回路ユニットおいて、前記切断ラインに接する前記スルーホールの内壁に前記導体層の存在しない非導体部が形成されていると共に、前記切断ラインと対向する前記脚片の外表面に半田レジスト処理が施されているように構成した。
【0009】
このように構成された電子回路ユニットは、大判基板に形成された円筒形状のスルーホールにシールドカバーの脚片を挿入して半田付けした後、このスルーホールを2分する位置で大判基板を方形状に切断することによって多数個取りされるが、その際、回路基板の切断ラインに接する半割形状のスルーホールに導体層の存在しない非導体部が形成されていると共に、切断ラインと対向する脚片の外表面に半田レジスト処理が施されているため、スルーホールの切断面に導体層や半田のバリは発生しなくなり、バリに起因する短絡事故を防止することができる。
【0010】
上記の構成において、半田レジスト処理としてソルダーレジスト等の絶縁性インクを脚片の外表面に塗布するようにしても良いが、半田レジスト処理が脚片の外表面に貼着された耐熱性樹脂フィルムであると、予めフープ材(ロール状金属板)に耐熱性樹脂フィルムを貼り付けておき、この状態でフープ材をシールドカバーの外形に打ち抜き加工することにより、耐熱性樹脂フィルム付きの脚片を有するシールドカバーを簡単に製造することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子回路ユニットは、大判基板に形成された円筒形状のスルーホールにシールドカバーの脚片を挿入して半田付けした後、このスルーホールを2分する位置で大判基板を方形状に切断することによって多数個取りされるが、その際、回路基板の切断ラインに接する半割形状のスルーホールに導体層の存在しない非導体部が形成されていると共に、切断ラインと対向する脚片の外表面に半田レジスト処理が施されているため、スルーホールの切断面に導体層や半田のバリは発生しなくなり、バリに起因する短絡事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態例に係る電子回路ユニットの斜視図である。
【図2】図1のA部を拡大して示す詳細図である。
【図3】該電子回路ユニットに備えられるシールドカバーの製造工程を示す説明図である。
【図4】該電子回路ユニットの製造工程で用いられる大判基板の要部平面図である。
【図5】図4のB部拡大図である。
【図6】図4の大判基板にシールドカバーを実装した状態を示す説明図である。
【図7】図6のC−C線に沿う断面図である。
【図8】図7のD−D線に沿う拡大断面図である。
【図9】従来例に係る電子回路ユニットの斜視図である。
【図10】該電子回路ユニットの製造方法で用いられる大判基板にシールドカバーを実装した状態を示す平面図である。
【図11】図10のE部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1に示すように、本実施形態例に係る電子回路ユニット1は、平面視矩形状の回路基板2と、この回路基板2上に実装された図示せぬ回路部品を覆うシールドカバー3とを備えている。回路基板2の4つの側面のうち、長辺側の2つの側面には片方につき2箇所、合計で4つのスルーホール4が形成されている。図2に示すように、スルーホール4は半円筒形状の孔であり、その内壁のほぼ全周に亘って銅メッキからなる導体層4aが設けられている。ただし、スルーホール4の開口端近傍に導体層4aは存在せず、当該部位は銅メッキの施されていない非導体部4bとなっている。なお、回路基板2の各スルーホール4は後述する大判基板8に形成された円筒形状のスルーホール10を2分割することによって形成される。
【0014】
シールドカバー3は金属板を箱形に折り曲げ加工したものからなり、その4つの側板のうち、長辺側の2つの側板には片方につき2箇所、合計で4つの脚片3aが下方に向けて形成されている。これら脚片3aの外表面には半田レジスト処理として耐熱性樹脂フィルム5が貼着されており、図2に示すように、各脚片3aは回路基板2の対応するスルーホール4の内部で導体層4aに半田付けされている。なお、図1において、スルーホール4内の半田6は省略されている。このようなシールドカバー3を製造する場合は、まず、図3(a)に示すように、幅方向の両側部に耐熱性樹脂フィルム5を貼り付けた金属板製のフープ材(ロール状金属板)7を準備し、このフープ材7を図3(b)に示す形状に打ち抜き加工することにより、図3(c)に示すようなシールドカバー3を展開した形状の打ち抜き片7Aを形成する。しかる後、この打ち抜き片7Aを同図の破線で示す各折曲線に沿って箱形に折り曲げ加工することにより、図3(d)に示すように、各脚片3aに耐熱性樹脂フィルム5を貼着したシールドカバー3が得られる。
【0015】
図4に示すように、前述した大判基板8の表面は縦横に延びる格子状の境界線9によって多数の部品実装領域Sに仮想的に区分されており、各部品実装領域Sには図示せぬ配線パターンが形成されている。各境界線9のうち、上下方向へ延びる境界線9上には円筒形状のスルーホール10が形成されており、これらスルーホール10は同図の左右方向に隣接する部品実装領域Sの中間に位置している。図5に示すように、スルーホール10は円筒形状の孔であり、境界線9はスルーホール10の中心を通って縦断するように延びている。スルーホール10の内壁のうち、境界線9が通る部位は銅メッキの存在しない非導体部10bとなっているが、それ以外には銅メッキからなる導体層10aが設けられている。すなわち、スルーホール10の内壁には所定幅の非導体部10bによって分断された一対の導体層10aが設けられており、非導体部10bの幅寸法は後述するダイシングブレードの刃幅よりも若干広めに設定されている。
【0016】
このように構成された大判基板8から個々の電子回路ユニット1を多数個取りする場合、まず、各部品実装領域Sに形成された配線パターンのランド部にクリーム半田を塗布し、このクリーム半田にチップ抵抗やチップコンデンサ等の回路部品を搭載した後、大判基板8をリフロー炉に搬送して回路部品を半田付けする。次に、大判基板8の裏面側から各スルーホール10にクリーム半田を充填した後、図6と図7に示すように、大判基板8の表面側から各部品実装領域S毎にシールドカバー3の各脚片3aをスルーホール10に挿入し、この状態で大判基板8をリフロー炉に搬送して脚片3aをスルーホール10の導体層10aに半田付けする。
【0017】
その際、1つのスルーホール10に対して隣接する2つのシールドカバー3の脚片3aを挿入するが、図8に示すように、これら2つの脚片3aは互いの耐熱性樹脂フィルム5を対面させた状態で所定間隔を存して対向するため、スルーホール10の内部で溶融・固化した半田11は耐熱性樹脂フィルム5の貼着面を除く脚片3aとそれに対向する導体層10aとの間にだけ形成され、耐熱性樹脂フィルム5の貼着面である両脚片3aの間に半田11は形成されない。すなわち、スルーホール10の相対向する非導体部10bの間に半田11の存在しない非半田部12が形成され、一対の脚片3aがこの非半田部12を介して対向することになる。
【0018】
しかる後、大判基板8を各境界線9に沿って縦横にダイシングブレードで切断し、この大判基板8を各部品実装領域S毎に細かく分割することにより、図1に示すように、細分割された回路基板2上にシールドカバー3が取り付けられた個々の電子回路ユニット1の完成品を多数個取りすることができる。その際、大判基板8に形成された円筒形状のスルーホール10をダイシングブレードで半分に切断することにより、回路基板2の側面に半円筒形状のスルーホール4が形成されるが、図8に示すように、大判基板8のスルーホール10は導体層10aや半田11の存在しない非半田部12に沿ってダイシングブレードで切断されるため、スルーホール10の切断面に導体層10aや半田11のバリが発生することはない。したがって、完成品の電子回路ユニット1を図示せぬマザー基板に実装したときに、前記バリに起因する短絡事故を未然に防止することができる。
【0019】
以上説明したように、本実施形態例に係る電子回路ユニット1は、大判基板8に形成された円筒形状のスルーホール10に隣接するシールドカバー3の脚片3aを挿入して半田付けした後、このスルーホール10を2分する位置で大判基板8をダイシングブレードで切断することにより、方形状の回路基板2上にシールドカバー3が取り付けられた個々の完成品として多数個取りされるようになっており、回路基板2の切断ラインに接する半円筒形状のスルーホール4の内壁に導体層4aの存在しない非導体部4bが形成されていると共に、切断ラインと対向する脚片3aの外表面に半田レジスト処理としての耐熱性樹脂フィルム5が貼着されているため、大判基板8のスルーホール10をダイシングブレードで切断したときに、スルーホール10の切断面に導体層10aや半田11のバリは発生しなくなる。したがって、大判基板8のスルーホール10を2分割することによって形成される回路基板2のスルーホール4の切断面にも当然のこととして導体層4aや半田6のバリは発生せず、完成品の電子回路ユニット1を図示せぬマザー基板に実装したときに、前記バリに起因する短絡事故を未然に防止することができる。
【0020】
また、シールドカバー3の脚片3aに施された半田レジスト処理として耐熱性樹脂フィルム5を用いたので、シールドカバー3の製造段階で予めフープ材(ロール状金属板)7の所定位置に耐熱性樹脂フィルム5を貼り付けておき、このフープ材7を打ち抜き加工してシールドカバー3を展開した形状の打ち抜き片7Aを形成した後、その打ち抜き片7Aを箱形に折り曲げ加工することにより、脚片3aに耐熱性樹脂フィルム5を貼着したシールドカバー3を簡単に製造することができる。
【0021】
なお、上記実施形態例では、回路基板2の相対向する側面にスルーホール4を2つずつ形成すると共に、シールドカバー3の相対向する側板に脚片3aを2つずつ形成し、これらシールドカバー3の各脚片3aを回路基板2の対応するスルーホール4にそれぞれ半田付けした場合について説明したが、スルーホール4と脚片3aの数や形成位置は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 電子回路ユニット
2 回路基板
3 シールドカバー
3a 脚片
4 スルーホール
4a 導体層
4b 非導体部
5 耐熱性樹脂フィルム(半田レジスト処理)
6 半田
7 フープ材
7A 打ち抜き片
8 大判基板
9 境界線
10 スルーホール
10a 導体層
10b 非導体部
11 半田
12 非半田部
S 部品実装領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状の切断ラインに沿う外側縁に半割形状のスルーホールが形成された回路基板と、この回路基板の部品実装面を覆うシールドカバーとを備え、前記シールドカバーに形成された脚片が前記スルーホールの内壁に設けられた導体層に半田付けされている電子回路ユニットおいて、
前記切断ラインに接する前記スルーホールの内壁に前記導体層の存在しない非導体部が形成されていると共に、前記切断ラインと対向する前記脚片の外表面に半田レジスト処理が施されていることを特徴とする電子回路ユニット。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記半田レジスト処理が前記脚片の外表面に貼着された耐熱性樹脂フィルムであることを特徴とする電子回路ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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