電子機器における押し釦装置
【課題】押し釦による押圧部、LED(発光素子)及びタクトスイッチの位置関係を工夫することにより、押し釦の表示部に影を生じさせることなく、押し釦のいずれの位置を押してもほぼ同じ押圧力でタクトスイッチをONする。
【解決手段】中央に位置するタクトスイッチ31〜36の真上に位置する補助枠21の押圧部23a〜23fを介してタクトスイッチ31〜36をONする。押圧部23a〜23fは弾性アーム部22a〜22fを介して支持する。タクトスイッチ31〜36がONされると、LED41A,41B〜46A,46Bが点灯し、押し釦11〜16の表示部を照明する。このとき各押し釦11〜16において、各押し釦11〜16の表示部と前記各押圧部23a〜23fとの間の間隔が、LED41A,41B〜46A,46Bからの光が各押し釦11〜16の表示部全域の照明する大きさとされている。
【解決手段】中央に位置するタクトスイッチ31〜36の真上に位置する補助枠21の押圧部23a〜23fを介してタクトスイッチ31〜36をONする。押圧部23a〜23fは弾性アーム部22a〜22fを介して支持する。タクトスイッチ31〜36がONされると、LED41A,41B〜46A,46Bが点灯し、押し釦11〜16の表示部を照明する。このとき各押し釦11〜16において、各押し釦11〜16の表示部と前記各押圧部23a〜23fとの間の間隔が、LED41A,41B〜46A,46Bからの光が各押し釦11〜16の表示部全域の照明する大きさとされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホーンの親機などの電子機器における押し釦装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における押し釦装置においては、図12及び図13に示すように、押し釦101A,101Bに対向して位置するようにタクトスイッチ102A,102Bが配線基板103A,103B上に設けられている。そして、押し釦101A,101Bの中央を押すことで押圧部101Aa,101Baにてタクトスイッチ102A,102Bが押されてONされ、電子機器が所定の動作を行うようになっている。
【0003】
また、そのような押し釦装置において、押し釦を押したときに、スイッチがONされ、電子機器が所定の動作が行われるだけでなく、使用者にスイッチがONされたことを知らせるために押し釦の、機能などを表示した表示部をLEDで照明するようにしたものはすでに知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
そのような装置では、配線基板上の、押し釦に対向する位置にLEDが設けられ、そのLEDを点灯させてそのLEDの発光にて押し釦の表示部を表示させるスイッチは、押し釦に対して偏倚して設けられている。これは、押し釦の表示部とLEDとの間に遮光物を介在させることなく、LEDによる照明で、押し釦の表示部全体を、影が生じないように照明するためである。
【0005】
そのようにLEDを点灯させるためのスイッチが押し釦に対して偏倚して設けられていると、使用者が、押し釦の、スイッチが設けられている側の端部を押す場合と、押し釦の中央部分を押す場合と、押し釦の、スイッチが設けられていない側の端部を押す場合とで、タクトスイッチをONさせるために必要とされる押圧力が異なる。そのため、押し釦を押すときに使用者の受ける感触が異なることになり、使用者が違和感を感じるおそれがある。
【0006】
そこで、使用者が押し釦のいずれの部分を押すかにかかわらず、押し釦を押してタクトスイッチをONさせる際に使用者が受ける感触をほぼ一定にするには、図13に示すように、タクトスイッチを押圧部を介して押し釦で押す構成とすることで、タクトスイッチを真上から押圧部にて押圧してONする構成とすることが考えられる。
【特許文献1】特開平06−171345号公報(段落0010,0011及び図2参照)
【特許文献2】特開平09−139136号公報(段落0033〜0035及び図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのように、押圧部を介してタクトスイッチを真上から押圧する構成とすると、タクトスイッチがONしてLEDが点灯した際に、LEDからの光によってタクトスイッチの真上に位置する押圧部の全部あるいは一部が押し釦の表示部を通じて、影として見えることになり、照明時の見栄えが悪くなる。
【0008】
本発明は、押し釦による押圧部、LED(発光素子)及びタクトスイッチの位置関係を工夫することにより、押し釦の表示部に影を生じさせることなく、押し釦のいずれの位置を押してもほぼ同じ押圧力でタクトスイッチをONすることができる電子機器における押し釦装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、機器ケーシングに、透光可能な材料で成形される押し釦が配置され、前記機器ケーシング内に前記押し釦のスライド方向に直交する方向に広がる配線基板が設けられ、前記配線基板上に前記押し釦の表示部に対向してタクトスイッチが設けられ、前記配線基板上に、前記押し釦の表示部を照明する発光素子が設けられている電子機器における押し釦装置において、前記機器ケーシングに設けられ前記押し釦をスライド可能に支持する支持スリーブと、前記押し釦と前記配線基板との間に設けられ前記支持スリーブ内に前記押し釦を弾性的に支持する押圧部とを備える構成とされ、前記押し釦において、前記押し釦の表示部と前記押圧部との間の間隔は、前記発光素子からの直接光で前記押し釦の表示部全域を照明する大きさとされていることを特徴とする。ここで、「押し釦の表示部に対向して設けられるタクトスイッチ」とは、押し釦の表示部全体を基板上に垂直投影した場合に、その投影した影の内部にタクトスイッチが位置していることを意味する。
【0010】
このようにすれば、使用者が押し釦を押すことで、押し釦は支持スリーブに案内され、押圧部を介してタクトスイッチがON状態とされる。また、発光素子の点灯による照明の際、前記押し釦において、前記押し釦の表示部と前記押圧部との間の間隔が、前記発光素子からの光が前記押し釦の表示部全域の照明する大きさとされているので、押圧部が、押し釦の表示部を照明しようとする発光素子からの光を遮光しない位置関係になる。
【0011】
つまり、発光素子が単数の場合は、押し釦の表示部全域が、押圧部の上を通過する(発光素子からの)直接光によって照明され、発光素子が複数の場合は、押し釦の表示部のいずれの領域も、押圧部の上を通過する、いずれかの発光素子からの直接光によって照明される。
【0012】
よって押し釦の表示部は、補助枠(押圧部)の影を生ずることなく、発光素子からの光によって照明される。
【0013】
また、押し釦と配線基板との間に押圧部を設けているので、押し釦を押してタクトスイッチをONさせる際に使用者が受ける感触をほぼ一定にすることが可能となる。
【0014】
請求項2の発明は、機器ケーシングに、透光可能な材料で成形される押し釦が配置され、前記機器ケーシング内に前記押し釦のスライド方向に直交する方向に広がる配線基板が設けられ、前記配線基板上に前記押し釦の表示部に対向してタクトスイッチが設けられ、前記配線基板上に、前記押し釦の表示部を照明する発光素子が設けられている電子機器における押し釦装置において、前記機器ケーシングに設けられ前記押し釦をスライド可能に支持する支持スリーブと、前記押し釦と前記配線基板との間に設けられ前記支持スリーブ内に前記押し釦を弾性的に支持する押圧部とを備える構成とされ、前記発光素子が、前記押し釦の表示部に照明を受け持つ領域を有し、前記押し釦において、前記各押圧部が、前記発光素子と前記発光素子が照明を受け持つ前記押し釦の表示部の領域の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されていることを特徴とする。
【0015】
このようにすれば、発光素子が、前記押し釦の表示部に照明を受け持つ領域を有し、前記補助枠の押圧部が、前記発光素子と前記発光素子が照明を受け持つ前記押し釦の表示部の領域の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されるので、押圧部が、押し釦の表示部に影となって現れることはない。
【0016】
請求項3に記載のように、前記発光素子は、前記押し釦の表示部に対向して複数個設けられている構成とすることができる。
【0017】
このようにすれば、押し釦の表示部に対向して、タクトスイッチだけでなく、発光素子も設けられているので、複数の押し釦を規則的に密集して配置するような場合も無理なくレイアウトすることができる。しかも、複数の発光素子で、1つの押し釦の表示部を表示するので、明るく照明することができる。
【0018】
請求項4に記載のように、前記支持スリーブに対し、前記機器ケーシングの内側から取り付けられる補助枠を備え、前記補助枠は、前記機器ケーシングの支持スリーブの外側に位置する外枠と、前記支持スリーブの間に位置する仕切壁部とを有し、この外枠あるいは仕切壁部に前記押し釦に対応して弾性アーム部が連接され、この弾性アーム部に対し前記押圧部が前記タクトスイッチに対向する位置に設けられている構成とすることができる。
【0019】
このようにすれば、機器ケーシングの支持スリーブと補助枠の仕切壁部とによって、隣り合う押し釦間の遮光が確実になされる。よって隣の押し釦についての照明で、表示部が照明されることはなくなる。また、弾性アーム部の弾性によって押圧部上の押し釦が付勢され、押し釦がガタつくことが抑制される。
【0020】
この場合には、請求項5に記載のように、前記押し釦は、並んで複数個設けられている場合に特に有利である。その理由は、複数の押し釦を設ける場合に、機器ケーシングの支持スリーブと補助枠の仕切壁部とによって、隣り合う押し釦間の遮光が確実になされるからである。よって、複数の押し釦を規則的に密集して配置する場合も、隣り合う押し釦間の遮光性を確保してレイアウトすることができる。
【0021】
請求項6に記載のように、前記弾性アーム部は、前記配線基板側に、前記押圧部が押し釦側にそれぞれ位置し、前記押し釦には、前記押圧部が係脱可能に係合する係合凹部が形成されている構成とすることができる。
【0022】
このようにすれば、タクトスイッチと押圧部との間に必要なクリアランスを簡単に確保することができ、誤動作によりタクトスイッチが常時ONの状態になるのが回避される。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明は、発光素子による照明の際に、押し釦の表示部に対し押圧部が、発光素子からの光を遮光しない位置関係になるようにしているので、押し釦の表示部全域を、押圧部の影を生じさせることなく照明することができる。また、押し釦と配線基板との間に押圧部を設け、押し釦を押すことで押圧部を介してタクトスイッチをONさせるので、押し釦を押す際に使用者が受ける感触を、押す位置にかかわりなくほぼ一定にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面に沿って詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明に係る電子機器の一実施の形態であるインターホンの親機を示す斜視図、図2(a)は同親機の正面図、図2(b)は同側面図、図2(c)は同底面図、図3は同分解斜視図である。
【0026】
図1〜図3に示すように、インターホーンの親機(電子機器)1は、機器ケーシング2が前側ケーシング3と後側ケーシング4とを結合して構成され、ケーシング内部に、前側ケーシング3にビス51に取り付けられる配線基板5が収納されている。また、上部には、子機との通信のためのアンテナ6が設けられている。
【0027】
前側ケーシング3の後側には、図4にも示すように、小さい6つの角筒状の支持スリーブ3a〜3fと大きい角筒状の支持スリーブ3gとが後側に延びるように一体に成形され、その支持スリーブ3a〜3gに押し釦11〜17がそれぞれスライド可能に嵌挿されている。なお、押し釦11〜17は、支持スリーブ3a〜3gに対し、前側ケーシング3の後側から嵌め込まれる。
【0028】
上側の小さい6つの角筒状の支持スリーブ3a〜3fに小さい6つの押し釦11〜16が、下側の大きい角筒状の支持スリーブ3gに大きい押し釦17がそれぞれスライド可能に設けられている。小さい6つの押し釦11〜16は、密集して規則的に上下2段に配置され、それらの配置領域とほぼ等しい幅にわたって1つの大きい押し釦17が配置されている。なお、これらの押し釦11〜16,17は、いずれも、乳白色の、透光可能な合成樹脂材料(例えば、光拡散剤が混合された乳白色のアクリル樹脂)にて成形されている。
【0029】
小さい押し釦11〜16は同じ構造であるので、押し釦11について説明する。押し釦11は、図5(a)(b)に示すように、矩形板状の表示部11aと、この表示部11aの周縁に一側が連接され表示部11aの直交する方向(内方)に延びる筒状部11b(支持スリーブ3aの内周面と接触してスライドする部分)と、この筒状部11bの他側のうち長さが長い側の辺側に設けられるフランジ部11c,11dとを有する。押し釦11を押す際に押し釦11が揺れないように、フランジ部11c,11dは長く形成され、また、一方のフランジ部11cは、上下を反転しないように誤挿入防止のために中間部位に切り欠き部11eが形成されている。また、押し釦11の筒状部11bに、後述する押圧部23aが係脱可能に係合する係合凹部11gが形成されている。
【0030】
一方、大きい押し釦17も、押し釦11と同様に、図6(a)(b)に示すように、矩形板状の表示部17aと、この表示部17aの周縁に一側が連接され表示部17aの直交する方向(内方)に延びる筒状部17b(支持スリーブ3gの内周面と接触してスライドする部分)と、この筒状部17bの他側のうち長さが長い側の辺側に設けられるフランジ部17c,17dとを有する。また、後述するタクトスイッチに対応して、筒状部17bの内周面に突条部17eが形成されている。
【0031】
なお、各支持スリーブ3a〜3f,3gの後端部(先端部)には、押し釦11〜17のフランジ部に対応して、そのフランジ部が係脱可能に係合する切り欠き部(フランジ部11c,11dが係脱可能に係合する切り欠き部3ab,3acのみ図示)が形成されている。
【0032】
複数の支持スリーブ3a〜3f,3gに対し前側ケーシング3の後側(内側)から補助枠21が嵌め込まれて、取り付けられる。この補助枠21は、支持スリーブ3a〜3f,3gの外側に位置する外枠21Aと、支持スリーブ3a〜3f,3gの間に位置するほぼ井桁状の仕切壁部21Bとを有する。この補助枠21を成形する材料は、後述する弾性アーム部22a〜22fが弾性(可撓性)を発揮できる合成樹脂であればよく、例えばABSが用いられる。
【0033】
仕切壁部21Bは、支持スリーブ3a〜3gの間に位置することになるので、支持スリーブ3a〜3gとの協働作用によって、各押し釦11〜17の表示部を照明する際にその照明光が漏れて、隣りに位置する押し釦の表示部を照明することがないように、遮光機能を発揮するようになっている。
【0034】
また、支持スリーブ3a〜3gのうち支持スリーブ3a,3cの外側部及び支持スリーブ3gの左右両側部に係合突部3aa,3ca,3gaが形成されている(図4及び図8参照)。一方、その係合突部3aa,3ca,3gaに対応して外枠21Aの(内側面側の)コーナ部付近の4カ所に係合凹部21Aaが形成されている。そして、補助枠21が支持スリーブ3a〜3gに対し嵌め込まれる際には、係合突部3aa,3ca,3gaに係合凹部21Aaが係脱可能に係合し、前側ケーシング3の支持スリーブ3a〜3g内に押し釦11〜17が保持され、不用意に外れない状態とされる。
【0035】
これにより、図3に示すように、前側ケーシング3の後側(内側)から、前側ケーシング3の支持スリーブ3a〜3g内に後側から押し釦11〜17をそれぞれ挿入し、それに続いて複数の支持スリーブ3a〜3gに対し補助枠21を嵌め込み、それから、配線基板5を6本のビス51にて前側ケーシング3に取り付けることで、補助枠21が前側ケーシング3と配線基板5との間に挟持され、押し釦11〜17及び補助枠21が外れないように組み付けられることになる。
【0036】
外枠21Aあるいは仕切壁部21Bに、図7(a)(b)及び図8、図9に示すように、各押し釦11〜16と配線基板5との間に、1対の弾性アーム部22a〜22fを介してブリッジ状の押圧部23a〜23fが設けられている。そして、弾性アーム部22a〜22fが配線基板5側に、押圧部23a〜23fが押し釦11〜16側にそれぞれ位置している。そして、押し釦11〜16が係合する押圧部23a〜23fが、弾性アーム部22a〜22fの弾性(可撓性)より押し釦11〜16を通常時には上方に(前側ケーシング3側に)押し上げ、押し釦11〜16のフランジ部が支持スリーブ3a〜3fの端部に押し付けられることで、支持スリーブ3a〜3f内に押し釦11〜16がガタなく保持される。
【0037】
また、外枠21Aには、押し釦17に対応するように、押し釦17を弾性的に支持する4つの弾性アーム部23gが設けられている。この弾性アーム部23gの弾性によって押し釦17を上方(前側ケーシング3側)に押し上げ、押し釦17のフランジ部が支持スリーブ3gの端部に押し付けられることで、支持スリーブ3g内に押し釦17もガタなく保持される。
【0038】
各押し釦11〜16(表示部)の中央部に対向して、配線基板5上にタクトスイッチ31〜36が設けられ、その両側(押し釦11〜16の長手方向に対応)にLED41A,41B,42A,42B,43A,43B,44A,44B,45A,45B,46A,46B(発光素子)が設けられている。つまり、1つの押し釦11〜16に対し2つのLED41A,41B〜46A,46Bが設けられている。タクトスイッチ31〜36及びLED41A,41B〜46A,46Bは、これらが対向する押し釦11〜16の表示部を配線基板5上に垂直投影した場合に形成される影の領域内に存在している。
【0039】
そして、押し釦11〜16を押すことで、押された押し釦11〜16に対向するLED41A,41B〜46A,46Bが発光し、そのLED41A,41B〜46A,46Bからの光により、対応する押し釦11〜16の表示部が照明される。また、子機が呼び出せば、その子機に対応する押し釦11〜16が、対応するLED41A,41B〜46A,46Bの点灯により照明され、その押し釦11〜16を押せば子機と通話できるようになっている。
【0040】
また、大きい押し釦17に対しては、突条部17eに対応してタクトスイッチ37が左右両側に設けられ、それらの間に複数(本例では4つ)のLED47が配置され、押し釦17を押すことで左右いずれかのタクトスイッチ37がONすると、LED47が点灯して、表示部17aを照明するようになっている(図9参照)。
【0041】
そして、補助枠21の押圧部23a〜23fとLED41A,41B〜46A,46Bとの位置関係は、基本的にいずれも同じであるので、代表して押圧部23bとLED41A,41B〜46A,46Bとの関係について説明する。
【0042】
押圧部23bは、図10に示すように、2つのLED42A,42Bに対し、2つのLED42A,42Bからの光でもって、押し釦12の表示部12aの全領域を、押圧部23bの影を生じさせることなく、照明できる。このように照明できるのは、押し釦12において、押し釦12の表示部12aと押圧部23bとの間の間隔Lが、LED42A,42Bからの光で押し釦12の表示部12a全域を直接照明する長さ(大きさ)とされているからである。
【0043】
つまり、2つのLED42A,42Bが、2つの領域S1,S2に分割される押し釦11の表示部11aのそれぞれの照明を受け持つ構成とされ、補助枠21の押圧部23aが、LED42AとこのLED42Bが照明を受け持つ押し釦の表示部の領域S1,S2の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されるようになっている。
【0044】
上記のように構成すれば、押し釦11〜16を弾性アーム部22a〜22fの弾性に抗して押し付けると、所定のストロークを経た後、押圧部23a〜23fがタクトスイッチ31〜36に接触し、さらに押すことでタクトスイッチ31〜36がONされる。つまり、各押し釦11〜16が押圧部23a〜23fを介してタクトスイッチ11〜16をONすることになる。
【0045】
これにより、ONするのに要するストロークが0.2mm程度のタクトスイッチ11〜16を、必要なクリアランスを確保して確実にONさせることができる。通常時はクリアランスがあるので、タクトスイッチ11〜16が誤動作でONすることはなく、弾性アーム部22a〜22fの弾性で押し上げているので、押し釦11〜16がガタつくことはない。
【0046】
また、タクトスイッチ11〜16の真上に位置する押圧部23a〜23fを介してONするので、押し釦11〜16のいずれの位置を押圧しても、使用者はほぼ同じ感触でONさせることができる。
【0047】
さらに、タクトスイッチ11〜16がONされると、LED41A,41B〜46A,46Bが点灯し、光を発する。このとき、タクトスイッチ11〜16の真上に押圧部23a〜23fが存在するが、押圧部23a〜23fは、押し釦11〜16の表示部に対し、前述したように、LED41A,41B〜46A,46Bからの光を遮光しない位置関係にあるので、押し釦11〜16の表示部に影を生じさせることはない。
【0048】
前記実施の形態は、次のように変更することも可能である。
(i) 弾性アーム部22a〜22fは2本で押圧部23a〜23fを支持する構成としているが、弾性アーム部1本だけで押圧部を支持する構成とすることも可能である。
(ii) 発光素子は、1つの押し釦に対向して、必ずしも2つ設ける必要はなく、図11に示すように、1つだけ設ける構成とすることも可能である。この場合は、LED42’を設ける位置を高くすると共にLED42’を傾斜させることで、弾性アーム部22b’を介して仕切壁部21Bに支持されタクトスイッチ32’を押す押圧部23b’は、押し釦12の表示部12aに対し、LED42’(発光素子)からの光を遮光しない位置関係となるように構成されている。つまり、押し釦12の表示部12aと押圧部23b’との間の間隔は、LED42’からの直接光で押し釦12の表示部12a全域を照明する大きさとされているし、また、LED42’が、前記押し釦の表示部に照明を受け持つ領域を有し、押し釦12において、押圧部23b’が、LED42’と照明を受け持つ押し釦12の表示部12aの領域(図11に示す場合はLED42’が1個であるので、表示部12aの全領域)の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されている。
(iii) 必ずしも複数の押し釦を有するものに限らず、1つの押し釦を有する電子機器にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る電子機器の一実施の形態であるインターホンの親機を示す斜視図である。
【図2】(a)は同正面図、(b)は同側面図、(c)は同底面図である。
【図3】同分解斜視図である。
【図4】前側ケーシングを後側から見た、前側ケーシング、押し釦及び補助枠の関係を示す斜視図である。
【図5】(a)(b)はそれぞれ小さい押し釦の斜視図である。
【図6】(a)(b)はそれぞれ大きい押し釦の斜視図である。
【図7】(a)(b)はそれぞれ補助枠の斜視図である。
【図8】図2(a)のA−A線における断面図である。
【図9】図2(a)のB−B線における断面図である。
【図10】LEDと補助枠の押圧部との関係を示す図である。
【図11】変形例についてのLEDと補助枠の押圧部との関係を示す図である。
【図12】従来例の説明図である。
【図13】別の従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 インターホンの親機
2 機器ケーシング
3a〜3f,3g 支持スリーブ
5 配線基板
11〜16,17 押し釦
11a 表示部
11g 係合凹部
21 補助枠
21A 外枠
21B 仕切壁部
22a〜22f,22b’ 弾性アーム部
23a〜23f,23b’ 押圧部
31〜36 タクトスイッチ
41A,41B〜46A,46B,42’ LED(発光素子)
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホーンの親機などの電子機器における押し釦装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における押し釦装置においては、図12及び図13に示すように、押し釦101A,101Bに対向して位置するようにタクトスイッチ102A,102Bが配線基板103A,103B上に設けられている。そして、押し釦101A,101Bの中央を押すことで押圧部101Aa,101Baにてタクトスイッチ102A,102Bが押されてONされ、電子機器が所定の動作を行うようになっている。
【0003】
また、そのような押し釦装置において、押し釦を押したときに、スイッチがONされ、電子機器が所定の動作が行われるだけでなく、使用者にスイッチがONされたことを知らせるために押し釦の、機能などを表示した表示部をLEDで照明するようにしたものはすでに知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0004】
そのような装置では、配線基板上の、押し釦に対向する位置にLEDが設けられ、そのLEDを点灯させてそのLEDの発光にて押し釦の表示部を表示させるスイッチは、押し釦に対して偏倚して設けられている。これは、押し釦の表示部とLEDとの間に遮光物を介在させることなく、LEDによる照明で、押し釦の表示部全体を、影が生じないように照明するためである。
【0005】
そのようにLEDを点灯させるためのスイッチが押し釦に対して偏倚して設けられていると、使用者が、押し釦の、スイッチが設けられている側の端部を押す場合と、押し釦の中央部分を押す場合と、押し釦の、スイッチが設けられていない側の端部を押す場合とで、タクトスイッチをONさせるために必要とされる押圧力が異なる。そのため、押し釦を押すときに使用者の受ける感触が異なることになり、使用者が違和感を感じるおそれがある。
【0006】
そこで、使用者が押し釦のいずれの部分を押すかにかかわらず、押し釦を押してタクトスイッチをONさせる際に使用者が受ける感触をほぼ一定にするには、図13に示すように、タクトスイッチを押圧部を介して押し釦で押す構成とすることで、タクトスイッチを真上から押圧部にて押圧してONする構成とすることが考えられる。
【特許文献1】特開平06−171345号公報(段落0010,0011及び図2参照)
【特許文献2】特開平09−139136号公報(段落0033〜0035及び図5参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのように、押圧部を介してタクトスイッチを真上から押圧する構成とすると、タクトスイッチがONしてLEDが点灯した際に、LEDからの光によってタクトスイッチの真上に位置する押圧部の全部あるいは一部が押し釦の表示部を通じて、影として見えることになり、照明時の見栄えが悪くなる。
【0008】
本発明は、押し釦による押圧部、LED(発光素子)及びタクトスイッチの位置関係を工夫することにより、押し釦の表示部に影を生じさせることなく、押し釦のいずれの位置を押してもほぼ同じ押圧力でタクトスイッチをONすることができる電子機器における押し釦装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、機器ケーシングに、透光可能な材料で成形される押し釦が配置され、前記機器ケーシング内に前記押し釦のスライド方向に直交する方向に広がる配線基板が設けられ、前記配線基板上に前記押し釦の表示部に対向してタクトスイッチが設けられ、前記配線基板上に、前記押し釦の表示部を照明する発光素子が設けられている電子機器における押し釦装置において、前記機器ケーシングに設けられ前記押し釦をスライド可能に支持する支持スリーブと、前記押し釦と前記配線基板との間に設けられ前記支持スリーブ内に前記押し釦を弾性的に支持する押圧部とを備える構成とされ、前記押し釦において、前記押し釦の表示部と前記押圧部との間の間隔は、前記発光素子からの直接光で前記押し釦の表示部全域を照明する大きさとされていることを特徴とする。ここで、「押し釦の表示部に対向して設けられるタクトスイッチ」とは、押し釦の表示部全体を基板上に垂直投影した場合に、その投影した影の内部にタクトスイッチが位置していることを意味する。
【0010】
このようにすれば、使用者が押し釦を押すことで、押し釦は支持スリーブに案内され、押圧部を介してタクトスイッチがON状態とされる。また、発光素子の点灯による照明の際、前記押し釦において、前記押し釦の表示部と前記押圧部との間の間隔が、前記発光素子からの光が前記押し釦の表示部全域の照明する大きさとされているので、押圧部が、押し釦の表示部を照明しようとする発光素子からの光を遮光しない位置関係になる。
【0011】
つまり、発光素子が単数の場合は、押し釦の表示部全域が、押圧部の上を通過する(発光素子からの)直接光によって照明され、発光素子が複数の場合は、押し釦の表示部のいずれの領域も、押圧部の上を通過する、いずれかの発光素子からの直接光によって照明される。
【0012】
よって押し釦の表示部は、補助枠(押圧部)の影を生ずることなく、発光素子からの光によって照明される。
【0013】
また、押し釦と配線基板との間に押圧部を設けているので、押し釦を押してタクトスイッチをONさせる際に使用者が受ける感触をほぼ一定にすることが可能となる。
【0014】
請求項2の発明は、機器ケーシングに、透光可能な材料で成形される押し釦が配置され、前記機器ケーシング内に前記押し釦のスライド方向に直交する方向に広がる配線基板が設けられ、前記配線基板上に前記押し釦の表示部に対向してタクトスイッチが設けられ、前記配線基板上に、前記押し釦の表示部を照明する発光素子が設けられている電子機器における押し釦装置において、前記機器ケーシングに設けられ前記押し釦をスライド可能に支持する支持スリーブと、前記押し釦と前記配線基板との間に設けられ前記支持スリーブ内に前記押し釦を弾性的に支持する押圧部とを備える構成とされ、前記発光素子が、前記押し釦の表示部に照明を受け持つ領域を有し、前記押し釦において、前記各押圧部が、前記発光素子と前記発光素子が照明を受け持つ前記押し釦の表示部の領域の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されていることを特徴とする。
【0015】
このようにすれば、発光素子が、前記押し釦の表示部に照明を受け持つ領域を有し、前記補助枠の押圧部が、前記発光素子と前記発光素子が照明を受け持つ前記押し釦の表示部の領域の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されるので、押圧部が、押し釦の表示部に影となって現れることはない。
【0016】
請求項3に記載のように、前記発光素子は、前記押し釦の表示部に対向して複数個設けられている構成とすることができる。
【0017】
このようにすれば、押し釦の表示部に対向して、タクトスイッチだけでなく、発光素子も設けられているので、複数の押し釦を規則的に密集して配置するような場合も無理なくレイアウトすることができる。しかも、複数の発光素子で、1つの押し釦の表示部を表示するので、明るく照明することができる。
【0018】
請求項4に記載のように、前記支持スリーブに対し、前記機器ケーシングの内側から取り付けられる補助枠を備え、前記補助枠は、前記機器ケーシングの支持スリーブの外側に位置する外枠と、前記支持スリーブの間に位置する仕切壁部とを有し、この外枠あるいは仕切壁部に前記押し釦に対応して弾性アーム部が連接され、この弾性アーム部に対し前記押圧部が前記タクトスイッチに対向する位置に設けられている構成とすることができる。
【0019】
このようにすれば、機器ケーシングの支持スリーブと補助枠の仕切壁部とによって、隣り合う押し釦間の遮光が確実になされる。よって隣の押し釦についての照明で、表示部が照明されることはなくなる。また、弾性アーム部の弾性によって押圧部上の押し釦が付勢され、押し釦がガタつくことが抑制される。
【0020】
この場合には、請求項5に記載のように、前記押し釦は、並んで複数個設けられている場合に特に有利である。その理由は、複数の押し釦を設ける場合に、機器ケーシングの支持スリーブと補助枠の仕切壁部とによって、隣り合う押し釦間の遮光が確実になされるからである。よって、複数の押し釦を規則的に密集して配置する場合も、隣り合う押し釦間の遮光性を確保してレイアウトすることができる。
【0021】
請求項6に記載のように、前記弾性アーム部は、前記配線基板側に、前記押圧部が押し釦側にそれぞれ位置し、前記押し釦には、前記押圧部が係脱可能に係合する係合凹部が形成されている構成とすることができる。
【0022】
このようにすれば、タクトスイッチと押圧部との間に必要なクリアランスを簡単に確保することができ、誤動作によりタクトスイッチが常時ONの状態になるのが回避される。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明は、発光素子による照明の際に、押し釦の表示部に対し押圧部が、発光素子からの光を遮光しない位置関係になるようにしているので、押し釦の表示部全域を、押圧部の影を生じさせることなく照明することができる。また、押し釦と配線基板との間に押圧部を設け、押し釦を押すことで押圧部を介してタクトスイッチをONさせるので、押し釦を押す際に使用者が受ける感触を、押す位置にかかわりなくほぼ一定にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面に沿って詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明に係る電子機器の一実施の形態であるインターホンの親機を示す斜視図、図2(a)は同親機の正面図、図2(b)は同側面図、図2(c)は同底面図、図3は同分解斜視図である。
【0026】
図1〜図3に示すように、インターホーンの親機(電子機器)1は、機器ケーシング2が前側ケーシング3と後側ケーシング4とを結合して構成され、ケーシング内部に、前側ケーシング3にビス51に取り付けられる配線基板5が収納されている。また、上部には、子機との通信のためのアンテナ6が設けられている。
【0027】
前側ケーシング3の後側には、図4にも示すように、小さい6つの角筒状の支持スリーブ3a〜3fと大きい角筒状の支持スリーブ3gとが後側に延びるように一体に成形され、その支持スリーブ3a〜3gに押し釦11〜17がそれぞれスライド可能に嵌挿されている。なお、押し釦11〜17は、支持スリーブ3a〜3gに対し、前側ケーシング3の後側から嵌め込まれる。
【0028】
上側の小さい6つの角筒状の支持スリーブ3a〜3fに小さい6つの押し釦11〜16が、下側の大きい角筒状の支持スリーブ3gに大きい押し釦17がそれぞれスライド可能に設けられている。小さい6つの押し釦11〜16は、密集して規則的に上下2段に配置され、それらの配置領域とほぼ等しい幅にわたって1つの大きい押し釦17が配置されている。なお、これらの押し釦11〜16,17は、いずれも、乳白色の、透光可能な合成樹脂材料(例えば、光拡散剤が混合された乳白色のアクリル樹脂)にて成形されている。
【0029】
小さい押し釦11〜16は同じ構造であるので、押し釦11について説明する。押し釦11は、図5(a)(b)に示すように、矩形板状の表示部11aと、この表示部11aの周縁に一側が連接され表示部11aの直交する方向(内方)に延びる筒状部11b(支持スリーブ3aの内周面と接触してスライドする部分)と、この筒状部11bの他側のうち長さが長い側の辺側に設けられるフランジ部11c,11dとを有する。押し釦11を押す際に押し釦11が揺れないように、フランジ部11c,11dは長く形成され、また、一方のフランジ部11cは、上下を反転しないように誤挿入防止のために中間部位に切り欠き部11eが形成されている。また、押し釦11の筒状部11bに、後述する押圧部23aが係脱可能に係合する係合凹部11gが形成されている。
【0030】
一方、大きい押し釦17も、押し釦11と同様に、図6(a)(b)に示すように、矩形板状の表示部17aと、この表示部17aの周縁に一側が連接され表示部17aの直交する方向(内方)に延びる筒状部17b(支持スリーブ3gの内周面と接触してスライドする部分)と、この筒状部17bの他側のうち長さが長い側の辺側に設けられるフランジ部17c,17dとを有する。また、後述するタクトスイッチに対応して、筒状部17bの内周面に突条部17eが形成されている。
【0031】
なお、各支持スリーブ3a〜3f,3gの後端部(先端部)には、押し釦11〜17のフランジ部に対応して、そのフランジ部が係脱可能に係合する切り欠き部(フランジ部11c,11dが係脱可能に係合する切り欠き部3ab,3acのみ図示)が形成されている。
【0032】
複数の支持スリーブ3a〜3f,3gに対し前側ケーシング3の後側(内側)から補助枠21が嵌め込まれて、取り付けられる。この補助枠21は、支持スリーブ3a〜3f,3gの外側に位置する外枠21Aと、支持スリーブ3a〜3f,3gの間に位置するほぼ井桁状の仕切壁部21Bとを有する。この補助枠21を成形する材料は、後述する弾性アーム部22a〜22fが弾性(可撓性)を発揮できる合成樹脂であればよく、例えばABSが用いられる。
【0033】
仕切壁部21Bは、支持スリーブ3a〜3gの間に位置することになるので、支持スリーブ3a〜3gとの協働作用によって、各押し釦11〜17の表示部を照明する際にその照明光が漏れて、隣りに位置する押し釦の表示部を照明することがないように、遮光機能を発揮するようになっている。
【0034】
また、支持スリーブ3a〜3gのうち支持スリーブ3a,3cの外側部及び支持スリーブ3gの左右両側部に係合突部3aa,3ca,3gaが形成されている(図4及び図8参照)。一方、その係合突部3aa,3ca,3gaに対応して外枠21Aの(内側面側の)コーナ部付近の4カ所に係合凹部21Aaが形成されている。そして、補助枠21が支持スリーブ3a〜3gに対し嵌め込まれる際には、係合突部3aa,3ca,3gaに係合凹部21Aaが係脱可能に係合し、前側ケーシング3の支持スリーブ3a〜3g内に押し釦11〜17が保持され、不用意に外れない状態とされる。
【0035】
これにより、図3に示すように、前側ケーシング3の後側(内側)から、前側ケーシング3の支持スリーブ3a〜3g内に後側から押し釦11〜17をそれぞれ挿入し、それに続いて複数の支持スリーブ3a〜3gに対し補助枠21を嵌め込み、それから、配線基板5を6本のビス51にて前側ケーシング3に取り付けることで、補助枠21が前側ケーシング3と配線基板5との間に挟持され、押し釦11〜17及び補助枠21が外れないように組み付けられることになる。
【0036】
外枠21Aあるいは仕切壁部21Bに、図7(a)(b)及び図8、図9に示すように、各押し釦11〜16と配線基板5との間に、1対の弾性アーム部22a〜22fを介してブリッジ状の押圧部23a〜23fが設けられている。そして、弾性アーム部22a〜22fが配線基板5側に、押圧部23a〜23fが押し釦11〜16側にそれぞれ位置している。そして、押し釦11〜16が係合する押圧部23a〜23fが、弾性アーム部22a〜22fの弾性(可撓性)より押し釦11〜16を通常時には上方に(前側ケーシング3側に)押し上げ、押し釦11〜16のフランジ部が支持スリーブ3a〜3fの端部に押し付けられることで、支持スリーブ3a〜3f内に押し釦11〜16がガタなく保持される。
【0037】
また、外枠21Aには、押し釦17に対応するように、押し釦17を弾性的に支持する4つの弾性アーム部23gが設けられている。この弾性アーム部23gの弾性によって押し釦17を上方(前側ケーシング3側)に押し上げ、押し釦17のフランジ部が支持スリーブ3gの端部に押し付けられることで、支持スリーブ3g内に押し釦17もガタなく保持される。
【0038】
各押し釦11〜16(表示部)の中央部に対向して、配線基板5上にタクトスイッチ31〜36が設けられ、その両側(押し釦11〜16の長手方向に対応)にLED41A,41B,42A,42B,43A,43B,44A,44B,45A,45B,46A,46B(発光素子)が設けられている。つまり、1つの押し釦11〜16に対し2つのLED41A,41B〜46A,46Bが設けられている。タクトスイッチ31〜36及びLED41A,41B〜46A,46Bは、これらが対向する押し釦11〜16の表示部を配線基板5上に垂直投影した場合に形成される影の領域内に存在している。
【0039】
そして、押し釦11〜16を押すことで、押された押し釦11〜16に対向するLED41A,41B〜46A,46Bが発光し、そのLED41A,41B〜46A,46Bからの光により、対応する押し釦11〜16の表示部が照明される。また、子機が呼び出せば、その子機に対応する押し釦11〜16が、対応するLED41A,41B〜46A,46Bの点灯により照明され、その押し釦11〜16を押せば子機と通話できるようになっている。
【0040】
また、大きい押し釦17に対しては、突条部17eに対応してタクトスイッチ37が左右両側に設けられ、それらの間に複数(本例では4つ)のLED47が配置され、押し釦17を押すことで左右いずれかのタクトスイッチ37がONすると、LED47が点灯して、表示部17aを照明するようになっている(図9参照)。
【0041】
そして、補助枠21の押圧部23a〜23fとLED41A,41B〜46A,46Bとの位置関係は、基本的にいずれも同じであるので、代表して押圧部23bとLED41A,41B〜46A,46Bとの関係について説明する。
【0042】
押圧部23bは、図10に示すように、2つのLED42A,42Bに対し、2つのLED42A,42Bからの光でもって、押し釦12の表示部12aの全領域を、押圧部23bの影を生じさせることなく、照明できる。このように照明できるのは、押し釦12において、押し釦12の表示部12aと押圧部23bとの間の間隔Lが、LED42A,42Bからの光で押し釦12の表示部12a全域を直接照明する長さ(大きさ)とされているからである。
【0043】
つまり、2つのLED42A,42Bが、2つの領域S1,S2に分割される押し釦11の表示部11aのそれぞれの照明を受け持つ構成とされ、補助枠21の押圧部23aが、LED42AとこのLED42Bが照明を受け持つ押し釦の表示部の領域S1,S2の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されるようになっている。
【0044】
上記のように構成すれば、押し釦11〜16を弾性アーム部22a〜22fの弾性に抗して押し付けると、所定のストロークを経た後、押圧部23a〜23fがタクトスイッチ31〜36に接触し、さらに押すことでタクトスイッチ31〜36がONされる。つまり、各押し釦11〜16が押圧部23a〜23fを介してタクトスイッチ11〜16をONすることになる。
【0045】
これにより、ONするのに要するストロークが0.2mm程度のタクトスイッチ11〜16を、必要なクリアランスを確保して確実にONさせることができる。通常時はクリアランスがあるので、タクトスイッチ11〜16が誤動作でONすることはなく、弾性アーム部22a〜22fの弾性で押し上げているので、押し釦11〜16がガタつくことはない。
【0046】
また、タクトスイッチ11〜16の真上に位置する押圧部23a〜23fを介してONするので、押し釦11〜16のいずれの位置を押圧しても、使用者はほぼ同じ感触でONさせることができる。
【0047】
さらに、タクトスイッチ11〜16がONされると、LED41A,41B〜46A,46Bが点灯し、光を発する。このとき、タクトスイッチ11〜16の真上に押圧部23a〜23fが存在するが、押圧部23a〜23fは、押し釦11〜16の表示部に対し、前述したように、LED41A,41B〜46A,46Bからの光を遮光しない位置関係にあるので、押し釦11〜16の表示部に影を生じさせることはない。
【0048】
前記実施の形態は、次のように変更することも可能である。
(i) 弾性アーム部22a〜22fは2本で押圧部23a〜23fを支持する構成としているが、弾性アーム部1本だけで押圧部を支持する構成とすることも可能である。
(ii) 発光素子は、1つの押し釦に対向して、必ずしも2つ設ける必要はなく、図11に示すように、1つだけ設ける構成とすることも可能である。この場合は、LED42’を設ける位置を高くすると共にLED42’を傾斜させることで、弾性アーム部22b’を介して仕切壁部21Bに支持されタクトスイッチ32’を押す押圧部23b’は、押し釦12の表示部12aに対し、LED42’(発光素子)からの光を遮光しない位置関係となるように構成されている。つまり、押し釦12の表示部12aと押圧部23b’との間の間隔は、LED42’からの直接光で押し釦12の表示部12a全域を照明する大きさとされているし、また、LED42’が、前記押し釦の表示部に照明を受け持つ領域を有し、押し釦12において、押圧部23b’が、LED42’と照明を受け持つ押し釦12の表示部12aの領域(図11に示す場合はLED42’が1個であるので、表示部12aの全領域)の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されている。
(iii) 必ずしも複数の押し釦を有するものに限らず、1つの押し釦を有する電子機器にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る電子機器の一実施の形態であるインターホンの親機を示す斜視図である。
【図2】(a)は同正面図、(b)は同側面図、(c)は同底面図である。
【図3】同分解斜視図である。
【図4】前側ケーシングを後側から見た、前側ケーシング、押し釦及び補助枠の関係を示す斜視図である。
【図5】(a)(b)はそれぞれ小さい押し釦の斜視図である。
【図6】(a)(b)はそれぞれ大きい押し釦の斜視図である。
【図7】(a)(b)はそれぞれ補助枠の斜視図である。
【図8】図2(a)のA−A線における断面図である。
【図9】図2(a)のB−B線における断面図である。
【図10】LEDと補助枠の押圧部との関係を示す図である。
【図11】変形例についてのLEDと補助枠の押圧部との関係を示す図である。
【図12】従来例の説明図である。
【図13】別の従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 インターホンの親機
2 機器ケーシング
3a〜3f,3g 支持スリーブ
5 配線基板
11〜16,17 押し釦
11a 表示部
11g 係合凹部
21 補助枠
21A 外枠
21B 仕切壁部
22a〜22f,22b’ 弾性アーム部
23a〜23f,23b’ 押圧部
31〜36 タクトスイッチ
41A,41B〜46A,46B,42’ LED(発光素子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器ケーシングに、透光可能な材料で成形される押し釦が配置され、前記機器ケーシング内に前記押し釦のスライド方向に直交する方向に広がる配線基板が設けられ、前記配線基板上に前記押し釦の表示部に対向してタクトスイッチが設けられ、前記配線基板上に、前記押し釦の表示部を照明する発光素子が設けられている電子機器における押し釦装置において、
前記機器ケーシングに設けられ前記押し釦をスライド可能に支持する支持スリーブと、前記押し釦と前記配線基板との間に設けられ前記支持スリーブ内に前記押し釦を弾性的に支持する押圧部とを備える構成とされ、
前記押し釦において、前記押し釦の表示部と前記押圧部との間の間隔は、前記発光素子からの直接光で前記押し釦の表示部全域を照明する大きさとされていることを特徴とする電子機器における押し釦装置。
【請求項2】
機器ケーシングに、透光可能な材料で成形される押し釦が配置され、前記機器ケーシング内に前記押し釦のスライド方向に直交する方向に広がる配線基板が設けられ、前記配線基板上に前記押し釦の表示部に対向してタクトスイッチが設けられ、前記配線基板上に、前記押し釦の表示部を照明する発光素子が設けられている電子機器における押し釦装置において、
前記機器ケーシングに設けられ前記押し釦をスライド可能に支持する支持スリーブと、前記押し釦と前記配線基板との間に設けられ前記支持スリーブ内に前記押し釦を弾性的に支持する押圧部とを備える構成とされ、
前記発光素子が、前記押し釦の表示部に照明を受け持つ領域を有し、前記押し釦において、前記押圧部が、前記発光素子と前記発光素子が照明を受け持つ前記押し釦の表示部の領域の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されていることを特徴とする電子機器における押し釦装置。
【請求項3】
前記発光素子は、前記押し釦の表示部に対向して複数個設けられている請求項1又は2記載の電子機器における押し釦装置。
【請求項4】
前記支持スリーブに対し、前記機器ケーシングの内側から取り付けられる補助枠を備え、
前記補助枠は、前記機器ケーシングの支持スリーブの外側に位置する外枠と、前記支持スリーブの間に位置する仕切壁部とを有し、この外枠あるいは仕切壁部に前記押し釦に対応して弾性アーム部が連接され、
この弾性アーム部に対し前記押圧部が前記タクトスイッチに対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器における押し釦装置。
【請求項5】
前記押し釦は、並んで複数個設けられている請求項4記載の電子機器における押し釦装置。
【請求項6】
前記弾性アーム部は、前記配線基板側に、前記押圧部が押し釦側にそれぞれ位置し、
前記押し釦には、前記押圧部が係脱可能に係合する係合凹部が形成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の電子機器における押し釦装置。
【請求項1】
機器ケーシングに、透光可能な材料で成形される押し釦が配置され、前記機器ケーシング内に前記押し釦のスライド方向に直交する方向に広がる配線基板が設けられ、前記配線基板上に前記押し釦の表示部に対向してタクトスイッチが設けられ、前記配線基板上に、前記押し釦の表示部を照明する発光素子が設けられている電子機器における押し釦装置において、
前記機器ケーシングに設けられ前記押し釦をスライド可能に支持する支持スリーブと、前記押し釦と前記配線基板との間に設けられ前記支持スリーブ内に前記押し釦を弾性的に支持する押圧部とを備える構成とされ、
前記押し釦において、前記押し釦の表示部と前記押圧部との間の間隔は、前記発光素子からの直接光で前記押し釦の表示部全域を照明する大きさとされていることを特徴とする電子機器における押し釦装置。
【請求項2】
機器ケーシングに、透光可能な材料で成形される押し釦が配置され、前記機器ケーシング内に前記押し釦のスライド方向に直交する方向に広がる配線基板が設けられ、前記配線基板上に前記押し釦の表示部に対向してタクトスイッチが設けられ、前記配線基板上に、前記押し釦の表示部を照明する発光素子が設けられている電子機器における押し釦装置において、
前記機器ケーシングに設けられ前記押し釦をスライド可能に支持する支持スリーブと、前記押し釦と前記配線基板との間に設けられ前記支持スリーブ内に前記押し釦を弾性的に支持する押圧部とを備える構成とされ、
前記発光素子が、前記押し釦の表示部に照明を受け持つ領域を有し、前記押し釦において、前記押圧部が、前記発光素子と前記発光素子が照明を受け持つ前記押し釦の表示部の領域の周縁とをつなぐことで形成される空間の外部に配置されていることを特徴とする電子機器における押し釦装置。
【請求項3】
前記発光素子は、前記押し釦の表示部に対向して複数個設けられている請求項1又は2記載の電子機器における押し釦装置。
【請求項4】
前記支持スリーブに対し、前記機器ケーシングの内側から取り付けられる補助枠を備え、
前記補助枠は、前記機器ケーシングの支持スリーブの外側に位置する外枠と、前記支持スリーブの間に位置する仕切壁部とを有し、この外枠あるいは仕切壁部に前記押し釦に対応して弾性アーム部が連接され、
この弾性アーム部に対し前記押圧部が前記タクトスイッチに対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子機器における押し釦装置。
【請求項5】
前記押し釦は、並んで複数個設けられている請求項4記載の電子機器における押し釦装置。
【請求項6】
前記弾性アーム部は、前記配線基板側に、前記押圧部が押し釦側にそれぞれ位置し、
前記押し釦には、前記押圧部が係脱可能に係合する係合凹部が形成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の電子機器における押し釦装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−79940(P2006−79940A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262812(P2004−262812)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】
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