説明

電子機器、スペーサ、および電子機器の製造方法

【課題】板部材に孔を開けることなく、自由な位置で基板と板部材との導通を行なえる電子機器。
【解決手段】一つの実施の形態に係る電子機器は、筐体と、板部材と、基板と、スペーサとを具備する。前記板部材は、前記筐体に収容され、第1の導電部が設けられる。前記基板は、前記板部材と対向し、第2の導電部が設けられる。前記スペーサは、前記基板と前記板部材との間に介在するとともに、基部と、導電性の導通部材と、導電性の固定部材とを備える。前記基部は、前記板部材に接着された接着面を有する。前記導通部材は、前記接着面から突出するとともに前記板部材の前記第1の導電部に接触する。前記固定部材は、前記基板の前記第2の導電部と前記導通部材とに接触するとともに、前記基板を前記基部に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器、スペーサ、および電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばテレビに用いられる液晶パネルの背面に、複数のプリント回路板が取り付けられる。これらのプリント回路板には、LSIやコンデンサのような種々の電子部品が実装される。
【0003】
プリント回路板は、複数のスペーサを介して液晶パネルに取り付けられる。例えば、液晶パネルの背面を形成する板金に複数のネジ孔が設けられ、これらのネジ孔にスペーサがそれぞれ固定される。
【0004】
一方、プリント回路板に実装される電子部品やプリント回路板に設けられる回路パターンの配置によってノイズが発生する。このようなノイズ対策のため、スペーサによってプリント回路板を液晶パネルの板金と接続することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−277847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶パネルがプリント回路板よりも先に設計された場合、スペーサを取り付けたい位置に部品や配線が既に配置されている場合がある。このため、液晶パネルの板金に後からスペーサ用のネジ孔を形成することは難しい。
【0007】
本発明の目的は、板部材に孔を開けることなく、自由な位置で基板と板部材との導通を行なえる電子機器、スペーサ、および電子機器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施の形態に係る電子機器は、
筐体と、板部材と、基板と、スペーサとを具備する。前記板部材は、前記筐体に収容され、第1の導電部が設けられる。前記基板は、前記板部材と対向し、第2の導電部が設けられる。前記スペーサは、前記基板と前記板部材との間に介在するとともに、基部と、導電性の導通部材と、導電性の固定部材とを備える。前記基部は、前記板部材に接着された接着面を有する。前記導通部材は、前記接着面から突出するとともに前記板部材の前記第1の導電部に接触する。前記固定部材は、前記基板の前記第2の導電部と前記導通部材とに接触するとともに、前記基板を前記基部に固定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係るテレビを一部切り欠いて示す側面図。
【図2】第1の実施形態の液晶パネルと、基板と、スペーサとを分解して示す斜視図。
【図3】第1の実施形態の液晶パネルと、基板と、スペーサとを図2のF3−F3線に沿って示す断面図。
【図4】第1の実施形態の液晶パネルと、基板と、スペーサとを分解して示す断面図。
【図5】第2の実施の形態に係る液晶パネルと、基板と、スペーサとを示す断面図。
【図6】第3の実施の形態に係る液晶パネルと、基板と、スペーサとを示す断面図。
【図7】第4の実施の形態に係る液晶パネルと、基板と、スペーサとを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、第1の実施の形態について、図1から図4を参照して説明する。図1は、テレビ1を一部切り欠いて示す側面図である。テレビ1は、電子機器の一例である。図1に示すように、テレビ1は、筐体10と、筐体10に収容された液晶パネル11と、基板12と、複数のスペーサ13とを備えている。基板12は、例えば矩形状のプリント回路板である。
【0011】
図2は、液晶パネル11と、基板12と、スペーサ13とを分解して示す斜視図である。図3は、図2のF3−F3線に沿って液晶パネル11と、基板12と、スペーサ13とを示す断面図である。図3に示すように、液晶パネル11は、多層部21と、板部材22とを有している。多層部21は、液晶や偏向板のような複数の部材が積層されて形成される。多層部21は、画像が表示される液晶パネル11の前面11aを形成する。板部材22は導電性の金属板であり、液晶パネル11の背面11bを形成する。
【0012】
板部材22に、絶縁コーティングされたコーティング部23と、絶縁コーティングされておらず通電可能な露出部24とが設けられている。露出部24は、第1の導電部の一例である。
【0013】
図2に示すように、基板12に、複数の電子部品25が実装されている。電子部品25は、例えばLSIやコンデンサのような種々の部品である。基板12は、板部材22と対向している。
【0014】
基板12に、複数の固定孔27が設けられている。図3に示すように、固定孔27の内面と、基板12の固定孔27の周囲とに、グランドパターン28がそれぞれ形成されている。グランドパターン28は、第2の導電部の一例である。
【0015】
複数のスペーサ13は、基板12の角部にそれぞれ配置されるとともに、基板12と板部材22との間にそれぞれ介在している。スペーサ13は、基部31と、導通部材32と、固定部材33と、両面テープ34とを備えている。
【0016】
図3に示すように、スペーサ13の基部31は、合成樹脂によってピラミッド型に形成され、接着面37と固定面38とを有している。なお、基部31は、絶縁コーティングされた金属で形成されても良い。
【0017】
接着面37は、板部材22に面している。固定面38は、接着面37の反対側に位置し、基板12に面している。接着面37の面積は、固定面38の面積よりも大きい。接着面37に両面テープ34が貼り付けられており、接着面37は、両面テープ34によって板部材22に接着される。なお、接着面37は両面テープ34に限らず、例えば印刷された接着剤によって板部材22に接着されても良い。
【0018】
接着面37から固定面38に亘って、孔39が設けられている。孔39は、板部材22の露出部24と、基板12の固定孔27とに向かって開口している。両面テープ34は、この孔39を避けて設けられる。
【0019】
固定部材33は、例えば導電性材料によって形成されたネジである。固定部材33は、基板12の固定孔27を通って、基部31の固定面38に開口する孔39に捻じ込まれている。これにより、固定部材33は、基板12をスペーサ13の基部31に固定している。固定部材33は、グランドパターン28に接触している。
【0020】
導通部材32は、本体46と、第1の針部材47と、第2の針部材48とを有している。本体46は、円筒状に形成され、孔39に収容されて固定されている。本体46の内部にバネなどが収容されており、本体46は、第1および第2の針部材47,48を変位可能に保持している。
【0021】
第1の針部材47は、本体46から板部材22の露出部24に向かって進退自在に突出している。図3に示すように、第1の針部材47は、接着面37から突き出ている。第1の針部材47の先端47aは、板部材22の露出部24に点接触し、本体46のバネの弾性力によって露出部24を押圧している。
【0022】
第2の針部材48は、本体46から孔39に捻じ込まれた固定部材33に向かって進退自在に突出している。第2の針部材48の先端48aは、固定部材33に点接触し、本体46のバネの弾性力によって固定部材33を押圧している。第2の針部材48は、本体46を介して第1の針部材47と電気的に接続されている。
【0023】
以下に、テレビ1の製造方法の一例について説明する。図4は、液晶パネル11と、基板12と、スペーサ13とを分解して示す断面図である。図4に示すように、スペーサ13が板部材22および基板12から外れている場合、第1および第2の針部材47,48は最も長く本体46から突き出ている。
【0024】
まず、第1の針部材47の先端47aを板部材22の露出部24に接触させながら、スペーサ13の基部31を板部材22に押し付ける。これにより、両面テープ34が貼り付けられた接着面37が板部材22に接着される。第1の針部材47が板部材22に押されるため、第1の針部材47の一部は本体46の中に引っ込む。本体46のバネの弾性力により、第1の針部材47は一定の力で露出部24を押圧し、板部材22と電気的に接続される。
【0025】
次に、基部31の固定面38に基板12を重ね、基部31の孔39と基板12の固定孔27とを連通させる。固定部材33を、固定孔27を通して孔39に捻じ込むことで、基板12を基部31に固定する。固定部材33を孔39に捻じ込むことで、固定部材33が第2の針部材48の先端48aに接触し、第2の針部材48を押し下げる。押し下げられた第2の針部材48の一部は、本体46の中に引っ込む。本体46のバネの弾性力により、第2の針部材48は一定の力で固定部材33を押圧し、固定部材33と電気的に接続される。さらに、固定部材33は、グランドパターン28と接触し、このグランドパターン28と電気的に接続される。
【0026】
以上のように、基板12がスペーサ13を介して板部材22に取り付けられると、基板12のグランドパターン28が、導通部材32を介して板部材22の露出部24に電気的に接続される。これにより、基板12が板部材22に導通する。
【0027】
前記構成のテレビ1によれば、スペーサ13は、板部材22に接着されるとともに、導通部材32の第1の針部材47が板部材22の露出部24と接触することで基板12を板部材22に導通させる。これにより、板部材22に孔を開ける必要がなくなり、自由な位置で基板12と板部材22との導通を行なうことができる。
【0028】
第1の針部材47は、先端47aが露出部24と点接触することにより、露出部24と電気的に接続される。一般的に、接触により導通を行なうためには、所定の圧力で導電性の部材どうしが接触させられる。導通が行なわれる圧力が一定であるため、部材どうしの接触面積が小さいほど、一方の部材を他方の部材に押し付ける力はより小さくて済む。なお、圧力Pは、単位面積当たりに作用する力であり、P=F/Sで表わされる。Fは力、Sは力が作用する面積、すなわち接触面積をそれぞれ示す。
【0029】
部材を押し付ける力が小さければ、部材が押し返される反発力も小さくなる。このため、露出部24に点接触する第1の針部材47の先端47aが受ける反発力は、面接触した場合にうける反発力よりも小さい。
【0030】
一方、両面テープ34が基部31を板部材22に接着する接着強度は、基部31と板部材22との接触面積に比例する。このため、第1の針部材47が受ける反発力が小さい場合、基部31を板部材22との接触面積が比較的小さくても、反発力が接着強度を下回る。したがって、第1の針部材47の先端47aが露出部24と点接触することにより、接着面37を小さくし、スペーサ13を小型化することができる。これにより、スペーサ13を自由な位置に配置しやすくなる。
【0031】
加えて、板部材22に面するスペーサ13の下面の面積は、例えば板部材22に実装される部品によって制約を受ける。一方、導通部材32が第1の針部材47の先端47aで露出部24と点接触することにより、スペーサ13の下面における接着面37の面積の比率を大きくすることができる。したがって、接着面37を板部材22に強固に接着することができる。
【0032】
次に、図5を参照して、テレビ1の第2の実施の形態について説明する。なお、以下に開示する複数の実施形態において、第1の実施形態のテレビ1と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0033】
図5は、第2の実施形態における液晶パネル11と、基板12と、スペーサ13とを示す断面図である。図5に示すように、導通部材32は、第2の針部材48の代わりにネジ受け部51を有している。
【0034】
ネジ受け部51は、金属によって筒状に形成され、孔39に嵌り込んでいる。ネジ受け部51は、本体46に接触し、本体46と電気的に接続されている。ネジ受け部51に、固定面38に開口するネジ孔52が設けられている。ネジ孔52に固定部材33が捻じ込まれることで、基板12が基部31に固定される。ネジ受け部51は、固定部材33を介してグランドパターン28に導通する。
【0035】
このような第2の実施の形態によれば、本体46に進退自在に保持された第2の針部材48が不要となり、導通部材32を単純化することができる。したがって、スペーサ13のコストを低減することができる。
【0036】
次に、図6を参照して、テレビ1の第3の実施の形態について説明する。図6は、第3の実施形態における液晶パネル11と、基板12と、スペーサ13とを示す断面図である。図6に示すように、導通部材32は、金属によって例えば円柱状に形成されている。
【0037】
導通部材32は、孔39に嵌り込んでいる。導通部材32は、接着面37から突出して露出部24に接触している。また、導通部材32に、固定面38に開口するネジ孔52が設けられている。ネジ孔52に固定部材33が捻じ込まれることで、基板12が基部31に固定される。導通部材32は、固定部材33を介してグランドパターン28に導通する。
【0038】
このような第3の実施の形態によれば、第1および第2の針部材47,48が不要となり、導通部材32を単純化することができる。したがって、スペーサ13のコストを低減することができる。
【0039】
次に、図7を参照して、テレビ1の第4の実施の形態について説明する。図7は、第4の実施形態における液晶パネル11と、基板12と、スペーサ13とを示す断面図である。図7に示すように、第1の針部材47の先端47aに、拡大部55が設けられている。
【0040】
拡大部55は、第1の針部材47の一部であり、例えば円盤状に形成されている。拡大部55は、露出部24に面接触する。すなわち、拡大部55と露出部24との接触面積は、第1の実施形態における第1の針部材47の先端47aと露出部24との接触面積よりも大きい。
【0041】
このような第4の実施の形態によれば、導通部材32と露出部24との接触面積を大きくし、導通部材32と露出部24との導通を良好にすることができる。
【0042】
なお、上記の実施形態において、スペーサ13は基板12の角部にそれぞれ配置されているが、スペーサ13の位置はこれに限らない。スペーサ13は、例えば基板12の中央部やその他の位置に配置されても良い。
【0043】
さらに、上記の実施形態において、板部材22は金属板であるが、板部材22はこれに限らない。板部材22は、例えばプリント配線板であっても良い。この場合、第2の導電部の一例として、プリント配線板の表面にパッドが設けられる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…テレビ,10…筐体,12…基板,13…スペーサ,22…板部材,24…露出部,28…グランドパターン,31…基部,32…導通部材,33…固定部材,37…接着面,39…孔,46…本体,47…第1の針部材,47a…先端,48…第2の針部材,48a…先端,55…拡大部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に収容され、第1の導電部が設けられた板部材と、
前記板部材と対向し、第2の導電部が設けられた基板と、
前記基板と前記板部材との間に介在するスペーサと、
を具備し、前記スペーサは、
前記板部材に接着された接着面を有した基部と、
前記接着面から突出するとともに前記板部材の前記第1の導電部に接触した導電性の導通部材と、
前記基板の前記第2の導電部と前記導通部材とに接触するとともに、前記基板を前記基部に固定した導電性の固定部材と、
を備えた電子機器。
【請求項2】
前記基部に、前記板部材の前記第1の導電部に向かって開口する孔が設けられ、
前記導通部材が、前記孔に収容された本体と、前記本体から進退自在に突出するとともに前記第1の導電部に接触した第1の針部材を含む請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記導通部材が、前記本体から進退自在に突出するとともに前記固定部材に接触した第2の針部材を含む請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1の針部材の先端に、前記第1の導電部と面接触する拡大部が設けられた請求項2に記載の電子機器。
【請求項5】
互いに対向する板部材と基板との間に介在し、前記板部材に接着される接着面を有した基部と、
前記接着面から突出するとともに前記板部材に設けられた第1の導電部に接触する導電性の導通部材と、
前記基板に設けられた第2の導電部と前記導通部材とに接触するとともに、前記基板を前記基部に固定する導電性の固定部材と、
を具備したスペーサ。
【請求項6】
筐体と、
前記筐体に収容され、第1の導電部が設けられた板部材と、
前記板部材と対向し、第2の導電部が設けられた基板と、
前記基板と前記板部材との間に介在し、接着面を有した基部と、前記接着面から突出する導電性の導通部材と、導電性の固定部材と、を有したスペーサと、
を具備する電子機器の製造方法であって、
前記導通部材を前記板部材の前記第1の導電部に接触させながら、前記基部の前記接着面を前記板部材に接着し、
前記固定部材によって前記基板を前記基部に固定することで、前記固定部材を前記基板の前記第2の導電部と前記導通部材とに接触させる電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−99652(P2012−99652A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246432(P2010−246432)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】