説明

電子機器、電子機器の制御方法、及び、プログラム

【課題】複数のコマンド体系をサポートする電子機器が、実行するコマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を保持できるようにする。
【解決手段】ホストコンピューター200から送信されるコマンドに基づき動作する複合機10は、ホストコンピューター200から送信される切り換えコマンドに対応して複数のコマンド体系を切り換え、コマンド体系を切り換えた後、さらにコマンド体系を切り換えるための所定の移行条件を設定し、設定した移行条件が成立した場合に、切り換え前のコマンド体系への復帰または他のコマンド体系への切り換えを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づき動作する電子機器、この電子機器の制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピューター等のホストコンピューターに接続されるプリンター等の電子機器には様々な種類があるが、通常、それら電子機器をホストコンピューターにより制御するための制御コマンドは、機種によって異なっている。ところが近年になって、例えば複数のホストコンピューターと複数のプリンターがネットワークを介して接続される場合のように、複数のホストコンピューターが1台の電子機器を共有する状況が発生してきた。このような状況で各ホストコンピューターが出力するコマンドのコマンド体系は、ホストコンピューターのオペレーティングシステムの仕様等により違っていることが多く、上記のような環境に設置された電子機器が、ただ一つのコマンド体系のみをサポートしているだけでは、利便性の低下が懸念される。そこで、複数のコマンド体系をサポートし、ホストコンピューターからの指示に応じてコマンド体系を切り換える機器の構成が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−123639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ホストコンピューターが使用するコマンド体系の中には、設計が古く、制御対象の電子機器が複数のコマンド体系を切り換えることを想定していないものがある。このようなコマンド体系を実行した場合、他のコマンド体系への切り換えを行うことができない。この場合には、例えば電子機器の電源を切断して再投入して切り換えをする等の操作が必要であった。つまり、他のコマンド体系への切り換え機能が定義されていないコマンド体系を使用した場合、他のコマンド体系への移行に支障を来すことがあった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数のコマンド体系をサポートする電子機器が、実行するコマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を保持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づき動作する電子機器であって、前記ホストコンピューターから送信される切り換えコマンドに対応して複数のコマンド体系を切り換えるコマンド制御手段と、前記コマンド制御手段がコマンド体系を切り換えた後、さらに前記コマンド体系を切り換えるための所定の移行条件を設定する移行条件設定手段と、を備え、前記コマンド制御手段は、前記移行条件設定手段により設定された前記移行条件が成立した場合に切り換え前のコマンド体系への復帰または他のコマンド体系への切り換えを行うこと、を特徴とする。
本発明によれば、コマンド体系を切り換えた後に、設定された移行条件が成立すると、この電子機器が使用するコマンド体系が切り換え前のコマンド体系へ復帰または他のコマンド体系に切り換える。このため、電子機器が、別のコマンド体系への切り換えコマンドが定義されていないコマンド体系を使用しても、別のコマンド体系への切り換えが可能となる。従って、実行するコマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を保持できる。
【0006】
また、本発明は、上記の電子機器において、前記所定の移行条件は、前記切り換えコマンドに含まれていることを特徴とする。
本発明によれば、ホストコンピューターから送信する切り換えコマンドにより、電子機器のコマンド体系を切り換えさせると同時に、その後のコマンド体系の移行条件を設定しておくことを一度に行うことができる。例えば、電子機器が所定のコマンド体系に移行して所定の動作を終了した後、ホストコンピューターから切り換えコマンドを受信しなくても、自動的に元のコマンド体系に戻ることが簡単に設定できる。
【0007】
また、本発明は、上記の電子機器において、前記コマンド制御手段は、通常動作用コマンド体系と、他装置のコマンド体系をエミュレートするエミュレーション用コマンド体系とを含む複数のコマンド体系を切り換え可能に構成され、前記コマンド制御手段は、前記コマンド制御手段が前記通常動作用コマンド体系から前記エミュレーション用コマンド体系に切り換えた後、前記移行条件設定手段により設定された前記移行条件が成立した場合に、前記エミュレーション用コマンド体系から前記通常動作用コマンド体系への復帰を行うことを特徴とする。
本発明によれば、他装置をエミュレートするコマンド体系に切り換えを行い、この他装置のエミュレーション用コマンド体系において他のコマンド体系への切り換えコマンドが定義されていない場合であっても、移行条件の成立により切り換え前のコマンド体系に復帰する。これにより、他の低機能の機種の動作をエミュレートするためにやむを得ず低機能のコマンド体系を使用する場合であっても、使用後、高機能の他のコマンド体系への切り換えを可能とすることができる。このため、他の機種の正確なエミュレーションを可能としつつ、利便性を確保できる。
【0008】
また、本発明は、上記の電子機器において、前記コマンド制御手段が切り換え可能なコマンド体系には、前記切り換えコマンドに対応している移行コマンド体系と、前記切り換えコマンドに対応していない非移行コマンド体系が含まれており、前記移行条件設定手段は、前記コマンド制御手段が前記非移行コマンド体系への切り換えを行うための所定の前記移行条件を設定することを特徴とする。
本発明によれば、電子機器が使用する切り換えコマンドに対応している移行コマンド体系を、他のコマンド体系への移行を指示するコマンドを持たない非移行コマンド体系に切り換えた場合に、本来は非移行コマンド体系から他のコマンド体系への移行が不可能であるにも関わらず、移行条件を設定しておいて当該移行条件の成立により他のコマンド体系に切り換えることが可能となる。従って、実行するコマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を保持できる。
【0009】
また、本発明は、上記の電子機器において、前記ホストコンピューターから送信されるコマンドに従って処理対象媒体に印刷を行う印刷部と、前記ホストコンピューターから送信されるコマンドに従って処理対象媒体を光学的に読み取る光学読取装置と、を備え、前記コマンド制御手段は、前記ホストコンピューターから送信されたコマンドが前記印刷部向けのコマンドか前記光学読取装置向けのコマンドかを判別し、その判別結果に応じて、印刷部制御用のコマンド体系と、光学読取装置制御用のコマンド体系とを切り換えることを特徴とする。
本発明によれば、コマンド体系が異なる印刷部と光学読取装置とを備えた複合機として構成される電子機器が、ホストコンピューターから送信されたコマンドが対象とする印刷部または光学読取装置に対応して、使用するコマンド体系を切り換えることができるので、機能ごとに異なるコマンドを切り換えて実行できる。また、印刷部または光学読取装置が使用するいずれかのコマンド体系が、他のコマンド体系へ切り換える切り換えコマンドを含まないものであった場合も、移行条件の成立により他のコマンドへの移行が可能となるので、コマンド体系の仕様に関わらず利便性を確保できる。
【0010】
また、本発明は、上記の電子機器において、前記移行条件設定手段は、前記移行条件として、前記コマンド制御手段が前記コマンド体系を切り換えてから所定時間の経過時、前記ホストコンピューターから受信した全コマンドの実行完了、前記ホストコンピューターから受信した一のコマンドの実行完了のいずれかを含む条件を設定することを特徴とする。
本発明によれば、コマンド体系を切り換えてからの経過時間、受信した全コマンドの実行完了、あるいは一のコマンドの実行完了の少なくともいずれかを契機として他のコマンドに確実に移行するので、コマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を確実に保持できる。他に、契機とするものは、コマンドを受信する受信バッファーが空になった時、電子機器が印刷部を備える場合、改行や改ページを実行した時、としてもよい。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明は、ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づき動作する電子機器の制御方法であって、前記ホストコンピューターから送信される切り換えコマンドに対応して複数のコマンド体系を切り換えた後、さらに前記コマンド体系を切り換えるための所定の移行条件を設定し、設定した前記移行条件が成立した場合に切り換え前のコマンド体系への復帰または他のコマンド体系への切り換えを行うこと、を特徴とする。
本発明の制御方法を実行することにより、電子機器がコマンド体系を切り換えた後に、設定された移行条件が成立すると、この電子機器が使用するコマンド体系が切り換え前のコマンド体系への復帰または他のコマンド体系に切り換える。このため、電子機器が、別のコマンド体系への切り換えコマンドが定義されていないコマンド体系を使用しても、別のコマンド体系への切り換えが可能となる。従って、実行するコマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を保持できる。
【0012】
また、上記課題を解決するため、本発明は、ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づき動作する電子機器の各部を制御する制御部が実行可能なプログラムであって、前記ホストコンピューターから送信される切り換えコマンドに対応して複数のコマンド体系を切り換えた後、さらに前記コマンド体系を切り換えるための所定の移行条件を設定し、設定した前記移行条件が成立した場合に切り換え前のコマンド体系への復帰または他のコマンド体系への切り換えを行うこと、を特徴とする。
本発明のプログラムを制御部が実行することにより、電子機器がコマンド体系を切り換えた後に、設定された移行条件が成立すると、この電子機器が使用するコマンド体系が切り換え前のコマンド体系への復帰または他のコマンド体系に切り換える。このため、電子機器が、別のコマンド体系への切り換えコマンドが定義されていないコマンド体系を使用しても、別のコマンド体系への切り換えが可能となる。従って、実行するコマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を保持できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子機器が、別のコマンド体系への切り換えコマンドが定義されていないコマンド体系を使用しても、別のコマンド体系への切り換えが可能となるので、実行するコマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態における複合機の外観斜視図である。
【図2】複合機の本体を示す斜視図である。
【図3】複合機本体の側断面図である。
【図4】複合機の制御系のブロック図である。
【図5】ホストコンピューターと複合機の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】複合機の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】複合機の動作モードの切り換えの様子を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る複合機の外観を示す正面斜視図である。図2は、複合機10の本体11を示す外観斜視図である。図3は、図1の複合機10を示す側断面図である。
図1に示す複合機10は、処理対象媒体としての記録媒体Sに、SIDM(Serial Impact DotMatrix)方式の記録ヘッド18(図3参照)により印刷するプリンター機能、記録媒体Sに磁気インクで記録された文字を読み取るMICR(Magnetic Ink Character Recognition)機能、記録媒体Sに設けられた磁気ストライプに記録された情報の読取/書込を行うMSR(Magnetic Stripe Reader/Writer)機能、記録媒体Sの両面を光学読取装置110(図3参照)によって光学的にスキャンするスキャナー機能を備えた装置である。
【0016】
複合機10で使用可能な記録媒体S(媒体)としては、所定長さに切断されたカット媒体と、複数枚が連接された連続紙とが挙げられる。カット媒体としては、例えば単票紙や単票複写紙などの他、通帳や葉書、封筒などがあり、連続紙には連続複写紙やミシン目などで連接されたファンフォールド紙を含む。本実施形態では、記録媒体Sとして、金融機関等が発行する小切手または手形(以下、総称して小切手という)や、金融機関等が発行する通帳が使用される。小切手は、磁気インクによって、その表面の一部の領域MAに使用者の口座番号や当該小切手のシリアル番号等のMICR情報が印刷された単票紙である。通帳は、複数枚の記録用紙が綴じられた冊子形態となっており、この冊子を開いた内側の面が記録面となっている。通帳の裏表紙に相当する面の後部には、磁気ストライプが設けられている。
なお、以下の説明では、矩形の記録媒体Sの4辺のうち、複合機10へ向かって差し込まれる側の辺を先端とし、この先端と対向する側の辺を後端とする。
【0017】
複合機10は、図1に示すように、外装体としての上部カバー12、上部ケース13及び下部ケース14を備え、上部ケース13及び下部ケース14の前面には、記録媒体Sを挿入及び排出する手差口15が開口している。一方、上部ケース13及び下部ケース14の背面には記録媒体Sを排出する排出口20が開口している。複合機10により処理された記録媒体Sを手差口15から排出するか、或いは排出口20から排出するかは、後述するホストコンピューター200から複合機10に対して送信されるコマンドにより設定できる。手差口15が開口した側、すなわち図3中の左側をフロント(前)側とし、排出口20が開口した側、すなわち図3中の右側をリア(後)側とする。
複合機10は、図2に示すように、上記の外装体に覆われる本体11を有している。本体11は、下本体部11Aと、この下本体部11Aの後端部に軸11Cで支持される上本体部(図示略)とを備えている。上本体部は、上本体部の左側面に設置されている開閉レバー(図示略)の操作によって回転可能であり、上本体部を回転させると本体11の内部が露出する。
【0018】
図2及び図3に示すように、本体11は、ベースフレーム16と、このベースフレーム16の両端に固定される一対の右サイドフレーム17A及び左サイドフレーム17Bとを備える。両サイドフレーム17A、17Bの外側には、上本体部の両サイドフレーム(図示略)があり、その間にキャリッジガイド軸31が架け渡されると共に、両サイドフレーム17A、17B間に平坦面形状の前方媒体案内24及び後方媒体案内25が固定して設けられる。これらの前方媒体案内24と後方媒体案内25との間に、平面形状のプラテン21が配置され、このプラテン21の上方には、プラテン21に対向するように記録ヘッド18が配置されている。
記録ヘッド18は、キャリッジガイド軸31に摺動自在に挿通されるキャリッジ19に搭載されている。キャリッジ19は、当該キャリッジ19を駆動するキャリッジ駆動モーター56(図4)の正転又は逆転により、タイミングベルト(図示略)を介して駆動され、キャリッジガイド軸31に案内されて往復移動される。キャリッジ19は、図1中符号Xで示す方向、すなわち、キャリッジガイド軸31の軸方向及びプラテン21の長手方向と一致する主走査方向に、上本体部両サイドフレームの間で往復走査される。なお、キャリッジ19の主走査方向Xに直交する方向、すなわち図1中符号Yで示す方向を副走査方向とする。
【0019】
キャリッジ19に搭載される記録ヘッド18は、キャリッジ19と共に走行される間に、その先端面においてプラテン21に対向するワイヤー突出部(図示略)から記録ワイヤーを突出させてインクリボンに打ち当て、プラテン21と記録ヘッド18との間に搬送される記録媒体Sにインクリボンのインクを付着させて、記録媒体Sに文字を含む画像を記録する。インクリボンは、上記の本体フレーム又はキャリッジ19に装着されるリボンカートリッジ(図示略)内に折り畳まれて収納され、キャリッジ19の走査に伴って繰り出される。また、記録ヘッド18の後方側には、図3に示すように、プラテン21の上方に位置するように媒体幅センサー55が配設される。媒体幅センサー55は、キャリッジ19に搭載されてキャリッジ19とともにプラテン21上を走査され、記録媒体Sの側端の位置や記録媒体Sの幅を求めるために使用される。
【0020】
プラテン21は、図2、図3に示すように、キャリッジ19の走行方向に延在して平面形状に形成され、付勢ばね180により記録ヘッド18に向けて付勢され、かつ弾性支持されている。付勢ばね180は圧縮コイルばねであり、この付勢ばね180の付勢力により、記録ヘッド18の記録動作時における記録ワイヤーの突出力が支持される。また、プラテン21は、記録媒体Sの搬送中にこの記録媒体Sの厚さが変化した場合、又は本体11に厚さの異なる記録媒体Sが搬入された場合に、付勢ばね180の付勢力に抗して、記録ヘッド18の先端により押圧されて記録ヘッド18から離れる方向に移動する。これにより、記録媒体の厚さにかかわらず、記録ヘッド18の先端と記録媒体Sの記録面との間のギャップが一定に確保される。
【0021】
本体11は、図3に示すように、記録媒体Sを搬送する媒体搬送機構100と、この媒体搬送機構100により搬送される記録媒体Sの先端が突き当てられて当該記録媒体Sを整列させる整列機構28と、小切手に設けられたMICR情報の読み取りや、通帳に設けられた磁気ストライプに対して磁気情報の読み取り又は書き込みを行う磁気ヘッド34を備えた磁気データ読書部29と、この磁気データ読書部29の磁気ヘッド34がMICR情報の読み取りを含む磁気情報処理の実行時に、記録媒体Sの浮き上がりを抑制すべく、記録媒体Sを上から押える媒体押え部30と、を有している。
【0022】
媒体搬送機構100は、図2、図3に示すように、プラテン21、第1駆動ローラー22A、第1従動ローラー22B、第2駆動ローラー23A、第2従動ローラー23B、第3駆動ローラー124A、第3従動ローラー124B、前方媒体案内24、後方媒体案内25、媒体搬送モーター26及び駆動輪列部27を備えて構成されている。媒体搬送機構100は、前方媒体案内24及び後方媒体案内25上に、各ローラーを介して記録媒体Sを搬送する搬送路Pを構成し、前方媒体案内24及び後方媒体案内25の上面が搬送路Pの搬送面PAとなっている。
本構成では、第1駆動ローラー22A、第1従動ローラー22Bは、プラテン21及び記録ヘッド18に対して本体11のフロント側に配置され、第2駆動ローラー23A、第2従動ローラー23B及び第3駆動ローラー124A、第3従動ローラー124Bは、プラテン21及び記録ヘッド18に対して本体11のリア側に順次配置されている。
【0023】
第1駆動ローラー22Aと第1従動ローラー22Bとは、上下方向に配置されて対をなし、第2駆動ローラー23Aと第2従動ローラー23Bとは、上下方向に配置されて対をなし、第3駆動ローラー124Aと第3従動ローラー124Bとは、上下方向に配置されて対をなす。
第1駆動ローラー22A、第2駆動ローラー23A及び第3駆動ローラー124Aは、媒体搬送モーター26及び駆動輪列部27によって回転駆動される駆動ローラーであり、第1従動ローラー22B、第2従動ローラー23B及び第3従動ローラー124Bは、それぞれ第1駆動ローラー22A、第2駆動ローラー23A、及び、第3駆動ローラー124A側に所定の押圧力でばね42A、42B、42Cによりばね付勢されている従動ローラーである。これによって、第1駆動ローラー22Aと第1従動ローラー22Bとが互いに反対方向に回転駆動され、第2駆動ローラー23Aと第2従動ローラー23Bとが互いに反対方向に回転駆動され、第3駆動ローラー124Aと第3従動ローラー124Bとが互いに反対方向に回転駆動される。
【0024】
駆動輪列部27は、図2に示すように、右サイドフレーム17Aの外側に配置される。この駆動輪列部27は、正転又は逆転可能な媒体搬送モーター26の駆動軸に回転一体に固定されたモーターピニオン51を備える。このモーターピニオン51からの駆動力が、減速ギア52を介して第2駆動ローラー23Aの第2ローラー軸33に取り付けられた第2駆動ギア53Bへ伝達され、更に、この第2駆動ギア53Bから中間ギア54を介して第1駆動ローラー22Aの第1ローラー軸32に取り付けられた第1駆動ギア53Aに伝達される。また、第2駆動ローラー23Aの第2ローラー軸33の回転力が、例えば、駆動ベルト(図示略)によって第3駆動ローラー124Aの第3ローラー軸134に伝達される。これにより、図3に示す第1駆動ローラー22A、第2駆動ローラー23A、及び、第3駆動ローラー124Aが同一方向に回転して、記録媒体Sを本体11内に搬送可能とする。つまり、図3に示す第1駆動ローラー22A、第2駆動ローラー23A、及び、第3駆動ローラー124Aは、媒体搬送モーター26が正転している場合、副走査方向に沿って、図中符号Aで示すように本体11内に記録媒体Sを搬送し、媒体搬送モーター26が逆転している場合、図中符号Bで示すように、本体11内から排出する方向に記録媒体Sを搬送する。
【0025】
整列機構28は、記録ヘッド18による記録媒体Sへの記録や、光学読取装置110による記録媒体Sの表面の読み取りを行う前に、この記録媒体Sを整列するものである。整列機構28は、第1駆動ローラー22A及び第1従動ローラー22Bと記録ヘッド18及びプラテン21との間に、主走査方向に並べて設けられ、搬送路P内に突出する複数の整列板38と、整列板38を駆動する整列モーター58(図4)とを備え、これら整列板38に記録媒体Sの先端部を突き当てることで記録媒体Sの向き整列させることができる。
【0026】
本体11は、図2に示すように、搬送路Pにおける整列板38の上流側近傍に、これら整列板38に突き当てられた記録媒体Sの有無を検知する複数の整列センサー39を備える。整列センサー39は、それぞれ搬送路Pを挟んで対向する発光部(LED等)と受光部(フォトトランジスター等)とを備える光透過型のセンサーであり、主走査方向に並べて配設されている。複数の整列センサー39のうち記録媒体Sの先端を検出したセンサーの数及び配置により、整列機構28による整列後の記録媒体Sの搬送方向に対する傾きが、許容範囲内あるか否かを判定できる。
また、複合機10は、媒体搬送モーター26の駆動制御、キャリッジ19の走行制御、記録ヘッド18の記録ワイヤーによる記録動作の制御、光学読取装置110の読取動作の制御等、複合機10の全体を制御する制御部として、例えば本体11の後側の下方に、制御基板部(図示略)を備えている。
【0027】
本体11において、第1駆動ローラー22Aのフロント側には、搬送路Pへの記録媒体Sの挿入を検知する複数の媒体端センサー47が並設されている。これら媒体端センサー47は、搬送路Pに向けて光を発する発光部と、その反射光を検出する受光部とを備えた光反射型センサーであり、手差口15から挿入された記録媒体Sを検出する。なお、媒体端センサー47は搬送路Pを挟んで対向するように発光部と受光部とを配した光透過型センサーであっても良い。本構成では、すべての媒体端センサー47の受光部が、受光した状態から、いずれか1つの媒体端センサー47で受光が遮られた場合には、記録媒体Sが搬送路P内に挿入されたと判断される。
【0028】
また、本体11は、図3に示すように、記録媒体Sの表面に表示された文字、記号または画像等を読み取る光学読取装置110を備える。この光学読取装置110は、記録媒体Sの上面側に印刷等で表示されている情報を読み取る第1スキャナーモジュール111と、この第1スキャナーモジュール111に対向配置され、当該記録媒体Sの下面側に印刷等で表示されている情報を読み取る第2スキャナーモジュール112とを備える。通常、記録媒体Sは、MICR情報が印刷されている面が下面になるよう、手差口15から挿入される。
第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112は、第2駆動ローラー23Aと第3駆動ローラー124Aとの間に配置され、搬送路Pを搬送中の記録媒体Sの情報を連続的に読み取る光学イメージセンサーである。
【0029】
第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)型の画像読取センサーであり、記録媒体Sに密着する平坦なカバーガラス140、150と、これらカバーガラス140、150を保持する本体ケース141、151とをそれぞれ備える。これら本体ケース141、151の内側には、LED等の光源から出力される光を記録媒体Sの読み取り領域に対して照射する照射部(図示略)と、主走査方向(X方向)に一列に配列された複数の受光センサー(図示略)と、この受光センサーからの信号を上記制御基板部に出力する出力部(図示略)とがそれぞれ収容されている。
本実施形態では、第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112はCISを備えたものに限らず、CCD(Charge Coupled Device)を備えたものであってもよい。また、第2スキャナーモジュール112は、図2に示すように、プラテン21と略平行に複合機10の幅方向に延在して長手形状に構成される本体ケース151及びカバーガラス150を備え、この本体ケース151は、カバーガラス150の上面(ガラス面)が後方媒体案内25に形成された開口を通じて搬送路Pに露出するように配置されている。第1スキャナーモジュール111は、図3に示すように、カバーガラス140の下面(ガラス面)が、上記カバーガラス150の上面に対向するように第2スキャナーモジュール112の上方に設けられ、幅方向においても第2スキャナーモジュール112と略同一の長さの長手形状に形成されている。
【0030】
第1スキャナーモジュール111の上部には付勢部材113が設けられ、第1スキャナーモジュール111は、付勢部材113によって後方媒体案内25の記録媒体Sに対して近接するように付勢されている。また、付勢部材113は、第1スキャナーモジュール111を幅方向に渡って略均一な力で第2スキャナーモジュール112側に押し付けている。ここで、付勢部材113としては、コイルばねや板ばね、或いは、エラストマー製のクッション部材等を使用できる。カバーガラス140、150のガラス面間には、所定の厚さの記録媒体が入り込み可能な間隔が設けられており、記録媒体Sを読み取る際には、搬送された記録媒体Sによって第1スキャナーモジュール111が上方に押し退けられ、付勢部材113が縮むことによりカバーガラス140、150間を記録媒体Sが通過可能となる。すなわち、光学読取装置110では、付勢部材113によって付勢された第1スキャナーモジュール111によって記録媒体Sを第2スキャナーモジュール112側に押し付けることで、記録媒体Sとカバーガラス140、150のガラス面とを確実に密着させて、読み取り品質を向上させている。
【0031】
第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112の受光センサー(図示略)は、複合機10の主走査方向に一列に並べられ、主走査方向に延びるライン状に読み取りを行う。第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112の受光センサーは、主走査方向における記録ヘッド18の印字可能範囲よりも広い範囲に配設されており、複合機10が印刷可能な全ての記録媒体よりも広い幅で読み取りを行える。すなわち、光学読取装置110は、複合機10で使用する全ての記録媒体Sの全面を読み取ることができる。
第1スキャナーモジュール111と第2スキャナーモジュール112とは、図3に示すように搬送路Pを挟んで対向して配設されているが、第1スキャナーモジュール111が備えるライン状の受光センサーと、第2スキャナーモジュール112が備えるライン状の受光センサーとは、記録媒体Sの搬送方向において5mm程度オフセットされている。この構成により、互いの光源からの光が他方の受光センサーに与える影響を解消でき、より高い読取品質が得られる。
【0032】
第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112は、それぞれ、R、G、Bの光源を備え、モノクロ(2値、16階調、256階調)及びフルカラーの読み取りが可能である。また、第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112の読取解像度は、例えば、200dpi(ドット/インチ)、300dpi、600dpiの3段階に設定可能である。記録媒体Sの搬送方向(副走査方向)における読取ライン数は、主走査方向における読取解像度に合わせて設定され、読み取り時の記録媒体Sの搬送速度は読取解像度と、受光センサーの検出値の処理速度等の仕様に合わせて調整される。
【0033】
図4は、複合機10の制御系の構成を示すブロック図である。
この図4に示す各部は、制御基板(図示略)に実装されたハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
複合機10は、制御プログラムに基づいて複合機10の全体を制御する制御部としてのCPU40、CPU40によりFLASH−ROM42から読み出された制御プログラムやデータ等を一時的に記憶するRAM41、CPU40により実行される制御プラグラムや処理されるデータ等を記憶したFLASH−ROM42、複合機10を制御するホストコンピューター200との間で情報を送受信する際のデータ形式を変換するシリアルインターフェイス(I/F)43及びUSBインターフェイス44、各種センサー類に接続されたゲートアレイ(G/A)45、各種モーターを駆動するモータードライバー46、及び、ヘッドを駆動するヘッドドライバー48を備え、これらの各部はバス49を介して接続されている。RAM41は、ホストコンピューター200から送信された各種コマンドを一時的に記憶する受信バッファー66(図5)、光学読取装置110が読み取った読取画像データを一時的に記憶する画像バッファー等のバッファーメモリーとして機能する。
【0034】
ゲートアレイ45には、整列センサー39、媒体端センサー47、媒体幅センサー55、第1スキャナーモジュール111、及び、第2スキャナーモジュール112が接続されている。ゲートアレイ45は、整列センサー39、媒体端センサー47及び媒体幅センサー55から入力されるアナログ電圧を量子化してデジタルデータとし、CPU40に出力する。第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112は、記録媒体Sの表面をCISにより光学的に読み取り、CISの検出電圧をCISの画素毎にゲートアレイ45に供給し、ゲートアレイ45は、第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112から供給されたアナログ電圧を量子化してデジタルデータとしCPU40に出力する。また、ゲートアレイ45には磁気ヘッド34が接続され、ゲートアレイ45は磁気ヘッド34に対して読取/書込用の駆動電流を出力するとともに、磁気データの読み取りを行う場合には、磁気ヘッド34の検出電圧(アナログ電圧)を検出し、デジタルデータとしてCPU40に出力する。
モータードライバー46は、媒体搬送モーター26、キャリッジ駆動モーター56、磁気ヘッド駆動モーター57、及び整列モーター58に接続され、これら各モーターに駆動電流や駆動パルスを供給して、これらのモーターを動作させる。なお、モータードライバー46には、整列板38(図3)を動作させる整列モーター58(図4)等が接続されていてもよい。
ヘッドドライバー48は、記録ヘッド18に接続され、記録ヘッド18に対して駆動電流を供給することによって記録ワイヤーを突出させる。
【0035】
CPU40は、FLASH−ROM42に格納された制御プログラムに基づいて、ゲートアレイ45、モータードライバー46及びヘッドドライバー48を介して、各種センサーの検知状態を取得するとともに各モーターを駆動して記録媒体Sを搬送し、各ヘッドを駆動することにより、記録媒体Sへの記録を実行する。また、CPU40は、媒体搬送機構100により記録媒体Sを搬送し、ゲートアレイ45によって第1スキャナーモジュール111及び第2スキャナーモジュール112によって記録媒体Sの表面を読み取る。この読取の実行中、CPU40は、ゲートアレイ45から入力されるデータを順次RAM41内に設けられたバッファーメモリー(図示略)に一時的に記憶させる。そして、CPU40は、このバッファーメモリー(図示略)に記憶された画像データを読み出して、シリアルインターフェイス43、USBインターフェイス44を介してホストコンピューター200へ送信する。
【0036】
この図4に示す複合機10の制御系は、FLASH−ROM42に記憶された制御プログラムをCPU40により実行することで、複合機10の本体11の各部を駆動制御して、ホストコンピューター200から送信されるコマンドに従って動作し、上記の印刷機能、MICR機能、MSR機能、及び光学読取機能を実現する。
【0037】
図5は、複合機10及びホストコンピューター200の機能的構成を示すブロック図である。
ホストコンピューター200は、CPU(図示略)によって各種プログラムを実行することにより、図5に示す各部を実現する。すなわち、ホストコンピューター200は、アプリケーションプログラム201と、アプリケーションプログラム201に対して複合機10を制御するための機能モジュールを提供するスキャナードライバー211、MICRドライバー213、MSRドライバー215、及びプリンタードライバー217の各デバイスドライバーと、各デバイスドラ一バーに対しホストコンピューター200が備える入出力ポートを割り当てるポートハンドラー221とを備え、ポートハンドラー221の制御により、USBポート231、シリアルポート233及びパラレルポート235を介して複合機10との間で各種データや制御信号が入出力される。
ポートハンドラー221は、ホストコンピューター200のCPU(図示略)が実行するオペレーティングシステムの機能としてソフトウェア的に実現される。USBポート231は、ホストコンピューター200のハードウェア基板に実装されたUSB規格に準拠したコネクター及びUSBホストコントローラーと、これらに対応するオペレーティングシステム上の論理的な入出力ポートで構成される。シリアルポート233は、上記ハードウェア基板に実装された、RS−232C規格に準拠したコネクター及びRS232コントローラーと、これらに対応するオペレーティングシステム上の論理的な入出力ポートで構成される。パラレルポート235は、上記ハードウェア基板に実装された、IEEE1284規格に準拠したコネクター及びパラレルポートコントローラーと、これらに対応するオペレーティングシステム上の論理的な入出力ポートで構成される。
【0038】
アプリケーションプログラム201は、例えば金融機関において帳票を処理するためのアプリケーションプログラムであり、帳票印刷、小切手処理、通帳処理等の機能を備えている。アプリケーションプログラム201は、上記の機能の実行時に、スキャナードライバー211、MICRドライバー213、MSRドライバー215及びプリンタードライバー217の各デバイスドライバーに対して要求を出力し、この要求への応答として入力されるデータを処理する。このアプリケーションプログラム201の要求により、複合機10における通帳への印刷、小切手への印刷、小切手のMICR文字の読取、通帳の磁気ストライプの読取、小切手の両面スキャン等が行われる。
スキャナードライバー211、MICRドライバー213、MSRドライバー215、及びプリンタードライバー217の各デバイスドライバーは、アプリケーションプログラム201から出力される要求を実現するためのコマンドを生成し、ポートハンドラー221に出力し、このコマンドへの応答として複合機10から送信されたデータを取得することで、複合機10を管理する。
【0039】
これに対し、複合機10は、シリアルインターフェイス43及びUSBインターフェイス44を介してホストコンピューター200から送信されたコマンド及びデータを一時的に記憶する受信バッファー66を備えている。複合機10は、シリアルインターフェイス43及びUSBインターフェイス44のいずれか、若しくは両方をホストコンピューター200に接続することが可能であり、これらシリアルインターフェイス43、USBインターフェイス44を介して受信したコマンドやデータは全て、受信バッファー66に一時的に記憶する。
複合機10は、受信バッファー66に蓄積されたコマンドを実行する制御部70を有する。この制御部70は、CPU40(図4)により制御プログラムを実行することで実現される。
制御部70は、プリンター制御モード71、プリンター制御モード72、スキャナー制御モード75、MICR制御モード76、及びMSR制御モード77の各動作モードを切り替えて実行可能である。プリンター制御モード71及びプリンター制御モード72は、記録ヘッド18によって、記録媒体Sとしての小切手や通帳に印刷を行う動作モードであり、図4に示したゲートアレイ45、モータードライバー46及びヘッドドライバー48により、整列センサー39、媒体端センサー47、媒体幅センサー55の各センサーの検出値に基づいて、媒体搬送モーター26、キャリッジ駆動モーター56、整列モーター58及び記録ヘッド18を駆動する。これにより、プリンター制御モード71、72は、必要に応じて記録媒体Sの搬送と整列を行い、記録媒体Sに文字や記号等を印刷する。
スキャナー制御モード75は、光学読取装置110によって記録媒体Sの光学的な読取を実行する動作モードである。スキャナー制御モード75は、ゲートアレイ45及びモータードライバー46を制御して、媒体端センサー47及び媒体幅センサー55の各センサーの検出値に基づいて、媒体搬送モーター26を駆動し、必要に応じて記録媒体Sを搬送し、第1スキャナーモジュール111、第2スキャナーモジュール112が出力するデータを取得する。
MICR制御モード76は、記録媒体Sに記録された磁気インク文字を読み取る動作モードである。MICR制御モード76は、ゲートアレイ45、モータードライバー46及びヘッドドライバー48を制御して、媒体端センサー47及び媒体幅センサー55の各センサーの検出値に基づいて、媒体搬送モーター26、磁気ヘッド駆動モーター57及び磁気ヘッド34を駆動し、磁気ヘッド34の検出値を取得して解析を行う。
MSR制御モード77は、記録媒体Sが有する磁気ストライプに記録された情報の読取と情報の書込を行う動作モードである。MSR制御モード77は、ゲートアレイ45、モータードライバー46及びヘッドドライバー48を制御して、媒体端センサー47及び媒体幅センサー55の各センサーの検出値に基づいて、媒体搬送モーター26、磁気ヘッド駆動モーター57及び磁気ヘッド34を駆動し、必要に応じて記録媒体Sを搬送し、磁気ヘッド34の検出値を取得して磁気ストライプの読取を行うとともに、磁気ストライプへの情報の書込を行う。
【0040】
ところで、ホストコンピューター200から複合機10へ送信されるコマンドは、所定のコマンド体系により定義されたコマンドである。ホストコンピューター200は、スキャナードライバー211、MICRドライバー213、MSRドライバー215及びプリンタードライバー217がそれぞれ特定のコマンド体系に対応しており、そのコマンド体系に定義されたコマンドを複合機10へ送信する。例えば、スキャナードライバー211はTWAIN規格に準拠したAPIを有し、スキャナー制御コマンドを複合機10へ送信する。
【0041】
これに対し、複合機10の制御部70が有する各動作モードは、それぞれ異なるコマンド体系(コマンド群)に対応している。例えばプリンター制御モード71はコマンド体系Vに対応し、プリンター制御モード72はコマンド体系Wに対応する。複合機10をプリンターとして動作させて印刷を行うプリンター制御モードが複数あるのは、他のプリンターの動作をエミュレートするためである。
すなわち、プリンター制御モード72は、複合機10以外の他のプリンター(ここでは、プリンターWとする)向けに提供されているコマンド体系(コマンド体系W)のコマンドに従って動作するための動作モードである。ホストコンピューター200にプリンターWを接続して使用していたシステムにおいて、プリンターWを複合機10に入れ替えた場合、通常は、ホストコンピューター200のプリンタードライバー217を、複合機10に適合したデバイスドライバーに入れ替える必要がある。しかしながら、複合機10は、プリンターWの動作をエミュレートし、複合機10をプリンターWと同じコマンドに従って動作させるプリンター制御モード72を有する。このプリンター制御モード72を実行することで、ホストコンピューター200が、プリンターW向けのプリンタードライバー217を使用し続けることができ、デバイスドライバーの入れ替えに伴う作業負担を回避できる上、デバイスドライバーの入れ替えに起因するホストコンピューター200のシステムトラブルを回避できるというメリットがある。本実施形態の複合機10は、オリジナルの動作モードであるプリンター制御モード71に加え、プリンターWをエミュレートするためのプリンター制御モード72を有する構成であるが、より多くの機種のエミュレーションを可能とするため、多数のプリンター制御モードを複合機10に設けることも勿論可能である。このプリンター制御モード72のコマンド体系Wはエミュレーション用コマンド体系に相当し、プリンター制御モード71のコマンド体系V等は通常動作用コマンド体系に相当する。
【0042】
また、スキャナー制御モード75、MICR制御モード76及びMSR制御モード77は、それぞれ、各機能に適したコマンド体系に対応しており、例えば、スキャナー制御モード75及びMICR制御モード76はコマンド体系L、Mに対応している。これらスキャナー制御モード75、MICR制御モード76及びMSR制御モード77が対応するコマンド体系L、M、Nは、ホストコンピューター200のスキャナードライバー211、MICRドライバー213、及びMSRドライバー215が使用するコマンド体系と一致またはこれを包含するコマンド体系であれば良く、その具体的構成は任意である。例えば、複合機10に独自のコマンド体系であっても良いし、業界標準のコマンド体系や、他の機種のエミュレーションをするコマンド体系であってもよい。
【0043】
複合機10の制御部70は、ホストコンピューター200から送信されて受信バッファー66に蓄積されているコマンドを、例えば受信順に解析して実行する。制御部70は、プリンター制御モード71、72、スキャナー制御モード75、MICR制御モード76及びMSR制御モード77のいずれかの動作モードを実行しており、いずれの動作モードにも属しない状態にはなり得ない。必ずいずれかのコマンド体系に対応して動作可能でなければ、コマンドを解析して実行できないためである。
本実施形態の複合機10は、基本的な動作モードとしてプリンター制御モード71を実行する。プリンター制御モード71が対応するコマンド体系Vには、他の動作モードへの切り換えを指示するコマンドが含まれており、このコマンドを受信した制御部70が、プリンター制御モード71からプリンター制御モード72、スキャナー制御モード75、MICR制御モード76、及びMSR制御モード77へ移行できる。また、プリンター制御モード71が対応するコマンド体系は、プリンター制御モード72、スキャナー制御モード75、MICR制御モード76及びMSR制御モード77が対応するコマンド体系W、L、M、Nに含まれるコマンドが定義され、このコマンドを受信した場合に、その対応する動作モードに移行してコマンドを実行することが可能になっている。例えば、プリンター制御モード71が対応するコマンド体系Vにはスキャナー制御に必要な読取開始コマンドが含まれている。このため、複合機10がプリンター制御モード71によりプリンターとして動作した後に、スキャナーの読取開始コマンドを受信した場合には、プリンター制御モード71からスキャナー制御モード75に移行して光学読取装置110による読取が開始される。
このように、プリンター制御モード71が対応するコマンド体系Vは、他のコマンド体系への切り換えコマンドに対応している移行コマンド体系に相当する。これに対し、プリンター制御モード72が対応するコマンド体系Wは、他のコマンド体系への移行を指示する切り換えコマンドに対応していない非移行コマンド体系に相当する。
【0044】
図6は、複合機10の動作の一例を示すフローチャートである。
この図6に例示する動作は、記録媒体Sとして小切手が手差口15から挿入された場合に、この小切手のMICR文字を読み取り、小切手の両面をスキャンし、印刷を行って排紙する一連の動作である。
複合機10の制御部70は、プリンター制御モード71で起動し、手差口15に小切手が挿入されたことを媒体端センサー47の検出値に基づいて検出すると(ステップS11)、モータードライバー46を制御して整列モーター58を動作させ、整列板38を搬送路Pに進出させるとともに、媒体搬送モーター26を動作させて、小切手の向きを整える整列動作を行う(ステップS12)。ここで、制御部70は、ゲートアレイ45により整列センサー39の出力値を取得し、小切手の向きが整ったと判定したら、整列モーター58を動作させて整列板38を退避させて、整列動作を終了する。
ここで、ホストコンピューター200からMICR文字の読み取りを指示するコマンドが送信されると(ステップS13)、制御部70はこのコマンドを受信して、動作モードをMICR制御モード76に切り換えてコマンドを実行する。すなわち、制御部70は、モータードライバー46を制御して媒体搬送モーター26を動作させ、小切手を整列位置から幅検出位置まで搬送させ(ステップS14)、キャリッジ駆動モーター56を駆動させて、この動作中の媒体幅センサー55の検出値を監視することにより、小切手の紙幅を検出する(ステップS15)。続いて、制御部70は、モータードライバー46を制御して媒体搬送モーター26を動作させ、MICR文字の読み取り位置まで小切手を搬送させ(ステップS16)、磁気ヘッド駆動モーター57を駆動して磁気ヘッド34を走査させて、磁気ヘッド34の検出値を取得する(ステップS17)。制御部70は、取得した磁気ヘッド34の検出値を解析することで、MICR文字を特定し(ステップS18)、MICR文字の読取を完了する。
【0045】
次に、ホストコンピューター200から、スキャン実行を指示するコマンドが送信されると(ステップS19)、制御部70は、受信バッファー66に記憶されたこのコマンドを読み出して、動作モードをスキャナー制御モード75に切り換えてコマンドを実行する。すなわち、制御部70は、モータードライバー46を制御して媒体搬送モーター26を動作させ、小切手をスキャン開始位置まで搬送させる(ステップS20)。制御部70は、媒体搬送モーター26を動作させ、第1スキャナーモジュール111、第2スキャナーモジュール112の出力データを、ゲートアレイ45を介して取得し、スキャンを実行する(ステップS21)。そして、制御部70は、取得した第1スキャナーモジュール111、第2スキャナーモジュール112の出力データを解析して小切手の両面の読取画像を取得するとともに、OCR(Optical Character Reader)認識を行う(ステップS22)。
【0046】
また、ホストコンピューター200から、印字開始位置を指定するコマンドが送信されると(ステップS23)、制御部70は、受信バッファー66に記憶されたこのコマンドを読み出して、動作モードをプリンター制御モード71またはプリンター制御モード72に切り換え、コマンドを実行する。すなわち、制御部70は、モータードライバー46を制御して媒体搬送モーター26を駆動し、小切手を印字開始位置まで搬送する(ステップS24)。ここで、ホストコンピューター200から印字コマンドと改行コマンドが送信されると、制御部70はこれらのコマンドを実行して、媒体搬送モーター26及びキャリッジ駆動モーター56を駆動し、ヘッドドライバー48を制御して記録ヘッド18による印字を行わせ、1行の印字が終了する毎に小切手を搬送して改行する(ステップS26)。この一連の印字が終了すると、制御部70は、媒体搬送モーター26を駆動して小切手を印字終了位置まで搬送する(ステップS28)。
ここで、ホストコンピューター200から排紙コマンドが送信されると(ステップS28)、制御部70はこのコマンドを受信して実行し、媒体搬送モーター26を駆動して小切手を手差口15または排出口20から排出させ(ステップS29)、その後、記録媒体Sの挿入に待機する状態に移行して(ステップS30)、本処理を終了する。
【0047】
このように、制御部70は、ホストコンピューター200から送信されたコマンドに対応する動作モードで、コマンドを実行し、プリンター機能、スキャナー機能、MICR機能、MSR機能を実行する。
ところで、例えばプリンター制御モード72は、他の機種のプリンターWに対応するコマンド体系Wを使用する。プリンターWが、他のコマンド体系への切り換えをサポートしていない場合には、プリンター制御モード72を実行中の複合機10に対して、コマンド体系の切り換えを指示することができない。つまり、複合機10は、プリンター制御モード72から他の動作モードに移行できない。このような場合、複合機10の電源をオフにして再起動し、基本の動作モードであるプリンター制御モード71に移行する等の操作を行うか、或いは、プリンター制御モード72のコマンド体系Wにリセットコマンドが定義されているのであればリセットコマンドにより複合機10をリセットすることになる。リセットコマンドは受信バッファー66に一時的に記憶されているコマンドやデータの全消去等の動作を含むため、実行できるタイミングが限られている。このように、使用中のコマンド体系において、他のコマンド体系への切り換えを指示するコマンドが定義されていない場合には、そのコマンド体系の使用が済んだ場合の対応が難しい。また、プリンター制御モード72が使用するコマンド体系Wを拡張して、他のコマンド体系への切り換えを指示するコマンドを含めても、ホストコンピューター200のプリンタードライバー217が当該コマンドを有していなければ、他のコマンド体系への切り換えは実現できないため、意味が無い。
【0048】
そこで、本実施形態に係る複合機10は、プリンター制御モード72に移行した場合に、所定の復帰条件(移行条件)が成立したらプリンター制御モード71に移行する機能を備えている。この機能によれば、プリンター制御モード72に移行する際に復帰条件が設定され、この復帰条件が成立したら、オリジナルの動作モードであるプリンター制御モード71、或いは、プリンター制御モード72に移行する前の動作モードに移行する。この構成により、プリンター制御モード72に移行した後で、コマンド体系Wの機能制限のために他の動作モードに移行できないという問題を解消している。
以下、この機能について説明する。
【0049】
図7は、複合機10の動作モードの切り換えの様子を示すフローチャートである。
この図7には、制御部70による動作モードの切換に関する動作を示す。この図7の動作の実行時、制御部70は、コマンド制御手段、及び、移行条件設定手段として機能する。
制御部70は、複合機10の電源が投入されると、予め設定されたオリジナルの動作モードで動作を開始する(ステップS41)。オリジナルの動作モードは、他の動作モードへの移行を指示するコマンドを含む多機能なコマンド体系に対応している。本実施形態では、オリジナルの動作モードはプリンター制御モード71に設定されている。
制御部70は、受信バッファー66に、受信済みでまだ実行されていないコマンドがあるか否かを判別し(ステップS42)、未実行のコマンドがなければコマンドを受信するまで待機し(ステップS43)、ホストコンピューター200からのコマンドを受信したらコマンドを解析する(ステップS44)。一方、未実行のコマンドがある場合(ステップS42;Yes)、制御部70は、受信バッファー66のコマンドを受信順に解析する(ステップS44)。
【0050】
制御部70は、ステップS44でコマンドを解析して、現在のコマンド体系すなわちプリンター制御モード71のコマンド体系Vに含まれるコマンドか、他のコマンド体系のコマンドかを判別する(ステップS45)。現在のコマンド体系用のコマンドでないと判別した場合(ステップS45;No)、制御部70は、解析したコマンドがエミュレーション用の動作モードのコマンド体系に含まれるものか否かを判別する(ステップS46)。ここで、解析したコマンドを含むコマンド体系が、エミュレーション用のコマンド体系でない場合(ステップS46;No)、制御部70は、動作モードを対応するコマンド体系を有する動作モードに切り換え(ステップS47)、コマンドを実行する(ステップS48)。コマンドの実行が終了したら、制御部70はステップS42に戻る。また、解析したコマンドが現在のコマンド体系のコマンドである場合(ステップS45;Yes)、制御部70は、ステップS48に移行して当該コマンドを実行する。
【0051】
一方、解析したコマンドがエミュレーション用のコマンド体系のコマンドである場合(ステップS46;Yes)、制御部70は、コマンドに含まれている復帰条件を設定する。復帰条件としては、例えば、動作モード(コマンド体系)をエミュレーション用に切り換えてからの所定時間の経過時、ホストコンピューター200から受信して受信バッファー66に記憶されている全コマンドの実行完了、解析した一のコマンドの実行完了、特定のコマンドの実行、受信バッファー66が空になった時等が挙げられる。この特定のコマンドとしては、複合機10がプリンターとして動作するプリンター制御モード72の場合、改行コマンド、改ページコマンド、ページ送りコマンド、排紙コマンド等、動作の区切りとなるコマンドが挙げられ、このコマンドの実行後に複合機10が一時停止しても印刷品質への悪影響がないことが望ましい。 復帰条件を設定した後、制御部70は、エミュレーション用の動作モード(ここでは、プリンター制御モード72)に切り換え(ステップS50)、解析したコマンドを実行する(ステップS51)。
【0052】
制御部70は、解析したコマンドの実行後に、エミュレーション用の動作モードの実行中も復帰条件が成立したかどうかを判定し(ステップS52)、復帰条件が満たされていない場合は(ステップS52;No)、受信バッファー66に未実行のコマンドがあるか否かを判別する(ステップS53)。そして、未実行のコマンドがあればステップS51に移行してコマンドを実行し、未実行のコマンドが無ければステップS52に戻って復帰条件の成立を判定する。
【0053】
また、復帰条件が成立した場合(ステップS52;Yes)、制御部70は、エミュレーション用の動作モードに移行する前の動作モードに復帰する(ステップS54)。そして、複合機10の動作が停止される場合(ステップS55;Yes)は本動作を終了し、動作停止しない場合はステップS42に戻る。
ここで、コマンド体系の復帰条件は、切り換えコマンドに含まれる復帰を示す記号とそれに続く引数で構成することができる。例えば、「ESC C:W R:V S:1」で切り換えコマンドが構成することができ、この場合、ESCはコマンド体系Vのコマンドであることを示し、コマンド体系Wに切り換えを示すC(change)と、コマンド体系Vに復帰することを示すR(return)と、復帰条件S(stipulation)の1(引数)とで示される。コマンド体系Vからコマンド体系Wに移行し、コマンド体系Wにおいてホストコンピューター200から受信したコマンドにより所定の動作をした後、復帰条件を満たすと、コマンド体系Vに戻る。ここで、1は、例えば一のコマンドの実行終了を示す引数であり、他の数字は他の引数を示すものであり、他の復帰条件やこれらの組合せとすることができる。この切り換えコマンドを受信すると、制御部70は、コマンド体系の切り換えを行うと共に、復帰条件を設定してRAM41やFLASH−ROM42に記憶し、処理状態と設定された復帰条件を都度比較するように監視し、復帰条件を満たしたとき、設定されたコマンド体系に移行する。
【0054】
以上のように、本発明を適用した実施形態に係る複合機10は、ホストコンピューター200から送信される切り換えコマンドに対応して複数のコマンド体系(動作モード)を切り換え、コマンド体系を切り換えた後、さらにコマンド体系を切り換えるための所定の復帰条件(移行条件)を設定する制御部70を備え、制御部70は、設定された復帰条件が成立した場合に、切り換え前の動作モードへの復帰または他の動作モードへの切り換えを行うので、複合機10が、別の動作モードへの切り換えコマンドが定義されていない動作モード(例えば、プリンター制御モード72)を使用しても、別の動作モードへの切り換えが可能となる。従って、実行する動作モードの仕様に関わらず、他の動作モードへ切り換える機能を保持できる。
【0055】
また、復帰条件は、ホストコンピューター200から送信される切り換えコマンドに含まれており、制御部70は、ホストコンピューター200から受信した切り換えコマンドに含まれる復帰コマンドを設定する。これにより、ホストコンピューター200から送信する一度の切り換えコマンドによって、複合機10のコマンド体系を切り換えさせると同時に、その後のコマンド体系の移行条件を設定させることができる。このため、複合機10が所定のコマンド体系に移行して所定の動作を終了した後、ホストコンピューター200から切り換えコマンドを受信しなくても、自動的に元のコマンド体系に戻るように、簡単に設定できる。 また、制御部70は、ホストコンピューター200から送信されるコマンドに対応して、通常動作用の動作モードとしてのプリンター制御モード71、スキャナー制御モード75、MICR制御モード76、及びMSR制御モード77と、他装置の動作モードをエミュレートするためのエミュレーション用コマンド体系Wに対応したエミュレーション用動作モードであるプリンター制御モード72とを含む複数の動作モードを切り換え可能に構成されている。プリンター制御モード72は、他の動作モードへの移行を指示するコマンドを持たない非移行動作モードにも相当する。
すなわち、制御部70は、対応するコマンド体系として、通常動作用コマンド体系であるコマンド体系V、エミュレーション用コマンド体系であるコマンド体系Wを含む複数のコマンド体系を切り換え可能に構成され、コマンド体系V(プリンター制御モード71)からコマンド体系W(プリンター制御モード72)に切り換えた後、設定された復帰条件が成立した場合にコマンド体系Wに対応するプリンター制御モード72からコマンド体系Vに対応するプリンター制御モード71への切り換えを行う。
このため、他装置(ここではプリンターW)をエミュレートするコマンド体系Wに切り換えを行い、この他装置のエミュレーション用コマンド体系Wにおいて他のコマンド体系への切り換えコマンドが定義されていない場合であっても、復帰条件の成立により切り換え前のコマンド体系であるコマンド体系Vに復帰する。これにより、旧型機種など他の低機能の機種の動作をエミュレートするためにやむを得ず低機能のコマンド体系を使用する場合であっても、このコマンド体系の使用後に、高機能の他のコマンド体系への切り換えを可能とすることができる。このため、他の機種の正確なエミュレーションを可能としつつ、利便性を確保できる。
【0056】
また、制御部70が切り換え可能な動作モードには、切り換えコマンドに対応している移行コマンド体系であるコマンド体系Vに対応したプリンター制御モード71と、切り換えコマンドに対応していない非移行コマンド体系であるコマンド体系Wに対応したプリンター制御モード72が含まれており、復帰条件として、制御部70がプリンター制御モード71からプリンター制御モード72への切り換えを行うための条件が設定される。これにより、複合機10が使用する切り換えコマンドに対応している移行コマンド体系から、他のコマンド体系への移行を指示するコマンドを持たない非移行コマンド体系に切り換えた場合に、本来は非移行コマンド体系から他のコマンド体系への移行が不可能であるにも関わらず、移行条件を設定しておいて当該移行条件の成立により他のコマンド体系に切り換えることが可能となる。従って、実行するコマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を保持できる。
【0057】
さらに、複合機10は、復帰条件として、コマンド体系を切り換えてから所定時間が経過した時、ホストコンピューター200から受信した全コマンドの実行完了、ホストコンピューター200から受信した一つのコマンドの実行完了のいずれかを含む条件設定される。これにより、コマンド体系の仕様に関わらず、他のコマンド体系へ切り換える機能を確実に保持できる。この他に、復帰条件すなわち他のコマンド体系への切り換えの契機を、コマンドを受信する受信バッファーが空になった時、複合機10が備える印刷部が改行や改ページを実行した時とすることも可能である。
【0058】
また、複合機10は、ホストコンピューター200から送信されるコマンドに従って処理対象媒体に印刷を行う印刷部としての記録ヘッド18、キャリッジ19、キャリッジ駆動モーター56、媒体搬送モーター26、及びモータードライバー46と、ホストコンピューター200から送信されるコマンドに従って処理対象媒体を光学的に読み取る光学読取装置110と、を備え、制御部70は、ホストコンピューター200から送信されたコマンドが印刷部向けのコマンドか光学読取装置110向けのコマンドかを判別し、その判別結果に応じて、印刷部向けのコマンドであればプリンター制御モード71、72に切り換えを行い、光学読取装置110制御用の動作モードであるスキャナー制御モード75に切り換える。これにより、印刷部と光学読取装置とを備えた複合機10が、ホストコンピューター200から送信されたコマンドが対象とする装置に対応して、使用するコマンドを切り換えるので、機能ごとに異なる動作モードを切り換えて実行できる。
【0059】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、図7で説明した動作において、制御部70が、復帰条件が成立した場合に、切換前の動作モードに復帰(ステップS54)する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、さらに別の動作モードに移行してもよい。例えば、上述のようにオリジナルの動作モードとしてプリンター制御モード71が設定されている場合に、どの動作モードを実行している場合も、設定された復帰条件が成立したらプリンター制御モード71に移行するようにしてもよい。また、エミュレーション用の動作モードと、この動作モードから移行する動作モードを別に設定しておいてもよく、例えば、プリンター制御モード72を実行して復帰条件が成立した場合にスキャナー制御モード75に移行する、と設定されても良い。この設定は、復帰条件とともに設定されても良い。また、復帰条件は、その都度定められても良いし、予めFLASH−ROM42に記憶された一つの復帰条件を常に使用する構成としても、FLASH−ROM42に記憶された複数の復帰条件から、エミュレーション用の動作モードの種類、切り換え前の動作モードの種類、処理対象の記録媒体Sの種類等に応じて、ステップS49で復帰条件を選択してもよい。
また、制御部70は、エミュレーション用の動作モードの実行中、復帰条件が成立したかどうかを所定時間周期で、或いは常時、監視しても良く、この場合には復帰条件が成立した時点で動作モードを切り換えても良いし、コマンドの実行が完了した時点で切り換えてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、複合機10に搭載された制御基板(図示略)に実装された制御部が、図4、図5の機能ブロックに示す機能を有し、複合機10の各部を制御する構成を例に挙げて説明したが、例えば、複合機10に外部接続された装置が、図4に示す各機能部の一部ないし全部として機能し、複合機10を制御する構成としてもよい。さらに、図4及び図5に示した各機能ブロックは、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現されるものであって、具体的なハードウェアの実装形態やソフトウェアの仕様等は任意であり、その他の細部構成についても任意に変更可能である。
また、上記実施形態では、SIDM方式の記録ヘッド18、磁気ヘッド34、及び光学読取装置110を備えた複合機10を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、インクジェット式のプリンターや、サーマルプリンター、レーザープリンター等に、光学読取装置110に相当する光学読取部を設けた構成としても良い。さらに、独立して使用される機器に限らず、他の機器(ATM(Automated Teller Machine)やCD(Cash Dispenser)等)に組み込まれた装置に本発明を適用することも勿論可能である。
また、図7に記載の複合機10の動作モードの切り換えの各ステップを実行するプログラムを、複合機10内部の記憶媒体に記憶させたもの、または複合機10外部の記憶媒体に記憶させたものを読み出して、制御部70により実行させることもできる。
【符号の説明】
【0061】
10…複合機(電子機器)、18…記録ヘッド、29…磁気データ読書部、40…CPU、41…RAM(記憶部)、43…インターフェイス、66…受信バッファー、70…制御部(コマンド制御手段、移行条件設定手段)、71、72…プリンター制御モード、75…スキャナー制御モード、76…MICR制御モード、77…MSR制御モード、100…媒体搬送機構、110…光学読取装置、200…ホストコンピューター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づき動作する電子機器であって、
前記ホストコンピューターから送信される切り換えコマンドに対応して複数のコマンド体系を切り換えるコマンド制御手段と、
前記コマンド制御手段がコマンド体系を切り換えた後、さらに前記コマンド体系を切り換えるための所定の移行条件を設定する移行条件設定手段と、を備え、
前記コマンド制御手段は、前記移行条件設定手段により設定された前記移行条件が成立した場合に、切り換え前のコマンド体系への復帰または他のコマンド体系への切り換えを行うこと、
を特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記所定の移行条件は、前記切り換えコマンドに含まれていることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記コマンド制御手段は、通常動作用コマンド体系と、他装置のコマンド体系をエミュレートするエミュレーション用コマンド体系とを含む複数のコマンド体系を切り換え可能に構成され、
前記コマンド制御手段は、前記コマンド制御手段が前記通常動作用コマンド体系から前記エミュレーション用コマンド体系に切り換えた後、前記移行条件設定手段により設定された前記移行条件が成立した場合に、前記エミュレーション用コマンド体系から前記通常動作用コマンド体系への復帰を行うことを特徴とする請求項1または2記載の電子機器。
【請求項4】
前記コマンド制御手段が切り換え可能なコマンド体系には、前記切り換えコマンドに対応している移行コマンド体系と、前記切り換えコマンドに対応していない非移行コマンド体系が含まれており、前記移行条件設定手段は、前記コマンド制御手段が前記非移行コマンド体系から前記移行コマンド体系への切り換えを行うための所定の前記移行条件を設定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記ホストコンピューターから送信されるコマンドに従って処理対象媒体に印刷を行う印刷部と、前記ホストコンピューターから送信されるコマンドに従って処理対象媒体を光学的に読み取る光学読取装置と、を備え、
前記コマンド制御手段は、前記ホストコンピューターから送信されたコマンドが前記印刷部向けのコマンドか前記光学読取装置向けのコマンドかを判別し、その判別結果に応じて、印刷部制御用のコマンド体系と、光学読取装置制御用のコマンド体系とを切り換えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記移行条件設定手段は、前記移行条件として、前記コマンド制御手段が前記コマンド体系を切り換えてから所定時間の経過時、前記ホストコンピューターから受信した全コマンドの実行完了、前記ホストコンピューターから受信した一のコマンドの実行完了の少なくともいずれかを含む条件を設定することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づき動作する電子機器の制御方法であって、
前記ホストコンピューターから送信される切り換えコマンドに対応して複数のコマンド体系を切り換えた後、さらに前記コマンド体系を切り換えるための所定の移行条件を設定し、設定した前記移行条件が成立した場合に切り換え前のコマンド体系への復帰または他のコマンド体系への切り換えを行うこと、
を特徴とする電子機器の制御方法。
【請求項8】
ホストコンピューターから送信されるコマンドに基づき動作する電子機器の各部を制御する制御部が実行可能なプログラムであって、
前記ホストコンピューターから送信される切り換えコマンドに対応して複数のコマンド体系を切り換えた後、さらに前記コマンド体系を切り換えるための所定の移行条件を設定し、設定した前記移行条件が成立した場合に切り換え前のコマンド体系への復帰または他のコマンド体系への切り換えを行うこと、
を特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−59165(P2012−59165A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203952(P2010−203952)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】