説明

電子回路

【課題】Hブリッジと並列な大型の平滑コンデンサを用いる回路よりも消費電力が少ない電子回路を提供する。
【解決手段】容量性負荷CL用の高電圧AC電源回路には、低電圧DC電源と、インダクタLと、FET(S)とが直列に含まれる。FET(S)は脈動するため、インダクタLは、FET(S)と並列であるHブリッジHを介して容量性負荷CLを充電するための電圧を生成できる。FET(S)が閉状態の間、ダイオードDは、容量性負荷CLからの電流の放電を防止する。ダイオードよりも下流にHブリッジと並列に設けられた容量CSを備える。ダイオードDの下流側にあり容量性負荷と並列の容量の全容量値は、容量性負荷の容量値よりも小さく、10%よりも大きい。使用中、容量性負荷が負荷電圧まで充電された状態においてHブリッジが切り換えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に関し、特に、エレクトロルミネセントランプなどの容量性負荷用の高電圧電源において用いることができる電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセントランプは、一般に、2つの電極間にドーピングされた硫化亜鉛粉などの蛍光体材料の層を含む。少なくとも1つの電極を、ポリエステルまたはポリエチレンテレフタレート(PET)膜などの透明な基板上に設けられたインジウム錫酸化物(ITO)などの透明な材料で構成することは有用である。ランプは、例えば、スクリーン印刷によって電極層および蛍光体層を基板に堆積させることによって形成される。この場合、不透明な電極は、導電性(例えば、銀が充填された)インクで形成される。エレクトロルミネセントデバイスの例は、特許文献1および特許文献2に記載されている。
【0003】
上記の一般的な型のエレクトロルミネセントランプは、ランプの電極間に適切な周波数の交番電圧を印加して蛍光体を励起することによって照明される。通常、エレクトロルミネセントランプにおいて用いられる蛍光体は、数百ボルトの電圧を必要とする。典型的には、このようなエレクトロルミネセントランプは、100pFから1μFの範囲の容量値を有する。
【0004】
本発明者らは、情報を表示するための選択的に照明可能な領域を有するエレクトロルミネセントランプを含むエレクトロルミネセントディスプレイの開発に関与した。このようなディスプレイは、大型であり、可撓性であり、比較的安価であるという利点を有する。このようなエレクトロルミネセントディスプレイに関して、本発明者らは、エレクトロルミネセントランプまたはディスプレイ用の簡単な電源構成を提供することを追及した。
【0005】
低電圧DC電源からより高い出力電圧を生成するための回路のタイプとして、「フライバックコンバータ」が知られている。このような回路は、直列に配置されたインダクタおよび揺動スイッチを有する。揺動スイッチと並列に、ダイオードおよびコンデンサが直列に配置されている。スイッチは、開状態と閉状態との間で揺動する。閉状態では、電流は、DC電源からインダクタおよびスイッチを通って流れる。スイッチが開くと、電流路が遮断されるが、インダクタに伴う磁界によって電流は流れ続ける。従って、インダクタによって電流はダイオードを通って流れ、コンデンサを充電する。ダイオードは、スイッチが閉じている間、コンデンサが放電するのを防止する。従って、コンデンサは、DC電源電圧よりも高い電圧に充電され、この電圧において電流は、コンデンサから引き出される。
【0006】
交番電流をフライバックコンバータから負荷に供給するために、Hブリッジをコンデンサと並列に設けることもできる。一般に、Hブリッジは、2つの並列なリムを有し、各リムは、第2のスイッチと直列に接続された第1のスイッチを有する。第1および第2のスイッチの間の各リム上にはノードがあり、負荷はリムのそれぞれのノードの間に接続されている。電流は、一方のリムの第1のスイッチおよび他方のリムの第2のスイッチを介して一方向に、そして残りの2つのスイッチを介して他方向に流れることができる。Hブリッジのスイッチは、電流が負荷を通って、まず一方向に、次に他方向に流れるように動作する。
【0007】
Hブリッジを用いて容量性負荷CLに電源電圧Vを供給するとき、動作サイクルの前半において、負荷CLは、+Vにある。Hブリッジが切り替わり負荷の極性を反転させると、電源電圧と負荷との間には−2Vの電位差がある。負荷には、電位差がなくなるまで、電源から電流が急速に供給されるが、これには、2CL2のエネルギーが必要である。同様に、Hブリッジが、サイクルの終わりに、負荷を元の極性に戻すように切り替えられると、負荷を+Vに戻すためにさらに2CL2のエネルギーが必要である。
【0008】
従って、Hブリッジの動作の各サイクルには4CL2のエネルギーが必要であることが理解される。効率が100%であると仮定し、fをHブリッジの繰り返し周波数とした場合、消費電力は4CL2fである。これは、周波数および電圧が高い場合には、消費電力が著しく大きくなることを示している。
【0009】
容量性負荷の急速充放電用の電流を供給するために、Hブリッジと並列に(上記のフライバックコンバータのコンデンサなどの)大容量の平滑コンデンサを設けることが有用である。平滑コンデンサは、Hブリッジの極性を切り替えることによって生じる大電流から電源を保護し、電源電圧が大幅に低下しなくなるのを確実にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開WO00/72638号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO99/55121号パンフレット
【特許文献3】特開2000−030860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、平滑コンデンサを容量性負荷よりも小さくなるように選定した場合、Hブリッジの極性を切り替えた際に、容量性負荷によって平滑コンデンサから引き出される電流が平滑コンデンサを完全に放電させて、高電圧源を破壊させることがわかった。この場合、Hブリッジを切り替えたほぼ直後に、容量性負荷に供給される電流は、大型の平滑コンデンサ内に高電圧で電荷が蓄積されてそこからではなく、低電圧DC電源から直接引き出される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、低電圧DC電源から高い交番電圧を容量性負荷に供給するための電子回路を提供する。この回路は、2つの並列リムを有し、各リムは、直列の第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子、および第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子との間のノードを有し、容量性負荷が、使用中、リムのそれぞれのノード間に接続されるHブリッジと、低電圧DC電源によって電力供給され、Hブリッジに電流を供給して容量性負荷をDC電源の電圧よりも高い電圧に充電するコンバータと、コンバータとHブリッジとの間に直列に配置され、充電された容量性負荷から電流が逆流するのを防止するダイオードと、ダイオードよりも下流にHブリッジと並列に設けられた容量とを備える。
【0013】
Hブリッジのスイッチング素子は、第1の条件では、一方のリムの第1のスイッチング素子および他方のリムの第2のスイッチング素子が導通して、コンバータから容量性負荷へと電流を一方向に供給し、第2の条件では、リムの残りの2つのスイッチング素子が導通して、コンバータから容量性負荷へと電流を反対方向に供給するように、交互に制御される。
【0014】
ダイオードの下流側にHブリッジと並列に設けられた容量の全容量値は、容量性負荷の容量値よりも小さく、容量性負荷の容量値の10%よりも大きい。そして、使用中、容量性負荷が負荷電圧まで充電された状態においてHブリッジが切り換えられるように構成される。
【0015】
この構成によれば、Hブリッジが第1の条件から第2の条件に、または第2の条件から第1の条件に切り替えられると、反転された容量性負荷を再充電する電流の少なくともいくらかは、ダイオードの上流側の回路(ここでは、電圧がより低い)から引き出される。このようにして、回路を動作させるために必要な消費電力は、容量性負荷を再充電するために電流が大型の平滑コンデンサから供給される構成と比較して、大幅に削減される。
【0016】
好ましくは、使用中、容量性負荷が負荷電圧まで充電された状態において、Hブリッジが第1の条件と第2の条件の間で切り換えられるように構成される。
【0017】
また好ましくは、ダイオードの下流側にHブリッジと並列に設けられた容量の全容量値は、容量性負荷の容量値の50%未満である。好ましい構成では、この容量値は、容量性負荷の容量値の20%未満である。
【0018】
平滑コンデンサは、Hブリッジのスイッチング素子の不完全な切り替えを補うために、Hブリッジと並列にダイオードの上流側に設けることもできる。しかし、本発明によれば、スイッチングコンデンサの容量値は小さく保たれる。
【0019】
ダイオードは、回路の動作電圧の範囲にわたってのみ一方向に電流の流れを可能にする任意の適切なデバイスであればよく、それに応じて、本明細書では、「ダイオード」という用語を用いる。ダイオードの役割は、容量性負荷からコンバータに向かって電流が逆流する結果として容量性負荷が放電されることがないように、DC電源電圧よりも高い電圧を容量性負荷に保存させることにある。
【0020】
スイッチング素子は、任意の適切なスイッチングデバイスであればよく、一般には、トランジスタである。好ましい構成では、スイッチング素子は、電界効果型トランジスタ(FET)である。特に好ましい構成では、第1のスイッチング素子はpチャネルFETであり、第2のスイッチング素子はnチャネルFETである。
【0021】
Hブリッジのスイッチング素子の動作は、任意の適切な手段で制御され得る。好ましい構成では、極性電圧が、スイッチング素子、例えばFETのゲートに印加される。極性電圧は、パルス幅変調信号であってもよい。したがって、回路にはさらに、極性電圧を生成するように構成された発振器を含めることもできる。特に都合のよい構成では、発振器からの信号をコンバータによって用いることで、随意に分周器によってコンバータおよびHブリッジを同期動作させることもできる。通常、極性電圧の周波数は、50Hzから10kHzの範囲である。
【0022】
コンバータは、フォワードコンバータまたはフライバックコンバータなどの任意の適切なコンバータであればよい。好ましい構成では、コンバータは、フライバックコンバータである。
【0023】
フライバックコンバータは、直列に配置された誘導性素子および出力スイッチング素子から構成することができる。出力スイッチング素子は、使用中、第1の状態と第2の状態との間で交番するように構成され、それにより、第1の状態では、誘導性素子および出力スイッチング素子を介して電流路が得られ、電流路は、出力スイッチング素子が第1の状態から第2の状態に変化する際に、誘導性素子が容量性負荷を充電するための電圧を回路の出力において生成するように、第2の状態で遮断される。出力スイッチング素子が第1の状態にある間、出力ダイオードによって、出力から電流が逆流するのを防止することができる。
【0024】
誘導性素子は、インダクタまたはコイルなどの、必要に応じて動作可能な任意の適切な部品であればよい。通常、誘導性素子は、50μHから50mHの範囲で、例えば470μHのインダクタンスを有し得る。
【0025】
出力ダイオードは、回路の動作電圧の範囲にわたってのみ一方向に電流の流れを可能にする任意の適切なデバイスであればよい。出力ダイオードの役割は、容量性負荷から誘導性素子に向かって電流が逆流しないように、DC電源電圧よりも高い電圧を容量性負荷に保存させることにある。
【0026】
出力スイッチング素子は、任意の適切なスイッチングデバイスであればよく、一般的には、トランジスタである。好ましい構成では、スイッチング素子は、電界効果型トランジスタ(FET)である。特に好ましい構成では、出力スイッチング素子は、nチャネルFETである。
【0027】
有利なことに、出力スイッチング素子が大地電位に直接接続されていてもよい。この構成によれば、スイッチング素子は、高い電圧において切り替えを行うことができる必要はなく、これにより回路の設計が簡単になる。
【0028】
出力スイッチング素子の動作は、任意の適切な手段で制御され得る。好ましい構成では、制御電圧は、スイッチング素子、例えばFETのゲートに印加される。制御電圧は、パルス幅変調信号としてもよい。通常、制御電圧の周波数は、10から100kHzの範囲である。回路にはさらに、制御電圧を生成するように構成された発振器を含めることもできる。特に都合のよい構成では、発振器からの信号をHブリッジによって用いることで、回路およびHブリッジを同期動作させることもできる。
【0029】
電流がDC電源からコンバータに供給される。したがって、容量性負荷を、誘導性素子および出力スイッチング素子により、DC電源から充電することができる。
【0030】
通常、DC電源は、100V未満、例えば2から24Vの範囲の電圧を有する。容量性負荷は、電源電圧の5から500倍の間のピーク電圧に充電され得る。通常、ピーク電圧は、電源電圧の10から100倍の範囲である。
【0031】
出力スイッチング素子は、Hブリッジが第1の条件と第2の条件との間で交番する周波数の倍数である周波数で、第1の状態と第2の状態との間で交番するように構成され得る。このようにして、コンバータおよびHブリッジのスイッチング素子へのスイッチング信号は、同じ発振器から、例えば分周器を用いて生成することができる。
【0032】
好ましい構成では、容量性負荷は、エレクトロルミネセントランプである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、Hブリッジが第1の条件から第2の条件に、または第2の条件から第1の条件に切り替えられると、反転された容量性負荷を再充電する電流の少なくともいくらかは、ダイオードの上流側の回路(ここでは、電圧がより低い)から引き出される。このようにして、回路を動作させるために必要な消費電力は、容量性負荷を再充電するために電流が大型の平滑コンデンサから供給される構成と比較して、大幅に削減される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1a】本発明によるHブリッジの動作を示す図
【図1b】本発明によるHブリッジの動作を示す図
【図2a】本発明と共に用いられるフライバックコンバータの動作を例示する図
【図2b】本発明と共に用いられるフライバックコンバータの動作を例示する図
【図3】本発明の好ましい実施形態の動作を例示する図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明のいくつかの実施形態について、単なる例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【0036】
以下で説明する実施形態において、対応する参照符号は、対応する構成要素を示すために用いられている。
【0037】
図1aを参照すると、本発明に係る電子回路が示されている。この回路は、ダイオードDおよびHブリッジ構成Hと直列の電流源Iを有する。平滑コンデンサCSが、Hブリッジ構成Hと並列に設けられ、大地電位に接続されている。
【0038】
図1aにおけるHブリッジ構成Hは、明瞭化のため、簡単なスイッチとして示される4つのスイッチ素子SAからSDを有する。実際の回路では、スイッチSAからSDは、電界効果型トランジスタ(FET)によって得られる。Hブリッジは、直列に配置された2つのスイッチSAとSD、SCとSBをそれぞれ有する2つの並列なリムから構成される。エレクトロルミネセントランプの形態の容量性負荷CLは、リムのスイッチ間にある各リムのノードにおいてHブリッジのリム間に接続されている。Hブリッジは、一端が大地電位に接続されている。
【0039】
スイッチSAからSDの位置は、極性電圧VPによって制御され、その経時的変化が、図1aおよび図1bに示されている。VPが低いとき、スイッチSAおよびSBは開かれて導通せず、スイッチSCおよびSDは閉じられて導通する。この状況は図1aに示されている。VPが高いと、スイッチSAおよびSBは閉じられて導通し、一方、スイッチSCおよびSDが開かれて導通しない。この状況は、図1bに例示されている。
【0040】
以下、図1aおよび図1bに示される回路の動作について説明する。電流源Iとして示されるフライバックコンバータまたはフォワードコンバータなどのコンバータは、ダイオードDを介して、電流を平滑コンデンサCSおよび容量性負荷CLに供給する。容量性負荷CLが充電される方向は、スイッチSAからSDの位置によって決定される。平滑コンデンサCSおよび容量性負荷CLは、電流源Iが電流の供給を停止するまで充電され続ける。この結果、平滑コンデンサCSおよび容量性負荷CLの電圧は上昇する。コンデンサからの逆方向電流の流れは、ダイオードDによって阻止される。
【0041】
このように、容量性負荷CLが負荷電圧VLに完全に充電されると、その電荷はCLLとなり、平滑コンデンサの電荷はCSLとなる。図1bに示されるように、極性電圧VPが上昇すると、平滑コンデンサCSおよび電流源に対する、充電された容量性負荷CLの極性は反転される。従って、図1bにおけるY点は、大地電位に対して電位−VLになるのに対して、X点における電位は、大地電位に対して+VLになる。この電位差により、XおよびY点が同じ電位になるまで電流は流れ続ける。
【0042】
平滑コンデンサCSの容量値が大きい場合、平滑コンデンサCSは、十分な電荷を容量性負荷CLに与えて容量性負荷CLの電圧をほぼ負荷電圧VLまで上昇させる。しかし、その際に、平滑コンデンサCSは、容量性負荷に2CLL2のエネルギーを与えており、これは電流源Iから置換されなければならない。従って、Hブリッジの各サイクルには、4CLL2のエネルギーが電流源Iから引き出されることになる。
【0043】
しかし、本発明によれば、平滑コンデンサCSの容量値は、容量性負荷CLの容量値よりも小さくなるように選定される。そのため、極性電圧VPが上昇すると、平滑コンデンサCSは、負荷電圧VLのX点において電圧を維持するのに十分な電荷を蓄えてなく、この結果、XおよびYにおける電圧は大地電位まで下がる。次に、容量性負荷CLは、電流源Iから負荷電圧VLに逆充電される。このようにして、電流は、高電圧にある大型の平滑コンデンサからではなく、比較的低い電圧にある電流源Iから引き出される。小型の平滑コンデンサCSによって、サイクル当りCLL2のエネルギーしか必要でなくなる。
【0044】
図2aおよび図2bは、容量性負荷を高電圧に充電するためのフライバックコンバータの構成を示す。図2に示されるフライバックコンバータは、図2におけるダイオードDの下流側にある部品CLを、図1におけるダイオードDの下流側にある部品CS、CL、SA〜SDと置き換えることにより、図1に示されるHブリッジ構成Hと共に用いることができる。簡略化のために、容量性負荷CLは、Hブリッジなしで図2に示されている。
【0045】
図2aに示されるように、フライバックコンバータは、インダクタLおよびスイッチSと直列のDC電源を有する。スイッチSは、インダクタと大地電位との間に接続されている。実際の構成では、スイッチSは、電界効果型トランジスタ(出力FET)により得られる。しかし、明瞭化のため、図2aおよび図2bでは、スイッチSは、単純なスイッチとして示されている。
【0046】
スイッチSと並列に、容量性負荷CLと直列のダイオードDが設けられている。容量性負荷CLは、ダイオードと大地電位との間に配置されている。
【0047】
スイッチSは、図2aに示されるように、経時的に変化するスイッチ電圧VSによって制御される。スイッチ電圧VSが高いと、スイッチSは閉じられて導通する。この状況は、図2aに示されている。スイッチ電圧VSが低いと、スイッチSは開かれて導通しない。この状況は図2bに示されている。
【0048】
図2aおよび図2bに示される回路は、以下のように動作する。図2aに示されるように、スイッチ電圧VSが高い間、電流Iは、DC電源からインダクタLおよび閉じられたスイッチSを通って大地へと流れる。容量性負荷CLの電圧がDC電源電圧よりも高いと想定すると、電流はダイオードDを通って流れない。
【0049】
図2bに示されるように、スイッチ電圧VSが低下すると、インダクタLおよびスイッチSを介した電流路は、開かれたスイッチSによって遮断される。しかし、インダクタLに伴う磁界に保存されたエネルギーにより、電流Iは流れ続け、インダクタLは十分に高い電圧を生成し、電流IはダイオードDを通って流れて容量性負荷CLを充電する。このように、スイッチ電圧VSが高から低へと遷移する度に、図2bに示されるように、容量性負荷CLの電圧VLは上昇する。ダイオードDは、スイッチSが閉じられているとき、電流が容量性負荷CLから大地またはDC電源へと流れるのを防止する。
【0050】
従って、容量性負荷CLは、交番スイッチ電圧VSをスイッチSに印加することにより、任意の所望の電圧に充電可能であることがわかる。
【0051】
図3は、本発明の好ましい実施形態による回路を示す。この回路は、図2のコンバータの特徴および図1のHブリッジを組み合わせたものである。
【0052】
図3に示される回路は、nチャネルFETと直列のインダクタLを有する。nチャネルFETは、出力スイッチSを構成する。nチャネルFET Sのゲートには、制御電圧信号VCが供給される。
【0053】
DC電源は、電流ISを供給するために、インダクタLと直列に配置されている。
【0054】
図3に示される回路はさらに、HブリッジHを有する。平滑コンデンサCSが、HブリッジHと並列に設けられ、約1nFの容量値を有する。
【0055】
HブリッジHは2つの並列なリムからなる。第1のリムは、nチャネルFET SDと直列のpチャネルFET SAを有する。2つのFET SAとFET SDとの間には、約10nFの容量値を有するエレクトロルミネセントランプである容量性負荷CL用の接続がある。FET SAおよびFET SDのゲートには、極性電圧VPが供給される。Hブリッジの他方のリムは、nチャネルFET SBと直列のpチャネルFET SCを有する。容量性負荷CLは、2つのFET SCとFET SBとの間の点に接続されている。FET SCとFET SBのゲートには、インバータINVにより極性電圧VPの反転電圧が供給される。
【0056】
図3の電圧グラフにより示されているように、回路の1サイクルには、2つの別個の繰り返し段階が含まれる。第1の段階では、極性電圧VPが高いため、FET SCおよびFET SDは導通し、FET SAおよびFET SBは導通しない。出力FET Sへの制御電圧VCは脈動するため、出力FET Sは導通および非導通を交互に行う。この結果、インダクタLを通る変動電流は、FET SCを介して、平滑コンデンサCSおよび容量性負荷CLを充電する。図3の矢印方向における容量性負荷CLの両端電圧VLは、X点における電圧VHVのように、容量性負荷CLの電荷の増大により上昇する。
【0057】
第2の段階では、極性電圧VPは低くなるため、FET SCおよびFET SDは導通を停止し、FET SAおよびSBは導通し始める。従って、X点に対する容量性負荷CLの極性は反転される。この極性の変化が発生すると、電流は、平滑コンデンサCS、次いでDC電源から引き出されて、容量性負荷CLの負の電荷は放電される。
【0058】
この段階の間、出力FET Sへの制御電圧VCが脈動するため、電流は、インダクタLを通ってDC電源から間欠的に引き出されて、容量性負荷CLを充電する。しかし、FET SCおよびFET SDではなく、FET SAおよびFET SBが導通しているため、容量性負荷CLは、第1の段階の電流とは反対方向の電流で充電されるため、X点における電圧VHVに対する負の電圧が容量性負荷CLに与えられる。
【0059】
第2の段階と第1の段階の繰り返しとの間で、極性電圧VPは高くなる。同様に、X点における電圧VHVは低下し、容量性負荷CLは、電流をDC電源から引き出すことによって放電される。
【0060】
このように、本構成によれば、エレクトロルミネセントランプ用の、簡単でエネルギー効率の良好な電源が提供されることがわかる。
【0061】
要約すると、エレクトロルミネセントランプなどの容量性負荷CL用の高電圧AC電源回路は、低電圧DC電源と、インダクタLと、FET Sを直列に含む。FET Sは脈動するため、インダクタLが、FET Sと並列であるHブリッジを介して容量性負荷CLを充電するための電圧を生成できる。FET Sが閉じられている間、ダイオードDによって、容量性負荷CLからの電流の放電が防止される。ダイオードDの下流側で、容量性負荷CLと並列な容量の全容量値は、容量性負荷CLの容量値よりも小さい。このため、Hブリッジの極性が反転すると、Hブリッジにかかる電圧は大地電位まで低下し、容量性負荷CLは、低電圧DC電源を介して放電される。この回路は、Hブリッジと並列な大型の平滑コンデンサを用いる回路よりも消費電力が少ない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、回路を動作させるために必要な消費電力は、容量性負荷を再充電するために電流が大型の平滑コンデンサから供給される構成と比較して、大幅に削減され、エレクトロルミネセントランプなどの容量性負荷用の高電圧電源に有用である。
【符号の説明】
【0063】
L 容量性負荷
S 平滑コンデンサ
D ダイオード
H Hブリッジ構成
I 電流源
L インダクタ
A、SB、SC、SD スイッチ素子
S スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低電圧DC電源から高い交番電圧を、エレクトロルミネセントランプなどの容量性負荷に供給するための電子回路であって、
2つの並列リムを有し、各リムは、直列の第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子、および前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子との間のノードを有し、前記容量性負荷は、使用中、前記リムのそれぞれのノード間に接続されるHブリッジと、
前記低電圧DC電源によって電力供給され、前記Hブリッジに電流を供給して前記容量性負荷をDC電源電圧よりも高い電圧に充電するように構成されたコンバータと、
前記コンバータと前記Hブリッジとの間に直列に配置され、電流が前記充電された容量性負荷から逆流するのを防止するダイオードと、
前記ダイオードよりも下流に前記Hブリッジと並列に設けられた容量とを備え、
前記Hブリッジのスイッチング素子は、第1の条件では、一方のリムの前記第1のスイッチング素子および他方のリムの前記第2のスイッチング素子が導通して、前記コンバータから前記容量性負荷へと電流を一方向に供給し、第2の条件では、前記リムの残りの2つのスイッチング素子が導通して、前記コンバータから前記容量性負荷へと電流を反対方向に供給するように、交互に制御され、
前記ダイオードの下流側に前記Hブリッジと並列に設けられた容量の全容量値は、前記容量性負荷の容量値よりも小さく、前記容量性負荷の容量値の10%よりも大きく、
使用中、前記容量性負荷が負荷電圧まで充電された状態において前記Hブリッジが切り換えられるように構成されたことを特徴とする電子回路。
【請求項2】
使用中、前記容量性負荷が負荷電圧まで充電された状態において、前記Hブリッジが前記第1の条件と前記第2の条件の間で切り換えられるように構成された請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
前記ダイオードの下流側に前記Hブリッジと並列に設けられた容量の全容量値は、前記容量性負荷の容量値の50%未満である請求項1または2に記載の電子回路。
【請求項4】
前記ダイオードの下流側に前記Hブリッジと並列に設けられた容量の全容量値は、前記容量性負荷の容量値の20%未満である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項5】
前記コンバータは、直列に配置された誘導性素子および出力スイッチング素子を有し、
前記出力スイッチング素子は、使用中、第1の状態と第2の状態との間で交番するように構成され、それにより、前記第1の状態では、前記誘導性素子および前記出力スイッチング素子を介して電流路が得られ、前記電流路は、前記出力スイッチング素子が前記第1の状態から前記第2の状態に変化するとき、前記誘導性素子が前記容量性負荷を充電するための電圧を前記回路の出力において生成するように、前記第2の状態で遮断される請求項1に記載の電子回路。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−176749(P2009−176749A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86764(P2009−86764)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【分割の表示】特願2002−568867(P2002−568867)の分割
【原出願日】平成14年2月26日(2002.2.26)
【出願人】(503183640)ペリコン リミテッド (16)
【Fターム(参考)】