説明

電子楽器の放熱構造

【課題】 火傷などに対する安全性が高く、且つ楽器ケースの外観やデザインを損なわず、回路基板の熱を楽器ケースの外部に効率良く放熱できる電子楽器の放熱構造を提供する。
【解決手段】 上部ケース3に譜面立て部材10を取り付けための取付溝部11を設け、この取付溝部11の底部12に開口部12aを回路基板13に設けられたヒートシンク16に対応させて設けた。従って、回路基板13で発生した熱をヒートシンク16で放熱すると、この放熱された熱を上部ケース3の取付溝部11における底部12の開口部12aを通して上部ケース3の上方に放熱することができる。このため、回路基板13で発生した熱を効率良く楽器ケース1の外部に放熱することができると共に、譜面立て部材10を取り付けるための取付溝部11を利用していることにより、火傷などに対する安全性が高く、且つ外観的にもデザイン的にも好ましいものを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの電子楽器の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの電子楽器においは、特許文献1に記載されているように、楽器ケース内に設けられた回路基板に放熱板を設け、この放熱板によって回路基板の熱を楽器ケースの外部に放熱するように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−170477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の電子楽器においては、放熱板によって回路基板の熱を楽器ケースの外部に放熱するために、楽器ケースに多数の放熱孔を設け、この多数の放熱孔を通して放熱板で放熱された熱を楽器ケースの外部に放熱する構成であるから、楽器ケースに設けられた多数の放熱孔に指や手が触れ易いため、火傷をする危険性があるほか、多数の放熱孔が楽器ケースの外部から見え易く、楽器ケースの外観が損なわれるため、外観的にもデザイン的にも好ましくないという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、火傷などに対する安全性が高く、且つ楽器ケースの外観およびデザインを損なうことなく、回路基板の熱を楽器ケースの外部に効率良く放熱することができる電子楽器の放熱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、楽器ケース内に設けられた回路基板にヒートシンクを設け、このヒートシンクによって前記回路基板の熱を放熱する電子楽器の放熱構造において、前記楽器ケースに譜面立て部材を取り付けための取付溝部を設け、この取付溝部の底部に、前記楽器ケースの内外に貫通する開口部を、前記回路基板に設けられた前記ヒートシンクに対応させて設けたことを特徴とする電子楽器の放熱構造である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記取付溝部における前記開口部に対応する箇所の底部に、前記ヒートシンクの熱を前記開口部に導いて放熱する放熱板が、前記ヒートシンクに対応して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子楽器の放熱構造である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記放熱板に、その上下に貫通する孔部が、前記取付溝部の前記開口部に対応して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子楽器の放熱構造である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、前記取付溝部内に、その内部に挿入した前記譜面立て部材の取付挿入部とこれに対向する前記取付溝部の内面との間に隙間を形成するためのリブ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子楽器の放熱構造である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記譜面立て部材に、前記放熱板で放熱された熱を伝導して放熱する熱伝導板が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電子楽器の放熱構造である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、回路基板で発生した熱をヒートシンクで放熱すると、この放熱された熱を楽器ケースの取付溝部における底部の開口部を通して楽器ケースの外部に放熱することができる。このため、回路基板の熱を楽器ケースの外部に効率良く放熱することができると共に、譜面立て部材を取り付けるための取付溝部を利用していることにより、取付溝部における底部の開口部に指や手が触れ難くいため、火傷などに対する安全性が高く、且つ取付溝部における底部の開口部が楽器ケースの外部から見え難く、楽器ケースの外観およびデザインが損なわれることがないため、外観的にもデザイン的にも好ましいものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1の平面図である。
【図2】図1の電子鍵盤楽器のA−A矢視における拡大断面図である。
【図3】図1の電子鍵盤楽器において上部ケースを取り除いた状態を示した平面図である。
【図4】図3のA部を示した拡大平面図である。
【図5】図2のB部を示した拡大断面図である。
【図6】図4のB−B矢視における拡大断面図である。
【図7】図4の放熱板を示した拡大平面図である。
【図8】図5の要部を更に拡大して示した断面図である。
【図9】図2の譜面立て部材を示し、(a)はその正面図、(b)はそのC−C矢視における断面図である。
【図10】図5において譜面立て部材を取り外した場合における放熱状態を示した要部の拡大断面図である。
【図11】実施形態1の譜面立て部材の第1変形例を示し、(a)はその正面図、(b)はそのD−D矢視における断面図である。
【図12】この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2において要部を示した拡大断面図である。
【図13】図12の要部を更に拡大して示した断面図である。
【図14】図12の譜面立て部材の取付挿入部を分解して示した拡大断面図である。
【図15】図14の第2の熱伝導部材を示した拡大斜視図である。
【図16】図12の譜面立て部材を示し、(a)はその正面図、(b)はそのE−E矢視における断面図である。
【図17】実施形態2の第2の熱伝導部材の第2変形例を示し、(a)はその正面図、(b)はそのF−F矢視における断面図である。
【図18】この発明を電子鍵盤楽器に適用した第3変形例を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
以下、図1〜図10を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態1について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1および図2に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、下部ケース2と上部ケース3とからなり、全体が横長のほぼ箱形状に形成されている。
【0014】
すなわち、下部ケース2は、図1〜図3に示すように、上方に開放された横方向(図1では左右方向)に細長い箱形状に形成されている。上部ケース3は、図1および図2に示すように、下部ケース2における後部側に対応するほぼ半分の大きさで、下側に開放された細長いほぼ箱形状に形成されて、下部ケース2の上部に取り付けられるように構成されている。
【0015】
この場合、上部ケース3の長手方向(図1では左右方向)における両側部には、図1に示すように、上部ケース3の前端部(図1では手前側の端部)から下部ケース2の前端部に延びる一対のカバー部3aが設けられている。これにより、楽器ケース1は、下部ケース2上に上部ケース3が取り付けられた状態で、上部ケース3および両側の一対のカバー部3aを除いて、下部ケース2が上側に開放された構成になっている。
【0016】
この楽器ケース1内には、図1〜図3に示すように、鍵盤部4が設けられている。この鍵盤部4は、図2に示すように、楽器ケース1の下部ケース2内に配置された鍵盤シャーシ5と、この鍵盤シャーシ5上に上下方向に回転可能に取り付けられた複数の鍵6とを備えている。この場合、複数の鍵6は、白鍵と黒鍵とからなり、これらが鍵盤シャーシ5上に音階順に配列された状態で、楽器ケース1の開放された部分から上側に露出するように構成されている。
【0017】
また、この楽器ケース1には、図1に示すように、スピーカ部7、表示部8、およびスイッチ部9が設けられている。スピーカ部7は、楽音を発音するためのものであり、図1に示すように、鍵盤部4の後部側に位置する上部ケース3内の両側に設けられている。表示部8は、楽音情報を表示するものであり、上部ケース3の上面におけるほぼ中央部に設けられている。スイッチ部9は、音量調整や音色選択などの各種のスイッチを備え、上部ケース3におけるスピーカ部7および表示部8を除く箇所に分散して設けられている。
【0018】
また、上部ケース3の上面における後部(図1では上辺部)には、図1および図2に示すように、譜面立て部材10を着脱可能に取り付けるための取付溝部11が設けられている。この取付溝部11は、図1および図2に示すように、上部ケース3の後辺部(図1では上辺部)に沿って細長く形成された凹溝であり、その底部12における中間部分のみに開口部12aが上部ケース3の上下方向に貫通して設けられた構成になっている。
【0019】
さらに、この上部ケース3内における後部には、図3に示すように、複数の回路基板13、14が鍵盤部4の後方に位置した状態で、譜面立て部材10の取付溝部11に沿って設けられている。すなわち、この複数の回路基板13、14は、図2および図5に示すように、上部ケース3内における下面に設けられた複数の取付ボス15にビス15aによってほぼ水平な状態でそれぞれ取り付けられている。
【0020】
この複数の回路基板13、14のうち、1つの回路基板13は、楽器全体を電気的に制御駆動するためのメイン基板であり、他の回路基板14は、補助的な回路基板である。メインの回路基板13には、図2〜図5に示すように、回路基板13の熱を放熱すためのヒートシンク16が、上部ケース3の取付溝部11における底部12の開口部12aに対応した状態で、その下側に設けられている。
【0021】
これにより、ヒートシンク16は、図10に示すように、放熱した熱が上部ケース3の取付溝部11における底部12の開口部12aを通して上部ケース3の上方に放熱されるように構成されている。この場合、取付溝部11の開口部12aに対応する箇所の底部12の下面には、図2〜図5に示すように、放熱板17がヒートシンク16に対応して設けられている。
【0022】
この放熱板17は、熱伝導性の高い金属板からなり、図3および図4に示すように、ヒートシンク16の上面全体の大きさよりも少し大きい長方形状に形成されている。すなわち、この放熱板17は、図4および図7に示すように、取付溝部11の長手方向に沿う長さが開口部12aの長さとほぼ同じ長さで、且つ取付溝部11の長手方向と直交する方向の長さが開口部12aの幅の4倍程度の長さのほぼ長方形状に形成されている。
【0023】
この場合、放熱板17における取付溝部11の底部12の開口部12aに対応する箇所には、図4および図7に示すように、一対の取付突起部17aが放熱板17の横方向(図4では左右方向)における両側に突出して設けられている。この一対の取付突起部17aは、図6に示すように、取付溝部11の底部12における開口部12aに沿って、その両側に延び、この延びた両端部が下側に向けてほぼL字形状に折り曲げられて、取付溝部11の底部12の下側に配置されるように構成されている。
【0024】
この放熱板17は、図4〜図6に示すように、そのほぼ長方形状の四隅が上部ケース3内における下面に設けられた4つの取付ボス18aにビス19によってそれぞれ取り付けられている。また、この放熱板17は、一対の取付突起部17aが取付溝部11の開口部12aの両側に位置する底部12の下面に設けられた取付ボス18bにビス19によって取り付けられている。
【0025】
これにより、この放熱板17は、図10に示すように、ヒートシンク16で放熱された熱を取付溝部11の開口部12aに向けて伝導し、この伝導した熱を取付溝部11における底部12の開口部12aから取付溝部11内に向けて放熱するように構成されている。すなわち、この放熱板17は、図10に示すように、取付溝部11における底部12の開口部12aに対応する箇所が取付溝部17内を通して楽器ケース1の外気によって冷やされることにより、ヒートシンク16で放熱された熱を取付溝部11の開口部12aに向けて伝導するように構成されている。
【0026】
また、この放熱板17における取付溝部11における底部12の開口部12aに対応する箇所には、図4および図7に示すように、一対の取付突起部17aの両端部を除いて、多数の小孔20がパンチング加工やプレス加工によって上下に貫通して形成されている。これにより、放熱板17は、取付溝部11の底部12における開口部12aに対応する箇所の表面積が、多数の小孔20によって十分に広くなるよう構成されている。
【0027】
一方、取付溝部11には、図2および図5に示すように、譜面立て部材10の下部に位置する取付挿入部10aが挿入することにより、譜面立て部材10が楽器ケース1上に起立した状態で取り付けられるように構成されている。この場合、取付溝部11内には、図8に示すように、譜面立て部材10の取付挿入部10aとこれに対向する取付溝部11の内面との間に隙間Sを形成するためのリブ部21が設けられている。
【0028】
これにより、取付溝部11は、図5および図8に示すように、その内部に譜面立て部材10の取付挿入部10aが挿入されても、この取付挿入部10aとこれに対向する取付溝部11の内面との間に設けられた隙間Sを通して取付溝部11内に放熱された熱を上部ケース3の上方に放熱するように構成されている。
【0029】
ところで、譜面立て部材10は、図2、図5および図9に示すように、取付溝部11内から上部ケース3の前側上方に向けて少し湾曲して取付溝部11内に挿脱可能に挿入する取付挿入部10aと、この取付挿入部10aの上端部から上部ケース3の後部側に向けて斜め下側に傾斜する譜面受け部10bと、この譜面受け部10bの後端部から上部ケース3の斜め後側上方に向けて延びた譜面立て掛け部10cとを備えている。
【0030】
これにより、譜面立て部材10は、図2、図5および図9に示すように、その下部の取付挿入部10aを上部ケース3の取付溝部11内に上方から挿入することにより、譜面立て掛け部10cが上部ケース3の後部側に傾いた状態で、上部ケース3上に起立して取り付けられ、この状態で譜面受け部10b上に譜面(図示せず)を載せて譜面立て掛け部10cに立てかけることにより、譜面が配置されるように構成されている。
【0031】
次に、このような電子鍵盤楽器の放熱構造の作用について説明する。
まず、譜面立て部材10を用いずに演奏する場合について説明する。この場合には、図10に示すように、上部ケース3に設けられた取付溝部11が上部ケース3の上方に開放されている。この状態で回路基板13が発熱すると、その熱がヒートシンク16によって楽器ケース1内で放熱される。
【0032】
このヒートシンク16で放熱された熱は、図10に示すように、その上側に配置された放熱板17に伝わり、この放熱板17によって上部ケース3の取付溝部11に向けて伝導される。すなわち、この放熱板17は、取付溝部11の底部12に設けられた開口部12aに対応して配置されているので、取付溝部11における底部12の開口部12aを通過した楽器ケース1の外気によって冷やされることにより、放熱板17の熱を取付溝部11における底部12の開口部12aに向けて伝達する。
【0033】
これにより、放熱板17は、ヒートシンク16で放熱された熱を取付溝部11における底部12の開口部12aに向けて放熱する。この場合、放熱板17には、多数の小孔20が取付溝部11における底部12の開口部12aに対応して設けられていることにより、この部分における放熱板17の表面積を多数の小孔20によって十分に広くすることができるので、多数の小孔20が設けられた箇所の放熱板17の熱交換性を高めることができる。
【0034】
このため、取付溝部11における底部12の開口部12aを通過した楽器ケース1の外気によって、多数の小孔20が設けられた箇所の放熱板17が十分に冷やされる。これにより、ヒートシンク16で放熱された熱が、放熱板17によって取付溝部11における底部12の開口部12aに向けて効率良く確実に導かれる。
【0035】
この導かれた熱は、多数の小孔20aが設けられた箇所の放熱板17の全表面から取付溝部11における底部12の開口部12aを通して取付溝部11内に放熱される。また、ヒートシンク16で放熱された熱のうち、一部の熱は、放熱板17の多数の小孔20をそのまま通過して取付溝部11の開口部12aを通して取付溝部11内に放熱される。このように取付溝部11内に放熱された熱は、取付溝部11内を通して上部ケース3の上方に放熱される。
【0036】
次に、上部ケース3の取付溝部11に譜面立て部材10を取り付けて演奏する場合にいて説明する。この場合には、譜面立て部材10の取付挿入部10aを上部ケース3の取付溝部11に挿入すると、譜面立て部材10が上部ケース3に起立して取り付けられる。この状態では、取付溝部11内に設けられたリブ部21によって、取付溝部11の内面と譜面立て部材10の取付挿入部10aとの間に隙間Sが形成される。
【0037】
このため、演奏中に回路基板13が発熱すると、上述したように、その熱がヒートシンク16および放熱板17を経て取付溝部11内に放熱される。このとき、取付溝部11内に放熱された熱は、取付溝部11内に譜面立て部材10の取付挿入部10aが挿入されていても、譜面立て部材10の取付挿入部10aとこれに対向する取付溝部11の内面との間に設けられた隙間Sを通して上部ケース3の上方に放熱される。
【0038】
このように、この電子鍵盤楽器の放熱構造によれば、楽器ケース1の上部ケース3に譜面立て部材10を取り付けための取付溝部11を設け、この取付溝部11の底部12に、上部ケース3の内外に貫通する開口部12aを、回路基板13に設けられたヒートシンク16に対応させて設けたので、回路基板13で発生した熱をヒートシンク16で放熱すると、その熱を上部ケース3の取付溝部11における底部12の開口部12aから取付溝部11内を通して上部ケース3の上方に放熱することができる。
【0039】
このため、回路基板13で発生した熱を効率良く楽器ケース1の外部に放熱することができると共に、譜面立て部材10を取り付けるための取付溝部11を利用していることにより、取付溝部11における底部12の開口部12aに指や手が触れ難くいため、火傷をする危険性が少なく、火傷などに対する安全性が高いほか、取付溝部11における底部12の開口部12aが外部から見え難いので、楽器ケース1の外観やデザインが損なわれることがなく、外観的にもデザイン的にも好ましいものを提供することができる。
【0040】
この場合、取付溝部11における開口部12aに対応する箇所の底部12には、ヒートシンク16の熱を取付溝部11の開口部12aに導いて放熱する放熱板17が、ヒートシンク16に対応して設けられていることにより、ヒートシンク16で放熱された熱を放熱板17によって上部ケース3の取付溝部11における底部12の開口部12aに向けて効率良く伝導することができる。
【0041】
すなわち、この放熱板17は、取付溝部11の開口部12aに対応する箇所の底部12に配置されているので、楽器ケース1の外気を取付溝部11における底部12の開口部12aから取り込むことができ、この取り込んだ外気によって放熱板17における開口部12aと対応する箇所を確実に且つ良好に冷やすことがき、これにより放熱板17の熱を取付溝部11における底部12の開口部12aに向けて確実に且つ良好に伝達して取付溝部11内に放熱することができる。
【0042】
また、放熱板17には、その上下に貫通する多数の小孔20が、取付溝部11における底部12の開口部12aに対応して設けられているので、この多数の小孔20が設けられた部分における放熱板17の表面積を多数の小孔20によって十分に広くすることができ、これにより熱交換性を高めることができるので、効率良く放熱板17によって放熱させることができる。
【0043】
すなわち、この放熱板17は、多数の小孔20が設けられた部分が、取付溝部11における底部12の開口部12aを通過した楽器ケース1の外気によって十分に冷やされることにより、ヒートシンク16で放熱された熱を放熱板17によって効率良く取付溝部11における底部12の開口部12aに向けて伝達することができる。
【0044】
これにより、ヒートシンク16で放熱された熱を、図10に示すように、放熱板17によって取付溝部11における底部12の開口部12aから取付溝部11内に放熱することができると共に、ヒートシンク16で放熱された熱を、放熱板17の多数の小孔20aを通してそのまま取付溝部11内に放熱することができる。
【0045】
また、取付溝部11の内面には、この取付溝部11内に挿入された譜面立て部材10の取付挿入部10aとこれに対向する取付溝部11の内面との間に隙間Sを形成するためのリブ部21が設けられていることにより、取付溝部11に譜面立て部材10の取付挿入部10aを挿入させて譜面立て部材10を上部ケース3に取り付けても、楽器ケース1内から取付溝部11内に放熱された熱を、譜面立て部材10の取付挿入部10aとこれに対向する内面との間に設けられた隙間Sによって、上部ケース3の外部に確実に放熱することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態1では、譜面立て部材10の取付挿入部10aが単純なほぼ平板状に形成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば図11(a)および図11(b)に示された第1変形例のように、譜面立て部材10の取付挿入部10aに、切欠き部25を放熱板17に対応させて設けても良い。この場合、切欠き部25は、上部ケース3の取付溝部11における底部12から上部ケース3の上方に位置する箇所に亘って設けられている。
【0047】
このように構成すれば、上部ケース3の取付溝部11内に譜面立て部材10の取付挿入部10aを挿入させて、上部ケース3上に譜面立て部材10を取り付けても、放熱板17によって取付溝部11内に放熱された熱を、譜面立て部材10の取付挿入部10aに設けられた切欠き部25によって、上部ケース3の上方に放熱することができる。この場合には、必ずしも取付溝部11内にリブ部21を設けて譜面立て部材10の取付挿入部10aとこれに対向する取付溝部11の内面との間に隙間Sを設ける必要がないため、取付溝部11の構造が簡単になり、上部ケース3を容易に成形することができる。
【0048】
(実施形態2)
次に、図12〜図16を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した実施形態2について説明する。なお、図1〜図10に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この電子鍵盤楽器は、譜面立て部材10の取付挿入部30が実施形態1と異なる構成であり、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0049】
すなわち、譜面立て部材10の取付挿入部30は、図12〜図14に示すように、その下端部に設けられた弾力性を有する第1の熱伝導部材31と、取付挿入部30の後面(図10では左側面)に設けられた第2の熱伝導部材32とを備えている。第1の熱伝導部材31は、柔軟性に富む熱伝導性エラストマによって形成されている。この熱伝導性エラストマとしては、例えばシリコーンエラストマに熱伝導性の充填材としてチッ化ボロンを含有させた熱拡散性の高い材料である。
【0050】
この第1の熱伝導部材31は、図13および図16に示すように、譜面立て部材10の取付挿入部30の下端部に、取付溝部11における底部12の開口部12aと対応して設けられている。これにより、第1の熱伝導部材31は、図12および図13に示すように、譜面立て部材10の取付挿入部30が上部ケース3の取付溝部11内に挿入された際に、第1の熱伝導部材31の下面が、取付溝部11における底部12の開口部12aを通して、放熱板17の上面に弾接することにより、放熱板17で放熱された熱を第2の熱伝導部材32に伝達すると共に、取付溝部11内に放熱するように構成されている。
【0051】
また、第2の熱伝導部材32は、アルミニウムや銅などの熱伝導性の高い金属からなり、図13および図16に示すように、取付溝部11における底部12の開口部12aと対応する譜面立て部材10の取付挿入部30の箇所に、第1の熱伝導部材31の上部から上部ケース3の取付溝部11の上方に位置する箇所に亘って設けられている。
【0052】
これにより、第2の熱伝導部材32は、図12および図13に示すように、譜面立て部材10の取付挿入部30が上部ケース3の取付溝部11内に挿入された際に、第1の熱伝導部材31で放熱された熱を上部ケース3の上方に伝達して放熱すると共に、取付溝部11内に放熱するように構成されている。
【0053】
この場合にも、取付溝部11内には、実施形態1と同様、譜面立て部材10の取付挿入部30とこれに対向する取付溝部11の内面との間に隙間Sを形成するためのリブ部21が設けられている。これにより、取付溝部11は、図13に示すように、その内部に譜面立て部材10の取付挿入部30が挿入されても、この取付挿入部30とこれに対向する取付溝部11の内面との間に設けられた隙間Sによって、取付溝部11内に放熱された熱を上部ケース3の上方に放熱するように構成されている。
【0054】
次に、このような電子鍵盤楽器の放熱構造の作用について説明する。
この放熱構造では、譜面立て部材10を用いずに演奏する場合は、実施形態1と同様に放熱する。また、上部ケース3の取付溝部11に譜面立て部材10を取り付けて演奏する場合には、実施形態1と同様に、回路基板13で発熱した熱がヒートシンク16によって放熱され、この放熱された熱が放熱板17によって取付溝部11における底部12の開口部12aに向けて放熱される。
【0055】
このときには、譜面立て部材10の取付挿入部30が上部ケース3の取付溝部11内に挿入されており、取付挿入部30の下端部に設けられた第1の熱伝導部材31が、上部ケース3の取付溝部11における底部12の開口部12aを通して、放熱板17に弾接しているので、放熱板17で放熱された熱が第1の熱伝導部材31に伝わる。この第1の熱伝導部材31に伝わった熱は、第2の熱伝導部材32に伝わり、この第2の熱伝導部材32に伝達された熱は、上部ケース3の上方に伝達されて放熱される。
【0056】
この場合にも、取付溝部11内に設けられたリブ部21によって、取付溝部11の内面と譜面立て部材10の取付挿入部10aとの間に隙間Sが形成されるので、放熱板17、第1の熱伝導部材31、および第2の熱伝導部材32によって、取付溝部11の内面と譜面立て部材10の取付挿入部10aとの間の隙間Sに放熱された熱は、取付溝部11内の隙間Sを通して上部ケース3の上方に放熱される。
【0057】
このため、演奏中に回路基板13が発熱しても、上述したように、その熱がヒートシンク16、放熱板17、第1の熱伝導部材31、および第2の熱伝導部材32を経て上部ケース3の上方に放熱されると共に、取付溝部11内にも放熱される。この取付溝部11内に放熱された熱は、譜面立て部材10の取付挿入部10aとこれに対向する取付溝部11の内面との間に設けられた隙間Sを通して上部ケース3の上方に放熱される。
【0058】
このように、この電子鍵盤楽器の放熱構造によれば、実施形態1と同様の作用効果があるほか、譜面立て部材10の取付挿入部30の下端部における取付溝部11の底部12の開口部12aと対応する箇所に、柔軟性に富む熱伝導性エラストマからなる第1の熱伝導部材31が設けられているので、譜面立て部材10の取付挿入部30が上部ケース3の取付溝部11内に挿入された際に、放熱板17を傷付けることなく、良好に第1の熱伝導部材31を放熱板17に弾接させることができると共に、この状態で放熱板17から放熱された熱を第1の熱伝導部材31によって確実に且つ良好に第2の熱伝導部材32に伝達して放熱することができる。
【0059】
また、譜面立て部材10の取付挿入部30における取付溝部11の底部12の開口部12aと対応する箇所には、第2の熱伝導部材32が、取付挿入部30の下部側から上部ケース3の取付溝部11の上方に位置する箇所に亘って設けられているので、譜面立て部材10の取付挿入部30が上部ケース3の取付溝部11内に挿入された状態でも、第1の熱伝導部材31によって放熱された熱を、第2の熱伝導部材32によって上部ケース3の上方に伝達して放熱することができる。
【0060】
このため、回路基板13で発生した熱を、実施形態1よりも、効率良く楽器ケース1の外部に放熱することができると共に、譜面立て部材10を取り付けるための取付溝部11を利用していることにより、実施形態1と同様、取付溝部11における底部12の開口部12aに指や手が触れ難くいため、火傷などの危険性が少なく、火傷などに対する安全性が高いほか、取付溝部11における底部12の開口部12aが外部から見え難いので、楽器ケース1の外観やデザインが損なわれることがなく、外観的にもデザイン的にも好ましいものを提供することができる。
【0061】
なお、上述した実施形態2では、第2の熱伝導部材32が単純なほぼ平板状に形成されている場合について述べたが、これに限らず、例えば図17(a)および図17(b)に示す第2変形例のように、第2の熱伝導部材32に複数のスリット孔32aを設けた構成であっても良い。このように構成すれば、第2の熱伝導部材32の表面積を複数のスリット孔32aによって広くすることができるので、より一層、第2の熱伝導部材32の放熱性を高めることができる。
【0062】
また、上述した実施形態1、2およびその各変形例では、放熱板17に多数の小孔20を設けた場合について述べたが、必ずしも多数の小孔20である必要はなく、1つまたは複数のスリット孔を設けた構成でも良く、また必ずしも放熱板17に小孔20やスリット孔などを設ける必要はなく、単純な平板状に形成されていても良い。
【0063】
さらに、上述した実施形態1、2およびその各変形例では、楽器ケース1内に回路基板13、14をほぼ水平な状態で配置した場合について述べたが、必ずしも回路基板13、14をほぼ水平な状態で配置する必要はなく、例えば図18に示す第3変形例のように、回路基板13、14を楽器ケース1内にほぼ垂直な状態で配置しても良い。この場合にも、回路基板13に設けられたヒートシンク16を上部ケース3の取付溝部11における底部12の開口部12aの下側に対応させて配置すれば良い。
【0064】
なおまた、上述した実施形態1、2およびその各変形例では、電子鍵盤楽器に適用した場合について述べたが、必ずしも電子鍵盤楽器である必要はなく、鍵盤部を有しない電子楽器にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 楽器ケース
2 下部ケース
3 上部ケース
4 鍵盤部
10 譜面立て部材
10a、30 取付挿入部
11 取付溝部
12 底部
12a 開口部
13 回路基板
16 ヒートシンク
17 放熱板
20 小孔
21 リブ部
25 切欠け部
31 第1の熱伝導部材
32 第2の熱伝導部材
32a スリット孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器ケース内に設けられた回路基板にヒートシンクを設け、このヒートシンクによって前記回路基板の熱を放熱する電子楽器の放熱構造において、
前記楽器ケースに譜面立て部材を取り付けための取付溝部を設け、この取付溝部の底部に、前記楽器ケースの内外に貫通する開口部を、前記回路基板に設けられた前記ヒートシンクに対応させて設けたことを特徴とする電子楽器の放熱構造。
【請求項2】
前記取付溝部における前記開口部に対応する箇所の底部には、前記ヒートシンクの熱を前記開口部に導いて放熱する放熱板が、前記ヒートシンクに対応して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子楽器の放熱構造。
【請求項3】
前記放熱板には、その上下に貫通する孔部が、前記取付溝部の前記開口部に対応して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子楽器の放熱構造。
【請求項4】
前記取付溝部内には、その内部に挿入した前記譜面立て部材の取付挿入部とこれに対向する前記取付溝部の内面との間に隙間を形成するためのリブ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子楽器の放熱構造。
【請求項5】
前記譜面立て部材には、前記放熱板で放熱された熱を伝導して放熱する熱伝導板が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電子楽器の放熱構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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