電子機器、入力処理方法および入力装置
【課題】誤操作のおそれを軽減しつつ、直感的な入力操作を可能とする。
【解決手段】複数のタッチセンサ114a〜114lの出力と加速度センサ(振動検出手段)の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う。より具体的には、複数のタッチセンサ114a〜114lのいずれかの出力の遷移(OFFからON)と振動検出出力とに基づいて、いずれかのタッチセンサの出力を入力信号として利用する。
【解決手段】複数のタッチセンサ114a〜114lの出力と加速度センサ(振動検出手段)の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う。より具体的には、複数のタッチセンサ114a〜114lのいずれかの出力の遷移(OFFからON)と振動検出出力とに基づいて、いずれかのタッチセンサの出力を入力信号として利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサを用いた入力処理方法および入力装置およびこれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の入力装置としては、キーボードやマウス、タッチパッド等が一般的であるが、近年、携帯電話端末などには表示画面(スクリーン)上のタッチ位置を検出するタッチセンサを用いてタッチ操作を行うことができるものが市販されている。
【0003】
また、携帯電話機の筐体側面にタッチセンサを設け、タッチセンサからのタッチ信号が存続するかぎりバックライトを点灯させ続ける技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
加速度センサを用いることにより、筐体が叩かれたことを認識して入力とするタップ操作も提案されている(特許文献2参照)。これは、タップ操作の振動信号と加速度センサによる姿勢変化信号との組み合わせで機能選択コマンドを作成し、携帯電話機に実装された各種の機能を自由に呼び出せるようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−235321号公報
【特許文献2】特開2008−176641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記タップ操作を行う際、加速度の変化によりタップ操作が行われたことは認識されるが、筐体の何処をタップされたかは分からない。そのため、直感的な操作が実現できないという問題がある。
【0007】
タッチセンサによればタッチ位置を検出することはできるが、筐体を持った際に触れる箇所(例えば筐体の周縁)にタッチセンサを設置すると筐体を持っただけでタッチされてしまい誤操作が発生する。そのため、タッチセンサを操作に用いる場合、誤操作を防ぐためにタッチセンサ設置箇所の制約がある。すなわち、筐体の左右両側面や筐体裏面にタッチセンサを配置できないという問題がある。なお、上記特許文献1には筐体の側面にタッチセンサを配置しているが、その目的はユーザが筐体を把持していることを検出するためであって、入力操作のためのものではない。
【0008】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、誤操作のおそれを軽減しつつ、直感的な入力操作を可能とすることを企図する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電子機器は、複数のタッチセンサと、筐体の振動を検出する振動検出手段と、前記複数のタッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う制御手段とを備えたものである。
【0010】
これにより、振動の無いタッチは無効とされる。すなわち、本発明ではユーザによる入力としての意思のあるタッチには所定の振動が伴うことを想定し、また、要求している。したがって、ユーザが単に電子機器を把持した際にタッチが生じても、そのようなタッチは有効な入力とはならない。その結果、誤操作が防止される。
【0011】
前記制御手段は、より具体的には、前記複数のタッチセンサのいずれかの出力の遷移と前記振動検出手段の振動検出出力とに基づいて、いずれかのタッチセンサの出力を入力信号として利用する。
【0012】
本発明による入力処理方法は、タッチを検出するタッチセンサと、筐体の振動を検出する振動検出手段とを備えた電子機器における入力処理方法であって、前記タッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱うものである。
【0013】
本発明の入力装置は、タッチを検出するタッチセンサと、筐体の振動を検出する振動検出手段と、制御手段とを備える。この制御手段は、前記タッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子機器の筐体に対するタッチセンサの配置位置によらず、誤操作の可能性を低減することができる。したがって、タッチセンサの配置の自由度が向上し、タッチ操作の利用範囲を拡大することができる。その結果、誤操作の可能性が低く、機器の持ち方に制約の少ない、直感的なタッチ入力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子機器の一例として携帯機器の概略の外観構成を示した図である。
【図2】図1に示した携帯機器の概略のハードウェア構成を示した図である。
【図3】図1に示した携帯機器を横長にしてその左側の端部側辺を左手で把持した様子を示す図である。
【図4】図3の状態から右手の人差し指で上辺をタッチした状態を示す図である。
【図5】図1に示した携帯機器と対比する携帯機器の説明図である。
【図6】図3の状態から右手の人差し指で上辺をタッチした状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における携帯機器の基本的な入力処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態における複数同時タップ時の処理対応テーブルの例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態において何らかの要因で携帯機器が落下したときに誤操作の発生を防ぐ入力処理のフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態における携帯機器の動作を表す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の電子機器の一例として携帯機器100の概略の外観構成を示している。ここでは携帯機器100として携帯電話端末を例として挙げるが、本発明は電話端末に限るものではなく、携帯情報端末、ゲーム機、電子辞書、小型PC、小型ナビゲーション装置、等、任意の携帯型の電子機器に適用することが可能である。
【0018】
携帯機器100は、筐体の表面主要部にLCD,有機EL等の表示デバイスが配置され、その表示画面120が外部表面に露出している。表示画面の下部には操作部105が配置されている。この操作部105は、中央の十字キー、およびその周囲に配置されたメールキー、通話キー、終話キー、電話帳キー等の各種キーを含む。この携帯機器100はテンキーを表示画面上にソフトウェアキーとして表示し、表示画面に重ねて配置されたタッチパネルで操作可能なものを想定している。
【0019】
あるいは、この上部筐体の背面に重なった状態で下部筐体が配置され、直線状にスライドして、または回転してテンキー部(図示せず)を露出する構成であってもよい。
【0020】
筐体の周縁(側面全周)には、複数のタッチセンサ114a〜114lが配置されている。(図では分かりやすさのために、これらのタッチセンサを筐体周縁から突出させて誇張して示してある。)この例では、筐体の上辺に2個、下辺に2個、左辺に4個、右辺に4個の計12個のタッチセンサが配置されている。各タッチセンサは独立にタッチ検出が可能である。これら12個のタッチセンサにより側面360°をカバーしていることになる。タッチセンサの個数および配置は必ずしも図示のとおりである必要はないが、各辺に少なくとも2個のタッチセンサを配置することが望ましい。隣接するタッチセンサの間隙は、一般的なサイズの指1本より小さいものとする。
【0021】
また、この携帯機器100の内部には振動検出手段の一例として加速度センサが内蔵されている。
【0022】
図2は、本実施の形態の携帯機器100の概略のハードウェア構成を示している。
【0023】
携帯機器100は、バス115で相互に接続された、制御部101、通信部103、表示部104、操作部105、記憶部106、音声処理部110、加速度センサ113、およびタッチセンサ114を備えている。音声処理部110にはスピーカ111およびマイク112が接続されている。
【0024】
制御部101は、CPU等を含み、携帯機器100の各部を制御する制御手段および各種のデータ処理手段を構成する。通信部103は、RF部、変復調回路等を含み、アンテナ102を介して基地局との間で、通話およびメールやWEBデータ等のための無線通信を行う。
【0025】
表示部104は、図1の表示画面120上に情報を表示する表示デバイスおよびその制御回路である。
【0026】
操作部105は、図1の操作部105に相当し、各種のキーを有し、ユーザによる指示やデータの入力を受け付ける。
【0027】
記憶部106は、ROM,RAM等を含み、CPUが実行するOSや各種アプリケーション等のプログラムやデータを記憶する。
【0028】
音声処理部110は、音声のエンコーダ、デコーダ、DA変換器、AD変換器等を含み、スピーカ111(イヤホン含む)に対する音声出力およびマイクからの音声入力を行う。
【0029】
加速度センサ113は、本実施の形態では、互いに直交する3軸方向の加速度を検出するデバイスである。このデバイスは、筐体10に内蔵され、この出力に基づいて携帯機器の振動や傾きを検出することができる。
【0030】
タッチセンサ114は、図1に示した機器の筐体周囲に配置したタッチセンサ114a〜114lに相当する。その他、表示画面120上に重ねて配置されたタッチパネルも含みうる。但し、このタッチパネルは本発明において必須の要素ではない。
【0031】
その他、図示しないが、携帯機器100は、電源部、発光部等を備えている。また、音楽再生部、カメラ部、近距離無線通信部、非接触ICカード機能部、GPS部、外部メモリインタフェース、等をさらに備えてもよい。
【0032】
以下、本実施の形態の携帯機器100の特徴的な動作について説明する。
【0033】
この特徴的な動作におけるユーザの主要な操作には次の二つがある。
【0034】
(1)タップ操作
タップ操作は、ユーザにより筐体が叩かれたことによる筐体の振動を検出するものであり、本実施の形態では加速度センサ113を用いてその検出を行う。制御部101は常に加速度センサ113の出力を監視しており、その出力の特定のパターンを入力として予め定めておく。一般的には、加速度センサ113の出力が急激に変化するパターンを用いたタップ検出が行われる。すなわち、加速度センサ出力値の一瞬の急激な変化に基づいて筐体が一回叩かれたことを認識する。
【0035】
その他、加速度センサ113が重力加速度を検出することを利用し、筐体の傾きを推測することもできる。
【0036】
(2)タッチ操作
タッチ操作は、ユーザが筐体に接触したことを検出するものであり、本実施の形態ではタッチセンサ114を用いてその検出を行う。タッチセンサはユーザの指等が触れたかどうかを判定するセンサであり、触れられていればON信号を出力し続け、触れられていない間はOFF信号を出力し続ける。制御部101は、常にタッチセンサ114からの出力を監視して、その出力に基づいて機器を制御する。タッチセンサからの出力はタッチセンサに触れるか触れないかだけなので、あたかもキーがあるような入力インタフェースが実現される。
【0037】
本発明ではこのタップ操作の検出出力を、タッチセンサの出力と組み合わせて判定することにより、操作の誤認識の可能性を低減するものである。すなわち、複数のタッチセンサのいずれかの出力の遷移と振動検出手段の振動検出出力とに基づいて、いずれかのタッチセンサの検出出力を有効な入力信号として利用する。
【0038】
図3は、携帯機器100を横長にしてその左側の端部側辺を左手で把持した様子を示している。ユーザの指が接触しているタッチセンサの出力がONとなっている。筐体の周囲の対応する位置に12個のタッチセンサの出力波形を示している。タッチセンサの出力はON(タッチされている)、OFF(タッチされていない)の2種類のみである。出力波形の縦軸は出力の大きさを示し、横軸は時間を示している。図3では筐体を左手で持っている状態なので、タッチセンサの出力に変化は無く、左手が触れているタッチセンサはON、何も触れていないタッチセンサはOFFを出力し続けていることがわかる。
【0039】
以下、このように横長に把持した携帯機器100については、その筐体の周縁の長辺を上辺および下辺と呼び、短辺を左辺および右辺と呼ぶ。
【0040】
図3の状態から右手の人差し指で上辺をタッチした状態を、その各タッチセンサの出力の波形とともに図4に示す。
【0041】
図4の状態では、上辺の右から2番目のタッチセンサ114eがある箇所をタップした例である。タップ操作は筐体内部にある加速度センサ113で検知する。タップした際に触れた部分のタッチセンサは手で触れられるためOFFからONに遷移する。そのため、図4上部に示したように、タップされた箇所のタッチセンサ114eだけがタップ振動と同時にOFFからONへ遷移することがわかる。したがって、タップと同時に「OFFからON」になったタッチのみを真の入力とするという法則を利用することで筐体の何処がタップされたかを認識することができる。すなわち、タッチセンサのONかOFFかの状態ではなくOFFからONへの状態遷移を入力判定に利用する。端末を把持している左手の指が接触しているタッチセンサの出力もONとなっているが、それらは無視される。
【0042】
この構成により加速度センサ113を用いたタップ検出の「何処をタップされたか認識できない」という問題点と、タッチセンサの「誤操作が起きるため、筐体を持つ際に手が触れるところにタッチセンサを設置できない」という問題の両方を解決することが出来る。図3の状態においても筐体を把持するためにタッチセンサに触れているが、誤操作は起きない。本発明のこの特徴により、例えば、筐体の右辺をタップすれば「右」操作、左辺をタップすれば「左」操作、の様な直感的な操作を実現することができる。
【0043】
本発明のもう一つの特徴は、図3の時点で左手が筐体の上辺に触れているにも関わらず、図4のように右手が上辺の違う部分をタップした際に、上辺がタップしていることを認識できる点にある。図5に示すように、上辺に単一のタッチセンサしか配置されていない場合、把持のために筐体上辺が最初からタッチされていることになる。タッチセンサ出力はON/OFFの2状態しかないため、図6に示すように、もう一つの指でさらに上辺に触れても認識することができない(図5の場合とタッチセンサ出力の変化がない)。その結果、上辺をタップしたい場合、一旦筐体の上辺に触れている指を全て離してから上辺をタップしなければならなくなるため、筐体の操作に大きな制約ができてしまう。本発明ではこの問題が解決される。
【0044】
このように、筐体の側部周囲全体に、各辺あたり複数のタッチセンサを配置して上記のような処理を行うことにより、ユーザは筐体の持ち方や持つ位置を気にすることなく、誤操作の無い直感的なタップ操作を行うことが可能となる。
【0045】
図7により本実施の形態における携帯機器の基本的な入力処理の流れを説明する。
【0046】
本実施の形態における入力操作は、携帯機器の電源投入後に定常的に有効とする場合、初期設定により選択的に有効にする場合、特定のアプリケーションについてのみ有効にする場合、等がありうる。図7の処理はいずれの場合であっても本実施の形態の入力操作が有効である場合の処理である。この処理は制御部101(図2)の制御下で行われる。
【0047】
この処理では、ユーザの操作によるタップ入力があったかどうかを常時監視する(S11)。加速度センサによる所定の閾値を越える加速度の変化が検出されたときタップ入力があったと判定することができる。「所定の閾値」はユーザにより可変設定できるようにしてもよい。タップ入力があったと判定されたとき、そのタップ入力と同時にOFFからONへの状態が遷移したタッチセンサが存在するか否かをチェックする(S12)。存在しなければステップS11へ戻る。存在すれば、OFFからONへ状態遷移したタッチセンサが1箇所か複数箇所かを確認する(S13)。
【0048】
1箇所であれば、状態遷移したタッチセンサの箇所を確認する(S14)。本実施の形態では筐体のどの側辺(上下左右)かにより、上操作、下操作、左操作、右操作の判定を行う(S15〜S18)。なお、上下左右の操作の方向は説明の便宜上である。実際には、携帯機器の持ち方により上下左右は変わりうるが、操作の方向は状態遷移したタッチセンサがどの辺に属するかによって決まる。
【0049】
ステップS23において、状態遷移したタッチセンサが複数箇所同時に発生したことが検出された場合、それらのタッチセンサは1辺に属しているかどうかを確認する(S19)。1辺のみであれば、ステップS14へ移行した上記の処理を行う。複数の辺にまたがっている場合には、タップと同時に状態遷移が発生したタッチセンサの辺(方向)を検出する(S20)。これに基づき、予め定めた複数方向と処理との対応テーブル(後述)から、実行すべき処理を検索する(S21)。対応テーブルに該当する入力・処理が記載されていなければ、当該操作を無視して、ステップS11へ戻る。対応テーブルに該当する入力・処理が記載されていれば、その処理を実行する(S23)。
【0050】
このように、同時に2点がタップされた場合、同じ辺の2点であれば、1点のタップと同じ結果となる。よって、隣接するタッチセンサの境界部がタップされても問題は発生しない。違う辺の2点が同時にタップされたことが検出されるということは、ユーザが故意にしない限り、自然の状態では起こりにくい。したがって、このような操作は特定の入力として利用することができる。
【0051】
図8に、複数同時タップ時の処理対応テーブルの例を示す。これは、携帯音楽プレーヤの用途を想定している。この図に示した内容はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。携帯音楽プレーヤの用途の他、テレビジョン装置等、他の任意のアプリケーションの操作にも利用することが可能である。
【0052】
図9は、何らかの要因で携帯機器が落下したとき(例えば手でキャッチしたような場合)に誤操作の発生を防ぐ入力処理のフローチャートを示す。この図において図7に示したステップと同様のステップには同じ参照番号を付してある。すなわち、図9におけるステップS11〜S23は図7の処理と同じであり、重複した説明は省略する。
【0053】
携帯機器が机に落ちた場合や、机上に投げられた場合にはタッチセンサが反応しないので、上記の処理でも誤操作は生じない。しかし、落下した携帯機器を手でキャッチした場合には誤操作の可能性がある。そこで、加速度センサが携帯機器の落下を検出できることを利用して、以下のような処理を追加する。
【0054】
図9において追加されたステップはS31〜S33である。ステップS31では加速度センサにて現在、携帯機器が落下状態にあるかどうかを監視する。落下状態にあるということは、加速度センサの3軸のいずれの加速度も0Gであることである。落下状態でなければステップS11へ進み、図7の処理と同じ処理を実行する。
【0055】
落下状態であることが検出されたら、落下終了まで待機する(S32)。この待機中は入力を抑止する。すなわち、例えばタッチセンサの出力を無視する。落下終了は加速度センサの3軸の加速度の合成が1Gとなることで分かる。落下終了が検出された時点からさらに所定時間(例えば1秒程度)待って(S33)、最初のステップS31へ戻る。所定時間待つ理由はこの間にも入力を抑止して、誤動作防止を徹底するためである。
【0056】
図10は、本実施の形態における携帯機器の動作を表す状態遷移図である。携帯機器は、入力を受け付けるデフォルト(default)状態11を基準として動作し、何か入力(センサ出力やイベント発生を含む)があるとデフォルト状態から別の状態に遷移し、その処理を終えればデフォルト状態に戻ってくるようになっている。この状態遷移図ではデフォルト状態11以外の状態では、入力を受け付けられないものとしている。デフォルト状態以外の状態での処理は一瞬で行われるので、ユーザが気付くことは無いものと想定している。
【0057】
デフォルト状態11において、タップ検出が単独であったときにはデフォルト状態11に戻る。デフォルト状態11においてタッチセンサのOFFからONの遷移が検出されたとき、タッチ状態更新12に移行し、現在のタッチセンサ出力ONを記憶してデフォルト状態11に戻る。タッチセンサ出力は、タッチセンサ毎に記憶しておき、タッチセンサの変化を検出するために利用する。タッチセンサのONからOFFへの遷移が検出されたとき、タッチ状態更新12に移行し、現在のタッチセンサ出力OFFを記憶してデフォルト状態11に戻る。
【0058】
デフォルト状態11において、タップと同時にタッチセンサのOFFからONへの遷移が1箇所検出されたとき、状態13へ移行する。状態13ではその遷移が生じたタッチセンサの属する辺に応じて、右、左、上、下の操作に対応する処理を実行する。ついで、状態12へ移行してタッチセンサ出力ONを記憶する。
【0059】
デフォルト状態11において、タップと同時にタッチセンサのOFFからONへの遷移が複数箇所検出されたとき、状態14へ移行し、複数のタッチされた辺を検索する。一つの辺の異なる箇所が同時にタッチされたと判定された場合、上記の状態13へ移行する。複数の辺が同時にタッチされたと判定された場合、状態15へ移行する。状態15では、上記対応テーブルを参照して、タッチされたパターンに処理が割り当てられているかどうかを検索する。割り振られていれば状態16へ移行し、その処理を実行する。その後、状態12へ移行する。割り振られていなければ、そのまま状態12へ移行する。
【0060】
タッチ操作に振動検出を組み合わせることにより、ユーザが端末を把持するときに不可避的に接触する筐体の周縁にタッチセンサを設けてもタッチ操作が誤検出されることが防止される。
【0061】
タッチセンサが静電式のものであれば、振動とタッチの組み合わせで入力を有効とすることによって、携帯機器をそのまま鞄にいれても誤操作がおきない(鞄や物によるタッチを認識しない)。したがって、従来、入力操作を抑止するために必要であった操作ロック機能が不要となる。
【0062】
筐体の周縁のタッチセンサにより操作を行う場合、表示画面のタッチパネルにタッチする操作に比べて、表示画面がタッチにより汚れることがない、タッチ操作時に表示が隠れない、等の利点がある。
【0063】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【0064】
例えば、複数のタッチセンサは、筐体の上下左右の4辺に配置したが、少なくとも2辺に配置されるものであってもよい。
【0065】
タッチセンサのセンサ出力の遷移はOFFからONへの遷移を利用したが、ONからOFFへの遷移を利用することも可能である。
【0066】
本発明の振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う技術は表示画面上のタッチパネルに利用することも可能である。また、このような表示画面上のタッチパネルと、周縁のタッチセンサとを一組のタッチセンサとして、上記の処理を適用することも可能である。その場合、本発明は、タッチパネル搭載機のロックキー廃止・誤操作防止にも利用することができる。
【0067】
電子機器は携帯機器に限るものではなく、据え置き型の機器であっても振動が検出できれば適用可能である。また、本発明は、ユーザの操作により得られた入力信号を外部へ出力するような入力装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
100…携帯機器、101…制御部、104…表示部、105…操作部、106…記憶部、113…加速度センサ、114a〜114l…タッチセンサ、115…バス、120…表示画面
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサを用いた入力処理方法および入力装置およびこれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の入力装置としては、キーボードやマウス、タッチパッド等が一般的であるが、近年、携帯電話端末などには表示画面(スクリーン)上のタッチ位置を検出するタッチセンサを用いてタッチ操作を行うことができるものが市販されている。
【0003】
また、携帯電話機の筐体側面にタッチセンサを設け、タッチセンサからのタッチ信号が存続するかぎりバックライトを点灯させ続ける技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
加速度センサを用いることにより、筐体が叩かれたことを認識して入力とするタップ操作も提案されている(特許文献2参照)。これは、タップ操作の振動信号と加速度センサによる姿勢変化信号との組み合わせで機能選択コマンドを作成し、携帯電話機に実装された各種の機能を自由に呼び出せるようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−235321号公報
【特許文献2】特開2008−176641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記タップ操作を行う際、加速度の変化によりタップ操作が行われたことは認識されるが、筐体の何処をタップされたかは分からない。そのため、直感的な操作が実現できないという問題がある。
【0007】
タッチセンサによればタッチ位置を検出することはできるが、筐体を持った際に触れる箇所(例えば筐体の周縁)にタッチセンサを設置すると筐体を持っただけでタッチされてしまい誤操作が発生する。そのため、タッチセンサを操作に用いる場合、誤操作を防ぐためにタッチセンサ設置箇所の制約がある。すなわち、筐体の左右両側面や筐体裏面にタッチセンサを配置できないという問題がある。なお、上記特許文献1には筐体の側面にタッチセンサを配置しているが、その目的はユーザが筐体を把持していることを検出するためであって、入力操作のためのものではない。
【0008】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、誤操作のおそれを軽減しつつ、直感的な入力操作を可能とすることを企図する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による電子機器は、複数のタッチセンサと、筐体の振動を検出する振動検出手段と、前記複数のタッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う制御手段とを備えたものである。
【0010】
これにより、振動の無いタッチは無効とされる。すなわち、本発明ではユーザによる入力としての意思のあるタッチには所定の振動が伴うことを想定し、また、要求している。したがって、ユーザが単に電子機器を把持した際にタッチが生じても、そのようなタッチは有効な入力とはならない。その結果、誤操作が防止される。
【0011】
前記制御手段は、より具体的には、前記複数のタッチセンサのいずれかの出力の遷移と前記振動検出手段の振動検出出力とに基づいて、いずれかのタッチセンサの出力を入力信号として利用する。
【0012】
本発明による入力処理方法は、タッチを検出するタッチセンサと、筐体の振動を検出する振動検出手段とを備えた電子機器における入力処理方法であって、前記タッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱うものである。
【0013】
本発明の入力装置は、タッチを検出するタッチセンサと、筐体の振動を検出する振動検出手段と、制御手段とを備える。この制御手段は、前記タッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子機器の筐体に対するタッチセンサの配置位置によらず、誤操作の可能性を低減することができる。したがって、タッチセンサの配置の自由度が向上し、タッチ操作の利用範囲を拡大することができる。その結果、誤操作の可能性が低く、機器の持ち方に制約の少ない、直感的なタッチ入力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子機器の一例として携帯機器の概略の外観構成を示した図である。
【図2】図1に示した携帯機器の概略のハードウェア構成を示した図である。
【図3】図1に示した携帯機器を横長にしてその左側の端部側辺を左手で把持した様子を示す図である。
【図4】図3の状態から右手の人差し指で上辺をタッチした状態を示す図である。
【図5】図1に示した携帯機器と対比する携帯機器の説明図である。
【図6】図3の状態から右手の人差し指で上辺をタッチした状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における携帯機器の基本的な入力処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態における複数同時タップ時の処理対応テーブルの例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態において何らかの要因で携帯機器が落下したときに誤操作の発生を防ぐ入力処理のフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態における携帯機器の動作を表す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の電子機器の一例として携帯機器100の概略の外観構成を示している。ここでは携帯機器100として携帯電話端末を例として挙げるが、本発明は電話端末に限るものではなく、携帯情報端末、ゲーム機、電子辞書、小型PC、小型ナビゲーション装置、等、任意の携帯型の電子機器に適用することが可能である。
【0018】
携帯機器100は、筐体の表面主要部にLCD,有機EL等の表示デバイスが配置され、その表示画面120が外部表面に露出している。表示画面の下部には操作部105が配置されている。この操作部105は、中央の十字キー、およびその周囲に配置されたメールキー、通話キー、終話キー、電話帳キー等の各種キーを含む。この携帯機器100はテンキーを表示画面上にソフトウェアキーとして表示し、表示画面に重ねて配置されたタッチパネルで操作可能なものを想定している。
【0019】
あるいは、この上部筐体の背面に重なった状態で下部筐体が配置され、直線状にスライドして、または回転してテンキー部(図示せず)を露出する構成であってもよい。
【0020】
筐体の周縁(側面全周)には、複数のタッチセンサ114a〜114lが配置されている。(図では分かりやすさのために、これらのタッチセンサを筐体周縁から突出させて誇張して示してある。)この例では、筐体の上辺に2個、下辺に2個、左辺に4個、右辺に4個の計12個のタッチセンサが配置されている。各タッチセンサは独立にタッチ検出が可能である。これら12個のタッチセンサにより側面360°をカバーしていることになる。タッチセンサの個数および配置は必ずしも図示のとおりである必要はないが、各辺に少なくとも2個のタッチセンサを配置することが望ましい。隣接するタッチセンサの間隙は、一般的なサイズの指1本より小さいものとする。
【0021】
また、この携帯機器100の内部には振動検出手段の一例として加速度センサが内蔵されている。
【0022】
図2は、本実施の形態の携帯機器100の概略のハードウェア構成を示している。
【0023】
携帯機器100は、バス115で相互に接続された、制御部101、通信部103、表示部104、操作部105、記憶部106、音声処理部110、加速度センサ113、およびタッチセンサ114を備えている。音声処理部110にはスピーカ111およびマイク112が接続されている。
【0024】
制御部101は、CPU等を含み、携帯機器100の各部を制御する制御手段および各種のデータ処理手段を構成する。通信部103は、RF部、変復調回路等を含み、アンテナ102を介して基地局との間で、通話およびメールやWEBデータ等のための無線通信を行う。
【0025】
表示部104は、図1の表示画面120上に情報を表示する表示デバイスおよびその制御回路である。
【0026】
操作部105は、図1の操作部105に相当し、各種のキーを有し、ユーザによる指示やデータの入力を受け付ける。
【0027】
記憶部106は、ROM,RAM等を含み、CPUが実行するOSや各種アプリケーション等のプログラムやデータを記憶する。
【0028】
音声処理部110は、音声のエンコーダ、デコーダ、DA変換器、AD変換器等を含み、スピーカ111(イヤホン含む)に対する音声出力およびマイクからの音声入力を行う。
【0029】
加速度センサ113は、本実施の形態では、互いに直交する3軸方向の加速度を検出するデバイスである。このデバイスは、筐体10に内蔵され、この出力に基づいて携帯機器の振動や傾きを検出することができる。
【0030】
タッチセンサ114は、図1に示した機器の筐体周囲に配置したタッチセンサ114a〜114lに相当する。その他、表示画面120上に重ねて配置されたタッチパネルも含みうる。但し、このタッチパネルは本発明において必須の要素ではない。
【0031】
その他、図示しないが、携帯機器100は、電源部、発光部等を備えている。また、音楽再生部、カメラ部、近距離無線通信部、非接触ICカード機能部、GPS部、外部メモリインタフェース、等をさらに備えてもよい。
【0032】
以下、本実施の形態の携帯機器100の特徴的な動作について説明する。
【0033】
この特徴的な動作におけるユーザの主要な操作には次の二つがある。
【0034】
(1)タップ操作
タップ操作は、ユーザにより筐体が叩かれたことによる筐体の振動を検出するものであり、本実施の形態では加速度センサ113を用いてその検出を行う。制御部101は常に加速度センサ113の出力を監視しており、その出力の特定のパターンを入力として予め定めておく。一般的には、加速度センサ113の出力が急激に変化するパターンを用いたタップ検出が行われる。すなわち、加速度センサ出力値の一瞬の急激な変化に基づいて筐体が一回叩かれたことを認識する。
【0035】
その他、加速度センサ113が重力加速度を検出することを利用し、筐体の傾きを推測することもできる。
【0036】
(2)タッチ操作
タッチ操作は、ユーザが筐体に接触したことを検出するものであり、本実施の形態ではタッチセンサ114を用いてその検出を行う。タッチセンサはユーザの指等が触れたかどうかを判定するセンサであり、触れられていればON信号を出力し続け、触れられていない間はOFF信号を出力し続ける。制御部101は、常にタッチセンサ114からの出力を監視して、その出力に基づいて機器を制御する。タッチセンサからの出力はタッチセンサに触れるか触れないかだけなので、あたかもキーがあるような入力インタフェースが実現される。
【0037】
本発明ではこのタップ操作の検出出力を、タッチセンサの出力と組み合わせて判定することにより、操作の誤認識の可能性を低減するものである。すなわち、複数のタッチセンサのいずれかの出力の遷移と振動検出手段の振動検出出力とに基づいて、いずれかのタッチセンサの検出出力を有効な入力信号として利用する。
【0038】
図3は、携帯機器100を横長にしてその左側の端部側辺を左手で把持した様子を示している。ユーザの指が接触しているタッチセンサの出力がONとなっている。筐体の周囲の対応する位置に12個のタッチセンサの出力波形を示している。タッチセンサの出力はON(タッチされている)、OFF(タッチされていない)の2種類のみである。出力波形の縦軸は出力の大きさを示し、横軸は時間を示している。図3では筐体を左手で持っている状態なので、タッチセンサの出力に変化は無く、左手が触れているタッチセンサはON、何も触れていないタッチセンサはOFFを出力し続けていることがわかる。
【0039】
以下、このように横長に把持した携帯機器100については、その筐体の周縁の長辺を上辺および下辺と呼び、短辺を左辺および右辺と呼ぶ。
【0040】
図3の状態から右手の人差し指で上辺をタッチした状態を、その各タッチセンサの出力の波形とともに図4に示す。
【0041】
図4の状態では、上辺の右から2番目のタッチセンサ114eがある箇所をタップした例である。タップ操作は筐体内部にある加速度センサ113で検知する。タップした際に触れた部分のタッチセンサは手で触れられるためOFFからONに遷移する。そのため、図4上部に示したように、タップされた箇所のタッチセンサ114eだけがタップ振動と同時にOFFからONへ遷移することがわかる。したがって、タップと同時に「OFFからON」になったタッチのみを真の入力とするという法則を利用することで筐体の何処がタップされたかを認識することができる。すなわち、タッチセンサのONかOFFかの状態ではなくOFFからONへの状態遷移を入力判定に利用する。端末を把持している左手の指が接触しているタッチセンサの出力もONとなっているが、それらは無視される。
【0042】
この構成により加速度センサ113を用いたタップ検出の「何処をタップされたか認識できない」という問題点と、タッチセンサの「誤操作が起きるため、筐体を持つ際に手が触れるところにタッチセンサを設置できない」という問題の両方を解決することが出来る。図3の状態においても筐体を把持するためにタッチセンサに触れているが、誤操作は起きない。本発明のこの特徴により、例えば、筐体の右辺をタップすれば「右」操作、左辺をタップすれば「左」操作、の様な直感的な操作を実現することができる。
【0043】
本発明のもう一つの特徴は、図3の時点で左手が筐体の上辺に触れているにも関わらず、図4のように右手が上辺の違う部分をタップした際に、上辺がタップしていることを認識できる点にある。図5に示すように、上辺に単一のタッチセンサしか配置されていない場合、把持のために筐体上辺が最初からタッチされていることになる。タッチセンサ出力はON/OFFの2状態しかないため、図6に示すように、もう一つの指でさらに上辺に触れても認識することができない(図5の場合とタッチセンサ出力の変化がない)。その結果、上辺をタップしたい場合、一旦筐体の上辺に触れている指を全て離してから上辺をタップしなければならなくなるため、筐体の操作に大きな制約ができてしまう。本発明ではこの問題が解決される。
【0044】
このように、筐体の側部周囲全体に、各辺あたり複数のタッチセンサを配置して上記のような処理を行うことにより、ユーザは筐体の持ち方や持つ位置を気にすることなく、誤操作の無い直感的なタップ操作を行うことが可能となる。
【0045】
図7により本実施の形態における携帯機器の基本的な入力処理の流れを説明する。
【0046】
本実施の形態における入力操作は、携帯機器の電源投入後に定常的に有効とする場合、初期設定により選択的に有効にする場合、特定のアプリケーションについてのみ有効にする場合、等がありうる。図7の処理はいずれの場合であっても本実施の形態の入力操作が有効である場合の処理である。この処理は制御部101(図2)の制御下で行われる。
【0047】
この処理では、ユーザの操作によるタップ入力があったかどうかを常時監視する(S11)。加速度センサによる所定の閾値を越える加速度の変化が検出されたときタップ入力があったと判定することができる。「所定の閾値」はユーザにより可変設定できるようにしてもよい。タップ入力があったと判定されたとき、そのタップ入力と同時にOFFからONへの状態が遷移したタッチセンサが存在するか否かをチェックする(S12)。存在しなければステップS11へ戻る。存在すれば、OFFからONへ状態遷移したタッチセンサが1箇所か複数箇所かを確認する(S13)。
【0048】
1箇所であれば、状態遷移したタッチセンサの箇所を確認する(S14)。本実施の形態では筐体のどの側辺(上下左右)かにより、上操作、下操作、左操作、右操作の判定を行う(S15〜S18)。なお、上下左右の操作の方向は説明の便宜上である。実際には、携帯機器の持ち方により上下左右は変わりうるが、操作の方向は状態遷移したタッチセンサがどの辺に属するかによって決まる。
【0049】
ステップS23において、状態遷移したタッチセンサが複数箇所同時に発生したことが検出された場合、それらのタッチセンサは1辺に属しているかどうかを確認する(S19)。1辺のみであれば、ステップS14へ移行した上記の処理を行う。複数の辺にまたがっている場合には、タップと同時に状態遷移が発生したタッチセンサの辺(方向)を検出する(S20)。これに基づき、予め定めた複数方向と処理との対応テーブル(後述)から、実行すべき処理を検索する(S21)。対応テーブルに該当する入力・処理が記載されていなければ、当該操作を無視して、ステップS11へ戻る。対応テーブルに該当する入力・処理が記載されていれば、その処理を実行する(S23)。
【0050】
このように、同時に2点がタップされた場合、同じ辺の2点であれば、1点のタップと同じ結果となる。よって、隣接するタッチセンサの境界部がタップされても問題は発生しない。違う辺の2点が同時にタップされたことが検出されるということは、ユーザが故意にしない限り、自然の状態では起こりにくい。したがって、このような操作は特定の入力として利用することができる。
【0051】
図8に、複数同時タップ時の処理対応テーブルの例を示す。これは、携帯音楽プレーヤの用途を想定している。この図に示した内容はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。携帯音楽プレーヤの用途の他、テレビジョン装置等、他の任意のアプリケーションの操作にも利用することが可能である。
【0052】
図9は、何らかの要因で携帯機器が落下したとき(例えば手でキャッチしたような場合)に誤操作の発生を防ぐ入力処理のフローチャートを示す。この図において図7に示したステップと同様のステップには同じ参照番号を付してある。すなわち、図9におけるステップS11〜S23は図7の処理と同じであり、重複した説明は省略する。
【0053】
携帯機器が机に落ちた場合や、机上に投げられた場合にはタッチセンサが反応しないので、上記の処理でも誤操作は生じない。しかし、落下した携帯機器を手でキャッチした場合には誤操作の可能性がある。そこで、加速度センサが携帯機器の落下を検出できることを利用して、以下のような処理を追加する。
【0054】
図9において追加されたステップはS31〜S33である。ステップS31では加速度センサにて現在、携帯機器が落下状態にあるかどうかを監視する。落下状態にあるということは、加速度センサの3軸のいずれの加速度も0Gであることである。落下状態でなければステップS11へ進み、図7の処理と同じ処理を実行する。
【0055】
落下状態であることが検出されたら、落下終了まで待機する(S32)。この待機中は入力を抑止する。すなわち、例えばタッチセンサの出力を無視する。落下終了は加速度センサの3軸の加速度の合成が1Gとなることで分かる。落下終了が検出された時点からさらに所定時間(例えば1秒程度)待って(S33)、最初のステップS31へ戻る。所定時間待つ理由はこの間にも入力を抑止して、誤動作防止を徹底するためである。
【0056】
図10は、本実施の形態における携帯機器の動作を表す状態遷移図である。携帯機器は、入力を受け付けるデフォルト(default)状態11を基準として動作し、何か入力(センサ出力やイベント発生を含む)があるとデフォルト状態から別の状態に遷移し、その処理を終えればデフォルト状態に戻ってくるようになっている。この状態遷移図ではデフォルト状態11以外の状態では、入力を受け付けられないものとしている。デフォルト状態以外の状態での処理は一瞬で行われるので、ユーザが気付くことは無いものと想定している。
【0057】
デフォルト状態11において、タップ検出が単独であったときにはデフォルト状態11に戻る。デフォルト状態11においてタッチセンサのOFFからONの遷移が検出されたとき、タッチ状態更新12に移行し、現在のタッチセンサ出力ONを記憶してデフォルト状態11に戻る。タッチセンサ出力は、タッチセンサ毎に記憶しておき、タッチセンサの変化を検出するために利用する。タッチセンサのONからOFFへの遷移が検出されたとき、タッチ状態更新12に移行し、現在のタッチセンサ出力OFFを記憶してデフォルト状態11に戻る。
【0058】
デフォルト状態11において、タップと同時にタッチセンサのOFFからONへの遷移が1箇所検出されたとき、状態13へ移行する。状態13ではその遷移が生じたタッチセンサの属する辺に応じて、右、左、上、下の操作に対応する処理を実行する。ついで、状態12へ移行してタッチセンサ出力ONを記憶する。
【0059】
デフォルト状態11において、タップと同時にタッチセンサのOFFからONへの遷移が複数箇所検出されたとき、状態14へ移行し、複数のタッチされた辺を検索する。一つの辺の異なる箇所が同時にタッチされたと判定された場合、上記の状態13へ移行する。複数の辺が同時にタッチされたと判定された場合、状態15へ移行する。状態15では、上記対応テーブルを参照して、タッチされたパターンに処理が割り当てられているかどうかを検索する。割り振られていれば状態16へ移行し、その処理を実行する。その後、状態12へ移行する。割り振られていなければ、そのまま状態12へ移行する。
【0060】
タッチ操作に振動検出を組み合わせることにより、ユーザが端末を把持するときに不可避的に接触する筐体の周縁にタッチセンサを設けてもタッチ操作が誤検出されることが防止される。
【0061】
タッチセンサが静電式のものであれば、振動とタッチの組み合わせで入力を有効とすることによって、携帯機器をそのまま鞄にいれても誤操作がおきない(鞄や物によるタッチを認識しない)。したがって、従来、入力操作を抑止するために必要であった操作ロック機能が不要となる。
【0062】
筐体の周縁のタッチセンサにより操作を行う場合、表示画面のタッチパネルにタッチする操作に比べて、表示画面がタッチにより汚れることがない、タッチ操作時に表示が隠れない、等の利点がある。
【0063】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。
【0064】
例えば、複数のタッチセンサは、筐体の上下左右の4辺に配置したが、少なくとも2辺に配置されるものであってもよい。
【0065】
タッチセンサのセンサ出力の遷移はOFFからONへの遷移を利用したが、ONからOFFへの遷移を利用することも可能である。
【0066】
本発明の振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う技術は表示画面上のタッチパネルに利用することも可能である。また、このような表示画面上のタッチパネルと、周縁のタッチセンサとを一組のタッチセンサとして、上記の処理を適用することも可能である。その場合、本発明は、タッチパネル搭載機のロックキー廃止・誤操作防止にも利用することができる。
【0067】
電子機器は携帯機器に限るものではなく、据え置き型の機器であっても振動が検出できれば適用可能である。また、本発明は、ユーザの操作により得られた入力信号を外部へ出力するような入力装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
100…携帯機器、101…制御部、104…表示部、105…操作部、106…記憶部、113…加速度センサ、114a〜114l…タッチセンサ、115…バス、120…表示画面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタッチセンサと、
筐体の振動を検出する振動検出手段と、
前記複数のタッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う制御手段と
を備えた電子機器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数のタッチセンサのいずれかの出力の遷移と前記振動検出手段の振動検出出力とに基づいて、いずれかのタッチセンサの出力を入力信号として利用する請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記振動検出手段は加速度センサである請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記複数のタッチセンサは、前記筐体の上下左右の4辺のうち少なくとも2辺に配置された請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記複数のタッチセンサは、1辺に少なくとも2個配置された請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
タッチを検出するタッチセンサと、筐体の振動を検出する振動検出手段とを備えた電子機器における入力処理方法であって、
前記タッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う入力処理方法。
【請求項7】
タッチを検出するタッチセンサと、
筐体の振動を検出する振動検出手段と、
制御手段とを備え、
この制御手段は、前記タッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う
入力装置。
【請求項1】
複数のタッチセンサと、
筐体の振動を検出する振動検出手段と、
前記複数のタッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う制御手段と
を備えた電子機器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数のタッチセンサのいずれかの出力の遷移と前記振動検出手段の振動検出出力とに基づいて、いずれかのタッチセンサの出力を入力信号として利用する請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記振動検出手段は加速度センサである請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記複数のタッチセンサは、前記筐体の上下左右の4辺のうち少なくとも2辺に配置された請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記複数のタッチセンサは、1辺に少なくとも2個配置された請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
タッチを検出するタッチセンサと、筐体の振動を検出する振動検出手段とを備えた電子機器における入力処理方法であって、
前記タッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う入力処理方法。
【請求項7】
タッチを検出するタッチセンサと、
筐体の振動を検出する振動検出手段と、
制御手段とを備え、
この制御手段は、前記タッチセンサの出力と前記振動検出手段の出力とに基づいて、振動を伴うタッチを有効な入力として取り扱う
入力装置。
【図2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−262463(P2010−262463A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112522(P2009−112522)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(502087507)ソニー エリクソン モバイル コミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]