電子増倍器
【課題】コストダウンし且つ信頼性を高める。
【解決手段】電子増倍器100は、電気配線パターン20を有し貫通孔16が形成された絶縁性基板11と、絶縁性基板11の貫通孔16の一方側に配置され電気配線パターン20に電気的に接続されたMCP12と、MCP12の一方側に配置されMCP12に電気的に接続されたシールド板13と、貫通孔16の他方側に配置され電気配線パターン20に電気的に接続されたアノード15と、絶縁性基板11に固定されアノード15から信号を読み出すための信号読出し端子19と、を備えている。シールド板13は、厚さ方向から見てMCP12を含むように形成されている。シールド板13には、MCP12の少なくとも一部を露出させる貫通孔27が形成されている。ここで、絶縁性基板11、MCP12、シールド板13及びアノード15は、一体となるように互いに固定されている。
【解決手段】電子増倍器100は、電気配線パターン20を有し貫通孔16が形成された絶縁性基板11と、絶縁性基板11の貫通孔16の一方側に配置され電気配線パターン20に電気的に接続されたMCP12と、MCP12の一方側に配置されMCP12に電気的に接続されたシールド板13と、貫通孔16の他方側に配置され電気配線パターン20に電気的に接続されたアノード15と、絶縁性基板11に固定されアノード15から信号を読み出すための信号読出し端子19と、を備えている。シールド板13は、厚さ方向から見てMCP12を含むように形成されている。シールド板13には、MCP12の少なくとも一部を露出させる貫通孔27が形成されている。ここで、絶縁性基板11、MCP12、シールド板13及びアノード15は、一体となるように互いに固定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子増倍器に関し、特に、マイクロチャンネルプレートを備えた電子増倍器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子増倍器としては、薄板状のガラス基板に微細な貫通孔(チャンネル)を多数形成させることによって構成されるマイクロチャンネルプレート(Micro-Channel Plate:以下、「MCP」ともいう)を備えたものが知られている。この電子増倍器では、電圧を印加したマイクロチャンネルプレートのチャンネルに電子が入射されると、チャンネル内の側壁に電子が繰り返し衝突し、二次電子が放出されることにより増倍され、増倍された電子がアノードで検出される。このような電子増倍器として、例えば特許文献1には、マイクロチャンネルプレートに誘電絶縁体が薄膜蒸着されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−522454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の電子増倍器においては、例えば質量分析、半導体検査装置及び表面分析を始めとする各種分析装置への益々の普及に伴い、その部品点数を削減等してコストダウンを図ることが求められている。加えて、上述したような電子増倍器では、その動作を安定化して信頼性を高めることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、コストダウンすることができ、且つ信頼性を高めることが可能な電子増倍器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子増倍器は、電気配線パターンを有し、厚さ方向に延びる貫通孔が形成された絶縁性基板と、厚さ方向における絶縁性基板の貫通孔の一方側に配置され、電気配線パターンに電気的に接続されたマイクロチャンネルプレートと、厚さ方向におけるマイクロチャンネルプレートの一方側に配置され、マイクロチャンネルプレートに電気的に接続された金属板と、厚さ方向における絶縁性基板の貫通孔の他方側に配置され、電気配線パターンに電気的に接続されたアノードと、絶縁性基板に固定され、電気配線パターンを介してアノードから信号を読み出すための信号読出し端子と、を備え、金属板は、厚さ方向から見てマイクロチャンネルプレートを含むように形成されていると共に、金属板には、マイクロチャンネルプレートの少なくとも一部を露出させる貫通孔が形成され、絶縁性基板、マイクロチャンネルプレート、金属板及びアノードは、一体となるように互いに固定されていることを特徴とする。
【0007】
この電子増倍器では、配線が電気配線パターンとして絶縁性基板に設けられ、この絶縁性基板にマイクロチャンネルプレート及びアノードが実装されると共に、当該マイクロチャンネルプレートが金属板でシールドされ、そして、これらが一体に構成されることとなる。このような構成により、次の作用効果が奏される。すなわち、部品点数の低減及び構成の簡易化が可能となり、コストダウンすることが可能となる。さらに、電子金属板によりマイクロチャンネルプレートのチャージアップを抑制することができ、電子増倍器の動作を安定化させて信頼性を高めることが可能となる。
【0008】
また、電気配線パターンにおいては、マイクロチャンネルプレートの出力側が、第1ブリーダ回路部を介して、マイクロチャンネルプレートの他方側に電気的に接続される電圧供給端子に接続されていることが好ましい。この場合、マイクロチャンネルプレートの出力側電極用の電圧供給端子が不要となり、配線数を低減することが可能となる。
【0009】
このとき、電気配線パターンにおいては、マイクロチャンネルプレートの抵抗値よりも低い抵抗値を有する第2ブリーダ回路部が、マイクロチャンネルプレートに対し並列になるように接続されていることが好ましい。マイクロチャンネルプレートの特性ひいてはアノードからの出力信号の特性は、マイクロチャンネルプレート電位と、マイクロチャンネルプレートの出力側及びアノード間電位と、によって変化することが見出される。そのため、マイクロチャンネルプレートの抵抗値にバラツキがあると、これらの電位が変化してしまうことから、出力信号の特性が変化してしまうおそれがある。この点、上述したように第2ブリーダ部を取り付けることにより、マイクロチャンネルプレートの抵抗値が変化した場合でも、マイクロチャンネルプレート電位とマイクロチャンネルプレート及びアノード間電位との変化を抑制することができ、よって、出力信号の安定化が可能となる。
【0010】
また、金属板は、マイクロチャンネルプレートの一方側へ供給する電圧が印加されることが好ましい。この場合、例えば電気配線パターン上に設置されマイクロチャンネルプレートの入力側電極に電位を供給する電極が不要となり、配線数を低減することが可能となる。
【0011】
また、金属板は、厚さ方向から見て、絶縁性基板を含むように形成されていることが好ましい。この場合、金属板により絶縁性基板のチャージアップをも抑制することができ、電子増倍器の動作を一層安定化させることが可能となる。
【0012】
また、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、次の構成が好ましい。すなわち、マイクロチャンネルプレートは、絶縁性基板及び金属板によって挟まれることで絶縁性基板及び金属板に固定されていることが好ましい。また、金属板は、導電性の締結部材によって、絶縁性基板に固定され且つ電気配線パターンに電気的に接続されていることが好ましい。また、アノードは、導電性の接合剤によって、絶縁性基板に固定され且つ電気配線パターンに電気的に接続されていることが好ましい。
【0013】
また、絶縁性基板及び金属板の少なくとも一方には、外部と固定するための固定孔が設けられていることが好ましい。この場合、電子増倍器を容易且つ好適に固定し保持することが可能となる。
【0014】
また、絶縁性基板は、金属板に対し平行に延在する第1平行部と、厚さ方向における第1平行部の他方側に積層するように配置された第2平行部と、第1及び第2平行部を連結するように当該第1及び第2平行部に対して交差する交差部と、を少なくとも含む屈折基板であり、絶縁性基板の貫通孔は、第1平行部に形成され、アノードは、第1平行部において第2平行部側の表面上に設けられ、第1及び第2平行部の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱が介在されていることが好ましい。この場合、厚さ方向視において絶縁性基板の専有面積を低減することが可能となる。
【0015】
また、絶縁性基板は、第1基板と、厚さ方向における第1基板の他方側に積層するように配置された第2基板と、を少なくとも含み、絶縁性基板の貫通孔は、第1基板に形成され、アノードは、第1基板において第2基板側の表面上に設けられ、第1及び第2基板の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱が介在されていることが好ましい。この場合にも、厚さ方向視において絶縁性基板の専有面積を低減することが可能となる。
【0016】
また、絶縁性基板は、第1基板と、厚さ方向における第1基板の他方側に積層するように配置された第2基板と、を少なくとも含む多重基板であり、絶縁性基板の貫通孔は、第1基板に形成され、アノードは、第2基板において第1基板側の表面上に設けられていることが好ましい。この場合にも、厚さ方向視において絶縁性基板の専有面積を低減することが可能となる。
【0017】
このとき、第2基板において第1基板側と反対側の表面上には、ノイズシールド部が形成されていることが好ましい。この場合、ノイズによる悪影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コストダウンすることができ、且つ信頼性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る電子増倍器の入射面側を示す概略図である。
【図2】図1の電子増倍器のアノード側を示す概略図である。
【図3】図1のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】図1の電子増倍器における絶縁性基板の入射面側を示す概略図である。
【図5】図1の電子増倍器におけるMCPの一部を切断して示す斜視図である。
【図6】図1の電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図7】図1の電子増倍器における変形例の入射面側を示す概略図である。
【図8】図1の電子増倍器における他の変形例の入射面側を示す概略図である。
【図9】図1の電子増倍器におけるさらに他の変形例の入射面側を示す概略図である。
【図10】図1の電子増倍器における別の変形例を示す図3に対応する断面図である。
【図11】第2実施形態に係る電子増倍器を示す図3に対応する断面図である。
【図12】図11の電子増倍器のアノード側を示す概略図である。
【図13】図11の電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図14】第3実施形態に係る電子増倍器の入射面側を示す概略図である。
【図15】図14の電子増倍器を示す図3に対応する断面図である。
【図16】図14の電子増倍器の変形例を示す図3に対応する概略図である。
【図17】第4実施形態に係る電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図18】第5実施形態に係る電子増倍器のアノード側を示す概略図である。
【図19】図18の電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図20】第6実施形態に係る電子増倍器のアノード側を示す概略図である。
【図21】図20の電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図22】第7実施形態に係る電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図23】第8実施形態に係る電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図24】第9実施形態に係る電子増倍器の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1〜3に示すように、本実施形態の電子増倍器100は、電子を高感度・高速・高分解能で増倍し検出するものである。電子増倍器100は、例えば質量分析、半導体検査装置及び表面分析装置等の種々の電子装置に適用することができる。この電子増倍器100は、カード型の検出器であって、絶縁性基板11と、積層された複数(ここでは2枚)のMCP(マイクロチャンネルプレート)12,12と、シールド板(金属板)13と、センタリング基板14と、アノード15と、を備えている。
【0022】
図1〜4に示すように、絶縁性基板11は、絶縁性を有する材料(例えば、ガラスエポキシ)で形成され、長尺の矩形板状の外形を呈している。この絶縁性基板11には、その厚さ方向(以下、単に「厚さ方向」ともいう)に延びる貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、MCP12から放出される電子をアノード15側へ通過させる空間である。ここでの貫通孔16は、厚さ方向から見て円形状に形成されている。
【0023】
また、絶縁性基板11には、シールド板13を固定するためのものとして、厚さ方向に延びる固定孔17が複数(4つ)設けられている。複数の固定孔17のうち固定孔17a〜17cには、絶縁性を有する絶縁ネジN1が締結される。複数の固定孔17のうち固定孔17dには、導電性を有する導電ネジ(締結部材)N2が締結される。また、絶縁性基板11には、外部の筐体等に固定するためのものとして、厚さ方向に延びる固定孔18が複数(2つ)設けられている。なお、絶縁ネジN1及び導電ネジN2としては、ボルトやナット等の他の締結部材を用いてもよい。
【0024】
さらにまた、絶縁性基板11の一側面側には、アノード15の出力信号を読み出すためのものとして、SMAやBNCコネクタ等の信号読出し端子19が設けられている。具体的には、信号読出し端子19は、その向き(軸方向)を絶縁性基板11の短手方向(図1の左右方向)に沿った方向とされると共に、短手方向における絶縁性基板11の端部に外側へ突出するように固定されている。
【0025】
この絶縁性基板11は、プリント基板とされており、電子増倍器100の回路配線を構成する導電部材としての電気配線パターン20を有している。電気配線パターン20は、絶縁性基板11における表面11a(厚さ方向における一方側の表面)に積層するよう設けられた電気配線パターン21と、絶縁性基板11の裏面11b(厚さ方向における他方側の表面)11bに積層するよう設けられた電気配線パターン22と、を有している。なお、電気配線パターン20は、レジストやパリレン等により適宜コーティングされており、これにより、耐電圧が高められている。
【0026】
図2,4に示すように、電気配線パターン21は、MCP接続部21aを含んでいる。MCP接続部21aは、貫通孔16の周辺に設けられており、MCP12の出力側と電気的に接続される。このMCP接続部21aは、固定孔17b,17dを介して裏面11b側の電気配線パターン22に連続している。
【0027】
電気配線パターン22は、アノード接続部22a、シールド板接続部22b、及びライン22c〜22fを含んでいる。アノード接続部22aは、貫通孔16の周縁に設けられており、アノード15と電気的に接続される。シールド板接続部22bは、固定孔17dの周縁に設けられており、シールド板13に電気的に接続される。
【0028】
ライン22cは、アノード接続部22a及び信号読出し端子19を電気的に接続するよう延びている。ライン22dは、固定孔17bを介してMCP接続部21aに連続すると共に、信号読出し端子19に電気的に接続するよう延びている。ライン22eは、固定孔17cを介してMCP接続部21aに連続すると共に、ライン22cに電気的に接続するよう延びている。ライン22fは、ライン22eに連続すると共に、シールド板接続部22bに電気的に接続するよう延びている。
【0029】
この電気配線パターン22においてライン22c上には、コンデンサC1が表面実装されている。ライン22d上には、コンデンサC2が表面実装されている。ライン22f上には、抵抗R1が表面実装されている。ライン22e上には、抵抗R2が表面実装されている。また、ライン22eにおける抵抗R2よりもライン22c側には、抵抗R3が表面実装されている。
【0030】
また、電気配線パターン22においてシールド板接続部22b上には、IN側電極51が電気的に接続されている。また、ライン22eの抵抗R2,R3間には、バイアス電極52が電気的に接続されている。このように構成された電気配線パターン20によれば、図6に示すいわゆるフローティング型の電気回路が構成される。
【0031】
図3,5に示すように、MCP12は、入射された電子を増倍して放出するものである。MCP12は、絶縁性基板11の貫通孔16よりも大径の円板状を呈している。このMCP12は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔(チャンネル)24が形成されたチャンネル部25と、チャンネル部25の外周を取り囲む周縁部26と、を備えて構成されている。チャンネル部25は、例えば、厚さ100〜2000μm、直径10〜120mmの円板状のガラス基板に対して、外周部から3mm程度の幅を有する周縁部26よりも内側の円形状の領域に内径2〜25μmのチャンネル24を多数形成することによって構成される。
【0032】
また、MCP12の入射側の表面12a及び出射側の裏面12bのそれぞれには、チャンネル部25に電圧を印加するための電極として機能する金属が蒸着等により形成されている(図示せず)。MCP12の表面12aの蒸着金属は、MCP12のMCP入力側電極(IN側電極)を構成する。裏面12bの蒸着金属は、MCP12のMCP出力側電極(OUT側電極)を構成する。そして、ここでのMCP12では、IN側電極51を介してMCP入力側電極に電圧が印加され、バイアス電極52を介してMCP出力側電極に電圧が印加される。
【0033】
このMCP12では、電極間、すなわち各チャンネル24の両端の図示しない電極(MCP12のMCP入力側電極及びMCP出力側電極)に1kV程度の高電圧が印加されると、チャンネル24内に軸方向に直交する電界が発生する。このとき、一端側からチャンネル24内に電子が入射すると、入射電子は電界からエネルギを付与され、チャンネル24内壁に衝突して二次電子が放出される。そして、このような衝突が多数回繰り返され、電子が指数関数的に増大されることによって電子増倍が行われ、当該電子増倍された電子が他端側から放出され出射される。
【0034】
図3に示すように、このMCP12は、絶縁性基板11の表面11aにおいて貫通孔16上に、当該貫通孔16と同軸で重なるように配置されている。つまり、MCP12は、貫通孔16の入射側である一方側(図示左側)に配置されている。このとき、MCP12はその裏面12の蒸着金属がMCP接続部21aと当接され、これにより、MCP12のMCP出力側電極が配線パターン20に電気的に接続されている。
【0035】
図1,3に示すように、シールド板13は、MCP12へ向かう余分な電子を遮蔽するシールド機能を有するものである。シールド板13は、厚さ方向から見てMCP12よりも大きい矩形板状の外形を呈しており、MCP12の表面12aよりも大きい表面13aを有している。このシールド板13は、高剛性で変形(撓みや反り等)し難い材料として、例えばステンレス等の金属で形成されている。
【0036】
また、シールド板13には、厚さ方向に延びる貫通孔27が形成されている。貫通孔27は、MCP12へ入射する電子を通過させる空間である。ここでの貫通孔27は、厚さ方向から見てMCP12よりも小径の円形状に形成されている。このシールド板13の裏面13bは、MCP12の取付面とされている。
【0037】
このシールド板13は、MCP12の表面12a側に重なるように配置されており、厚さ方向から見てMCP12を含んでいる。このとき、シールド板13の貫通孔27からMCP12の一部が露出されている。これと共に、シールド板13は、その裏面13bがMCP12の表面12aに当接され、当該表面12aのMCP入力側電極に電気的に接続されている。これにより、シールド板13はIN電極としても機能する。
【0038】
そしてこの状態で、シールド板13は、絶縁ネジN1及び導電ネジN2によって絶縁性基板11に締結されて固定されている。これにより、MCP12,12は、絶縁性基板11及びシールド板13によって厚さ方向に挟み込まれ、絶縁性基板11及びシールド板13に対し一体となるよう固定される。これと共に、導電ネジN2を介して、シールド板13と電気配線パターン22のシールド板接続部22bとが電気的に接続される。
【0039】
図3に示すように、センタリング基板14は、絶縁性基板11及びシールド板13間においてのMCP12の取付け位置を画定するものである。このセンタリング基板14は、絶縁性を有する材料で形成されている。センタリング基板14は、厚さ方向から見てMCP12の形状に対応する孔14xを有している。センタリング基板14は、その孔14x内にMCP12,12を配置させた状態で、絶縁性基板11及びシールド板13間に挟み込まれて固定されている。
【0040】
アノード15は、MCP12から放出された電子を検出し、当該検出に応じた出力信号を信号読出し端子19へと出力する出力読出系である。このアノード15は、図3に示すように、絶縁性基板11の裏面11bにおいて貫通孔16上に重なるよう配置されている。つまり、アノード15は、貫通孔16における入射側と反対側である他方側(図示右側)に配置されている。これにより、アノード15は、貫通孔16を介してMCP12に対向する。このアノード15は、アノード接続部22aに対し当接されて電気的に接続されていると共に、半田や導電性接着剤等の接合剤により絶縁性基板11に固定されている。
【0041】
以上のように構成され図6に示す電気回路を形成する電子増倍器100では、動作電源50によって高電圧がIN側電極51及びバイアス電極52に印加された状態において、電子がシールド板13の貫通孔27を介してMCP12,12に入射されると、この入射電子はMCP12,12にて増倍されながら進行し、MCP12の裏面12b側から取り出される。そして、増倍された電子がアノード15により検出され、当該検出に応じた出力信号が信号読出し端子19から読み出されることとなる。
【0042】
なお、IN側電極51及びバイアス電極52の少なくとも一方を導電性のリード線で構成し、当該リード線を介して外部電源と電気的に接続してもよいし、これらの少なくとも一方をクリップやコネクタ等の接続端子で構成してもよい。また、IN側電極51及びバイアス電極52にて外部電源と電気的に接続する代わりに、外部電源と電気的に接続された導電線を導電ネジN2やシールド板接続部22bに電気的に接続するように構成してもよい。また、MCP12のMCP出力側電極には、バイアス電極52から抵抗R2を介して電位を供給しているが、抵抗R2を介さずに電位を供給してもよい。
【0043】
以上において、外部電源と電気的に接続するIN側電極51、導電ネジN2及びシールド板接続部22bは、MCP12のMCP入力側電極に電位を供給する電圧供給端子として機能し、バイアス電極52は、MCP12のMCP出力側電極に電位を供給する電圧供給端子として機能する。
【0044】
ところで、従来の電子増倍器では、通常、立体構造で構成されることから、高電圧配線の立体的配置を考慮する必要があり、構造が複雑化し易い。さらに、従来の電子増倍器では、一般的に、高電圧を絶縁するために多くの部品が必要である。
【0045】
この点、本実施形態においては、配線が電気配線パターン20として絶縁性基板11に配置され、この絶縁性基板11にアノード15及びMCP12が実装されると共に、当該MCP12がシールド板13でシールドされ、そして、これらが一体に構成されている。これにより、次の作用効果が奏される。
【0046】
すなわち、部品点数の低減及び構成の簡易化が可能となり、軽量でコンパクトな検出器を実現することができ、材料費等を削減してコストダウンすることが可能となる。さらに、シールド板13によりMCP12のチャージアップ(つまり、MCP12が帯電し、その悪影響で入射電子や二次電子が偏向等してしまうこと)を抑制することができ、電子増倍器100の動作を安定化させて信頼性を高めることが可能となる。さらにまた、絶縁材料上にMCP12が配置されることになるため、高電圧の取扱いが容易となる。
【0047】
また、本実施形態の電気配線パターン20は、上述したように、抵抗R2が表面実装されたライン22eを有している。つまり、絶縁性基板11の電気配線パターン20上には、抵抗R2から成る第1ブリーダ回路部53が表面実装されており、当該第1ブリーダ回路部53を介して、MCP12のMCP出力側電極(他方側)がバイアス電極52に接続されている。これにより、MCP出力側電極用の電圧供給端子(例えば、後述のOUT側電極501)が不要となり、配線数を低減することが可能となる。さらには、第1ブリーダ回路部53を備えない場合(例えば、後述の電子増倍器500)に比べて、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0048】
ここで、MCP12の特性は、MCP12の電位Vmcpと、MCP12の出力側及びアノード15間電位Vout−anodeと、によって変化することが見出される。具体的には、電位Vmcpはゲインの変化に主に寄与し、電位Vout−anodeは出力波形の半値幅及びゲインの変化に主に寄与することが見出される。そして、本実施形態のように抵抗R2から成る第1ブリーダ回路部53を有する場合、これらの電位Vmcp,Vout−anodeは、MCP12と抵抗R2との各抵抗値によって定められる(例えば、下式(1),(2)参照)。よって、MCP12の抵抗値にバラツキがあると抵抗R2に生じる電圧も変化し、その結果、アノード15からの出力信号の特性が大きく異なるおそれがある。
MCP12の抵抗値(20MΩ):抵抗R2の抵抗値(5MΩ)
=Vmcp(2kV):Vout−anode(500V) …(1)
MCP12の抵抗値(80MΩ):抵抗R2の抵抗値(5MΩ)
=Vmcp(2353V):Vout−anode(147V) …(2)
ここで、上式(1),(2)では、供給電圧が2.5kVとされている。
【0049】
そこで、本実施形態では、上述したように、電気配線パターン20上にて抵抗R1が表面実装されたライン22fを設けている。つまり、MCP12の抵抗値より低い抵抗値の抵抗R1から成る第2ブリーダ回路部54を、MCP12と並列に挿入している、これにより、MCP12及び抵抗R1の合成抵抗値は抵抗R1が支配的なものになるため、電位Vmcpと電位Vout−anodeとの電圧比率が抵抗R1,R2の抵抗値の比率で決定されることとなる。その結果、MCP12の抵抗値が変化した場合でも、電位Vmcpと電位Vout−anodeとの変化を抑制することができ、出力信号を安定化させて安定動作を見込むことが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、上述したように、絶縁性基板11に固定孔18が設けられていることから、電子増倍器100を容易且つ好適に固定し保持することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、上述したように、MCP12の入射面側の表面12aに金属で形成されたシールド板13が設置され、このシールド板13の裏面13bがMCP12の取付面とされている。よって、MCP12に剛性及び平坦性を付与し、絶縁性基板11が変形し易いものであっても、MCP12表面の平坦度を高めること(例えば30μm以下とする)ことができ、MCP12の特性改善が可能となる。
【0052】
また、上記実施形態では、カップリングコンデンサとしてコンデンサC1が表面実装されており、アノード15からの出力信号をGNDとする、すなわち、基準電位との電位差0Vとすることができる。これにより、高速性を損なうことなく出力信号を後段の処理系に転送することが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態の電子増倍器100は、上記に限定されるものではない。例えば、図7(a)に示すように、シールド板13の貫通孔27が厚さ方向から見て矩形形状に形成されていてもよい。また、図7(b)に示すように、シールド板13が円形板状の外形を呈していてもよい。さらにまた、図7(c)に示すように、厚さ方向から見て、シールド板13を絶縁性基板11よりも大きくされ、シールド板13が絶縁性基板11を含むように形成されていてもよい。換言すると、絶縁性基板11がシールド板13よりも小さくされ、絶縁性基板11がシールド板13に含まれるように形成されていてもよい。
【0054】
また、本実施形態の電子増倍器100では、筐体等に固定するための固定孔18が絶縁性基板11に設けられているが、図8に示すように、固定孔18がシールド板13に設けられていてもよい。この場合でも、電子増倍器100を容易且つ好適に固定し保持することができる。
【0055】
さらには、図9に示すように、電子増倍器100を固定するために、絶縁性基板11がソケット60に差込み可能に構成されていてもよい。このとき、図示するように、ソケット60が電子増倍器100と電気的に接続可能とされていてもよい。具体的には、信号読出し端子19が絶縁性基板11の長手方向(図示上下方向)の端部に設けられ、その向きが絶縁性基板11の長手方向に沿った方向とされている。ソケット60には、信号読出し端子19に対応する形状の凹部61が形成されている。そして、絶縁性基板11がソケット60に差し込まれたとき、凹部61内に信号読出し端子19が進入され、当該凹部61により信号読出し端子19がソケット60に電気的に接続可能とされている。この場合、ソケット60は、電子増倍器100に対する電気配線及び固定を兼ねることとなる。
【0056】
また、図10に示すように、信号読出し端子19が裏面11bに垂直になるように設けられ、信号読出し端子19の向きが絶縁性基板11の厚さ方向に沿った方向(裏面11bの直交方向)とされていてもよい。
【0057】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0058】
図11〜13に示すように、本実施形態の電子増倍器200が上記電子増倍器100と異なる点は、絶縁性基板11の電気配線パターン22がIN側電極51(図2参照)を備えず、外部の筐体251をシールド板13に接続してMCP12へ供給する高電圧をシールド板13に直接印加する点である。
【0059】
以上、本実施形態でも、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、上述したように、電気配線パターン22上のIN側電極51を不要にでき、電源供給配線を最小に抑えることが可能となる。
【0060】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0061】
図14,15に示すように、本実施形態の電子増倍器300が上記電子増倍器100と異なる点は、絶縁性基板11(図1,3参照)に代えて絶縁性基板311を備えた点である。絶縁性基板311は、厚さ方向から見てシールド板13よりも小さく、シールド板13に含まれるように形成されている。具体的には、絶縁性基板311は、側方から見てL字状に屈折する屈折板とされ、平行部312及び垂直部313を有している。
【0062】
平行部312は、シールド板13に対し平行に延在している。平行部312は、シールド板13の表面13aよりも小さい面積の表面312aを有しており、厚さ方向から見てシールド板13に含まれるように形成されている。この平行部312には、上記貫通孔16が形成されている。垂直部313は、平行部312の一端部に連続し、当該平行部312に対し垂直に延在している。垂直部313の一側面側には、上記信号読出し端子19が設けられている。なお、信号読出し端子19は、絶縁性基板311(平行部312及び垂直部313)の表面又は裏面に設けられていてもよい。
【0063】
以上、本実施形態でも、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、上述したように、絶縁性基板11が厚さ方向から見てシールド板13に含まれるよう形成されていることから、厚さ方向視における専有面積を小さくすることができる。これと共に、シールド板13により絶縁性基板11のチャージアップをも抑制することができ、電子増倍器300の動作を一層安定化させることが可能となる。
【0064】
なお、本実施形態の電子増倍器300は、上記に限定されるものではない。例えば、図16(a)に示すように、絶縁性基板311は、側方から見てU字状に屈折する屈折基板とされ、第1及び第2平行部321,322及び垂直部(交差部)323を有していてもよい。
【0065】
第1及び第2平行部321,322は、シールド板13に対し平行に延在しており、厚さ方向から見てシールド板13に含まれるように形成されている。第1平行部321には、上記貫通孔16が形成されている。第1平行部321の裏面(第2平行部322側の面)321bにおいて貫通孔16上には、アノード15が重なるように配置されている。第2平行部322は、第1平行部321のアノード15側(図示右側:他方側)に所定距離離間して配置されている。この第2平行部322の一側面側には、上記信号読出し端子19が設けられている。
【0066】
垂直部323は、第1及び第2平行部321,322の一端部に連続し、これらを連結するように当該第1及び第2平行部321,322に対して垂直に延在(交差)している。また、第1及び第2平行部321,322の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱301が介在されており、この支柱301により第2平行部322が第1平行部321に支持され固定されている。
【0067】
或いは、図16(b)に示すように、絶縁性基板311は、第1及び第2基板331,332を有する積層構造で構成されていてもよい。この場合、第1及び第2基板331,332は、シールド板13に対し平行に延在しており、厚さ方向から見てシールド板13に含まれるように形成されている。
【0068】
そして、第1基板331には、上記貫通孔16が形成されている。第1基板331の裏面(第2基板332側の面)331bにおいて貫通孔16上には、アノード15が重なるよう配置されている。第2基板332は、第1基板331のアノード15側(図示右側:他方側)に所定距離離間して配置されている。この第2基板332の一側面側には、上記信号読出し端子19が設けられている。また、第1及び第2基板331,332の間には、絶縁性又は導電性を有する複数の支柱301が介在されており、これら複数の支柱301により第2基板332が第1基板331に支持され固定されている。
【0069】
さらに或いは、図16(c)に示すように、絶縁性基板311は、アノード15を基板に作り込んだ多重基板で構成してもよい。この場合、絶縁性基板311は、第1及び第2基板341,342を有する積層構造で構成され、第1及び第2基板341,342は、シールド板13に対し平行に延在しており、厚さ方向から見てシールド板13に含まれるように形成されている。
【0070】
そして、第1基板341には、上記貫通孔16が形成されている。第2基板342は、第1基板341の他方側(図示右側:他方側)に所定距離離間して配置されている。第2基板342の第1基板341側の表面342aにおいて貫通孔16上には、アノード15が表面実装されている。この第2基板342の一側面側には、上記信号読出し端子19が設けられている。また、これら第1及び第2基板341,342は、ネジN1,N2により互いに固定されている。これにより、第1及び第2基板341,342の支持及び固定に関して、上記支柱301を省略することができる。
【0071】
なお、ここでは、第1基板341及び第2基板342を所定距離離間して配置する構成としたが、第1基板341及び第2基板342を直接重ねるように配置してもよいし、第1基板341及び第2基板342を多層積層基板として一体形成してもよい。
【0072】
ちなみに、このとき好ましいとして、第2基板342の裏面(第1基板341側と反対側の表面)342b上には、当該裏面342bを覆うようにノイズシールド部303が形成されている。これにより、ノイズによる悪影響を低減することができる。ちなみに、例えばノイズによる悪影響が少ない場合等には、ノイズシールド部303が設けられない場合もある。
【0073】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0074】
図17に示すように、本実施形態の電子増倍器400が上記電子増倍器100と異なる点は、電気配線パターン22がライン22f及び抵抗R1(図6参照)を備えない点、すなわち、電気配線パターン22上に第2ブリーダ回路部54が表面実装されていない点である。
【0075】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化することが可能となる。
【0076】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0077】
図18,19に示すように、本実施形態の電子増倍器500が上記電子増倍器100と異なる点は、電気配線パターン22上に第1及び第2ブリーダ回路部53,54が表面実装されていない点である。すなわち、電子増倍器500は、電気配線パターン22がライン22f及び抵抗R1,R2(図6参照)を備えない一方、電気配線パターン22がOUT側電極501をさらに備え、ライン22eが分断されている。
【0078】
ライン22eは、固定孔17cとバイアス電極52との間にてライン22e1,22e2に分断されている。OUT側電極501は、固定孔17c側のライン22e1に表面実装されている。これにより、OUT側電極501は、MCP12のMCP出力側電極に電気的に接続され、当該MCP12のMCP出力側電極に電位を供給する電圧供給端子として機能する。
【0079】
なお、OUT側電極501は、導電性のリード線で構成され、当該リード線を介して外部電源と電気的に接続されていてもよい。また、OUT側電極501は、クリップやコネクタ等の接続端子で構成されていてもよい。さらにまた、OUT側電極501にて外部電源と電気的に接続する代わりに、外部電源と電気的に接続された導電線をライン22e1に電気的に接続するように構成してもよい。
【0080】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化することが可能となる。
【0081】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0082】
図20,21に示すように、本実施形態の電子増倍器600は、いわゆるGND型の回路構成を有している。この電子増倍器600が上記電子増倍器100と異なる点は、電気配線パターン22がバイアス電極52、コンデンサC1及び抵抗R3を備えない点である。
【0083】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化すると共に、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0084】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0085】
図22に示すように、本実施形態の電子増倍器700は、いわゆるGND型の回路構成を有している。この電子増倍器700が上記電子増倍器200と異なる点は、電気配線パターン22がバイアス電極52、コンデンサC1及び抵抗R3を備えない点である。
【0086】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化すると共に、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0087】
[第8実施形態]
次に、第8実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第4実施形態と異なる点について主に説明する。
【0088】
図23に示すように、本実施形態の電子増倍器800は、いわゆるGND型の回路構成を有している。この電子増倍器800が上記電子増倍器400と異なる点は、電気配線パターン22がバイアス電極52、コンデンサC1及び抵抗R3を備えない点である。
【0089】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化すると共に、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0090】
[第9実施形態]
次に、第9実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第5実施形態と異なる点について主に説明する。
【0091】
図24に示すように、本実施形態の電子増倍器900は、いわゆるGND型の回路構成を有している。この電子増倍器900が上記電子増倍器500と異なる点は、電気配線パターン22がバイアス電極52、コンデンサC1及び抵抗R3を備えない点である。
【0092】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化すると共に、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0093】
以上において好適な実施形態について説明したが、実施形態に係る電子増倍器は上記に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0094】
例えば上記実施形態では、電子を増倍して検出したが、イオンをはじめ、紫外線、真空紫外線、中性子線、X線及びγ線等を増倍して検出することもできる。また、上記実施形態では、抵抗R2に代えて、ツェナーダイオード等の定電圧素子を取り付けてもよい。この場合、定電圧素子からの放熱促進のために絶縁性基板11の熱伝導率を高めることが好ましい。
【0095】
また、上記実施形態では、ガラスエポキシで絶縁性基板11を形成しているが、超耐熱高分子樹脂(例えばPEEK材:poly ether ether ketone)や無機材料のセラミック等で絶縁性基板11を形成してもよい。この場合、絶縁性基板11から発生するガスを低減して長寿命化を実現すると共に放出ガスを感知することによるノイズを低減することができる。特に、絶縁性基板11にセラミックを使用すると、熱伝導が優れるために効果的な冷却が可能となる。
【0096】
また、上記実施形態では、2枚のMCP12を備えているが、MCP12の枚数は限定されず、1枚又は3枚以上のMCP12を備えていてもよい。また、MCP12を絶縁性基板11に直接貼り付けてもよく、これにより、部品点数をさらに削減することができる。また、絶縁性基板11,311の厚さを所定厚さ以上に厚くしてもよく、これにより、絶縁性基板の変形を防止することができる。
【0097】
なお、絶縁性基板11の裏面11bに切欠溝を形成し、この切欠溝上に電気配線パターン20を設けてもよい。この場合、電気配線パターン20の表面距離を延ばし、耐電圧リークを抑制することができる。
【0098】
また、上記実施形態は、1つのアノード15を備えたシングルアノード型の電子増倍器であるが、複数のアノード15を備えたマルチアノード型の電子増倍器であってもよい。この場合、入射電子の2次元位置を検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
11,311…絶縁性基板、12…MCP(マイクロチャンネルプレート)、13…シールド板(金属板)、15…アノード、16…貫通孔、18…固定孔、19…信号読出し端子、20,21,22…電気配線パターン、27…貫通孔、52…バイアス電極(電圧供給端子)、53…第1ブリーダ回路部、54…第2ブリーダ回路部、100,200,300,400,500,600,700,800,900…電子増倍器、301…支柱、303…ノイズシールド部、321…第1平行部、322…第2平行部、323…垂直部(交差部)、331,341…第1基板、332,342…第2基板、N2…導電ネジ(締結部材)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子増倍器に関し、特に、マイクロチャンネルプレートを備えた電子増倍器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子増倍器としては、薄板状のガラス基板に微細な貫通孔(チャンネル)を多数形成させることによって構成されるマイクロチャンネルプレート(Micro-Channel Plate:以下、「MCP」ともいう)を備えたものが知られている。この電子増倍器では、電圧を印加したマイクロチャンネルプレートのチャンネルに電子が入射されると、チャンネル内の側壁に電子が繰り返し衝突し、二次電子が放出されることにより増倍され、増倍された電子がアノードで検出される。このような電子増倍器として、例えば特許文献1には、マイクロチャンネルプレートに誘電絶縁体が薄膜蒸着されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−522454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の電子増倍器においては、例えば質量分析、半導体検査装置及び表面分析を始めとする各種分析装置への益々の普及に伴い、その部品点数を削減等してコストダウンを図ることが求められている。加えて、上述したような電子増倍器では、その動作を安定化して信頼性を高めることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、コストダウンすることができ、且つ信頼性を高めることが可能な電子増倍器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子増倍器は、電気配線パターンを有し、厚さ方向に延びる貫通孔が形成された絶縁性基板と、厚さ方向における絶縁性基板の貫通孔の一方側に配置され、電気配線パターンに電気的に接続されたマイクロチャンネルプレートと、厚さ方向におけるマイクロチャンネルプレートの一方側に配置され、マイクロチャンネルプレートに電気的に接続された金属板と、厚さ方向における絶縁性基板の貫通孔の他方側に配置され、電気配線パターンに電気的に接続されたアノードと、絶縁性基板に固定され、電気配線パターンを介してアノードから信号を読み出すための信号読出し端子と、を備え、金属板は、厚さ方向から見てマイクロチャンネルプレートを含むように形成されていると共に、金属板には、マイクロチャンネルプレートの少なくとも一部を露出させる貫通孔が形成され、絶縁性基板、マイクロチャンネルプレート、金属板及びアノードは、一体となるように互いに固定されていることを特徴とする。
【0007】
この電子増倍器では、配線が電気配線パターンとして絶縁性基板に設けられ、この絶縁性基板にマイクロチャンネルプレート及びアノードが実装されると共に、当該マイクロチャンネルプレートが金属板でシールドされ、そして、これらが一体に構成されることとなる。このような構成により、次の作用効果が奏される。すなわち、部品点数の低減及び構成の簡易化が可能となり、コストダウンすることが可能となる。さらに、電子金属板によりマイクロチャンネルプレートのチャージアップを抑制することができ、電子増倍器の動作を安定化させて信頼性を高めることが可能となる。
【0008】
また、電気配線パターンにおいては、マイクロチャンネルプレートの出力側が、第1ブリーダ回路部を介して、マイクロチャンネルプレートの他方側に電気的に接続される電圧供給端子に接続されていることが好ましい。この場合、マイクロチャンネルプレートの出力側電極用の電圧供給端子が不要となり、配線数を低減することが可能となる。
【0009】
このとき、電気配線パターンにおいては、マイクロチャンネルプレートの抵抗値よりも低い抵抗値を有する第2ブリーダ回路部が、マイクロチャンネルプレートに対し並列になるように接続されていることが好ましい。マイクロチャンネルプレートの特性ひいてはアノードからの出力信号の特性は、マイクロチャンネルプレート電位と、マイクロチャンネルプレートの出力側及びアノード間電位と、によって変化することが見出される。そのため、マイクロチャンネルプレートの抵抗値にバラツキがあると、これらの電位が変化してしまうことから、出力信号の特性が変化してしまうおそれがある。この点、上述したように第2ブリーダ部を取り付けることにより、マイクロチャンネルプレートの抵抗値が変化した場合でも、マイクロチャンネルプレート電位とマイクロチャンネルプレート及びアノード間電位との変化を抑制することができ、よって、出力信号の安定化が可能となる。
【0010】
また、金属板は、マイクロチャンネルプレートの一方側へ供給する電圧が印加されることが好ましい。この場合、例えば電気配線パターン上に設置されマイクロチャンネルプレートの入力側電極に電位を供給する電極が不要となり、配線数を低減することが可能となる。
【0011】
また、金属板は、厚さ方向から見て、絶縁性基板を含むように形成されていることが好ましい。この場合、金属板により絶縁性基板のチャージアップをも抑制することができ、電子増倍器の動作を一層安定化させることが可能となる。
【0012】
また、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、次の構成が好ましい。すなわち、マイクロチャンネルプレートは、絶縁性基板及び金属板によって挟まれることで絶縁性基板及び金属板に固定されていることが好ましい。また、金属板は、導電性の締結部材によって、絶縁性基板に固定され且つ電気配線パターンに電気的に接続されていることが好ましい。また、アノードは、導電性の接合剤によって、絶縁性基板に固定され且つ電気配線パターンに電気的に接続されていることが好ましい。
【0013】
また、絶縁性基板及び金属板の少なくとも一方には、外部と固定するための固定孔が設けられていることが好ましい。この場合、電子増倍器を容易且つ好適に固定し保持することが可能となる。
【0014】
また、絶縁性基板は、金属板に対し平行に延在する第1平行部と、厚さ方向における第1平行部の他方側に積層するように配置された第2平行部と、第1及び第2平行部を連結するように当該第1及び第2平行部に対して交差する交差部と、を少なくとも含む屈折基板であり、絶縁性基板の貫通孔は、第1平行部に形成され、アノードは、第1平行部において第2平行部側の表面上に設けられ、第1及び第2平行部の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱が介在されていることが好ましい。この場合、厚さ方向視において絶縁性基板の専有面積を低減することが可能となる。
【0015】
また、絶縁性基板は、第1基板と、厚さ方向における第1基板の他方側に積層するように配置された第2基板と、を少なくとも含み、絶縁性基板の貫通孔は、第1基板に形成され、アノードは、第1基板において第2基板側の表面上に設けられ、第1及び第2基板の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱が介在されていることが好ましい。この場合にも、厚さ方向視において絶縁性基板の専有面積を低減することが可能となる。
【0016】
また、絶縁性基板は、第1基板と、厚さ方向における第1基板の他方側に積層するように配置された第2基板と、を少なくとも含む多重基板であり、絶縁性基板の貫通孔は、第1基板に形成され、アノードは、第2基板において第1基板側の表面上に設けられていることが好ましい。この場合にも、厚さ方向視において絶縁性基板の専有面積を低減することが可能となる。
【0017】
このとき、第2基板において第1基板側と反対側の表面上には、ノイズシールド部が形成されていることが好ましい。この場合、ノイズによる悪影響を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コストダウンすることができ、且つ信頼性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る電子増倍器の入射面側を示す概略図である。
【図2】図1の電子増倍器のアノード側を示す概略図である。
【図3】図1のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】図1の電子増倍器における絶縁性基板の入射面側を示す概略図である。
【図5】図1の電子増倍器におけるMCPの一部を切断して示す斜視図である。
【図6】図1の電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図7】図1の電子増倍器における変形例の入射面側を示す概略図である。
【図8】図1の電子増倍器における他の変形例の入射面側を示す概略図である。
【図9】図1の電子増倍器におけるさらに他の変形例の入射面側を示す概略図である。
【図10】図1の電子増倍器における別の変形例を示す図3に対応する断面図である。
【図11】第2実施形態に係る電子増倍器を示す図3に対応する断面図である。
【図12】図11の電子増倍器のアノード側を示す概略図である。
【図13】図11の電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図14】第3実施形態に係る電子増倍器の入射面側を示す概略図である。
【図15】図14の電子増倍器を示す図3に対応する断面図である。
【図16】図14の電子増倍器の変形例を示す図3に対応する概略図である。
【図17】第4実施形態に係る電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図18】第5実施形態に係る電子増倍器のアノード側を示す概略図である。
【図19】図18の電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図20】第6実施形態に係る電子増倍器のアノード側を示す概略図である。
【図21】図20の電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図22】第7実施形態に係る電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図23】第8実施形態に係る電子増倍器の等価回路を示す図である。
【図24】第9実施形態に係る電子増倍器の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。図1〜3に示すように、本実施形態の電子増倍器100は、電子を高感度・高速・高分解能で増倍し検出するものである。電子増倍器100は、例えば質量分析、半導体検査装置及び表面分析装置等の種々の電子装置に適用することができる。この電子増倍器100は、カード型の検出器であって、絶縁性基板11と、積層された複数(ここでは2枚)のMCP(マイクロチャンネルプレート)12,12と、シールド板(金属板)13と、センタリング基板14と、アノード15と、を備えている。
【0022】
図1〜4に示すように、絶縁性基板11は、絶縁性を有する材料(例えば、ガラスエポキシ)で形成され、長尺の矩形板状の外形を呈している。この絶縁性基板11には、その厚さ方向(以下、単に「厚さ方向」ともいう)に延びる貫通孔16が形成されている。貫通孔16は、MCP12から放出される電子をアノード15側へ通過させる空間である。ここでの貫通孔16は、厚さ方向から見て円形状に形成されている。
【0023】
また、絶縁性基板11には、シールド板13を固定するためのものとして、厚さ方向に延びる固定孔17が複数(4つ)設けられている。複数の固定孔17のうち固定孔17a〜17cには、絶縁性を有する絶縁ネジN1が締結される。複数の固定孔17のうち固定孔17dには、導電性を有する導電ネジ(締結部材)N2が締結される。また、絶縁性基板11には、外部の筐体等に固定するためのものとして、厚さ方向に延びる固定孔18が複数(2つ)設けられている。なお、絶縁ネジN1及び導電ネジN2としては、ボルトやナット等の他の締結部材を用いてもよい。
【0024】
さらにまた、絶縁性基板11の一側面側には、アノード15の出力信号を読み出すためのものとして、SMAやBNCコネクタ等の信号読出し端子19が設けられている。具体的には、信号読出し端子19は、その向き(軸方向)を絶縁性基板11の短手方向(図1の左右方向)に沿った方向とされると共に、短手方向における絶縁性基板11の端部に外側へ突出するように固定されている。
【0025】
この絶縁性基板11は、プリント基板とされており、電子増倍器100の回路配線を構成する導電部材としての電気配線パターン20を有している。電気配線パターン20は、絶縁性基板11における表面11a(厚さ方向における一方側の表面)に積層するよう設けられた電気配線パターン21と、絶縁性基板11の裏面11b(厚さ方向における他方側の表面)11bに積層するよう設けられた電気配線パターン22と、を有している。なお、電気配線パターン20は、レジストやパリレン等により適宜コーティングされており、これにより、耐電圧が高められている。
【0026】
図2,4に示すように、電気配線パターン21は、MCP接続部21aを含んでいる。MCP接続部21aは、貫通孔16の周辺に設けられており、MCP12の出力側と電気的に接続される。このMCP接続部21aは、固定孔17b,17dを介して裏面11b側の電気配線パターン22に連続している。
【0027】
電気配線パターン22は、アノード接続部22a、シールド板接続部22b、及びライン22c〜22fを含んでいる。アノード接続部22aは、貫通孔16の周縁に設けられており、アノード15と電気的に接続される。シールド板接続部22bは、固定孔17dの周縁に設けられており、シールド板13に電気的に接続される。
【0028】
ライン22cは、アノード接続部22a及び信号読出し端子19を電気的に接続するよう延びている。ライン22dは、固定孔17bを介してMCP接続部21aに連続すると共に、信号読出し端子19に電気的に接続するよう延びている。ライン22eは、固定孔17cを介してMCP接続部21aに連続すると共に、ライン22cに電気的に接続するよう延びている。ライン22fは、ライン22eに連続すると共に、シールド板接続部22bに電気的に接続するよう延びている。
【0029】
この電気配線パターン22においてライン22c上には、コンデンサC1が表面実装されている。ライン22d上には、コンデンサC2が表面実装されている。ライン22f上には、抵抗R1が表面実装されている。ライン22e上には、抵抗R2が表面実装されている。また、ライン22eにおける抵抗R2よりもライン22c側には、抵抗R3が表面実装されている。
【0030】
また、電気配線パターン22においてシールド板接続部22b上には、IN側電極51が電気的に接続されている。また、ライン22eの抵抗R2,R3間には、バイアス電極52が電気的に接続されている。このように構成された電気配線パターン20によれば、図6に示すいわゆるフローティング型の電気回路が構成される。
【0031】
図3,5に示すように、MCP12は、入射された電子を増倍して放出するものである。MCP12は、絶縁性基板11の貫通孔16よりも大径の円板状を呈している。このMCP12は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔(チャンネル)24が形成されたチャンネル部25と、チャンネル部25の外周を取り囲む周縁部26と、を備えて構成されている。チャンネル部25は、例えば、厚さ100〜2000μm、直径10〜120mmの円板状のガラス基板に対して、外周部から3mm程度の幅を有する周縁部26よりも内側の円形状の領域に内径2〜25μmのチャンネル24を多数形成することによって構成される。
【0032】
また、MCP12の入射側の表面12a及び出射側の裏面12bのそれぞれには、チャンネル部25に電圧を印加するための電極として機能する金属が蒸着等により形成されている(図示せず)。MCP12の表面12aの蒸着金属は、MCP12のMCP入力側電極(IN側電極)を構成する。裏面12bの蒸着金属は、MCP12のMCP出力側電極(OUT側電極)を構成する。そして、ここでのMCP12では、IN側電極51を介してMCP入力側電極に電圧が印加され、バイアス電極52を介してMCP出力側電極に電圧が印加される。
【0033】
このMCP12では、電極間、すなわち各チャンネル24の両端の図示しない電極(MCP12のMCP入力側電極及びMCP出力側電極)に1kV程度の高電圧が印加されると、チャンネル24内に軸方向に直交する電界が発生する。このとき、一端側からチャンネル24内に電子が入射すると、入射電子は電界からエネルギを付与され、チャンネル24内壁に衝突して二次電子が放出される。そして、このような衝突が多数回繰り返され、電子が指数関数的に増大されることによって電子増倍が行われ、当該電子増倍された電子が他端側から放出され出射される。
【0034】
図3に示すように、このMCP12は、絶縁性基板11の表面11aにおいて貫通孔16上に、当該貫通孔16と同軸で重なるように配置されている。つまり、MCP12は、貫通孔16の入射側である一方側(図示左側)に配置されている。このとき、MCP12はその裏面12の蒸着金属がMCP接続部21aと当接され、これにより、MCP12のMCP出力側電極が配線パターン20に電気的に接続されている。
【0035】
図1,3に示すように、シールド板13は、MCP12へ向かう余分な電子を遮蔽するシールド機能を有するものである。シールド板13は、厚さ方向から見てMCP12よりも大きい矩形板状の外形を呈しており、MCP12の表面12aよりも大きい表面13aを有している。このシールド板13は、高剛性で変形(撓みや反り等)し難い材料として、例えばステンレス等の金属で形成されている。
【0036】
また、シールド板13には、厚さ方向に延びる貫通孔27が形成されている。貫通孔27は、MCP12へ入射する電子を通過させる空間である。ここでの貫通孔27は、厚さ方向から見てMCP12よりも小径の円形状に形成されている。このシールド板13の裏面13bは、MCP12の取付面とされている。
【0037】
このシールド板13は、MCP12の表面12a側に重なるように配置されており、厚さ方向から見てMCP12を含んでいる。このとき、シールド板13の貫通孔27からMCP12の一部が露出されている。これと共に、シールド板13は、その裏面13bがMCP12の表面12aに当接され、当該表面12aのMCP入力側電極に電気的に接続されている。これにより、シールド板13はIN電極としても機能する。
【0038】
そしてこの状態で、シールド板13は、絶縁ネジN1及び導電ネジN2によって絶縁性基板11に締結されて固定されている。これにより、MCP12,12は、絶縁性基板11及びシールド板13によって厚さ方向に挟み込まれ、絶縁性基板11及びシールド板13に対し一体となるよう固定される。これと共に、導電ネジN2を介して、シールド板13と電気配線パターン22のシールド板接続部22bとが電気的に接続される。
【0039】
図3に示すように、センタリング基板14は、絶縁性基板11及びシールド板13間においてのMCP12の取付け位置を画定するものである。このセンタリング基板14は、絶縁性を有する材料で形成されている。センタリング基板14は、厚さ方向から見てMCP12の形状に対応する孔14xを有している。センタリング基板14は、その孔14x内にMCP12,12を配置させた状態で、絶縁性基板11及びシールド板13間に挟み込まれて固定されている。
【0040】
アノード15は、MCP12から放出された電子を検出し、当該検出に応じた出力信号を信号読出し端子19へと出力する出力読出系である。このアノード15は、図3に示すように、絶縁性基板11の裏面11bにおいて貫通孔16上に重なるよう配置されている。つまり、アノード15は、貫通孔16における入射側と反対側である他方側(図示右側)に配置されている。これにより、アノード15は、貫通孔16を介してMCP12に対向する。このアノード15は、アノード接続部22aに対し当接されて電気的に接続されていると共に、半田や導電性接着剤等の接合剤により絶縁性基板11に固定されている。
【0041】
以上のように構成され図6に示す電気回路を形成する電子増倍器100では、動作電源50によって高電圧がIN側電極51及びバイアス電極52に印加された状態において、電子がシールド板13の貫通孔27を介してMCP12,12に入射されると、この入射電子はMCP12,12にて増倍されながら進行し、MCP12の裏面12b側から取り出される。そして、増倍された電子がアノード15により検出され、当該検出に応じた出力信号が信号読出し端子19から読み出されることとなる。
【0042】
なお、IN側電極51及びバイアス電極52の少なくとも一方を導電性のリード線で構成し、当該リード線を介して外部電源と電気的に接続してもよいし、これらの少なくとも一方をクリップやコネクタ等の接続端子で構成してもよい。また、IN側電極51及びバイアス電極52にて外部電源と電気的に接続する代わりに、外部電源と電気的に接続された導電線を導電ネジN2やシールド板接続部22bに電気的に接続するように構成してもよい。また、MCP12のMCP出力側電極には、バイアス電極52から抵抗R2を介して電位を供給しているが、抵抗R2を介さずに電位を供給してもよい。
【0043】
以上において、外部電源と電気的に接続するIN側電極51、導電ネジN2及びシールド板接続部22bは、MCP12のMCP入力側電極に電位を供給する電圧供給端子として機能し、バイアス電極52は、MCP12のMCP出力側電極に電位を供給する電圧供給端子として機能する。
【0044】
ところで、従来の電子増倍器では、通常、立体構造で構成されることから、高電圧配線の立体的配置を考慮する必要があり、構造が複雑化し易い。さらに、従来の電子増倍器では、一般的に、高電圧を絶縁するために多くの部品が必要である。
【0045】
この点、本実施形態においては、配線が電気配線パターン20として絶縁性基板11に配置され、この絶縁性基板11にアノード15及びMCP12が実装されると共に、当該MCP12がシールド板13でシールドされ、そして、これらが一体に構成されている。これにより、次の作用効果が奏される。
【0046】
すなわち、部品点数の低減及び構成の簡易化が可能となり、軽量でコンパクトな検出器を実現することができ、材料費等を削減してコストダウンすることが可能となる。さらに、シールド板13によりMCP12のチャージアップ(つまり、MCP12が帯電し、その悪影響で入射電子や二次電子が偏向等してしまうこと)を抑制することができ、電子増倍器100の動作を安定化させて信頼性を高めることが可能となる。さらにまた、絶縁材料上にMCP12が配置されることになるため、高電圧の取扱いが容易となる。
【0047】
また、本実施形態の電気配線パターン20は、上述したように、抵抗R2が表面実装されたライン22eを有している。つまり、絶縁性基板11の電気配線パターン20上には、抵抗R2から成る第1ブリーダ回路部53が表面実装されており、当該第1ブリーダ回路部53を介して、MCP12のMCP出力側電極(他方側)がバイアス電極52に接続されている。これにより、MCP出力側電極用の電圧供給端子(例えば、後述のOUT側電極501)が不要となり、配線数を低減することが可能となる。さらには、第1ブリーダ回路部53を備えない場合(例えば、後述の電子増倍器500)に比べて、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0048】
ここで、MCP12の特性は、MCP12の電位Vmcpと、MCP12の出力側及びアノード15間電位Vout−anodeと、によって変化することが見出される。具体的には、電位Vmcpはゲインの変化に主に寄与し、電位Vout−anodeは出力波形の半値幅及びゲインの変化に主に寄与することが見出される。そして、本実施形態のように抵抗R2から成る第1ブリーダ回路部53を有する場合、これらの電位Vmcp,Vout−anodeは、MCP12と抵抗R2との各抵抗値によって定められる(例えば、下式(1),(2)参照)。よって、MCP12の抵抗値にバラツキがあると抵抗R2に生じる電圧も変化し、その結果、アノード15からの出力信号の特性が大きく異なるおそれがある。
MCP12の抵抗値(20MΩ):抵抗R2の抵抗値(5MΩ)
=Vmcp(2kV):Vout−anode(500V) …(1)
MCP12の抵抗値(80MΩ):抵抗R2の抵抗値(5MΩ)
=Vmcp(2353V):Vout−anode(147V) …(2)
ここで、上式(1),(2)では、供給電圧が2.5kVとされている。
【0049】
そこで、本実施形態では、上述したように、電気配線パターン20上にて抵抗R1が表面実装されたライン22fを設けている。つまり、MCP12の抵抗値より低い抵抗値の抵抗R1から成る第2ブリーダ回路部54を、MCP12と並列に挿入している、これにより、MCP12及び抵抗R1の合成抵抗値は抵抗R1が支配的なものになるため、電位Vmcpと電位Vout−anodeとの電圧比率が抵抗R1,R2の抵抗値の比率で決定されることとなる。その結果、MCP12の抵抗値が変化した場合でも、電位Vmcpと電位Vout−anodeとの変化を抑制することができ、出力信号を安定化させて安定動作を見込むことが可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、上述したように、絶縁性基板11に固定孔18が設けられていることから、電子増倍器100を容易且つ好適に固定し保持することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、上述したように、MCP12の入射面側の表面12aに金属で形成されたシールド板13が設置され、このシールド板13の裏面13bがMCP12の取付面とされている。よって、MCP12に剛性及び平坦性を付与し、絶縁性基板11が変形し易いものであっても、MCP12表面の平坦度を高めること(例えば30μm以下とする)ことができ、MCP12の特性改善が可能となる。
【0052】
また、上記実施形態では、カップリングコンデンサとしてコンデンサC1が表面実装されており、アノード15からの出力信号をGNDとする、すなわち、基準電位との電位差0Vとすることができる。これにより、高速性を損なうことなく出力信号を後段の処理系に転送することが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態の電子増倍器100は、上記に限定されるものではない。例えば、図7(a)に示すように、シールド板13の貫通孔27が厚さ方向から見て矩形形状に形成されていてもよい。また、図7(b)に示すように、シールド板13が円形板状の外形を呈していてもよい。さらにまた、図7(c)に示すように、厚さ方向から見て、シールド板13を絶縁性基板11よりも大きくされ、シールド板13が絶縁性基板11を含むように形成されていてもよい。換言すると、絶縁性基板11がシールド板13よりも小さくされ、絶縁性基板11がシールド板13に含まれるように形成されていてもよい。
【0054】
また、本実施形態の電子増倍器100では、筐体等に固定するための固定孔18が絶縁性基板11に設けられているが、図8に示すように、固定孔18がシールド板13に設けられていてもよい。この場合でも、電子増倍器100を容易且つ好適に固定し保持することができる。
【0055】
さらには、図9に示すように、電子増倍器100を固定するために、絶縁性基板11がソケット60に差込み可能に構成されていてもよい。このとき、図示するように、ソケット60が電子増倍器100と電気的に接続可能とされていてもよい。具体的には、信号読出し端子19が絶縁性基板11の長手方向(図示上下方向)の端部に設けられ、その向きが絶縁性基板11の長手方向に沿った方向とされている。ソケット60には、信号読出し端子19に対応する形状の凹部61が形成されている。そして、絶縁性基板11がソケット60に差し込まれたとき、凹部61内に信号読出し端子19が進入され、当該凹部61により信号読出し端子19がソケット60に電気的に接続可能とされている。この場合、ソケット60は、電子増倍器100に対する電気配線及び固定を兼ねることとなる。
【0056】
また、図10に示すように、信号読出し端子19が裏面11bに垂直になるように設けられ、信号読出し端子19の向きが絶縁性基板11の厚さ方向に沿った方向(裏面11bの直交方向)とされていてもよい。
【0057】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0058】
図11〜13に示すように、本実施形態の電子増倍器200が上記電子増倍器100と異なる点は、絶縁性基板11の電気配線パターン22がIN側電極51(図2参照)を備えず、外部の筐体251をシールド板13に接続してMCP12へ供給する高電圧をシールド板13に直接印加する点である。
【0059】
以上、本実施形態でも、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、上述したように、電気配線パターン22上のIN側電極51を不要にでき、電源供給配線を最小に抑えることが可能となる。
【0060】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0061】
図14,15に示すように、本実施形態の電子増倍器300が上記電子増倍器100と異なる点は、絶縁性基板11(図1,3参照)に代えて絶縁性基板311を備えた点である。絶縁性基板311は、厚さ方向から見てシールド板13よりも小さく、シールド板13に含まれるように形成されている。具体的には、絶縁性基板311は、側方から見てL字状に屈折する屈折板とされ、平行部312及び垂直部313を有している。
【0062】
平行部312は、シールド板13に対し平行に延在している。平行部312は、シールド板13の表面13aよりも小さい面積の表面312aを有しており、厚さ方向から見てシールド板13に含まれるように形成されている。この平行部312には、上記貫通孔16が形成されている。垂直部313は、平行部312の一端部に連続し、当該平行部312に対し垂直に延在している。垂直部313の一側面側には、上記信号読出し端子19が設けられている。なお、信号読出し端子19は、絶縁性基板311(平行部312及び垂直部313)の表面又は裏面に設けられていてもよい。
【0063】
以上、本実施形態でも、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、上述したように、絶縁性基板11が厚さ方向から見てシールド板13に含まれるよう形成されていることから、厚さ方向視における専有面積を小さくすることができる。これと共に、シールド板13により絶縁性基板11のチャージアップをも抑制することができ、電子増倍器300の動作を一層安定化させることが可能となる。
【0064】
なお、本実施形態の電子増倍器300は、上記に限定されるものではない。例えば、図16(a)に示すように、絶縁性基板311は、側方から見てU字状に屈折する屈折基板とされ、第1及び第2平行部321,322及び垂直部(交差部)323を有していてもよい。
【0065】
第1及び第2平行部321,322は、シールド板13に対し平行に延在しており、厚さ方向から見てシールド板13に含まれるように形成されている。第1平行部321には、上記貫通孔16が形成されている。第1平行部321の裏面(第2平行部322側の面)321bにおいて貫通孔16上には、アノード15が重なるように配置されている。第2平行部322は、第1平行部321のアノード15側(図示右側:他方側)に所定距離離間して配置されている。この第2平行部322の一側面側には、上記信号読出し端子19が設けられている。
【0066】
垂直部323は、第1及び第2平行部321,322の一端部に連続し、これらを連結するように当該第1及び第2平行部321,322に対して垂直に延在(交差)している。また、第1及び第2平行部321,322の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱301が介在されており、この支柱301により第2平行部322が第1平行部321に支持され固定されている。
【0067】
或いは、図16(b)に示すように、絶縁性基板311は、第1及び第2基板331,332を有する積層構造で構成されていてもよい。この場合、第1及び第2基板331,332は、シールド板13に対し平行に延在しており、厚さ方向から見てシールド板13に含まれるように形成されている。
【0068】
そして、第1基板331には、上記貫通孔16が形成されている。第1基板331の裏面(第2基板332側の面)331bにおいて貫通孔16上には、アノード15が重なるよう配置されている。第2基板332は、第1基板331のアノード15側(図示右側:他方側)に所定距離離間して配置されている。この第2基板332の一側面側には、上記信号読出し端子19が設けられている。また、第1及び第2基板331,332の間には、絶縁性又は導電性を有する複数の支柱301が介在されており、これら複数の支柱301により第2基板332が第1基板331に支持され固定されている。
【0069】
さらに或いは、図16(c)に示すように、絶縁性基板311は、アノード15を基板に作り込んだ多重基板で構成してもよい。この場合、絶縁性基板311は、第1及び第2基板341,342を有する積層構造で構成され、第1及び第2基板341,342は、シールド板13に対し平行に延在しており、厚さ方向から見てシールド板13に含まれるように形成されている。
【0070】
そして、第1基板341には、上記貫通孔16が形成されている。第2基板342は、第1基板341の他方側(図示右側:他方側)に所定距離離間して配置されている。第2基板342の第1基板341側の表面342aにおいて貫通孔16上には、アノード15が表面実装されている。この第2基板342の一側面側には、上記信号読出し端子19が設けられている。また、これら第1及び第2基板341,342は、ネジN1,N2により互いに固定されている。これにより、第1及び第2基板341,342の支持及び固定に関して、上記支柱301を省略することができる。
【0071】
なお、ここでは、第1基板341及び第2基板342を所定距離離間して配置する構成としたが、第1基板341及び第2基板342を直接重ねるように配置してもよいし、第1基板341及び第2基板342を多層積層基板として一体形成してもよい。
【0072】
ちなみに、このとき好ましいとして、第2基板342の裏面(第1基板341側と反対側の表面)342b上には、当該裏面342bを覆うようにノイズシールド部303が形成されている。これにより、ノイズによる悪影響を低減することができる。ちなみに、例えばノイズによる悪影響が少ない場合等には、ノイズシールド部303が設けられない場合もある。
【0073】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0074】
図17に示すように、本実施形態の電子増倍器400が上記電子増倍器100と異なる点は、電気配線パターン22がライン22f及び抵抗R1(図6参照)を備えない点、すなわち、電気配線パターン22上に第2ブリーダ回路部54が表面実装されていない点である。
【0075】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化することが可能となる。
【0076】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0077】
図18,19に示すように、本実施形態の電子増倍器500が上記電子増倍器100と異なる点は、電気配線パターン22上に第1及び第2ブリーダ回路部53,54が表面実装されていない点である。すなわち、電子増倍器500は、電気配線パターン22がライン22f及び抵抗R1,R2(図6参照)を備えない一方、電気配線パターン22がOUT側電極501をさらに備え、ライン22eが分断されている。
【0078】
ライン22eは、固定孔17cとバイアス電極52との間にてライン22e1,22e2に分断されている。OUT側電極501は、固定孔17c側のライン22e1に表面実装されている。これにより、OUT側電極501は、MCP12のMCP出力側電極に電気的に接続され、当該MCP12のMCP出力側電極に電位を供給する電圧供給端子として機能する。
【0079】
なお、OUT側電極501は、導電性のリード線で構成され、当該リード線を介して外部電源と電気的に接続されていてもよい。また、OUT側電極501は、クリップやコネクタ等の接続端子で構成されていてもよい。さらにまた、OUT側電極501にて外部電源と電気的に接続する代わりに、外部電源と電気的に接続された導電線をライン22e1に電気的に接続するように構成してもよい。
【0080】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化することが可能となる。
【0081】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0082】
図20,21に示すように、本実施形態の電子増倍器600は、いわゆるGND型の回路構成を有している。この電子増倍器600が上記電子増倍器100と異なる点は、電気配線パターン22がバイアス電極52、コンデンサC1及び抵抗R3を備えない点である。
【0083】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化すると共に、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0084】
[第7実施形態]
次に、第7実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0085】
図22に示すように、本実施形態の電子増倍器700は、いわゆるGND型の回路構成を有している。この電子増倍器700が上記電子増倍器200と異なる点は、電気配線パターン22がバイアス電極52、コンデンサC1及び抵抗R3を備えない点である。
【0086】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化すると共に、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0087】
[第8実施形態]
次に、第8実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第4実施形態と異なる点について主に説明する。
【0088】
図23に示すように、本実施形態の電子増倍器800は、いわゆるGND型の回路構成を有している。この電子増倍器800が上記電子増倍器400と異なる点は、電気配線パターン22がバイアス電極52、コンデンサC1及び抵抗R3を備えない点である。
【0089】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化すると共に、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0090】
[第9実施形態]
次に、第9実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、上記第5実施形態と異なる点について主に説明する。
【0091】
図24に示すように、本実施形態の電子増倍器900は、いわゆるGND型の回路構成を有している。この電子増倍器900が上記電子増倍器500と異なる点は、電気配線パターン22がバイアス電極52、コンデンサC1及び抵抗R3を備えない点である。
【0092】
このような本実施形態においても、コストダウンし且つ信頼性を高めるという上記作用効果が奏される。また、本実施形態では、回路構成を簡易化すると共に、動作電源50の数を少なくすることができる。
【0093】
以上において好適な実施形態について説明したが、実施形態に係る電子増倍器は上記に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0094】
例えば上記実施形態では、電子を増倍して検出したが、イオンをはじめ、紫外線、真空紫外線、中性子線、X線及びγ線等を増倍して検出することもできる。また、上記実施形態では、抵抗R2に代えて、ツェナーダイオード等の定電圧素子を取り付けてもよい。この場合、定電圧素子からの放熱促進のために絶縁性基板11の熱伝導率を高めることが好ましい。
【0095】
また、上記実施形態では、ガラスエポキシで絶縁性基板11を形成しているが、超耐熱高分子樹脂(例えばPEEK材:poly ether ether ketone)や無機材料のセラミック等で絶縁性基板11を形成してもよい。この場合、絶縁性基板11から発生するガスを低減して長寿命化を実現すると共に放出ガスを感知することによるノイズを低減することができる。特に、絶縁性基板11にセラミックを使用すると、熱伝導が優れるために効果的な冷却が可能となる。
【0096】
また、上記実施形態では、2枚のMCP12を備えているが、MCP12の枚数は限定されず、1枚又は3枚以上のMCP12を備えていてもよい。また、MCP12を絶縁性基板11に直接貼り付けてもよく、これにより、部品点数をさらに削減することができる。また、絶縁性基板11,311の厚さを所定厚さ以上に厚くしてもよく、これにより、絶縁性基板の変形を防止することができる。
【0097】
なお、絶縁性基板11の裏面11bに切欠溝を形成し、この切欠溝上に電気配線パターン20を設けてもよい。この場合、電気配線パターン20の表面距離を延ばし、耐電圧リークを抑制することができる。
【0098】
また、上記実施形態は、1つのアノード15を備えたシングルアノード型の電子増倍器であるが、複数のアノード15を備えたマルチアノード型の電子増倍器であってもよい。この場合、入射電子の2次元位置を検出することが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
11,311…絶縁性基板、12…MCP(マイクロチャンネルプレート)、13…シールド板(金属板)、15…アノード、16…貫通孔、18…固定孔、19…信号読出し端子、20,21,22…電気配線パターン、27…貫通孔、52…バイアス電極(電圧供給端子)、53…第1ブリーダ回路部、54…第2ブリーダ回路部、100,200,300,400,500,600,700,800,900…電子増倍器、301…支柱、303…ノイズシールド部、321…第1平行部、322…第2平行部、323…垂直部(交差部)、331,341…第1基板、332,342…第2基板、N2…導電ネジ(締結部材)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気配線パターンを有し、厚さ方向に延びる貫通孔が形成された絶縁性基板と、
前記厚さ方向における前記絶縁性基板の貫通孔の一方側に配置され、前記電気配線パターンに電気的に接続されたマイクロチャンネルプレートと、
前記厚さ方向における前記マイクロチャンネルプレートの一方側に配置され、前記マイクロチャンネルプレートに電気的に接続された金属板と、
前記厚さ方向における前記絶縁性基板の貫通孔の他方側に配置され、前記電気配線パターンに電気的に接続されたアノードと、
前記絶縁性基板に固定され、前記電気配線パターンを介して前記アノードから信号を読み出すための信号読出し端子と、を備え、
前記金属板は、前記厚さ方向から見て前記マイクロチャンネルプレートを含むように形成されていると共に、前記金属板には、前記マイクロチャンネルプレートの少なくとも一部を露出させる貫通孔が形成され、
前記絶縁性基板、前記マイクロチャンネルプレート、前記金属板及び前記アノードは、一体となるように互いに固定されていることを特徴とする電子増倍器。
【請求項2】
前記電気配線パターンにおいては、前記マイクロチャンネルプレートの出力側が、第1ブリーダ回路部を介して、前記マイクロチャンネルプレートの他方側に電気的に接続される電圧供給端子に接続されていることを特徴とする請求項1記載の電子増倍器。
【請求項3】
前記電気配線パターンにおいては、前記マイクロチャンネルプレートの抵抗値よりも低い抵抗値を有する第2ブリーダ回路部が、前記マイクロチャンネルプレートに対し並列になるように接続されていることを特徴とする請求項2記載の電子増倍器。
【請求項4】
前記金属板は、前記マイクロチャンネルプレートの一方側へ供給する電圧が印加されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項5】
前記金属板は、前記厚さ方向から見て、前記絶縁性基板を含むように形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項6】
前記マイクロチャンネルプレートは、前記絶縁性基板及び前記金属板によって挟まれることで前記絶縁性基板及び前記金属板に固定されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項7】
前記金属板は、導電性の締結部材によって、前記絶縁性基板に固定され且つ前記電気配線パターンに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項8】
前記アノードは、導電性の接合剤によって、前記絶縁性基板に固定され且つ前記電気配線パターンに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項9】
前記絶縁性基板及び前記金属板の少なくとも一方には、外部と固定するための固定孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項10】
前記絶縁性基板は、前記金属板に対し平行に延在する第1平行部と、前記厚さ方向における前記第1平行部の他方側に積層するように配置された第2平行部と、前記第1及び第2平行部を連結するように当該第1及び第2平行部に対して交差する交差部と、を少なくとも含む屈折基板であり、
前記絶縁性基板の貫通孔は、前記第1平行部に形成され、
前記アノードは、前記第1平行部において前記第2平行部側の表面上に設けられ、
前記第1及び第2平行部の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱が介在されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項11】
前記絶縁性基板は、第1基板と、前記厚さ方向における前記第1基板の他方側に積層するように配置された第2基板と、を少なくとも含み、
前記絶縁性基板の貫通孔は、前記第1基板に形成され、
前記アノードは、前記第1基板において前記第2基板側の表面上に設けられ、
前記第1及び第2基板の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱が介在されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項12】
前記絶縁性基板は、第1基板と、前記厚さ方向における前記第1基板の他方側に積層するように配置された第2基板と、を少なくとも含む多重基板であり、
前記絶縁性基板の貫通孔は、前記第1基板に形成され、
前記アノードは、前記第2基板において前記第1基板側の表面上に設けられていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項13】
前記第2基板において前記第1基板側と反対側の表面上には、ノイズシールド部が形成されていることを特徴とする請求項12記載の電子増倍器。
【請求項1】
電気配線パターンを有し、厚さ方向に延びる貫通孔が形成された絶縁性基板と、
前記厚さ方向における前記絶縁性基板の貫通孔の一方側に配置され、前記電気配線パターンに電気的に接続されたマイクロチャンネルプレートと、
前記厚さ方向における前記マイクロチャンネルプレートの一方側に配置され、前記マイクロチャンネルプレートに電気的に接続された金属板と、
前記厚さ方向における前記絶縁性基板の貫通孔の他方側に配置され、前記電気配線パターンに電気的に接続されたアノードと、
前記絶縁性基板に固定され、前記電気配線パターンを介して前記アノードから信号を読み出すための信号読出し端子と、を備え、
前記金属板は、前記厚さ方向から見て前記マイクロチャンネルプレートを含むように形成されていると共に、前記金属板には、前記マイクロチャンネルプレートの少なくとも一部を露出させる貫通孔が形成され、
前記絶縁性基板、前記マイクロチャンネルプレート、前記金属板及び前記アノードは、一体となるように互いに固定されていることを特徴とする電子増倍器。
【請求項2】
前記電気配線パターンにおいては、前記マイクロチャンネルプレートの出力側が、第1ブリーダ回路部を介して、前記マイクロチャンネルプレートの他方側に電気的に接続される電圧供給端子に接続されていることを特徴とする請求項1記載の電子増倍器。
【請求項3】
前記電気配線パターンにおいては、前記マイクロチャンネルプレートの抵抗値よりも低い抵抗値を有する第2ブリーダ回路部が、前記マイクロチャンネルプレートに対し並列になるように接続されていることを特徴とする請求項2記載の電子増倍器。
【請求項4】
前記金属板は、前記マイクロチャンネルプレートの一方側へ供給する電圧が印加されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項5】
前記金属板は、前記厚さ方向から見て、前記絶縁性基板を含むように形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項6】
前記マイクロチャンネルプレートは、前記絶縁性基板及び前記金属板によって挟まれることで前記絶縁性基板及び前記金属板に固定されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項7】
前記金属板は、導電性の締結部材によって、前記絶縁性基板に固定され且つ前記電気配線パターンに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項8】
前記アノードは、導電性の接合剤によって、前記絶縁性基板に固定され且つ前記電気配線パターンに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項9】
前記絶縁性基板及び前記金属板の少なくとも一方には、外部と固定するための固定孔が設けられていることを特徴とする請求項1〜8の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項10】
前記絶縁性基板は、前記金属板に対し平行に延在する第1平行部と、前記厚さ方向における前記第1平行部の他方側に積層するように配置された第2平行部と、前記第1及び第2平行部を連結するように当該第1及び第2平行部に対して交差する交差部と、を少なくとも含む屈折基板であり、
前記絶縁性基板の貫通孔は、前記第1平行部に形成され、
前記アノードは、前記第1平行部において前記第2平行部側の表面上に設けられ、
前記第1及び第2平行部の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱が介在されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項11】
前記絶縁性基板は、第1基板と、前記厚さ方向における前記第1基板の他方側に積層するように配置された第2基板と、を少なくとも含み、
前記絶縁性基板の貫通孔は、前記第1基板に形成され、
前記アノードは、前記第1基板において前記第2基板側の表面上に設けられ、
前記第1及び第2基板の間には、絶縁性又は導電性を有する支柱が介在されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項12】
前記絶縁性基板は、第1基板と、前記厚さ方向における前記第1基板の他方側に積層するように配置された第2基板と、を少なくとも含む多重基板であり、
前記絶縁性基板の貫通孔は、前記第1基板に形成され、
前記アノードは、前記第2基板において前記第1基板側の表面上に設けられていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項記載の電子増倍器。
【請求項13】
前記第2基板において前記第1基板側と反対側の表面上には、ノイズシールド部が形成されていることを特徴とする請求項12記載の電子増倍器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−252879(P2012−252879A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124561(P2011−124561)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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