説明

電子機器およびキー操作制御方法

【課題】標準のキーボードにおける片手によるキー操作を効率的に行うことを可能とする電子機器を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、電子機器は、キーコード生成手段と、キー操作制御手段と、を具備する。キーコード生成手段は、第1または第2のキー群のいずれかのキーが押下された場合、当該キーに割り当てられたキーコードと、当該キーの第1または第2の領域内での位置に対応する第2または第1の領域内での位置に配置されたキーに割り当てられたキーコードとの2つのキーコードを生成する。キー操作制御手段は、キーが押下される毎にキーコード生成手段により生成された2つのキーコードをキーが押下された順に排他選択的に用いて構成される全ての組み合わせの複数の文字列の中から優先度の高い順に所定数分だけ選択肢として提示し、前記提示した選択肢の中から選択された文字列を示すキーコードを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばノートタイプ・コンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、キーボード等の電子機器に適用して好適なキー操作制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートタイプ・コンピュータやPDAなどと称される、バッテル駆動可能で携行容易な電子機器が種々開発されている。無線通信環境の整備が進んだことにより、外出先や移動中でもデータの送受信を簡単に行えるようになってきたため、その需要はさらに高まりつつある。
【0003】
この種の電子機器は、例えば車中等の不安定な状態において、一方の手で機器本体を支えながら他方の手のみで操作を行うといった使用様態も考えられる。そのため、片手による操作のし易さも商品価値を決定する重要な要素となっている。また、この種の電子機器に限らず、据え置き型の電子機器においても、一方の手で資料を持ちながら他方の手のみで操作を行うといった使用様態も考えられるため、片手による操作のし易さは、検討に値する事項である。このようなことから、両手用のキーボードを片手で効率的に操作できるようにする工夫がこれまで種々提案されている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−262024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この特開平3−262024に記載の手法は、親指シフトキーボードと称される、シフトキーを2つ搭載し、かつ、当該シストキーの役割が標準のキーボードとは異なる特殊なキーボードを前提とするものである。そのため、標準のキーボードでは、シフトキーの本来の機能が利用できなくなる等、その適用は不可能である。
【0006】
また、目的の文字の対照側に位置する文字を一旦表示させた後、その文字の対照側に位置する目的の文字に変換するという作業自体も煩わしく、とても効率的なキー操作とは言えないという問題もある。
【0007】
この発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、標準のキーボードにおける片手によるキー操作を効率的に行うことを可能とした電子機器およびキー操作制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、電子機器は、キー操作部と、キーコード生成手段と、キー操作制御手段と、を具備する。キー操作部は、第1のキー群が配置された第1の領域と、第2のキー群が配置された第2の領域との一方または両方を有する。キーコード生成手段は、前記第1のキー群のいずれかのキーが押下された場合、当該キーに割り当てられたキーコードと、当該キーの前記第1の領域内での位置に対応する前記第2の領域内での位置に配置されたキーに割り当てられたキーコードとの2つのキーコードを生成し、前記第2のキー群のいずれかのキーが押下された場合、当該キーに割り当てられたキーコードと、当該キーの前記第2の領域内での位置に対応する前記第1の領域内での位置に配置されたキーに割り当てられたキーコードとの2つのキーコードを生成する。キー操作制御手段は、キーが押下される毎に前記キーコード生成手段により生成された2つのキーコードをキーが押下された順に排他選択的に用いて構成される全ての組み合わせの複数の文字列の中から優先度の高い順に所定数分だけ選択肢として提示し、前記提示した選択肢の中から選択された文字列を示すキーコードを出力する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の第1実施形態に係る電子機器の正面側から見た斜視図。
【図2】同第1実施形態の電子機器のシステム構成を示す図。
【図3】同第1実施形態の電子機器が備えるキーボードのキー配列の一例を示す図。
【図4】同第1実施形態の電子機器のEC/KBCが保持するキーテーブルの一例を示す図。
【図5】同第1実施形態の電子機器において左手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例を説明する図。
【図6】同第1実施形態の電子機器において右手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例を説明する図。
【図7】同第1実施形態の電子機器のキー操作制御に関わる動作手順を示すフローチャート。
【図8】同第1実施形態の電子機器において切替スイッチの役割を操作ボタンに割り当てた場合のシステム構成(変形例)を示す図。
【図9】同第1実施形態の電子機器のキー操作制御に関わる動作手順(変形例)を示すフローチャート。
【図10】同第2実施形態の電子機器のキーの構成例を説明する第1の図。
【図11】同第2実施形態の電子機器のキーの構成例を説明する第2の図。
【図12】同第2実施形態の電子機器において左手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例を説明する図。
【図13】同第2実施形態の電子機器において右手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例を説明する図。
【図14】同第2実施形態の電子機器のキー操作制御に関わる動作手順を示すフローチャート。
【図15】同第3実施形態の電子機器のキー入力に関わる機能ブロックを示す図。
【図16】同第3実施形態の電子機器において右手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例を説明する図。
【図17】同第3実施形態の電子機器のキー操作制御に関わる動作手順を示すフローチャート。
【図18】同第1乃至第3実施形態の電子機器において左手部分および右手部分の一方のキーのみを備えるようにしたキーボードの一例(変形例)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、ディスプレイユニットを開いた状態における本実施形態の電子機器を正面側から見た斜視図である。この電子機器は、バッテリ駆動可能なノート・タイプコンピュータ1として実現されている。
【0012】
本コンピュータ1は、コンピュータ本体2と表示パネル3とから構成される。表示パネル3には、LCD(Liquid Crystal Display)15から構成される表示装置が組み込まれており、その表示画面は表示パネル3のほぼ中央に位置されている。
【0013】
表示パネル3はコンピュータ本体2に支持され、このコンピュータ本体2に対してコンピュータ本体2の上面が露出される開放位置とコンピュータ本体2の上面を覆う閉塞位置との間を回動自由に取り付けられている。コンピュータ本体2は薄い箱形の筐体を有しており、その上面にはキーボード28、タッチパッド29、スティック型ポインティングデバイス(アキュポイント)30、操作ボタン31a〜31d、切替スイッチ32等が配置されている。
【0014】
操作ボタン31a,31bの組み合わせと、操作ボタン31c,31dの組み合わせとは、それぞれがいわゆるマウスの左右ボタンに対応する同一の役割を担う組み合わせとなっている。操作ボタン31a,31bは、アキュポイント30によってマウスカーソルの移動を行う場合に利用され、操作ボタン31c,31dは、タッチパッド29によってマウスカーソルの移動を行う場合に利用されることを前提としている。切替スイッチ32の役割については後述する。
【0015】
図2は、本コンピュータ1のシステム構成を示す図である。図2に示すように、本コンピュータ1は、CPU11、ノースブリッジ12、主メモリ13、グラフィックスアクセラレータ14、VRAM14A、サウスブリッジ16、BIOS−ROM17、HDD18、USBコントローラ19、サウンドコントローラ20、スピーカ21、LANコントローラ22、WLANコントローラ23、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラ(EC/KBC)25、電源回路26、バッテリ27等を備えている。
【0016】
CPU11は、本コンピュータ1内の各部の動作を制御するプロセッサである。CPU11は、HDD18から主メモリ13にロードされるオペレーティングシステムや、このオペレーティングシステムの制御下で動作する、ユーティリティを含む各種アプリケーションプログラムを実行する。また、CPU11は、BIOS−ROM17に格納されたBIOSも実行する。BIOSは、ハードウェア制御のためのプログラムである。
【0017】
ノースブリッジ12は、CPU11のローカルバスとサウスブリッジ16との間を接続するブリッジデバイスである。ノースブリッジ12は、バスを介してグラフィックスアクセラレータ14との通信を実行する機能を有しており、また、主メモリ13をアクセス制御するメモリコントローラも内蔵されている。グラフィックスアクセラレータ14は、本コンピュータのディスプレイモニタとして使用されるLCD15を制御する表示コントローラである。グラフィックスアクセラレータ14は、VRAM14Aに書き込まれた画像データからLCD15に送出すべき表示信号を生成する。
【0018】
サウスブリッジ16は、PCIバスおよびLPCバス上の各種デバイスを制御するコントローラである。また、このサウスブリッジ16には、BIOS−ROM17、HDD18、USBコントローラ19、サウンドコントローラ20、LANコントローラ22、WLANコントローラ23等が直接的に接続され、これらを制御する機能も有している。
【0019】
HDD18は、各種ソフトウェアおよびデータを格納する記憶装置である。USBコントローラ19は、ケーブル接続されるUSBデバイスとの間の通信を実行するコントローラである。サウンドコントローラ20は、スピーカ21を制御する音源コントローラである。LANコントローラ22およびWLANコントローラ23は、ネットワークを介した外部装置との間の通信を実行するコントローラである。
【0020】
また、EC/KBC25は、電力管理のためのエンベデッドコントローラと、キーボード28、タッチパッド29、操作ボタン31a〜31d、切替スイッチ32を制御するためのキーボードコントローラとが集積された1チップマイクロコンピュータである。EC/KBC25は、電源回路26と協働して、バッテリ27または外部AC電源からの電力を各部に供給制御する。また、このEC/KBC25には、後述するキーテーブル251が保持される。
【0021】
次に、このような構成をもつ本コンピュータ1が備えるキーボード28のキー配列の一例を図3に示す。
【0022】
図3に示すように、本コンピュータ1のキーボード28は、109キーボードなどと称される標準的なキー配列を有している。そして、本コンピュータ1は、この標準的なキー配列を有するキーボードによるキー入力を、左手または右手のいずれか一方でも効率的に行えるようにしたものであり、以下、この点について詳述する。
【0023】
いま、ユーザが右手で機器本体を支えている、または右手て資料を持っている、という状況を想定すると、左手のみでキー入力を行うことになるが、この場合、図3中の左手部分のみの利用でキー入力を行えると効率的である。一方、ユーザが左手で機器本体を支えている、または左手で資料を持っている、という状況を想定すると、右手のみでキー入力を行うことになり、この場合には、図3中の右手部分のみの利用でキー入力を行えると効率的である。
【0024】
ここで、「z」の文字を入力する場合を考える。この場合、もし左手のみでキー入力を行っているのであれば、図3中の左手部分に配置されているキーa1(本来のキー)を左手で押下すれば足りる。一方、右手のみでキー入力を行っている場合、本コンピュータ1では、(図3中の左手部分に配置されているキーa1を右手で押下することも当然に可能ではあるが)図1に示した切替スイッチ32と共に、図3中の右手部分に配置されているキーa2を右手で押下することでも達成できる。
【0025】
即ち、本コンピュータ1では、このキーa1,キーa2の組みのごとく、図3中の左手部分(第1の領域)内での位置と右手部分(第2の領域)内での位置とが対応する2つのキーの各組み間において、割り当てられるキーコードを切替スイッチ32によって切り替えることを可能としている。よって、左手のみでキー入力を行っている場合に、切替スイッチ32と共に前述のキーa1を押下すれば、本来であれば図3中の右手部分に配置されているキーa2を押下しなければならない「n」の文字を入力できる。
【0026】
このキーコードの切り替えを行うために、EC/KBC25は、独自構成のキーテーブル251を保持している。図4に、EC/KBC25が保持するキーテーブル251の一例を示す。
【0027】
図4に示すように、キーテーブル251は、キー番号フィールドb1、キーコード1フィールドb2、キーコード2フィールドb3の3つのフィールドを有している。キー番号フィールドb1は、各キーの番号を保持するエリアであり、EC/KBC25は、このキー番号をインデックスとして各キーの2つのキーコードを取得する。図3に示したキーa1のキー番号は46であり、キーa2のキー番号は52である。
【0028】
キーコード1フィールドb2は、各キーが切替スイッチ32の操作無しに押下された場合に割り当てるべき、即ち本来のキーコードを保持するエリアである。一方、キーコード1フィールドb3は、各キーが切替スイッチ32と共に押下された場合に割り当てるべきキーコードを保持するエリアである。また、キーテーブル251は、小文字用および大文字用の2つが存在し、その切り替えは、いわゆるシフトキーの押下によって行われる(小→大)。即ち、本コンピュータ1においては、シフトキーの本来の機能は何ら問題なく利用できている。
【0029】
このキーテーブル251を使って、EC/KBC25は、キーa1が単独で押下されていれば、キー番号フィールドb1の値が46のレコード中のキーコード1フィールドb2およびキーコード2フィールドb3のうち、キーコード1フィールドb2の値の「z」が入力されたものと判定し、切替スイッチ32と共に押下されていれば、キーコード2フィールドb2の値の「n」が入力されたものと判定する。同様に、EC/KBC25は、キーa2が単独で押下されていれば、キー番号フィールドb1の値が52のレコード中のキーコード1フィールドb2の値の「n」が入力されたものと判定し、切替スイッチ32と共に押下されていれば、キーコード2フィールドb2の値の「n」が入力されたものと判定する。
【0030】
この仕組みを備えることで、本コンピュータ1では、例えば「world」という文字列を、図3に示すキーボード上の全領域を利用した通常のキー入力方法に加えて、次の2通りのキー入力方法が可能となる。図5は、(左手のみによる)左手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例、図6は、(右手のみによる)右手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例をそれぞれ示している。
【0031】
「world」という文字列を入力するためのキーは、「w」,「r」,「d」が左手部分に、また、「o」,「l」が右手部分に配置されている。従って、左手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合には、図5に示すように、「o」,「l」の入力時に、この「o」,「l」と位置的に対応する「r」,「f」を切替スイッチ32と共に押下する。また、右手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合には、図6に示すように、「w」,「r」,「d」の入力時に、この「w」,「r」,「d」と位置的に対応する「u」,「o」,「k」を切替スイッチ32と共に押下する。
【0032】
図7は、本コンピュータ1のキー操作制御に関わる動作手順を示すフローチャートである。
【0033】
EC/KBC25は、シフトキーが押下されると(ステップA1のYES)、キーテーブル251を小文字用から大文字用に切り替える(ステップA2)。また、EC/KBC25は、何らかのキー入力が行われると(ステップA3のYES)、切替スイッチ32は押下されているかどうかを調べる(ステップA4)。そして、EC/KBC25は、切替スイッチ32が押下されていなければ(ステップA4のNO)、キーテーブル251中のキーコード1の方を返却し(ステップA5)、一方、押下されていれば(ステップA4のYES)、キーコード2の方を返却する(ステップA6)。
【0034】
このように、本コンピュータ1によれば、標準のキーボードにおける片手によるキー操作を効率的に行うことを可能とする。
【0035】
ところで、以上では、キーコードの切り替えを行うためのスイッチとして、専用の切替スイッチ32を設ける例を説明したが、これに限らず、例えば既存のボタンを援用することも可能である。図8は、切替スイッチ32の役割を操作ボタン31aに割り当てた場合の本コンピュータ1のシステム構成を示す図である。
【0036】
操作ボタン31aは、前述したように、いわゆるマウスボタンとしての役割を本来備えるものであるが、キー入力時にマウスボタンの操作は通常行われない点に着目し、この操作ボタン31aを切替スイッチとしても兼用する。EC/KBC25は、何らかのキー入力が行われている間に操作ボタン31aが押下された場合、または操作ボタン31aが押下された後、所定の時間内にキー入力があれば、本来のマウスボタンとして操作ボタン31aが押下されたのではなく、切替スイッチとして操作ボタン31aが押下されたものと判定する。図9は、この場合の本コンピュータ1のキー操作制御に関わる動作手順を示すフローチャートである。
【0037】
EC/KBC25は、シフトキーが押下されると(ステップB1のYES)、キーテーブル251を小文字用から大文字用に切り替える(ステップB2)。また、EC/KBC25は、何らかのキー入力が行われると(ステップB3のYES)、操作ボタン31aは押下されているかどうかを調べる(ステップB4)。そして、EC/KBC25は、操作ボタン31aが押下されていなければ(ステップB4のNO)、キーテーブル251中のキーコード1の方を返却し(ステップB5)、一方、押下されていれば(ステップB4のYES)、キーコード2の方を返却する(ステップB6)。
【0038】
このように、既存の操作ボタンを切替スイッチとして兼用した場合にも、標準のキーボードにおける片手によるキー操作を効率的に行うことは可能である。
【0039】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を説明する。
【0040】
前述の第1実施形態では、(専用または兼用の)切替スイッチの押下によってキーコードの切り替えを行う例を説明した。これに対して、本第2実施形態では、このキーコードの切替を、各キーの押下時の押圧力に基づいて行う例を説明する。
【0041】
図10に示すように、本コンピュータ1では、各キーが押下されたことを検知するためのスイッチを、スイッチ1,スイッチ2の2つ設置する。そして、各キーは、図11に示すように、第1に、スイッチ1が50g以上の荷重を受けた際にオンとなり、かつ、ユーザに当該キーを浅押しした感覚を与えられるように構成され、第2に、スイッチ2が100g以上の荷重を受けた際にオンとなり、かつ、ユーザに当該キーを深押しした感覚を与えられるように構成されている。即ち、本コンピュータ1の各キーは、浅押しおよび深押しのいわゆる2段押しが可能に構成されているわけである。
【0042】
本コンピュータ1は、浅押し、深押しの2段階の押下状態を取り得るように各キーを構成することで、キーコードの切り替えを実現する。例えば、EC/KBC25は、あるキーが弱い押圧力で浅押しされた(スイッチ1のみがオンとなった)ならば、そのキー本来のキーコード(キーコード1)が入力されたと判定し、強い押圧力で深押しされた(スイッチ1,スイッチ2の両方がオンとなった)ならば、切り替え後のキーコード(キーコード2)が入力されたと判定する。なお、この強弱については、逆にしても良いことは言うまでもない。
【0043】
この仕組みを備えることで、本コンピュータ1では、例えば「world」という文字列を、図3に示すキーボード上の全領域を利用した通常のキー入力方法に加えて、次の2通りのキー入力方法が可能となる。図12は、(左手のみによる)左手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例、図13は、(右手のみによる)右手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例をそれぞれ示している。
【0044】
「world」という文字列を入力するためのキーは、「w」,「r」,「d」が左手部分に、また、「o」,「l」が右手部分に配置されている。従って、左手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合には、図12に示すように、「w」,「r」,「d」の入力時には、各キーを弱い押圧力で浅押しし、「o」,「l」の入力時には、この「o」,「l」と位置的に対応する「r」,「f」を強い押圧力で深押しする。また、右手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合には、図13に示すように、「o」,「l」の入力時には、各キーを弱い押圧力で浅押しし、「w」,「r」,「d」の入力時に、この「w」,「r」,「d」と位置的に対応する「u」,「o」,「k」を強い押圧力で深押しする。
【0045】
図14は、本コンピュータ1のキー操作制御に関わる動作手順を示すフローチャートである。
【0046】
EC/KBC25は、シフトキーが押下されると(ステップC1のYES)、キーテーブル251を小文字用から大文字用に切り替える(ステップC2)。また、EC/KBC25は、何らかのキー入力が行われると(ステップC3のYES)、それが強く押されたものかどうかを調べる(ステップC4)。そして、EC/KBC25は、強く押されたものでなければ(ステップC4のNO)、キーテーブル251中のキーコード1の方を返却し(ステップC5)、一方、強く押されたものであれば(ステップC4のYES)、キーコード2の方を返却する(ステップC6)。
【0047】
このように、本コンピュータ1においても、標準のキーボードにおける片手によるキー操作を効率的に行うことを可能とする。
【0048】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を説明する。
【0049】
前述の第1および第2実施形態では、EC/KBC25が独自構成のキーテーブル251を保持し、EC/KBC25の制御の下で、キーコードの切替を行っていた。これに対して、本第3実施形態では、EC/KBC25は通常通りの動作を行い(押下されたキーのキーコードをそのまま返却する)、このEC/KBC25からのキーコードを受ける上位システムであるオペレーティングシステム上の一ソフトウェアにおいて、キーコードを切り替えるための制御を実行する。図15は、本コンピュータ1のキー入力に関わる機能ブロックを示す図である。
【0050】
EC/KBC25からのキーコードは、最終的にはその時にアクティブ状態にあるアプリケーションソフトウェア101に引き渡されることになるが、例えばかな漢字変換などを行うために、FEP(Front End Processor)などと称されるソフトウェアを介在させることが一般的である。そこで、本コンピュータ1では、このキーコードを切り替えるための制御機能を、このFEPに搭載する。このFEPとして動作するソフトウェアが、文字列変換ソフトウェア102である。
【0051】
文字列変換ソフトウェア102は、AI変換部1021を有している。AI変換部1021は、前述の第1および第2実施形態のEC/KBC25が保持するキーテーブル251に対応するテーブルを保持するほか、辞書機能や、例えば入力済みの文字列との関係から次に入力されるに相応しい文字を推論する推論機能等、種々の機能を有している。
【0052】
文字列変換ソフトウェア102は、例えば図3のキーa1が押下されたことによりEC/KBC25から「z」のキーコードを受けると、この「z」のキーコードに加え、(キーテーブル251に対応するテーブルから取得して)「n」のキーコードを入力候補とする。同様に、図3のキーa2が押下されたことによりEC/KBC25から「n」のキーコードを受けた場合には、この「n」のキーコードに加え、「z」のキーコードを入力候補とする。
【0053】
このように入力が進むと、2つの候補のうちのいずれか一方を用いた文字列が何通りか構成されるが(2の文字数乗通り)、文字列変換ソフトウェア102は、前述のAI変換部1021の機能を利用して、これらをより適正度の高い順に優先度付けする。
【0054】
ここで、図16を参照して、「world」という文字列を、(右手のみによる)右手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合の例を説明する。
【0055】
「world」という文字列を入力するためのキーは、「w」,「r」,「d」が左手部分に、また、「o」,「l」が右手部分に配置されている。そこで、右手部分に配置されているキーのみで文字入力を行う場合、まず、「w」と位置的に対応する「u」を押下する。そうすると、前述のように、「u」のキーコードがEC/KBC25から文字列変換ソフトウェア102に渡されるが、文字列変換ソフトウェア102では、この「u」に加え、「w」も入力候補とする。
【0056】
次は、「o」をそのまま押下することになるが、この際も、この「o」に加え、「r」が入力候補となる。この時点で、「uo」、「ur」、「wo」、「wr」の4つが文字列の候補として存在することになる。さらに、「r」と位置的に対応する「o」が続けて押下され、「o」と「r」とが入力候補となり、「uoo」、「uor」、「uro」、「urr」、「woo」、「wor」、「wro」、「wrr」の8つが文字列の候補として存在することになる。
【0057】
同様の手順で、5つのキーが押下され終わると、32(25)個の文字列の候補が存在することとなるが、文字列変換ソフトウェア102は、AI変換部1021を使って、これらを優先度付けし、優先度の高い順に例えば所定数分だけ選択肢として提示する。例えば「world」は辞書中の一単語であるので、高い優先度が付与されているものと思われる。そして、提示した選択肢の中からいずれかを選択する指示が行われたら、文字列変換ソフトウェア102は、その文字列に対応するキーコード群をアプリケーションソフトウェア101に転送する。
【0058】
図17は、本コンピュータ1のキー操作制御に関わる動作手順を示すフローチャートである。
【0059】
文字列変換ソフトウェア102は、何らかのキー入力が行われると(ステップD1のYES)、EC/KBC25から受けた当該キーのキーコードと、そのキーと位置的に対応するキーのキーコードとを入力候補とする(ステップD2)。次に、文字列変換ソフトウェア102は、入力済み文字列の各組合わせの優先度をAI変換部1021を使って算出し(ステップD3)、その算出した優先度の高い順に、文字列の各組合わせを選択肢として提示する(ステップD4)。
【0060】
もし、この提示した選択肢の中からいずれかの文字列を選択する指示が行われたら(ステップD5のYES)、文字列変換ソフトウェア102は、その文字列のキーコード群をアプリケーションソフトウェア101に転送する(ステップD6)。
【0061】
このように、本コンピュータ1においても、標準のキーボードにおける片手によるキー操作を効率的に行うことを可能とする。
【0062】
ところで、以上では、実際に存在する左手部分および右手部分のうちの一方のみを使ってキー操作を行えるようにする手法を説明したが、この手法によれば、例えば図18に示すように、右手部分のみの約半数のキーを備えるのみで、すべてのキー入力を右手のみで行うことも可能となる。また、逆に、左手部分のみのキーを備えるようにする事も当然に可能である。
【0063】
このように、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…電子機器(コンピュータ)、2…コンピュータ本体、3…表示パネル、11…CPU、12…ノースブリッジ、13…主メモリ、14…グラフィックスアクセラレータ、14A…VRAM、15…LCD、16…サウスブリッジ、17…BIOS−ROM、18…HDD、19…USBコントローラ、20…サウンドコントローラ、21…スピーカ、22…LANコントローラ、23…WLANコントローラ、24…各種PCIデバイス、25…エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラ(EC/KBC)、26…電源回路、27…バッテリ、28…キーボード、29…タッチパッド、30…スティック型ポインティングデバイス(アキュポイント)、31a〜31d…操作ボタン、32…切替スイッチ、101…アプリケーションソフトウェア、102…文字列変換ソフトウェア、251…キーテーブル、1021…AI変換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のキー群が配置された第1の領域と、第2のキー群が配置された第2の領域との一方または両方を有するキー操作部と、
前記第1のキー群のいずれかのキーが押下された場合、当該キーに割り当てられたキーコードと、当該キーの前記第1の領域内での位置に対応する前記第2の領域内での位置に配置されたキーに割り当てられたキーコードとの2つのキーコードを生成し、前記第2のキー群のいずれかのキーが押下された場合、当該キーに割り当てられたキーコードと、当該キーの前記第2の領域内での位置に対応する前記第1の領域内での位置に配置されたキーに割り当てられたキーコードとの2つのキーコードを生成するキーコード生成手段と、
キーが押下される毎に前記キーコード生成手段により生成された2つのキーコードをキーが押下された順に排他選択的に用いて構成される全ての組み合わせの複数の文字列の中から優先度の高い順に所定数分だけ選択肢として提示し、前記提示した選択肢の中から選択された文字列を示すキーコードを出力するキー操作制御手段と、
を具備する電子機器。
【請求項2】
前記キー操作部の上面左部が前記第1の領域として定義され、前記キー操作部の上面右部が前記第2の領域として定義される請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
第1のキー群が配置された第1の領域と、第2のキー群が配置された第2の領域との一方または両方を有するキー操作部を有する電子機器のキー操作制御方法であって、
前記第1のキー群のいずれかのキーが押下された場合、当該キーに割り当てられたキーコードと、当該キーの前記第1の領域内での位置に対応する前記第2の領域内での位置に配置されたキーに割り当てられたキーコードとの2つのキーコードを生成し、前記第2のキー群のいずれかのキーが押下された場合、当該キーに割り当てられたキーコードと、当該キーの前記第2の領域内での位置に対応する前記第1の領域内での位置に配置されたキーに割り当てられたキーコードとの2つのキーコードを生成し、
キーが押下される毎に前記生成した2つのキーコードをキーが押下された順に排他選択的に用いて構成される全ての組み合わせの複数の文字列の中から優先度の高い順に所定数分だけ選択肢として提示し、
前記提示した選択肢の中から選択された文字列を示すキーコードを出力する、
キー操作制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−150842(P2012−150842A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110814(P2012−110814)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【分割の表示】特願2007−84277(P2007−84277)の分割
【原出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】